無邪気な日本人よ、白昼夢から覚めよ :川口マーン恵美

この本は、いまから3年前の2021年に刊行されたものだ。
この本の著者の主張は、主につぎの4点ではないかと思える。
 @日本の領土が中国人に爆買いされている
 Aこのままでは日本は移民大国化する
 B車のEVシフト化政策は間違い
 C原発なしカーボンニュートラル政策は間違い

@については、いろいろが人からも指摘されており、日本は現状ではあまりに無防備のよ
うな気がする。早急に立法化による制限をかける必要があるのではないかと私も感じてい
る。
Aについても、現在の政府は、移民受け入れに前向きなようだが、ドイツやイギリスなど
多くの移民を受け入れてきた国々の現状を見ると、移民受け入れに反対ではないが、影響
を見ながら慎重に受け入れいく必要があるのではないかと思った。
Bについては、全面的なEV車へのシフトというのは、私も反対である。
なぜ日本政府はハイブリッド車をもっと主張しないのか。政府の「2030年からガソリ
ン車禁止」は自国の主力産業を捨てることを意味する。
日本はこれから何で飯を食うつもりなのか。ばかげた政策だ。 
Cの原発については、ある程度の数は残して行くべきだろう。風力や太陽光などの自然エ
ネルギーでは、昼夜などでの発電量の変動大きすぎでベースロード電源にはなり得ないと
思う。また、石油やLNGでの火力発電をベースロード電源にした場合には、有事などの
際には、供給路が断たれる可能性があり安定的ではない。

ところで、この本の著者はドイツ在住のようだが、日本に対する強い愛国心の持ち主のよ
うだ。ただ、主張の中には、極右派の人物の主張と重なるところがあり、せっかくの主張
が、普通の人にとっては違和感を覚え、ちょっと残念である。

過去に読んだ関連する本:
ドイツ流、日本流
ドイツで、日本と東南アジアはどう報じられているか?
浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ
ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか
豊かさとは何か

はじめに
・おそらく中国軍も北朝鮮軍も、すでに長らく、仮想敵国「日本」の然るべき場所に攻撃
 の標準を定めているでしょう。
 なのに、わたしたちはその標準の真ん中で、何も気にせず、ごく普通に生活しているの
 です。
・しかも、北海道や沖縄、北陸などでは、中国人が土地を買い占めています。
 水源があったり、自衛隊の施設の側であったりと、安全保障上、重要な土地が、日本を
 仮想敵国としている人たちの不動産として、どんどん拡大しつつあるのです。
・しかしながら、ミサイル飛来も、領土喪失も、土地の買い占めも、企業の買収も、多く
 の日本人にとっては喫緊の問題と考えられてはいないのです。 
・これ以上放置すれば、気がついたときには、日本はもう独立を失っているのではないで
 しょうか。
 そもそも、現在の日本が真の独立国であるかというのは、じっくり考えてみるべきテー
 マです。
 有事のときには、”米国が守ってくれることを祈る”ということを第一の国防対策と考え
 る人たちの国が、はたして独立国といえるのでしょうか?
 それを多くの日本人が疑問にも思わないのは、やはり憲法前文の、あの面妖な一文が、
 功を奏しているのだと思います。
・いつか日本が戦争に巻き込まれるとしたら、一番の原因は、この平和法の「崇高な理想」
 のせいであると、わたしは思っています。
 そして、おそらく私たちは、有事のときには戦わずして、侵入してきた国によって平和
 裡に征服されることになるでしょう。
・実際問題として、現在、日本人が一番危険として認識しなければならないのは、長期的
 には中国、直近では朝鮮半島です。
 朝鮮半島の未来に関してはいろいろなオプションがありますが、いずれにしても、日本
 が実際に核攻撃を受ける可能性は十分想定できます。
 一方、中国に関しては、いつか気づいたら、日本が中国の支配下にはいっていたという
 シナリオが、すでにかなり現実的です。
・しかし、おそらくまず最初に起こるのは、日本が朝鮮半島と中国からの難民で溢れかえ
 ることです。 
・難民が、その受け入れ国にどれほどの打撃を与えるか、それは、シリア動乱以降のEU
 を見れば一目瞭然でしょう。
・日本が独立国として存続するためには、どうすべきか。
 日本が将来、真の独立国になるには、何をすべきか。
 まず、第二次世界大戦の二の舞を踏まないこと。
 つまり、エネルギー不足で墓穴を掘らないということが、非常に大切なカギだと思いま
 す。 
・戦前、日本は石油の8〜9割を米国に頼っていました。
 それを断たれたために国家の存続が危うくなったのが、米国との回線の原因でした。
 一方、現在のエネルギーの外国への依存率も8割で、当時とそれほど変わりません。
 これが断たれれば、国家の存続は再び危うくなるでしょう。
・しかも、現在の問題は、誰かが日本のエネルギー供給を故意に断たなくても、国際紛争
 などでその輸送が滞る可能性が高いことです。 
 スエズ運河で船が1隻、1週間、立ち往生しただけで、世界中のサプライチェーンに大
 きな支障が出るのです。
 日本のエネルギーも、常に政情不安な場所を通ってくるわけで、何かあれば、サプライ
 チェーンなどと言っている場合ではなく、代替エネルギーの調達も容易ではなくなるで
 しょうし、経済が崩壊しても不思議でありません。
 資源貧国の日本は、一刻も早くこの危険を回避する有効な方法を、しかも迅速に軌道に
 乗せなければなりません。
・さらに大切なのは、日本が軍事攻撃されないよう、防衛の方法を根本から考え直すこと。
 攻撃されたら米国が守ってくれるのでは間に合わない可能性が高くなっているし、もし、
 間に合わなければ、当然、被害と犠牲が大きすぎる。

国防意識と危機感が欠如した日本人
・統一当時の西ドイツは、米国、日本に次ぐ世界第3位の経済大国で、ハイテクの国でし
 た。
 片や東ドイツも、経済的にはかなり破綻していたとはいえ、ソ連の衛星国の中では断ト
 ツで豊かだった。
 外資不足のため輸入品には事欠いてはいたものの、だからと言って人々が飢えていたわ
 けではありません。
 教育程度は高く、音楽家はすばらしく、スポーツ選手は強かった。
 医学や科学はそれなりの水準を保ち、医療保険や年金を整備されていました。
 何よりも託児所が完備し、男女は平等だった。
 ただ、自由と人権が不足していただけです。
・しかし、豊かな西ドイツでさえ、その、”かなり進んだ国”であった東ドイツを抱えた途
 端、苦難の淵にはまり込んだ。
 それどころか、30年が過ぎた今も、東西の経済格差や意識の隔たりは消えていないの
 です。
・では、朝鮮半島は?現在の韓国は豊かな産業国であるとはいえ、当時の西ドイツの豊か
 さには劣ります。
 さらに致命的なのは、北朝鮮の貧しさ。
 食糧が不十分なだけではなく、数年に一度は悲惨な飢饉の噂まで伝わってきます。
 それに、工業も農業も商業も、わたしたちの目には壊滅状態に映ります。
 しかも、もし統一が叶ったとしても、一番の問題は人びとの意識でしょう。
 北では、一部のエリートを除けば、多くの人々は、世界情勢を知らないことにかけては、
 月の裏側に住んでいたのと変わりません。
 韓国の国民はそんな人々と、ただ同じ民族だという理由だけで、はたしてすぐにアイデ
 ンティティを共有できるのでしょうか。
・いずれにしても、このように甚大な経済的なお荷物を抱えてしまったら、朝鮮半島は北
 も南も総じて貧しくなることは間違いありません。
 いまの韓国の水準に戻るまでに、少なくとも50年はかかるのではないでしょうか。
・ところが今、状況は劇的に変わりつつあります。
 具体的にいうなら、何も持たない北朝鮮が韓国を併合し、いずれ韓国に資産で肥え太る
 というシナリオが、現実味を帯びてきたと言うことです。
 何も持たないというのは、もちろん正しくありません。
 正確には、核ミサイルとその技術以外には何も持たない北朝鮮です。
 つまり、言い換えれば、核ミサイルは、それだけ持てば韓国を併合できるほどオールマ
 イティだということです。 
・最近、日本では、韓国が北朝鮮に擦り寄っているということが取り沙汰されています。
 しかし、冷静に考えてみれば、これは当然の帰結でしょう。
 日本人は目下のところ、北朝鮮の核の危険をあまり認識していませんが、いつか目が覚
 めて、認識するようになれば、おそらく日本も北朝鮮に擦り寄るしかなくなるでしょう。
 日本人は、それが嫌さに、今、見るべきものを見ないようにしているだけです。
・ただ、見るにせよ、見ないにせよ、北朝鮮が核を持っていることは歴然とした事実で、
 その気になれば日本を核攻撃できるということもおそらく事実です。
・北朝鮮の核が完成し、それを飛ばすミサイルもできました。
 そして、”金王朝”の独裁者が、それらの技術を他国に売って生き延びるという、世界平
 和にとっての最悪の状態が恒常化しました。  
・危険をさらにエスカレートさせているのが、北朝鮮が指導者の一存で物事が決まる国家
 であるという事実です。
 かつてヒトラーは、戦争に敗れるような不甲斐ない国民に未練はないとして、敗北する
 ときは国ごと滅亡させようと考えていたと言われます。
 おそらく北朝鮮の指導者も同じく、それほど自国に未練はなさそうですから、もし四面
 楚歌になり、自分の最後が迫れば、「あとは野となれ、山となれ!」と、果敢に核ミサ
 イルの発射ボタンを押すような気がしてなりません。
・このままいけば、まず、経済が外国資本によって虫食い状態になり、国の形骸は保てて
 も、主権の在処があいまいになってしまう可能性が高いでしょう。
 そのとき進駐してくる第二のGHQが米国でないことは、火を見るより明らかです。
 
「日本の国土、売ります」でいいのか?
・北海道本島や礼文・利尻島、新潟県の佐渡島、沖縄や奄美大島、長崎県の五島列島など
 は、主に中国人によって買われています。
 いっぽう長崎県の対馬市は韓国人によって買われましたが、現在、韓国経済の低調によ
 り、それらが中国人に売却されていると聞きます。
・いずれにせよ、日本全体では、ほぼ北海道に相当するほどの広大な面積が、すでに外国
 人、主に中国人のものになっているらしいのですが、残念ながら詳細は不明です。
・自由主義をとっている国では、いわゆる「内国民待遇」といって、国内にいる人間は皆、
 「内国民」で、国籍による差別も区別もしてはいけないという原則をとっているため、
 不動団の売却の際、買った人の国政は問わず、もちろん、記録も残りません。
・日本に置き換えてみたら信じられない話ですが、中国人は外国に暮らしていても、反日
 を国是とする中国政府の影響から完全にフリーになるわけではない。
 つまり、このまま彼らによる日本の不動産の買収が進めば、将来、日本の中に中国政府
 が動かせる反日分子が増えていく可能性があります。
 それは、いずれ日本のあちこちに、中国の治外法権ができるということなのです。
・つまり、将来、「国防動員法が発令され、動員された在日の中国人が買収された森林や
 農地などに集結」すれば、事態はわたしたちが想像していなかった方向へ進む可能性が
 あるわけです。
 それどころか、すでにそういう場所には、わたしたちが知らない間に、さまざまなもの
 が建設されてしまっているかもしれないのです。
・中国の指導者というのは、直近の利益にも敏感ですが、同時に、自分が死んだ後によう
 やく達成できるような遠大な目標を立てることも極めてじょうずです。
 それがいまになって着々と叶いつつあるのですから、この国は怖いのです。
・ジブチ、モルディブ、スリランカなどは、すでに落とされたと思ってよいかもしれませ
 ん。
 その作戦はまもなく、尖閣、沖縄にまで及ぶでしょう。
 そして、さらにその先には、最終目的、あるいは、純最終目的の「日本併合」が見え隠
 れしているのではないでしょうか。
・離れ島を含む辺境地域は、これまでも過疎化、無人化という問題を抱えていましたが、
 今、それが外国化、より正確に言うなら中国化に変わったわけです。
 つまり、無人化よりもさらに深刻な安全保障の問題が拡大しているということです。
・孫氏の兵法に、「智将は務めて敵に食む」という言葉があるそうです。
 いきなり軍事的に侵略するのではなく、経済、領土、エネルギー、水や食糧など幅広い
 分野で目立たないように静かに相手の国の富を掠め取っていくことです。
 大国のこうした意図に小国が気づいたとき、侵蝕はもう終盤に入っている。 
・日本政府は外資による投資を歓迎しているのだから、これがなぜ悪い?という意見もも
 ちろんあるでしょう。
 ドイツでは多文化共生を振興しているため、移民や難民の増加は問題ではありえず、
 アメリカでメキシコから移民の流入を制限しようとしたトランプ前大統領のことを、
 人権を無視するよからぬ人物として非難しました。
 つまり、この世界的風潮の中では、「日本の土地が・・・」などと言えば、国家主義者
 として糾弾されかねないわけです。
 ただし、だからと言ってドイツ人が、無制限に外国人に安全保障上の重要な地とを売っ
 ているかというと、それはありません。
・なお、北海道や沖縄で起こっていることを見るかぎり、少なくともこの住民は、「何ら
 かの利益」のために中国を歓迎しています。
 だからこそ、親中政治家が当選するのです。
・そして問題は、その「何らかの利益」が日本の国益と合致しないにもかかわらず、それ
 を大所高所から俯瞰して警告する政治家がいないことです。  
 その結果、防衛省が懸命に国土を守ろうとしている傍らで、公明党の主導する国土交通
 省が中国資本を招き入れ、結果的に国土が売られていくという民主主義ならではの「喜
 劇」が起こっているわけです。
・さらに言えば、この現象は、何十年も地方を、とりわけ過疎地を放ったらかしにしてき
 た政府の責任でもあります。
 そして、ここまで国土が侵食されても、肝心の国民がまったく危機感を覚えていないと
 いう事実。どちらを向いても戦慄を覚えることばかりです。
 土地は一度売ると、なかなか取り戻せません。
 すでに外国資本の手にある土地の水源、道路、電信網は、いったいどうなるのでしょう。
・いずれにせよ、安全保障上の最重要地を、これほど「平等に」、誰にでも売ってしまっ
 た国というのは、先進国では日本だけのようです。
 しかも、日本の土地は、一度所有するとその権利は、最終処分権までを含む極めて強い
 ものだと言います。
 後で収用することも、まず不可能。
 欧米、あるいは、インド、韓国などでは、外国人の土地購入にはいろいろな制限や条件
 が付きます。
 特に、日本の将来を考えた場合、水源地が変われているという事実は、深刻などという
 言葉では済まされないのではないでしょうか。

奪われる寸前の尖閣
・2020年11月の日中外相共同記者会見のとき、中国の外相に尖閣は中国の領土だと
 言われながら、日本の外相が何も言い返さなかったことは、まさに衝撃的でした。
・日本には国境離島と呼ばれる島が525島もあるそうです。
 尖閣諸島はその中でも、安全保障上、かなり重要な場所に位置している。
 1960年代の終わり、石油や天然ガスが大量に埋蔵している可能性が明らかになって
 からは、中国はあからさまに領有を主張し始めました。
・日本政府は、「尖閣に領土問題は存在しない」と言いつつ、実際には主権を行使するこ
 とを遠慮しており、かろうじて、石垣島の漁船だけが、漁業活動のために尖閣諸島に近
 づける状態です。
・そういえば、菅首相が就任早々、バイデン米大統領が尖閣を守ってくれると言ったと小
 躍りしたのは、かなり異様でした。
 そもそも、もし、わたしがアメリカ国民なら、中国に侵入されても、肝心の日本人が危
 機とも感じてない無人島を、なぜ、アメリカ兵が守らなければならないのかと思うでし
 ょう。
 日本政府が日本人の上陸を禁止している島を、米国が守ってくれると思っているわたし
 たちの思考は、絶対におかしいのです。
・そもそも日本が上陸しなければ、早晩、中国が上陸するでしょう。
 そうなれば、中国による尖閣の実効支配は既成事実となり、もう手遅れです。
 因みに、竹島はすでに韓国が実効支配していますし、北方領土も同じです。
・日本政府は、どんなに相手の言い分が理不尽でも、喧嘩にならないよう常に一歩引き、
 この問題は棚上げしようと言われれば、ではそうしましょうと言って歩み寄ってきまし
 たが、気がついたら、相手は皆、約束など守っていません。
 日本の見せた誠意など何の役にも立たず、今ではあっちもこっちもすでに手遅れっぽく
 なっています。
・しかし、同時に疑問も湧きます。
 日本政府の見せたのは、はたして本当に誠意だったのかと。
 あれは、単なる事なかれ主義か、あるいは、その時々の政治家の保身に過ぎなかったの
 ではないでしょうか。  
 だからこそ、相手に易々と見透かされ、手玉に取られたのではありませんか。
・ただ、たとえそうだとしても、これは政治家に罪おなすりつけて済む話ではありません。
 日本は曲がりなりにも主権在民、民主主義の国です。
 そして、政治家は国民が選びます。
 すなわち、政治家の姿は国民の意志の反映で、事なかれ主義は官民一体での合作以外の
 何物でもありません。 
・今でさえ、尖閣や竹島を気にかけている国民は少ない。
 それどころか尖閣がいったんどこにあるのか知らない人もいるし、尖閣を守らなければ
 などと言っただけで、右翼のように思われる空気さえ出来上がっています。
 これは、やはりメディアが事なかれ主義を良しとした報道しかしてこなかった結果では
 ありませんか。
 尖閣を見ていると、戦後日本の危機感欠如の集大成を見るような思いになります。
・尖閣はすでに国有なので、外資に変われる恐れはありません。
 しかし、盗まれる危機は増しています。
 これに対しては、力で守るしかない。
 尖閣を守り切らなければ、おそらく日本の南西諸島は、順々に取られてしまうでしょう。
・日本政府は、「そんなことは国際社会が認めない」とか、「これは国連で認められた日
 本固有の領土だ」  
 と言っていますが、国際社会も国連も、それほど当てになるものでなないことは、香港
 を見ればよくわかります。
・日本に、米軍の核の傘意外に抑止力がないという状態の続く限り、日本の政治家がどこ
 に向かっても一人前の口がきけないのは当然です。
 しかし、米国は本当に助けてくれるのでしょうか。
 あるいは、そう信じているのは、日本だけ?
 いったい、この危うい状態のどこに日本の主権が存在するのでしょう。
 
「移民」と「難民」の相違に無頓着
・ドイツは戦後の軌跡経済成長の中、労働力としての外国人を「意識的に」受け入れた移
 民大国です。
 2015年、ドイツはブリン協定やシェンゲン協定を破ることまでして、ハンガリーで
 足止めを食っていた難民に国境を開きました。
 これが引き金となって、難民の流入はたちまち歯止めが効かなくなり、自国への影響を
 恐れたEU諸国は次々と国境を閉め、ドイツのやり方を陰に陽に非難することになるの
 です。
・その混乱の中、メルケル独首相は公営テレビに出演し、「難民が何人入ってくるのかと
 いうことは、わたしたちの決められることではありません」と言いました。
 これにはEU中の首脳が度肝を抜かれたばかりか、さすがのドイツ国民も「ドイツの国
 境は守られていないのか?」と不安になりました。
 これは、まさに主権の放棄ともとれる言葉でした。
・しかし、EUにとっての最大の不幸は、メルケル首相のこの言葉によって、難民問題が
 人道問題となってしまったことだと言えます。
 難民を入れることが人道ならば、それを制限しようとする人は、反人道的だということ
 になり、例えば、難民についての安全保障や経済の観点から議論が封じられてしまいま
 した。
・案の定、その後まもなくドイツの難民政策は、事実上、破綻しました。
 テロリストが混じっていたので、EU中でテロも頻発し始めた。
 また、難民が比較的容易に到達できるイタリアやギリシャには、ドイツ行きを狙って、
 さらに多くの難民が殺到するようになりました。
 そのうち、どのEU国も困り切り、結局、何よりも大切なのは、EUの国境の防衛だと
 いうことで意見が一致しました。
・国連の関連組織に、国際移住機関(IMO)というのがあります。
 目下のところ、移民に関しては、同期間が一番の権威といえますが、彼らのいう「移民」
 の定義は、如何なる理由を問わず「本来の居住地を離れて国境を越えるか、一国内で移
 動している、またはいどうしたあらゆる人」のことです。 
 私がここで問題だと思うのは、移動の理由が問われないという点です。
・現在、EUの難民審査では、経済的理由は難民の資格とはならないとされますが、国連
 では、人間には国境を越えて他国へ行く「権利」があるとされている。
 つまり、難民と移民との区別がほぼないのです。 
・この国連主導による移民(=難民)政策が進めば、国境の意味は次第になくなっていき
 ます。
 それどころか、国家という観念自体が溶解していくでしょう。
・特に熱心なのがドイツです。ドイツでは、移民や難民を制限しようという考えは反人道
 と見なされます。
 ドイツの政治はすでに左傾しており、なるべく「ドイツらしさ」を消すことが民主化だ
 と考える人たちが、政治の中枢を占め始めています。
 財界は、移民や難民が増えれば安い労働力が得られると期待し、政治かは、少子化や年
 金問題が解決できるかもしれないと思っているでしょう。 
・移民と難民の境界線は、EUなどではしだいに曖昧になりつつありますが、しかし、
 日本ではまだ、これらの別のカテゴリーで考える必要があります。
 ごく簡単に言えば、移民は、合法的に他国に移住し、そこで暮らしている人々です。
 一方、難民というのは、何らかの理由で母国にいることができなくなり、他国に庇護を
 求める人。政治亡命者も難民に入ります。
・日本で増えている外国人は、高齢者や子供ではなく、多くが生産年齢の人たちですので、
 外国人が日本の人口減少による人手不足をカバーしてくれることになります。
 ただ、これが進めば、外国人がしだいに労働市場での主勢力となっていく可能性は否め
 ないでしょう。
 しかも、不動産と同じく、外資による企業の買収が進んでいけば、労使の関係までが入
 れ替わっても不思議ではありません。
・この場合の外資というのがどこかといえば、今のところ、考えられるのは中国、そして
 米国やオーストラリアでしょうか?
 いや、今や世界的な大企業は多国籍企業であるため、どこの国ということは特定できな
 いかもしれません。
 いずれにしても、将来の日本人は、日本国内で、その利益がどこに落ちるのかわからな
 い外資の企業に、外国人労働者とともに雇われることになるわけです。
 目下のところは、外国人の導入に積極的な財界は、その目的は労働者の賃金が安く抑え
 ることなのでしょうが、賃金の押さえ込みは、いずれ経営が外国資本の手に渡れば、さ
 らに過酷に実行されることになると思われます。
 その頃には、資産を外資に売却した富裕層の日本人は悠々自適の生活を送れるかもしれ
 ませんが、残された労働者はたまらない。
 日本国内の貧富の差は間違いなく広がるでしょう。
・これだけでも、子供や孫のいる人にとってはかなり背筋の寒くなる話ですが、規制緩和
 を旨とする新自由主義の信奉者たちは、そうは思いません。
 外国人をたくさん入れることは有意義、平等、かつ人道的であるという理論が大手を振
 っているからです。 
・つまり、多文化共生。そして、それにより国家という概念が少しずつうすめられていく
 ことや、貧富の格差が広がることには、まるで無頓着です。
・国債の金融資本としては、国家の概念が希薄になれば、課税やらさまざまな法律などか
 ら解放され、メリットが大きい。
 実際に、土地の買い占め問題にしても、日本政府は例外規定を全く設けなかったため、 
 持ち主が外国人で、外国に居住し、連絡がつかない場合、固定資産税を払わなくても、
 あるいは、いろいろな法律を無視しても、日本側としては追跡する術がないといいます。
・安倍前首相が新自由主義者として、国家の概念をうすめる方向を目指していたかどうか
 はわかりませんが、少なくとも彼も、外国人受け入れを前向きに捉えていたことだけは
 事実です。 
 少子化で日本という国家が消滅しないようにという配慮も働いていたのでしょうが、
 しかし、国益を守るという観点なしに安易に外国人を入れ始めると、これこそが国家消
 滅につながる一番の近道になってしまう可能性は厳然として存在します。

・2015年、日本政府は「船舶観光上陸許可制度」を設けたため、以来、クルーズ船で
 訪れる外国人はビザなして7日間の上陸が許可されています。
 しかし、ビザ坑夫の際は写真撮影もないので、替え玉も、犯罪者も、工作員も、フリー
 パスに近いといいます。
 つまり、日本に誰が入国したか、よくわからないという恐るべきことが、もう6年間も
 続いているわけです。
・案の定、上陸したまま戻ってこないケースもあります。
 しかも、写真さえない上、届けられた身元データの真贋もわからないため、追跡にしよ
 うがない。
 これでは最初から、日本は国境の防衛を放棄していますと宣言しているようなものです。
 ちなみに、たまに7日すぎてから出頭してくるケースは、帰りの旅費を浮かせるための
 強制送還目当てが多いというから、日本政府もなめられたものです。
・この「船舶観光上陸許可制度」は、中国、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国
 の済州島などが採用しているため、日本もそれに加わっただけだと言いますが、日本に
 はこの制度を悪用して、これらの国に不法に入り込もうと考える人はあまりいないので
 しょう。 
 そんな事実から目を逸らし、相互関係だけを重視するのはあまりにも無防備ではないで
 しょうか。
 この制度の採用を強く推したのが公明党だと言います。
 日本政府がインバウンドの獲得に熱心なのも、公明党の意思が反映されています。
 2020年に4千万人、2030年に6千万人の外国人観光客を誘致するつもりだと言
 いますが、これが果たして日本のとるべき最良の政策と言えるのでしょうか?
 
・日本という共同体は、働いた人が税金や社会保障費を納め、それで国民全員が助け合っ
 てくれしてきました。
 中でも医療保険は世界に誇れるすばらしい制度です。
 その助け合いの輪に、外国人が入るのは結構です。
 しかし、それが将来も平等に機能するよう、グレーゾーンがこれ以上広がることのない
 ように注意しないと、すべてが壊れてしまいます。
・最初の医療保険は加入は認可で、保険料も給付金額もまちまち、だからといって、国民
 皆保険などを提言すれば、社会主義者のレッテルが貼られても文句が言えない時代でし
 た。 
 その後、不完全ながらも健康保険法が制定されたのは1922年、大正11年のことで
 す。
・その日本が、皆保険制度に踏み切ったのが1961年、まだそれほど豊かではなかった
 のに、政治家や官僚は、なんと志が高かったことでしょう。
 アメリカが今もって達成できないすばらしい精度が、すでに60年前、日本で完成した
 のです。
・その日本の虎の子の医療保険も、昨今、高齢化の煽りを食って、保険料がどんどん値上
 げされていきます。
 だから、その輪の中に就労外国人が加わってくれるのは、本来ならば歓迎すべきことの
 はずです。
 それが、こともあろうに、医療保険には写真が添付されていないことを幸いに、使い回
 しされているという話を聞きます。
・さらに問題なのは、その保険を、本人だけでなく、彼らの母国にいる扶養家族、つまり
 配偶者、父母、祖父母、子、孫、曾孫までがそう出て利用できることです。
・外国人の医療保険のグレー利用については、荒川区では2018年、住民の人口比では
 中国人は約3%なのに、海外療養費の支払い件数に占める中国の割合は約37%強だっ
 たといいます。 
 千葉市も同じく、人口比における中国人の割合は1%にも満たないのに、海外療養費の
 支払い件数は22%。
 扶養者の医療費を保険で支えること自体に異議を唱えるつもりはありませんが、問題は、
 外国でどんな医療がなされているか、あるいは、本当になされているか、確かめようも
 ないという現実です。
・しかし、自治体は、外国人を相手にして人種差別の嫌疑をかけられることをおそれてい
 るのか、それらの調査には逃げ腰です。
 小さな損害を大目に見ていると、そのうち収拾がつかなくなります。
 すでに、そうなっているというのに、日本人がそれを放置しているのなら、落ち度は、
 わたしたちの側にあると言えるでしょう
・現在、EUで頻発するイスラムテロでは、犯人を捕まえてみると、すでにドイツ国籍や
 フランス国籍を持っている元アラブ人であることが少なくありません。
 つまり、自国民ですから、犯罪者といえども「母国送還」もできない。
 国籍を与えるということは、その人間がどんな人間であろうと、まるごと引き受けると
 いうことです。 
 だからこそ、その付与には、ことさら幻覚に規制と丁寧な審査を設けるべきなのに、
 今の日本はいとも簡単に、EUの風潮に足並みを揃えているように感じます。
 わたしたちは、外国人を日本国民として、まるごと引き受ける覚悟が果たしてあるので
 しょうか。
・移民を考えるとき、人権という言葉に惑わされると移民は止めどなく増え、それを悪意
 をもった人たちに上手く利用され、
 「日本を倒すのに武力は要らない」
 「この国は住めば乗っ取れる」
 ということになる可能性があります。
 
・EUでは、すでに2011年ごろ、アフリカからの難民問題が深刻になっていた。
 EUに押し寄せる難民たちも、実は、自力で地中海を渡ってくるわけではない。
 彼ら自身も、まさかに木造船やゴムボートで地中海を越えられるとは思っていないこと
 は明らかだ。
 これは、沖に出れば速やかに救助されて、EUに運んでもらえることが前提となってい
 るのだ。
 彼らは密航斡旋業者に大金を支払い、木の葉のような船に乗り込まされる。
 ほかの選択肢は閉ざされており、犯罪者の甘言を信じる他はない。
 もちろん、救助されなければ、海の藻屑となる可能性は高い。
 救助は、以前は偶然通りがかった商船や漁船、EUの国境警備隊などで行っていたが、
 今では、その代わりに大活躍しているのがNGOの船だ。
 このNGGの「遭難救助」活動の裏には、それをちゃんと経済的に援助している財団が
 あるようだ。
 いずれにせよ、NGOの船はあたかもシャトル便のように、救助した難民をせっせとイ
 タリアやマルタに運んでいる。
・つまり、これと同じことは日本海でも容易に起こりうる。
 自分の国に愛想をつかした人々がボロ船を調達しておきに漕ぎ出せば、どこかのNGO
 が彼らを救って日本に運んでくるようになるまで、さして時間はかからないはずだ。
 日本海はあっという間に難民船がたくさん浮かぶようになるだろう。
・ただ、問題はそのあとだ。難民がパスポートを持っていることは稀なので、身元の確認
 もできないし、ほんとうに難民であるかどうか、確かめるすべもない。
 身元の確認できない人間を受け入れるというのは、リスクが高い。それは、中東難民に
 国境を開いたドイツが証明している。
・将来、もし、日本に難民が流れ着き、政治亡命を申請するようになれば、その中に多く
 のニセ難民が混じることは容易に想像できる。反日の不穏分子も来るかもしれない。
 それでも日本政府は全員を受け入れ、衣食住、医療、教育など、すべてを引き受けるこ
 とになる。 
・また、母国送還は口で言うほど簡単ではない。
 まず、母国が特定できなければならないし、しかも、その母国が入国を認めなければ成
 立しない。
・日本にとって一番の大事は、中国本土からの難民でしょう。
 誰かの意図で、ウイグルや内モンゴル、あるいはチベットで抑圧されている人たちを日
 本に亡命させる手はずが整えられれば、すごい数の人たちが来ます。
 しかも、彼らは本当に迫害されているのだから、受け入れは日本の義務でもあります。
 母国送還は死を意味するので、それは絶対にできません。
・中国には、新天地を求めて、明日にでも石を脱出したいと思っている人たちがたくさん
 います。
 日本人のように、なるべくならば日本を離れなくないと思っている民族とは、頭の構造
 が違うのです。

誰も予想できなかった電力の逼迫・ブラックアウト
・電気は、常に需要量に合わせて発電しなければならない。
 これは、多くの人が知っているようで知らない事実です。
 しかも、需要と供給の量ができるかぎり一致するように発電しなければ、電圧野州端数
 が変動して様々な不具合が起きます。
 電圧が下がると、精密な機械はてきめんに動作が狂いますし、停電は、電気が足りなく
 なったときだけ起こるものではなく、発電量が多くなりすぎても起こります。
 だから、電力会社は常に天気や温度や社会現象を見つつ、刻一刻と変化する需要に合わ
 せながら、発電量を調整しているわけです。
 発展途上国でしょっちゅう停電が起こるのは、発電施設が不足しており、需要が急に増
 減するとうまく対応できなくなることが原因です。
 つまり、停電が起こらないのは先進国の証拠と言えるでしょう。
・ところが2021年1月、電気事業連合会が予想した電力使用率を見ると、余剰が3%
 を切るエリアがありました。
 もし、どこかの発電所が何らかの理由で脱落したら、大停電もあり得るという非常に危
 険な状態だったわけです。 
・なぜ、こんなことになったか?原因は、寒波で電力の使用量が増えただけではありませ
 ん。このときには、さまざまな原因が複合的に重なって、日本の電力供給の弱点が奇し
 くも露呈したといえます。
・現在、日本の発電の電源は多い順に,LNG35%、石炭32%、再エネ20%となっ
 ています。 
 LNGが多いのは、CO2の排出が石炭よりも少ないから。つまり気温温暖化対策のせ
 いです。
 ただ、石炭の備蓄は約30日分ありますが、LNGは2週間分ぐらいしかないので、
 船が着かなければまずLNGが足りなくなります。
・しかしながら、私が何より問題だと思ったのは、日本がいかに危ない橋を渡っていたか
 ということが、国民に知らされなかったということです。
 広範囲でブラックアウトが起これば、経済に及ぼす悪影響は破壊的です。
 それも寒い時期だったのだから、人命にかかわることだったといっても過言ではありま
 せん。
・なのに実際には、そんな危機感が頭をもたげないような配慮がなされ、結局、ギリギリ
 の妥協が、電事連の「節電へのご協力のお願い」だったというわけです。
 つまり、これは、「暖房なども切り詰めてください!」という節電要請ではなく、
 「いらない電気は消しましょう」程度のお願いに留められ、広く一般の国民の知るとこ
 ろとはなりませんでした。
 政府が考える国民の安寧というのは、あたかも、国民に心配をさせないことであるかの
 ようです。
・これは、国防に関する態度と、まるで瓜二つではないですか。
 そうするうちに、実際に、国民は節電をしないまま、そして、自分たちの置かれた状態
 を知ることもないまま、事なきを得ました。
 国民に正しい情報を与えないことが正しいやり方だとは、私には決して思いません。
・もちろん、電力会社は今回の反省を踏まえ、LNG偏重の見直しが行われ、石炭備蓄が
 増やされるかもしれません。
 しかし、問題は本当にそこにあるのでしょうか。
 再エネ電気の供給の激しい増減に対応できるような頑強なシステムを構築するというこ
 とは、普段は必要ない発電施設をさらに増やすことにほかなりません。
 また、LNGへの偏重を防ぐということは、石炭火力を見直し、石炭備蓄をさらに増や
 すことです。
 それらの対策はエネルギー安全保障に鑑みた場合、真に国益にかなうことなのでしょう
 か?
・日本が調達する燃料は、石炭にせよ、石油にせよ、LNGにせよ、いずれも輸送距離が
 長く、その経路の状況は必ずしも安全とは言えません。
 最近では南シナ海やホルムズ海峡、アラビア海などが、中国の横暴や、中東の政情の乱
 れのため治安不穏になっており、タンカーの走行はいつ妨害されてもおかしくない状態
 です。
・こんな状態だというのに、肝心の国民は何の心配もしていません。
 では、せめて日本政府だけは真剣にエネルギー安全保障を考えているかというと、それ
 も疑問で、まさにその反対のように思えます。
 中でも不安材料の最たるものが、「カーボンニュートラル」と、それに伴い様々な「迷」
 政策です。
・2019年12月、新しい顔ぶれとなったEUの欧州委員会で新委員長のフォン・デア
 ・ライエン氏がイの一番で打ち出したのが欧洲グリーンディール計画でした。
 そのフォン・デア・ライエン氏に送れること0ヵ月、菅新首相が2020年10月の所
 信表明演説で、やはり2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言し
 ました。 
 おそらくEUに負けじと歩調を合わせたのでしょうが、いささか勇み足が過ぎます。
 経済を無視したポピュリズムの一種だと感じるのは、私だけでしょうか。
・カーボンニュートラルというのは、一見、環境政策のようですが、実は、エネルギー、
 産業、運輸、生物多様性、農業など、広範に影響を及ぼす包括的な新経済成長戦略です。
 穿った見方をすれば、公的資金を思う存分、特定の産業支援に回すための手段とも言え
 ます。
・しかし、2050年のカーボンニュートラルを本当の達成できると信じている政治家は、
 果たしているのかどうか。
 これは、早い話、対象をうまくセレクトした財政出動のように思えます。
 つまり、カーボンニュートラルという壮大なお題目を唱えることによって、世界のお金
 の流れを加速度的にある方向に変えようという試みです。
 そして、これを進めれば誰が得をするかということもすでに明確で、それは間違っても
 日本ではありません。
・それなのに、日本は「長いものに巻かれろ」的に、このような方向に舵を切ってしまっ
 た。
 このままでは、日本のためにならないことに、どんどんお金を使うことになります。
 つまり、国富をドブに捨てるばかりか、文字通り、日本の国力を弱めます。
 なのに、日本の政治家は、まさにその悪い方向にすごい勢いで突進し始めているのです。
・原発もろくに動いていない今、どうすればカーボンニュートラルかのうになるのか?
 なのに、無責任なメディアは何の疑問も呈さず、それに喝采している状態なのです。
・第1回「国・地方脱炭素実現会議」の議事録を読んで、私は少なからず驚愕しました。
 冒頭の小泉環境相の発言内容、
 「わが国には、豊富な再エネポテンシャルがある。地方ほど再エネポテンシャルは豊富。
 この強みを生かして再エネの地産地消を強化すれば、収支の黒字化とゼロカーボンの同
 時実現が可能」
小泉氏は、初動とスタートダッシュが重要と主張しています。
 つまり、今後5年の集中期間で、イノベーションの成果を待たずに既存技術でできる有
 効な重点対策に、まず取り組む。
 そして、そのモデルケースから脱炭素の輪を全国に広げていく。
 名付けて「脱炭素ドミノ」だそうです。
・これを読んだ時の私の気持ちを一言で表すなら、「こんな人に日本任せていたら大変な
 ことになる」という戦慄でした。
 再エネの実際の実力を無視して、「豊富なポテンシャル」をファクトと言い放つとは、
 無責任も甚だしい。
 「脱炭素ドミノ」という言葉に至っては、さまざまなキャッチフレーズもどきで国民の
 目を眩ましてきた小泉純一郎元首相を彷彿とさせます。
・そして結びは、
 「ロードマップの内容は、ただちにできることは直ちに実践していくとともに、国と地
 方の関係政策に反映しつつ、国と地方で一丸となって速やかに実践に移していきたい」
 具体策の提販は抜け落ちたまま、結局、ファクトは無し、着地点も明らかでなく、あま
 りにも空虚な言葉の羅列・・・。 
 カーボンがゼロではなく、実質内容がゼロです。
・CO2がどこから出ているかというと、世界の総排出の34%を発電部門が占めていま
 す。これは、鉄鋼業の3倍以上、自動車の排気ガスの4倍以上だそうです。
 そして、発電の電源というと、2018年現在、ほぼ8割が化石燃料。
 「カーボンニュートラル」に近づこうとするなら、この化石燃料を、極力、再エネに変
 えなければならないというのが、EUと日本の方針です。
・再エネは、いったいどう逆立ちすれば主力電源になれるのか?
 冷静に考えれば、現在の状況では、給電指令に応じられない再エネが主力電源になれな
 いことは中学生でもわかるでしょう。
 なのに、どの政治家もそれを言わず、あたかも可能だというような顔をしているのはお
 かしくないですか。

黙殺された豊田彰男社長の正論
・カーボンニュートラルの一環として現在、世界の自動車産業に課せられているのがEV
 電気自動車)の汎用化です。
 しかもこれが、かなり強権的なやり方で実行に移されようとしています。
 フランスは2040年からガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止するというし、
 ノルウェーは2050年、
 ドイツ、デンマーク、オランダ、スウェーデンなどは2030年、
 イギリスは2035年までに禁止です。
 そして日本も負けずに2030年にガソリン車の販売は停止するという目標を掲げてい
 ます。
・ガソリン車には、メーカーが百年かけて作り上げた高度な技術が凝縮しています。
 1台の車には、2万から3万の部品が使われ、その一つ一つに、ほとんどミクロと思え
 る規模の改良が、果てしなく加えられてきました。
 1台の完成車というのは、技術者たちの知恵と努力と試行錯誤がぎっしりと詰まった
 百年の改良の標本なのです。
・ところが、EVなら、そんなこれまでの百年の計が一切不要となります。
 EVの部品の数は約1万で済むというし、そもそもEVには古今の技術者が情熱を傾け
 て作ってきたエンジンがありません。 
 電動モーターは、無音で、振動が少なく、排ガスも出さず、おそろしく加速も良い。
 つまり、技術者たちが、あらゆるテクノロジーを投入して求めてきたものが、EVには
 最初から単なる特性として備わっているわけです。
・だから、ガソリン車やディーゼル車をEVに転換していくと、人も部品もノウハウも、
 そして、これまで高度な技術を駆使して部品の改良に励んできた優秀な関連産業も、
 ほとんど必要がなくなってしまう。
 そうなれば、日本の産業は間違いなく、地滑り的に一気に解体されていくでしょう。
・一方、その反対で、EV化によって甚大な利益を上げられるのが中国です。
 EVの心臓部とも言えるバッテリーは、もちろん、彼らが当初から目をつけ、育んでき
 た部門で、今や世界最大のバッテリーメーカーとなった中国のCATLはトヨタと提携
 するほどの実力派です。
 中国製のバッテリーが世界の市場を独占する日が来るのも夢ではなく、世界でEV化が
 進めば進むほど、中国に利益が落ちるという構造が出来上がります。
・こうなると、日本の自動車メーカーも苦しいが、もっと困るのは、おそらくドイツのメ
 ーカーです。 
 ドイツはすごい勢いで中国に車を輸出していましたし、中国での現地生産も進んでいま
 す。
 問題は、ドイツ国内ではEVの普及する気配がまるでないことです。
 中国向けにはEV,国内向けにはこれまで通り質の良いガソリン車などという二本立て
 は、はっきり言って無理です。
 生き残るためには、ドイツ市場、ヨーロッパ市場もEVに絞らなければならないでしょ
 う。
・そこで出てきたのが、過激なEVシフトです。
 現在、ドイツ政府は、EVの購入に、膨大な資金援助を付けています。
・いずれにしても、CO2を今すぐに削減しなければ、我われの地球は取り返しのつかな
 いことになるというストーリーは、すごい勢いで拡散され、世界中の環境保護者たちを
 感動させました。
 そして、一番喜んでいるのは、ほかでもない中国のはずです。
 中国はすでにEVの世界一の生産国です。
・では、日本は?日本の自動車メーカーの中国依存はドイツほどではありません。
 輸出先の1位はアメリカで、2位がオーストラリア。
 中国は3位で全体の5%未満
 もちろん、日本の自動車メーカーも中国に進出していますが、少なくとも中国依存はド
 イツよりは少ない。 
・それなのに現在、日本政府はわき目も降らずに、EUの掲げるCO2削減に向かって邁
 進しています。  
 当然、自動車メーカーの困惑は大きい。
 これに没頭しすぎると、これまで日本経済を支えてきた自動車産業と、広大なその裾野
 産業が総崩れになってしまいます。
・2020年12月、トヨタ自動車の豊田彰男社長の堪忍袋の緒が、ついにぶち切れまし
 た。ようやく、みなが変だと思っていることを発言する人が現れたのです。
・豊田氏の発言内容を、私なりにまとめますと、
 @「2050年カーボンニュートラル」が日本にとって何を意味するのかということを
  政治家はわかって言っているのか?
 Aメディアは正しい世論が形成されるよう、正しく報道せよ
 B間違った政策は日本経済を破壊する
 の3つです。
・私の見た限り、豊田氏は腹を括っており、記者たちに対して、「明日の朝刊で、私のこ
 とをどんなに悪く書いてくださっても構いません」とまで言っていましたが、多くのメ
 ディアはこれを無視するか、あるいは、吹けば飛ぶような記事に仕立てただけでした。
 日本のメディアの偏向さ加減に憤りを感じます。
・EUはハイブリッドを「電動車」に含みたくないのです。
 彼らは目下のところ、ハイブリッドが利便性とうまく合致する最長の技術だということ、
 そして、そのハイブリッドで圧倒的に強いのが豊田であることを百も承知です。
 だからこそ、ハイブリッドをどうしてもEU市場から締め出したい。
・ドイツの自動車メーカーはEV開発で遅れているため、とりわけ日本のハイブリッド車
 を非常に恐れています。 
・トヨタはまぎれもなく日本が世界に誇る大企業で、ここ半世紀の日本経済への貢献は計
 り知れないものがありました。 
 日本経済を支えているのは、昔も、そして今も自動車産業で、経産省はそれを「自動車
 の一本足打法」と言いましたが、その一本足の打者がトランプ大統領の関税攻撃で追い
 詰められても、助けようとしなかった。
 しかも、2030年代にガソリン車の新車販売をなくすと言っているわけです。
 一本足打者を駆逐した日本は、いったいその後、何で食べていくのですか。
・豊田氏は言います。
 乗用車400万台をEVにすれば、特に冬場は電気が10〜15%も足りなくなる。
 その量は原発なら10基、火力なら30基分。
 また、充電ステーション西部の投資コストが約14〜37兆円。
 なのに、「理解の少ない方々」が、ガソリンはやめろとむやみに主張している。
・地方の人々のライフラインは軽自動車の存在です。
 軽自動車は日本の国民車で、地方のモビリティの8割を担っている。
 しかも、日本の道路は軽自動車しかすれ違えないような細い道が全体の85%を占めて
 いる。  
 もし、カーボンニュートラルの美名のもとに軽自動車が庶民の手に届かなくなれば、地
 方は崩壊する。
・そして、実は、ドイツの事情もまるで同じです。
 ドイツは2022年に原発が止まれば、翌2023年より電気が足りなくなると予測が
 されています。
 電力の確保がおぼつかないままEV化を進めるのは無理な話ですが、そこは議論されま
 せん。
 また、都市を少し離れれば、自動車がライフラインである事情は、日本よりもさらに深
 刻かもしれません。
 そのライフラインである自動車を、補助金がついてもまだ高価なEVに変えて、充電ス
 テーションのない土地で使えというのは乱暴な話です。
・豊田氏曰く、日本の発電は現在8割近くが火力だから、同じ車を作るとき、たとえば、
 8割近くを原発で賄っているフランスより、生産過程でのCO2の排出量が多くなる。
 つまり、このままでは、ラディカルな脱炭素社会となりつつあるEU市場から、日本車
 はいずれ、ガソリン車もEV車も締め出される運命だと訴えています。
・なお、あまり知られていませんが、EVの完成時に行われる充放電の検査では、1台に
 つき平均家庭の1週間分の消費電気がただ無駄になるそうです。
 これを毎日、何千台分も行わなければならないということを、政治家はわかっているの
 かというのも、豊田氏の訴えの一つでした。
・本来、企業がイノベーションを進める一番の動機は、利益の向上であるはずです。
 そのために、消費者が求めているものを的確に把握する
 製品価格を下げるために技術革新がなされ、労働効率を上げるために合理化が進められ
 るのです。 
・消費者も、単に安いものだけを買うわけではなく、企業に、人権擁護や環境への配慮が
 あると見れば、それを支持します。
 つまり、人びとの理念、企業の社会への貢献、そして企業と消費者がよいバランスで結
 びついてこそ、イノベーションは、水が高いところから低いところに流れるように自然
 に進むのです。 
 国連がESGなど打ち出す前から、日本のイノベーションはそうやって進んできたので
 はないでしょうか。
・ところが、現在、大声で叫ばれているESGは、それとはほど遠いように感じます。
 政治が補助金の蛇口を握って、消費動向や、企業が何を作るのかをコントロールしよう
 としています。
 つまり、そうやって無理やり生み出されるイノベーションは、需要と供給の自然なバラ
 ンスの上に立っていない。
 これは、自由主義経済の基本を逸脱している危険なやり方です。
・アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンといった米国IT 
 企業と自動車メーカーの資本の差はすでに比べものにならないほど開いている。
 そのうえ、近い将来、これら巨大なIT企業がEV市場に参入してくることは、ほぼ確
 実なのです。
 日本には、そのような巨大な企業はありません。
 一番大きいのがトヨタなのに、政治がそれをつぶす方向に動いているのです。
・カーボンニュートラル政策では、多くの税金が補助金という名で一部の企業を潤し、
 最終的に損害を被るのが国民になりそうで、これはどう見てもおかしい。

カーボンニュートラルと地球温暖化危険論の問題点
・経産省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の付属資料によ
 れば、
 「経営者のコミットを求める仕掛けを作ることにより、政府の2兆円の予算を呼び水と
 して、民間企業の研究開発・設備投資を誘発」し野心的なイノベーションへと向かわせ
 る」ということです。
・では、何が野心的なイノベーションへの挑戦かというと、
 @電力のグリーン化+電化
 A熱・電力分野の水素化
 BCO2固定・再利用
 の分野と経産省は言います。

・@の電力のグリーン化+電化ですが、グリーン化というのは再エネを増やすことを指し
 ています。 
 ただ、そのうちの多くを占めることになるであろう太陽光は、化石燃料と比べると、
 いわば密度の大変薄いエネルギーなので、効率向上も、現在の10%を大幅に改選する
 ことは難しいと思われます。
 風力は、太陽光より効率は良いのですが、立地が難しく、また、大量導入には途方もな
 い面積が必要になります。
 それに結局はどちらもお天気任せなので、大容量の蓄電設備がない限り、どう考えても
 これを産業国の主要電源にすることは無理でしょう。
 商業的には採算の合う蓄電池はまだ完成しておらず、新しい素材の開発が必要です。
・Aの熱・電力分野の水素化は、やはり、再エネの弱点である電力の変動を吸収する手段
 として考え出されたもので、余剰電気で水素を作っておいて、足りない時にそれを発電
 などに利用するということです。
 しかも、化石燃料で水素を作っても、そのときに出るCO2を地中に埋めてしまえば、
 CO2ふりーの水素ができるということで、それを目指した画期的なプロジェクトが、
 今、日本とオーストラリアの間で進んでいます。
 何を使って水素を作るかというと、オーストラリアのビクトリア州の褐炭です。
 褐炭というのは質の悪い石炭で、そのまま燃やすとCO2が大量に出るばかりか、他の
 有害物質も出てしまいます。ちなみに、ドイツはこの安い褐炭が大量に採れ、いまだに
 発電施設で使っているため、CO2がなかなか減らないという問題を抱えています。
 日豪合同で進んでいるプロジェクトとは、オーストラリアの褐炭で水素を作り、排出さ
 れたCO2は地中に押す込み、その水素を液化して水素船で日本に運び、それを日本の
 港でタンクに荷役するという技術の実証です。
 新しい技術の開発という意味では有意義なことだと思いますが、設備も高額で、素人が
 考えただけでも、この電気が非常に高額なものになるだろうことは想像できます。
・基本的に、水素を電源にするということは、電気を水素に変え、水素をまた電気に変え
 るという二度手間で、その間に多くのエネルギーが失われます。
 採算を度外視した宣伝用プロジェクトならまだしも、実用化への道はまだまだ遠い。
 最近では、太陽光の最新技術による水素製造工場が福島の浪江で竣工しましたが、そこ
 でできる水素は、わずか150軒分の電気に過ぎません。
・いずれにせよ、これらの開発はすべて、CO2削減のためになされていることで、長期
 的には有意義なことです。  
 しかし、そのために、今、どれだけの経済的犠牲を国民に強いることができるのか、
 CO2フリーの世界が、どれだけの幸せを国民にもたらすかが、きちんと議論されてい
 ません。
・日本は世界に先駆けて、昔からエネルギー効率の向上のためにたゆまぬ努力をし、しか
 も、それを着実に達成してきた国です。
 その日本がこの期に及んで、自国ではなく、他国に有利をもたらすだけのカーボンニュ
 ートラルに、どこまでお付き合いをするべきか、もう一度考えるべきだと思います。
・BのCO2固定・再利用は、これも実証的に成功した例はまだありません。
 しかし、それでも、おそらくこの3つの中では、一番現実味があると思われます。
 輩出したCO2を分離・回収し、あるいはコンクリートの原料の一部や、燃料として再
 利用する技術なども、日本が世界の最先端のところでしのぎを削っているようです。
・ただ、問題は、莫大な費用をかけて再エネを増やしていっても、CO2は本当に減るの
 かどうか? 
 おそらくそれほど減らない可能性が高いことです。
 実は、太陽光にせよ、風力タービンにしろ、設備の製造に多くの化石燃料を使いますし、
 発電の変動分を補うためには、たいていの火力発電所が必要となります。
 さらに、現在、問題になり始めているのが、太陽光パネルや風車の廃棄の際のエネルギ
 ーです。
 廃棄に関する問題は、現在、世界中が電動化を進めようとしているEVのバッテリーに
 ついても、まさに同じことが言えます。
・ただ、そこを追求すると必ず出てくるのが、
 「充電池はまだ高価だが、安価に生産する技術もいくつか開発中」
 「スマホのように、突然、イノベーションが進むかもしれない」
 などという、近づくと消える蜃気楼的楽観論です。
 開発している人たちは、おそらくそのような希望的観測は持っていないと思われますが、
 普通の人たちは、「もうすぐできるんだ!」と勘違いします。
 そして、莫大な投資に乗り出す人々は、おそらくそれを虚構と知りながら、儲けの匂い
 に引かれて、カーボンニュートラルに向かって果敢に進んでいきます。
 ただ、冷静に考えれば、これによって一番得をするのは、やはり日本ではなく、中国で
 す。
・しかも、中国の石炭プラント建設ブームは終焉に向かうどころか、これからますます活
 性化していくと思われます。
 中国の電源ミックスは6割が石炭だし、外国にも盛んに火力プラントを売り込んでいま
 す。
 現在、中国が1年間に新設している火力発電所の発電容量は、日本で動いているすべて
 の火力発電を合わせたぐらいの容量に達している計算になります
・中国で稼働中の原発の数は、現在、米国、フランスに次いで世界第3位ですが、新規の
 建設が急速に進んでおり、このままいくと、2030年には世界一の原発大国となる予
 定です。
 言うまでもなく、先進国では原発の建設はさまざまな要因でなかなか進まないため、
 中国、ロシア、将来はインドの原発が徐々に世界を席巻していくと思われます。
 ちなみに中国は、まず2030年ぐらいまでに国内の言の圧も100基程度まで増やす
 と盛だといいます。
・実際問題として、すでに中国は、太陽光パネルでも、風力タービンでも、EVでも、
 EVのバッテリーでも、世界でのシェアを独り占めにしつつあります。
・いずれにしても、EUが、中国と組んで儲けられると思って作り出したカーボンニュー
 トラルの夢物語は、たわわな実を結ぶ前に頓挫し、最終的に、タコが自分で自分の足を
 食べる形で終わるかもしれません。 
 その道を自ら作り出したEUによっては自業自得と言える話ですが、日本が無思慮にた
 だ追従し、ともに衰退の道を進むとすれば愚の骨頂ではないですか。
・日本がそういう疑いをすべて考慮に入れた上で、今は一応、野心的な目標を掲げ、国内
 産業のイノベーションに寄与する投資はしっかりと維持し、その一方で抜かりなく、
 後の調整の幅を持たせておくと言うなら、話はわかります。
 日本は幸いなことに、EUの同調圧力はあっても、EUの規則に直接縛られているわけ
 ではありません。 
 EUで、日本のことを親身になって考えてくれる国など、一国たりともありません。
 当然、EUに梯子を外されたときのことも考えておくべきでしょう。
・ところが、菅政権を見ていると、大いに不安を感じます。
 2050年カーボンニュートラルには日本の将来がかかっているというのに、そんなこ
 とは一切触れない。 
 それどころか、国民に人気の高い小泉環境相や河野行革相を前面に出して、「再エネで
 グリーン社会の実現を」という空気を、じわじわと作り上げようとしています。
 これを言っている限り、メディアからは叩かれず、国民受けもよいからだとすれば、
 これこそまさにポピュリズムです。
・日本経済の健全な成長を考えるなら、政府はまず安価な電力の安全供給を第一に掲げる
 べきなのに、その一番大事なことを誰も指摘しません。
 政治家がメディアと一丸になって、EUに追従していく姿には、戦慄を覚えます。
 これでは、隣でますます実力をつける中国に飲み込まれるための道を、わき目も降らず
 に突き進んでいくようなものではないですか。 
 誤ったエネルギー政策は、日本の経済を脆弱化させ、いずれ独立が脅かされるかもしれ
 ない事態を招くかもしれないことなど、これでは国民も気づきようがありません。
 
・CO2を減らしても地球の温度は下がらないと考える学者は、実は少なくありません。
 それを言い換えれば、地球の温度が上がっているのは、CO2のせいだけではないとい
 うことです。
・キャノングローバル戦略研究所の研究主幹である「杉山大志」氏によれば、猛暑も豪雨
 も山火事も温暖化のせいではないし、台風は今も増えてはおらず、シロクマは減ってい
 ない。
 寒さによる死亡のほうが暑さによる死亡よりはるかに多い。
 しかも、2050年にCO2をゼロにしても、気温は0.01度も下がらず、豪雨は
 1mmも減らないだろうということです。
・2017年、ドイツのメルケル首相と中国の李克強首相の共同記者会見では、
「我々は国際的な責任を担う」(李克強首相)
「創造物を守るためにパリ協定を必要とする」(メルケル首相)
 と盛り上がり、それをメディアが、
 「EUと中国、温暖化対策主導」
 と持ち上げました。
 しかし、中国は2030年までは、CO2を減らす義務もないし、これから国内外にど
 んどん石炭火力を建設しようとしています。
・もし、杉山氏の言うように、気候温暖化の原因がCO2ではないとすれば?実用化の見
 込みもない壮大な実権に注ぎ込んでいることにもなるのです。
・オランダ人のデルフト大学教授が、国連のグテレス総長に宛てて、気候変動による地球
 の危機など起こっていないということを訴えた公開書簡には、
 「現在の国際政治で広く使われている気候モデルは、その目的のためには不適切である。
 このような未熟なモデルに基づいて、何兆ものお金を無駄にすることは、間違いであり、
 懸命でない」
 と記され、多くの科学者が署名していました。
・イスラエルの天文学者ニル・シャヴィヴ氏は、「気温の変化はこれまでも常にあった。
 大きな影響を与えているのは定期的な太陽の活動で、CO2の影響は微小である」  
 という説を唱えています。
 「1000年前は地球の温度は今日と同じだった」
・しかし、多くの政治学者たちは今でも、人間が産業活動で輩出したCO2が地球の気温
 を上げたということを主張し続けており、それどころか、「グレタ・トゥンベリ」氏の、
 「このまままでは10年後に取り返しのつかない事態になり、地球が滅びる」
 という主張にも、意義を差し挟むことはありません。
・コロナ禍で世界的に産業が停滞したため、CO2の排出は減りましたが、2021年3
 月末に、WMO(世界気象機関)が発表したところによりますと、去年の地経表面上の、 
 CO2の濃度は、過去360万年で最も高かったということです。
 メタンガスの濃度も同様で過去最高。
・将来、CO2の排出量は、発展途上国の工業化につれて、さらに増えることは確実です。
 先進国がいくらカーボンニュートラルに向かって努力しても、おそらくCO2は減りま
 せん。しかし、それでも地球は滅びないでしょう。
・地球の温度を人間の力で変えようなどという大それたことを言いだした人たちは、おそ
 らくそんなことは百も承知で、何か他のことをグローバルのレベルで推し進めようとし
 ているのだと思います
 それなのに、日本は、その危険な道に果敢に踏み込んでいる。
 
エネルギー政策はドイツを見習うな
・日本でメディアがいまだに優等生のように報じているドイツでは、エネルギー政策の欠
 陥が日増しに明らかになっています。
 原発はベースロード電源を賄っていますが、2011年、17機稼働していたそれが、
 2021年3月現在、6基と減っており、2022年末にはそれらもすべて停まる予定
 です。
 減った分の原発の代替には火力が投入されているため、CO2は減りません。
 さらにいうなら、原発がすべて停まる2023年以降の代替え電源の見込みも、まだ立
 っていません。
 火力を増やして、CO2をさらに増やすことは、ドイツの世論が許しません。
 かといって、再エネがベースロード電源に代替することは不可能です。
 2020年には、ノルウェーの水力電気を輸入するための海底ケーブル「ノーとリンク」
 がついに完成し、12月には試運転もなされましたが、まだその電気を南ドイツに運ぶ
 送電線が不足しているため、活用できるところまではいきません。
・そうこうするうちに、ドイツの家庭用電気の料金はデンマークを超え、EUで一番高く
 なってしまいました。 
 電気代の高騰は、皮肉にも、再エネが急増したことが原因です。
・再エネは、さまざまな優遇を受けています。
 発電した電気は全量買い取ってもらえ、その買取費が一般消費者の支払う電気代に乗っ
 ています。 
・お天気次第で電気の需要のない時にまで一斉に発電するのが再エネの特徴ですから、そ
 ういう時には電機は余り、値段は市場の原則通り暴落し、買取費との差額が膨らみます。
 そして、その赤字分がすべて消費者の電気代に乗るわけですから、国民の電気代は上が
 ります。
 ちなみに、日本はこの制度を真似したわけですから、まさに同じことが起こっています。
・そのうえ、再エネの発電者は送電に必要なインフラも負担しなくてよいという破格の扱
 いです。 
 もちろん、安定供給の義務もありません。
・つまり、この状態は言い換えれば、再エネ発電者の儲けを、ドイツ国民全員が電気代と
 して負担していることになりますから、再エネが安いというのは、まったく正しくない
 のです。
 再エネの補助を全部剥がして、ほかの電気と平等に自由市場に入れるなら、発電者は現
 在のような利益を得ることは絶対にできないでしょう。
・ドイツで再エネが増えた結果、当たり前すぎる2つのことが起こりました。
 @風が吹き、太陽の照る日には再エネ電気が余り、既存の電力会社は火力発電所の出力
  をできるかぎり絞らなければならなくなった。
 Aかせが吹かず、太陽の出ない日には、再エネ電気が減り、電力会社は全力で発電しな
  ければならなくなった。
・再エネの発電者はどちらに転んでも損はしませんが、火力発電所の方は、出力を絞れば
 当然、売り上げが落ちます。
 かといって、再エネの昼夜の圧電量の差や、天候による差を吸収する役目を背負ってい
 るため、設備容量を減らすわけにもいかない。
 いつ太陽が翳るか、いつ風が止むかもわからず、また、1年で、何度かしか起こらない
 極端なピークのためにも、設備を待機させておく必要があります。
 電力全体から見れば、完全に無駄な二重投資で、自由経済ではありえない展開ですが、
 再エネが自由経済ではないところで保護されているため、この歪みが生じるわけです。
・ちなみに、現在のドイツの再エネの設備容量は、最大電力需要の1.4倍にも膨れ上が
 っています。
 天候に恵まれれば、それらが一斉に稼働し、発電するわけですから、電力会社の苦労が
 しのばれるというものです。
・2020年、ドイツの発電電力量の構成比では再エネの割合が4割を超え、それを称賛
 する声が日本でも上がりました。
 ただ、問題は、再エネが常に消費電力の4割を支えているわけではないことです。
 休日など電気の需要が少ない時にお天気が良ければ、太陽と風の電気で系統が満杯にな
 り、ドイツは仕方なく、ただのような値段でその電気を国外に出すことになります。
 それどころか、他の国でも電気が余っている場合には、なかなか引き取り手がないため、
 お金をつけて貰ってもらう事態まで起こります。
 それでもまだ余ると、発電者に補償を払って、発電停止を要請します。
・この状態を緑の党などは、「ドイツが電気の輸出国になった」と、再エネの成功物語の
 ように売る込むわけですが、ドイツが必ずしも「輸出」で儲かっているわけではありま
 せん。 
・なお、ドイツは1日も欠かさず、他国の電力の輸出入もしています。
 ドイツが電力を買っている国は、ダントツがフランス、そして、オランダ、スイス、デ
 ンマーク、オーストリア、チェコ、スウェーデン、ルクセンブルク、ポーランドと続き
 ます。
 ただ、フランスやスイスからは原発の電気、オランダなどその他の国からは、石炭の電
 気も来るので、ドイツが原発や石炭火力を悪の権化のように忌み嫌っていることに鑑み
 れば、余り理に叶っているとは言えません。
・そのドイツが国産の電源として、期待しているのは風力で、すでに現在、3万本の風車
 が立っていますが、これをまだまだ増やすつもりだと言います。
 ただ、景観やら健康被害などいろいろな理由で住民の反対が高まっており、建設は遅々
 として進んでいません。
 送電線の建設もやはり住民の反対で滞っており、2022年の完成予定を2025年ま
 で延したところです。
・なお、極め付きは、ドイツが2038年には火力もすべて止めるという意欲的な目標を
 掲げていることです。
 それに合わせて現在、褐炭、石炭の順で火力発電を減らしつつあるのですが、そうなる
 と、当面のところ、給電指令に応じられる電源は、揚水発電を除けば、ガスだけになっ
 てしまいます。
 これが果たして現実的な目標であるかどうかは疑問ですが、日本人はそれを聞いて恐れ
 入り、無責任なメディアが、ドイツを見習えと発破をかけています。
 エネルギーの安定供給、そして、膨大な経費を負担しなければならないことに一切触れ
 ないのは、正しい報道とは言えないのではないでしょうか。
・隣国との連携が完備し、ロシアのガスが陸上および海底パイプラインで生のまま輸送さ
 れてくるドイツでさえ、再エネが増えすぎると四苦八苦します。
 それを島国の日本が真似たのですから、その危うさは限りなく、一歩間違えれば亡国に
 つながる難事です。
 国家の密集地であるヨーロッパと比べて、島国日本には、外国と連携するパイプライン
 や送電線も存在しなければ、国産の資源もありません。
 国内の電力会社で融通しあえばよいという意見もありますが、北海道が夜なら、九州も
 夜ですし、台風は日本列島を吹き抜けます。
 再エネに依存しすぎると、早晩、停電になります。
・そのうえ、日本が輸入している燃料の輸送距離は長く、コストも高い。
 しかも、危険な海を通ってきますから、タンカーの走行はいつ妨害されてもおかしくな
 い状態です。  
 将来、ロシアとの間に海底パイプラインが敷設される可能性はあるでしょうが、何らか
 の政治的な確執が生じた場合、日本が、自国の国益を損ねないよう、ロシア相手に果敢
 に交渉することができるかどうかと考えると、かなり心許ない気もします。
 そもそも日本には、たとえ価格をつり上げられても、交渉材料とする弾が何もない。
 何か弾を作ってからでなくては、おちおちパイプラインも敷けません。
・日本の再エネ電気は、お天気が良ければ今でもすでにダブついています。
 ただ、お天気が悪ければ、たとえ太陽光パネルや風車をいまの2倍に増やしても、電気
 はなくなるのです。 
 その増減を補うため、火力の二重投資も続けなければなりません。
 そして、これらの経費をすべて電気代の乗せるのですから、「再エネ発電賦課金」も膨
 らんでいくでしょう。
・日本が、もし、本当にCO2を削減するつもりなら、原発抜きにはできないはずです。
 今、原発嫌いの多いEUですら、その結論に落ち着きかけています。
 日本はついこの間まで、安全な原発を自国で設計し、建設し、運用できる数少ない国の
 一つでした。
 しかし、福島の原発事故以後の空白のせいで、その技術が失われようとしています。
 今、立ち上がらなければ、日本は、原子力の先端地術まで、永遠に失ってしまう。
 もし、将来、やっぱり原発が必要だと気づいた時、中国やロシアに発注しなければなら
 ないとしたら、それこそ日本の政治の破産宣言にほかなりません。

電力自由化の罠にはまるな
・電気事業は、「発電」送配電」「小売」からなっています。
 これまでは、決まった電力会社がそれぞれの地域で、「発電」「送配電」「小売」のす
 べてを一括して行ってきました。
・電気事業はこれまで、「総括原価方式」という料金制度に守らせてきました。
 これは、電気という重要、かつ公共性の高いものを自由市場に任せてしまうと、不都合
 が起きるという考え方に基づきます。
 民間企業は利益の出ないことをする義務などないから、もし、自由化されれば、安定供
 給が損なわれ、電気料金が暴騰したり、極端な話、過疎地には電気が来なくなったりす
 るかもしれない。
 また、万が一、経営状態が悪化して設備投資が滞り、停電が頻繁に起こっても困るし、
 倒産等されたら、もっと困ります。
 あるいは、自由化の下では電気も投機の対象となりますから、発電量を絞って、価格の
 高騰を目論む電力会社が現れないとも限らない。
 実際に、電気を自由化した後の米カリフォルニアでそれが起こり、大停電を招いたこと
 もありました。
・いうまでもなく、電気は国民にとってのライフラインです。
 安定的で、適正な価格での供給が崩れれば、日本経済への打撃も計り知れません。
・ところが、1990年代から、ヨーロッパやアメリカで電力の自由化が始まりました。
 それに続いて、日本も徐々に、自由化が進められることになったのです。
・日本の経産省は「総括原価方式」を自由市場の障害と見たようです。
 絶対に損をしない料金体系に守られていては”殿様商売”に陥り、イノベーションが起こ
 らず、経費の無駄が見逃され、サービスが硬直し、電気料金が高くなる。
 このような寡占状態は、改められるべきだという考えです。
・自由化の目標は3つでした。
 @消費者の選択肢を広げる
 A電気料金を下げる
 B供給を安定させる
 このモットーの下、電力自由化が段階的に進められ、2016年4月から電気の小売が
 自由化されました。
 そして、2020年4月には、ついに「発電」「送配電」「小売」が完全に別会社にな
 ったのです。
・その結果、何が起こったかというと、まず、小売業者が一気に増えました。
 大規模発電者から電気を調達して販売している大手から、単に卸売市場から買った電気
 を売って利ザヤで儲けようという零細企業まで、とにかく群雄割拠。
・本来自由市場というのは、事業者は投資した費用を必ずしも回収できるかどうかわから
 ないものです。 
 ところが、現在の発電事業者は、再エネを電源としている限り、電気を固定価格で優先
 的に買い取ってもらっています。
 これは、これは自由化とは真っ向から対立する制度ですから、この矛盾が需要と供給に
 基づく価格決定を不可能にし、自由化を不安定にしているわけです。
 ほんとうの自由化にするためには、再エネの特権をなくしていく必要があるでしょう。
 では、残る「送配電」はどうなっているのか?
 送配電設備は重要なインフラで、設備投資は莫大になり、しかも、収入は原則として電
 気の通行料に限定されるため、採算は合いません。
 つまり、自由化はできない部門と言えます。
 そこで、別会社として分離はしたものの、地域独占や総原価方式は残されます。
 そして、最終的には託送料は電気代に乗ります。
 いずれにしても2020年4月で、日本における電力の自由化はようやく完成したわけ
 です。
・2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、「市場を自由化
 してはいけない」3つの領域として、医療、教育、電力を挙げています。
・自由化後に参入した電力の小売り業者、これを新電力と呼んでいますが、新電力には自
 分で発電設備を持たずに、市場で調達した電気を転売していた事業者も多かった。
 つまり、そういう新電力は、急騰した仕入れ値に対応できず、窮地に陥りました。
 また、再エネの発電施設を持っている新電力も、この時期、太陽光は一切役立たず、
 売る電気が無くなりました。
 ただ、それでも、顧客の家が停電になることは、もちろんありません。
 送電網はつながっているので、どこの電力会社と契約していようが、発電できる電力会
 社がある限り、電気は常にコンセントから出てきます。
 だからこそ、新電力のセールスマンは、顧客を勧誘する際に、「停電することは絶対に
 ありません」と強調できるのです。
・つまり、新電力が売る電気がなくなった場合、発電設備を持っているこれまでの事業者
 が全力で稼働してそれを補います。 
 ただ、補ってもらっている新電力には、当然、あとでその分の料金が請求されることに
 なります。
 つまり、国客が電気を使えば使うほど、新電力は借金が嵩むという図になってしまいま
 した。
・問題はほかにもあります。新電力のプランはさまざまで、固定料金で電気を買っている
 顧客もいれば、市場値段に連動するプランで買っていた顧客もいました。
 固定料金で電気を買っていた顧客は、それほど被害は受けませんでしたが、売っていた
 方は大赤字で、経営破綻は確実となりました。
 一方、連動価格の電気を買っていた顧客は、普段の何倍もの請求を受けることになった
 わけです。
・つまり電力にでき度の自由化が必要だったことは理解できますが、すべてが自由化の美
 名のもとで進められた結果、いろいろなことが犠牲になっている感は否めません。
 安定供給の責任の在処までがあいまいになってしまうなら、それは、長期的には、日本
 の電力事情を不安定にすることにつながります。
・電気は国民のライフラインであるばかりでなく、産業の大動脈です。
 日本の高度成長は、いかにして電力を十分に確保するかの戦いでした。
 日本のようなハイテク産業国では、停電は数秒起きただけで甚大な被害が出ます。
 ましてや、その供給が不安定になれな、日本は産業国を放棄しなければならなくなると
 言っても過言ではないでしょう。
・2021年初頭、ほとんどの国民は電力が逼迫していることさえ、知らなかったのです。
 もし、万が一、停電になっていたなら、いったい誰がその責任を負ったのでしょうか。
 政府は都合の悪いことに蓋をするのではなく、エネルギーが、国家の安全保障という意
 味でも重要な役割を果たしていることを、もっとちゃんと国民に知らせてほしいと思い
 ます。

日本の独立には原発が必要
・今の日本では、国民の間でエネルギーの重要性が認識されているとは、とても言えませ
 ん。
 しかし、思えば、近代に入ってからの戦争は、たいていエネルギーをめぐって起こって
 います。
・2018年の日本の一次エネルギーは、石油、石炭、LHGが85%以上を占めていて、
 そのほぼ全部を海外に依存しています。
 しかし、その輸送路である中東の情勢が極めて不安定なので、本来なら、日本は供給の
 安定のため、あらゆる手立てを尽くさなければならないはずです。
・エネルギー政策で失敗すれば、日本の産業は間違いなく瓦解します。
 しかも、それは、あっという間でしょう。
 燃料が尽きて交通手段が途絶えるとか、電力供給が不安定になるというところまでいく
 ずっと手前、つまり、燃料費が高騰しただけで、産業の瓦解は確実に起こります。
 そして、これは架空の話ではないのです。
 その可能性がここまでリアルに想像できるのに、国民が何の危機感も持っていないとい
 うことが、はっきり言って驚きではあります。
・しかも政府は能天気に、あらゆるものを電化しようとしています。
 その電気はいったいどこから来るのでしょうか。
 再エネ増やせば解決するように言われていますが、太陽光や風力は発電が間欠的で、増
 えすぎると系統が不安定化する。
 その他の電源として上がっている水素やアンモニアは、いずれも開発中で、まだ商業的
 菜実用化には程遠い。
 そのうえ、水素を作るにも電気は必要なのです。
・さらに、あと9年足らずで、ガソリン車の新車登録も辞めると言います。
 強制的にEVシフトが行われるとして、いったいその車は何で充電するのでしょうか?
 化石燃料で発電した電気なら、CO2削減には貢献できません。
 しかし、その肝心なことが一向に語られず、政治家はきれいごとばかり並べたてていま
 す。 
 本気でCO2を減らす気で、しかも産業国であり続けたいなら、日本のエネルギーは原
 発抜きでは不可能だと思います。
・資源エネルギー庁は、2018年に出したエネルギー基本計画で、2030年の電源構
 成における原発の割合を22〜20%と打ち出しています。
 しかし、同時にここには、「可能な限り原発依存度を低減する」という相容れない目標
 も含まれています。
・その結果、この10年、電力会社は原発をほとんど動かせないまま安全対策に莫大なお
 金をかけ、その代わりを務めている火力発電のために、やはり莫大なお金をかけて燃料
 の石炭とガスを輸入しています。
 当然、これらが電気代をつり上げ、国民の家計を圧迫し、日本企業の国際競争力を弱め、
 海外に追いやることになります。
・ついでに、本当にこれが環境のためか、と疑問に思うことを付け加えます。
 EVのリチウムイオン電池。環境にいいというEVのために、その原料のリチウムやコ
 バルトの需要が急増しています。
 リチウムの採掘も環境に優しいとはとても言えませんが、とりわけコバルトは問題が多
 く、アフリカのコンゴでは、爆破した岩盤の中から、子供たちがあかい粉塵の舞う中、
 防護服もマスクもつけずに、素手で茶色のコバルトを含む石を集めていると聞きます。
 コバルトは、放射性物質です。
 皆、目、皮膚、肺をやられる。
 EU諸国が「惑星のために」と言ってEVを推進し、途上国の子供達が文字どおり犠牲
 になっているというのは、ものすごく矛盾の多い話です。
 ちなみに、コバルトの使用量は、巣孫が5〜10g、ダブレットが30g、ノートブッ
 クが100gに対し、EVは10〜15kgと桁違いです。
 なぜ、環境団体はこれを言わず、EVをオールマイティーのように扱うのでしょうか?
・反原発を叫ぶ政治家の典型が、小泉純一郎菅直人の元首相コンビで、この二人の妄言
 は筆舌に尽くしがたいものがあります。 
 中でも一番困るのは、「原発、なくても大丈夫なんだ」(小泉氏)という主張。
 本来なら国民は、原発が止まっているがために、自分たちがどれだけの経済的犠牲を強
 いられているか、ましてや、日本という国にとってこの状態が、国防上もエネルギー安
 全保障上も、どれほど危険な綱渡りであるかということを知らされなければならないの
 に、「一番大切なのは人の命だ。原発などきっぱりやめてしまえ!」と、現実をあっさ
 りと蹴飛ばしてしまう無責任さです。
・日本が、国際競争に晒されていなかった時代なら、国民の相違で産業の発展を止め、
 鎖国でもして質素に暮らすという選択肢もあったかもしれませんが、現代社会ではそれ
 は通用しません。
 そもそも、お金のある人が精神に暮らそうというなら、それは哲学でしょうが、お金が
 ないので清貧にしか暮らせないとすれば話は別です。
 すぐに外国資本が参入し、日本をあっという間に植民地化するでしょう。
・小泉氏はドイツを例に挙げ、「あの日本の福島の原発事故を見て、ゼロに踏み切ったん
 ですよ」と言っていますが、現在のEUで脱原発を高らかに掲げているのはドイツだけ
 で、他の原発国はそれを真似る気配はありません。
 スウェーデンは止めると言ってたのを撤回したし、新たに原発に舵を切ろうとしている
 国もあります。
 東欧の国々は、ガスでロシアに依存するのを嫌うため、原発というオプションがタブー
 ではありません。
 例えばポーランドは新説を、ハンガリーは増設を考えています。
 そもそも、フランスが原発を減らして困るのは、そこから毎日電気を輸入しているドイ
 ツでしょう。
・わたしが一番驚愕したのは、菅氏の次の言葉です。
 「営農型太陽光発電という、日本には400万ヘクタールの農地がありますけれども、
 その農地のうえでお米や麦や野菜を作りながらですと、作りながら、そのうえで、太陽
 光発電で電気を起こす。この営農型太陽光発電だけでも、日本がいま使っている電力の
 すべてを賄うことが、理論上は、理論上は可能だということがわかりまして・・・・・
 少なくても日本では、国土が比較的狭い中では、この農地を使うというのは画期的なこ
 とでありますので、そのことをぜひ実現したい」
・農地に太陽光パネルを引き詰めれば、そこは陽が十分当たらず、雑草は生えるが、農地
 としては制約が生まれます。 
 それに、現在の農業はフルに機械を活用するのに、パネルを並べてどうやって機械を入
 れるのでしょうか?
 蛇足ながら、400万ヘクタールに太陽光パネルが並ぶと想像すると、おそろしい光景
 です。しかも、そのパネルのほとんどは中国製になるのでしょう。
・パネルには、寿命があります。寿命がきたり、破損したりしたパネルは処分しなければ
 なりませんが、中国製のパネルには、ヒ素やアンチモンなど有害物質が含まれています。
・太陽光パネルの寿命は風力の回転羽よりも短く、2030年後半には、日本では年間
 20〜80万トンのパネルが廃棄される見込みです。世界では500〜2000万トン。
 アンチモンは発癌性が疑われ、ヒ素は毒性が高い。
 現在、出回っているパネルの有害物質の含有率は、そのまま埋め立てると地下水を
 汚染するレベルに達すると言います。回収後のガラスの行先も不透明です。
・それより、さらに論理破綻しているのは、この「営農型太陽光発電」で生まれる電力だ
 けで、日本が今使っている電力のすべてを賄うことが、「理論上は可能だ」と言い切っ
 ていることです。 
 夜間は?梅雨など全国的に太陽が照らない時期は?
 おそらくそれを指摘されれば、「蓄電技術がどんどん発達しているよ」で済ますつもり
 でしょうが、ほんとうに地機電技術がそこまで発達しているなら、誰も苦労はしません。
 現在、かろうじて機能している蓄電は、揚水式の水力発電のみで、バッテリー類は、ま
 だどれも広域で実際の役に立っているわけではありません。
 近い将来、採算の取れる実用化が完成する気配すらないのです。
・なお、日本の政治家でもう一人、将来の実力者として期待されながら、やはり日本の衰
 退を早めているように感じられてならない人、「河野太郎」氏についても書き足します。
 河野氏が2020年6月、迎撃ミサイルシステムの「イージス・アショア」の配備計画
 を唐突に停止したことは記憶に新しいところです。
 それも、あまりだれにも相談せずに、ほとんど一存で決めたと言いますが、いまだにそ
 の理由がはっきりとはわかりません。
・河野太郎氏は、元々は脱原発を掲げていましたが、安倍内閣に入ると、一時、現初反対
 は封印。 
 そして、その外相時代に大臣の私的な研究会として再エネの課外展開を検討する委員会
 を立ち上げ、防衛相時代は防衛関係の施設には再エネを供給すべしとの指示を出し、
 現在の規制改革相になってからは、風力発電の環境アセスの規制緩和です。
 現在、四つもの大臣職を兼任している河野氏ですが、では、日本の最重要課題であるエ
 ネルギーの安全保障について、一体どうしたいのかということは、一向に見えてきませ
 ん。
 特に、将来の日本のエネルギー政策の要となるはずの原子燃料サイクルに対する彼の考
 えがわからないことが、今後、日本を背負って立つかもしれない河野氏であるがつえに、
 とても心配です。
 
原子燃料サイクルは国家戦略
・原子力発電の燃料であるウランの鉱山はオーストラリアやカナダやカザフスタンにあり、
 原石を精錬して不純物を除いたものが、俗にいうイエローケーキです。
 ただ、この天然ウランには、そもそも、燃えるウラン、つまり核分裂するウランはたっ
 た0.7%しか含まれていません。
 それをウラン濃縮という複雑な工程を経て、最終的に核燃料に仕上げます。
・出来上がった核燃料では、核分裂するウランの割合が3〜5%、あとは核分裂しないウ
 ランです。 
 熱は、核分裂するウランが分裂する際に発生します。
 そして、これを炉内で3〜4年燃やすと、燃焼後にはその割合が変化して、核分裂する
 ウランが約1%に減り、新しく約1%のプルトニウムが出来、3〜5%の高レベルの、
 放射性廃棄物が発生します。
 核分裂しないウランの割合は93〜95%と、発電前とそれほど変わりません。
・そのウランとプルトニウムを、使用済み核燃料から取り出し、もう一度燃料(MOX燃
 料)にして使おうというのが、「原子燃料サイクル」です。
 なお、MOX燃料は、すでに世界でこれまでよく千数百体ほど使用されています。
・ただ、再処理は、原爆の材料となりうるウランやプルトニウムを取り出す技術ですから、
 誰もがやってよいことではなく、本来なら、核保有が認められている米英仏露中の5カ
 国にしか許されていません。
 それを例外的に日本ができるのは、米国が特別に認めているからで、日本の信用の高さ
 を物語っています。
 同じ米国と原子力協定を結んでいる韓国は、米国の同盟国ではありますが、日本と同等
 の権利は持っていません。
・この原理燃料サイクルを手がけているのが、青森県六ケ所村の日本原燃株式会社です。
 ウランの濃縮技術を持っているのは米国、フランス、イギリス、日本。
 もちろん、ロシアやイランも持っているでしょう。
・ちなみに、六ケ所村で開発した濃縮のための遠心機は、世界でトップクラスの性能と言
 われ、欧州ウレンコ製の遠心機のそれをも上回るものだそうです。
・現在、すでに日本のいくつかの原発でもMOX燃料が使用されていますが、これらは、
 使用済みの核燃料をわざわざフランス、あるいは英国に運び、そこで加工されたものを
 再び輸入したものです。 
・もし、六ケ所村の原子燃料サイクルが軌道に乗り、国産のMOX燃料の製造が可能にな
 れば、資源貧国の日本にとってはまさに鬼に金棒です。
 ウランの輸入を減らせるし、ガスや石炭など他のエネルギーへの依存度も下がる。
 おまけに核廃棄物の量も大幅に縮小できます。
・高濃度の核廃棄物は、使用済み燃料全体のわずか3〜5%で、100万キロワット級の
 原発が1年間稼働した際に発生する高レベル廃棄物の量は、ガラス固化体にして20本。
 固化体の大きさは高さが1・3メートル、直径40センチの円筒形です。
・六ケ所村の再処理工場が稼働すれば、年間800トンの使用済み年商を処理することが
 でき、最大130トンの燃料の製造が可能になるそうです。
 今、日本に貯蔵されている使用済み核燃料は約1.9万トンありますから、それを回収、
 再利用すると、日本の必要とする電気の約1.5年分が賄える計算です。
・ただ、現在、他の問題が出てきました。せっかく燃料サイクルが始まろうというのに、
 多くの原発が止まっているため、MOX燃料を装荷する炉がないのです。
 2020年末、電事連が2030年までに少なくとも12基の原発でMOX燃料を装荷
 することを公表しましたが、現在、福井の高浜原発3,4号機、愛媛の伊方原発3号機、
 佐賀の玄海原発3号機のみしか動いていない。このままでは宝の持ち腐れになります。
・そもそも、2050年のカーボンニュートラルを謳うなら、2030年の時点で少なく
 とも30基の原発が必要です。
・思えば、青森県は不思議な場所です。核燃料サイクル施設の他にも、豊かな風を利用し
 た多くのウインドウパークもあれば、広大なメガソーラーもある。
 むつ小川原国家石油備蓄基地や核融合の研究施設、もう少し遠くを見れば、海上自衛隊
 の大湊基地もあるし、航空自衛隊の三沢基地もある。
 むつ市の釜臥山は恐山山地の最高峰ですが、その頂上の巨大なレーダーが、昼夜、日本
 の北の空を見張っています。
・原発を廃止し、放射能の危険がなくなればそれで良いのだという人はいるでしょうが、
 物事はプラスマイナスの双方からかんがえなくては間違った結果に陥ります。
 住民が1秒を争って逃げなければならないような事故が起こる確率は極めて微小なの
 に、それを無視して、まだ確立していない再エネにすべてをかけて突き進んでいけば、
 歪みが起きることは間違いありません。
 電気代が高騰し、電力の供給までが不安定になれば、それは、日本を一気に発展途上国
 に後戻りさせることになると、なぜ、誰も言わないのでしょうか。
・2020年10月、関西電力の高浜原発で、地元の町議会が40年を過ぎた1,2号機
 の再稼働に同意したことに因み、朝日新聞は「老朽原発『40年原則』を思い出せ」と
 いう社説を掲載しました。
・しかし、原発の場合、材質の疲労度も厳重に検査され、取り換えられる部品は定期的に
 取り換えています。  
 だから40年過ぎても何の支障もないし見た目も新品と見紛うほどです。
 世界の常識では、原発の寿命は現在、60年を通り越し、80年に向かっているのです。
・ドイツでは、止める原発と褐炭火力の分は風力で代替する方針だと言いますが、(太陽
 光発電は設備容量は大きいが、日没時と雨天で脱落するため、ベースロード電源として
 は当てにされていない)、風車で褐炭火力1基を代替しようとするれば約850本、
 原発1基分なら1330本が必要だと言います。
 しかし、ドイツにはすでに3万本近い風車があり、このままさらに増やし続けるという
 のは、景観も損なわれるし、あまり現実的ではないでしょう。
 また、たとえ風車がどれだけ増えても、風のない時には発電できないのですから、供給
 の安全を保障する意味で、将来はガスの重要性が増すことになります。
・実はドイツは、すでに危険なまでにロシアのガスに依存しています。
 ロシアからの輸入は、天然ガス全輸入量の3割内に抑えると言っていましたが、現在、
 すでにほぼ4割です。
・ノート・ストリームというのは、2011年に完成したロシアからバルト海を横切って
 ドイツにつながっている天然ガスの海底パイプラインです。
 その他、昔ながらのウクライナやポーランド経由の陸上パイプラインを通じても、
 ロシアのガスは広く西ヨーロッパに供給されている。
・さらに、ドイツとロシアは、2本目の海底パイプライン、ノート・ストリーム2を作る
 計画を進めており、これが完成すれば、海底パイプラインを通じての輸送量は一気に倍
 増する予定です。
・ところが、2019年には開戦するはずだったこのプロジェクトが、今、宙に浮いてい
 ます。
 米国が、建設に加わった会社に制裁を加えると脅した途端、ほとんどの企業が下りてし
 まったからです。
・米国がノートストリーム2の建設に反対している理由はいくつかあります。
 まずヨーロッパがロシアのガスに依存しすぎるという懸念。すでに今でさえ、ヨーロッ
 パのガスは約半分がロシア産なのです。
 しかも、米国はNATOに莫大な経費をかけてヨーロッパを防衛しています。
 何から防衛しているかというと、ロシアの脅威からのはずなのに、肝心のヨーロッパ
 (実はヨーロッパではなくドイツ)がロシアと組んで商売に夢中です。
 これは当然、ばかを見ているのは米国だという結論になるでしょう。
・ただ、興味深いのは、ノート・ストリーム2に反対しているのは米国だけではないとい
 うことです。 
 実は、ヨーロッパのほとんどの国が反対している。
 ポーランドとウクライナは、ニート・ストリーム2が完成すれば、自国を通過している
 陸上パイプラインが御用済みになり、膨大なパイプライン使用量が見込めなくなるから
 反対。
 バルト海3国やスウェーデン、デンマークは、ロシアのヨーロッパに対する影響力がこ
 れ以上増強することを警戒して反対。
 イタリアなど南欧諸国は、ドイツが完全にヨーロッパのエネルギーの蛇口を握ることに
 なるので反対。
 そればかりか、肝心のEU委員会も、反対しています。
・要するに、このパイプラインもそうですが、脱原発も含めて、ドイツ政府の行なってい
 るエネルギー政策というのは、EUではおしなべて孤立しているという状況なのです。
・ただ、ヨーロッパにおける電力の連携の整備はどんどん進んでいます。
 ドイツ政府は、万が一、電気が不足したときのため、予備の火力発電所が国内外に用意
 されていることも強調しています。
・つけ加えるなら、現在、電気の不足したときに輸入している電気には、ドイツ人の嫌い
 な原子力や石炭・褐炭の電気も含まれます。 
 それを「欧州全域の電力統合」などと言う美しい言葉で呼んでみても、ドイツのエネル
 ギー政策の矛盾は隠せないと感じます。 
・しかし、肝心なのは、日本の状況です。電力を融通し合う隣国もなければ、風車を何万
 本も立てられる平地や遠浅の海もない日本の状況は、ドイツのそれより格段に深刻です。
 ですから、それを正しく認識し、どうすれば良いかを、安全保障の問題として、考えて
 いく必要があります。

「武装中立」「原発維持」のスウェーデンを見習え
・ここ30年、日本は悲しいかな、かなり衰退してしまいました。
 ドイツも興味深いことに日本と同じく伸び悩んでおり、どちらも世界の経済大国とはと
 ても言えない状態です。
 特に日本の衰退は急速過ぎると思います。
・そもそも、これだけ教育が発達し、みなが勤勉に働き、汚職が蔓延っているわけでもな
 いのに、にほんのGDPが伸びないというのは、政府の財政がうまくいっていないから
 でしょう。 
 適切な財政出動を適宜行っていれば、ここまで不景気が続くことはなかった。
 国の借金を増やさないようにと30年も緊縮財政をしき続け、日本を没落させた政府の
 罪は大きいと思います。
・他の国が、基幹産業に莫大な予算を投入しているというのに、日本政府は、日本の虎の
 子である自動車産業も、苦慮している重電メーカー医薬品メーカーも一向に救わない。
 そうするうちに、かけがえのない技術がどんどん外国に買われていきます。
 信じられないほどの無戦略です。
・一方、2018年にOECDが発表した小学校から大学までの教育に対する公的支出の
 GDPに占める割合では、2017年、日本はたったの2・9%で、38カ国中の37
 位でした。
 しかも、驚くべきことに、20年来、元正の傾向にあるのです。
 さらに言うならば、日本ではその代わりに家丁が負担している教育彼我大きい。
 これが進めば、家丁の資産の格差が子どもの教育の格差となって現れるという、平等な
 社会からほど遠い姿になってしまいます。
・こうして教育費をケチっている間に、当然のことながら、過去にはずっと米国に次いで
 2位を保っていた日本発の学術論文の数も減り、2016年は1位が中国、次いで米国、
 インド、ドイツ、イギリスで、日本は6位に落っこちました。
・2020年、菅政権ができてまもなく、日本学術会議の会員任命拒否問題が起こり、
 政府による人事介入、および学問の自由の侵害だとして抗議が殺到した事件がありまし
 たが、日本学術会議は、日本の学者には「軍事研究に慎重であれ」と言い、軍事に少し
 でも関係のありそうな研究には激しい圧力をかけ、断念させているという事実が指摘さ
 れていました。
 しかし、軍民一体の中国の「中国科学技術協会」とは、協力覚書などを結んでいるとい
 うのです。
 いうまでもありませんが、中国に限らずどの国においても、多くの研究は軍事につなが
 っています。
 いっそのこと、日本学術会議に付いている年10億円の予算は、世界のあちこちで戦っ
 ている企業の研究機関に回した方がずっと良い。
 日本学術会議の会員は、別に、日本学術会議がなくても、それぞれの職場で自由に”平
 和な”研究に携わればいいだけの話です。
・いずれにしても、米国やヨーロッパ、イスラエル、インド、そしてパキスタンまでもが、
 自分たちの領土が仮想敵国のミサイルの射程内に入りそうだとわかった時点で警戒度が
 増し、自分たちも同じだけの軍備を構築して抑止力としなければならないと考えます。
 つい最近も、英国が、「(ロシアの)脅威は流動的で強まっている。我々の安全保障上
 の体制が十分かどうかを常に確認する必要がある」として、核弾頭の保有数の引揚げを
 発表しました。 
 「多くの国が兵器の増強を図るなかで、英国の核抑止力が最低限のレベルを下回ること
 はできない」という明確な理由です。
・ところが、日本の平和ボケが顕著だったのが、またもや「朝日新聞」。 
 「英国も加盟している核不拡散条約は、核保有国に誠実な軍縮交渉を義務づけており、
 これに違反する疑いがある。貴重な国際ルールを維持する上でも、撤回すべきだ」と、
 まさに満開のお花畑です。
 日本が米国の核に守られていることは、すっかり棚に上げているところが朝日新聞らし
 いと言えば、言えるでしょう。
・2016年、スウェーデンはバルト海に浮かぶ自領であるゴットラント島に、冷戦後、
 撤退していた兵力を戻しました。
 さらに地対空ミサイル防衛システムを配備し、シェルターを作り、今、着々と核攻撃に
 備えています。
 ロシアの戦闘機がスウェーデンの領空に侵入したり、潜水艦がストックホルム沖を航行
 したりということが度重なり、緊張が高まっているからです。
 いうまでもなく、この状況は、中国が日本の領土、尖閣周辺でやっていることに酷似し
 ています。
・日本では、スウェーデンというと永世中立国として、軍部などとは無縁の国であるかの
 ような錯覚に陥っている人も多いようですが、この国は武装中立国家です。
 しかも現在、ロシアの脅威に対応して、兵力を5.5万から9万に増強中。
 2010年に停止した徴兵制も復活させました。
 しかも、今後は、年間の徴兵数を8000人に倍増させ、冷戦後に徐々に減らした連隊
 も復活させる予定だと言います。
 そのために2020年10月、スウェーデン議会は年間の軍事費を40%も増額したの
 です。
・なお、スウェーデンのお隣のフィンランドも、やはり2022年より軍事費を大幅に増
 強すると言います。
 フィンランドの首相は若い女性で、しかも左派ですが、国防は国家と国民の基盤である
 という考えはぶれません。
・特に最近、これらの国口を震撼させたのが、202年10月に発射実験に成功したとい
 われるロシアの国超音速ミサイルです。
 音速の9倍の速度を持ち、射程距離1000キロといわれるミサイル「ツィルコン」が
 ロシアの戦艦から発射され、バレンツ海の標的に見事命中したとされる映像がインター
 ネットでも見られます。
・当然のことながら、安全保障に敏感な国々は、エネルギーの確保にも抜かりない。
 スウェーデンの電気の多くはバイオマスなどの再生エネと原子力でやっていますし、
 フィンランドは現在3割強の電気を賄っている原発を増設し、2035年にはカーボン
 ニュートラル達成すると言っています。
・ちなみに、フィンランドは世界で初めて、地下450mのところに核廃棄物の最終処分
 場を建設し、最低10万年は閉じ込めてしまうことを決めた国です。
 日本が真似るべきなのは、ドイツではなく、スウェーデンであり、フィンランドです。
・もし、日本政府が、「ウイグルやチベットは抵抗するから犠牲が膨らむのだ。なるべく
 相手の意思を尊重して行動すれば、平和は保たれる」とでも思っているとするなら、
 私たちの将来はかなり暗くなるでしょう。
 これは私たちが、丸腰で平和憲法を掲げていれば平和が保たれるという考えに寄りかか
 って70年も過ごしてしまった報いかもしれません。
  
したたかなカーボンニュートラル戦略を
・2021年3月の日経新聞によれば、政府は石炭火力発電所の輸出支援について、新規
 案件を全面停止する検討に入ったといいます。
 つまり、これにより、石炭火力の輸出には、政府系金融機関による低金利の融資がなく
 なり、その結果、日本のインフラ輸出の柱が崩れることになります。
 これもまた、EUの動きに足並みを合わせた結果でしょう。
・石炭火力プラントの輸出の首を絞めにかかった先進国、アフリカやインドは、いったい
 どうやって電気を調達すればよいと考えているのでしょう。
 世界には、いまだに電気の恩恵を受けない人が、7億人もいると言われます。
・発展途上国にとって、一番安価で頼りになるのは、今のところ石炭火力です。
 石炭なら埋蔵量も豊富で、原発ほど高度な安全対策もなくて済む。
 運転もメンテナンスも途上国でも十分できます。
 ですから、開発援助をするつもりなら、良質な石炭火力発電所の建設支援するのが一番
 有意義でしょう。
・そもそも、欧米と日本がCO2を理由に石炭火力発電所の輸出を止めたからと言って、
 多くの発展途上国が石炭火力を諦める派とは考えにくく、結局、中国やロシアが大喜び
 で建設を進めるだけの話です。 
 それなら、日本が輸出したほうが、当然のことながら、日本に大きな利益が落ちますか
 ら、よっぽどましではないですか。
 最新のコンバインドサイクル発電所などは大幅な燃焼効率の改善で、CO2の排出も以
 前に比べて画期的に抑えられています。
 この点でも、日本は世界最先端の技術を有しているのです。
・日本は、安いものを大量に輸出して生きていける国ではありません。
 日本の歩むべき道は、他の国がそう簡単にはできない精巧な製品の開発であり、そのハ
 イテクを売ることです。 
 そのためには、教育が何よりも大切ですが、悲しいことにそれも疎かにされ、研究の環
 境はどんどん悪化しています。
・なのに、なぜ、日本政府は、高度な石炭火力プラントの輸出を妨害するようなことをす
 るのでしょう。
 やっはり、電気がいくらあっても足りない中国は、原発も、石炭火力も、再エネも、
 発電できるものは何でも建て、輸出もしています。
 とくに石炭火力は、1週間に1基完成していると言われるほどのブームだといいます。
 このままでは、彼らが世界中の発展途上国に火力発電所を建てることになるでしょう。
・経産省の資源エネルギー庁のページによれば、「日本は2013年度以降5年連続で、
 温室効果ガスの排出量を削減しています。これはG20の中で日本と英国のみで、合計
 で12%の削減は、英国に次ぐ削減量であり、直近の着実な対策でも世界をリードして
 います」と記してあります。
 小泉環境相は、なぜ、それをちゃんと発信できないのでしょう。
・火力発電の首を絞め、俯瞰的な戦略もなしにずるずると再エネに移行していくと、日本
 のエネルギー市場は近い将来、中国の草刈り場になっていくでしょう。
・中国の国有企業、上海電力は、にほんでの新エネルギーの開発と事業を行うために、
 2014年、全額出資の子会社、「上海電力日本」を設立し、丸の内に本社を構えまし
 た。 
 2019年には大阪、兵庫、つくば市、那須などで太陽光発電をスタートし、その他、
 用地買収を進めている最中です。
・中国では、海外で不動産や資源エネルギーへ投資しようとする企業は、有志のための審
 査を比較的簡単に通過できると言いますから、今後、中国の再エネ事業者は、そうでな
 くても安い太陽光パネルに加え、有利な融資という抜群の条件で、どんどん日本市場に
 入ってきます。 
 日本企業はとても太刀打ちできなくなっていくでしょう。
 エネルギーのインフラを他国の企業に握られることがどれだけ危険なことであるか。
 そして、それを放置しようとしている日本政府の無責任さを、我われはもっと真剣に考
 えるべきではないでしょうか。
・2011〜19年に世界で送電を開始した原発58基のうち、中国製とロシア製が44
 基と、約75%を占めたそうです。
 多くは両国内で建設された原発ですが、ロシアは2011〜19年に国外でも5基を稼
 働させました。
 ロシアは今、世界の原発輸出市場で圧倒的な勢いを誇っています。
 チェルノブイリで重大な事故を起こしたロシア(ソ連)ですが、あの時でさえ、彼らは
 原発を止めることはありませんでした。
・ロシアは現在も、インド、トルコ、イラン、バングラデッシュ、ベラルーシ―で計8基
 の原発を建設中だといいます。
 さらに、フィンランドやハンガリー、スロバキア、エジプト窓9カ国の18基下受注済
 みか受注の方向にあるようです。
・インドは現在21基の原発を持っていますが、ほとんどが自国製の小型原子炉(加圧水
 型重水炉)なので、電気が圧倒的に不足しています。
 また、その他の発電は、あまりハイテクではない石炭火力でやっているので、多くの町
 で大気汚染が非常に深刻です。
・イギリスは、長らく原発を建設していなかったため、その技術を失ってしまったと言わ
 れています。
 思えば、ついこの前までは、原発を設計し、建設し、運転できる数少ない国の一つが日
 本でしたが、この状態が続けば、やはり日本の原子力産業の貴重なノウハウも失われて
 いくでしょう。
・それに比べて、中国とロシアの企業の背景には国家が付いていますから、勢いもスピー
 ド感もちがいます。
 しかも、国内でどんどん建設しているので、技術はめきめきと上がり、価格は下がって
 いくはずです。
 大型の原発の建設に関しては、西側の国々はもうこの2国には勝てなくなるでしょう。
・では、日本は何をすればよいかというと、小型の柔軟なタイプの原発へのシフトとなる
 でしょうか。 
 ドイツもこの分野にはすでに目をつけています。
 次世代の原発は、米国では一歩先に承認される見込みですが、この分野における日本の
 役割は、大きな可能性が秘められているような気がします。
・小型原子炉のメリットは、工場で設備を作って現場に運んで設置できる点にあります。
 つまり、低コストかつ短期間で建設できるのです。
 また、万が一の事故の際にも、敷地外に放射能が拡散することはないといいます。
 米国が新型原子炉の開発に力を入れている背景には、中国やロシアとのエネルギー競争
 に負ければ国家の存亡にかかわるという危機意識があります。
・中国は、原発をどんどん増やしていますから、使用済み燃料を効率的に活用するため、
 早晩、再処理や、MOX燃料の製造を開始するだろうと思われます。 
 しかも、現在200発ぐらい持っているといわれている核弾頭を、まだ増やしていく方
 針です。
 つまり、プルトニウムやウランを大量に取り出せるようになれば、彼らこそ、本当に軍
 事転用する可能性が大です。
 NPTの核兵器国ですから、IAEAの査察も入りません。
・中国も北朝鮮も、彼らの核兵器は日本に向けられています。
 この2国も韓国も、まるで国是のように反日主義を貫いていますが、とくに中国の目標
 は一貫して「日本の弱体化」です。そして、それが今のところ、大成功しています。
 通商における日本の中国依存は、中国から輸入がストップすれば、車も作れない。
 建設工事もできないというほど進んでしまいました。
 また、軍事においては、領土や領海を侵犯しても、日本はもう何も言わないというのが
 状態となっています。
 なぜ、日本が中国の横暴を看過しているかと言えば、日本は抑止力を持たないからです。
・抑止力というのは、攻撃したら、仕返しされるということで成り立ちますから、両方が
 核を持っていれば、どちらも手を出せえない。
 核兵器というものは、戦争をするためではなく、攻撃されないため、つまり、戦争をし
 ないためにもつものです。 
 ところが、日本にはそれがないため、抑止力を持たない国、攻撃しても仕返してこない
 国です。
 中国にしてみれば、日本を自分のものにするまで、この優越をどうにかして持ちたいと
 思うのは当然でしょう。
・日本がごく短期間で核爆弾を製造し、報復してくるかもしれないとすれば、中国にとっ
 ては由々しきことです。
 そう簡単に威嚇も攻撃もできなくなって、自分たちの優越には影が差します。
 中国が六ケ所村の再処理工場や濃縮工場に神経質に反応するのは、そのせいかもしれま
 せん。
・2021年4月、日本に青天の霹靂とも言える事態が起こりました。
 自民党内に新しい議員連盟が作られ、その設立総会が開かれたのです。
 その名も「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員
 連盟」
 顧問には安倍前首相、甘利明元経産相、細田博之元幹事長などが名を連ねており、会長
 は稲田朋美元防衛相で、事務局長は滝波宏文参議院議員。
 冒頭に講演したのが、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と奈良林直東工大特任教授。
 この両者が、日頃から原発の必要性を弛まなく説き続けてきた人たちであることは言う
 までもありません。
・脱炭素に向けた動きについては、議連の会長を務める稲田氏が、「エネルギーコストの
 意味で国力低下のリスクがある」と指摘しましたが、これは中学生でもわかることです。
 なのに、今までどの政治家もそれを避けて通ってきた。
・それどころか菅首相は、カーボンニュートラルと言っていれば、国民受けが良いからか、
 実現の裏付けもないまま、「やればできる、がんばろう」的に、カーボンニュートラル
 を進めようとしています。いわば亡国の政策です。
・なお、公平を期すために言うなら、実は安倍前首相も、首相であった間は同様でした。
 「可能な限り原発依存度を低減」という政府の「エネルギー基本計画」に記された文言
 を修正することもできなかった。
 いや、支持率を気にしたために、わざと放置したのでしょう。
・ここで焦点となるのは、もちろん、改正「エネルギー基本計画」の中身です。
 同議連は、安価で安定的なエネルギー供給と脱炭素の両立を実現する上で、原発を「欠
 かすことができない基幹的なエネルギー源」と位置づけています。
 また、稲田氏は、「エネルギー基本計画」にある「可能な限り原発依存度を低減する」
 という文言を削除するべきだとまで考えているようですし、日本が持つ原子力の技術を
 「わが国が誇れる国産の技術」として重要視し、それが失われないよう、今後も活用す
 ることを目指しています。 
・なお、ここで奇しくも思い出すのは、戦後のNATOとドイツの関係です。
 NATOは、当初は「ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」ための西側の軍事同盟で
 したが、ソ連の脅威が増すにつれ、ドイツを抑え込んでいるわけにはいかなくなった。
 そこで米国は速やかに作戦を変更し、西ドイツに連邦軍を創設し、軍備を増強させ、
 さらに西ドイツとの核シェアリングにまで踏み込みました。
 こうして西ドイツは、対ソ防衛の最前線となったわけです。
 ドイツにはいまも、20発以上の米の核弾頭があるといいます。
・それと同じことが、今、アジアで起こっているのではないでしょうか。
 つまり、この急な動きは、米国の安全保障と連動している。
 対中防衛の枠組みで考えた場合、現在、米国がアジアで信頼できる最大の駒は、日本以
 外にないでしょう。
 つまり、地政学的に最前線となる日本の国力の増強は、アジアの平和のために必至だと
 考えたのではないでしょうか。
 そうだとすれば、これは、親中の傾向が強い菅政権にとっては、強烈な冷や水のはずで
 す。
・日本がますます中国側に引き込まれるという危機感が、米国側ではっきりと認識されて
 きたに違いありません。
 それが、最近の、日本のエネルギー政策の慌ただしい動きに現れているような気がしま
 す。
 このままいけば、おそらく米国はまもなく、日本は自国の防衛はもう少し自主的にやっ
 てくれと言うようになるのではないでしょうか。
 ただ、親中財界人と親中政治家の多い日本が、はたしてこの踏み絵を踏めるかどうか、
 私にはわかりません。
・菅首相が発表した、福島第一原発の敷地に溜まっている処理水の海洋放出のニュース。
 これも日本のエネルギー政策の前身を促すものです。
 菅首相が「福島の復興に避けて通れない、先送りできない課題だ」と言いましたが、
 こんな当たり前のことを日本の首相が公言するのに、10年もかかったのです。
・言うまでもありませんが、福島のタンクに溜まっている水は朝日新聞がいうような「汚
 染水」ではなく、ちゃんと処理された水です。
 最先端技術によって、取り除ける有害物質はほぼすべて取り除き、取り除けないのがト
 リチウムなのです。 
 だからこそ、トリチウム水は、定められた濃度以下に希釈し、定められた経路を通じて
 放出することが認められており、当然、世界中の原発では希釈した後、そのまま海や川
 に流すか、あるは、気体にして放出しているケースもあります。
 つまり、トリチウムは、厳密に言えば、世界の多くの国々の水道水にも含まれていると
 いうことです。
 もちろん、よほど大量に摂取しない限り、有害ではありません。
・腹立たしいのは、福島の「汚染水」を非難している人たちが、そんなことなど百も承知
 でやっているのだろうと思われることです。 
 特に、日本が海を汚すとして責め立て、いまだににほんからのすいさんぶつに輸入規制
 をかけている韓国では、日本海沿いにある月城原発が、年間136兆ベクレルのトリチ
 ウムを、1982年の稼働開始以来40年近く、基本的に日本海に放出してきました。
 それに比べ、福島に溜まっているトリチウムの総量は約860兆ベクレルです。
 しかも東電は、それをそのまま流すのではなく、WHOの定める水道水の基準の7分の
 1にまで希釈して、少しずつ放出すると言っているのです。
 そんな丁寧なことをしている原発が、いったい世界のどこにありますか。
・なぜ、日本だけが、いや、福島第一だけが、全世界の原発が流しているトリチウムを流
 せないのかと言えば、福島の漁業関係者が風評被害を恐れて反対しているからです。
 もっとも、正しいことを言っても信じてもらえないのが風評ですから、それを恐れる漁
 師の人たちの気持ちもよくわかります。 
・解決法はただ一つ。政府が率先して風評牧別のための広報をすることです。
 復興相や農水相が、自分の首をかけてやるべきでした。
 環境相ならなおさらよろしい。
 しかし、誰もそれをしなかったどころか、韓国の抗議にさえ六に反論していない。
 しかも、日本の主要メディアまでが、福島のトリチウム水のことを非難するだけで、
 なぜかほかの国のことは言わないのです。
 おかげで、日本はますます世界の環境を汚す張本人のような役割を背負わされています。
・今こそ、政治家は裏付けの希薄なカーボンニュートラルばかり宣伝しないで、間違った
 報道を訂正し、無事に海洋放出ができるよう応援してほしいと思います。
 そして、福島の事故以来、地に堕ちてしまった原発の名誉挽回を図り、日本経済を復興
 させ、日本が真の独立国として生き残れるように、力を尽くしてほしいと、心より望み
 ます。
・東京オリンピックから57年、経済だけに注力してやってきたのに、その経済が成長を
 やめてしまった。  
 しかし、国家という意識の欠けた私たちは、それを立て直すことがなかなかできません。
 国が強くなったように見えたのは、一時の経済成長による錯覚で、実際には、日本は国
 家として弱くなったのだと思います。
 このままでは、まもなく私たちは、いったい将来、何で食べていけばよいのかという深
 刻な問題に直面することになります。
・それなのに日本政府は今、産業を弱体させるかもしれない危険なカーボンニュートラル
 に突進し、原発を追い詰め、エネルギーの輸入に莫大な費用を注ぎ込み、石炭火力プラ
 ントも妨害し、優秀なガソリン車さえ手放そうとしています。
 国際競争に勝てず、多くのハイテク技術の研究が外国企業に売られようとしても、政府
 はそれを見て見ぬふりです。
 なぜ?それは、政府にも、私たち国民にも、国を守るという意識がないからでしょう。