資産フライト :山田順

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この本が出たのは、東日本大震災の起こった8ヵ月後の2011年11月である。当時は、
あの大震災によって日本経済も大打撃を受け、深刻な震災大状況に陥るだろうという予想
が、世界のエコノミストたちから出ていた。このため、日本から海外への資産が、どんど
ん逃げていくだろうと思われていた。しかし、それから4年が過ぎた現在においては、日
本経済は、なんとか持ちこたえている。これは、民主党政権から自民党政権への政権交代
により、安倍政権が誕生し、「アベノミクス」と言われる思い切った金融政策が打ち出さ
れ、心理的悲観感から抜け出せたことによることが大きいのではないかと思われる。
しかし、日本経済がこのまま回復を続けるかどうかは、まだ予断を許さない。日経平均が
回復してきたものの、実体経済が本当に回復してきたとは言えない状況にあるからである。
日本経済は大丈夫だと言えるのは、海外に逃避した資産が日本に戻って来るときであり、
そんな日本になるのは、まだまだ先のことになるのではないか。
しかし、本書の中で述べられている「相続税は二重課税だ!」というのには、まったく同
感である。普通、稼いだ所得資産(遺産)はしっかり税金(所得税)を払っている。それ
に対して、再度相続税という税金を課すのだから、まさに国によるボッタクリ税金である。
国は、なんでもかんでも税金を課して、国民から金をむしり取っておいて、自分の金では
ないことをいいことに、その金を湯水のごとく無駄遣いをする。我々庶民は、どこまで我
慢を強いられるのか。
日本は、「金融ガラパゴス」の国と言われる。欧米では当たり前になっている「共同名義
口座」を、日本国内の金融機関では作れない。恐らくこれは、国が相続税をしっかり取り
たいがための政策なのであろうが、日本の金融サービスは、世界に比べて、あまりにも悪
すぎる。これは、日本の金融機関が悪いのではなく、国の政治が悪いのだ。我々日本国民
は、日本が「金融ガラパゴス国」であることを、しっかりと再認識しなければならない。
そして、若い頃から、経済・金融の知識を、しっかり身につけなければならない。

はじめに
・キャピタルフライトとは、国内から海外へ資本がいっせいに流出する「資本逃避」のこ
 とを言う。キャピタルフライトが起こるのは、その国の経済の先行きが暗くなり、その
 うえ財政破綻が懸念され、インフレの危険性が高まったときである。
・水面下では、お金持ちの個人や個人投資家などが、静かに海外に投資を移しているので
 ある。しかも、2008年9月のリーマンショック以後は、富裕層にかぎらず、資産が
 それほど多くない小金持ちとされる人々から、一般のサラリーマン、OLの一部にいた
 るまで、海外に資産を持ち出すことが多くなった。
・富裕層から一般の人々までが資産フライトをしている現状、つまり「さよならニッポン」
 現象は、社会にもたらすインパクトからいっても大きな問題だ。なぜなら、これによっ
 て税収は減り、ますます日本は衰退してしまうからである。 
・日本は今後、富裕層に国を見捨てさせ、優良企業の海外移転を促進させたうえで、政府
 のカネだけを頼りにする非納税者の貧乏人だけの国になろうとしている。東日本大震災
 以後の政治と経済政策のあり方を見れば、日本はこの先、「重税国家」になるのは間違
 いないと思われる。確かにそうすれば、震災復興費用は賄え、財政破綻は先送りできる
 うえに、今日まで大きな問題とされてきた格差はなくなるかもしれない。しかし、それ
 は、かつてのソ連のような、赤い貴族(官僚と政治家」がなにも知らない一般庶民層を
 支配する、まったく自由のない国ではないだろうか?

成田発香港便
・最近は、現金をそのまま持って香港に行く人が多いですね。それも5百万円とは1千万
 円単位です。それ以上の人もいますよ。
・富裕層は、私たち一般人が想像するのとは違い、日本国内では派手なことを極力避け、
 海外でより自由で贅沢な生活を楽しんでいる。当然、資産も持ち出しており、オフシェ
 アをとおして海外に不動産投資を兼ねて別荘を持っていたりする。
・現金1千万円の海外持ち出しは、明らかに違法行為である。日本の外為法では、100
 万円を超える現金類の見届け持ち込み・持ち出しが発覚した場合、「6ヵ月以下の懲役
 または50万円以下の罰金」の罰則規定がある。  
・2009年4月に外為法が改正され、それまで200万円超だった海外送金の適用下限
 額は100万円超に引き下げられている。 
・日本の金融機関のサービスは世界で最低です。しかも、もうずっとゼロ金利で、ここに
 お金を預かる意味が私にはわかりません。 
・香港上海銀行(HSBC)は、世界最大手の銀行の一つであり、S&Pの「AA」格付
 けを有している。そのうえ、グループ全体では、ヨーロッパ、アジア、アメリカを中心
 に世界88ヵ国に約8000の支店ネットワークを持っており、ここに口座を開けば、
 キャッシュカード1枚で世界のほぼどの国でも現地通貨での引出しが可能になる。日本
 でも、HSBCの支店はもとより、提携しているゆうちょ銀行でも引出せる。 
・香港では外貨の持ち込みに制限はない。持出しも同じく制限がない。ただし、マネー
 ロンダリングの防止のため、銀行や両替所で多額の外貨両替を行うと、パスポートなど
 の身分証明書の提示、個人情報の政府当局への提供が行われることになっているだけだ。
・HSBCで「総合口座」を開設すれば、複数の通貨での預金が可能になる。HSBC香
 港の最大の特徴は、この「総合口座」で、これを開設すると、すべての通貨の口座を一
 つの口座番号とステイトメントで管理できる。  
・HCBCでは、日本円を含む10種類の外貨での現金の入出金に対応している。つまり、
 円を持っていけばそのまま入金できる。
・日本の銀行では預金外貨のまま引き出すことができないので、為替の変動や金利差で利
 益が出たら、円に戻すことになるが、結局合わせて2円が手数料で消えてしまう。とな
 ると、よほど大きな為替変動がないかぎり、外貨預金は殖えない。 
・もう一つの大きな差は、日本では基本的に金利は単利のうえ源泉徴収までされるという
 ことだ。日本では複利タイプの金融商品はほとんどない。銀行のスーパー定期預金で預
 入期間3年以上のものや、ゆうちょの定期預金ぐらいである。そのうえ日本では利子課
 税が一律20%(所得税15%、住民税5%)となっており、これは源泉徴収としてあ
 らかじめ金融機関によって天引きされる。
・貨幣は単なる印刷された紙切れだから、それ自体に価値はありません。ただ、その紙切
 れが国力に裏付けられている。日本はその国力が落ち続けている。  

震災大不況
・あの大震災後、外国人は争って、東京、いや日本を脱出した。人間が動けばお金もいっ
 しょに動く。外国人が次々と日本を去っていくのを批判したメディアは多かったが、彼
 らの行動は合理的である。危険が迫っていたのだから、日本に留まる理由はなかった。
・人間にとって大切なのは命とお金。そのどちらも、日本にいたら危険に晒されると思っ
 たら、誰もが一刻も早く脱出するだろう。日本人だって、海外に暮らしていて、その地
 で戦乱や大災害が起こったら、早々と逃げ出すに違いない。
・日本の金融市場は震災前からまったく魅力に乏しかったから、外国の金融関係者は少し
 ずつ日本を離れていた。そして、東日本大震災後は、金融にかぎらず、数多くの外資が
 東京を去った。  
・東日本大震災ではっきり露呈したのが、日本の金融市場の脆弱さと時代遅れぶりだっ
 た。  
・いまや日本でも個人投資家の90%がネット取引をしている。彼らは、ネットが利用で
 きなければ自分が持つ金融商品の時価さえ確認できない。  
・なぜ日本政府は、ここまで円高を嫌うのだろうか?じつは短期的な円高は、大震災後の
 日本経済には好機ととらえることができる。自国通貨高は即購買力のアップにつながる
 のだから、今後、脱原発を進めるというなら、電力供給をとりあえず維持するために、
 必要な石油やLNGなどをどんどん買い占めればいい。円高のおかげで将来値上がり確
 実な資源が、以前より安く買えるからだ。しかし、日本政府にこんな発想はない。前回
 の介入でも失敗したのに、またしても同じことをして、日本の富を消失させてしまった
 のである。  
・政府が為替介入に使う「外貨準備」の外国為替資金特別会計は、一般会計ではない。だ
 から、国会の審議、議決を経ないで、政府が勝手に使えることになっている。これは、
 じつは憲法違反とも言えるのだが、そんなことを指摘する声はほとんどない。
・野田財務相の旗振りで行われた単独介入で、円相場はいったん80円台に戻したが、そ
 れもたった1日で終わった。東日本震災で日本全体が危機に瀕し、国民生活も窮乏しつ
 つあるなかで、なぜザルに水を注ぐような杜撰なお金の使い方が許されるのだろうか?
・日本政府の金融政策は意味不明なうえ、日本の金融市場は投機筋の玩具になっているだ
 けで、まったく魅力を失っている。 
・政権がくるくる変わっても、官僚たちが動かす日本システムは変わらない。こうした政
 府の下で、日本は本当に復興するのだろうか?少なくとも資産フライトする人々は、現
 在の日本の国のあり方、政府のあり方をまったく信用していない。
・震災後の心情として、誰もが、「日本は強い国」だと思い込みたかったというのは、私
 にもわかる。しかし、それは太平洋戦争中の「神国日本」と同じで、単なるスローガン
 であり、現実ではなかった。戦争も復興も戦理・戦略に基づいた計画と、それをファイ
 ナンスする経済力と技術が必要だ。それがなかったために、日本は太平洋戦争に敗れた。
 太平洋戦争の戦史を見ると、日本軍は戦場では最強の軍隊だった。しかし、上層部が腐
 っていた。    
・この国は高度成長期の後にリスクを取らずに出世した人々が、いまだに社会を支配して
 いる。その典型が、政治家と官僚たちだから、これで、どうして復興できると言えるの
 だろうか?  
・東電の救済策は完全に間違っている。これでは、日本は資本主義国家とは言えない。金
 融市場のルールを無視している。もし、こうしたことが許されるなら、今後、日本には
 投資できないという意見が大半だった。
・リスクは、東電の株主や、融資や社債を購入している金融機関が取るのが資本主義のル
 ールだ。株主はそのリスクを承知で投資し、有限責任で負担することになっている。こ
 れが実行されないまま、ステークホルダーでもない国民が負担するのとはありえない。
 株主責任を問われないなら、こんな市場は資本主義市場ではない。日本は、中国と変わ
 らないエセ資本主義国家だ。
・いざとなったら国民の懐に手を突っ込んでくる政府がある国は、日本人ですら信用でき
 ない。震災後にも資産フライトが止まらないのは、こうしたところにも原因がある。
・いまの日本人を見ると、「失われた20年」が続いてきた間に、若者たちの意識が変わ
 り、それとともに日本人全体が弱気になってしまっている。とくに現代の若い男性たち
 は、「草食系」と言われ、非常に淡白だ。「小さな幸せ」を追い求めるだけで、お金に
 対する貪欲さがないと言われている。   
・このような国が、本当に復興するだろうか?今後の日本は、復興というより、増税とイ
 ンフレによる震災不況が深刻化していく、そうした判断をした人々により、資産フライ
 トはさらに加速している。  
  
海外投資セミナー
・ジョイントアカウントというのは、「共同名義口座」のことで、こうすると口座名義人
 ならいつでも預金を引出すことができる。通常、日本では、親が死んだ場合、子どもが
 親名義の預金口座から預金を引出すことができず、銀行が死亡を確認すると口座は凍結
 されてしまう。これを防ぐには、口座を共同名義にすることが必要だが、日本の金融機
 関ではこれができない。欧米では当たり前の共同名義口座が、なぜ日本では認められて
 いないのか。  
・海外で遺産を相続しようとも、相続人が日本国内に居住もしくは日本国籍を有している
 場合には、海外に所在する財産については日本の相続税が課税される。日本の相続税法
 は富裕層に対しては懲罰的で、その一例が口座名義人が死亡した場合、相続人が決定す
 るまでは口座が凍結されてしまうことがある。  
・2011年4月からの相続税の改正では、最高税率の引き上げに加えて基礎控除額も改
 正された。そのため、いままで相続税とは無縁だった人々も、改正以降は、相続税を払
 わなければならなくなる。具体的に言うと、これまでは基礎控除の定額部分は5千万円
 で、これに法定相続人一人当たり1千万円を加えた金額までが課税対象外だった。しか
 し、改正後は、定額部分が3千万円、一人当たりの控除額が6百万円に引き下げられた。
 例えば、配偶者と子ども二人の場合でみると、いままでは控除が8千万円だったものが、
 4千8百万円になる。
・相続税というのは、もっとも簡単に言うと、「遺産に課税される税金」である。ところ
 が、これには二重課税という問題が常につきまとう。なぜなら、遺産というのは、もと
 もと税金を払ったうえで残った資産だからだ。働いて稼いだ所得、ビジネスで得た所得
 については、すでに所得税が課税済みである。つまり、財産(遺産)というのは税金を
 払った上で残った剰余分で、富裕層だろうと庶民であろうと、なぜ、税金をしっかり払
 って残った財産に相続税が課税されなければならないのか。
・最高税率が高いということ、また、控除額を低くするということは、結局、国が「財産
 を残しても無駄。死んだら召し上げる」と言っているのと同じである。
・2010年末における日本の家計金融資産の総額は1480兆円で、そのうち、なんと
 約98%が円建てであり、しかもその約半分が現金・預金である。
・2011年末の段階で国の借金は約994兆円まで達しており、「このままのペースで
 借金を重ねると政府債務が家計純資産を上回るときがやってくる。そのときに国債は暴
 落する」と見る専門家は多い。私もこの見方には肯定的で「日本国債の買い手は95%
 が国内勢。よってそんなことは起こらない」という専門家もいるが、彼らを信用しては
 いない。国債は誰が持っていようと売るときは売られるからだ。
・内閣府が2011年7月に約10年ぶりに発表した国のバランスシートでは、年金の公
 的負担も合わせた負債総額は2009年度末で1504兆円に達しておりこれはGDP
 の約2.5倍。明らかな債務超過で、すでに日本は倒産しているのだ。
・いずれにしても、政府債務が家計資純資産を上回る「ドゥームズディ(運命の日)」は
 2014年〜15年ごろにやって来る。そうなって金融危機が起これば、私たちの預金
 は凍結されることもありえる。金融機関が潰れれば預金はペイオフにより1000万円
 までしか保護されないし、なによりインフレになれば、お金(日本円)の価値は大幅に
 低下する。このインフレは、好景気によるものではなく、経済成長しないなかでのイン
 フレだから、最悪である。賃金が上昇しないで、物価だけが上昇するインフレは、スタ
 グフレーションと呼ばれる。
・「日本は強い国」と言いながら、こんな将来予測のほうが主流なのは、国民のせいでは
 ない。いくら勤勉に秩序正しく、働き者の国民がいようと、官僚と政治家の無策無能が
 続く限り、私たちに打つ手は少ないのだ。
・すでに日本の投資信託は、純資産高の8割までが海外投資型の商品になっていて、運用
 成績でも国内投資型を圧倒している。

さよならニッポン
・投資とは、お金(資産)をどこに置くのか、その置き場所のこと。外貨でもいいし、株
 や債券、投資信託でも、ヘッジファンドでもいい。もちろん、不動産でもいい、という
 ことになる。要は、資産がプロテクトされること。つまり、目減りしないで安全に管理
 されることが肝心である。
・私たち一般人にとっては1億円も10億円も同じにしか思えないが、10億円を超える
 と、視点を10年後、20年後に置いてマネージメントしなければならないという。ま
 た、日本だけに視点を置いていては、リスクがあるという。
・昔からの富裕層というのは、ローカルな資産家や伝統企業の役員などが含まれるが、こ
 の人たちは、消費意欲が低く、倹約を美徳と考えているうえ、新しいものを好まないと
 いう。それに対して、ニューリッチは、ベンチャー企業関係者、オーナー企業家、専門
 家、個人投資家が多く、よいものには貪欲で、コモディ化されたものを嫌い、人脈構築
 のモチベーションが高いという。
・ヘッジファンドに関しては、なぜか多くの日本人が誤解している。もし、究極の投資が
 あるとすれば、現代においてはヘッジファンド以外にはないだろう。それは、ヘッジフ
 ァンドが市場の動きとは相関しないでリターンを得られるように設計されているからだ。
・お金を持っている人間が、お金を運用しないで死蔵してしまうと、社会全体が豊かにな
 らない。お金を持っている人間には世界で資産を運用してもらう。そして、その利益を
 日本に持ち込んでもらえば、税金も殖える。
・海外投資をしている人間の多くが口をそろえて言うのは、日本の財政が危機的状況にあ
 り、日本は近い将来に財政破綻もあり得るということだ。現在の日本の状況をシンプル
 に考えると、国家の巨額の借金を作ったのは国であり、そのお金を貸したのは国民とい
 うことになる。つまり、国が借り手で、国民が貸し手だ。とすれば、普通は貸し手のほ
 うが強いのだから、力関係からいって、借り手が増税したり、国民から集めたお金を勝
 手にバラ撒いたりするのは、とんでもないと言えるだろう。
・不思議なことに、実体経済というのは、いくら経済学が社会科学だといっても、理論や
 数字に基づいて動くものではない。エコノミストの理論どおりに実体経済が動くなら、
 不況はなくなり、人類全体はすでに貧困から脱しているだろう。
・資産フライをする人々は、現実主義者で、楽観主義者ではない。だから、現状認識が
 一般の人間より厳しく、危機を察知する能力に長けている。
・公的債務が1000兆円を優に超える国で、政府が保証する年金や国債、郵便貯金がも
 っとも危険なのは、経済知識のある大人なら誰だってわかる常識だからだ。
・実体経済というのは、パーセプション・ギャップで動く心理ゲームのようなものだ。現
 在のところ、大多数の国民の心理には、財政破綻のリスク認識はない。しかし、今後の
 リスク認識は、徐々に高まっていくものと思われる。そして、やがて心理ゲームが崩れ、
 国民のパーセプションが変わるときがやってくるかもしれない。そのリミットは、国家
 債務と個人金融資産とのバランスが崩れる2014〜2015年ごろだろう。
・このとき、たとえば、長期金利の上昇局面で、海外メディアが「日本はもうダメだ」と
 書く。そして、海外の投機筋が日本からいっせいに資金を引き揚げれば、国債は暴落し、
 国内の金融機関も国民も国債を売り始め、株価も急落し、政府はにっちもさっちもいか
 なくなる。 
・国境が事実上なくなったグローバル時代に、国民は国から逃げれないと考えていられる
 おめでたい人々がいることが、私には信じられない。これは愛国心の問題ではない。日
 本を愛することと、政府を愛することは別の話だ。「さよならニッポン」は、日本その
 ものへの決別ではなく、現行の政府に対する反乱である。

富裕層の海外生活
・日本の所得税は地方税10%を含めると50%にもなり、主要国の中にでは世界一高い
 水準にある。また、金利は世界一低いので、このままでは国からお金が出ていくばかり
 になる。所得税ばかりか法人税も世界に比べて高く、こうした税制を続けていくと、
 「日本はどんどん貧しくなるばかりで、国も落ちぶれる。
・現在、主要国の所得税の最高税率はイギリスが50%、フランスが40%、アメリカが
 35%だが、地方税と合わせた日本の50%は、やはり高い。
・平等ばかり追求する日本は、金持ちを大事にしない国。だから私たちは海外に出るんで
 すよ。 

税務当局との攻防
・日本は「嫉妬の国」だという。日本人はとくに「嫉妬心が強い」と言われ、その感情は
 成功した人間やお金持ちに対して露骨に向けられる。アメリカ人は成功者やお金持ちを
 単純に賞賛する。しかし、日本人は逆で、「なんで、あんなヤツが成功したんだ」「あ
 んな人がお金持ちになるなんて許せない」という感情のほうが先にくる。
・日本から海外に資産が逃げていくのは、税法も含めて日本が魅力のない国になってしま
 ったことに、根本原因がある。日本は富裕層に冷たい国であり、国民の嫉妬心が強いた
 め、彼らが国内で贅沢な暮らしをすることを許さない雰囲気がある。金融制度も閉鎖的
 で、海外からの投資を呼び込むような環境になっていない。その結果、マネーは入って
 くるより、出ていくほうが多くなっている。 
・さらに、これまでずっと「1億総中流」のような、ありもしない幻想の中で生きてきた
 から、富裕層向けのインフラやサービスがほとんどなかった。もし、それが整っていれ
 ば、四季があり、豊かな自然があり、なによりも母国語でコミュニケーションできるこ
 の国から、積極的に出ていこうとする富裕層はいないだろう。 
・現在、世界の富裕層が所有する金融資産のうち約30〜40%がオフシェアにあるとさ
 れている。欧米の富裕層はもちろん、最近では、アジアの富裕層のマネーも大量に流れ
 込んでいる。富裕層ばかりか、政治家も企業経営者もオフシェアに口座を持っている。
・最近のオフシェアでは、ますます金融サービスが強化され、世界中のマネーが集まって
 いる。いまや名だたるオフシェアセンターには、世界中の金融機関ばかりか、世界的な
 企業や大手の会計事務所、コンサルティングカンパニーが進出し、クライアントにあり
 とあらゆるサービスを提供している。大手会計事務所は、各国の税制を合わせた節税ス
 キームまで販売している。 

金融ガラパゴス
・現在、日本の銀行のほとんどが、欧米の銀行に比べて法外に高い手数料収入と国債保有
 の利回りで利益を上げている。これは、金融機関としては異常な姿だ。
・日本の銀行はいまや顧客に金融サービスを提供する機関とは言い難く、手数料と国債運
 用による「手数料徴収機関」「国債消化機関」と化している。 
・日本に在住する外国人のほとんどは日本の銀行に口座を開かない。ビジネスなどでどう
 しても必要でないかぎり、彼らは本国の銀行の日本支店に口座を開設する。その理由は、
 一つには日本のほとんどの金融機関が英語取引に対応していないこと、もう一つは手続
 きが面倒なうえに、金融サービスが欧米に銀行に比べて極端に劣ることである。
・証券口座の場合、外国人が日本で口座を開くのはほとんど無理である。
・日本の金融機関が外国人を差別しているということではない。差別されているのは外国
 ではなく、国内と国外に分けた場合の「国外」である。なぜ日本の金融機関は、このグ
 ローバル経済の時代に、国外を締め出すのだろうか。それは、銀行や証券会社が、外国
 人・日本人に限らず、非居住者の場合は、税務上の扱いが面倒なためだ。金融庁のコン
 トロール下にある日本の金融機関は、顧客より「お上」を向いて仕事をしているのであ
 る。
・日本の金融機関は金融の最先端から大きく取り残されている。その理由は、言葉の壁と
 厳し過ぎる投資家保護規制だ。すべての取引を日本語で説明しなくてはならないのなら、
 金融機関はそのコストに見合う限られた海外商品しか提供しないだろう。
・日本政府は、「貯蓄から投資へ」と国民に投資を奨励し、なおかつ、日本の市場を国際
 化すると言っていた。しかし、実際は、国内の金融機関に海外に比べて圧倒的にレベル
 が落ちる金融サービスしか認めていない。ということは、政府自らが資産フライトを奨
 励しているようなものではなかろうか。    
・日本が「ガラパゴス」であることは、最近では当たり前のように語られるようになった。
 一般の人々は、主にIT機器などのことと思っている。まさか、金融までそうだとは、
 多くの人は思っていない。ところが、いまや文化・制度・技術・サービスなど、あらゆ
 る分野で、「日本のガラパゴス化」が進んでいる。
・日本で売られている投資信託は、手数料も高いうえに、ハイリスクの商品ばかりである。
 日本では、海外でごく普通に見られる安定した投資効率の投資信託はほとんどない。
・日本の投資信託は、手数料や投資株式の回転売買で販売会社と投資運用会社が儲かるだ
 けで、購入した個人投資家はほとんど儲からない構造になっている。なぜなら、日本で
 は「販売手数料」と「信託報酬」が、あまりにも高いからである。    
・リスクを取り、そのリスクを調整して、いかにリターンを安定的に出せる商品を開発す
 るかということが、金融機関がやるべき仕事である。しかし、日本の金融機関には、そ
 もそもそんな発想がないように見える。また、そういう発想をサポートするインセンテ
 ィブ自体がないので、商品開発ができる人材も、ほとんどない。
・日本の場合、ほとんどのファンドは、証券会社、銀行、あるいは金融商社が、国外から
 調達してきたファンドである。そしてそれは、単に調達してきた金融商品に販売手数料
 を上乗せしただけの商品で、しかも、その手数料が呆れるほど高い。
・売却しなければ課税されない商品は、投資家にとってはもっとも有利な商品である。そ
 れは、福利効果が働くからである。ところが、毎月分配型は、分配金を受け取ることで
 この効果を自ら放棄し、そのうえ分配金に課税までされているのだ。
・手数料といえば、日本では保険の保険料と手数料も、海外にある同じような商品に比べ
 ると驚くほど高い。たとえば、日本で普通に販売されている生命保険の同種の保険を海
 外では3分に1の値段で見つけることができる。
・日本人の個人投資家、つまり一般国民は、政府や官僚、金融機関から、「日本人は日本
 の外にある金融商品に直接アクセスできない」と見下されていることになる。「まさか、
 自分たちが金融ガラパゴスで暮らしているとは気がつくはずはないだろう」と、見くび
 られているとしか、私には思えない。
・日本のエリートというのは、みな受験戦争を勝ち抜いた元ガリ勉だから、既成社会の変
 化を嫌う。とくに景気拡大で社会がダイナミックに動くと、教育レベルの低い庶民でも
 金持ちになるチャンスができる。そうすると、成金がのさばる世の中になり、彼らのプ
 ライドが傷ついてしまう。さらに、若者は年長者に逆らうようになり、振興企業は既成
 の企業に競争を仕掛けるようになる。そうなると、彼らがせっかく築いてきた利権や談
 合体質まで崩れていく。だから、株式市場が過剰に投機的になったり、個人消費が過熱
 気味になったりすると、官僚たちは増税と金融引き締めをやるのだというのだ。   

愚民化教育
・これからの日本人は、中国人、アメリカ人とかなりハードな競争を強いられる。いや、
 いまこの時点で、もうそうなっている。このことを考えたらとき、行き着くところは、
 結局、これを招いたいのは、日本の教育システムに大きな欠陥があったからでは、とい
 うことになる。ずばりどこに欠陥があったかと言えば、経済・金融に関する教育、そし
 て英語教育、この二つである。日本人は潜在的に豊かな能力を持っているのに、国の教
 育がこの二つをおざなりにしてきたために、その能力を発揮できなくなっているという
 のが、私の結論だ。
・資産フライトをしている人々は、大きなリターンを得るためや節税のためだけ、それを
 しているのではない。日本国内が外の世界に比べて、あまりにも魅力に乏しいから、仕
 方なくそうしているにすぎない。    
・日本ではいまだに「株は危険」「投資より貯蓄」という考え方が根強い。この考え方は、
 グローバル化以前の直接金融の時代には有効だったかもしれないが、いまは通用しない。
 また同じく日本では、「額に汗して働く」ことは最大の美徳とされ、よく働くことが最
 上の価値あることとされてきた。それで、働き者は社会から尊敬され、「一生懸命」と
 か「頑張る」などという表現が、もっとも好まれてきた。しかし、こうした価値観も、
 グローバル資本主義においては、日本人を貧しくするだけだ。
・日本人は半分以上の55.3%を現金・預金で持っていて、株式や債券などの投資型の
 金融商品は12.3%しか持っていない。これに対してアメリカ人は52.5%と半分
 以上を債券や株式で持っている。日本人の感覚では、こうしたアメリカ人の金融資産の
 保有のあり方は「非常識」と思えるかもしれない。しかし、グローバル資本主義下では、
 こちらのほうが健全、つまり「常識」であって、日本人のほうが「非常識」である。そ
 れは、これ以上、株離れ、投資離れが進むと、多くの日本企業が外国人支配となり、日
 本人がいくら働き者であろうとリターンが得られなくなるからだ。外国人株主たちは、
 株主配当を増やして労働分配率を低下させようとする。とすれば、日本人は汗水たらし
 て働き、株主に奉仕するだけの存在になってしまう。
・私は、日本の文部省がわざと国民に経済・金融知識を身につけさせないようにしている
 のではと、疑っている。文部省ばかりか、財務省はとくにそうした知識を国民に与えた
 くないと思っているに違いないと、大いに疑っている。なぜなら、そうしないと金融機
 関に預貯金が集まらず、国債が消化できなくなってしまうからだ。
・国が豊かになる、国民自身が豊かになるためには、経済・金融に知識が欠かせない。そ
 うして個々人が若いときから投資を始めれば、そのお金は国や企業に回り、経済も発展
 し、回り回って結局、自分の懐に帰ってくる。この循環を、日本では政府自身が断ち切
 っている。国民の貯蓄を国債で吸い上げるために、意図的にそうしているとしか思えな
 い。
・グローバル資本主義の時代になって、アメリカでは格差が拡大した。その差は、金融リ
 テラシーの差でもある。お金に対する知識がないとあるとでは、大人になってからの生
 き方に大きく影響し、その結果、格差はどんどん拡大していく。 

愛国心との狭間で
・グローバル化は、経済や社会から国境を取り払った。しかし、心のなかからは取り払え
 ない。いくら国境がなくなろうと、人間は生まれ育った環境と社会に強い愛着を持つ。
 しかし、その愛着が外の世界を知ってはじめて強く認識されるので、自国の外側から見
 た経験がないと健全には育まれない。    
・いまの日本に強い愛着を持ち、「なんとかもっといい国にしたい」と思っているのは、
 じつは国内しか知らないような人々はなく、この国を一度でも外側から見た人々である。
・最近の日本人は、昔より右寄りになり、より愛国的になったと言われるが、それは一般
 層が外の世界を知らずに自己愛を強めているだけにすぎない。「日本は強い国」をなん
 の疑いもなく信じられるのはこの層だけだ。むしろそれを疑い、どうすればいいのかを
 考えるほうが、日本人としては健全だろう。「日本の強さは団結力です」ということを
 示したいのなら、資産フライトの加速によって日本人が二極化していく状態をなんとか
 しなければならない。盲目的な愛国心は、かえって国を悪いほうに導く。
・官僚統制の国家の欠点は、彼らが一見しただけでは、国民のために働いているようにし
 か見えないことだ。しかし実際は、金融政策一つをとっても、国民の自由な経済活動を
 邪魔している。「海外になどアクセスしなくていい」「投資でお金を設けてはならない」
 と、官僚たちはいちいち国民生活に口を挟んでくる。教育においても、「英語など話せ
 なくていい」「まして「金融教育など必要ない」と、統制したがる。なぜ、彼らはこん
 なメンタリティなのだろうか?それは、彼らがもっとも嫉妬深く、自己愛だけの集団だ
 からだ。彼らは「国益」よりも「省益」を優先し、好景気を嫌い、まして一般国民が豊
 かになることも、金持ちが資産を持ち出して日本以外で自由に生きることも、感情的に
 許せない。
・日本の官僚というのは、ほとんどが学歴エリートだが、その出身母体集団は中流だ。こ
 の中流出身のエリートであることが、こうしたメンタリティを助長させたと、私は考え
 ている。
・私も含めて、日本人の多くは、自分たちはフツーの暮らしをしている、人並みに生きて
 いると考えている。この国では幻想にせよ「1億総中流時代」があったのだから、ほぼ
 誰も自分を中流の人間と思っている。じつは、この中流であるということが、人間とし
 てもっとも醜いことなのである。 
・なぜ、中流が人間として醜いのだろうか?それは、この層がもっとも激しく内部抗争を
 しているからだ。周囲と自分を比較し、少しでも上に行きたい、もっとお金がほしいと、
 嫉妬心を隠しながら、たてまえと本音を使い分けて生きている。日本の官僚はその典型
 だ。      
・社会の上層にいる人々にはこんなマインドはない。また、底辺にいる人々も、こうした
 マインドは持ち合わせていない。上流と下流のメンタリティは ほぼ共通している。格
 差に底辺にいる下流の人々の特徴は、まず正直だということだ。彼らは決して高尚なこ
 とは言わないし、知らないことを知っているように「知ったかぶり」もしない。第一、
 本もほとんど読まないから、宗教、イデオロギー、思想、文学、占い、文化なども信じ
 ない。信じているのは、日常生活で経験したことだけである。その意味で、まったくの
 リアリストだ。そして、彼らは日本人としては、日本を純粋に愛している。同じく富裕
 層、社会の上層にいる人々も、信じているのは自分の経験したことだけであり、ほとん
 どイデオロギーと思想を持っていない。絵空事の文学などにもあまり興味がない。そし
 て、自分が育った日本を素直に愛している点では、下流層と変わらない。
・ところが、中流層になると、下流を「まだ下がいる」と見下すことで心のバランスを保
 ち、上流を「カネに飽かせて好きなことをやっている」となんとか引きずり降ろそうと
 する。      
・いまの日本は不思議な国で、お金持ちは社会の敵のように思われている。拝金主義は徹
 底的に嫌われる。しかし、彼らのほうが日本に対する愛国心は人いちばん強い。とくに、
 ビジネスで成功して新富裕層になった人間たちは、彼らが富を築いたのが多くの場合こ
 の日本市場だから、そのことに対して感謝の気持ちがある。彼らは、できるなら富のか
 なりの部分を市場に返したいと考えている。しかし、そうした願いは大抵の場合、日本
 の時代遅れの税制や鎖国主義によって打ち砕かれる。そのため、彼らは日本に対してア
 ンビバレントな感情を抱く。しかし、いまだに官僚や政治家たちは、彼らの心情と行動
 が理解できない。彼らが「さようならニッポン」をすることを、逆に「愛国心がない」
 と考えている。また、メディアも同じように捉えて、大衆の嫉妬心を煽ることに専念し
 ている。
・私は、日本は高額納税者、つまりお金持ちのみなさんをもっと大事にし、積極的に勲章
 を与えるべきだと思います。税金を払うことは国民の義務である。とすれば、その義務
 を最大限に行使した高額納税者に報いない政策は、根本的に間違っているのではないだ
 ろうか。富裕層というのは、大抵は日本の市場で成功したのだから、日本に一番貢献し
 た人々である。ところが、一般にお金持ちに対する嫉妬心があるから、いくら正しく税
 金を払おうと、「お金があるなら当たり前だ」としか思わない。この庶民の嫉妬を官僚
 たちが利用して、個人情報の保護というタテマエで、数年前から 長者番付も発表され
 なくなった。「庶民の羨望を煽るのはよくない」というもっともらしい理由がつけられ
 たが、「高額納税者リスト」というのは、税金をこれだけ払って国家に貢献した「立派
 な国民がこれだけいろというリスト」なのではなかろうか。 
・源泉徴収制度というのは、明治時代に始まり、戦時中に政府が戦費を調達しやすいよう
 に強化された制度である。これによって、政府は国民を一体化させて戦争に駆り立てる
 ことができた。戦後もこの制度が続いたのは、官僚によって徴税が楽だったからにすぎ
 ない。アメリカもここには手をつけなかった。この制度はまた、国民を働かせるだけ働
 かせて税金を納めるだけの「納税マシーン」にする制度なのだ。まさに「日本の強さは
 団結力」の源泉がここにある。       
・どんな理由があっても、税制は選挙を経た国民の代表者以外の者が手をつけてはならな
 い。そして、国家は国民の価値観をコントロールしてはいけない。
・「富裕税」の目的は、お金持ちからより多くの税金を取ることだが、その理由は、「お
 前は贅沢をしているから税金をいっぱい払わなければいけない」ということだ。つまり、
 富裕税では税金が懲罰の役割を果たすことになる。こうすると、ものの価値を決めるの
 は市場ではなく、国家ということになる。なにが贅沢なのかを国が決め、国民がどのよ
 うな生活をすべきかまで国家に管理されることになる。現在の日本の税制には数多くの
 欠陥があるが、いまの政府税調の考え方は、これに近いのではないか。
・中国は超格差社会で、格差の底辺にいる人々は、お金持ちに対して嫉妬心を激しくかき
 立てる。中国では日本以上の嫉妬が社会に渦巻いている。そのため、中国のネットには、
 お金持ちを糾弾する裏書き込みがいくらでもある。それで彼らは、「こんな国では暮ら
 していられない」と、出て行ってしまうのだ。しかし、彼らとて望郷の念にかられる。
 常に祖国は心の中にある。それで、国が発展し、自由度が増すに連れて、徐々に帰国する
 るようになってきた。
・国は、危機、もしくは危機に準じる状態になるまで、財政赤字を放置し続けることがよ
 くあります。投資家はある時点で、その国の通貨や国債を「もう買わない」と言い出す。
 すると、通貨や債券相場が下落し、政府は資金を調達するのが難しくなり、巨額のお金
 を使えなくなってしまう。お年寄りの生活は苦しくなり、若者は衰退する日本を去って、
 海外に出ていくでしょう。こうなったとき初めて、「ああ、我々は長い間、間違ったこ
 とをやってきたのだ」と気づくのは、遅いのです。  

おわりに
・これからの社会に出て大切なのは三つのEです。一つ目のEはイングリッシュ。二つ目
 のEはエコノミー。三つ目はエレクトロニック。
・若者たちはいつの時代も、この世界を自由に飛び回りたいと思っている。そのために欠
 かせないのは、経済的な独立である。希望的観測を徹底的に排除し、いまできることか
 ら始めなければ、自由は手に入らない。資産フライトは、その自由を求める第一歩だ。
・現在の日本は、投資の世界ではタブーとされる「卵を一つの籠に入れた」状態にある。
 日本人全体が、日本という大きな籠のなかに入れられ、大きなリスクに晒されている。
 しかし、籠の中に入っていると、そのことに気がつかない。
・もちろん、資産フライトは、現在の日本の状況から見て好ましいことではない。このま
 までは、この国はますます衰退し、人々の暮らしは貧しくなる一方だ。また、日本国民
 は、国境のなかにいる人々と、外を自由に行き来する人々に分裂してしまうだろう。そ
 して、国内において、貧富の差による二極化もますます進むだろう。