村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか :村山斉

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この本は、今から9年前の2013年に出版されたもので、物理学者の村山斉氏へ高橋真
理子氏
(科学ジャーナリスト)がインタビューした内容を本にしたもののようだ。
内容は、宇宙の始まりであるビックバンの初期の状態がどういう状態であったのかについ
て、非常にやさしく解説したものだという。しかし、非常にやさしく解説したといっても、
素人にはそれでも何だかよくわからない。それに、非常にやさしく解説し過ぎて、焦点が
ぼけてしまって、ますます分からなくなっている感もあった。

ビックバンの初期の状態というと、宇宙というよりは量子力学の世界のような気がした。
素粒子論などになると、普通の理論とはまったく異なる理論となり、普通の人はもはや理
解不可能の世界だ。
ビックバンの始まりの状態がわからないと、宇宙全体の構造もわからないということらし
いのだが、そもそも何だかそのことがわからない。
私がこの本を読んでわかったのは、最近の宇宙論では、暗黒エネルギーの存在の発見によ
って、宇宙全体は膨張をし続けて、銀河さえもバラバラになっていくということだ。
私はいままで、この宇宙全体の膨張は、いずれ止まり、収縮に転じるだろうと思っていた。
そしてまた、宇宙全体が一点に収縮し、再度ビックバンが起こるだろうというのが私の想
像だったのだのだが、この考えは暗黒エネルギーが発見される前の考え方で、もう古いら
しい。
しかし、宇宙全体がどこまでも膨張を続けるとなると、どうして何もないところで突然ビ
ックバンが起こったのだろうか。ビックバンが起こる前の世界はどういう世界だったのか。
ますますわからなくなってきた。

過去に読んだ関連する本:
宇宙に外側はあるか
ビッグ・クエスチョン


まえがき
・2011年は「光より速い粒子がある」という実験結果と、「ヒッグス粒子の徴候あり」
 という報告が発表された年だ。
 
地上最大の実験装置
・日本で一番大きい加速器というのは、茨城県つくば市にあるKEKB(ケックビー)
 す。これが周囲3キロ。
・米国のイリノイ州にあるテバトロンという名前の加速器は周囲6キロです。
・一番大きいのはスイスとフランスの国境をまたいで設置されているLHC(ラージ・ハ
 ドロン・コライダー)
で、周囲約27キロです。
・加速器の実験の目的というのは、宇宙の始まりをなんとか実験室のなかで再現すること
 なんです。宇宙の始まりはビックバンですから、ものすごいエネルギーがあった。そう
 いうものすごいエネルギーで起きていた反応というものを実験室の中でもう一遍再現す
 る。それを調べることで宇宙の始まりを知っていきたいわけです。
・カミオカンデは加速器とは全く違う発想で作られた実験装置です。宇宙を探る方法には
・ 二つあるんです。できるだけ高いエネルギーを作ってビックバンを再現しようという
 のが一つの方法。もう一つは、今の宇宙ではほとんど起きないような反応を、じっと我
 慢して待てばなんとか起きてくれるんじゃないか、と待つ方法。

ヒッグス粒子に迫る
セルン(欧州合同原子核研究機関)は2012年7月にヒッグス粒子の発見について記
 者発表をしました。
・重力はそれこそニュートンが17世紀に言ってからアインシュタインまで、実はよくわ
 かってなかったんですよね。居間でもよくわからないところがありますけど。
・実は電気と磁気は密接不可分につながっていて分けられないんですね。その密接不可分
 なつながり具合を方程式で鮮やかに表したのが、19世紀のイギリスの理論物理学者の
 ジェームズ・クラーク・マクスウェルです。方程式四つで電磁場の全体像を記述する
 「マックスウェルの方程式」です。
・ところが、それをミクロの世界で使おうとするとしたら、これがうまくいかなかった。
・宇宙の最初、まだすごく熱かった宇宙。宇宙の最初は、ちょうど水蒸気のようにヒッグ
 ス粒子たちも自由にワッとばらばらで飛んでいた。だけど宇宙が冷えてくると、あると
 ころでギシッと凍りつく。動いている時がヒッグス粒子、凍りついたらヒッグス場。凍
 りついた後というのは、どこもきちっと並ばなきゃいけないので、秩序ができたじゃな
 いですか。
・秩序ができた。とういう秩序かというと、そのおかげで電子が光速で行けなくなった。
 そのおかげで、普通の原子ができるようになったわけです。
・本当に今までにない新しいタイプの粒子で、今まで見つかった粒子は全部物質をつくる
 もとになる粒子か、力を伝える粒子、その2種類しかなかったわけなんですけど、秩序
 をつくる粒子というのは見たことがないんですよ。
・ヒッグス粒子発見か、の報道があったとき、新聞やテレビでは「この世界には17種類
 の粒子があって、そのうち16種類はもう見つかっていて、最後の一つだけが見つかっ
 ていない」という説明を盛んにしました。
・17種類とは何とも中途半端な数、と感じた人は多いんじゃないかな。ともあれ、すで
 に見つかっていた16種類を大きくグループ分けすると、二つに分かれるんですね。
・物質のもとになる粒子というものが、電子とかクォークとか、要するにモノをどんどん
 細かくしていったときに到達する粒。これがまあ、普通の物質粒子で12種類。
・力を伝える粒子とは、光子とかZボソンと呼ばれる粒子で、これをあげたり貰ったりす
 ることで力が伝わる。ちょっと普通じゃない粒子で4種類。
・地球が太陽の周りを公転している速さは、結構速くて、秒速30キロです。時速にする
 と11万キロ。
ブラックホールというのはきわめて強い重力のために何でものみこんでしまうものです
 が、ホーキングはここから物質が逃げ出して最終的にはブラックホールがなくなる、つ
 まり蒸発する可能性を指摘した。
・そこで議論が巻き起こったのが、蒸発すると元々ブラックホールに吸い込まれた物質が
 持っていた情報はどうなるのか、という点。ホーキングは情報もなくなると主張し、そ
 っちに賭けていたんですけど、最近の研究だと情報はちゃんと保たれているという方向
 が大勢になって。それで負けを認めた。

光より速いニュートリノの顛末
・2012年にはヒッグス粒子が科学ニュースの主役になりましたが、2011年はむし
 ろ「光の速さよりも速い粒子発見か」というニュースの方が大きな話題になりました。
ニュートリノは、電気を帯びていない中性の素粒子で、ほかの素粒子とほとんど反応せ
 ずにスカスカ通り抜けるものです。
・もしニュートリノが光より速いというのが本当だったら、アインシュタインの相対性理
 論を破ると大騒ぎになった。
・アインシュタインの相対性理論というのは、今の私たちの宇宙の理解、現代物理学の二
 本柱の一つなんです。もう一つはミクロの世界を扱う量子力学ね。
・これはアインシュタイン自身が言ったことなんですけど、「光よりも速い粒子があると、
 過去に電報が送れる」ということなんです。タイムマシンというと、人間が昔に戻れる
 というふうに思うわけですけども、人間は送れないかもしれないです。でも、情報は送
 れるかもしれない。情報を過去に送れたら、それは時間をさかのぼることだからタイム
 マシンといえる。
 
・核融合というのは、高温高圧にしないと起きないんですが、英国のフライシュマンと米
 国のポンズが水素を吸う金属を電極にして水の電気分解をしたら過剰な熱が出て、核融
 合が起きたとしか考えられないと言った。低温といっても冷たく冷やすわけではなくて、
 特段高温にしないというだけ。だから常温核融合とか室温核融合とか、試験管核融合と
 も呼ばれました。もしこれが本当なら、簡単にエネルギーが得られるので、関心がばっ
 と高まって、世界中で実験した人がたくさん出ました。マスコミも大騒ぎしました。
 まあ、尻すぼみでしたね。これはきちんと間違いでしたという宣言はなかったですね。

不確定性原理と「科学者の降参」
不確定性原理を最初に言いだしたのが、バイゼンベルクというドイツの天才。確か23
 歳で、誰もできなかった量子力学の体系的理論を考え出した。そして、26歳で不確定
 性原理を発見した。確定できない度合いを表すのが、ハイゼンベルクの不等式です。
・その由緒ある数式がこのたび、名古屋大学の小澤正直さんによって書き換えられた。
 その正しさがウィーン工科大学の長谷川祐司博士らによる実験で証明されたという発表
 が2012年1月にありました。
・この不確定性関係というのは、世の中とは関係のないことと思われるかもしれませんが、
 実は宇宙の誕生とも密接不可分に関係しているんですよ。  
・真空にはヒッグス粒子が詰まっているとわかってきたわけですが、ただギシッと詰まっ
 ているんじゃなくて、ダイナミックに動いている。不確定性関係には、位置と速度のほ
 かにもう一つありますよね、エネルギーと時間の不確定性。だから、エネルギーは保存
 しなくていい。短時間なら借りてくることができます。
・ここでのポイントは、ともかくエネルギーを借りていいんだということ。そうすると、
 宇宙の最初というのは、今見える137億光年の宇宙全体が原子1個よりもはりかに小
 さかったという、とてつもないことを言うわけじゃないですか、最新の宇宙論によれば。
・原子1個よりも小さかったわけだから、宇宙全体がこのミクロの世界の量子力学になっ
 ていて、不確定性でいつもエネルギーの貸し借りをやっていた。そうしている間にイン
 フレーション
が起きた。
 
・人工衛星に載っている原子時計は、猛スピードで地球の周りを回っているので、特殊相
 対論の効果で地球の時計より早く進む。一方、その場所は地上より重力が小さいので、
 一般相対論で重力の効果を計算に入れないといけない。両方の効果を合わせて補正して
 いるんですね。相対性理論を入れないとGPSは使い物にならない。

宇宙は4%しかわかっていない
・19世紀の終わりにJ・J・トムソンが電子を見つけて、物を細かく分けていけば素粒
 子に行き当たり、物事はみんなこれでできているんだとわかってきたと思っていた。と
 ころが2003年になったらどんでん返しが起きたんですね。宇宙のほとんどは、正体
 不明の暗黒物質暗黒エネルギーが占めている。お前たちが知っている原子は、宇宙の
 たった4%しか占めていないじゃないかと。
宇宙背景放射については観測と理論計算がぴったり一致した。
 その温度は絶対温度2.7度。つまり、宇宙の中は絶対温度2.7度の物体から放射さ
 れる光で満ちている。
・一方、遠くの銀河がどんどん遠くに行っているということも、観測でわかった。宇宙全
 体が膨張している。
・だから昔は小さかった。今は2.7度だけれど、それは膨張して温度が上がったからで、
 さかのぼって圧縮していくと温度はどんどん上がっていく。しかも、これは宇宙のどこ
 を向いても同じ。これは何だ。星じゃないわけですね。星が見えるところからも見えな
 いところからも同じように来ているんだから。だから、何か昔にさかのぼると宇宙全体
 が熱かったというところまでは結論できました。昔の宇宙は小さくて熱かった。もう基
 本的にビックバンじゃないですか。
・銀河団にも、暗黒物質が集まっている。私たちから見て、後ろ側にたまたま銀河があっ
 たとしましょう。そうすると、この銀河から来る光が我々に届く前に、暗黒物質の重力
 に引っ張られて曲げられる。そのせいで、すごくグニャグニャに歪んで見えてしまうん
 だというふうに解釈するわけですね。
・パッと何げない宇宙の写真を撮ったときに、1個1個の銀河の形をよく見ると、みんな
 少し歪んでいる。今の望遠鏡だと数十億光年の向こうの銀河がちゃんと形が見えるわけ
 ですね。歪んで見える。その歪み具合をちゃんと調べると、これだけ重力が働いている
 はずだとわかる。その重力が働くには、普通の物質の5倍ぐらいの暗黒物質があるはず
 というのが、これでもうだいたい出てきます。
・暗黒物質が天体じゃないなら素粒子だという考えが出てきた。
・見えるものと見えないものが約1対5の割合です。見えないものが暗黒物質ですね。じ
 ゃあ、両方を足した物質の総量はどうなのか。
・そもそも物質の総量というのは、宇宙の運命にかかわっているということで、昔から興
 味を持たれていた。なぜかというと、宇宙の膨張とはしょせん重力で決まることだと。
 それはボールを手に持って上にぽーんと投げるのと同じだ。最初にぽーんと投げる勢い
 がビックバーンでボールがだんだん上に上がっていくというのが宇宙が大きくなる様子。
 アインシュタインの理論を使うと、宇宙の大きさの変化は、ボールを投げ上げたときの
 高さの変化とまったく同じ方程式になるんです。
・いま、宇宙は膨張しているとわかっています。この先どうなるか。宇宙にある物質の量
 が多いと、重力は引っ張るだけだから、あるところで膨張が止まって縮みだす。最後に
 はつぶれてビックランチになる。物質の量が少ないと引っ張る重力が小さいので、大き
 くなり続ける宇宙になる。物資の量をちゃんと測ると宇宙の運命が決められる。
・近くの銀河を見たら今の膨張のスピードがわかる。遠くの銀河を見ると昔が見えるので、
 昔の膨張のスピードがわかる。距離と膨張の速さを比べていくと、どういうカーブに載
 っているかわかります。 
・宇宙の距離を見てきたように当たり前に何十億光年とか言ってますけれども、行って計
 ってきた人はいないわけですよね。実は距離を測るというのが天文学で一番難しい。
・昔の宇宙、遠くの宇宙は遅くて、近くの宇宙、今の宇宙の方が速くなっていることがわ
 かった。 
・それでみんなもびっくり仰天したわけです。重力は引っ張るだけだから上にあげたボー
 ルはだんだん遅くなると思ったのが、実は速くなっているのだから。何か重力に逆らっ
 て後押ししているものがあるとしか考えられない。
・実は宇宙が始まってしばらくだんだん遅くなったという証拠もその後見つかったので、
 宇宙が始まってしばらくは思っていた通りだんだん遅くなったんです。それがグーッと 
 スピードが増してすっ飛んでいるんだと。
・ということで、何か訳のわからないエネルギーが存在するというところまでは、これで
 確立した。なぜかエネルギーが増えていて、それが膨張を後押ししているんだと。それ
 を暗黒エネルギーと呼んでいます。 
・正体はよくわからない。ずっと調べていくと、今の膨張がこれだけ加速するにはどれだ
 け暗黒エネルギーが必要か計算できちゃう。それが宇宙の72%から73%。しかもど
 んどん増えている。
・今までの物理学では理解不能です。これはエネルギーであった物質ではないんですね。
・宇宙が大きくなるに従ってどんどんエネルギーが増えて、増え方が加速しているわけで
 す。宇宙の膨張がどんどん速くなっていって、あるところで無限大になっちゃう。宇宙
 が無限大に引き裂かれて、宇宙は空っぽになって終わりです。そういうのをビックリッ
 プ
と言っている。
・この宇宙の運命を握っているのは物質の量だと思ったんだけど、ふたを開けてみたら暗
 黒エネルギーだった。
・宇宙の72%から73%は暗黒エネルギーだった。物質は残りの27%ぐらい。
・宇宙の膨張がどんどん加速し続けると、ビッグリップに至る。どういう状況なんですか?
・銀河がバラバラになっていくのが見えます。
・地球に住む私たちはどうなるんですか?
・ここにはもう太陽はないですけど。太陽自身が今から50億年後ぐらいに寿命が尽きま
 すから。

宇宙の始まりにたどり着く道
・ホーキングさんは、時間が「本当に」虚数になると言ったんですよね。それがどういう
 ものかは理解できないけれど、ホーキングさんがそう言い出した理由は理解できる。宇
 宙の始まる前のことはどうやってもわからないからです。
・ホーキングが言っていたのは、よくいろんな方から質問される「ビッグバンの前は何が
 あったんですか」という問いに答えようとするものです。
・太陽はまだわずか46億歳、銀河系自体は百数十億歳だと思われている。110億歳と
 か、120億歳ぐらいだと思われる星があるんです。
・銀河系は、たぶんすごく古いんだけれども、その周りにちっちゃい銀河がたくさんあっ
 て、それをのみ込んで太ってきた。
・ほとんどの銀河は、もう高齢化しているんですよ。ほとんど新しい星ができていないん
 ですね。新しい星が盛んにできたという時代は、宇宙が始まってから数十億年間のこと
 です。