賞味期限のウソ :井出留美

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「賞味期限」と「消費期限」のそれぞれの意味や違いについて、正直、この本を読むまで
はよく分かっていなかった。生肉や生魚などは、できるだけ早く食べないといけないとい
うのは、感覚的にわかっていたが、牛乳や生卵などは、いったいどのくらいの期間持つの
だろうかと、普段から気にはなっていたところだ。この本を読んで驚かされたのは、生卵
の賞味期限である。今まで想定している期間よりもかなり長い期間生で食べられることだ。
私は生卵は生で食べられるのは4,5日くらいかなと思っていた。牛乳も難しい食品だ。
開封前と後とでは、安全に飲める期間はかなり違うみたいだ。開封後は、やはり2,3日
以内に飲みきったほうがよさそうだ。
賞味期限に敏感になることは、よいことであるだろうが、その反面、敏感過ぎて、まだま
だ十分食べられるものを捨ててしまっているという問題がある。これは単に「もったいな
い」ということだけではすまない大きな問題が隠れている。
それは、消費者の賞味期限に対する敏感さを背景にした食品業界に存在する「3分の1ル
ール」や「欠品ペナルティ」だ。
それにしても、日本が1年間に捨てている食料の量は、東京都民が1年間の食べる量とほ
ぼ同じだという。そしてまた、それは世界の食料援助量の約2倍でもあるとのことだ。ま
さに異常の量だ。これは、もったいないを通り越して、もはや犯罪といってもいいのでは
ないのか。我々日本人は、いまの消費スタイルを見直ななければならない。他人が決めた
ことを鵜呑みにする”あなたまかせ”で受け身な姿勢をやめ、自分の頭で考えて決めなけ
ればならない。この本を読んでそう強く感じた。

賞味期限のウソ
・日本の卵の賞味期限は、「夏場に生で食べられる」のが前提で、パック後14日間(2
 週間)と設定されています。でも、気温が低い(10度ぐらい)冬場であれば、産卵か
 ら57日間、つまり2カ月近くも生で食べられます。しかも、「生で食べる」のが前提
 だから、賞味期限を過ぎていても、加熱調理すれば、十分食べられるのだそうです。
・日本では、卵の賞味期限は生で食べることができる期限として設定されています。一方、
 海外では加熱して食べるのが前提です。だから日本よりも賞味期限が長いんです。
・少し寝かせ卵のほうがおいしいことが、フランスでは広く知られている。食感や白身の
 泡立ちは、あえて時間をおいた卵のほうがはるかに上といった、意外な事実が紹介され
 ている。採卵日から10日ほど経った卵は、「す」(茶碗蒸しなどにできる、ポツポツ
 とした気泡)の原因になる二酸化炭素が抜けているため、ゆで卵や目玉焼きにしたとき、
 プリプリの食感が楽しめるのだそうです。
・注意しなければいけないのは、卵は、サルモネラ属の細菌の一種に汚染されている場合
 があることです。サルモネラ菌による食中毒を防ぐためには、卵を十分に加熱調理して
 食べる必要があります。サルモネラ菌は75度以上で1分間加熱することで死滅します。
 海外で売られている卵は加熱調理を前提としているのは、食中毒を予防するという背景
 があるのです。
・卵を冷蔵庫で保存する場合は、パックにいれたまま、生の状態で保存します。パックか
 ら出さないのは、殻にサルモネラ菌がついている場合があり、出すと、他の食品に付着
 する可能性があるからです。また、冷蔵庫のドアの内側についている卵ケースは、ドア
 を開け閉めするたびにオンド変化が大きく、卵自体も揺れるので、お勧めしません。パ
 ックのまま冷蔵室の奥に入れましょう。
・いったんゆでたり焼いたりした卵は、金の増殖を防ぐリゾチームという酵素の働きが熱
 で失われるため、生卵ほど日持ちしません。加熱調理した卵は、すぐに食べましょう。
・本当に気をつけなければならないのは、「消費期限」です。日持ちしないお弁当やサン
 ドイッチ、お総菜などに表示される、「食べても安全」な期限です。これはきっちり、
 その日までに消費する必要があります。これに対し、賞味期限は、「おいしく食べられ
 る期限」です。実は、賞味期限は、本来のおいしく食べられる期限より短めに設定され
 ていることがほとんどです。      
・海外に比べると、日本は賞味期限を短めに設定する傾向にあります。湿度が高いのも一
 因ですが、安全性に対する要求レベルが高いことも、まだ一つの要因でしょう。
・賞味期限は、あくまでアバウトな「目安」です。でも、そんな「目安」に過ぎない数字
 を、一日たりともたがわず厳密に守ろうとしている人は、少なくありません。そして、
 スーパーやコンビニなどの小売店の多くは、そんな、目安に過ぎない賞味期限よりさら
 にもっと手前の日に商品を撤去します。賞味期限全体の3分の2のところに「販売期限」
 を設定し、「3分の1ルール」があるからです。まだ食べられるにもかかわらず、賞味
 期限が迫っているために流通できないなど、様々な理由で廃棄せざるを得ない食品を
 「食品ロス」と呼びます。この「3分の1ルール」こそ、大量の「食品ロス」を生む大
 き要因の一つです。
・スーパーマーケットなどの小売店は、当日に納品した賞味期限の表示が、前日に納入し
 た商品の賞味期限よりたとえ1日でも古いと、納品を拒否する場合があります。このよ
 うな「日付の逆転」が起きた商品は、「日付後退品」と呼ばれます。納品する側は、
 「日付後退品」を出さないよう、商品を1日単位で管理しなければなりません。その結
 果、トラックが頻繁に動くことになり、CO2を必要以上に排出することになります。
・長い賞味期限のうち、たった1日にこだわるのは、本質からはずれたことだと思います。
 日持ちしない「消費期限」食品の「1日」違いは大きいですが、1年以上も賞味期限が
 ある食品で、たった1日の違いを気にするあまり、メーカーから納品を拒否し、トラッ
 クを頻繁に行き来させ、働く人の時間とコストを費やすことが、はたして必要でしょう
 か。 
・食品に表示された期限には、「賞味期限」と「消費期限」の2種類があることをご存じ
 でしょうか。「消費期限」とは、「食品を摂取する際の安全性の判断に資する期限」で
 す。「定められた方法にいる保存した場合において、腐敗、変敗、その他の品質の劣化
 に伴い、安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限」」「開封前の状態で、
 定められた方法により保存すれば、食品衛生上の問題が生じないと認められるもの」
 「消費期限を過ぎた食品は食べないようにしてください」と説明されています。
・「消費期限」は、お弁当やサンドウォッチなどの調理パン、お総菜、生菓子、生麺、食
 肉など、日持ちがしない食品に表示されます。「消費期限」が表示されたものは、日付
 を守って食べることをお勧めします。 
・「賞味期限」とは、「未開封の状態で、定められた方法で保存した場合、期待されるす
 べての品質保持が十分可能であると認められる期限を示す年月日」のことです。スナッ
 ク菓子、即席麺類、缶詰など、品質が長く持つ加工食品に表示されます。この賞味期限
 が過ぎた場合であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありませんので、
 それぞれの食品が食べられるかどうかについては、消費者が個別に判断する必要があり
 ます。国は、食べられるかどうかを判断する責任を消費者にゆだねています。
・賞味期限は、本来の期限より約2割前後、もしくはそれ以上短めに設定されていること
 が多くあります。購入してから、表示されている保存方法を守って保管していれば、多
 少、日にちが過ぎても食べることが可能です。 
・賞味期限はおいしさの目安であり、しかも、実際においしく食べられる期間より短めに
 設定されているという事実を知らない人が、日付が過ぎたらすぎに捨ててしまうという
 問題は、日本だけでなく、ドイツでも起きているそうです。
・海外では、家庭で余っている食品を持ち寄って、困窮者に提供する「フードドライブ」
 という取り組みがあります。米国では、毎年5月の第2土曜日あたりに、家庭で余って
 いる食品をスーパーの袋のようなものに入れて玄関先などに置いておくと、郵便局の人
 が、本業のついでに回収してくれる「貧困撲滅」という取り組みがあります。
・野菜や果物、自分で料理したものであれば、においを嗅ぎ、目で見て、味見をし、自分
 で判断して食べたり飲んだりしているのに、企業が工業生産したものになると、とたん
 に「人任せ」にして「思考停止」状態になっているのではないでしょうか。まだ食べら
 れるものを捨てるとは、お金を捨てることでもあります。メーカーが決めてくれた賞味
 期限によりかかって思考停止するのをやめて、自分の食べるものについて、自分で判断
 する姿勢を大切にしてほしいと思います。
    
「これ食べられる?」を自分で判断する8つのポイント
 (1)買い物
  ・消費期限を確認する
  ・肉や野菜などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
  ・肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる
  ・寄り道をしないで、すぐに帰る
 (2)家庭での保存
  ・冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぎに冷蔵庫や冷凍庫に保管する
  ・肉や魚にビニール袋や容器に入れ、他の食品に肉汁などがかからないようにする
  ・肉、魚、卵などを取り扱うときは、取扱い前と後に必ず手指を洗う
  ・冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下に保つ
  ・冷蔵庫や冷凍庫に詰め過ぎない
 (3)下準備
  ・調理の前に石けんで丁寧に手を洗う
  ・野菜などの食材を流水できれいに洗う(カット野菜もよく洗う)
  ・生肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べられるものや調理の済んだものに
   かからないようにする
  ・生肉や魚、卵を触ったら手を洗う
  ・包丁やまた板は肉用、魚用、野菜用と、別々にそろえて使い分けると安全
  ・冷凍食品の解凍は冷蔵庫や電子レンジを利用し、自然解凍は避ける
  ・冷凍食品は使い分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない
  ・使用後のふきんやタオルは熱湯で煮沸した後しっかり乾燥させる
  ・使用後の調理器具は洗った後、熱湯をかけて殺菌する。(とくに生肉や魚を切った
   まな板や包丁)
 (4)調理
  ・調理の前に手を洗う
  ・肉や魚は十分に加熱。中心部を75度1分間以上の加熱が目安
 (5)食事
  ・食べる前に石けんで手を洗う
  ・清潔な食器を使う
  ・作った料理は、長時間、室温に放置しない
 (6)残った食品
  ・残った食品を扱う前にも手を洗う
  ・清潔な容器に保存する
  ・温め直すときも十分に加熱
  ・時間が建ち過ぎたものは思い切って捨てる
  ・ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる
・卵は採卵後16〜57日が生で食べられる期間です。夏は採卵後16日、春秋は採卵後
 25日、冬は採卵後57日。ただし、割ってしまったらすぐです。この賞味期限を過ぎ
 たら、早めに調理・加熱して食べること。
・牛乳は10度以下で冷蔵保存し、賞味期限日までとのこと。賞味期限は、短めに設定し
 てあるとはいえ、あくまで「未開封の場合」です。開封してしまったら、賞味期限前で
 も、早めに飲み切りましょう。
・女性に人気のパスタや焼きたてパン、デニッシュなどは、見た目はあまり油っぽい感じ
 がしませんが、実は脂質がかなり含まれています。カロリーは気にして控えても、脂質
 の量は気にしない人が多いようですが、栄養調整食品のバータイプのもの、ビスケット、
 クラッカータイプのものにも、意外に脂質が含まれています。成型し、固めるためには
 バターやマーガリン、ショートニングなどの脂質が必要だからです。中には脂質のエネ
 ルギー構成比が50%を超えている商品もあります。
・「油」というと、目に見えやすい油、揚げ物や油菓子、スナック菓子などを思い浮かべ
 ることが多いと思います。でも、パスタソースやパン(とくにデニッシュ類)、洋菓子
 類、栄養調整食品など、目に見えないところにも脂質が多く含まれています。
・昔のジャムは、糖度が高いものがほとんどでしたが、今は健康志向で、糖分を控えたジ
 ャムが増えています。砂糖には保存性を高める役割や、菌の発生を防ぐ役割があるので、
 制度が低いと、当然、日持ちもしなくなります。甘さ控えめのジャムであれば、容量の
 小さいものを買って、1〜2週間くらいで食べ切るのがよさそうです。
 
捨てるコストはあなたが払っている
・東日本大震災が発生したとき、私は世界180カ国で事業を展開する食品メーカーの広
 報室長を務めていました。当時の社長から任命され、社を代表して被災地へ支援物質を
 手配することになりました。支援のときに驚いたのは、被災地の現場と、司令塔である
 国の機関との乖離です。震災直後から現場に入り、支援している方から聞いた状況では、
 ない」という切迫した状況でした。グローバル企業ということもあり、海外の組織から
 支援物資提供の申し出が次々届きました。早かったのはオーストラリアです。震災から
 数日後にはExcelファイルで、製品名や荷姿、大きさ、量などをまとめた英語の表
 が届きました。日本側さえOKであれば、すぎに手配できる、と。ただ、これまで災害
 発生時に海外からの支援物資を受け入れた経験がなく、どのように手配すればよいか、
 手続きの方法がわかりません。当時、国内の支援物資の手配をしてくれた農林水産省の
 方に尋ねたところ、「その件は首相官邸に電話してください」との回答でした。首相官
 邸に電話すると、「その件は厚生労働省に電話してください」。厚生労働省に電話した
 ら「その件は検疫所です」と言われました。検疫所に電話すると「その件は税関へ」。
 税関に電話したら「どこの港に着くんですか。港によって管轄が違います」と言われま
 した。官邸に電話したのは震災から5日目のことです。緊急時に落ち着いているのはよ
 いことですが、それを通り越して「冷淡」と感じました。
 勤務先の自前に支援物資であるシリアルビスケットは、震災発生から10日後に、よう
 やく陸路で東京福生市の米軍横田基地まで運び、そこから岩手県花巻市と宮城県仙台市
 にヘリコプターで22万8千食を運ぶことができました。
・コンビニ業界では、ロスはまず減らない。なぜなら捨てることを想定して、店も本部も
 計画を立てているから。コンビニは、スーパーに比べて営業時間が長く、夜間にも開店
 しているため、人件費や光熱費がかかることや、仕入れの単位がスーパーに比べて小さ
 く、かつ多くの店舗に運ぶため、物流コストや仕入れ価格が割高になることなどが背景
 にあります。それに加えて、コンビニには「捨てる前提」で、「捨てる費用」があらか
 じめ商品価格に織り込まれていることも理由の一つです。
・食品業界には「欠品ペナルティ」というものがあります。食品メーカーの製品が欠品し
 て(発注数だけそろわなくて)納品できないと、スーパーマーケットやコンビニエンス
 ストアなどの小売店に対し、メーカーは、欠品ペナルティと称される罰金を、それも店
 舗ごとに払わなくてはいけないのです。罰金どころか、悪くすれば取引停止となること
 もあります。これを「ひとごと」と捉える人もいるかもしれませんが、この欠品ペナル
 ティ、メーカーが経営困難になるほどの赤字を出して負担するはずがなく、結局は食料
 品の価格に上乗せされます。つまり、間接的には私たち消費者が払っているということ
 になります。欠品ペナルティは、「ひとごと」ではなく「自分ごと」です。私たち消費
 者は、欠品のない店にするための、いつ行ってもどんな食品でもパンパンに棚に詰めて
 おくための、コストを払っているわけです。ですが、商品がいつも棚にぎゅうぎゅうに
 並んでいる必要はあるのでしょうか。私たちはそれを求めているのでしょうか。
・いつでもどこにでも何でも膨大な量の食料品があるのが当たり前、という環境を享受す
 るために、私たち自身が余分なコストを負担している。この事実を、もっと認識したほ
 うがよいと思います。
・ある全国チェーンのパンメーカーから相談を受けたことがありました。いわゆるデパ地
 下や、エキナカなどに展開しているパン屋さんです。東京都内のある百貨店の地下に入
 っている店舗で、毎日、大量に廃棄をしていて、それが忍びないというのです。百貨店
 の指示により、「閉店間際にいらっしゃるお客様であっても、どんな種類を選べるよう、
 残しておく」ことが課せられてとのこと。しかも、百貨店のブランドに傷がつくので、
 閉店間際になっても、値引きはしてはならないのだそうです。したがって、その店では、
 毎日、まだ十分食べられる売れ残りのパンを捨てているのでした。そして、この捨てる
 費用は、私たちが買う側が間接的に払わされています。
・デパ地下のパン屋は、高級感も魅力の一つです。もちろん、品質がよいゆえの、それな
 りの値段なのですが、そこには「売れ残りを大量に廃棄するためのコスト」も含まれて
 いるということを、ぜひ意識してほしいと思います。
・特定の日に特定の食べ物を食べることを煽る風潮は、そろそろ終わりにしたほうがよい
 と思います。需要予測が困難な中、欠品を無理やり防ごうとすれば、売れ残りが出てロ
 スが生じるのは必至だからです。日持ちのする食品ならまだしも、消費期限のある食品
 だと、売れ残りは廃棄かリサイクルしかしょうがありません。どちらの手段を選ぶにし
 ても、コストとエネルギーのさらなる無駄を生み出します。本来、行事や催事は楽しい
 ものです。でも、余剰食品を扱う現場は働いている人たちは、むなしさを感じています。
・日本の食品ロス量は、632万トン(2013年度)。これは東京都民が1年間に食べ
 ている量とほぼ同等だそうです。日本全体の1年間ンお魚介類の消費量ともほぼ拮抗し
 ます。世界の食料援助量は約320万トンなので、日本は、世界全体で支援される食料
 の約2倍の量を、日本構内だけで捨てているのです。これは明らかに異常な数字です。
・家庭から出る食品廃棄物のうち、34.7%が「まだ食べられるもの」ということで
 す。家庭からのロスが出る主な理由としては、野菜の皮を厚く剥き過ぎたなど、食べら
 れる部分まで捨ててしまう。「過剰除去」、保管しておいた食品の消費期限や賞味期限
 が接近してきてそのままゴミ箱に捨てる。「直接廃棄」、食べ残し、調理し過ぎなどが
 あります。 
・ハンバーガー1個を作るのに必要な水は、なんと、2400リットルにも及ぶそうです。
 ハンバーガーの原材料となるパン、レタス、トマト、牛肉などが生産される過程で使わ
 れた水をすべて足した合計です。一般家庭の浴槽の標準的な水量は200〜300リッ
 トル、3000リットルは浴槽10〜15杯分、言い換えれば、ハンバーガー1個を捨
 てることは、それだけの水を捨てるということでもあります。また、1キログラムの米
 を作るには3000リットルの水が必要で、牛肉1キログラムを生産するには2万リッ
 トルの水が必要です。
・世界の10億人もが、依然として真水の供給を受けていません。栄養不足の人は8億人
 以上。1日1.9USドル未満で暮らす「絶対的貧困」の人は、世界で7億2千万人い
 ます。2050までに世界人口が96億人に達したとすると、今の生活様式で暮らすた
 めには地球が3個必要になります。それは無理な話です。

あなたは、あたなが「買うもの」でできている
・お金は、あなたの命です。おおげささかもしれませんが、限りあるあなたの命を削って、
 働いて得たもののはずです。そんな大切なお金=あなたの命をどこに捧げるのかは、実
 はとても重要な選択であるはずなのです。
・ぜひ覚えておいてほしいのが、すべての食料品の購入が投票になるということだ。私た
 ちが買うもの。つまり私たちの投じた票が、この先自分たちが進む道を決めていく。 
・購入は投票行為。消費者が何かを購入することは、結果としてそれがよいという意思表
 示となり、さらにそれを提供している企業を選択したことになります。購入することは、
 自分の意見を表明する投票行動と似ています。票が多く集まった商品は、さらに生産さ
 わたしたちの選択が、次にどのような商品がつくられるかに影響
 を与えます。どの商品を選択するのか、よく考えて購入しましょう。
・買うということは、その商品を支持するという姿勢を表明すること。その商品を作った
 会社や組織を応援する、ということです。今、あなたが買い物している商品は、あなた
 が応援しているものでしょうか。
・食品ロスを増やすことに加担してしまっている買い方チェックリスト
 ・買い物リスト(買い出しのためのメモ)は面倒なので作らない。
 ・冷蔵庫の中や食品ストックを確認しない。そのまま買い物に出て、「あったなか?な
  いかな?」と迷い、買って帰ってから、まだあったことに気づく。
 ・賞味期限が先のもの(製造日が最近のもの)がいいからといって、商品を棚の奥から
  取る。
 ・野菜や果物を、必要以上に手でさわりまくって、きれいに陳列してあるのを乱す。
 ・スーパーで一度カゴに入れたものの、途中で気が変わって買うのをやめたとき、元の
  棚に戻さずその辺に放置する。
 ・1個で足りるのに、「2個まとめて買うと安くなる」という謳い文句につられて2個
  買う(結局、あとで無駄になって捨てる)。
 ・野菜を買うとき、まるごと1個は要らず半分や4分の1で足りるときでも、1個のほ
  うが割安なのでそちらを買う(結局、あとで無駄になって捨てる)。
 ・お腹が空いているときに買い物に出て、なんでもかんでもおいしそうに見えて買いま
  くる。 
 ・「数量限定」「期限限定」という謳い文句につられ、たいして欲しくないのに買って
  しまう。
 ・「1個買うと1個おまけ」につられて買ってしまう(結局は、あとで無駄になって捨
  てる)
 ・安くなっているからといって、そこに並んでいる商品をすべて買い占める。
・いくらお金があって、全部買い占めることができたとしても、胃袋には限度があります。
 いくら安売りの商品をたくさん買い占めても、使い切れなければ、結局や無駄になるだ
 けです。  
・おにぎりを買うために、どうして24時間こうこうと蛍光灯の輝くコンビニが必要なの
 だろうか。消費者は食べたいときに好物の「梅」おにぎりが必ずないとだめ、「おかか」
 や「昆布」では我慢できないという。このような「消費者ニーズ」、つまり消費者の「
 利便性の誘惑」に応えるため、コンビニやスーパーは1日に何度も配送を行っている。
 このために費やされるエネルギーや環境に与える負荷は、欠品を回避し顧客を失わず
 にすむためなら、とるに足らないコストなのである。そのような「消費者ニーズ」は、
 本当に尊重すべきものであろうか。
・環境にことまで配慮して商品や店を選ぶ消費者を「グリーンコンシューマー」と呼びま
 す。グリーンコンシューマーの10原則は次の通りです。
 ・必要な物を必要なだけ買う。
 ・使い捨て商品ではなく、長く使える物を選ぶ。
 ・容器や包装はない物を優先し、次に最小限の物、容器は再使用できる物を選ぶ。
 ・作るとき、買うとき、捨てるときに、資源とエネルギー消費の少ない物を選ぶ。
 ・化学物質による環境汚染と健康への影響の少ない物を選ぶ。
 ・自然と生物多様性を損なわない物を選ぶ
 ・作る人に公正な配分が保証される物を選ぶ。
 ・リサイクルされた物、リサイクルシステムのある物を選ぶ。
 ・環境問題に熱心に取り組み、環境情報を公開しているメーカーや店を選ぶ。
・商品を購入するときには、まず、それが自分や家族にとって本当に必要なものかどうか
 を考え、必要だと判断したら計画的に購入することが大切です。目的に合った商品を
 購入するためには、品質、機能、価格、アフターサービス、環境への配慮などについて
 の情報を収集し、整理する必要があります。情報を収集する手段としては、商品のパン
 フレットやインターネットによる情報検索などがあります。しかし、売り手からの情報
 は、商品の良い点だけが強調される傾向があるので、複数の情報を比較したり、自分の
 目で確かめたりすることが大切です。また、商品に付いている表示やマークの意味を理
 解して商品を選択することも大切です。商品を購入した後は、本当に必要であったか、
 毎日の生活の中で活用しているか、環境に負荷を与えていないかなどについて見直しま
 しょう。
・わたしたちが購入しているものの中には、生活に必要なものと必ずしも必要ではいもの
 があります。お金や資源には限りがあるため、必要なものとほしいものに分けて購入順
 位を考えることが大切です。
・食品を適切に選択するためには、消費者として日頃から意識して食品の品質を見分ける
 ことが大切です。生鮮食品は、色、艶、みずみずしさ、張り、臭いなどのほか、野菜な
 ど実際に手に取ることができるものは、弾力や重さなども確認しましょう。加工食品も、
 ある程度は外観から品質の低下を見つけることができます。缶詰の缶が膨張したり、包
 装材が破損したり、食品の形が崩れたりしているものは、避けましょう。食品を選択、
 購入するときは、外観で見分けるほか、表示やマーク、価格、環境への配慮などについ
 ても確かめましょう。
・食品を購入するときは、献立をもとに、調理にかける時間や自分の技術を考えて調理計
 画を立て、食品の在庫を調べてから、何を購入するかを考えます。買い物袋(エコバッ
 ク)を持参するなど環境にも配慮して、必要な分だけ購入します。生鮮食品を選択・購
 入する場合は、価格や鮮度、出盛り期(旬)を確認し、名称・原産地やその他の表示も
 確かめます。購入後はそれぞれの生鮮食品にふさわしい方法で保存するか、早めに使い
 切りましょう。加工食品を選択・購入する場合は、その目的や用途をはっきりさせ、価
 格だけでなく、表示やマークを確かめましょう。賞味期限と消費期限のちがいや保存方
 法を知り、表示の内容を理解して、買うか買わないか、どれを買うかを自分で選択する
 ようにします。  
・実際の店舗で購買するにあたって「他者への配慮」も必要です。自分だけが大量に買い
 占めたら、他にも買いたい人が困ってしまう。自分だけが新しいものを求め、今日食べ
 るにもかかわらず、賞味期限(期間)がたくさん残っているものを選べば、古いものが
 売れ残り、店舗が困ってしまう。いったんカゴに入れたものを別の売り場に置きっぱな
 しにしてしまうと、店側が不審物として廃棄せざるを得なくなってしまうから、カゴに
 入れたけど買わないものは元の売り場にきちんと戻すこと。レジの順番を待っていると
 きも、買うものが少ない人に、先にゆずってあげるような精神的余裕を持つことなどな
 ど。
・「食べ物を選ぶ」「食べ物を買う」という行動は、多くの人が生きている限り、やり続
 けなければならないことです。その基本について、まともに学ぶ機会がない。もしくは、
 受験をくぐり抜けることが優先され、無視・軽視されてきた。その結果、食べ物の選び
 方・買い方がわからない人だらけになり、食べ物についてたいして知らない人でも食べ
 物を作り、売り、買うことができる世の中になってしまっています。食品ロス大国・日
 本という現状は、生まれるべくして生まれたのだとも言えるでしょう。
 
食べ物をシェアする生き方
・2016年、フランスは、世界初の法律「食料廃棄禁止法」を制定しました。大手スー
 パーで売れ残った食品を廃棄するのを禁ずる法律です。売れ残った食品は廃棄せず、フ
 ードバンクなどの慈善団体やチャリティに寄付、あるいは食料(動物のエサ)などとし
 て活用します。違反した場合には、7万5千ユーロの罰金もしくは懲役2年の刑罰が科
 せられます。フランスの食料廃棄量は、1人あたり年間20〜30キログラム、ちなみ
 に、日本はおよそ50キログラムです。
・2016年には、イタリアでも同様の法案が可決されました。賞味期限を過ぎた食品で
 も寄付することができ、寄付を行うと税金が減免されるという法律です。
・「おてらおやつクラブ」という活動があります。お寺にお供えされる様々な「おそなえ
 もの」の食べ物を、だめになる前に、仏さまからの「おさがり」としていただき、全国
 のひとり親世帯を支援する団体と協力して「おすそわけ」する活動です。きっかけは、
 2013年5月に大阪市北区で起こった母子餓死事件だったそうです。28歳のお母さ
 んと3歳のお子さんが餓死。お母さんの書き置きには「最後に、おなかいっぱいたべさ
 せてあげたかった。ごめんね」とありました。
・日本全体で、事業者から出される食品ロスは330万トン。かたや、フードドライブで
 集められる食料品は、企業体のカーブスで240トン。カーブスで集められた分だけで
 も、食品ロス全体の0.00007%に過ぎません。ただ、これをもって「フードドラ
 イブなんかやっても意味ないんじゃないの}というのは早計だと思います。確かに集ま
 る食品は、食品ロス全体から見ればごくわずかです。ですが、これまで食品ロスなど意
 識しなかった人が、問題の存在を知り、また日本にも食べるものに困る人がいるという
 ことを知るきっかけとなる、シンボリック(象徴的)な活動としての意義はとても大き
 いと思うのです。
・また食べられるにもかかわらず、賞味期限接近のため流通できないなど、様々な理由で
 廃棄せざるを得ない食品を「食品ロス」と呼びます。この食品ロスを、事業者や個人か
 ら引き取り、福祉施設や生活困窮者など、食料品に困っている人に無償で分配する活動
 やシステム(仕組み)、もしくはその活動を行う団体を「フードバンク」と呼びます。
・日本のフードバンクと米国のフードバンクの違いはたくさんあります。その一つが、米
 国は、フードバンクで取り扱う食品は「賞味期限が切れていてもよい」とされているこ
 とです。ただし該当する食品は菓子、冷凍食品、缶詰、ソーダなどの食品に限られてい
 ます。フランスやイタリアでも、賞味期限が切れている食品を寄付することができます。
 かたや、日本のフードバンクは、私の知る限り、全国40前後のフードバンクのうち、
 賞味期限が過ぎたものを扱っている団体はありません。私もフードバンクに在籍してい
 た3年間は、それが当然だと思っていたのですが、もしかすると「思考停止状態」だっ
 たかもしれません。前例や慣習としてはそうでも、一部でも改良できたのではないかと
 思います。
・賞味期限の日付が遠いものを選び、賞味期限の日付が近いものは店に残していき、店や
 企業がそれを廃棄すると「もったいない」と店を批判する。これも「消費者エゴ」以外
 の何ものでもありません。国際消費者機構が定めている通り、消費者には権利があると
 同時に責任があります。良質な食品をできるだけ安く買いたいのであれば、生産者や販
 売者に無理を強いない、無駄や廃棄を生まない消費行動をする責任があると思います。
・スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、安売りの商品を買い占める、という経
 験はありませんか。自分の独占欲は満たすことができても、ほかにもほしい人がいたと
 すれば、その人は買うことができなくなります。
・スーパーやコンビニで、牛乳パックの賞味期限を見て、奥のほうへ手を伸ばし、賞味期
 限の日にちが遠いものを取ったことはありませんか。手前のものも売切れればいいので
 すが、残ってしまったら、店側が処分することになります。
・お店で食料品を買うとき、「ここはみんなで、共同で使っている冷蔵庫なんだ」と考え
 るだけで、行動は自然と変わってくるように思うのです。   
・みなさんに行動に移していただきたいのは、「賞味期限が近づいている食べ物を買う」
 そのことに尽きます。もちろん、一人ひとりの健康状況や食べ物の嗜好、食べ物を消費
 する速度、ライフスタイル、世帯人数によっても事情は違ってくるし、「賞味期限内の
 ものだからすべて安心」というわけでもありません。それでも、これまでなんでもかん
 でも棚の奥の「賞味期限が遠い日付のもの」を選んでいた人が、そうでもないものを買
 うだけで、世の中が変わります。割引きシールが張られている商品だったら、買った人
 の家計が助かります。賞味期限の順番通りに買ってもらえれば、売れ残りによる廃棄が
 減り、店やメーカーが助かります。生ごみの処理費用が減り、自治体や企業が助かりま
 す。社会全体も、食品ロスが減って環境負荷が減り、助かります。まさに「三方よし」
 です。
・私がこの本で伝えたかったのは、「他人が決めたことを鵜呑みにする、”ひとごと”で
 ”あなたまかせ”で受け身な姿勢をやめ、自分の頭で考え、自分の心で感じ、自ら行動
 し、自分の人生を切り開いていく生き方をしよう」ということです。「他人が決めたこ
 と」は、世の中にたくさんあふれています。その一つが「賞味期限」です。
・人間は、サルと違って、他人に食べ物を分け与えることに喜びを感じる動物だそうです。
 人間には、サルなどの動物と違い、食べ物を仲間のために持ち帰り、分配し、共食する
 性質があります。また、「互換性(もらったら返そうという気持ち、してあげたら何か
 返ってくると期待する気持)」も、他の動物にはない、人間独特の性質なのだそうです。
 そう考えると、「食べ物をシェアする」というのは、何も特別なことではなく、意識し
 てやることでもなく、人間本来に備わった、ごく自然な性質なのかもしれません。
・人として生まれてきたからには、他者をおもんばかること。特に、社会的に弱い立場に
 ある人や未来の世代の人のことを配慮し、人間らしく生きていきたいものです。
・食品ロスを減らすための10カ条
 ・買い物前に、自宅の戸棚や冷蔵庫にある食品の種類と量を確認する。
 ・空腹の状態で買い物に行かない。
 ・買い物では、すぐ食べるものは手前(賞味期限が近いもの)から取る。
 ・「期間限定」や「数量限定」、まとめ買いに注意
 ・調理のとき、食材を使い切る。
 ・残った料理は別の料理に変身させる。
 ・賞味期限は美味しさの目安、五感を使って判断する。
 ・保存用食材は「ローリングストック法(サイクル保存)で。
・ローリングストック法は、レトルト食品や缶詰など、普段食べているものを備蓄食品と
 してストックし、食べた分だけ買い足しておくという方法です。非常袋に入れっぱなし
 にしておくより、普段使いしたほうが、意識にのぼりやすくなります。また、災害時に、
 食べ慣れない非常食を食べることで感じるストレスを軽減するという点からも、ローリ
 ングストック法はお勧めです。

あとがき
・人の寿命は予測できても、具体的に何歳何カ月何日まで生きられるのかはわかりません。
 同じ時刻に生まれても、遺伝子情報や生育環境の違いにより寿命は変わります。食べ物
 も同じです。食べ物の寿命を賞味期限とするならば、原材料のブレや保管状態のばらつ
 きにより、同時刻に作られても、賞味期限は違ってきます。キッチリ予測するのは不可
 能です。