原発の深い闇 
                        古賀茂明一ノ宮美成神林広恵
                        中田潤、藤吉雅春他

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この本は、今から20年前、あの3.11東日本大震災の1年後の2012年に発行され
たものだ。そのため内容的にはもう古いのだが、福島原発事故からまだ1年も経たない当
時の混乱ぶりが、改めて思い出される内容である。
この本を読んで感じることは、とにかく原発マネーの凄まじさだ。それは、単に原発業界
のみならず、政治家、官僚、ゼネコン、商社、メーカー、流通、学者、メディア、文官な
どなど、あらゆるところに深く浸透しており、この国そのものを裏で動かしていると言っ
ても過言ではないということである。

私がこの本を読んでとりわけ注目したのは二つある。
一つは、使用済み核燃料プールの危険性だ。この本では、水素爆発した3号機の使用済み
核燃料プールが、爆発によって崩壊し、放射線物質が飛散したのではないか、との疑いが
持たれていた。しかし、その後、使用済み核燃料プールは、たくさんの瓦礫が落ち込んで
はいたものの、崩壊は免れ無事であったことが判明しており、2021年2月には使用済
み燃料プールから核燃料の取り出しが完了したようだ。
しかし、もし使用済み核燃料プールが壊れ、プールの水が空っぽになっていたら、どのよ
うな事態になったのだろうか。野ざらしの状態で燃料集合体が再臨界を始めたのだろうか。
それを想像するとゾッとする。
それにしても、使用済み核燃料プールが4階に作られたのはどうしてなのだろうか。この
本によれば、この原発のプラントを設計したのは、アメリカのゼネラル・エレクトリック
(GE)
で、設計当時、「プールはもっと下に作るべきだ」とGEの技術者は主張したが、
上司から受け入れられず、その技術者はGEを辞めたという。何か技術的でない力が働い
て4階になったようだ。おそらく安全性より経済性の方が重視されたのではないのかと思
える。

もう一つは、”津波の想定”についてだ。東京電力では、原発への津波の安全対策として、
福島第一原発では最大で5.4〜5.7メートルを予測していたという。しかし、実際に
襲ってきたのは、高さ14メートルだった。これをもって東京電力は”想定外”としたのだ
が、果たして想定していた5.4〜5.7メートルというは、本当にまともな想定だった
のかということだ。
百年来の津波の記録を遡れば、この想定は低すぎるし、しかも、岩手や宮城の想定に比べ
て、福島原発のところだけが低いというのだ。これをどう理解したらいいのだろうか。
この問題は、10年以上経った今でも、くすぶり続けている。

2022年9月、岸田首相は、突如、原発の新増設や稼働期間の延長について検討を進め
る考えを表明した。これは2011年の東京電力福島原発事故以降、政府が避けてきた
「新増設」に初めて言及した形だ。それも、唐突に。なぜなのか。
裏で再び、原発マネーの力が働きはじめたのか。あれほどの恐怖のどん底に落とされなが
らも、10年過ぎれば、何事もなかったかのように、もとの状態に戻ってしまう。
少なくても原発の新増設の検討などというのは、福島第一原発の廃炉をすべて完了したり、
放射性廃棄物の最終処分場の問題を解決してからにすべきではないのか。
この国には、とても忘れっぽい国民性があると言われるが、改めて、そのことを実感させ
られた岸田首相の表明だった。

過去に読んだ関連する本:
原発のウソ
世界に広がる脱原発
国家と除染
天空の蜂
東電OL殺人事件


まえがき
・東京電力福島第一原子力発電所の人災事故によって、この国の本性が明らかになった。
 一言でいえば、”八百長国家”の姿だ。国民が汗水たらして稼いだカネの上澄みを、強力
 な利益共同体がかすめとる。その親玉が、原発シンジゲートだったのだ。
・利益の源泉は電気料金と税金。電力会社は事業にコストをかけるほど、利益を電気料金
 に転化できる、儲かる、原発は危険ゆえに、税金も喰いちぎるコスト高な事業だ。その
 カネに群がったのが政治家、官僚、ゼネコン、商社、メーカー、流通、学者、メディア、
 文化人・・・。つまるところ、オールジャパンの原発利益共同体である。
・原発のカネは一度喰ったらやめられない。事故以来、その事実を隠すために、大量の
 「嘘」と「陰蔽」がまかり通ってきた。
・許しがたいのは「暫定規制値」を都合よく引き上げ、被爆の実態を、国ぐるみで隠そう
 としてきたことだ。 

<隠される放射の汚染>
「使用済み核燃料プール」はどこに消えた?
(中田潤)
・3月15日、東京電力は「発電所正門で中性子線を検出」と発表した。
・中性子、使用済み核燃料プールと並ぶ、最大の「原発の幽霊」である。
・東京電力によれば、「線量は不明」。検出し、記録したのに、数字のデータがない!?
・ここから、すべての歯車が狂い始めた。中性子の3文字を「禁句」にしたことで、日本
 のマスコミは死滅した。
・なぜなら、中性子こそ、人間の最大の敵だからである。
・中性子の恐ろしさは、1999年9月に東海村JCO臨界事故でなくなった人の手が何
 よりも雄弁に物語っている。
・大雑把に言えば、莫大な数の分子の結合によって、我々、人間は存在している。この
 「くっつく力」が失われたら、人間はドロドロになって崩壊する。
・中性子は物質である。小さな粒々が皮膚の中に入り込む、とイメージしてほしい。中性
 子の持つエネルギーは、分子結合のエネルギーの10万倍、100万倍、1000万倍
 にも達する。こんなものが身体に入り込んでくると、多くの分子が一刀両断にされてし
 まう。
・もっとも危険な敵は、中性子なのだ。
・JOC臨界事故について、少しでも調べたことがある人なら、誰だってこう思うはずだ。
 「なぜ、東京電力は、中性子線の監視をやらないんだ!?」
・3月23日になって、東京電力はとんでもないことを言い出した。
 「中性子線は2回ではなく、計13回検出された」
・東京電力は、中性子線の存在自体を隠蔽し、その後、検出の回数を修正したのである。
・3月15日の枝野幸男官房長官の「会見全文」で、
 「もちろん中性子は出ない方がいいが、ごく微量検出されたという報告をしたと承知し
 ている」  
・「最も重要なのは、炉の近くで中性子線の有無を確認し、核分裂反応が連続して起きる
 臨界がわずかでも起きているかどうか知ることだ」(住田健二)
・この発言のあと、住田先生は「読売新聞」紙面から消えた。事故直後から出ずっぱりだ
 ったのに。「読売新聞」は、「原子力の権威」を消した。幽霊にしたのである。
・2011年3月15日、福島第一原子力発電所の敷地内には約800人の作業員がいた。
 彼らは、地震、津波被害の復旧作業に取り組んでいた。
・午前9時38分、4号機が爆発出火。このとき、東京電力の指示により、作業員の避難
 が始まった。4号機の火を吹いている箇所は使用済み核燃料プールに近い。爆発により
 使用済み核燃料棒が露出し、火災により、大量の放射性物質が飛散した可能性があった
 からだ。
・しかし、50人の勇敢な男たちが、現場に踏みとどまった。

・3月16日、米原子力規制委員会(NRC)グレゴリー・ヤッコ委員長は、下院エネ
 ルギー・商業委員会でこう証言していた。
 「使用済み核燃料プールの水はすべて沸騰し、なくなっていると思う」
・福島第一原発を設計したのは、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)である。
 1975年ごろ、このプラントをめぐって社内で議論になったという。
 「プールはもっと下に作るべきだ」と主張した技術者。デール・ブライデンバーさんは、
 上司からこう言われた。
 「電力会社に操業を続けさせなければ、GEの原子炉は売れなくなる」
 ブライデンバーさんはGEを辞めた。
・住田健二先生がアメリカに留学したとき、真っ先に教えられたのが、
 「核燃料を取り扱っている場所で、青白い閃光が走ったと思ったら、他人のことなぞか
 まわずにその場からとにかく逃げ出せ。そうすれば、命だけは助かる可能性があるが、
 立ちどまってもたもたしていたらおしまいだぞ」
・JOC臨界事故について、最も印象的な言葉は、
 「青い光を見た」
・青く光るプールが、屋根のすぐ下に、蓋もされずに存在する。その屋根は、地震からわ
 ずか25時間の間に発生した水素が爆発し、跡形もなく吹き飛んだのだ。
・「大量の放射線が出ていないかぎり、青い光は肉眼では見えない」「プールでは核分裂
 は起きていません。ベータ崩壊(電子線)がプール内の青い光の原因です」
 と住田先生はいう。
・ところが、小出裕章助教は、
 「使用済み核燃料から中性子線は必ず出ています」
 「使用済み核燃料の中にプルトニウム、アメリシウム、キュリウムといった放射性核種
  があります。これらは、自発核分裂、自分で勝手に核分裂してしまうという性質を持
  っているんです。核分裂したとき中性子線は出てきます」
  という。
・「9.11」以前、「テロ対策」という概念が出てくるまで、日本の原発は見学者にプ
 ールの青い光を見せていた。    
・なぜ、そんな危険な見物が許されたんか、というと、プールに十分な水が張ってあり、
 中性子線を遮断しているからである。
・「3月11日の地震のとき、制御棒が挿入されて原子炉は止まったはずだ、東京電力が
 そう言っているし、私もそう思っている」と小出裕章助教はいう。
・原子炉は本当に止まったのか?それを知る日本人は、実はひとりもいない。
・3月27日、東京電力は歴史の残る記者会見を行った。
 「2号機のタービン建屋内の水から、通常運転中の原子炉の中の水の1000万倍の放
  射性物質を検出しました」
・この水に含まれる「ヨウ素134」は1cc当たり29億ベクレル!  
・ヨウ素134の半減期は約52.5分なので、停止した原子炉の中に大量に残っている
 わけがない。漏れ出たとしても「存在しない」と言えるほどの量になっているはずだ。
・その後、朝言ったことを夜になって訂正。
 「1000万倍は10万倍の誤りでした」
 「要素134ではなく、コバルト56でした」
・「コバルト56ではなくセシウム134でした」
 夜言ったことを翌日の未明になって訂正。こんな会社を「信用しろ」と言われても困る。
・3月25日、東京電力が「クロム38を検出した」と発表。またの名を「塩素38」。
 半減期は37分あまり。
・「塩素38の検出は間違いでした。半減期が短い物質を課題に評価していたので、検出
 したと、勘違いしてしまいました」
 東京電力がこう言い出したのは、検出発表のなんと26日後、4月20日だった。
・独立総合研究所の青山繁晴さんが、福島第一原発敷地内に入り撮影を行った。青山さん
 は、3号機だけ見せてもられなかった。撮影を許されなかった。
・青山さんを乗せた車が坂を下り、2号機へと近づく。右折し・・・
 「ちょっと、停まれます?」
 撮影を青山さんがお願いすると、東電社員は、
 「瓦礫の線量が高いんで、ちょっと先まで」
・青山さんが福島第一原発敷地内に入ったのは4月22日。その4日後の4月26日に
 「週刊朝日」に恐るべき記事が載った。
・記事のよると、4月20日、原発で働く人たちは我が目を疑った。宿舎に貼り出された
 敷地内の放射線量が詳しく記された地図「サーバイマップ」に「900ミリシーベルト
 の瓦礫あり」という文字があったからだ。場所は、3号機の陸側。青山繁晴さんが車で
 通った道の右脇。すぐそばなのだ。至近距離。
・この地図が正確なら、青山繁晴さんは絶対にそこを通ることができなかった。900ミ
 リシーベルトの放射線を浴びると、造血過程の抑制が起き、治療しなければ死に至る。
・誰がこの瓦礫を片づけたのか!?この仕事を部下に命じた人間がいたとしたら、人殺し
 である。 
・「週刊朝日」のスクープに合わせるかのように、東京電力は4月24日に「サーベイマ
 ップ」を公表した。
・4月17日付の地図では、ほぼ同じ場所に5ミリシーベルトの放射線源がある。青山さ
 んがそこを通過した翌日の4月23日付の地図では、3号機の陸側に300ミリシーベ
 ルトの瓦礫が、忽然と現われるのだが、それは20日にあった900ミリシーベルトの
 瓦礫とは位置が違う。建屋に近い位置。
・そして、4月20日付の「サーベイマップ」は・・・ない!
・900ミリシーベルトの瓦礫は、忽然と現われ、消えた。
・そもそも、900ミリシーベルトの瓦礫とは、一体なんなのか?
 「爆発は3号機の使用済み核燃料プールのところで起きているわけですから、燃料交換
 機やなんかも、もちろん吹き飛ばされているでしょう。汚染されたものがあちこちにば
 ら撒かれている、というのは本当だと私も思いますが、それでも、1時間に900ミリ
 シーベルトなんていうのは猛烈なものですから、プールの底に沈んでいた燃料そのもの
 が吹き飛ばされ、建屋の外に落ちている可能背も私はあると思います」
 と小出裕章助教は語った。
・2011年3月15日の記者会見では、
 「燃料そのものが飛散した可能性は?」
 「燃料が出てきたら、400ミリシーベルトより、もっとずうっと高い数値になります
 から、その可能性はありません」
 と東京電力は「線量が低いから、プールは無事だ」と説明していたのである。
・「プールがどういう状況か、政府の見解をお伺いします」
 「使用済み核燃料プールのについて聞いているんです」
 私そう言うと、原子力・保安院の西山英彦さんが立ち上げってしまう。
 「それにつきましては・・・・」
 政府は「プール」について、頑として口を割らない。
  
緊急時迅速放射能影響予測ネットシステム(SPEEDI)は、30年以上の歳月、
 100億円以上の巨額を投じて、国が開発した。放射性物質は、風、地形などの影響
 を受けながら拡散していく。それを「迅速に」国民に知らせるシステムだ。
・政府関係者は、事故直後から膨大なデータを閲覧しながら、国民には知らせなかった。
 結果、原発20キロ圏内から、高濃度に汚染された「ホットスポット」に逃れ、そこに
 とどまった人たちがいた。その数、1万人。
・国民の生命を守れたのに、意図的に守らなかったのだから、日本は国家とは呼べない。
 国はその責任の所在すら明らかにできない。陰蔽の理由を説明できない。
・枝野幸男官房長官は、
 「データが官邸に報告されなかった」
細野豪志首相補佐官は、
 「国民がパニックになることを懸念した」
・誰も「1万人の被曝者」に触れない。1万人は、国家によって見殺しにされ、さらに、
 マスコミによって見殺しにされたのだ。
・事故から2カ月半以上が過ぎ、やっと3号機を陸側から撮影した映像が公開された。し
 かし、撮影したのはIAEA。
・この写真のどこに使用済み核燃料プールが存在するのか!?プールの上部が破壊されて
 いることはもう陰蔽しようがない!
 
東京電力・放医研はなぜ「被曝検査」の数値を隠すのか?(大泉実成)
・放射線の管理は初日からでたらめで、線量計を持たされていたのもかろうじて初日だけ。
 防護服を脱いで寝るなら詰め所に除染区域を設け、防護服は廃棄する必要があった。だ
 が防護服そのものが不足しているという状態。ようするに、事故が起こった時のことは
 リアルに想定されていなかったのである。そしてそのしわ寄せは現場の人間に被曝とい
 う形で押しつけられる。
・原子力事故が悲惨なのは、体だけでなく人間関係も壊すことである。こんなことさえな
 ければ穏やかだったはずの労使関係が、被曝の恐怖の前にガラガラと崩れていく。
・3月30日に、IAEAが飯館村に避難勧告を出した。 
・さらに4月6日には、京都大学原子炉実験所の今中哲二さんらグループが「飯館村の一
 部の地域では、屋外にいると3カ月で95ミリシーベルトの被曝」と発表し、避難の必
 要性を訴えた。
・一方、原子力安全・保安院は「避難する必要ない」という見解を発表した。保安院の主
 張は、飯館村での震災からの累計線量は50ミリシーベルトだが、これは1日中外にい
 た場合で、日常生活の累計線量はこの半分程度と見ていいから問題はないというもので
 あった。つまり一般公衆に対して25ミリシーベルトの被曝を容認したものである。
・しかし、この数値は到底安全なものとは言えないうえに、被曝が今後も長期的に続くこ
 とを考えると無謀な主張であった。そこには乳幼児や子供も含まれるのだ。
・当初は保安院の「非難不要」という意見に従っていた政府も、さすがに保安院の主張の
 おかしさに気がついたのでだあろう。11日には飯館村に対し避難を要請したことが明
 らかになった。
・一方で、飯館村には次々と「専門家」が送り込まれた。中心になったのは100ミリシ
 ーベルト以下の被曝なら心配ないという主張を繰り返す山下俊一長崎大大学院教授らの
 グループである。
・3月25日には高村昇長崎大大学院教授が飯館村で説明会を行った。高村氏は飯館村の
 野菜は洗えば食べられるとし、外出後、手を洗うなどの注意事項を守れば健康に害はな
 く村で生活していけると説明した。長崎からやってきた専門家の意見ということで、村
 民たちは安堵した。
・4月1日には山下教授自身が飯館村にやってきて、
 「今の飯館村の放射線量では、外部被曝は全くありません」
 「今の濃度であれば、放射能に汚染された水や食べ物を1カ月ぐらい食べたり、飲んだ
  りしても健康には全く影響はありません」
 「一般の人の被曝上限は1歳の子供を基準に作られている。また、一般の人が不要な被
  曝を受けることのなおように数値が設定されている。ガンにリスクが上がるのは年間
  100ミリシーベルト以上である。それ未満であればリスクはゼロと考えてよい」
・菅野典雄飯舘村村長は「本村は反核の旗手になるつもりはない」とし、村の早期の避難
 解除を政府に提言している。  
・4月10日は杉浦紳之近畿大学教授が「安全」だと言いに来た。
・1999年の東海JCOの臨界事故の際は、事故から3日後には被曝住民の健康診断が
 行われ、1カ月後には被曝線量を出すための行動調査が科学技術庁によって行われ、3
 カ月後には住民に被曝線量が告げられた。
・飯館ではどうなのか。
 「行動調査どころか健康診断も行われていません。血液や尿から被曝線量を推定できる
  ということですが、そういう検査も一切ありません。唯一行われたのは子供の甲状腺
  サーベイですが、基準以下だと言ってすぐ帰ってしまい、親は子供の件さ数値すら知
  らない」 
・専門家があれほど送り込まれたのに健康診断も被曝線量の推定も行われない。これはも
 はや作為的な被曝の陰蔽と呼ぶべきではないか。
・JOC臨界事故の時も、放医研は事故で被曝した人の検査数値を国などには報告してい
 たにもかかわらず、被曝した本人には数値の書かれている箇所をスミ塗りにして検査結
 果を教えたのである。これではもらった本人はかえって不安になる。しかも、その数値
 を自分たちの研究には使っているのだ。検査結果を本人に知らせるのは法で定められた
 インフォームドコンセントの基本であり、常識以前の問題である。
・JCO臨界事故では国は形式的にその数値を出そうとしたが、その過程で過小評価を行
 ない、被曝の陰蔽を図った。だが、今の体制ではその形式的な線量の割り出しすらでき
 るかどうか怪しいものだ。そのためには行動調査が必要だが、被爆者の数が想像を絶す
 るため、とろとろやっていたら何年かかるか分からない。
・JOC臨界事故での健康被害の補償はどうなったか。僕の両親も被曝して8年裁判をや
 ったが因果関係を証明するのが困難で、補償は一切認められなかった。もともと国は、
 健康被害は一切認めないという方針だったのだから裁判で勝つのは難しいだろうと考え
 ていた。  
・原発を推進してきた国がその過ちを認めて、国家賠償的な形で被曝住民に補償を行うと
 いうなら、救われる可能性があるかもしれない。だが、現状のままでは、被曝を秘密に
 され、過小評価され、犠牲にされ、切り捨てられるのが原子力事故の被害者だというこ
 とになってしまう。

低線量内部被曝の危険な話(藤吉雅春)
・ようやく近年になって、原爆症は爆心地からの距離や放射線の数値といった数字で、線
 引きができないことが明らかになっている。
・原発事故以来、ごく低量の放射線を長期間にわたって浴び続けている私たちは、実は国
 が決める数値によって都合よく線引きされようとしているのではないか。
・広島・長崎の原爆のケースでは、長年、政府は爆心地から2キロ圏内で被曝した人を原
 爆症と認定してきた。2キロという数字は、空間の放射線量の高さで区切られたものだ。
・ところが、爆心地から4キロも5キロも離れたところにいた人でも、脱毛、鼻血、下痢、
 倦怠感などの症状を訴える人がいた。爆心地から2.5キロ〜3.5キロの地域は、外
 部線量が1ミリシーベルトから2ミリシーベルトである。
・福島の小学校で暫定基準値とされた年間20ミリシーベルトよりも格段に低い。低い空
 間線量を外から浴びるだけでなく、汚染された水や食べ物、または黒い雨を体内に取り
 込んでしまう”内部被曝”の可能性もあるだろう。それでも、線量が低い地域で、原爆症
 とおなじ症状が現れるのはなぜだろうか。

<御用メディア&文化人の罪>
東電広告&接待に買収されたマスコミ原発報道の舞台裏
(神林広恵)
・2011年4月13日参院予算委員会で参考人として出席した東電・清水正孝社長の答
 弁。
 「マスコミへの広告・宣伝費は約90億円、交際費は約20億円」
・「事故発生後、大手マスコミ、特に新聞やテレビは露骨な東電批判をほとんどしていま
 せん。背景には東電、として電力関連会社からの膨大な広告の存在があるからです」
 これが現在進行している世界最悪の原発事故を起こした日本の実態である。
・事故前の2009年度、東電の広告宣伝費は約245億円、販売促進費約240億円、
 さらに中部電力などの各電力会社、その連合体である電気事業連合会などを含めると年
 間2000億円にものぼるきょだいな電力マネーがメディアに流れているのだ。
・もちろん大手メディアは決してこの事実を追求しない。自分の首をしめるようなことが
 できるはずがないからだ。問題は、こうした広告費が、各テレビ局のメイン報道・情報
 番組に投下されていることだ。各局の特に報道番組が電力会社の広告で成り立っている
 以上、過去の放射能漏れ事故や不祥事などを追及できるはずがない。さらに問題なのは、
 こうした電力マネーの注入は、原発事故後も続いているということだ。
・「東電は毎日何度も記者会見を行ない、重要なものは放映される。CMを流さなくても、
 会見でトップが何度もお詫びすれば、無料でニュースとして流れるわけで、莫大な金を
 使って全局でお詫びCMを流す必要はない。そんな金があるなら被災者への賠償に少し
 でも流すべきでしょう。しかし東電にはそういう発想はない。テレビ局にしても、これ
 を拒否する気概もない。東電は少しでもメディアに金を流すことで、暗に圧力をかけて
 いるつもりなのです」
・東電はテレビだけでなく、各紙新聞全一面を使ってお詫び広告を順次掲載していく。 
 だが、テレビのお詫びCMは被災地である福島県には流れていない。東電は福島県内の
 民放テレビ4社、ラジオ2社にお詫びCMを要請したが、県民感情への配慮のため拒否
 されている。一体、誰に対するお詫びCMなのか。広告が圧力である、という東電の認
 識を裏付ける出来事も起きていた。
・そしてもうひとつ、震災後、湯水のごとく流れたACジャパンのCMもまた、裏のカラ
 クリがあった。 
 「震災直後、各局はCMをカットし特番を流し続けました。こうした局側の事情による
 場合、広告料は発生しません。しかしCMが再開されたにもかかわらず、スポンサー企
 業は国民感情を配慮して、自社CMを流さず、代わりにACのCMを流した。この場合、
 企業の都合なので、全額とはいかないまでも契約に沿ってテレビ局に料金が支払われる
 はずです。おそらく通常の半分から8割といった線で話を進めるようです」
・当然その企業の中には東電も含まれる。
 「ACジャパンの理事に東電の新社長に就任した西澤俊夫が入っていますが、他にも電
 力会社の役員が理事に名を連ねている。ですからACのCMの中にも電力関連の隠れ広
 告が多数存在しています」 
・原発事故後も、テレビ局が東電を批判しない理由のひとつだ。さらにACの所管官庁は
 経済産業省である。一般の国民には隠された、ズブズブの関係がそこにある。
・電力会社とマスコミの関係は広告だけにとどまらない。それが記者個人をターゲットに
 した接待だ。 
・「象徴的なのが『原発見学ツアー』です。見学といわれる以上、原発に疑問を抱いてい
 ても『記者として実際に見て見よう』という免罪符にもなる。その後交遊が深まれば、
 高級クラブやゴルフといった接待が始まるんです。東電にとっては、広告費に比べ、格
 安で記者をコントロールできる。飲食代など安いもの、金に糸目はつけないという感じ
 でした。しかし、だからといって記事を手加減しろとか、原発批判をするな、なんて露
 骨なことは一切ない。ただ、接待されると記事を書く際、こちらの負い目になりつい自
 粛してしまう。そういった意味で効果は絶大だったと思います」
・東電の接待は「究極の広報」と言われている。普段からの付き合いで、なあなあの関係
 にもっていく。会食、ゴルフ、高級クラブと徐々にランクを上げていく。気がつくと東
 電や電事連のツケで遊ぶことが当然のようになっているのだ。
・何十年も接待漬けになれば、どんな結果になるか明らかだろう。しかも東電と太いパイ
 プを持てば、上層部の覚えもめでたく出世でき、また紙面に対する影響力も高まる。お
 互いが長年の既得権益を共有することになるのだ。さらに”ご褒美”として原子力学会
 誌での執筆や関連組織への就職まで世話してもらえる。
・「経済産業省の電気事業分科会や原子力安全・保安部会、総合資源エネルギー調査会、
 電力会社の会費によって運営されている海外電力調査会、電力中央研究所がそれで、マ
 スコミ関係者が電力会社の斡旋で委員などに就任しています。いわばマスコミの天下り
 ですね」  
・事の本質から目を背け、政治や役人に責任転嫁し、電力不足をちらつかせる。それは未
 曾有の放射線漏洩を起こした今回の事故後も同様だった。
・テレビでも、セシウムやヨウ素の検出、野菜や水道水汚染が報道されるたび、原子力村
 の御用学者や専門家と称する人間が出演し「安全です」「食べても問題ありません」と
 危険性を過小評価させ、繰り返し語ることも同様の構図だ。
・海水注入の中断問題で、現場判断で注水を続けた副島第一原発所長の吉田昌郎を英雄視
 する報道もあるが、これもまた、世間の目を欺く情報操作の一例である。
・ある日日経記者は質問の際、「勝俣会長様、清水社長様」とダブル敬称を使っていたと
 いう。大手メディアの報道に真実など期待すべくもないということが、これでお分かり
 になるだろう。電力会社の顔色をうかがいながらの自主規制と忖度という大本営報道が
 粛々と続くだけだ。  
 
・さらに噴出したのが半径50キロメートル圏内問題だ。大手メディアには原発事故に関
 しての社内規定、内規が存在しており、例えば朝日新聞50キロ、NHK40キロ、民
 放各社50キロ、時事通信に至っては60キロ圏内に社員記者は入ってはいけないとい
 う。しかも、この社内基準を公表する社は1社もない。政府や東電に情報公開を迫るメ
 ディアとして、この矛盾をどう捉えているのか。
・東電からの広告・接待、そしてメディアの自主規制と内実。これらが深く絡み合って現
 在の大本営報道は続く。人質は国民の命。悲しいかな、これが現在の日本を取り巻く現
 実なのだ。 
  
「原発文化人」の妄言メッタ斬り(中田潤) 
・2007年5月24日、安倍晋三は、いわゆる「美しい星50」演説を行なった。
 「原子力の信頼性と安全性を高めるとともに、高温ガス炉、小型炉など先進的な原子力
 発電技術を開発し、安全で平和的な利用を拡大していきます」
・ゴールデンウイークに入り、日本人が絶対に忘れてはならない出来事が起きた。「原発
 難民」に対し、一刻も早く予算をつけ、お金を届けなければならないはずの野田佳彦
 務大臣が、わざわざベトナムに飛び、商談の継続をお願いしたのである。
・GEが開発した原子炉圧力容器の底には、ものすごくたくさんの穴が開いている。制御
 棒や各種計器を「下から上に入れる」構造になっているからだ。
 原子力発電とは単に「お湯を沸かす」装置だが、やかんの底が穴だらけ。「なべ底」で
 はなく「ざる」なのだ。
・2000年代半ば、東芝は、原子力発電のパイオニア企業である米ウェスチングハウス
 買収に乗り出したが、乗り出した途端に東芝や格下げされた。GEと組んで「原発独占
 企業」を目指している日立製作所は、格下げに次ぐ格下げである。
・震災が発生したまさにそのとき、中部電力のCMに出ていた勝間和代は、
 「原発事故で死者がでましたか?」
 「津波の死者の報道と比べてバランスが悪い、と考えます」
 と「朝まで生テレビ」で発言していた。
・2011年3月16日、多くの日本人が、細胞を切り裂く放射線を浴びていたとき、経
 団連会長の米倉弘昌は、
 「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべ
 きだ」
 「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」

週刊誌・新聞の「東電広告」出稿頻度ワーストランキング!(佐々木奎一)
・福島第一原発の事故を起こした責任の一端は、この国のジャーナリズムにある。言論の
 自由が保障されているはずなのに、各媒体は電力会社の広告という”毒マンジュウ”を喰
 らい、原発問題の追及を控え続けてきた。
・広告の特徴は大きく三つに分かれる。一つは電力社員を紹介するパターンだ。
 「世界の電力マン ある日の自分史」というPR広告を掲載。原子力発電大国の若きホ
 ープと題し、ロシアのレニングラード発電所の社員を紹介している。「チェルノブイリ
 にあったものと同型だが、安全性には何の問題もない」などとあり、もはやあの大事故
 が過去のものであるかのように扱っている。要するに、世界では原発が盛んということ
 をアピールして、日本の原発を推進しようという意図がみえみえの広告である。
・二つ目の特徴は、文化人やタレントを使った広告である。「脳と原子力、じつは切って
 も切れない関係です」と珍奇なタイトルの広告を掲載。実はこれは脳科学者の茂木健一
 郎と京大の山名元教授との対談である。そこで茂木は「チェルノブイリの原発事故や、
 まったく違うものではありますが、原子力という言葉から連想される広島や長崎の原爆
 被害もニュースで見た映像などを介して人々の『脳』に鮮明に記憶されている。これは
 『脳』のメカニズムなので、取り除くのは難しいです。原子力のしくみもリスクもわか
 っていれば怖くない。我々のような研究者の使命は、その論理や根拠を示していくこと
 だと思います」といい、あたかも本当は原発は危険ではないかのように述べていた。
・さらに茂木はこう発言している。
 「自分たちのおかれている状況を客観的に見れば、原子力発電の果たす役割が大きいこ
 ともわかると思います。確かに原子力にはリスクもありますが、リスクがゼロの暮らし
 なんてありえないでしょう。交通事故や飛行機事故、地震などの災害もあるし、小惑星
 がぶつかってくる可能性も・・・。僕たちはそういう世の中に生きているんですね」
・エッセイストの岸本葉子の「青森で体感 見えないけれどつながっている。私たちの暮
 らしと放射線」と題する広告を掲載。岸本は、放射線測定器を持参して、縄文時代の
 「三内丸山遺跡」の竪穴住居や六ケ所村の原子燃料サイクル施設などを回った後、こう
 締めくくっている。 
 「今回の旅では、放射線がどこにでもあることや、放射性物質を扱っている原子力施設
 が、周辺環境に放射線の影響を及ぼしていないことを確認することができました。今度
 はぜひ、リサイクル燃料で発電している原子力発電所に行ってみたいと思いました。放
 射線測定器を片手に、ご当地グルメを楽しみながら」
・「週刊新潮」は「エネルギー新時代、キャスター木場弘子」を掲載。建設が進む青森県
 の大間原子力発電所を訪れ、「日本がこれまで40年にわたって原子力発電に取り組ん
 できたことによって培った、確かな技術力ときめ細やかな安全対策を改めて認識できま
 した。世界が認める”日本の総合力”を肌で感じることができ、とても勉強になりまし
 た」などといい、電力会社をほめちぎっていた。
・さらに驚くべきなのは、原発広告のうち5割の広告主になっている「フォーラム・エネ
 ルギーを考える
」という団体の背景である。これは1990年に、エネルギーについて
 「生活者の立場」から考えるために発足した団体で、メンバーには舛添要一、山谷えり
 子、木場弘子、露木茂、ダニエル・カール、ケント・ギルバート、増田明美などといっ
 た面々が名を連ねている。 
・同団体は全国で原発推進のシンポジウムを開催している。いったいどこが資金を出して
 いるのか?
 「電事連からの巨額の寄付金でまかなっています」
・要するに、市民団体を偽装した電事連のダミー団体なのである。
 
東電の「裏マスコミ対策」に暗躍した業界人たち
石原萠記は、マスコミから大手企業、政治家まで、複雑に人脈が交錯する知られざる情
 報コミュニティーの中心に居続ける老紳士だが、石原氏の名前がにわかに注目を集めた
 のは、東京電力トップのある失態がきっかけだった。
・2011年3月11日午後、東電の勝俣恒久会長は、民間訪中団の団長として中国・北
 京にいた。この訪中団の主宰者こそが石原氏だったのである。
・東電と石原氏との親密な関係はツアーへの参加ぶりで明らかだ。とはいえ、現在、同氏
 の公的な肩書は「日本出版協会」の理事長くらいなもので、同協会は資本規模が2千
 5百万円程度の吹けば飛ぶような社団法人にすぎない。しかし石原氏の経歴は実に興味
 深く、戦後の裏面史を覗く思いがする。
・東電のマスコミ対策で特徴的なのは、日頃からあらゆる機会を使ってあらゆるマスコミ
 関係者との間に濃密な人間関係を築いてきたことにある。広告宣伝費の大量投下より、
 むしろこちらのほうがマスコミの牙を抜くことに効果を発揮してきたといえる。普段か
 らの飲食接待やアゴアシ付き原発見学ツアー。取材する側は相手の懐に飛び込んでいる
 つもりでも、いつしかそれは馴れ合い関係に陥りがちだ。親しい広報担当者の顔が浮か
 ぶと、いざという時に筆が鈍る、それが人の性である。
・東電のマスコミとの付き合い方は媒体問わず全方位なのが特徴でもある。影響力が大き
 い大手マスコミとの人脈づくりでは、そのつき合いは現役記者だけでなくOBにも及ぶ。
・2001年10月に現職の総務担当副社長のまま急死した山本勝氏は、東電とマスコミ
 との関係を語るうえで欠かせないキーパーソンだ。思わぬ企業の内部資料で、その山本
 氏の名前が出て来る。消費者金融大手、武富士の当時の渉外担当課長が株式公開前後の
 数年間にわたり交渉経過を記録した大量の備忘録がそれである。武富士に群がった暴力
 団や右翼団体などとの攻防が事細かに記されていたその内容は実に生々しい。 
・東電のマスコミ対応は二つの部署が担ってきた。一つはどこの企業でもそうだが広報部
 である。しかし、東電においてはそれ以上に重要な役割を総務部が担ってきた。広報部
 が対応するのは記者クラブに加盟している新聞・テレビの記者、しかも経済部に限られ
 る。他方、政界対応や総会屋対策を取り仕切ってきた総務部は、新聞社会部や週刊誌、
 ブラックジャーナリズムまでありとあらゆるマスコミ対策をさばいてきた。その総務部
 門の最後のエースとなったのが山本氏だった。
・あまりに内向きな企業体質といわざるをえないが、東電ではそんな総務部門が長らく経
 営の中枢を占めてきた。2002年に原発トラブル隠しが発覚して荒木氏が会長を引責
 辞任し、企画部出身の勝俣氏が社長に昇格するまで総務部門の支配は続いた。折からの
 電力自由化論議もあり、その後、東電の社内力学は霞が関対応の担う企画部門へと一気
 に主導権が移ったとされる。

<原発利権の深い闇>
永田町の罪深き「原発族」その全実名
(一ノ宮美成+グループ・K21)
・中部電力浜岡原子力発電所の全原子炉停止からわずか1カ月後の6月19日、菅直人
 相は、
 「原発は安全が確認された段階で再稼働を認めていく」
 と宣言した。
・東京電力福島第一原子力発電所の事故後、菅首相は”脱原発”に舵を切るかのような発
 言を繰り返してきた。 
・「菅首相は原発問題を政争の具に使ったんです。浜岡原発の停止要請を出したのは、原
 発に対する国民の怒りが沸騰し、頂点に達していた時期、政権延命のために脱原発の世
 論を取り込もうと、ポピュリズムに走ったわけです」
・「そもそも、東海大地震の想定震源地にある浜岡原発の停止には、外圧も関係していた。
 つまり米軍問題です。浜岡原発の風下には、米第七艦隊の拠点、横須賀基地がある。 
 浜岡原発でフクシマと同じようなシビア・アクシデントが起きた場合、150キロメー
 トル圏内の横須賀基地も、放射能で汚染され、大被害を受ける。もし浜岡で同じことが
 起これば、基地が致命的な打撃を受けると考え、アメリカ側が日本政府に停止を指示し
 ていたんです」
・停止するのは浜岡だけでよかった。菅発言で日本の反原発世論が広がり、他の原発も止
 まるようになったらアメリカも困る。日米原子力協定で、日本は半永久的にウランをア
 メリカから輸入することが決められている。浜岡原発の停止をきっかけに日本の原発が
 ドミノ倒しで稼働停止し、最後は脱原発となれば、アメリカのウラン資本は困ってしま
 うのだ。
・米倉弘昌経団連会長は、花岡原発の停止が発表された途端、
 「電力不足のなか、今後30年間に87%の可能性で東海大地震が来るという確率論だ
 けで、本当にそういうことが言えるのか」と反発している。
・1基建設すれば4000億円とも、5000億円ともいわれる原発は、ゼネコンから使
 用済み核燃料廃棄物を運搬する物流業者まで、あらゆる業種と原発立地自治体に”富”
 と”利権”をバラ撒いてきた。まさに「打ち出の小槌」である。
・その原資は電気料金と税金。経済・産業政策から国民生活に至るまで、原発は日本の根
 幹政策になってきた。  
 「原発は国家なり」
 この巨大な利権の壁を突き破ることは、現状では無理だろう。
・福島第一原発の炉心溶融事故から約3カ月が経った6月上旬、菅内閣の国家戦略室は
 「革新的エネルギー・環境戦略(素案)」をまとめた。事故を受け、菅首相は原発中心
 のエネルギー政策を「白紙から見直す」と宣言したが、見直し作業を担当する国家戦略
 室では、真逆の事態が進行している。
・事故収束の目処が立っていないのに、2010年6月策定の新エネルギー基本計画で決
 めた原発推進路線を、これからも堅持しようということだ。
・この計画は、2007年度に一次エネルギー供給の10%にとどまっていた原子力を、
 2030年には24%にまで引き上げ、原発による発電の割合を30%から50%にも
 っていくというものだ。加えて、原子力発電所の新たな増設14基、現在70%程度の
 設備利用率を90%に上げる。   
・もともと原発推進派のシンクタンク・日本総合研究所理事長の寺島実郎氏も、
 「自民党政権で原子力に関わってきた人たちも腰を抜かすほど、原子力に思い切り踏み
 込んだ政策。自民党政府当時のエネルギー基本計画では30%から40%を原子力でや
 ろうという政策目標だった」
 と驚くほどだ。
・「今、世界的に原発回帰が高まっている。とくに新興国の中東で要求が高い。にもかか
 わらず、日本は売る込みに成功していない。もっと政府をあげて原発輸出に取り組むべ
 きだ」(GLOBE)
仙谷由人官房副長官と前原誠司前外務大臣の2人が、原発を売り込むためにベトナムを
 訪問し、東電を中心とする日本企業連合の受注に成功している。
・実は日本国内の電力需要は年々落ちており、少子化の流れの中では、それに拍車がかか
 る。原発輸出には、送電網などのインフラ輸出、さらには鉄道事業の輸出も期待できる
 ため、日立、東芝、三菱重工などの原子炉メーカーだけでなく、電力会社、鉄道会社に
 も大きなうまみがあるのだ。
・菅首相が、自公の内閣不信任決議案提出の前後から、”元祖原発族”の自民党だけでな
 く、身内の民主党からも追いつめられたのは、今や民主党の陰の綜理と呼ばれる仙谷氏
 の邪魔をした、つまり「原発タブー」の尾を踏んだからという説が根強い。
・ちなみに、自公が菅内閣不信任議決案を国会に提出する直前の5月31日、菅首相包囲
 網の「大連立」を彷彿とさせる、党を超えた自民・民主の「原発族」たちが新たに議連
 を立ち上げる動きがあった。民主・自民両党の首相経験者が顧問に名前を連ねる「地下
 式原子力発電所政策推進議員連盟
」の発足だ。
・立地といえば、民主党は2010年秋、党内に「原子力政策・立地政策プロジェクトチ
 ーム(PT)を立ち上げている。2011年3月31日に原発措置法が10年目の期限
 切れとなるため、さらに10年間の延期を図ろうというものだ。
   
徹底調査!自民党の政治資金団体に電力9社役員が1億円をダミー献金!
・「会長、社長、役員などが役職に準じて同一金額の個人献金をするようになった。役職
 を外れれば献金はなし。明らかに電力会社内部で組織的に行われるようになった。事実
 上、巨額の団体献金が継続していたわけです。個人の政治献金は違法ではないが、こう
 したやり方は、電力会社の持つ公益的性格からみておかしい」
・また電力業界は、人材を政界に送り込み、電力業界の要求を政治に反映させてきた。
・政治団体「地球環境・エネルギー総合研究所の政治資金報告書によると、2007年〜
 2009までのパーティー券収入は約2億年。そのカネを、所属派閥の「宏池会」や約
 60人の国会議員にバラ撒いてきた。高級クラブや料亭での多額の飲食費、旅費に政治
 資金を費やし、”その豪遊”ぶりには開いた口がふさがらない。
   
「原子力土木委員会」背徳の津波想定(藤吉雅春)
・震災から2週間後、文部科学省の関係者がこぼしていた声だ。学者の総本山である「日
 本学術会議」が何の声明も出さないことへの苛立ちだtった。地震、津波、原発。この
 三重災害で学者たちは何をしていたのだろうか。
・日本国籍を持つ戴峰氏(日本名:中村峰)は、東北大学大学院に在籍していた頃、特別
 研究チームの主任研究者として、大地震の「前兆反応の二つのピーク現象」「限界線断
 層学説」を地震学会で発表している。また1995年の「サハリン大地震(M7.6)」
 を23時間前に仙台気象管区と国内公的機関に事前通知したことで知られる。
・戴峰氏がほかの有識者たちと試みるのは、「想定外」を隠れ蓑にする原発ムラの馴れ合
 い体質を明らかにすることである。この体質は事故発生時から何度も報じられてきたが、
 なかでも彼らが着目するのが、”学者の役割”だ。
・戴峰氏が「想定外」という言葉に強く反発するのには理由がある。
 「日本では誰も信じないでしょうが、私が尊敬する元・中国の呂大炯博士の後輩たちが
 つくった地震モデルです」  
・呂大炯博士は、1977年から1983年までの間に、20以上の地震(M6.8以上)
 について、遅くとも1日前に、時間、方向、規模まで予知している。数時間の誤差はあ
 るが、ズバリ当てている。
・戴峰氏が憤るのは、今回の東日本大震災で、”前震”が2月に二度にわたり同じ震源地で
 起きている点だ。ここが今回の巨大地震の震源地である。しかも、逆断層型といわれる
 マグニチュード5.4の地震を、政府の地震調査研究推進本部は「問題なし」と当時報
 告しているのである。
・戴峰氏は「15日の周期で前震が起こる規則説を考えると、3月11日前後の本震を予
 測できたはずだ」と言う。
・”想定外”について、戴峰氏ら有識者の会が疑問視するのは、津波の予測設定である。
 「IAEAが打ち出している原子炉立地の安全指針では、有史以前にまで遡る歴史上の
 記録や情報を収集して、注意深く分析しなければならないとされています。では、福島
 第一原発の場合、津波を防ぐ堤防の基準はどうだったのでしょうか」
・東京電力では、原発への津波の安全対策として、福島第一原発では最大5.4〜5.7
 メートルを予測していた。しかし、実際に襲ってきたのは、高さ14メートル。なるほ
 ど「想定外」なのだが、実は想定自体に”お手盛り疑惑”があるという。
・津波の想定を計算していたのは土木学会の中の部会「原子力土木委員会」の津波評価部
 会である。 
・第三者である学術団体が策定して想定について、有識者の会のメンバーは、
 「百円来の記録を遡れば、地震大国においてこの津波の想定は低すぎます。しかも岩手
 や宮城の想定に比べると、福島原発のところだけが低い。この科学的根拠はどこにある
 のでしょう?」
・「津波の想定を決めている原子力土木委員会の委員には、各電力会社の人間や日本原子
 力発電、電力中央研究所、原子力安全・保安院が入っています。34名の委員のうち、
 8名だけが大学の研究者です。この学者たちは、なぜ低すぎる津波予測が間違いだとい
 う学術的見解を出さなかったのか。また、監督する立場の保安院も何らかの異議を申し
 立てり、検証作業を行わなかったのでしょうか。津波の安全をはかる機関でありながら、
 中から疑問の声が出なかったのは、制度の根本に問題があると思います」
・津波の予測については、電力会社の身内が津波の低い想定をしていたのではないか、と
 いう疑問がある。そこで原子力土木委員会のメンバーだった学者の聞いみた。すると、
 想定外の答えが返ってきた。
 「ほとんど委員会には出ていないなあ。特別なことはやっていないと思うよ」
・委員会の議事録を見ると、「想定津波の断層モデルの設定方針」や計算方法の検討など
 細かくやっているようだが、その学者はこう言う。
 「おおまかに言うと、津波が原発の敷地内に遡上しないか、取水口が引き波の時にカラ
 にならないか、砂で埋もれないか、という3点しかやっていない。根源的な問題は、津
 波の想定ではなく、地震の予知の方ですよ。地震学会は予測を間違っているのに、責任
 のある見解がない。結局、学会は理学屋さんの集まりなんだよ」
・津波の想定に責任があるようでいて、地震の予知にも問題があり、最終的に政府は
 「学会が決めたことにきちんと従っている」と国際機関に言い訳する。
・つまり、大変な事態が起きた場合、責任の所在が曖昧になる仕組みになっているのだ。
・「六ヶ所村の恪処理施設を設計から技術指導まですべてフランスに依頼するのは、万が
 一のことがあった場合、電力会社が責任を取りたくないからです。核廃棄物の処理技術
 は、日本にもないわけではないですから」
 と原子力メーカーの元幹部は話していた。
・国も電力会社も安全重視と言いながら、それは地域住民に対しての安全というよりも、
 責任回避のためのアリバイづくりに見えてしまうのである。
・原子力安全・保安院が2001年につくられるまで、原発の安全基準は、まず当時の通
 産省原子力発電安全審査課が行なっていました。そこでの審査を受けて、さらに通産大
 臣が原子力安全委員会に審査を依頼するのだ。  
・ところが、東電の関係者は、「20年くらい前の原子炉の安全審査というのは接待漬け
 の世界でした」と振り返る。
・「相手が審議官クラスになろうものなら、東電側はペコペコするんです。役所も昔はタ
 カリ体質ですから、『タクシー券もってこい』、『ビール券もってこい』と言う」
・まず安全審査の第一段階で、東京電力が資料を作成して、当時の通産省に提示する。  
 といっても、役所の人間が見てもすべてわかるわけではない。「顧問会」と呼ばれる大
 学教授などの専門家に見せる。専門家の意見を採り入れたものを、東電が「安全審査書」
 として作成します。でも「クレジット」は通産省。あたかも通産省がつくったかのよう
 にして、世に公表するのだ。
・次に、第二チェックとして原子力安全委員会による二次審査があるのだ。通産省が安全
 委員会に対して、資料をもって説明するのだが、通産省の役人が原子力安全委員会の先
 生方の前で恥をかかないように、東電が役人のために資料をつくってあげて、事前にレ
 クチャーもしておく。そうして、安全委員会の先生方の意見を聞き入れて、安全員会に
 よる審査書ができる。この審査書も東電がつくっていた。
・結局、ダブルチェックと言いながら、全部、東電がやっていた。これには理由がある。
 「大学の先生方といっても、原発のことなんかわかりっこないですよ。原子炉の専門家
 かもしれないけど、原子炉の構造から配管、配線まで細かく知っているのは、東芝や日
 立の下請け会社です。しかも、あめりかのNRCと決定的に違うのは、日本の大学の先
 生は片手間でやっている点です。日本の場合、大学で授業をもっている先生が、掛け持
 ちで原子力安全委員という肩書を持っている。専従職員なんて、事務局のわずかな数の
 職員だけですよ」
・「天下った官僚や、政府お抱えの学者諸氏に高額な報酬を支給されることは、国が本来
 もつ正常な監督機能を麻痺させ、学者の正確な知恵を無にしてしまう。国民にとって、
 もっとも不幸な点です
・「原子力村」がバラ撒くカネに”汚染”された原発学者たち、彼らが原発産業に有利な発
 言をしたり研究成果を発表したとしても、不思議ではない。

<原発アンダーグランド>
「発送電分離」のタブーについて明かそう

・「東電がマスコミや学界を取り込むために、湯水のようにカネを使ってきたということ
 は最近よく話題になりますが、同じことが、経済界にも言えるんです。経済界から見る
 と、東電は単なる電力の供給者ではなくて、膨大な資材・設備の買い手でもあるんです。
 しかも、東電は何でも高い値段で買ってくれる。どうしてかというと、電力会社の利益
 というのは『コスト×公正報酬率』の計算で決まるからです。公正報酬率というのは固
 定された数字ですから、利潤を大きくするためにはコストを大きくするしかないんです
 よ。だから、原発などを建設する際には、何でも高く買ってしまおうということになる。
 加えて、『総括原価方式』でコストはすべて電気料金に乗せられるので、電力会社のフ
 トコロはまったく痛まず、儲けだけが大きくなる」
・「電力は経済界を握っている。経済界を握れば、政治を握ることができる。そして政治
 を通じて、官庁にも影響力を持つことができる。一般的に、規制や許認可の権限を持つ
 官庁は業界の上に君臨するものなんですけど、経産省と電力に限っては、その関係が逆
 転しているように見えます」
・「『電力も自由化の時代だ』ということで発送電分離の議論を本気でやろうなんて言う
 と、すぐに後ろから手が回ってきて、知らないうちに左遷させられてしまう。東電に頼
 まれれば、幹部はとにかく東電を守る死なない、となってしまう」
・電力の方が経産省より上なんですね。電力は政治家に対して圧倒的に強いですから。
・ちなみにマスコミも、発送電分離の話は自由にできません。
・送電施設の建設は住友電工など主要3社がほぼ独占する形になっていて、一般競争入札
 の成立しない世界なんですよ。要するに、談合的な形で発注が決まっていく。それはも
 う完全に、自民党の票と金に直結するような世界。発注者は東電、受注者は独占3社。
 で、結果的にそれをうまく配分することによって票と金が入ってくる。発送電の分離と
 いうのは、そこをぶち壊すことになりますからね」
・「発電はともかく、送電線というのは基本的には独占にならざるを得ません。あれを二
 系統つくるというのは、とんでもない無駄になりますからね。現状の問題は、送電イン
 フラを握っている会社が発電もほとんど独占しているという点にあります。制度的には、
 発電に新規参入して大口需要家まではじゆうに売っていいことになっているんですが、
 実際には全然そうならないじゃないですか。どうしてかと言えば、大きな発電所を持っ
 ている送電会社が、自分の損になるようなことをするはずがないからです」
・「発電会社もあまり大きすぎるよりは、自家発電設備を持っているほかの企業が対等に
 競争できる程度のおおきさに分割した方がいい。そうすると、風力だとか、太陽光だと
 か、地熱だとか、そういういろいろな分散電源、再生可能エネルギーについても競争条
 件が整ってきます」 
・「原発は切り離した方がいいのかな、という気がしています。民間の事業者は、原発な
 んか怖いからやらない、となるかもしれない。あるいは、原発なんかやっている会社に
 は危なくて誰もお金を貸せない、となるかもしれない。そうなったら、それは民間では
 できない事業ということになるんですよ」
・「個人的には、原発の新増設はやめて、既存のものについても少しでも早く廃炉にする
 政策をとるべきだと思います。今までのように、原発にあらゆる人材と資源を注ぎ込む
 のをやめて、少しでも脱原発が前倒しになるように、再生可能エネルギーに賭けてみよ
 うじゃないかと」