原発の闇を暴く :広瀬隆・明石昇二郎 |
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この本は、いまから13年前の2011年7月、あの東日本大震災による福島第一原発事 故発生から4カ月後に刊行されたものだ。 歳月の流れるは早いもので、あの東日本大震災から13年が過ぎた。 そして、それとともに当時の記憶もだんだん薄れきて、もうほとんど当時のことを思い出 すことができなくなってしまっている。 当時は、ほんとうにこんなことが実際に起こるのかと、にわかには信じられなかった福島 第一原発事故も、13年過ぎた今では、もうすっかり記憶が薄まってしまっている。 人間の記憶とは、ほんとうに頼りないものである。 でも、この本を読んで、薄れていた記憶が断片ながら蘇ってきた。当時テレビは、朝から 晩まで福島原発事故一色だった。いろいろな専門家と言われる人たちが、次から次とテレ ビに出てきて事故を解説していたようだが、どの専門家も私の記憶にはあまり残っていな い。 この本を読んで、こういう専門家という人がこういうことを言っていたのかと、あらため て認識させられた。そして、テレビの出てきていた専門家という人たちのほとんどは、そ れまでは原発の推進派に属していた人たちで、原発に反対する人たちはテレビには出して もらえず、ずいぶんと偏っていたのだということを、あらためて認識させられた。 最近は、テレビを見ない若者が増えてきたと言われるが、それでもやはり依然としてテレ ビは国民に圧倒的な影響を及ぼすメディアだ。そのテレビが、このような、あの戦時中の 「大本営発表」のような放送をしていていいのかとあらためて失望を感じざるを得ない。 ところで、この本を読んでいて、私が一番ハッとさせられたのが青森県六ケ所村の再処理 工場のことについである。 私は今まで、再処理工場についてはそれほど危険なものという認識は持っていなかった。 しかし、この本を読んで、その認識はがらりと変わった。 というのも、この再処理工場では、使用済み核燃料棒を小さく裁断して溶かし、ウランと プルトニウムに分離するという処理をするようだが、当然、溶けた放射性溶液は配管の中 を通って次の処理工程へと流れていくことになるが、地震などで配管が外れたり亀裂が入 って大量に漏れたらどうなるのだろうか。その放射性溶液は人間が近づいたたらたちまち 死に至るような強烈な放射線を出しているはずである。そんなものが流れ出したら手がつ けられなくなってしまうのではないだろうか。そうなると福島原発事故どころではなくな ってしまう。なお、六ケ所村再処理工場には青森から下関ぐらいまでの距離に匹敵する長 さの配管が走っているという。それを考えると、想像を絶する怖さがある。 六ケ所村再処理工場は1997年竣工予定だったらしいが、さまざまなトラブルが相次い で、すでに26回も竣工を延期しているという。そしてすでに27回目の延期も予定され ているようだ。これは、もはや完成をあきらめほうがいいという天の声ではないのか。 過去に読んだ関連する本: ・原発のウソ ・世界に広がる脱原発 ・日本はなぜ脱原発できないのか ・国家と除染 ・原発の深い闇 ・電力危機をあおってはいけない |
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まえがき ・東日本大震災による地震・津波の被害者と、ひとくくりにしてすむことではない。 みなの言葉を聞いていると、「原子力ムラ」があると言っている。 原子力の世界には「御用学者」が山のようにいるのだという。 しかし、このようにはずべき大事故を起こして住民を避難させ、あの人たちの一生を取 り返しのつかない苦境に追い込み、加えて事故を収束することさえできない今、そのよ うに生易しい言葉ですませられるものだろうか。 ・加えてマスコミには、東電による被害者賠償は「電気料金の値上げで資金をつくって」 おこなうなどという信じ難い、許し難い報道が流れている。 罪を犯した加害者が、被害者から金を集めて、被害者に賠償金を支払うとは、一体どう いうことだ。 なぜ、そのような違法を日本人は認めるのか。 日本は法治国家ではないのか。 その責任者たちがまったく平気で生きていることが、私にとっては許し難いことである。 報道番組に出ている者たちが、いまだに「原子力は必要です」としゃべり続けている。 事故の原因や遠因をつくった大嘘つきが、それを犯罪として追及されないようにと、 今や「放射能は危なくない」と叫んで、ますます子供の健康を危ない方向に誘導してい る。こうした山のような事実が、目の前にある。 この種に人間たちが、今もマスコミに徘徊している状況は、「言論の自由」ですまされ ることではない。 「がんばれニッポン」とわめいて、そんな精神論で決着をつけようとする無責任な言辞 がたれながされている。 今ここにある危機 ・地震と津波による全電源喪失から、福島第一原発の事故はまったく収束の見込みが立た ない。 放射性物質の放出は止まらず、海水も空気も土もどんどん汚染されてゆく。 ・「枝野幸男」官房長官もさすがに「ただちに健康に問題はない」とはいわなくなってき たが、これは明白な犯罪だ。 原子力安全・保安院の「西山英彦」審議官は相変わらず、チェルノブイリ原発事故では 29人しか死んでいないなどというが、冗談じゃない。 ・僕は「想定外」という言い訳が大嫌いです。 この、ものすごい使い勝手のいい言葉を、権威を笠に着る人々がこれまでどれだけ使っ てきたか。 案の定、今回の「フクシマ原発震災」でも、「想定外」発言が飛び交っている。 想定外だと言い逃れさえすれば、自分たちがやってきたことはすべて免責されると思っ ている。 最低でも、そういう無能な人間は即刻総入れ替えすべきです。 ・事態はどんどん悪くなっている。 他人事のように会見を続けてきた保安院が、福島の事故を「レベル7」と認めざるを得 ない断末魔の状況になっているというのに、まだ気軽なことを放言している自称”専門家” が山のようにいる。 この人間たちは、みな原発の利権で飯を食っているのだから、もう金輪際テレビでしゃ べるなと言いたい。 ・「大丈夫だ」「安全だ」と言ってきた人たちは、どう責任を取るつもりなのか。 20キロ、30キロ圏内に住む人たちの避難や自主避難とか言っていましたが、とても それじゃ追いつかない事態になったでしょう。 ・そもそも国は、原発事故時における周辺住民の防災対策は「原発から半径10キロ圏内 までで十分」としてきたわけです。 10キロを超える被害など起こらないと「想定」してきた。 このことだけをもってしても、国は事故の責任から逃れることはできません。 ・放射能放出を止める対策を云々している日本人は、もう気づくべきだと思う。 なぜこれほど複雑怪奇な装置を使って、電気を起こさなければならないのか、と。 命より電気のほうが大事なのかと。 津波によるすさまじい被害が東北を襲った。 だが、これは阪神大震災などと同様に辛いことではあるが、必ず皆の力で克服できる自 然災害です。 本来、今頃は復興途上にあるはずなのです。 しかし、原発事故があったために、住民も企業も脅えて生きなければならない。 ・東電は「6〜9ヶ月で収束の見通しを立てる」という工程表を発表しましたが、今まで の泥縄式のやる方を見ていると、とてもスケジュール通りに収束できるとは思えない。 能天気な発言を繰り返していた「班目春樹」・原子力安全委員長は、高濃度の汚染水流 出について記者から質問されて「どんな形で処理できるか知識を持ち合わせていない。 保安院で指導してほしい」と言ってサジを投げたのですよ。 今の日本に「無能」であることを罰する法律がないのが悔しいです。 ・もっと大変な事実が、その後で明らかになった。 5月15日に、ついに事実を隠せなくなって、東京電力の関係者が 「1号機では津波より前に、地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があった」 ことを初めて認めたのです。 福島第一原発の元設計技術者で、サイエンスライターの「田中三彦」さんが指摘してい た通りの重大事です。 さらに16日、東京電力は1号機の非常用復水器が本震直後、つまり津波が来襲する前 から3時間停止していたことを公表しました。 運転員が停止したと言うが、実はこれも嘘で、地震の衝撃で破損していた疑いが濃厚で す。 ・5月24日には、3号機でもECCS(非常用炉心冷却装置)の高圧注水系配管が、わ ずか507ガルの地震の一撃ではそんしていたことが判明した。 最高ランクの耐震性を持つ機器が、この程度の揺れで壊れてしまったのだ。 さらに東京電力の公開資料を追跡したところ、1号機と2号機でも、地震で配管が破損 していたことが明かになった。 ・要するに、この一連の事実は、「原発は地震の揺れには耐えたが、津波のよって事故が 起こった」という、これまでの東京電力の発表が、すべてデタラメだったということで す。 なんと、爆発した1・2・3号機とも、地震の揺れでぶっ壊れていたんだ。 津波じゃない。しかもその揺れというのが、ほんの500ガル前後だよ。 ・最近の地震の記録を、日本人は知らないのかね。 ・2000年10月鳥取県西部地震 最大加速度 1482ガル ・2003年 7月宮城県北部地震 〃 2037ガル ・2004年10月新潟県中越地震 〃 2515ガル ・2007年 7月新潟県中越地震 〃 2058ガル ・2008年 6月岩手・宮城内陸地震 〃 3866ガル ・阪神大震災が起こって以来の日本は、この通り地震の活動期に入って、今回の東日本大 震災とりはるかに大きな揺れが続発してきた。 ほとんどが2000ガルを軽く超えている。 しかもこの激動は、これから数十年続くんだよ。 私が予想した通り、日本の原発は、どこでも普通の地震が来れば終わりになることが、 明かになったわけだ。 今年まで大事故がなかったのは、たまたま原発が地震の直撃を受けなかっただけだ。 ・そして福島第一原発の今の状況ですが、燃料棒を取り出すまで、放射能の流出が続きま す。 ところがメルトダウンした燃料棒がぐちゃぐちゃのかたまりになって、原子炉化格納容 器のどこかに落ちているので、放射能のかたまりを取り出せない。 つまり空へ、海へと放射能の大量放出が続くということです。 ・そうした絶望的な事実をほとんど伝えず、国民に対して気休めばかりを発進してきたメ ディア、特にテレビですが、彼らの責任がもっとも重大だと思います。 東電のウソの会見の追及をしようとしたジャーナリストの「上杉隆」さんは、レギュラ ーで出現していた番組からおろされてしまった。 なんておそろしい国に生きているのだろうと思いました。 事故のあと、彼が東電記者会見で「ヨウ素、セシウム、プルトニウムなどの放射性物質 がすでに出ているはずだ」と追及すると、大手メディアの報道記者に「黙れ、同じ質問 ばかりするな」と妨害されたのですよ。 ウソの報告に何の疑問もはさまず、東京電力に飼われているプレスの態度は、日本の報 道に対する信頼性を完全に失墜させましたね。 全世界が、これが日本のジャーナリズムかと、呆れかえっています。 島もフリーのジャーナリストや海外のメディアは、当初、何て言の会見会場から締め出 されていた。 その原因がどこにあるかと言えば、一部の記者たちは、ちょうど事故が起こった時に東 電の接待旅行で中国へ行っていた。 そして、その接待リストを電力会社が握っているので、もし東電を批判すればリストが 流出して、この記者たちの名前が世間に漏れてしまう。 だから何も言えない恥ずかしい状況だったというのです。なんという世界だ。 ・基本的に、日本のマスコミ報道の現場において、原発政策に異を唱える主張を紹介した り、反原発運動を肯定的に取り上げたりすることは長年、タブーだったのです。 そしてその状況は、原発震災が発生し、漏れ出した放射能が首都圏にまで飛来する事態 に至ってもなお、さほど変わりはないなと実感しています。 ・マスコミ報道で重用されるのは、原発推進派に分類される”識者”や”専門家””科学者”と 称する人々です。 こうした傾向は、今回の福島第一原発事故でさらに強まっている。 彼らは顔や名前や肩書が違っても、「安全です」「大丈夫です」と、決まって紋切型の 口上を述べる。 そんな彼らをマスコミが繰り返し使い続けるのは、こうしたニーズがマスコミの側にあ るからで、彼らがそのニーズに応える期待通りのコメントを吐いてくれるからです。 事故が拡大しつづけ、その深刻な状況を一度でもまともに解説してしまうと、その後は マスコミから声がかからなくなる。 ・そうした人間の安全デマに踊らされているうちに、われわれの予想したとおり、事態は どんどん深刻になっていった。 最初からあれだけの水素爆発の爆風による衝撃があって、誰が見ても、お釜や格納容器 や配管、敗戦が無事なわけがない。 計器もすべて影響を受けているのだから、原子炉内の温度や中性子量、放射線量、水位 など、事故の収束に不可欠な数値を、今日まで無能の限りをつくしてきた東電や保安院 が、正しく掌握して来たとは考えられない。 核分裂を制御する制御棒がまともな形で残っているはずがない。 灼熱の燃料棒が、どこに、どのような形で落下しているかという最も重要なことさえ、 仲をのぞけないから誰にもわからない。 ・問題なのは、原子炉というのは、とにかく膨大な配管や廃船のダクト、弁が密集してる 複雑な設計であるということです。 その配管のうち、原子炉に直結している箇所が破損していることを、田中三彦さんは早 い時期から推測していた。 でも、どこは破損しているのか、誰にもわからないわけです。 しかも現場は高濃度の放射線が放出されているから、作業員が近づけない。 被曝による死を覚悟で近づけたとしても、入り組んだダクトのどこが破損して、放射能 が流出しているかを見つけることは不可能です。 破損個所が見つからなければ、注水した水がダダ漏れ状態になって、高濃度の汚染水が 永遠に出続ける。 穴の開いたバケツにジャブジャブ水をつぎ込んで汚染水を膨大につくり出している状態 です。 ・ところが、「今のところ安定」という東電の発表や、あんな単純なマンガみたいな図解 で「大丈夫、安全」という嘘をメディアが鵜呑みにして報道しつづけた。 とくにテレビは、これでもかこれでもかと御用学者を出していた。 東電がテレビの大事なスポンサーだからといって、国民の命と引き換えに、よくもこう いう報道ができるものだと、放送業界の人間性がおそろしくなった。 あの連中だって、家に帰れば自分の家族や子供がいるだろうに、なぜ機危険な状態を黙 認するのか。 人間として、親として、自分の家族に対してよく恥ずかしくもないものだ。 戦時中の第日本帝国軍部の「大本営発表」だけを報じて、国民を最後の地獄まで連れ込 んだ報道界が、当時と何も変わっていなかったのはおそるべきことだ。 ・例えば、4月10日に東京・高円寺で繰り広げられ、1万人以上が参加した反原発デモ は、共同通信と日本テレビ以外の大手マスメディアから黙殺されました。 今、反原発運動が世界規模で拡大していますので、”実はあの日、高円寺の反原発デモを 私たちも取材していました”と、当たり前のことのように言いだす報道機関も現れていま す。 つまり、記者は取材しているのに、紙面や番組で取り上げなかったのです。 現場で取材する記者たちは、これまでのものとは明らかに異なる「21世紀の反原発気 運」の高まりを肌で感じているのに、紙面や番組をつくる決定権を持ったデスクや幹部 たちがそのことを無視し続けてきた。 事実さえ無視しようというのですから、報道を弾圧したり検閲したりする国のことを笑 えません。 ・東電では、3月14〜15日に中性子線のピークがきているのをわかっていました。 そのことをメディアに公表したのはだいぶ後のことです。 卑劣なのは、東電は事故収束のために駆けつけた自衛隊や消防、警察などの隊員たちに こうした事実を伝えていなかったことです。 僕は東電に対し、この点を何度も確認しましたが、曖昧な言葉しか返ってきませんでし た。 ・東電に「中性子線の線源は何だと思っているのか」と聞いたところ、「中性子を出す物 質が原発港内のどこかにあるのではないか」などと意味不明なことを言いはじめる。 東電本店の広報の人間がそう言うのですよ。 「燃料の再臨界は考えられないのか」と尋ねても、「私たちはそうは考えていません」 の一点張り。 ・なぜ中性子線が検出されたかといえば、14日に3号機、15日に4号機の使用済み核 燃料プールで水素爆発があったと報じられたわけですから、線源として「使用済み核燃 料」が真っ先に疑われるわけです。 新聞やテレビではまったく報じられないことですが、3号機の爆発はただの水素爆発で はなく、小規模の核爆発を伴っていた可能性があるのです。 ・爆発で上がった煙の色が違う。 水素爆発だった1号機の煙が「白煙」だったのに対し、3号機の煙は文字どおりの「黒 煙」でした。 水素爆発だけでは黒い煙は出ません。 しかも、3号機の爆発では垂直方向に数百メートルほど噴煙が上がった後、大きな固ま りがいくつも原発上に落下してきている。爆発の威力がぜんぜん違う。 アメリカのスリーマイル事故の調査に関わった「アーノルド・ガンダーセン」氏のよう な専門家の中には、3号機の爆発の際に「即発臨界」が起きていた可能性を指摘してい る人もいます。 水素爆発によって使用済み核燃料プール内の核燃料集合体が破壊されるほどの圧力がか かり、臨界に至った、という仮説です。 ・また、4号機の使用済み核燃料プールからは、ベータ線を出すトリチウムという放射性 物質が蒸気として出ているはずだ、と海外の科学者たちが警告しているのに、日本では まったくトリチウムのトの字も出てこない。 ・福島原発事故直後の報道機関は、3月15日の「放射能、首都圏襲来」も「福島県内拡 散」も事前に速報しませんでした。 それらの事実をマスコミが報じたのは、すでにその地域が汚染された後のことです。 ・15日午前3時、それまで北や東に向かって吹いていた原発周辺の風が、南向きに変わ ったのです。 「放射能襲来」に気づいたのは、その日の午前5時過ぎのことでした。 茨城県環境放射線監視センターによる県内の環境放射線測定値が急激に上昇していた からです。 ・でも、政府やマスコミは沈黙を続けている。テレビもそんなことはまったく言わないわ けです。 「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)も、活用されて いる気配はまったく見られませんでした。 ・私がこわかったのは、「テルル132」という金属が出たこと。 これは京都大学原子炉実験所の「小出裕章」さんのデータだから間違いない。 テルルは融点449℃、沸点が989℃の物質だから、こんな行員にならないとガス化 しない物質が空を飛んで東京まで来ているということは、原子炉の内部で取り返しのつ かないことが起こっている証拠だと思った。 ・テルルという名前が新聞に出たのは、それから1週間近くたってからです。 でも、報道ではおそろしい物質だなんていう説明はない。 ・福島第一原発の3号機で使っていた核燃料は、ウランとプルトニウムを混ぜ炊きする 「プルサーマル燃料」です。 3号機はもともとウラン燃料を燃やすように設計されていた原子炉で、実験的に混ぜ炊 き燃料(MOX燃料)を使い始めた矢先に爆発事故に見舞われ、高い上空まで噴煙を吹 き上げた。 しかもハワイでもプルトニウムが検出されている。 だから、東京に南下してきた放射能に毒性の強いプルトニウムが混じっていたとしても 何の不思議もなかったわけです。 ・こうした汚染について、海外のメディアは、事故の早い段階から日本のマスコミが報道 しない福島事故の深刻さを報道していました。 ヨーロッパ放射線リスク委員会の専門家が福島原発の使用済み核燃料の危険性などを指 摘して、「こんな非常時代になっているというのに、なぜ日本人は呑気にしているのか」 と驚いていました。 海外メディアのほうがずっと事故のこわさを正確につかんでいました。 日本の国民は正確な事実を知らされずに、「ごく微量で」という馬鹿げた発表を、現在 も信じ込まされている。 ・4月2日には、核汚染に対処するアメリカ海兵隊の特殊部隊「CBIRF」が東京の横 田基地に到着しています。 福島原発事故の更なる悪化に備えるためだと言う。 「安全」で「大丈夫」なら、なぜ彼らがわざわざ来日するのかということです。 ・しかし、私としてはもっと早くアメリカの力を借りるべきだったと思う。 自衛隊じゃ駄目だから、最初から米軍に来てくれと思った。 彼らは核の専門部隊を持っている。 事故後すぐの初動が最重要だったのに、「菅政権」が「自国で対処する」とアメリカの 協力を断ったから、ここまでひどくなってしまった。 ・「自衛隊を全部改組して災害救助隊にしろ」と日本人に訴えたいです。 戦争部隊を持つより前に、日本は人命救助の部隊を持つべきじゃないですか。 迷彩服を着て人命救助をするのはおかしいと思いませんか。 ・日本はこれだけ天災を受ける国でありながら、災害救助隊というものがない。 消防隊員や自衛隊員が、命懸けで働くことは美談ではあるけれども、あの人たちも、放 射能のことを正しく教えられていないから、被害者なのです。 それでは、住民を救えません。 日本は、何があっても行き当たりばったりの泥縄でやるから、どうにもならない。 ・立て続けに発生した原子炉建屋の水素爆発のあと、1号機から3号機の原子炉と使用済 み核燃料プールを冷却するために注水を続けているわけですが、そのため、放射性ヨウ 素やセシウムを多量に含んで超高レベル放射能汚染水が大量に海に漏れ出してしまいま した。この回収は不可能です。 ・呆れたのは、元東電の人物が「穴を掘って汚染水を地下に流し込め」とテレビで言った ことですよ。 要するに答えは一つ。汚染水は、そういう暴言を吐く東電の本社ビルに保管させろ ということだ。本社が放射能汚染水でいっぱいになったら霞が関に保安院に持っていけ。 ・こんな非常事態になっているのに、1〜4号機までは廃炉を決めたけれど、5、6号機 にはまだ未練があるようなことを東電の「勝俣恒久」会長が言っていました。 役員報酬を半額にして責任をとるという企業だから、国民もあきれる。 報酬があること自体信じられない。 東電の取締役の平均報酬は、約3700万円と報じている。 ・青森県にある六ケ所再処理工場を経営している日本原燃の会長だったのが、当時の東電 社長で現在の会長、勝俣恒久だ。 ・長崎大学大学院教授の「山下俊一」が、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーにな って、汚染された福島県内各地で「大丈夫、大丈夫」と講演してきました。 3月21日に福島市「福島テルサ」で山下が「放射能安全論」を地元民に吹く込むため に開いた講演会で、こんなことがあったそうです。 ウシの原乳から放射性物質が検出された問題について質問された山下が「あれは心配す る必要はありません。牛はね、何もわからないからそこら辺の草を勝手に食べちゃうん です。人とは違うんですね」としゃべった。すると、会場に酪農家の女性がいて、山下 に言ったそうだ。 「今の季節は外は雪で、草はありません。牛が食べているのは夏の間に刈り取った牧草 です。私たちと牛が共にしているのは水と空気です。だから心配なのです」 山下は、何も答えられずに、みんなの前で赤っ恥をかいたそうです。 こんな基本的なことも知らない大学教授が、放射線の専門家だと偉そうにして、放射能 安全論をしゃべっている。 こんな人間を放射線健康リスク管理アドバイザーに雇う福島県の「佐藤雄平」知事も、 住民の健康を本心から考えていないと批判されるべきだ。 そもそも佐藤知事は、2010年のプルサーマル導入にゴーサインを出した責任者だ。 ・東京大学大学院教授の「小佐古敏荘」が、4月29日に政権を批判して、内閣官房参与 を辞任して話題になったでしょう。 一番驚いたのは、私だよ。福島県内の小学校や幼稚園などの利用基準で、被曝限度を年 間20ミリシーベルトと設定していることを「とても許すことができない」と非難した のだが、その立派な発言をした小佐古は、私が放射性廃棄物処分場問題の航海討論会で やりあった相手で、これまででもっとも悪質でしたよ。私が資料を出すと「引っ込めろ」 と怒鳴って発言もさせてなかった。 ・放射能に関しては、「コーデックス」という国際基準があるのですよ。 その放射性ヨウ素の基準値を、日本政府は暫定基準とかいって3月17日に20倍に引 き上げてしまった。 ホウレン草だ、カキ菜だと言っている野菜類の放射性ヨウ素が、コーデックスの基準で は100ベクレル/キログラムなのに、2000に引き上げてしまった。 これはとんでもないことです。なんで20倍にするんだ。 20倍にしたものを基準に新聞記事はそれの何倍だとか、それを下回るだとか言ってい るのだから話にならない。 しかも大人と乳児の摂取限度の差は300と100で、乳児は3分の1。 冗談じゃない。最低限、乳児は大人の10分の1にすべきですよ。 それがヨーロッパ医学界の常識だ。 ・実をいうと私は、東日本大震災が起こった時、最初は福島より青森県六ケ所村の再処理 工場をしんぱいしていたのですよ。 そこは日本中の原発からすべての放射性廃棄物を集めてきた最大の危険プラントで、 福島原発事故でわかった最大の教訓は、絶対にこのように一ヶ所に危険物を集めてはい けない、ということです。 六ケ所村は今とても危険な状態にあるし、何より日本国内の原子力プラントで最低の耐 震設計ですからね。 六ケ所村がやられたら放射能災害は福島どころの話じゃなくなる。 ・六ケ所再処理工場の耐震性は、あの「活断層過小評価」で名高い「衣笠善博」(東京工 業大学名誉教授)のお墨付きですから、全然信用ならないです。 衣笠の甘い活断層評価のおかげで、これまで日本にどれだけの原発が立地できたことか。 原子力産業のヒーローと呼べる人物です。 ・衣笠が断層を短く評価してきたおかげで、六ケ所再処理工場も大間原発も東通原発も、 全国最低の耐震性になってしまった。 国は今、原発施設の耐震性についてバックチェックという見直し作業をやっているけれ ど、青森の下北半島にあるその三施設の耐震基準は450ガルで、今もって日本最低で す。なぜなら、六ケ所村の基準に合わせざるをえないからです。 六ケ所村の耐震性では危ないということで、その基準をあげたらみんな上がるんだけど、 規準をあげられない事情がある。 六ケ所村で耐震強化工事ができないから、大間も東通も上げられない。 ・なぜ六ケ所再処理工場の耐震工事ができないかといえば、放射能で汚染されているから 近づけないのです。 特にこわいのは配管ですよ。 六ケ所再処理工場には、青森から下関ぐらいまでの距離に匹敵する長さの配管が走って いて、その複雑な配管の中で世界最大級の汚染をやってしまった。 プルトニウムを扱っていて超危険な状態だから、人間が近づけないのですよ。 ・六ケ所再処理工場がまともに運転できないことは最初からわかっていたのです。 前身の東海再処理工場の時代からトラブルの連続でね。 技術が未熟なのに六ケ所村に持ってきて大型化したものでから、運転するとストップ、 運転するとストップとストップを繰り返してきた。 それがついに、2008年10月に高レベルの廃液をガラス固化する溶融炉のノズルに 白金族が詰まって流れないという末期的状態に陥った。 その時、この運転会社の日本原燃がどうしたと思いますか。 なんと、棒を突っ込んでノズルの穴を突っつくという狂気のような作業をしたのですよ。 その結果、今度は突っ込んだ攪拌棒が抜けなくなってしまった。 危険で近寄ることもできないので、仕方なくカメラで覗いてみると、棒がひん曲がって、 さらに炉の耐震材として使われているレンガがノズル部分に落ち込んでいることも判明 した。こんなマンガみたいな能力で、デッドエンド。 ・その結果、固化することもできないまま、高レベル放射性廃液が240立方メートルも たまってしまった。 この廃液は強い放射線を出して水を分解し、水素を発生させます。 絶えず冷却して、完璧に管理をおこなわないと爆発する、きわめて危険な液体なのです。 この廃液が1立方メートル漏れただけで、東北地方、北海道地方南部の住民が避難しな ければならないほどの大参事になる。 私が原発の反対運動を始めた最大の動機は 1977年に、再処理工場の大事故について西ドイツの原子力産業が出した秘密報告書 の内容に震え上がったからです。 廃液にすべてが大気中に放出されれば、まず日本全土は終わると見ていいでしょう。 こんな危険な場所で耐震工事をできるわけがない。 ・おまけに、六ケ所再処理工場はこんなヒのような津波の想定すらしていません。 高台にあるあら大丈夫だと言うが、海岸からたかだか5キロくらいのところにあるので すよ。再処理工場に津波が来たて電源が喪失したら、世界が終わりですよ。 ・東日本大震災の本震から約1ヶ月後の4月7日に最大の余震が起こり、岩手・青森・ 山形、秋田の4県が全域停電になった時、六ケ所再処理工場では外部電源が遮断され、 非常用電源でかろうじて核燃料貯蔵プールや高レベル放射性廃液の冷却を続けることが できたというのです。 日本消滅の一歩手前まで行ったというのに、その後も、日本国民とマスメディアは平気 で生活している。 あそこには3000トンの容量の巨大プールがあって、そこに使用済みの核燃料を受け 入れているのですが、もうこのプールはアップアップで満杯なのです。 地震で、もしこのプールに亀裂が入って地下に汚染水が漏れ出し、メルトダウンしたら どうするのか。 今度は原発100基分だよ。それを考えるとぞっとします。 ・中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)は超危険地帯に建っています。 浜岡は、発生が予想される東海大地震の震源域のど真ん中にありますからね。 誰が見ても、浜岡が大地震に対して絶望的なことは明白です。 今回の東日本大震災をもたらした太平洋プレート境界地震は、沖合130キロメートルを 震源として起こったけれど、あれと同じ規模かそれ以上の巨大地震が、浜岡原発の真下 で起こるのです。これで大丈夫だと思う人がいることが、そもそも理解できない。 ・3.11で太平洋プレートが動いたのだから、その上に乗っているフィリピン海プレー トが動かないはずはない。 そうなれば、フィリピン海プレートの上に乗っているユーラシアプレート上の浜岡原発 は、一撃で終わりです。 それも、現在までの福島第一原発の放出放射能より、一桁上になるでしょう。 何しろ、浜岡の場合は、原子炉が最初に破壊されてしまいますからね。 放射能が全部、出てしまう。 あとは東京も名古屋も大阪も、人間が住めなくなる。 ・浜岡原発は、2009年8月11日の駿河湾地震(M6.5)で以上に大きな揺れを記 録して、その地盤がいかに軟弱であるかと、地元を震撼させました。 この場所は岩とはとても呼べない強度の低い軟岩でできていて、そんなことはどの地質 学の教科書にも載っていることです。 その事実を隠し、中部電力阿「浜岡原発は強固な岩盤の上に建設されています」とウソ をつき続けてきたのです。 ・最近の三宅島の噴火と、2009年8月の八丈島から駿河湾の連続地震は、明らかにこ の一帯が海底深いところで活発に動きはじめている重大な警告です。 ・今回の東日本大震災は、「貞観地震」を引き起こしたものと同じ海底活断層が動いたた めに起こったのではないかと推測されていますが、貞観地震(869年)と前後して、 富士山が噴火(864年)しているのですよ。 東海地震の東南海地震、南海地震がれんぞくして発生した1707年の「宝永地震」の 際にも、直後に富士山が噴火しています。 ・東日本大震災が発生して、その後すぐ、中部電力が、浜岡原発の海側に津波対策として 防波壁を設置すると発表した。 福島第一原発では高さ14〜15メートルの津波が襲来したとされているので、15メ ートルの高さを目安にするという。 でも、この実態を地元の人が調べたら、砂丘は数メートルの砂山で、中部電力は、その 砂の上に海岸の砂をブルドーザーでかきあげて10メートルの土塁にしただけ。 外国から取材に来て、地元の人が砂丘を案内すると、こんなもので日本人が安心してい るのかとたまげて、「クレイジー」の連発だったそうです。 ・すると今度は、その内側に民家の塀みたいなものを建てるという。 この対策が、ジョークではなく、電力会社の真剣な対策だ。呆れてものも言えない。 安政東海大地震では、600メートルも内陸まで津波が押し寄せたのですよ。 今回も、仙台平野の名取市一帯では6000メートルも奥深くまで陸地をなめつくした 濁流を見て、日本人はふるえあがったじゃないか。 ・中部電力は、電源を高いところに設置するとか、こざかしい対策を発表しているけれど、 まるでわかっていない。 津波というのは、さらった自動車でも、船でも、岩でも、家屋でも、一緒に運んでくる のだから、高いところに電源を置いたって、その電源のケーブルがズタズタに切れて何 の役にも立たなくことぐらい、誰でもわかるだろうに。 津波に対しては、危険物を海岸線に建てないことのほかに対策はないのです。 ・岩手県宮古市の田老地区にあった津波防潮堤は全国最大規模で、「日本一の防潮堤」と か「万里の長城」と呼ばれていました。 土地の人々もこの防潮堤があれば大丈夫と思っていた。 それでも田老は破壊されましたものね。 ・ナトリウム漏洩火災事故が原因で14年以上運転を停止していた日本原子力研究開発機 構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の直下には、二本の活断層が走っていま す。おまけに、運転を再開した2010年からトラブル続きで、さらに怖いことになっ ています。 警報機の誤動作やら、手順書の不備による制御棒の操作ミスが相次ぎ、その年の8月に は原子炉容器内に炉内中継装置が落下して抜けなくなる事故が起こった。 そして2011年2月、その復旧作業を担当していた燃料環境課の男性課長が自殺して いる。 耐震バックチェック以前の低レベルの次元で、「もんじゅ」は酷いことになっているよ うですね。 ・「もんじゅ」の事故は、燃料交換に使う3トンもある装置が原子炉容器内に落下したの です。 上蓋を外さないと、この落下した装置を取り出せないのですよ。 しかし、上蓋を外すと液体ナトリウムが空気と激しく反応して燃え出すので、まずナト リウムを抜かなければならない。 ところが、ナトリウムを抜く前に、炉心から燃料棒をすべて引き抜く必要があるという のに、燃料棒を炉外に出す装置が「落下した炉内中継装置」なんだ。 したがって、これを壊して取り出すほかない。 危険な引き抜き作業をおこなったというが、トラブルなしで済むとは思えない。 将来運転できる技術もないのにこんなモンスターをなぜ使おうとするのか。 ・アメリカは、高速増殖炉から撤退したのですよ。 莫大な金を投じたけれどやめた。 原発依存率は8割のフランスでさえやめた。 自分たちで見切りをつけた。 これは駄目だということが、少なくとも外国では読める。 そういう判断力がどこかで働かなければいけないのに日本はどこまでも馬鹿どもがカネ に群がって、最後に事故を起こす。 ・こういう危険なものを扱う技術力がそもそも日本にはないです。 アメリカやイギリスやソ連、フランスが核兵器をつくろうとして始めた産業から日本が 学んだ技術にすぎないのです。 ・実は臨界という現象でさえ、日本の原子力産業にはよくわかっていない。 だから、プルトニウムを集めている六ケ所再処理工場が私はものすごくこわい。 日本に核兵器の技術がないということは、裏を返せば、臨界事故を起こす可能性がすご く高いということになる。 1999年のJCO事故の時、日本人が最近になって臨界の研究をしているのを知って、 ゾッとしました。 基本的な学問がないのですよ。 したがって、事故が起こると、専門家が計算さえできない。 それが、福島原発事故でテレビに出てきた自称、”専門家”のコメンテーターたちの無能 さ証明された。 まともな事故開設さえできない。 地上波テレビ局から招かれなかった「田中三彦」さんや、東芝の格納容器設計者だった 「後藤政志」さんたちが、もっとも正確に自己を解析して、危険性を教えてくれるのが、 日本の実情だ。 ・今度の事故処理で、日本人は、現場の決死隊の人たちがうまく放射能を閉じ込めてくれ るように祈っているだろうけれど、それだけじゃおかしいでしょう。 「原子力の専門家」に疑問を持たなければだめだと私は言いたいのですよ。 現場で事故処理をしている人も被害者なのです。 取り分け孫請け、ひ孫受け業者から派遣されて、命と引き換えに入っている運転員や作 業者ね。 あの人たちがやってくれたことを美談にして終わらせては絶対にダメですよ。 原発事項の責任者たちを糾弾する ・福島の原発が津波で全電源喪失してから、次々に起こる悪夢のような映像を人々はテレ ビにかじりついて固唾をのんで見てきたわけです。 そこに、ふだん見慣れない原子力関係者の人間たちが次々と登場し始めました。 連日のようにテレビに出て現状を解説する原子力工学の専門家と称する者たち。 彼らの会見や解説に一生懸命耳を傾けていたと思います。 ・しかし、事態が深刻になるにつれて、 「建屋に溜まった水素が漠抜しただけで、原子炉はすでに停止ていているから大丈夫で す。冷静な対応を」 「燃料は冷やされているから大丈夫」 といった、安全をことさらに強調した解説は、彼らにとって都合のいい”希望的観測”に 過ぎなかったことが一般市民にも露呈してしまった。 ・事故直後から、NHKのニュースに出ずっぱりで「大丈夫」開設を繰り返していた 「関村直人」(東京大学大学院工学系研究科教授)は、視聴者の不信を買ったのか、 4月以降はすっかり姿を消してしまいました。 関村は、東電から研究費を提供されてきた東京大学の原子力利権者、つまり福島第一原 発事故の重大責任者だというのに、どうしてNHKがこの男をニュース解説に使ったの か。 おそらく、「小出五郎」という昔の原発担当の解説員が今も生き残っていて、その引き で登場したのだと思う。 ・関村のことをテレビ視聴者はしらないでしょうが、2007年7月の新潟県中越沖地震 で柏崎刈羽原発の内部がメチャクチャに崩壊した直後、経済産業省が総合資源エネルギ ー調査会に設置した「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」の委 員に就任して、経済産業省つまり政府側ワーキンググループの座長として、絶対に動か してはいけない原子炉の運転再開を主導してきた人物です。 その委員会で出来村は原子炉の危険性について何も解説できず、ただ他人の言葉をまと めただけ、という悪評がわたしのところにも聞こえています。 加えて、総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会高経年化対策検討委員会の 下に設置された「高経年化技術評価ワーキンググループ」でも主査を務めました。 高経年化とは、老朽化したボロボロになった原子炉をどうするかという深刻な問題のこ とです。 ・なぜ老朽化を議論しなければならないか。 福島第一と同様に、運転中だった54基の原子炉の中で最も古いものが、1970年に 運転を開始した敦賀第一号機ですが、40年を超えてガタガタになっています。 そういう事実があるにもかかわらず、2010年8月に、つまり今度の東日本大震災の 前年ですよ、2011年3月26日に雲天40年の寿命を迎えようとしていた福島第一 原発一号機について「最長60年の運転可能」という報告書を提出した張本人が関村で すよ。 ところがその福島第一原発一号機でメルトダウン事故が起こると、NHKテレビにコメ ンテーターとして出ずっぱりで「原子炉は冷やされている。冷静な対応を」などと見当 違いの発言を繰り返した。 ・それにしても、関村の”解析能力”には呆れたね。 3月14日にMOX燃料を使用した三号機が水素爆発を起こし、建屋の鉄骨がグニャグ ニャになるほど破壊されたというのに、翌日のNHK「ニュースウォッチ9」では 「炉心容喙はありえない」と言い、27日には冷却水漏れの可能性を聞かれて「その可 能性は極めて低い」と言い、高濃度汚染水が確認されたことを知ると「高濃度の汚染水 は、ウェットベントで大気中に出た放射性物質が水に溶け込んだ可能性がある」とデタ ラメばかりしゃべっていた。 その直後ですよ。燃料棒の溶解と、それによる高濃度汚染水が判明したのは。 ・岡本孝司(東京大学大学院教授。東大工学部原子力工学科卒業)も頻繁にNHKに出て いましたが、「今回、原発は十分に働いた。というのは自動停止したからだ。それ以後 の不具合は想定外の津波のせいだから仕方がない」と、まあ、あれだけ無責任なことを 言ったものだ。 岡本のような素人の大学教授が原子力工学の専門家だと称して、エンジニアであればす ぐに気づく常識さえ持たずに、偉そうに解説している。 ・加えて東電は「原子炉の温度が低いから大丈夫」なんてことをまだしゃべっている。 内部がメチャクチャなのだから温度計だって信用できないことは、素人でもわかるはず だ。 原子力の専門家は、原子炉の内部構造が何にもわかっていない。 驚くべき低レベルだ。 問題なのは、こういう技術面に無智な者が次から次へとテレビに出てきてしゃべるため に、ほとんどの日本人が、もう事故は終わったと勘違いしていることだ。 原子炉から大量の水が漏れ出ているのに、その行先さえ東電にはわからない。 二ヵ月後になっても放射能汚染が陸と海にどんどん拡大している。 きわめて深刻な事態が進行しているのが現実ですよ。 ・彼らのことを総称して「原子力マフィア」と呼んでいますが、言い得て妙ですね。 安心だ、安全だと耳にここちよい言葉ばかりを乱発して、一般人を小バカにしてきた非 科学的かつ無責任な言説をこのまま放置してはいけないと思います。 彼らのせいで、今も事故現場ではたくさんの作業員が被曝し、避難が遅れた福島の人々 が危険にさらされているわけですから。 ・しかし、原子力マフィアというのは恐ろしいほど裾野が広いうえに、利権をめぐっての ヒエラルキーがきちっと構築されているのですね。 今回の事故でもいろいろな学者が跋扈していますが、皆の知らないところで彼らはちゃ んとつながっているのです。 ・彼らは全部グルだということですよ。 今回、原発は安全だ、放射能は大丈夫だと言ってきた人々はみんな裏でつながっている 同じ穴のムジナです。 ・原子力マフィアというのは、要は、政・官に原子力関係者の産・学が癒着した原発推進 者ばかりの共同体、つまりシンジケートです。 言ってみれば、独占企業の電力会社の潤沢なカネを回し合うことでつながっている運命 共同体で、利権の巣窟といっていい。 安全なんて、まるで真剣に考えていない。 原子力の研究分野では、東大工学部、東工大原子炉工学研究所、京大原子炉実験所の研 究員たちが原子力推進の三大勢力で、やたらテレビに出て安全デマをふりまいていたの も、ほとんどここの御用学者たちだった。 ・電力会社はこうした大学の研究者たちに共同開発や寄付講座といった名目で、薄汚れた カネをくばるわけです。 その見返りとして研究者たちは、いかに原発が安全かと遠吠えし、電力会社から毎日餌 を与えられた飼い犬になってキャンペーンを張る。 ・原発を管理する経済聖業用と文部科学省は、電力会社に原発の許認可を与える代わりに、 天下りのポストを用意させる。 経産省に資源エネルギー庁から、東電への天下りが常態化しているのが、その象徴だ。 ・そして文部科学省は、昔の原子力の元締めだった科学技術庁を内部に取り込んだので、 今や原子力推進省に化けている。 だから文部科学大臣の「高木義明」が、福島県内の児童被曝という子どもの未来を殺す ようなことを平気で放置するようになったわけです。 ・さらに大学研究者OBたちは、原子力委員会や原子力安全委員会など国の機関に入り込 んで、官僚たちとグルになって原子力政策を推し進める。 産業の筆頭は、発注者として君臨する電力会社だけれど、その電力会社にたかって、 巨大な工事で儲けるゼネコンがいて、原子炉メーカーの御三家である東芝、日立製作所、 三菱重工がいて、その利権に関わるたくさんの大中小メーカーがくっついている。 ・そして、原発を誘致する地元自治体では多額のカネが動く。 現地で選挙になると、有権者の家には窓から一万円札が投げ込まれる。 反対する人の田んぼにはガラスがまかれる。 それを裏で電力会社が操ってきたとされる現地の実体を、日本人が知らない現状ほど、 おそろしいことはない。 ・東電を主体とする原子力マフィアの強固な地盤をつくったのは、東電の六代目社長だっ た「平岩外四」ですよね。それこそ原子力マフィアのボス的存在だったのでしょう。 ・東電の平岩と、関西電力社長の小林庄一郎が、六ケ所再処理工場を建設した主導者です。 小林は、「(六ケ所村の)むつ小川原の綱領たる景色は関西ではちょっと見られない。 日本の国とは思えないくらいで、よく住みついてこられたと思いますね」なんて、まる でよくこんなひどいところに人間が住んでいる、という失礼なことを平気でしゃべった ことがある。 ・今の経団連会長の「米倉弘昌」(住友化学会長)も原子力マフィアの古ダヌキらしいが、 まるでダメだね。 事故から5日後の3月16日の記者会見で、「日本の原子力の曲がり角か」と質問され、 「そうは思わない。今回は千年に一度の津波だ。あれほど耐えているのは素晴らしい」 としゃべって、爆発したガラクタ原子炉を賛美している。 ここまで思考力のない人間が、財界のトップなんだ。 原子力政策の見直しを訊かれると、「ないと思う。自信を持つべきだと思う」とヌケヌ ケとしゃべる。 ・原子力マフィアのエリートといわれるのは、東大大学院工学系研究科で原子力をやって いた人間だが、実際はエリートでも何でもない。 大学に残って教授になるか、国の原子力研究機関に行くか、電力会社、あるいは原子炉 メーカー御三家に行くかして、出世するだけ。 原子力員会委員長の「近藤駿介」、原子力安全委員会委員長の「班目春樹」原子力政策 を進めている経産省」・資源エネルギー庁原子力部会長の「田中知」。 みんな東大大学院工学系研究科OBですよ。 いかに原子力マフィアが東大学閥に集結しているかわかる。 ・東大のリーダーとする学会のボス的存在が、前東大総長の「小宮山宏」らしいね。 太陽光エネルギーを導入した自宅を「エコハウス」なんて呼んでいるが、実は地球温暖 化脅威論をあちこちで煽りながら、「原発は環境保持のために必要」という論調で人々 を取り込もうとしてきた。 ・小宮山宏は、4月1日付の朝日新聞「3.11科学技術は負けない」で、「原子力は、 21世紀の半ばまでをまかなうエネルギーだと私は考えています。本来は太陽エネルギ ーなど自然エネルギーのほうがいい」「最大限の安全策を講じ、自然エネルギーの実用 化が実現するまでつないでいくしかない」と、読者を刺激しないようにやんわり肯定論 を語る一方で、「関係者の刑事責任を問わない、という免責制度を新たに導入してもい い」と、東電を露骨に擁護していました。 それにしても、彼の口から東電監査役としての謝罪の弁なんて一度も聞いたことがあり ません。あの当事者感覚のなさはすごいです。 ・また、東大大学院工学系研究科には東電から10年間で5億円が流れ込んでいた。 なにせ、前東大総長が東電の監査役なのだから驚くに当たらない。 ・ただ、京大原子炉実験所には、数少ないけれど良心的な学者がいます。 「小林圭二」さん、「小出裕章」さん、「今中哲二」さんたちは、原子力シンジケート から外れて原発の危険性をずっと指摘してきた。 おかげでこの人たちはずっと迫害されて冷や飯を食わされてきました。 定年近くになっても肩書は助教や講師のままだし、研究を続けたくても小出さんたちに は研究費もつかない。 ・「石川迪夫」は、以前から、原発の安全対策について人を小ばかにしたような発言を繰 り返しているけれど、言うことはほとんど外れている。 青森県六ケ所村で再処理工場の試運転が始まった2006年、早々に機器のトラブルな どがあって、分析作業員がプルトニウムを吸い込むという事件が起こった時、石川迪夫 が、業界紙にこう書いている。 放射能が存在する以上、管理区域で働く人は、放射線を浴びたり汚染される可能性を持 つ。この被曝や汚染の可能性を極力少なくするのが原子力安全の要諦だが、機械は故障 し人はミスを犯すもの。管理区域で働く以上、少量の汚染や被曝は避けられない。それ を例えれば、お百姓をすれば泥が付くのと同じと。 ・今は影を潜めていますが、電事連(電気事業連合会)はこれまで、さまざまな文化人を 使って「原発安全」キャンペーンをやってきました。 何の問題意識もなく電力会社の手先になってきた文化人の罪は深い。 ・ただ、原子力の旗振り役だった「大前研一」は事故直後、週刊誌の連載などで、今回の 福島事故の本質を正確に読み解いて、原子力に未来がないことを論証していた。 技術的にも群を抜いて優れた見識だった。 彼は、柏崎刈羽原発が損傷した事故のあと、はっきりと原発を見直すスタンスに切り替 えたらしく、「東京電力も国も、原発関係者がいかに無能かということを思い知った」 と言っていた。 ところが、今はまた「原子力の技術を放棄してはならない。より安全な原発に貢献した い」などと言い出して、元の推進論者に戻ってしまった。 ・東電をリーダーとする電力会社10社で構成される電事連という組織は、じつに巧妙で す。電力会社のあからさまな原発推進を目立たせないように、文化人を使って、原発が いかに安全でクリーンなエネルギーかという世論形成をしてきたのですね。 ・東電は、民放の主要なニュース番組の時間帯をスポンサーとして押さえています。 したがって、東電批判はもちろん、原発批判はタブーなんですよ。 東電の広告宣伝費は年間約300億円と言われていて、そのほかに、ほぼ同額の「拡販 費」というのがあると聞きます。 これらのカネが、安全・安心のクリーンキャンペーンやら、政財界、マスコミ記者や幹 部の接待、原子力分野のロビー活動に使われ放題なのですね。 ・興味深いのは、阪神淡路の震災とか、柏崎刈羽原発の事故とか、電力会社にとって不都 合な事件や事故が起こると、その直後から、「安全です」というクリーンキャンペーン が集中的におこなわれる。大量の宣伝費を一気に注ぎ込むのでしょう。 言うまでもなく、東電の宣伝費はわれわれの電気料金から出ているのですよ。 ・原子力マフィアといえば、原発を推進する経産省の管轄下に、規制する役割の原子力安 全・保安院があるのは、誰が見ても釈然としません。 もっとも、今回の事故での「西山英彦」審議官の、あの危機感ゼロの会見を見れば、と ても原発のチェック機関のようには見えませんけどね。 事故直後は、中村幸一郎という技術系の審議官が会見担当で、「燃料の炉心溶融が始ま っていると見ている」と、あとで考えれば核心をついたことを言っていたのに、いきな り西山に交代させられた。 ・だいたい安全委員長の班目は、福島の事故を起こした重大責任者だ。 3月12日朝、菅首相と一緒に福島原発の視察に行った時、そのヘリの中で、首相に 「大丈夫、水素爆発は起こらない」と言い続けていた。その8時間後に1号機で水素爆 発が起こった。 1号機の水素爆発の映像を官邸のモニターでみた班目は「ああーっ」と叫び、頭を抱え てうずくまったのだそうです。 ・班目はかつて浜岡で、住民から”デタラメハルキ”呼ばれていた。 2007年2月、静岡地裁でおこなわれた浜岡原発運転差し止め裁判で、中部電力側の 証人に立って、非常用発電機や制御棒など重要機器が複数同時に機能喪失するという事 態は想定していないのかと原告に問われ、堂々と「想定しておりません」と答えた。 こんな電力会社の回し者が、どうして国民を守る案銭委員長なんだ! ・歴代の原子力安全委員会の委員長は、みんなどうしようもない。 1990年、当時の内田秀雄委員長(故人)が原発の安全設計審査指針を決定した際、 「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復 が期待できるので考慮する必要はない」と、事故の可能性を切って捨てています。 ・1991年2月に関西電力美浜原発2号機の蒸気発生器の細管でギロチン破断事故が起 こると、安全評価を担当していた内田は「やむを得ない事故だった」として、まったく その深刻さを原発の安全解析に取り入れなかった。 どんな事故が起ころうが反省がまったくない。想像力の欠如としか言いようがない。 ・2010年10月に、菅首相自ら原発セールスマンとなってベトナムの首相と会談し、 100万キロワット級の巨大原発2基の建設を日本が受注することで合意しています。 原発1基を建設するのには5000億円程度の巨額な金が動くわけで、まさに原発特需 と言いたいところですが、ベトナム側もしたたかで、資金調達や燃料供給、使用済み核 燃料を含めた放射性廃棄物の処理などについての「条件」を日本側に求めている。 放射性廃棄物の処理に関しては日本国内でも未解決のままだというのに、そんな条件を 受け入れていったいどうするのか。それじゃカラ手形じゃないかと僕は見ているのです けどね。 ・使用済み核燃料の最終処分なんて、日本国内でもアメリカ、ヨーロッパでも、どこも引 き受け手がなくて、将来も100パーセントあり得ない。 ベトナムに高レベル放射性廃棄物の最終処分場をつくることは不可能ですよ。 ・したたかなベトナムの振る舞いを見ていると、どうも日本に引き取らせようとしている のではないかと思う。 日本には、一応、青森の六ケ所村の再処理施設があるのでしょう。 だから向こうでは使用済み核燃料が日本にとってゴミだとは思ってないのですよ。 ・日本で、高レベル放射性廃棄物を管理処分しているのがNUMO(原子力発電環境整備 機構:2000年10月設立)という組織です。 何が「環境整備」か、なんで放射性廃棄物管理機構と名乗らないのかと腹立たしい限り だけど、このメンバーを調べると、あおの「もんじゅ」の事故を起こしたウソツキ動燃 の分身だからね。 ここの理事長が「山路亨」、元東電の役員だった男だよ。 東電の違法で不当な事故隠し、データ改ざん、検査逃れの犯罪的行為は数えきれないが、 山路たちの不正のおかげで、2003年には東電のすべての原発17基がストップした。 こんな前歴の持ち主がNUMOの理事長で副理事長が元経済産業大臣官房付の樋口正治。 このマフィアたちが最も危険な放射性廃棄物の管理処分を進めているんだから寒気がす る。 しかも、このNUMOの評議員に東電の清水社長と一緒に名前を連ねていたのが、前原 子力安全委員会委員長の「鈴木篤之」。 彼が電力会社の幹部と組んで、放射性廃棄物の最終処分場を日本各地のつくらせようと 画策している。 ・「原子力環境整備促進・資金管理センター」というのは、「核燃料サイクル事業」推進 の名目で、再処理と放射性廃棄物の最終処分のための積立金を電力会社から集め、管理 している団体だが、なんと3兆円を超える巨額資金を持っているという。 これ、みんな電気料金からとられているのですよ。 ・復興資金のための増税とか、電気料金値上げとか、政府の周辺から聞こえてきますが、 まずその”資金”を被災者への賠償金にそっくり充てるべきですね。原子力マフィアには そういう”裏資金”がうなるほどあるのではないですか。 ・そもそも、原発事故の損害賠償について電力会社に責任がないことが、最大の不条理だ。 自己責任を明確にすれば、電力会社は原発を持たなくなるはずだと思わないかい。 原発災害の賠償のために増税だとか、電気料金を値上げするだなんて、許されると思っ ているのか。 まず役員報酬をゼロにし、全社内を完全に合理化した上で、莫大なカネを投じて日本の 腐敗を拡大した一切のテレビコマーシャルを禁止し、保有株や不動産をすべて売り払わ せて、あるだけのしきんをすべて吐き出させ、パンツ1枚にしてからの話だ。 ・NUMOがどんな子供だましの宣伝文句で地元民をだまそうとしているか。 高レベルの放射性廃棄物を「四重の壁」で守る地層処分だという。まったく地元住民を なめた説明です。 バリア1は、ガラス固化体で、その周りを鉄の容器で包みます。その上から粘土で固め ます。それを深いところに埋めます。このあたりは岩盤です。大丈夫です。 という子供だましの絵を描いてね。 薄っぺらいガラスと鉄と粘土、そして、こわいのは第四の壁が「天然バリア」だという。 人間が住み、農作物をつくっているこの地面を「バリア」だと言う奴らだ。 地面を深く穴を掘れば必ず地下水を貫通し、埋めた放射性廃棄物に水が浸入して、長い 時間の中で放射性物質が流出していくだろう。 これが農作物に入ってくる。生活用水にも入ってくる。そして川や海にもしみだしてい く。 ・地震を起こす断層でわかるように、日本の地下は亀裂だらけで、強固な岩盤なんてない に等しい。 しかも、火山活動が盛んな地震国ときているのに、どこにそんな危険なものを生める場 所があるというのか。 ・2008年に、2キロ四方が陥没して山が丸ごと一つ消える大崩落を起こした「岩手・ 宮城内陸地震」がありました。 実は、動燃が長い間秘密に調査していた放射性廃棄物の最終処分場の「適正地区」とし て、このあたりの地震多発地帯が多数選ばれていたのだよ。 ・現在、NUMOをはじめとして、放射性廃棄物に関する研究のほとんどが、地底に放射 性物質が流れ出た後の地下水中の挙動を調べることに費やされている。 そして「地下水中では放射性物質は流れない」とデタラメの報告をしている。 誰がそんな非科学的な話を信じますか。 ・僕が今回唖然としたのは、大気中のかなり高い数値の放射然が検出され始めても、政府 発表をはじめ学者たちのほとんどが「ただちに健康に影響するレベルではない」と延々 と言い続けたことです。揃いも揃って「大丈夫」の連呼ですよ。 ・政府の広報係に過ぎない枝野官房長官は、人の話を受け売りするしかない原子力の素人 だからともかく、メディアや一般市民に対して、3・11以降、「放射能安全論」を流 布した学者たちの発言をちょっと検証してみましょう。 ・「長瀧重信」;(3月31日) スリーマイルではこれまでに健康被害は報告されていない。チェルノブイリでも、 事故直後の急性放射線障害を別にすれば、小児甲状腺がん以外の健康被害は認められ ていません。 ・「山下俊一」;(3月21日) 放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来 ます。これは明確な動物実験でわかっています。酒飲みの方が幸か不幸か、放射線の 影響少ないんですね。決して飲めてということではありませんよ。笑いが皆様方の放 射線恐怖症を取り除きます。でも、その笑いを学問的に、科学的に説明しうるだけの 情報提供がいま非常に少ないんです。 ・「高村昇」;(3月21日) ある一定の線量は人間のためには害にはならない。むしろベネフィット(便益、恩恵) になる。X線を使うとか、胃の透視に使うとか・・・。 この原子力発電所の事故による健康リスクというのは、非常に、と言ってはいけませ ん。全く、考えられないと言ってもよろしいかと思います。 ・「神谷研二」;(3月16日) 3月13日午後に原発周辺で検出された毎時1557マイクロシーベルトという放射 線量自体は、測定地点にいても健康障害を引き起こすほどではないだろう。 ・長瀧は、福島県内の児童の20ミリシーベルト無害論にお墨付きを与えた張本人。 そして山下、高村、神谷が揃って福島県に放射線健康リスク管理アドバイザーとして雇 われ、20ミリシーベルトでも健康に影響はないどころか、その5倍の「年間100ミ リシーベルト以下なら心配ない数値」と話して回り、文部科学省の基準に対して激しく 抗議する親からどなりつけられてきた。 ・危険な原発内で働く労働者でさえ「年間20ミリシーベルト」を超える放射線を浴びる 人はゼロですよ。ほとんどの人が年間5ミリ以下だというのに、その4倍を児童に浴び せるとは、殺人に等しい。 ・そもそも、東電の大失態によって被曝させられたうえに避難まで強いられ、生活基盤を 根こそぎ破壊されたた福島の人たちが「クヨクヨ」するのは当たり前のことです。 しかし、そんな人たちに向かって「クヨクヨするな」と言うのですから、本末転倒です。 そんなこともわからないようなら、医師である以前に人間としても失格です。 ・「諸葛宗男」;(3月14日)(3月30日) いまの汚染レベルは、現場に1時間立っていても、レントゲン検査の10分の1 原爆実験が盛んだった時代には、日本中どこでも今くらいの値は当たり前に測定でき ていた。それも今は1000分の1に減っている。官房長官も安全だと言っている。 過剰な反応はよくない。 ・「星正治」;(3月15日)(3月17日) 1分浴びただけなら放射線量は60分の1となるわけで、一瞬ならば、そうした健康 被害が出るわけではなく、また距離が離れると放射線量は減る。 浄水場で水を濾過する際、細菌やゴミと同時に放射性物質も取り除かれ、人体に心配 ないレベルになる。過剰な心配をする必要はない。 ・「前川和彦」;(3月16日) 一連の事故で放出されたのは、核分裂生成物質を含む気体で、核燃料そのものが爆発 したわけではない。これらは風に乗って運ばれるが、遠方で観測されてもごく微量の ため、健康に影響を与える可能性は低いと思われる。被ばく線量が150ミリシーベ ルト以下なら急性の健康被害が出ることはなく、また100ミリシーベルト以下なら、 将来がんになるなどの長期的な影響もないと考えられている。避難や屋内退避の範囲 は、ある程度、安全の幅をとって設定されている。30キロより遠い地域の人は特に 対策をとる必要はないが、もし心配なら外出を控えることだ。 燃料が溶ける「炉心溶融」が起きても液体状なので、格納容器が完全に破壊されてい なければ封じ込めることができる。チェルノブイリ事故の場合は爆発によって放射性 物質を含んだ死の灰まき散らされて、多くの人が汚染されたが、今回はなく爆発が起 きているわけではない。溶融した燃料が外に漏れないようにすれば、大規模な放射能 汚染が起きる可能性は低い。住民はパニックを起こさず、冷静に対応してほしい。 ・「寺井隆幸」;(4月1日) IAEAや他国がいろいろな基準を言うが、ここは日本なので、日本政府が定めた基 準に絶対服従。他の基準とかなんとかごちゃごちゃ言っても関係ない。 (高濃度の放射能が漏れていることについては)それは問題ありません。なぜなら原 発周辺に人はいないし、30キロ圏内は屋内退避になっているから、人への害はあり ません。 ・「松本義久」;(3月21日)(3月30日) (乳児にも300ベクレル以上の水を飲ませてもいいですか?と聞かれて)全然大丈 夫です。 (現場に向かう東京消防庁隊員へ向かって)250ミリシーベルトならまったく問題 ありません。被曝でダメになっても精子はまた新しく再生されます。遺伝子の神様が あなたたちの精子を守ってくれています。 ・「奈良林直」;(4月3日) 食塩の致死量は200グラム、プルトニウムは32グラムなんですよ。それくらいの 毒性なんです。 「渡辺正己」;(3月21日) 国際的な報告書では年間100〜200ミリシーベルトという低い線量域での影響を 測るのは難しいとされます。低い線量でも健康に害を与えると仮定しても、発がん率 はおよそ100人に1人。放射線の被曝がなくても100人のうち50人はがんにな るので、あまり影響はないと予想されます。 ・「秋葉澄伯」;(3月24日) 放射能の検出が厚生労働省が定めた暫定規制値以下なら、健康への影響は全く心配な い。放射性ヨウ素は、甲状腺という組織に集りやすく将来、がんになるリスクを高め る懸念があるが、暫定規制値は相当ゆとりをもたせている。たとえ上回った場合に一 時的に飲んだとしても問題はない。現状なら障害は出ない水準といえる。この程度な ら、放射線よりも喫煙や食生活、運動などの生活習慣のほうが健康に大きく影響する。 放射線が危ないと過剰に気を使い、入浴をやめたり水を飲まなくなったり、生活を乱 すほうがずっと健康に悪い。 ・「島浦充佳」;(3月27日) 水の問題では妊娠中のお母さんが水を飲んだらどうなるのか。あるいは、授乳中の母 乳は大丈夫なのかと不安視する声もありますが、チェルノブイリ原発事故でも、周辺 にはたくさんの妊娠中の女性がいましたが、事故後、奇形が生まれたとか甲状腺がん にかかったという報告はほとんどありませんでした。安心してください。 ・「三橋紀夫」;(4月3日) (高濃度汚染水につかり、くるぶしから下に推定2000〜3000ミリシーベルト の放射線を受けて千葉市の放射線医学総合研究所に入院した作業員二人について) 強い放射線を受けても体の一部に限られていれば、大きな健康被害が出るとは限らな い。 ・「米原英典」;(4月5日) 現状では放射性ヨウ素が食品を通じて体に入っても、気にする必要のない数値だ。 必要ヒ以上に怖がらないで。 ・「中村仁信」;(3月27日) 放射線にあたってどうなるかというと、活性酸素が増えるだけなんです。活性酸素っ て、運動しても増えていますよね。呼吸しても出てきます。それがちょっと多めに出 る。それだけのことなんですよ。 ・社会原理的に考えると、こういう特異な人種だけがメディアに登場することは、簡単な パズルです。 この集団は、元々放射線の有効利用を飯のタネにしている人間たちだから、「放射能の 危険性」を必死に否定しないといきてゆけない。 幼い子供たちの体より自分の給料や役職のほうが大事なのだから、何ともあわれな人間 だと思います。 電力会社がテレビ局に根回しして、営業部を押さえ込み、このロボットのような人間た ちを連れてくるのだから、みんな言うことはこわれた蓄音機と同じだ。 ・国の安全審査を骨抜きにし、原発の耐震性や安全性をなおざりにした人物、それが”活 断層カッター”の異名を持つ「衣笠善博」です。 彼が”活断層カッター”といわれる由来ですが、原発建設予定地にある活断層を意図的に 「過小評価」して、耐震設計にコストをかけずにすむよう、電力会社に有利な審査をす るところから、そう呼ばれるようになったのです。 ・どんなに長い活断層があろうとそれを「過小評価」して問題ないものとして、保安院や 原子力安全員会と組んで平気でゴーサインを出してきた。 福島第一、第二原発の近くにある双葉断層も、衣笠が「問題なし」としてゴーサインを 出した。 きっと今は素知らぬ顔をして、ほとぼりが冷めるのを待っているのだろう。 ・今回の大地震では、国が「活断層ではない」と判定していた原発近くの断層も本震や余 震で動いています。 例えば、福島第一原発と第二原発から南に40〜50キロに福島県いわき市にある「湯 ノ岳断層」などです。 こういったものに保安院や衣笠は「12万〜13万年前以降の活動はない」として、 活断層ではないとのお墨付きを与えていた。 そしてなにより、東日本大震災を引き起こした海底断層のことを、衣笠はまったく考慮 できなかった。 彼は海底断層に関しても「権威」として振る舞っていたのですよ。 ・衣笠と彼の周辺を相当厳しく取材したのですが、驚いたのは電力関係者の間で「衣笠詣 で」という言葉で、いかに彼が絶対的な権力者として電力会社に君臨してきたことがわ かります。 ・呆れたことに、衣笠は、電力会社に技術指導する一方で、原子力安全・保安院で審査す る委員も兼ねていたのですよ。 ・島根原発2号機が運転開始した1989年頃まで、「近くには原発の耐震性に影響を与 えるような活断層はない」と言っていた中国電力が、1998年に突如、原発から2キ ロ離れたところに8キロの長さの活断層があった」と言い出した。 その背景にあるのが、国の定めた当時の耐震設計審査基準です。 10キロの活断層が引き起こす地震のマグニチュードは6・5とされ、それに耐えられ るよう耐震設計をしなさい、ということになっていた。 つまり8キロとされた活断層は、その基準内に収まっているから問題ないというわけで す。 実はその発表の裏で電力会社にそう言うよう入れ知恵をしていたのが、保安院側で耐震 審査に当たっていた”活断層カッター”だったのです。 ・許可を申請する側と、それを審査する側の両方を同じ人物が兼ねる。 原子力マフィアによくある話だけれど、衣笠の場合はとくに露骨だね。 ・当時、安全委員会の「耐震指針検討分科会」委員をしていた神戸大の「石橋克彦」教授 は、お手盛りであまりに無責任な審査の実態に激怒して、2006年に委員を辞任しま した。 石橋教授は「原子力における活断層研究の世界は異常だ。非常に特殊なごく一部の人が 牛耳っている。電力側と審査側の両方に同じ少数の専門家が深くかかわっているという、 信じがたいことがまかり通っている」と僕におっしゃっていました。むろん、衣笠を指 してのことです。 ・衣笠の取材を続けていたら、島根原発だけでなく、それはもうあちこちで活断層をカッ トした「過小評価」をしていたことが明らかになったのですよ。 北陸電力の志賀原発でも、「能登半島の沖合で確認されたのは、短い3本の活断層だ」 と結論づけてゴーサインを出した。 その根拠となったのは、衣笠と北陸電力社員らでまとめた研究論文なのです。 ところげ2007年に発生した能登半島地震によって、そのデタラメがバレてしまう。 地震後の調査で、この活断層は独立した3本ではなく、じつはすべてが1本につながっ ていて、その長さは実に18キロ以上にも及んでいたことが判明したのですね。 しかし、衣笠は以前書いた論文のことにはまったく触れず、そのまま頬かむりですよ。 ・大量のプルトニウムを集めている青森県六ケ所村の再処理工場の敷地内に走る2本の活 断層も、1988年当時、通産省の工業技術院・地質調査所(現・産業技術総合研究所) 技官で地震地質課長だった衣笠が、知って隠していた事実もある。これは内部告発によ って明らかになったことです。 何度も言いますが、六ケ所村に原発震災が起こったら福島どころの話じゃない。 日本全土、世界が汚染される大災害になる。 それをあんなゆるい耐震基準でゴーサインを出してしまったのだから、”活断層カッタ ー”以外のなにものでもない。 ・このとき衣笠の上に立っていたのが、所長だった垣見俊弘だ。 ほとんどすべての電力会社の原発立地に関わり、原子力委員会の原子炉安全専門審査会 の委員や通産省の顧問をとつめ、全国で「”地質は安全”の保証人」と批判されてきた 人物です。 衣笠はその垣見と一緒に、柏崎刈羽原発の断層についての安全審査に関わって、東京電 力が活断層を無視していることを放任していた。 これが新潟県中越沖地震で大事故につながったのだ。 ・2004年にもマグニチュード6・8の新潟県中越地震が内陸で起こっていますが、 あの時、観測史上最大の2515ガルを記録した大地震でも、柏崎刈羽原発はタカをく くって運転を止めなかった。 3年後の2007年の中越沖地震は内陸ではなく海側で、震源が原発からわずか23キ ロという近くだったので、発電所を直撃したわけです。 この時、3号機タービン建屋では2058ガルの揺れを観測しています。 浜岡原発の耐震性は1000ガルだと威張っているけれど、2000ガルだよ。 そのために、原発敷地内の地盤はあちこちで隆起や陥没を起こして変圧器から約100 メートル離れたところで最大1.6メートルも陥没している。これが3号機の変圧器火 災を引き起こした。 消火活動も、もたついたのです。原発に配置されていた自前の消防隊では消化しきれず、 地元の消防に応援を頼み、やっと消すことができたのです。 私たちが知るべきこと、考えるべきこと ・政府は復興税だ、消費税だと言って増税をたくらみ、東電は東電で、電気料金値上げで 福島事故の補償金や賠償金を国民に払わせようとしている。 お人好しの国民は「東北が少しでも早く復興するなら仕方がない」と、増税も電気料金 値上げもやむなしという声が多数を占めているらしいが、それはごんごどうだんで、許 されることではない。 被害者である国民が、加害者である東電が払うべき金を支払う道理など、金輪際あって はならない。 法治国家で、こんなことは絶対許してはならない。 ・事故処理の原資が税金であろうと電気料金であろうと、結果的に負担を強いられるのは 私たち一人ひとりの国民であることに変わりはありません。 ならばいっそのこと、事態がより明確になる「電気料金」で負担してはどうか。 税金で賠償費用や事故費用を賄った場合は、東電の責任がうやむやにされます。 一方、世界一高い電気料金がこの事故によってさらに高くなれば、嫌でも東電の責任や 原発のコストに世間の関心は向く。 コスト面、すなわち経済原則の面からも脱原発を進めていくということですね。 ・僕が気になっているのは、被災地である東北出身の政治家たちの動向なのですね。 家族を亡くした国会議員が被災地救援で奮闘していることは知っています。 でも、いわゆる「大物政治家」の姿がなかなか見えてこないわけです。 民主党で言えば、元々自民党で原発政策を推進し、福島や青森に核施設を立ててきた、 「小沢一郎」(岩手)「渡部恒三」(福島)といった人たちです。 彼らが原発推進に協力してきたことで一銭の利得も得ていないとは言わせません。 ・小沢一郎が、自民党幹事長時代に剛腕を振るわなければ、六ケ所村の核燃サイクル基地 は建ちませんでした。 核燃基地建設の是非が最大の争点となり、事実上の「天下分け目の戦い」となった、 1991年の青森県知事選の時、長わが青森に乗り込み、敗色濃厚だった核燃推進派の 現職知事陣営にテコ入れし、すさまじいまでの締め付けをしたことで形勢を逆転させた。 僕はおのことを決して忘れません。 ・渡部恒三もまた、自民党時代に原発を福島に担ぎこんだ張本人です。 1980年4月の衆院商工委員会で質問に立った渡部は、「政治は、原子力は安全であ るということを国民にもっと知っていただかなくちゃならない」と冒頭で語った後で、 こう発言している。 「原子力発電所の事故で死んだ人は地球にいないのです。ところが自動車事故でどのく らい死んでいますか。人の命に危険なものは絶対やっちゃいかんという原則になれば自 動車も飛行機も直ちに生産を中止しろということになる」 ・それに加え、1984年、日本原子力産業会議の新年名刺交換会の席上で、当時厚生大 臣だった渡部はこんなことを語っていた。 「私はエネルギー問題を解決する最大の課題は原発の建設にあるとの政治哲学を持って いる」 「福島県には日本の原発の30%近くがあるのが、そこで育って暮らしているこの私が この通り元気いっぱいなのだから、原子力発電所を作れば作るほど、国民の健康は増進、 長生きし、厚生行政は成功していくのではないかと思う」 ・その同じ渡部が、福島原発事故発生後の4月の衆院予算委員会で、トップバッターで質 問に立ち、目を潤ませ、肩を震わせながらこう語りました。 「もちろん責任は東電です。この40年間、あの原子力発電にあぐらをかいてきた東電 です。徹底的に東電の責任は追及しなければなりません。しかし、(福島の)地域の人 たちは、東電に協力したんじゃありません。国策だから、国民のために大事だからとい って協力して来たんです。そして、その原発地域の皆さんが今どんな生活をしているか。 私は、休みのとき、あの関係の地域の人にお目にかかると涙が止まらない。しかし、 45年間、国の為に頑張ってこられた人が、今、妻を失い、かわいい子どもを失い、今 日の生活、今日の生活どうしようかと、本当に苦しい立場にあるんです」 ・誰がそうしたのですか?「政治哲学」はどこにいったのですか。 地震に見舞われ、津波が押し寄せる福島に原発なんかをつくってしまって申し訳ないと、 ここで陳謝するのなら納得がいきます。 ところが、自らの責任には一切触れようとしない。 ・まさに「がんばれ、ニッポン」という子供だましのスローガンで、泣き落としから脅し まで使って、連中は利権システムを死守しようとしている。 実際、原発震災直後に、政府は東電と組んで「電力が足りなくなる」と国民を脅して無 意味で差別的な計画停電を実施した。 あれはあきらかに「原発が稼働しないと電気がなくなるぞ」と、国民を脅して誘導する プロパガンダでした。 「海江田万里」経産相が出てきて「このままでは大停電が起こって、都市機能が麻痺す る」と国民に節電を呼びかけたが、あんなことは大嘘です。 減の篤い外の電気の供給をいかに増やすかが、国民を衛政治家としての海江田の本来の 仕事であるのに、そんな能力はなく、東電のスポークスマン化していた。 恥ずべきことです。 ・非難の矛先をそらすための計画停電と、「原発を停止したら、停電生活になるぞ」とい うネガティブ・キャンペーンが見事功を奏して、事情を知らされない国民の半数津恪が まだ「原発の現状維持は必要」とアンケートで答えている。 ・新聞が実施するそうしたアンケート調査にも、僕は疑問を感じるのです。 震災と原発事故の発生からほどなくして、読売、東京の二社が世論調査をしています。 基本的には菅内閣の支持率を調べる体裁を取りながら、ちゃっかり原発のことも訊ねて いる。 この「新聞世論調査」記事から伝わってくるメッセージは「自己が起こっても原発は必 要」という以外の何ものでもありません。 事故が収束もしていないうちからこんなアンケートを取ることに、いったい何の意味が あるというのでしょう。 ・このアンケートを取った時点では、福島の土壌や海や地下水からストロンチウムが検出 されたことも、飯館村がその後、全村避難に追い込まれていくことも、何の罪もない牛 たちが殺されていくことも、コウナゴが放射能で高濃度の汚染に晒されていることも、 福島の子供たちが「年間20ミリシーベルト」の被曝を強要されていることも、そして 今回の事故が「レベル7」であることも、何も報じられていないわけです。 ・これまで正しい電力事情を調べてこなかったマスコミには、驚きます。 彼らは、電力会社の言い分だけを聞いて「電力部族」を煽り、産業と一般庶民に要らぬ パニックを煽ってきた。 これでは、いかにして原発を延命させるかに腐心しているのが、テレビや新聞などマス メディアだと批判されても仕方ないでしょう。 民主党政権も像です。 浜岡原発を一時的に止めたことは強く支持しますが、本気で「国民の安全を考えて」決 断したとは思えません。 ・「石原茂雄」・御前崎市長は寝耳に水だったようで、交付金はどうなる、約束が違うと 怒りまくっていましたね 一方、差し止め訴訟の原告弁護団長、「河合弘之」弁護士は政府の決定を「歴史的な大 英断だ」と評価した。 「福島原発事故が発生して、対応しきれない恐怖を味わったことが決断につながったの ではないのか。福島を制圧できていない今、仮に浜岡原発でも事故が発生したら、東京 は挟み撃ちになる。その恐ろしさを想定したのではないか」(石原) 「菅首相の停止要請は勇気ある英断だと思います。これまで指導力を発揮して何かをや ったことは、一度もなかったと思います。彼は首相になってはじめて、首相らしい仕事 をしたのではないでしょうか」(広瀬) ・民主党が、「浜岡停止」で国民に安全をアピールしている裏で、自民党内で「原発維持」 に向けた動きが始まっているので、この厚顔無恥に呆れる。 原発推進派の議員の集まり、「エネルギー政策合同会議」なる新しい政策会議を発足さ せている。 電力需給対策だのエネルギー戦略だのと言っているが、要は「原発を守る会」だ。 長いこと原発を国策として進めてきたのは自民党ですからね。 委員長は元経産相の「甘利明」、メンバーは旧通産省出身の「細田博之」元官房長官、 「西村康稔」衆院議員らで、そこに元東電副社長で現在は東電顧問の「加納時男」が 「参与」としてかんでいる。 ・加納時男とは、国会議員ではなく、電力会社の代表として業界から送り込まれた男で、 現在でも東京電力役員と言っていい。 そういうロビイストが国会を動かしている。 骨の髄まで原発利権につかって、福島事故の反省などこれっぽっちもない。 「新増設なしでエネルギーの安定的確保ができるのか。二酸化炭素排出抑制の対策がで きるのか。天然ガスや石油を海外から購入する際も、原発があることで有利に交渉でき る。原子力の選択肢を放棄すべきではない」(加納) 「東電つぶしたら株主の資産が減ってしまう」(加納) 「原子力損害賠償法には『損害が異常に巨大な天災地変によって生じたときはこの限り ではない』という免責条項もある」(加納) 「低線量の放射線はむしろ体にいい」(加納) ・世論操作を見ていると、これからも原発を維持しようとする連中の動きが露骨だね。 誰もが鋭く監視しなければならないのは、東電が政府と結託して、福島の事故を、 「安定した」 「もう放射能は大丈夫」 と、あたかも事故を収束させたかのような雰囲気にし、国民にニュースを忘却させるこ とだ。 あんな根拠のないカラ工程表を国民に示して、6ヶ月で事故処理を納めますなどという 気休めを国民が信用できるはずがない。 清水社長が福島の避難民にと下座しても、まったく謝罪になっていない。 ・東京電力が計画停電を強行し、「原発がないと停電するぞ」という脅しをかけたおかげ で、誰も予想しなかった、面白いことが日本全土に起こりつつあるのです。 今夏は、大企業が、計画停電などで工場を止めることなどできないと、電力会社依存を 脱却しようと軒並み自家発電を始めたので、原発なしでも全く電力不足にはならないこ とが実証される状況です。 電力会社は、計画停電によって重要な大口ユーザーを失い、墓穴を掘ったようですね。 企業が自家発電を持てば、それがわたしの望んでいた「分散型電源」になり、理想社会 に向かいます。 ・わが国は、大量の発電能力を持った天然ガス火力の発電所を抱えながら、その稼働率を 5〜6割に意図的におさえてきたのです。 天然ガス火力とは、最もクリーンで、すべての先進国で現在の発電のエース設備なので す。さらに石油火力もある。 ところがこちらは驚いたことに、1〜2割の稼働率しかない。 これらの火力をフル稼働させれば、すべての原発を止めても、ピーク時にまだ2割ぐら いの火力が余ってしまう。 これに、ほとんど遊んでいる水力を加えれば、とてつもない発電能力を持っていること になる。 ・今回の大震災後に東電が計画停電を強行したのは、火力発電所も一時的に被害を受けた からです。 津波をかぶっただけでなく、輸送路が途絶えて発電用に燃料搬入に支障が出たせいもあ ります。 だから震災後すぐ「壊れた火力発電所を復旧させれば」何も問題は起こらなかった。 原発に比べたら火力発電所の復旧は容易ですからね。部品が壊れたら取り替えるだけで、 たちまちトラブルを解消できる。 ・その上、東電や中電などの電力会社だけが電力を供給していると思っている人が多いで すが、じつは従来の電力会社以外にも電力を供給できる企業がたくさんあるんですよ。 今回も震災と福島の原発事故による電力不足を受けて、素材メーカーや大手商社など、 卸電力事業を手掛けるIPP(独立系発電事業者)が供給力の引き上げに動いています。 これらの企業は、もともと自社の工場などで使う発電機を所有して、なおかつそれ以上 の発電能力を持っているので、一般にも電力を売ることができる業者なのです。 この電力をフルに活用すれば、日本は将来にわたって、停電など100パーセント起こ りえないのですよ。 ・化石燃料の可採埋蔵量は、2008年末で天然ガスが60年、石炭が122年、石油が 43年だと言われていましたが、このような数字を口にすると、エネルギー業界でわれ われてしまうのですよ。 化石燃料の枯渇論を金科玉条のように論ずる人間たちの言葉を聞いていると、エネルギ ー業界の最近の実相を知らない、時代に遅れた素人の発言ばかりです。 全世界で新たな天然ガス田が続々発見されている。実に2009年までの10年間で埋 蔵量が3割近く増加していて、今後も大量に発見されることが業界の常識になっている のですよ。 ・これからの天然ガスは、通常の油田やガス田から生産される「在来型」と呼ばれるガス ですが、これと違って、「非在来型」と呼ばれるコールベッドメタン、タイトサンドガ ス、シェールガス、メタンハイドレートのような新たな天然ガス資源の存在が次々と確 認され、その埋蔵量は、従来の天然ガスの5倍もあることがわかっている。 つまり従来型天然ガスの可採埋蔵量60年の6倍があることになで、単純計算で360 年、実際には400年と見られている。 ・しかし、今の日本のメディアを見ていると、「非在来型」といわれる天然ガス資源の話 など、全く出てきません。 原発の電気に対抗して出てくるのは、太陽光や風力などの自然エネルギーの話が大半で す。 ・電力会社が、家庭の太陽光発電の余った電気を買い取っていることを知っているでしょ う。なぜ電力会社がそんなことをすると思いますか。 太陽光ならいくら普及しても、原発の利権を食い荒らすことなどあり得ないと知ってい るからなのです。そんな微々たるもので、原発はまったく揺るぎません。 ・日本の電力消費は、家庭用が3割弱で、残りの7割以上を産業用と業務用が占めていま す。 しかも、日中はみんな仕事や学校で家を出ますから、家庭にほとんど人がいません。 したがって日中ピーク電力の問題はほとんどが産業用・業務用の問題なのです。 電力問題を、もともとあまり電気を浪費していないわれわれ庶民が、自分の生活やライ フスタイルから考えても解決しない。 電力の大部分を消費している産業界が、その日その日のお日様や風の気まぐれに頼るの は自然エネルギーで需要を賄うわけにはゆかないことは、工場やオフィスにつとめる人 間であれば、誰でもわかるはずです。 ・太陽光発電が原発の代替になるなど、少女趣味の幻想に過ぎません。 100万キロワット級原子炉1基分の電気をソーラーで賄おうとすれば、東京の山手線 の内側と同じほどの面積に太陽電池パネルを敷き詰めなければならないのですよ。 原発は5000万キロワットあるのだから、つまりその50倍の面積が、太陽電池によ って占められてしまう。それ自体が、おそろしい自然破壊になってしまう。 ・ソーラーはすぐれているし、私も普及すべきだと思うが、現在の発電効率から計算する と、面積から考えて無理が大きすぎる。 少しずつ家庭の屋根など都会中心に普及すべきもので、メガソーラーのような大規模な 太陽光発電所は、設置すべきではないですよ。 まして休耕田を利用なんて、論外だ。本来の自然保護や、食糧自給率の向上に反する。 ・その意味では、コンパクト天然ガス火力のほうが、はるかに自然環境への負荷が小さそ うですね。それに風力発電も産業用エネルギーとしては不向きです。 ・都会で使えない風力発電は、ソーラーより恐ろしい自然破壊を起こしますよ。 100万キロワット級の原子炉1基分の電気を風力で賄おうとすれば、東京の山手線の 内側の三倍に等しい面積に風力発電機を設置しなければならない。 つまりその50倍の面積(山手線の内側の150倍)が、風力発電機によって占められ てしまう。 加えて、大型風力発電による数々の被害は、全国で猛烈な反対が起こっている通り、 すさまじいものです。 風力発電機は海岸線と山の稜線に敷きつめられるので、大変な自然破壊を起こしますか ら、私は絶対に反対です。 ・軽油や灯油などの化石燃料を燃やして発電するガスタービン発電のほうは、すでに電力 各社の火力発電所で採用されていますけど、ガスタービンを一歩進めて多様な化石燃料 を燃やせるようにした「コンバインドサイクル発電」は、最近の火力発電所の主流にな ってきていますよね。 これはガスタービンから出る高温の排気ガスをボイラーに入れて蒸気を発生させ、その 蒸気で蒸気タービンを回転させて発電するもので、発電効率は50%以上に達し、環境 適合性や経済性の面でも優れているといわれています。 ・大規模に発電して電力消費地に高圧送電線で送電する原発のような「集中型電源」に対 して、高圧送電線を必要としない地域密着型の小規模な発電システムを「分散型電源」 と呼んでいますが、今や集中型から分散型へ、エネルギー革命は着々と進んでいるので すよね。 一般家庭では燃料電池、また、冷蔵・冷凍庫による電力消費の大きいスーパーマーケッ トやコンビニ、デパートなどでは、小型のガスタービンである「マイクロガスタービン」 も電源に適しているとされています。 ・考えてみると、原発という機械は、核燃料の発する熱でお湯を沸かし、出てきた蒸気で タービンを回して発電する「蒸気機関」ですよね。 爆発した福島第一原発1号機は、1971年に営業運転を開始した「アラフォー」原発 です。 その核燃料が今、福島やその周辺で、これだけ人の生命や生活を脅かしているわけです。 なぜそんな古典的な発電技術にいまだに固執し、脱却できないのか。 電力会社や御用学者たちにとって、それほど原発は儲かり、自分たちだけを潤すことが できる”打ち出の小槌”だったのだ、ということなのでしょうね。 ・私は今、産業界の人たちと、高濃度の放射能汚染水がこれ以上海に流れ込まないような 対策を議論しています。 東電という会社は人格的にも技術的にもまったく信頼できないので、すぐれた産業界の 知恵を結集してほしいからです。 汚染水の処理を、原子力産業と保安院、原子力安全委員会に任せておくと、 「一定基準以下の放射能は無害だ」 というこれまでの理論で、すべてを海に流すような最悪の手段をとります。それがもっ ともこわいのです。 あとがきにかえて ・3月、テレビでは政治家が「直ちに賢侯に影響が出るものではない」と語り、原子力の 専門家を名乗る御用学者は「水素爆発で原子炉建屋は吹き飛んでも、圧力容器は健全だ」 と解説をしていた。 が、しばらくすると圧力容器「健全」説は破綻し、メルトダウンしていたことが明らか になる。 ・誰が見ても最悪の状況になっているにもかかわらず、それでも「安全」「大丈夫」と叫 ぶ続ける人々がいる。 ・福島第一原発事故の発生により、入院中だった病院からの避難を強いらえ、避難中や非 難後に死亡した一般住民が多数いる。 彼らは皆、東日本大震災が「原発災害」とならずに済めば、そもそも死ぬことはなかっ た人たちなのだ。 ・原発事故さえなければ、津波の襲われた他地域と同様に、原発近隣でも命を救われた被 災者も多かったはずだ。 自然環境に膨大な放射能をバラまく重大事故を引き起こし、人命救助を阻んだ東京電力 の罪は重い。 また、そうした重大事故を未然に防ぐことのできなかった原子力安全・保安院や原子力 安全委員会も、その責任と無縁ではない。 ・彼らは「原子力ムラ」の住民であり、「原発安全神話」の担い手であり、原発利権の恩 恵を被ってきた者たちである。 彼らの刑事責任を問うのは、悲劇と惨劇を招いた関係者の悪事と不誠実さとインチキを 白日の下にさらし、責任を取らせたいからだ。 現に彼らは、責任を果たすべき立場にありながら、原発災害では何の責任も果たせてい ないのである。 |