浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ :サンドラ・へフェリン

この本は、いまから23年前の2000年に刊行されたもだ。
内容的には古い部分もあるかもしれない。しかしそれでも、ドイツ人気質を知るうえでは、
とても参考になると思える。
ドイツ人と日本人は似たところがあると言われることもあるが、この本を読むと本質的に
はまったく異なることがわかる。
それは、「豊かな生活」という考え方ひとつをとっても、ドイツ人と日本人ではまったく
異なっている。そしてやはり、ドイツ人の考える「豊かな生活」のほうが本物だと私は思
う。
日本人はどこか、イメージや雰囲気だけでものごとを見たり、判断したりする傾向が強い
ように思う。その証拠に日本のテレビのCMを見れば明らかだ。商品のイメージばかりを
流すCMがほとんどだ。それは日本の消費者はイメージで商品の購入の判断するからだ。
だが、ドイツ人は、広告そのものを疑い、嫌っているという。ドイツ人は、しっかりとし
た裏付けや根拠をもとに商品購入を判断する傾向がとても強いからという。
その他の点についても、個人的に私は日本人気質よりドイツ気質のほうが好きだ。

先般、GDPで日本はドイツにも抜かれ4位に転落したというニュースが流れた。
ドイツの人口は、約8千万人で日本の人口の七割弱だ。それでも、しっかり日本のGDP
を抜けるのだから、これは堅実なドイツ人気質を反映した当然の成り行きだなと私は思っ
た。
日本人は、昔も今も、感情や雰囲気、つまりそのときの「空気」でものごとを判断して生
きている。しかしこれは、表向きをいくら取り繕っても、中身がカラッポなのだ。
こんど生まれてくるときには、ドイツの国で生まれたいものだと私は思った。

前に読んだ関連する本:
ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか


はじめに
・節約には、人間が生きていくうえでのフィロソフィー(哲学)がある。
 逆に言うと、節約ぶりを見れば、その人のフィロソフィーがわかるということです。
・そこでドイツ人の節約と、日本人のそれを比較してみると、いわゆる「お国違い」とい
 った、対照的なフィロソフィーがあることに気がつきました。
・ドイツの親は、どうしたら最上の形で子どもが一人で生きていけるか、つまり、自立で
 きるかをまず考えます。
 それは、子どもがある年齢に達したときに考えるのではなく、生まれたときから、親は
 子どもの自立のことを考えるのです。
・ドイツ人は10歳で将来の進路を決めます。
 「そんなに早く決めたら、子どもがかわいそうだ」
 と思われるでしょうが、親はすでに10年もの間、子どもの将来に思いを巡らしている
 のです。
 ドイツでは、子どもが自立するときに重要なのは、職業だとされています。
 ですから、早い時期から、子どもの職業への適性を見極めようとします。
・ドイツのイヤは手先の器用な子を、語学能力のある子に育てようとはしません。
 持っている能力を伸ばそうとはしますが、もともと、劣っている能力を、努力を強いて
 まで人並みにするという考えはありません。
・ところで、日本はどうでしょうか?
 音楽の才能の有無を確かめず、子どもをモーツアルトにしようと、ピアノの練習をさせ
 る親が多いのではないでしょうか。 
 ドイツの親は、子どもの能力を信じますが、日本の親は、子どもの努力を信じているよ
 うです。
 つまり、努力こそ美徳、と考えているからだと思います。
 もちろん、ドイツ人も努力を否定しません。
 ただ、能力や才能を磨くための努力こそが、実を結ぶ努力と考えています。
・ドイツでは18歳になると、成人ということで一人前と認められ、さまざまな自由を手
 に入れることができます。 
 「一人暮らしの自由」「パートナー選びの自由」「パートナーとの同居の自由」・・・
 こうして、最後に行き着くのは「考え方の自由」「生き方の自由」ということになりま
 す。
・ただし、「考え方の自由」「生き方の自由」も、自立してることが前提です。
 だから、「考え方の自由」「生き方の自由」を主張しても、30歳にもなって親と同居
 している人は、社会的に
 認められません。
・また、自由の前では、男だから、女だからという差別はありません。
 女の子は心配だといって、親が過保護になったり、同居を強いたりはしません。それど
 ころか、どうしたら自立できるか、どうやって自分を守ることができるかを、徹底して
 教え込みます。
・じつは、ドイツ人は節約が侍立には不可欠な要素と考えています。
 一人暮らしはやりくりが必要です。
 一般の人は、それほどおカネを持っているわけではありませんから、節約することで貯
 金をしなければなりません。  
・なぜ貯金が必要かというと、貯金があれば、精神的に自由になれるからです。
 また、かりにパートナーがいたとしても、そのパートナーに依存しない、という精神的
 自立が得られるからです。
 また、貯金は転職するときにも「気楽にできる自由」を与えてくれます。
・節約の心を持たずに、浪費グセをつけてしまうと、おカネに困ることがあり、精神的に
 自由を奪われてしまいます。
 ドイツ人は、節約があって初めて自立が可能になり、自由が得られると考えています。
 だから、ドイツの親は、自立、自由への準備の一つとして、節約を子どもに教えるので
 す。 
・ドイツの親は、子どもに「健康的な警戒心」を持つことが自立していくうえで大切であ
 る、と教えます。
 「人を信じるのはいいことだけど、誰を信じるかを選びなさい」
 「最初に警戒心を持ち、人と距離を持って接し、後になり、いい人だとわかって心を許
 すほうが、逆よりましだ」
・また、ドイツの親は子どもに、
 「自由は素晴らしい。でも、自由には責任が伴うから、いまのうちから準備をしなくて
 はいけない」
 「自由になると、危険なシチュエーションに出くわすことがあるから、それに備える
 準備をするように」
・私の夢は、シングルマザーになることです。
 ドイツには「母子家庭」という言葉がありません。
 私がシングルマザーを望むのは、ドイツでは離婚が多いという事情にもよります。
 「私は大丈夫、離婚なんか絶対にしないで、幸せな家庭を築くんだ」などと、16歳く
 らいの女の子がいうようなナイーブな考えは持ちあわせていません。
・ドイツの結婚生活事情を見ていると、初めの何年かはうまくいっても、一人の人と一生
 暮らしていくのは難しいように思います。
 嫌になっても我慢しなければいけない。
 子どもの前で、浮気をしたしないでケンカをしたり、それでも結婚生活を続ける・・・
 そんなことをしたくないので、私はシングルマザーになりたいのです。
・しかし、シングルマザーとして生活していくことには、それなりのおカネが必要です。
 したがって、いまの私には、おカネを蓄えることが優先順位のいちばんですから、節約
 が必要になってきます。
 十分な蓄えをしてシングルマザーになったとしても、子どもを持つ母親として、無責任
 におカネを使うわけにはいきません。
 たとえ節約の必要がないくらいおカネがあったとしても、用心に越したことはありませ
 ん。
 いつまでその生活が続くかわからないからです。
 自分の事情で状況が変わることがあるし、外因的な事情、たとえば、不況だとか交通事
 故で状況が変わってしまいます。
・いたずらに恐怖心を持って生活することはありませんが、節約をして貯金をすることは、
 安心の材料になります。
 つまり、イザというときの、「健康的な警戒心」が必要なのです。
 健康的な節約を継続していけば、どんな状況になっても、生活レベルを急激に落とさな
 いですみます。
・節約生活を実践するうえで、気をつけなければいけないことがあります。
 それは、義務感からあまり神経質になりすぎてはいけない、ということです。
 
日本で暮らして本当に驚いた
・「義理」と「コンビニエンスストア」には絶対に近づかない。
 三年前に日本文化を勉強するために日本に来た私が、この地で暮らしていくうえで出し
 た結論です。
・自立しての留学生活は、収入の確保と本来の目的である勉強時間の確保を考えなければ
 ならないので、つましく暮らすことを強いられます。
・「入るを量りて出ずるを制する」ことを心がけています。
 この言葉は、いまのところ私の座右の銘です。
・私は父親の仕事の関係で、小学校二年生から五年生まで日本で暮らしたことがあります。
 たった四年間でしたが、すっかり日本びいきになり、日本を第二の故郷とさえ思ってい
 ます。 
 私はまた日本で暮らしたいと、21歳のときに再来日しました。
・ご存知のように、ドイツ人は世界的にもケチで有名です。
・ドイツ人のなかには「見栄」に余計なおカネをかける人がいますが、日本人も「見栄」
 に多大なおカネをかけます。
 それに加えて、私の観察では「義理」と「コンビニエンスストア」でも財布を軽くして
 いるように思えます。 
 この三つはムダ使いの元凶のように思えます。
・コンビニはその利便性から、「小さなおカネ」がまるで穴の開いたポケットから落ちつ
 づけていくようです。
 つまり「安物買いの銭失い」になってしまう。
 また、ゴミの宝庫でもあって、資源の浪費の源に見えるからです。
 環境保護に神経質なドイツ人には耐え難いことです。
・ドイツ人は格式張ったしきたり、習慣や義理で、人間関係を結ぶことが大嫌いです。
 もっとも、義理という日本語の持つニュアンスを、ドイツ語で完全に説明するのは大変
 難しいです。 
・義理には近づかないと決心した私ですが、いま困っているのは友人の結婚披露宴の招待
 です。
 日本人の友人が増えてくると、私の決心を試すような機会が増えてきます。
 なんとか理由をつけて、出席は遠慮させてもらっていますが、ときには、会費制とはい
 え、二次会には出なければなりません。
 それもお祝い金に、自分と相手の関係による相場があることにいたってはただただ驚い
 てしまいます。 
 日本の結婚に対する私のイメージは、結婚するカップルにも招待客にも、とにかくおカ
 ネがかかるものだということです。
・日本の結婚披露宴について、私に理解できない点を挙げてみます。
 ・お色直しがあること
 ・有名ホテルで結婚式を挙げ、披露宴をやること
 ・それも二時間、三時間と時間制になっていること
 ・勤務先の上司や同僚を招待すること
 ・プロの司会者を頼むこと
 ・引き出物があること
・ドイツでは、結婚式は新郎新婦にとって「楽しく大切な日」でなければなりません。
 だから、招待するお客様は二人にとってとても大切な人ばかり。
 最も大切な人は友人です。
 それこそ義理で親戚を招待することはあっても、勤務先の上司や同僚を、ただその関係
 だけで呼ぶことは絶対にありません。 
 結婚はプライベートなことであり、仕事とは関係ないと考えているから、仕事関係の人
 を呼ばないのです。
・ドイツでは挙式はカトリック系の場合、教会で行います。
 挙式は短時間で、パーティーはそれこそ時間無制限で行います。
 会場はたいがいは借り切ったレストラン。
 一般的には家族、友人が15人から20人くらい集まり、夜遅くまでワインを飲み、
 料理に舌鼓を打ち、ワイワイおしゃべりをして過ごします。
 ドイツ人はもたいぶることが嫌いなので司会者はいません。
・招待客は小さなプレゼントを持っていくだけで、日本のようにおカネを渡すことは絶対
 にありません。 
 結婚祝いもそうですが、クリスマスにしろ誕生日祝いにしろ、プレゼントはあまり高価
 な物は贈りません。 
 恩着せがましいと思われることを避けたいという気持ちと、あくまでも自然にという考
 え方、そして、気持ちが大切という信念からです。
 高価な有名ブランドのロゴ入りの品を贈るのは悪趣味だとされています。
・日本の習慣や行事を見ていて、日本人でなくて本当に良かった、と思うことがたくさん
 あります。例えば成人式。
 留学を望んでいた知り合いの女の子が、
 「成人式の着物はいらないから、そのおカネを留学の費用にしてほしい」
 と両親にお願いしたところ、
 「親戚の手前みっともない」
 と、両親は取り合わず、とても高価な着物を買ってしまいました。
 彼女の実家は地方なので、両親にとって「親戚の手前」という行動規準は、疑う余地の
 ない自然なものだったのでしょう。 
 この話を聞いて、私は即座に、
 「なんともったいない」
 とつぶやいてしまいました。
・災厄をこうむらないことを感謝しているのがお年玉です。
 お年玉は子どもいとってはうれしい習慣でしょうが、おカネに余裕がない大人は、ため
 息の連続で金欠うえに酸欠の状態になってしまうはずです。
 私はお正月に子どものいる家庭に絶対招待されたくありません。
・日本にはたくさんいいところがあるのですが、義理は私が最も苦手としているものです。
 義理のない生活は素敵で自由なうえに、出費も少なくてすみます。
 私は、義理にわずらわされなければ、みんなが楽に生きられるだろうと思ったりもします。
・たとえ相手が好きな人であっても、義理で何かをしたりすると、あまりいい気分になれ
 ないと思います。  
 あるいは、好意を抱いていない人に何かをしなければならないとすると、陰で悪口の一
 つもいいたくなるのではないでしょうか。
・だから、バレンタインデーの義理チョコは言語道断。
 ましてや職場の人のために一個何百円のチョコレートを何十個も買うなんてもってのほ
 か。 
 もし義理チョコの風習が独逸に持ち込まれたら、多くの人々は、チョコレート会社やお
 菓子屋の儲けに、なぜ貢献しなければならないのか、と腹を立てるでしょう。
 彼らは自分がおカネを使い、媚を売る風習だと受けとめます。
 それはアンビリーバブルな世界なのです。
・日本人は集団になると、協調性をもって機能的に行動します。
 日本の小学校に転校して、集団行動にとまどったことを思い出しました。 
 みんなと仲良くする、遠足、運動会、そして、朝礼といったなかば強制的な集団行動に、
 私は違和感を覚えました。
・ドイツだと、一年間同じクラスで過ごしても、名前だけしか知らないという子が何人も
 います。それは不思議なことではありません。
 もちろん、朝礼もなければホームルームもありません。
 また、部活もないので、サッカーやテニスをやりたければ、市中にあるスポーツクラブ
 に通います。
・学校は大学以外は全部午後一時に終わります。
 極端というと、学校は勉強して短い休み時間に仲のいい子と少し遊び、そして、家に帰
 ってしまうところにすぎません。
・ドイツ人が最も嫌がるものに「ゴマスリ」「おべっかい」があります。
・ドイツ人は日常の中で、「個人的」を大切にしています。
 「個人的であること」は「自分らしさ」の意味も含み、ドイツ人にとって、とても大切
 なことなのです。
・深夜のコンビニエンスストア。あまりに明るすぎて目を覆いたくなります。
 また、ファーストフード店の女性従業員の甲高い声、そして、どんな相手だろうとモノ
 トーンに機械的にオーダーを取り、笑顔をふりまくのもそうです。
 ドイツ人にはとても考えられないことなのです。
・伝統的な習慣がムダ使いの元凶なら、利便性を追い求める近代性にも同じことがいえま
 す。 
 また、人間にとっての便利さは、人間の際限のない欲求と技術革新によるモノの氾濫で
 もわかるように、いま、地球に大きな負荷を与えています。
・24時間営業のコンビニはドイツに存在しません。
 ドイツにコンビニができても、日本ほどに流行するかどうか。答えは「NO」です。
・まずドイツでは、いつでもどこでも買い物ができるのはいいことだ、と思う人があまり
 いません。
 また、一人分や一回分が便利、少量がお得、あるいは逆に、上品といった考え方もあり
 ません。
 ひとつひとつが安くても、何回も買うことで結局は高くつくと考えるからです。
・そのうえ、ドイツ人は生活のなかで「環境を守るための行動」「環境を救うための行動」
 をとることに違和感を持っていません。
 それだから、ドイツ人は便利さ、気軽さを理解できても、コンビニを使い捨てをモット
 ーしている存在と見るでしょう。 
・日本人にとっては、消費者の多様なニーズに合わせたきめ細かいサービスとなるのです
 が、多品種の一人用食品パッケージは、ドイツ人には絶対に受け入れられない代物なの
 です。
 一個ずつセロハンに包まれたおにぎり、ラップで覆われ発砲スチロールのトレイにのっ
 たポテトサラダ、スパゲティなどなど、ドイツ人はその品揃えから、大量のゴミを即座
 に連想してしまいます。
 きついことをいうようですが、コンビニの陳列棚に並んだ商品がゴミの山に見えてしま
 うのです。
・ヨーロッパにしろアメリカにしろ、一人用一回分、四人家族用一回分と小分けされた食
 品はほとんどありません。
 パックされていたとしても、その量は日本のものよりとても多いのです。
 四人家族だと一回で終わってしまう紙パック入りの牛乳などはないのです。
 その結果、廃棄するものが少なくてすむことになります。
・当たり前となっている生活習慣のなかには、ムダ使いを生むものが決して少なくありま
 せん。 
 義理、コンビニ、お化粧は、その象徴のように私には思えるのです。
 ・個人的であること(居心地がいいこと)
 ・環境を守ること
 ・実質性、自然らしさを大事にすること
 この三つが、最近のドイツ人が日常のなかで、とても大切にしている考え方、生き方で
 す。
 大量生産大量消費・廃棄の社会を否定するものでもあります。
・私の知る限りでは、日本人の一般的な節約は、生活を助けるために、大きな楽しみを得
 るための我慢として、あるいは趣味としてされているように思えます。
 ドイツ人の節約は、かつては生活を助ける目的でされていましたが、いまは先に挙げた
 考え方、生き方に基づいた結果、それが得られていると思います。
 もちろん、節約で得たゆとりは大きな楽しみに使うことができます。
 
ドイツ人は「節約」をこう考えている
・ドイツが位置するヨーロッパの中・北部は、もともと苛酷な自然環境の脅威にさらされ
 ていました。 
 厳しい自然が与えた物資は乏しいものでした。
 そのうえ、男たちが絶えず四囲の敵と戦うという歴史を持っていました。
 そのため、衣食はより貧しいものとならざるを得ませんでした。
・そうしてなかで、日々の生活は女たちの手にゆだねられました。
 子どもを生み育て、食糧の確保と保存、生活のために必要な道具と、衣食住の一切を創
 意工夫しなければなりません。 
 それどころか、戦う男たちのために武器までつくっていました。
 こうした歴史の積み重ねで、ドイツ女性は他のヨーロッパ諸国の女性に比べて、生活に
 対する合理性、実用的センスを高めてきたといわれています。
・ドイツ女性は生きていくための必要条件としてこれらを追求してきた結果、「ドイツ人
 はケチ」といわれるほどの質素倹約を暮らしの知恵としたのです。

・ドイツの環境対策は世界的にもかなり進んだものだと思います・
 ゴミはいつ出してもいいのです。
 小さな家のような建物のなかに、燃えるゴミ、見えないゴミ、ガラスなど、ゴミの種類
 に応じた大きな入れ物が置いてあります。
 大きなトラックが週に何度かやってきて、溜まったゴミを回収していきます。
・缶飲料の購買をやめようという動きがあり、日本ではどこにでもある缶飲料の自動販売
 機がありません。   
 缶は環境に負荷を与えるという認識が広まっているからです。
・ドイツといえばビールですが、ドイツ人は缶ビールを下品だといいます。
 私が日本で生活していてとても気になるのが、缶飲料とペットボトル入り飲料です。
 缶もペットボトルも日本のものはサイズが小さいので、一日に何本も買ってしまうこと
 になりかねません。 
 とても不経済だし、廃棄される缶やペットボトルの量が多くなってしまいます。
・最近のドイツでは、牛乳やヨーグルトが日本人がびっくりするほどの大きなサイズのガ
 ラスビンに入れられて売られています。
 空ビンは回収、清掃消毒をされ、再び使用されるというサイクルが徹底しています。
・スーパーのなかには、飲み切ったビンを消毒し、新しい牛乳をそれに入れます。
 他の飲料もガラスビン入りがほとんどです。
 学生も社会人もカバンのなかに、水や飲料が入ったガラス製のビン(とても頑丈で割れ
 ることがまずない)を入れて持ち歩いています。
・日本はじつに包装過剰です。
 デパートで買い物をすると、商品を紙で包み、それを入れる袋をくれます。
 いくつかの商品を買うと大きな手提げ袋もくれます。
 文房具屋でポールペン一本買っただけで、小さな袋に入れてくれます。
・ところが、ドイツでは買い物をしても袋をくれません。
 この袋をくれないということは一見、環境と関係ないようで、じつは大きく関係してい
 ます。 
・日本でも優良袋方式は生協を中心に広がっているそうですが、とてもいいことだと思い
 ます。
 全国で年間に使用されるレジ袋は、約28万トンのゴミになるといいます。
 また、レジ袋は石油を原料としてLLサイズの袋をつくるのに必要な材料と製造エネル
 ギーを原油に換算すると、年間で日本の一日分の輸入量に近い量を消費するということ
 です。
・ドイツ人は皆、他人に気に入られようとはしません。サービス業に従事する人もそうで
 す。お客様にサービスをして気に入られようとする考え方がないので、店の側も堂々と
 「環境を守ること」に力を入れることができます。
・包装は最低限、ショッピング袋、レジ袋は有料、袋に入ったおしぼりがない。
 ドイツは年間を通して雨の日がとても多いのですが、デパートやスーパーは濡れた傘を
 入れるビニール袋を用意していません。
 ビニールが環境に悪いからです。
・学生は小学生から大学生まで、学校指定の灰色がかった再生紙のノートを使っています。
 真っ白な紙のノートを学校で使おうものなら、
 「あなたは環境が大切じゃないの」
 と、クラスメイトに不思議がられてしまいます。
 まして、日本の文房具店で人気のあるキャラクターの絵が入っているようなノートを持
 っていけば、白い目で見られてしまいます。
 使い切ったノートはアルトパピア(再生紙をつくるための紙屑置き場)に持っていき捨
 てます。再生紙をまたリサイクルするのです。
・ドイツ人には、環境のために何かをするのが特別なことだという意識がありません。
 ドイツ人は根本的に重要なことに興味を示します。
 その自分たちの生き方に合うものの一つが「環境を守る」ことだととらえています。
 つまり、当たり前のこととして環境問題に向き合っているのです。
・人間は、自然が健全であるおかげで生きているということを、ドイツ人は皆、知ってい
 るからです。 
 空気が汚れ、水が汚れ、森が死んでしまっては、人間、動植物の命が脅かされてしまい
 ます。

・ドイツ人はありのままの形・姿を好みます。
 たとえば、自然については人間の手を加えない本来の美しさをそのままにしておきた。
 壊したくないという考え方が強いのです。
・また、身体によいものも、とても好きです。
 色や形がよくても、農薬を使ったリンゴより、茶色がかって形の整っていない農薬なし
 のリンゴを選びます。 
 日本と違って見た目のいいものが売れるということがないから、生産者や店は、そのこ
 とに腐心しなくてもいいので楽だと思います。
・ドイツ人は大変な健康オタクなのです。
 とくに若い人たちは健康にいい、肌にいい食生活に関心を高めています。
 その度合いは、日本人が健康に払うそれよりすごいものがあります。
・ドイツ人はこうと思い込むと徹底する性癖があります。
 何かに書ける意気込みがすごいと言い替えてもいいでしょう。
・ドイツの昔からの一般的な食事を紹介しましょう
 ・朝食:パン、バター、ハム
 ・昼食:豚の丸焼きとジャガイモ
 ・夕食:パン、バター、ハム(ソーセージ)、ビール

・ドイツ人は散歩を好み、森、湖畔、公園、家の近所をよく歩きます。
 ドイツの道は都会でも田舎でも木や緑が多く、歩道が広く散歩しやすくできています。
 ドイツには公園がたくさんあり、人々はいつも時を忘れるくらい散歩します。
・私も散歩が好きです。
 日本でもいろいろな場所に出かけますが、新宿御苑がとてもお気に入り。
 でも、これだけはなんとかして、とお願いしたいことがあります。
 夕方6時になると、以上に大きな音のチャイムが鳴りだし、
 「皆さん時間です。もう帰りましょう」という女性の甲高いアナウンスの声が流れるこ
 とです。
 私にとってパラダイスのような聖なる地に、それらが流れるのはとても不愉快です。
・夜になると閉園になる公園が多いことも不満です。
 ドイツの公演は昼も夜もいつもオープン。
 公園が閉まるというのは、ドイツ人の感覚からすれば、デパートじゃあるまいしと、
 なんだかビジネスの臭いがしないでもないとなります。
・公園について大不満をもう一つ。
 青々とした芝生地のまん中に「ゴミを捨てるのはやめましょう」と書かれ立て看板があ
 りますが、私には看板こそがゴミに見えます。
 ドイツ流にいうと、看板は「私の眼に対する侮辱である」となります。
 ドイツでは、美しくないものを見なければならないというのは、人間に対する侮辱なの
 です。  
・散歩は新鮮な空気を身体のなかに入れるために最適です。
 ドイツ人の散歩好きは「、「森が好き」「気分転換になる」「おカネがかからない」と
 いうこともありますが、最大の目的は、「新鮮な空気を吸う」ことにあります。
・だから、私は日本の通勤電車のラッシュが我慢できません。
 窮屈である以上に、車内に立ち込める淀んだような空気がたまらないからです。
・ドイツでは、乗客が窓を開けるのは珍しい光景ではありません。
 それどころか、困ったことですが、乗客同士が窓を開ける開けないのトラブルをしょっ
 ちゅう起こしています。  
・このように、ドイツ人は新鮮な空気にはうるさいので、部屋の換気も怠りません。
 朝晩と、一日二回は換気を行います。
 それも、窓という窓は全部、それぞれの部屋のドア、マンションだとベランダに面した
 戸もいっせいに開け放して、家のなかの空気を入れ替えます。
・健康のために、ドイツ人は自転車も好きです。
 森のなかの道を自転車に乗って走る人たちがじつに多くいます。
 ドイツの都会には、自動車のための道、自転車のための道、歩行者のための道が必ずあ
 ります。
 都会に住んでいても、車や歩行者を気にせずにサイクリングを十分に楽しめます。
 
・余談ですが、最近の調査によると、クリスマスの後に離婚するカップルが多いそうです。
 義理や無理矢理が嫌いなドイツ人でも、クリスマスは家族団欒のイメージが強いので、
 夫婦が不仲になったとしても、クリスマスが終わるまで別れないのです。
・離婚に関して言えば、ドイツ人は新しい生き方を求めることにためらいがありません。
 無理にやり直しをしようとは思わないのです。
 ドイツ人は一般的に保守的ですが、この点ではドライです。
  
・ドイツ人がいかに質実倹約かを書きましたが、最近はそうでもないという人たちが増え
 ています。
 この人たちは、プライドのために生活におカネをかけます。
 代表的なのが「シキ・ミキ族」と呼ばれている人たちです。
 シキ・ミキとは、鼻が高く(プライドがあって)、派手好きという意味で、ちょっと
 「トンだ人たち」です。
・日常生活のなかでは、彼らは一般的なドイツ人と同じで、しまり屋です。
 電気代、電話代、水道代というものにはとても細かく、いつも他人の目を気にして、
 見えるところだけにおカネをかけます。
 「隣りが新車を買ったぞ」「うちはバカンスはイタリアだったけど隣りはマロルカ島も
 行ったなんて」と。
 私は一般的なドイツ人なので、こういう会話を聞くと気持ちが沈んでしまいます。

・余談ですが、ドイツには「教会税」というものがあるのですが、その「教会税」を払う
 のが嫌で、最近、教会を脱会する人が後を絶ちません。
 ドイツはキリスト教の国ですが、プロテスタントとカトリックに分かれています。
 南ドイツ、とくに私の出身地であるバイエルン地方は、カトリックが多くいます。
・じつは、彼らは神様は信じていますが、ローマ教皇が大嫌いなのです。
 彼らは教皇への反発心を、次の言葉でいい表しています。
 「ローマ教皇はおじいさんで、子どもを育てたことも、自分の家庭を持ったこともない。
 おカネにも不自由していない。そんな人が、子どもは神の贈り物だといって、避妊を認
 めない。現実の社会には、貧困な家庭や、また、育児ノイローゼの人々がいる。ローマ
 教皇はいいかげんに目を覚ますべきだ」
 「こんな教皇と教会のために税金は払うのは、ムダ使いだ。節約したほうがましだ」
 
「節約」しても美しくなれる美容術
・ドイツ人の人間に対する美意識は、顔だけを特別視しません。
 顔はあくまでも身体の一部であって、全体の雰囲気、つまり、顔、髪、スタイル、しぐ
 さ、と言ったトータル性を大切にしています。
・日本に住み始めて五カ月が経ち、自分が太っていることにコンプレックスを抱きはじめ
 ました。
 私は典型的な欧米女性の体型をしています。
 日本女性はとにかく細くて華奢なつくりをしています。
 たとえ日本女性が太っているといっても、太り方がドイツ人女性とではまったく違いま
 す。
 とにかくドイツ人女性の太り方は、日本女性に比べてスケールが違うのです。
・肥満のことで心にひっかかりを覚えました。
 日本社会が肥満女性の人権を無視していることです。
 男性がごく当たり前の顔をして、女性に「やせろよ」とよくいっています。
・テレビや雑誌を見ると、ドイツ以上に肥満に対して神経質になっているように思えます。
 日本のメディアも女性も、もっとやせるのがよいことだと信じているようです。 
 多くの日本女性は太ってもいないのに、自分は太っていると思い込んでいます。
・日本人もすごく清潔好きですが、ドイツ人ほど清潔であることに敏感な民族はいない、
 と私は思います。 
 ドイツ女性ほど、他人が清潔にしていないとすぐ顔色を変える人もいないでしょう。
・ドイツ女性の清潔好きは徹底していて、日常使うタオルも自分専用のものを最低でも四
 枚持っています。 
 一つ目は大型のバスタオルで、入浴後やシャワー五に身体を拭くときに使います。
 次は中型のタオルで、これはグローブのように手を突っ込む形になっていて、これで毎
 日、首筋や上半身を洗います。
 また、普通の中型タオルは洗顔後の顔拭き専用に使います。
 さらに、小型タオル(日本のオシボリくらいの大きさ)があって、これは下半身専用で
 す。
・このように、ドイツ女性はタオルを使い分けて、いつもいつも身体を清潔にしているの
 で、日本人ほど入浴はしません。
 毎日入浴する人はほとんどおらず、たいがいはシャワーですませています。
・ドイツ人が入浴よりシャワーを好むのは、日本のように湿気が多くないという気候的理
 由もありますが、経済的理由もあります。
・環境問題を扱っている雑誌で紹介された記事によると、ドイツでは、お風呂よりシャワ
 ーのほうが、燃料費と水道代が三分の一ですむといいます。
 また、シャワーのほうがより衛生的だといいます。
 それはバスタブにつく汚れや湯垢のせいもありかもしれません。
 一人ずつバスタブに湯をためて入浴し、それを使い捨てにするのなら、その代わりに一
 人数分間のシャワーを浴びるだけで、年間最高100リットルと50%のエネルギーが
 節約できる、とその記事には書かれていました。
・ドイツ人は36度以上のお風呂に入りません。
 熱めのお風呂は身体に悪いと信じているのです。
 ドイツの家屋は暖房設備が完備され
 ているうえ、隙間風がまったくなく、湯冷めの心配
 がないからぬるいお風呂でも大丈夫なのです。 
 ぬるいお風呂に長く浸かっていると、身体の芯から温まって新陳代謝がよくなります。
 また、熱いお風呂にするより、ぬるいお風呂のほうが、その分だけ光熱費の節約になり
 ます。
・ドイツの健康オタクたちは、現代人は石けんやボディシャンプーで肌を洗いすぎるとい
 います。
 昔からの石けんはアルカリ性を示し、細菌やカビから肌を保護している酸の作用を弱め
 ます。
 もっとも、健康な肌であれば1、2時間後には回復して、保護作用を取り戻すことがで
 きます。
 一方、最近の合成石けんや合成洗顔料は弱酸性が中性なので、肌の表面を保護している
 酸を壊しませんが、肌を乾燥させます。
 また、液体の洗顔料やボディシャンプーに保存料が使われていることで、中にはアレル
 ギー反応を起こすものもあります。
 ともに欠点があるので、専門家の間でも意見が分かれています。
・そこで健康オタクたちは次のことを実践しています。
 ・洗顔料は少なめに使い、すすぎを十分にする。
 ・液状の洗顔料やボディシャンプーには保存料が含まれているので、固形の石けんを使
  用する。
 ・脂性の人は合成洗顔料、乾燥肌の人は脂肪分を与える従来の石けんを使う
 ・デオドラント剤(制汗防臭剤)を含む石けんや洗顔料は使わない
  (汗を分解したり肌を保護する細菌類を殺してしまうので、長い間使っていると、肌
  が感染やアレルギーに対して弱くなってしまう。ただし、脇の下の制汗剤(ロールオ
  ンタイプ)は使っている)
・私も液状の石けんではなく、従来の四角い石けんを使っています。
 使っていない石けんは洋服ダンスのなかに入れてあります。
 タンスのなかがいつもいい香りでいっぱいです。
 使って小さくなった石けんは、洗濯機に入れて洗濯に使用しています。
 香が衣類についてとてもいい気分が得られます。
・ところで、日本女性の肌がきれいな理由が二つある、と私は思っています。
 第一に食事です。魚やお味噌汁(とくにワカメと豆腐)が肌にいいように思えます。
 他に納豆、梅干し、たくあんなどの漬物(私の実感では、発酵食品が肌にいいように思
 います)、それにおソバ・・・。
・二つ目は、持って生まれたものであること。
 ヨーロッパ人、とくに北の女性に比べると、日本人女性の肌は丈夫です。
 日本人女性は欧米人の「持って生まれた白い肌」に憧れますが、じつは厄介な肌のトラ
 ブルが多いのです。
・欧米人の白い肌というのは敏感なので、10分ほど日光に当たっただけで真っ赤になっ
 てしまいます。そのため、シミやソバカスができやすいのです。
 深刻なのが皮膚ガンで、ドイツでは推定で毎年、5千人以上の人がかかっているといわ
 れています。これは、日本をはるかにしのぐ多さです。
・ところが、そんな皮膚が弱いにもかかわらず、ドイツ人は公園や自宅の庭での日光浴が
 大好きです。 
 それは太陽崇拝といってもいいでしょう。
 ドイツ人は太陽のイメージが強いところでバカンスを過ごします。
 日本人の旅行は、その地の文化を味わうといったカルチャーを大切にしますが、たいが
 いのドイツ人は、マロルカ島バハマのビーチで寝転がることを目的にしています。
 二週間のバカンスならその間じゅう、肌をきれいに焼くことに時間を費やすのです。
・ドイツ人には顔だけでなく、全身を焼きたいという願望が強くあります。
 「ここだけ青白いなんてみじめ」と水着の跡が残っていることを嫌がります。
 だから、外国のビーチで全裸になって問題を起こすことがしばしばです。
 そのため、イタリアにはドイツ人専用の全裸になっていいビーチがあります。
・ところが、この日焼けにしても、ドイツ人は持ち前のケチ精神をいかんなく発揮します。
 日本では、紫外線による肌のトラブルが問題になり、UVケアをうたった化粧品類がた
 くさん発売されていますが、なぜかドイツでは少ないのです。
 そのうえ、ドイツ女性はあまり日焼けクリームが好きではありません。
 日焼けクリームに含まれる成分のほうが肌に悪いと思っている人も多いからです。
・そこで、ドイツ女性は、自分の乳首の色を目安にして肌を焼きます。
 肌が日光にまだ慣れていない最初の日焼け時間は、乳首が淡い色の人は5〜10分、
 濃い色の人で20〜40分が目安とされます。
 このときは、日焼けクリームは塗りません。

環境に優しいキッチンづくり
・私の父は、レストランの善し悪しを決めるには、そのレストランのトイレに行く必要が
 ある、と大真面目に言っていました。
 トイレを見れば、そのレストランのすべてが見えてくるというのです。
 見えないところ、目につかない場所に気を遣っているレストランは、衛生面でも信頼で
 きるからだそうです。
・個人の家も同じで、キッチンとトイレを見れば、その家の主婦が肝心なところに気を遣
 う人かどうかがわかる、という人は少なくありません。
 初対面の人を見るときは、服よりも履いている靴を見ると、どんな価値観を持った人か
 わかるという、古くからあるドイツ人の常識に似ているものがあります。
・ともかく、ドイツ人はキッチンに正体のわからない化学物質が入り込むことを嫌がりま
 す。 
 合成洗剤、クレンザー、磨き粉、レンジ用洗剤、食器洗い機用洗剤、食器用洗剤などな
 ど、キッチンには化学合成洗剤がじつに多いものです。
 しかも、そのなかにどのような危険物質が入っているかは、最近まではほとんど知られ
 ていませんでした。
・洗剤だけがキッチンにおける危険物ではありません。
 鍋にも食器にも健康に良いとはいえない物質が含まれている可能性があります。
 さまざまな食材にも有害物質が含まれています。
 ハムやソーセージは、ドイツを代表する惣菜で、一般的な家庭なら毎晩、夕食に食べる
 ものです。
 ところがかつて、防腐剤や着色剤の人体に及ぼす影響のデータが完全に表示されていな
 いという理由で、食卓にのせない家庭が増えたことがあります。
 つまり、ドイツ人はなんでも徹底しないと気がすまないのです。
・ドイツの主婦は、次のようなことを一般知識として持っています。
 ・アルミニウムは、アルツハイマー病を促進することがあるといわれている
 ・セラミックは、状況しだいで鉛やカドミウムなどの有毒な重金属を出すことがある
 ・ホウロウは、毒性の物性を出すことがある
 ・銅は、酸を含む食材を使うとき有毒な化合物(緑青)を発生させる。
  銅製の食器は内側に錫メッキをするという決まりがあるが、使用しないのが賢明
 ・最近の食器に使われる錫は、鉛の含有量が少なくなっているが、その他にも有害物質
  を含んでいる可能性が高い
 ・合成樹脂でコーティングされている調理器具は、発ガン性物質(ベイブイル)を発生
  させることがある。  
・以上のような理由から、ドイツの主婦向けの雑誌や実用書では、以下のようなお鍋を推
 奨している。
 まずナンバーワンは、ステンレスのお鍋です。
 ステンレスからは、危険な物質が出ないとされているからです。
 料理にあたっては、焼いたり炒めたりするときには、合成樹脂でコーティングされてい
 ない鉄やステンレスのフライパンや平らなお鍋が理想的といいます。
 耐熱陶製のキャセロールは、危険がないということでおススメです。
 また、アルミ製のお鍋、銅製食器(錫メッキがされていても)は使わない。
・ドイツのお年寄りは食器洗い機に眉をひそめます。
 手で洗ったほうが節約できると考えています。
 でも、それは間違いだと私は思います。
 一日三回、毎食後に手で洗っていると、水と時間の浪費になります。
 食器洗い機だと一日一回か、食器で一杯になったときに動かすので合理的です。
 また、食事の後の汚れた食器をそのなかに入れるので、シンク(流し)は雑然とならな
 くてすみ、しかも衛生的です。
・子どもがいる主婦は、子どもの世話で時間に追われていて、三度の食器洗いは大変な負
 担になります。食器洗い機で一度ですまし、浮いた時間を子どもと一緒に過ごそうとい
 う主婦が増えています。
 統計によれば、毎日の食器洗いにかかる時間は、手洗いだと平均一時間、食器洗い機だ
 と20分だそうです。 
・ドイツにも「時はカネなり」という言葉があります。
 時間はおカネ以上に貴重です。
 過ぎた時間は二度と戻ってきません。
 家事を仕事とする主婦であっても、貴重な時間を食器洗いに割いてしまうのは悔しいこ
 とではないでしょうか。
・ただ、食器洗い機の使用には、環境を汚すので好ましくないという意見もあります。
 たしかに、食器洗い機用洗剤には腐蝕作用のある成分や漂白剤、消毒剤が入っています。
 食器洗い機にはすすぎ剤や洗い機を洗うための洗剤も必要となり、水を汚します。
 環境をとにかく汚したくないというのであれば、面倒でも手洗いにするべきかもしれま
 せん。  
 環境をとにかく汚したくないというのであれば、面倒でも手洗いにするべきかもしれま
 せん。
・ドイツもそうですが、日本も衛生観念が非常に強い国です。
 日本ではO−157菌の食中毒やサルモネラ菌などの活躍もあって、キッチンの消毒は
 極度に進んでいます。
 しかし、その行き過ぎが新しい化学物質の汚染を招くことだってあるのです。
 つまり、化学物質から遠ざかることは、より健康的で安全になれることであり、一方で
 おおいに節約できる道である、と私は思います。
・中性洗剤とクレンザーとお湯、これだけで、食器洗いからキッチンの汚れや油取りまで
 十分にできるといいます。 
 もちろん、ブラシやスポンジは欠かせませんが、たったこれだけですから、ものすごい
 節約になります。
・食器洗いのエコロジー節約術
 ・安全を第一に、節約を第二に考えるなら、面倒でも食器は手で洗うことです
 ・水で十分に予備洗いすれば、洗剤の量も少なくてすみます
 ・水を節約するため、シンクいっぱいに水をみたしてから洗います。
  水を垂れ流しにして洗うのは水資源のムダ=おカネのムダです
 ・洗剤はノズルから一回噴射させるだけで、シンクいっぱいの水に対して十分です
 ・どうしても食器洗い機を使うなら、食器がいっぱいになってから洗い、リン酸ナトリ
  ウムや塩酸を含まない洗剤を使うようにしましょう。
・お鍋やフライパンの汚れ、焦げ対策
 @食器と同じように、十分水で予備洗いをした後、洗剤で洗い流します。
 A焦げついたお鍋は金タワシなどでこすってはいけません。次の方法を試すとよく取れ
  る場合があります。
 ・タマネギを入れて煮る
 ・濃い塩水で煮る
 ・紅茶の葉で煮る
 ・ミルクの焦げは酢で洗う
 ・水と合成洗剤を入れて放置しておく
 B魚の臭いが残っている場合、濃い酢またはレモン汁で洗い、その後、水洗いをします。
 Cカレー、シチューなど焦げやすい煮物は、あらかじめ小名目の底に皿を伏せて煮ます
・キッチンの汚れ取り対策
 @油が飛び散ったら、冷えて固まる前にすぐ拭き取る
 A乾燥して固まったシミは、食器用洗剤を垂らして、その後、拭き取る
 Bレンジなどについた焦げは、クレンザーとスポンジタワシだけで拭き取る
 Cシンク洗いは、出がらしの紅茶の葉を磨き粉代わりにして洗うと、油気がよく落ちる
 Dオーブンの掃除は、まだオーブンが温かいうちに新聞紙で拭く。その後、クレンザー
  でブラッシングする
 Eオーブンの臭い消しは、掃除した後に、オレンジかレモンの皮を200度の高熱で約
  10分焼くと取れる。
・ジャガイモの知恵
 ジャガイモはドイツ人の主食です。
 それなのに、毎年何人かのドイツ人がジャガイモの中毒で命を落とすのが不思議です。
 ジャガイモの芽は、ともかくナイフでふかくえぐって取り除くことが大事です。
 ジャガイモを長持ちさせるためには、ザルに入れ熱湯をザッとかけます。その後、陰干
 しにします。  
・タマネギを長持ちさせるには、半分に切って、切り口にサラダオイルを塗り、お皿に伏
 せておきます。 
 同じように、レモンも切り口に酢を塗ってお皿に伏せ、冷蔵庫に入れておきます。
 
ドイツの主婦はお掃除が命
・ドイツの主婦は、一般的に料理にあまりマメではありません。
 むしろ、自分で料理するだけマシ、と考えている主婦が多いくらいです。
 正直なところ、掃除にかかる時間がかかりすぎて料理にまで手が回らないということも
 あります。
・こうして、ドイツ料理といえば、ソーセージとジャガイモばかりということになってし
 まうのです。 
 だから、ドイツではキッチンに貼ってあるカレンダーには、料理の献立予定表はなく、
 家族の行動予定が書きこまれています。
・専業主婦ともなれば、一日じゅう、食器磨き、窓ガラス磨き、キッチンとトイレ(バス
 ルーム)の掃除、アイロンがけをしていると言っても、言いすぐではありません。
 それにベッドメーキンにも余念がありません。
・ドイツ人はアイロンがけにもうるさく、シーツ、下着、靴下など、人の目にあまり触れ
 ないものにもまでアイロンをかけます。 
 シワクチャのTシャツなどとんでもないという雰囲気がこの国にはあります。
・靴磨きにもかなりこだわります。
 靴は革製で10年は履けるものを買います。
 履く前、脱いだ後には必ずブラッシングをして、靴クリームを塗ったりスプレーをした
 りします。 
 脱いだ後は、型くずれを防ぐためにシューズキーパーを入れておきます。
 底がすり減ったら早めに修理に出します。
 靴はその人の人格を表すとされているので、ドイツ人は靴を大切に扱うのです。
・ドイツ人にとっての豊かな生活の条件の一つが、ケアが行き届き長持ちさせた高価な革
 靴を履くことです。 
 毎日、同じ靴を履くのは、足にも靴にもよいことではないので、ほとんどの人が質のい
 い革靴を最低三、四足そろえています。
・ドイツの主婦はキッチンとトイレの美観には、メチャクチャに気を遣います。
 トイレが美しくないと豊かな生活をしているとはいいがたいと、それは信仰に近いもの
 があります。
・冬に日本の家庭の招ばれると、居間は暖かくてしてあっても、トイレに入ると寒いとい
 ったことがよくあります。
 ドイツの家ではこういうことはありません。
 冬でもトイレ内の温度は他の部屋と同じくらいになっています。
 トイレは毎日、家族のみんなが必ず使う場所なので、居心地がよくなければならないの
 です。
・ドイツの主婦は何事につけても徹底しています。
 室内の掃除も一日で、通り一遍に全室をやるのではなく、隈なくきれいにするために、
 二、三日かけて行います。
 汚れが溜まらないうちに、準繰りに掃除をするという具合いです。
 掃除にかかるとき、掃除機、ハタキ、ホウキ、雑巾、乾拭き用の布、磨き用の洗剤、バ
 ケツ、ブラシなどの必要な道具を一式、あらかじめ用意します。まさにお掃除セットで
 す。
 母は掃除機を片手にもう一方の手にそのお掃除セットのプラスチックのバケツをぶら下
 げて、部屋から部屋へと移動していました。
 労力、段取りの効率化がなされています。
・ドイツ人以外には単なる掃除魔としか思えないドイツの主婦ですが、その心の裡には大
 思想が隠されています。 
 この大思想は、ドイツ人の気質のすべてを現すひとつの言葉に集約されています。
 「オルドヌング(秩序、順番、整頓)
 ドイツ人はことあるごとに心のなかで「オルドヌング、オルドヌング」と唱えていると
 いっていいのです。
・ドイツの有名なことわざに、
 「整頓というのは人生の半分に当たる」
 というものです。
 つまり、整頓というのは、それほど大事なもので、ドイツ人にとっては人生そのものな
 のです。
・もっと説明すると、たとえばどんな問題でも整理整頓(秩序)ができていればそれで半
 分は解決します。
 だから、ドイツ人は問題があると一歩一歩順序正しく解いていきます。
 こうしてオルドヌングされると、解決の見通しがたちます。
 つまり、家の掃除もキッチン磨きも、ドイツ人にとっては問題解決の手段なのです。
・これは人生でも同じ、人生がきちんとオルドヌングされれば、あとは余裕をもって人生
 を楽しめばいいというわけです。 
・こうして、オルドヌングは節約に通じます。
 ドイツの主婦は、家のなかがいつもきちんと整頓され、家のどこに何がどこにあるのか
 を頭のなかに入れておかないと落ち着かないのです。
・よく掃除し、新品どおりにすれば物は長持ちしますし、新しいものを買う必要もなくな
 るからです。 
・これは自分の家だけとはかぎりません。
 もし、同じ街中で窓が汚れている家があると、ドイツ人はその家の玄関ベルを押し、な
 かから出てきた家の人に文句をいいます。
 ベランダに洗濯物が干してあったり、物が雑然と置いてあっても、やはり文句をいいま
 す。
 これはイヤ味でしているのではありません。
 文句をいうほうは、自分の行為が正当だと信じているのです。
・ドイツだけでなく、ヨーロッパの国で美しいと称賛されている町には、建物の高さが制
 限され、個々の家も色をはじめとして、道行く人の目に映る窓辺のつくりなどに規制が
 あるところもあります。 
・大都会ミュンヘン市内の建物は五階建て以下に規制されています。
・窓ガラスのひどい汚れを落とす
 バケツ一杯の湯に濃い酢か、酢酸をたらした液で拭いた後、冷水で何度も拭きます。
 ゴム手袋を必ず使用し、常に換気をして、液が目に入らないようにします。
 仕上げは乾拭きをします。
 皮をむいていないタマネギを半分に切り、その断面でこするのも効果的。
 断面が汚れたら薄く切り落して、新しい表面を出せば、何回か使えます。

・ドイツの主婦の掃除好きに拍車をかけているのが、最近の環境問題への関心の高さです。 
 ただ単に清潔にしたいという願いよりも、より自然で健康でありたい、環境を汚染させ
 たくないと、掃除をエコロジーの面で考える主婦が多くなってきました。
・掃除や洗濯、自分の身体を清潔に保つために使う、清掃用洗剤、洗濯用洗剤などの化学
 製品をできるだけ排除しようというのです。
 また、行き過ぎた衛生は最近を過度に少なくし、身体の抵抗力を弱めるので、特殊な洗
 剤や消毒洗剤を使わないようにもしています。
・とくにバスルームは、身体を清潔にする場所なので、衛生的であることを求めて強い洗
 剤を使用する傾向にあります。  
 この傾向が行き過ぎると、逆に身体に危険をもたらします。
 バスルームに置いてある各種洗剤を見てください。
 これらには、薬品がかぶれやアレルギーの原因となったり、室内の空気と排水を汚す原
 因になるものが多く含まれています。
 バスルーム用、バスタブ用洗剤にはカルキを取る強い酸、有機溶剤、消毒剤が含まれて
 いることが多いのです。
・エコロジー主婦はなるべく、従来の石けんを成分にする中性洗剤を使用しています。
・バスタブの清掃法
 タイルやプラスチックの場合は磨き粉を使わずに、液体の石けんか粉石けんを使います。
 壁や床のシミは無リンのクレンザー(液状磨き粉)とスポンジでこすり落とします。
 水滴は乾いた布で拭けばカルキのシミは防げます。
・詰まった排水管の掃除法
 排水管が詰まったら、熱湯を注げばほとんど取れるものです。
 取れない場合は、吸い上げポンプや渦巻き状の針金を使います。排水管クリーナーより
 も効果的です。  

・臭いに神経質なドイツ人が、無臭のトイレにこだわるのは当然です。
 でも、臭い消しを置くのではなく、掃除を徹底して臭いを出さないようにしているので
 す。
 ドイツの主婦は自分が使用するたびに、トイレブラシで気になったところを拭いていま
 す。
 そして、週に一回、本格的な掃除を行います。
 トイレはバスルームと一緒になっているので、それは気合いが入ります。
・ただし、あまりに便器用洗剤のような化学製品は使いません。
 このような洗剤のなかには、カルキや汚れを落とすために強い酸が含まれているので歓
 迎しないのです。 
 便器用洗剤は家庭で使われる化学洗剤のなかでいちばん危険という説もあるので、ドイ
 ツの主婦はおもに中性洗剤を使って、せっせと磨くのに専念しています。
・便器の内側の汚れの落とし方
 週に一度、中性洗剤か酢、ひどい汚れにはクレンザーで徹底的に磨きましょう。
 便器用ブラシで十分、清潔にできます。
 食器洗い用の石けん水を入れた小ビンを常備しておき、トイレを使用したとき、ときお
 りブラシを使って泡で洗うのもいい方法です。
 ブラシはときどき、石けん水をつけて洗えば十分です。
・便器についてカルキの落とし方
 酢を注げばとれます。
 あるいは、水の溜まっていない部分には、酢に浸したトイレットペーパーを数時間、
 敷いておき、それからブラシでこすり落とします。  
・ホウロウ質の便器の掃除法
 磨き粉(粉末洗剤)は避けます。
 酢と塩と牛乳を適量混ぜ、スポンジにつけてよくこするのがベストです。
 仕上げに中性製剤を使って水で流すと、表面にキズがつかずツヤがでます。
 日本ではトイレ用洗剤といって、便器の汚れを落とす効果と、タイルの汚れを落とす効
 果を併せ持っているものが一般的です。
 ただ、メーカーによるのですが、酸性タイプと塩素系アルカリタイプに二分されていま
 す。この二つのタイプを混ぜて使うと、有毒ガスが発生します。

・煙草の臭いの消し方
 @電球にさわやかな匂いの香水やオーデコロンを塗ります
 A紅茶の葉を煎って、その芳香で煙草の臭いが消えます
 B花の抽出液でつくられたエッセンシャルオイルを小さな蒸発皿に入れて、室内に置き
  ます
 C酢を小皿に入れておき、自然蒸発させると、室内の臭いが取れます
 
・サヨナラ、キッチンの臭い
 @揚げ物、魚の臭いは、煙草の臭い消しと同じく酢を自然蒸発させて取ります
 Aお鍋、オーブン、包丁に残った魚の臭いは、濃い酢やレモン汁でよく洗い、その後水
  洗いをします
 B魚を揚げるとき、鍋のなかにタマネギを切って幾片か入れると、臭いがこもりません。
  フライにするときは、パン粉におろしチーズを混ぜます
 C魚の臭いがついたお皿は最初に水で洗うのが肝心。それから洗剤を使います
  いきなりお湯で洗うと魚のタンパク質が凝固して、かえって臭みがとれません
 D手についた魚の臭みは酢、レモン汁、コーヒーかすで取れます
 E包丁の臭みは、包丁に塩をこすりつけて、ニンジンをざく切りにすると取れます
 F流しの臭気取りは、温めた酢で洗って水で流します
 Gゴミ容器は、ともかくこまめに中性洗剤で洗います
  
・健康な生活を送るためには、清浄な空気は欠かせません。
 そのためには、やはり換気が大切です。
 新鮮な空気を得ることはもちろん、家のなかの嫌な臭いを取ることもできます。
 病院知らずの健康であることがいちばんの節約ではないでしょうか。
 ともかく、ドイツ人はよく窓を開けます。
 エアコンの通風スイッチを押すくらいなら、窓を開けるべきだと考えているのです。
 だから換気扇は嫌いです。
 短い間、窓を大きく開け放すほうが、換気扇を回すよりも効果があるわけですし、ムダ
 にエネルギーを消費することもありません。
 「空気が悪くては何も始まらない」と考えるドイツ人は、家のなかに臭い、空気にとこ
 とんこだわります。 
  
・豊かな生活を手に入れたときは、おカネの面で贅沢をするだけでなく、心の面でも豊か
 に過ごしたい。
 豊かさとは、ある意味で心のゆとりのようなものだと思います。
 心のゆとりがあると、他の人のことを考える余裕も出てくるのではないでしょうか。
・私の個人的な夢は、東南アジアの貧しい国に行き、両親に売られた少女たちを助ける仕
 事をすることです。 
 貧困でいちばん不幸になるのがまず女性、それも幼い女の子たちだということが、私に
 は許せません。
・外で働いている人でも専業主婦でも、ある程度のボランティア活動に参加するのは、と
 てもいいことだと思います。
・私はおカネの節約より時間の節約、つまり、かぎられた時間を有効に使っていきたいと
 思っています。

絶対ソンをしないショッピング
・一般的に男性がしまり屋であるドイツでは、長い間、夫が家庭の財布を握っていました。
 家庭で必要な経費が出るたびに、おカネを妻に渡していたのです。
 しかし、主婦も社会進出するようになってからは、銀行口座を夫婦共通でもつようにな
 ったり、支出が合議のうえで決められるようになってきました。
 現在では、ドイツ家庭の三軒に一軒は、主婦が財布を夫から奪っています。
・しかし、この点は日本より遅れています。
 外国人は日本の女性を男性より弱い立場に置かれていると、一種の偏見で見ていますが、
 それは大いなる誤解です。
 私は、日本の主婦が夫から給料をそっくりもらっていることにビックリしています。
 また、デートをすればほとんどの場合、男性が費用を出してくれているのですから、女
 性がこんなに強い国はありません。 
・ドイツでは、財布は夫の管理下にあるものの、実際に家計の支出をするのは妻の役割で
 す。
 ドイツの主婦は自由にならない財布で、家計をやりくりしていかなければなりません。
 したがって、歴史的必然の節約の精神は、いまでもドイツの主婦に受け継がれています。
 つまり、衝動買いをする主婦はほとんどいないのです。
 家計をコントロールしなければならない主婦の心構えは、まず衝動買いを慎むことです。
・ドイツの主婦は、どんなものでも、買い物には次のことを考慮してきました。
 ・自分たちの生活様式に敵ったものか
 ・他人の真似ではなく、本当に必要で意義のあるものなのか
 ・それを手に入れることで、機能的な面での向上があるのか
・あなたは、目に留まった商品が値ごろで、しかも、オマケがついていたら買ってしまい
 ませんか。  
 しかし、ドイツ人は厳しく必要か不必要かを判断してものを買いますから、オマケが必
 要なものでなければ絶対に手を出しません。
 その商品が本当に欲しければ、オマケはいらないからその分安くしてくれといいます。
 いくら値ごろでも、オマケの値段がそこに含まれていて、騙されていると考えるのがド
 イツ人なのです。
・猜疑心、警戒心が強いドイツ人はいろいろな方法で、不正が行われていないかを絶えず
 チェックしています。
 日本人は人を疑うことをあまりよくないという風潮がありますが、ドイツはまったく逆
 で、疑ったり、警戒するのは当たり前のこととされています。
 ただし、地位のある者が下位に位置する者を疑うのはよくないとされています。
 なぜなら、立場を利用して自己を優位に導くことができるからです。企業と消費者の関
 係もこの図式にあてはまります。
・しかし、逆は歓迎されます。
 地位のある者や権力を疑い、ときには闘い、そこに悪や非があればそれを公表する。
 これこそ民主主義だという考え方が、ドイツにはあります。
 したがって、企業、団体、権力のある者と法廷で争い勝つことは、ドイツ人にとって天
 国の昇るかのような気分になります。 
 善良という仮面の裏側にある悪を発見し公表するのは、ドイツ人にとってよいこととさ
 れているのです。
・ドイツでは、素直さは頭が悪い、おバカさんに通じると考えられています。
 素直な考えの持ち主は、心がきれいということになるかもしれませんが、その反面、騙
 されやすいということなのです。 
・ドイツほど、イメージで商品を売ることが難しい国はないでしょう。
 なぜなら、ドイツ人は素直に広告を信じるのはバカだ、と思っているからです。
 しかし、疑いがクリアされ、ある商品を本当によいと信じた場合、多くのドイツ人はそ
 の商品をずっと買い続けます。
 したがって、日本と違って「新発売の商品」は、それが新しいというだけではあまり売
 れません。
・また、商品評価と価格には関係がありません。
 商品評価が「まあまあ」で、高いものはいくらでもあり、反対に「よい」という評価を
 受けた安い商品もたくさんあります。 
・ドイツは街中に出す商業広告、店の看板に厳しい規制があります。
 店の看板は一つだけとか、大きさや色、形にまで規制があるのです。
 とくに赤と黄色を使った看板は言語道断。
 とにかくドイツ人は、広告の看板やネオンが嫌いなのです。
 「見たくもない世伝を、なんで見なければいけないんだ」と、それ自体があることに腹
 を立てます。
・電車の広告用のスペース以外には、宣伝広告はなく、中吊り広告はいっさいありません。 
・また、ダイレクトメールにも拒否反応を示す人が多く、郵便受けに「ダイレクトメール、
 チラシの類はお断り」と書いた紙を貼っている家が多くあります。
 そのような家の郵便受けにダイレクトメールが入ると、「うちの住所が、なぜわかった
 んだ」とすごい剣幕で抗議の電話をします。
 仮に教えたところがわかったら、そこにも「そんなことをまたしたら、ただじゃおかな
 いぞ」くらいのことをいいます。

・スーパーでの買い物には二つの鉄則があります。
 ・スーパーには買い物メモを持っていき、書いてある以外のものは買わない
 ・お腹が空いているときにはスーパーに行かない
・ドイツでは、たいがいの店は午後六時半には困ってしまいます。
 また、コンビニエンスストアがないので、夜中にちょっとした食べ物が欲しくなったら
 ガソリンスタンドに行きます。スタンドには、新聞、雑誌、食品を売っているキオスク
 が入っています。
 仕事帰りの人がよく利用します。
 ただ、値段が高いので主婦には不評です。
・ドイツでは、食品など毎日使うものはスーパーでまとめ買いをします。
 週に一度、土曜日の午前中に買い物をするのが一般的です。
 というのも、午後には店が閉まってしまうからです。
・ドイツ女性もブランド品は好きです。
 しかし、日本女性のように高級ブランド志向ではなく、ほとんどがカジュアル・ブラン
 ド志向です。
・車の購入に関しては例外で、ここだけは財布の紐が緩むようです。
 ドイツ人にとっても車は大きな買い物なので、上手に買わなければなりません。
 ドイツの男性にとって、車の存在はとても大きいのです。
 環境を守ろう、おカネを節約しようといっても、車なしの生活をする人はめったにいま
 せん。  
 ケチで評判のドイツ人ですが、車は高いものを買います。
 ベンツやBMWが長持ちするということもありますが、ステータスシンボルとして所有
 するのです。つまり見栄です。
・あれこれと策を講じて、少しでも安く新車を手に入れようとしても、もともと車は高い
 ものです。
 ですから、車の維持に関しては、徹底して節約を心がけます。
 ・車より自転車に乗る
  これまでは、朝食のためのパンを買いに行くのに車を使う人が多かったのですが、
  2キロぐらいの距離だと自転車を使うようになりました。
 ・カーシャアリングを利用する
  年間1万キロ以下しか車に乗らない人がたくさんいる。
  こうした人たちはカーシェアリングを利用しています。
  トータルでいえば安上がりになります。
 ・洗車は雨でしてしまう
  ドイツ人は車を神経質なくらいに磨きます。
  でも、ガソリンスタンドで洗車をしないから不思議です。
  雨を利用して洗車をする人も多い。
  雨が降り始めると、スポンジを持って車を洗っている人をよく見かけます。
 ・車の修理は自分でする
  一般のドイツ人は大きくて有名な工場より、小さい、それこそ町工場を好んで選びま
  す。 
  大きな工場はサービスと称して、修理の必要がないところまであれこれいじり、それ
  で余計な修理費を取るからです。 
  小さい工場は修理代が安く、修理してくれる「人が顔見知りのこともあるので、必要
  なことだけを丁寧にしてくれます。
  手先の器用な人は、小さな修理だったら修理のマニュアル本を見ながらやっています。
  オイルや空気のフィルター程度なら、自分で交換して節約するわけです。
 ・整理整頓してガソリン代を浮かす
  後部座席、トランクの中にモノ(さして必要でないモノ)を入れっぱなしにしておく
  ドイツ人はあまりいません。 
  これも車が重くなった分、ガソリンを余計に必要とするからです。
・「男を選ぶときは、車の運転の仕方を見ろ」といわれています。
 車の扱い方は女の子の扱い方に通ずるというわけです。
 女性をバカにしているとしか思えませんが、口惜しいけど確かにそのどおりだと思いま
 す。
 歩行者に対する注意を怠らず、同乗している人の意思(例えばスピードを出すのは嫌だ)
 を尊重できる自己中心(車中心)的でない男性は、女性にとってのパートナーとして安
 全という論理からです。
 節約という点を考えてみても、自己中心的な荒っぽい運転は浪費になります。
 しょっちゅうブレーキをかけたりスピードを上げたりすると、とても不経済です。
・私のイメージでは、ドイツの主婦は買い物に対してとてもシブイと思います。
 ドイツの主婦は日本の主婦に比べると、買い物に対する考え方、構がまったく違うから
 です。 
 ・買い物の購入基準を忠実に守る
 ・用心深く、疑い深く、(店、メーカーの)その手に乗らないという気構えを持つ
 ・安いものを少量買うのではなく、大量に安く買う
 ・行き届いたサービスは節約の敵と考える
・私が思うに、ドイツは、国民が浪費をしないような社会にしているのではないでしょう
 か。
 宣伝広告の規制、早く閉まる商店、コンビニがないこと、しかも、日曜日になると商店
 は休業・・・。
 日本のエコノミストたちがいう「消費は美徳」などという考えは国民に持たせない。
 国民は質素倹約に励まなければいけないという国家的な意思が働いているのではと思い
 ます。

節約は心を豊かにする
・一般的なドイツ人は節約したおカネで、年に一度、数週間の海外旅行をすることを楽し
 みにしています。
・ドイツ人にとって豊かな生活とは、まず広くて長持ちする石の家に住むことです。
 次に大切なものは家具です。
 日本で豊かな生活というと、電化製品が欠かせませんが、ドイツ人は電化製品に対して
 どこか不健康なイメージを持っています。
 豊かな生活にマッチするのは、電化製品より、夏の夕方にボーッとして本でも読める庭
 です。
・ドイツ人は自分に必要なものだけを手に入れ、そのことによって心のゆとり、リラック
 スを得たいと思っているのです。
 ですから、ものを際限なく求めることが目的ではありません。
・ドイツ人にとって家の庭は大切なもので、そこに置くテーブルや椅子に大変こだわりま
 す。
 また、座ったときに視野に入る風景にもこだわります。
 ドイツ人は庭で本を読んだり、食事をしたりするのが大好きです。
 だから草花の手入れは入念に行っています。
・庭は豊かな暮らしの象徴であるため、ドイツ人はとくに大事にします。
 しかし、その庭が人間の醜い面を引き出すことがしばしばあります。
 庭は隣家から丸見えとなるので、車と同様にステータスの証でもあるのです。
 だから、隣りの庭から害虫が飛んできたり、枝が延びてきたりするとトラブルが発生し、
 裁判沙汰になることが少なくありません。
・ドイツ人が考える豊かな住まいとは、「居心地のよさ」が基本的な考え方になっていま
 す。  
 したがって、家の中が寒いというのも、ドイツでは絶対にありえないことです。
 どの家でもマンションでもセントラルヒーティングがあり、暖房設備のない家やマンシ
 ョンを建てるのは法律で禁止されています。
・暖房がセントラルヒーティングだと、ストーブは必要ありません。
 それによる火事もなくなります。
 私が日本に来て驚いたのは火事が多いことです。
 ドイツは火事が本当に少ない国です。
 建物が石でできているということもありますが、やはり、ストーブがないことも大きい
 と思います。 
・寒さの話のついでに、私が日本の子どもの衣服について感じたことを述べようと思いま
 す。
 衣服は豊かな生活とは切っても切り離せないものです。
 この点は日本もドイツも同じだと思います。
 しかし、ドイツの場合、子どもに着せる服は、天候や気温に合ったものを優先します。
 私が初めて東京の冬を過ごしたとき不思議に思ったことがあります。
 寒い日でも、親が子どもにスカートや半ズボン、短パンを履かせていることでした。
 ドイツでは考えられないことです。
 夏はサンダル履きでTシャツに短パン、スカートですが、冬になると、冬用の靴を履き、
 下半身を温かくするものを着用します。
・日本の子どもが冬でも薄着なのは、「子どもは風の子」という信仰があるからだと思い
 ますが、ドイツにはそのような考え方はありません。
・私が日本の学校で腹が立つものの一つに、冬だというのに、小中学校の生徒が夏服のよ
 うな体操着で地面に座り、先生の話を聞いているという光景があります。
 また、女子の制服で、冬になってもパンツやタイツの着用が禁止されていることにも怒
 りを覚えます。  
 西洋文化から見るとずいぶんと滑稽なことに映ります。

・かつてのドイツ女性は、「離婚しても困らないように、職業を持っておくべきだ」とい
 う考え方から、結婚前に職業に就くのが当たり前でした。
 つまり、「結婚がダメになっても職業があれば大丈夫」といった考え方です。
・いまでもキャリア志向は強いのですが、「なんで三つそろわなきゃいけないの」と、
 あまりそのことにこだわらなくなってきました。
 「結婚しても、一人で生きていくにしても、職業は絶対に必要だ」という考え方に変わ
 ってきたのです。 
 非婚の女性が増えてきて、一人で住んでいたり、恋人がいても結婚しなかったり、未婚
 の母だったりと、30代までの女性の生活形態はさまざまです。
・それどころか、日本みたいに、「お嫁さんになる」という女の子は少数です。
 結婚に対する憧れがあまりないようで、「どうしても子どもが欲しい」という子もいま
 せん。   
 女の子も、小さいときから大人になったら働くものだと思っているのです。
・ドイツはよくも悪くも、個人を大切にします。
 子どもは小さい頃から自立できるように育てられます。
 そのため、ドイツの家族は子ども中心というより、夫婦が中心となっています。
 ドイツでは18歳になると成人と認められ、車の免許、酒、煙草が許されます。
 と同時に、多くの新成人は親元を離れ自活します。
 どちらかというと、親と住みたがらないといったほうがいいでしょう。
 都会では、三世代同居の家族を探すのは容易ではありません。
・ドイツでは母乳で子育てをする母親が少なくなりました。
 その理由を知ると、日本人なら「なんて身勝手な」と憤慨するでしょう。
 ドイツの母親は母乳を与えることを面倒がるのです。
 とくに外出時、ベビーカーを押して外出するのですが、レストランや公園で母乳をあげ
 づらいし面倒なので、粉ミルクに替えている母親が多いのです。
 個人主義が徹底しているドイツ人ならではの話ですが、しかし、これは行き過ぎでしょ
 う。
・ドイツの家庭が、子ども中心でないという例は、子どもの就学にも見られます。
 親は子どもの教育にあまりおカネを使いません。というより使いたがらないのです。
 ドイツでは小学校(四年間)を終えると(10歳)、将来の進路を決めなくてはなりま
 せん。
 大学への進学を希望する子はギムナジウム(9年制)、モノをつくるのが得意な子はハ
 ウプトシューレ(職人コースの学校・5年制)、事務の仕事やサービス業や秘書などの
 専門職を目指す子はレアールシューレ(専門職コースの学校・6年制)に進みます。
 これらの学校は大学を含めてほとんどが国立なので無料です。
 したがって、ドイツ人には学校におカネを使うという考え方があまりないのです。
・おカネのかかる私立学校(大学はすべて国立)もあることはありますが、その数はかぞ
 えるほどです。
・お金持ちでも、教育費はできるだけ出したくないと考えています。
 子どもを私立に通わせる過程は特別な事情があるか、大金持ちかのどちらかです。
・家庭教師を頼んだり、塾通いでおカネを使うこともあまりありません。
 家庭教師や塾は、生成が優秀な子や、普通の子どもは利用しません。
 成績の悪い子どもだけが利用します。
・日本人の友人の母親がこういっていました。
 「子どもにバカも天才も関係ない。やるかやらないかで差が出てくるだけだ」
 しかし、ドイツの場合、子どもの才能、持って生まれた能力を大切にします。
 手先が器用でも、数学も語学も嫌いな子どもを、「努力、努力」で大学教授にさせよう
 とはしません。 
 この能力がダメなら他の能力を、あるいはよいところを伸ばすというのが、一般的な考
 え方です。
・正直にいわせてもらうと、それほど学力、能力がなかった者が努力によって医者になっ
 たとしたら、私はその医者にかかりたくありません。
 医者という職業に合った才能と能力を持ち合わせ、そのうえで努力してなった医者を歓
 迎します。
 医者にかぎらず、どの職業にもいえることだと思います。
 
・日本では考えられないことですが、ドイツの学校には父母の参観日がありません。
 そんなことをすれば苦情が殺到します。
 親にはそれぞれ仕事があり、自分の生活があります。
 親は、学校が指定した日に、なんで生徒の親が全員行かなければならないのか。
 参観日はとても不自然なことと思っているのです。
 
・大切なのは、おカネを貯めることではなく、貯めたおカネを人生や生活の楽しみに使い、
 心に潤いを得ることなのです。
 誰もがおカネを貯めて広い家、あるいはスッキリとかたづいた家、キラキラ光る窓ガラ
 ス、高級家具、高級車、趣味のよい洋服、宝石、流行の島でのバカンス・・・を手に入
 れられるわけではありません。
・ドイツ人のほとんどは、それを目指して日夜節約に励んでいますが、節約生活そのもの
 を楽しんでいる人も多いのです。
 節約とその人の人生が一致しているわけです。
 このようにして、分相応のおカネで人生、生活を楽しむ。
 つまり、心の余裕、リラックスを得ることが最も重要だと思います。
 私はそれがその人なりの豊かな生活だと信じています。
・ドイツ人にとっての人間が生きていくうえでの思想(哲学)
 ・人間らしく生きる
 ・健康でありたい
 ・環境にやさしく