新・戦争論  :佐藤優池上彰

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安倍政権が、集団的自衛権の行使容認を閣議決定するとき、その必要性の理由として挙げ
た例が、メチャクチャな理由だったことが、この本を読むとよくわかる。世界では、二世
政治家である安倍首相岸信介の関係が、米国のパパ・ブッシュ大統領ブッシュ大統領
の関係によく似ているのではと見られているいるようだ。
しかし、この本の佐藤優という人は、すごい情報力のあると感心させられる。普段あまり
目にしないような情報を持っている。この2016年初めに、サウジアラビアとイランは
関係が悪化し国交を断絶するとい事態となった。この本が出たのは今から1年ほど前の
2014年末であるが、既にサウジアラビアとイランとの関係悪化を予測していたようだ。
戦争や民族対立が解決しないのは、「まだ殺し足りない」からだという。お互いが、「も
うこれ以上犠牲が出るのは嫌だ」と思うところまでいかないと解決しないというのは、こ
わい話ではあるが、真実なのかもしれない。

日本は世界とズレている
・「集団的自衛権の行使を認める」という閣議決定がなされたとき、ホルムズ海峡の国際
 航路帯の封鎖が議論されましたが、たとえ封鎖されても、日本の自衛隊は絶対に出動で
 きません。それを安倍総理はどこまで知っているのか。知っていて集団的自衛権を振り
 かざしているなら不誠実ですし、知らないで言っているとしたら恐るべき無知です。な
 ぜなら、国際航路帯は公海ではなく、オマーンの領海を通っているからです。
・もしイランがホルムズ海峡を封鎖するなら、オマーンの領海内に地雷を敷設することに
 なる。国際法では、他国の領海内に地雷を敷設すれば、その瞬間に宣戦布告として扱わ
 れ、戦争状態になります。ところが「戦闘状態」の地域には自衛隊は行かない」という
 のが、今回の集団的自衛権に関する閣議決定の縛りです。もちろん国際法的に戦争状態
 だが、戦闘は起きていないという説明は一応可能です。しかし、現実的に考えて、日本
 とイランが戦争状態になる。ホルムズ海峡での自衛隊による地雷除去の可能性はありえ
 ない。 
・安倍総理は、集団的自衛権の必要性を北朝鮮問題に絡めてイラストを用いて説明しまし
 たが、あれもメチャクチャです。日本人の母親と子どもがアメリカ船に乗って非難する、
 ということは、日本船はすでに出せない状況になってる。アメリカ船は、まずアメリカ
 人を、次にイギリス人を非難させますから、アメリカ人もイギリス人も逃がして、その
 後の残り船で日本人を逃がすというのは、危機の末期。日本にある米軍基地から北朝鮮
 を攻撃しているはずです。それでも、北朝鮮側は、避難船を黙って見過ごして、ミサイ
 ルの一発も撃ってこないのか?小浜や柏崎の原発に特殊部隊を上陸させて工作などしな
 いのか?そんなはずはない。ひとつでも、工作がなされたり、ミサイルが飛んでくれば、
 その瞬間から個別的自衛権の適用になりますから、集団的自衛権というのは、そもそも
 ありえない想定なのです。
・21世紀の戦争においては、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を区別して対応する
 のは、そもそも無理なのです。集団的自衛権と個別的自衛権の神学論争はやめて、単に
 「自衛権」という形で国家安全保障基本法を組み立てればよい。そのとき、「侵略戦争
 は絶対にやらない」として、憲法九条を、パリ不戦条約のようなものに徐々にずらしい
 く。ところが、安倍総理にとっては、結局は、おじいさんに対する思いが一番になり、
 「集団的自衛権」という言葉ばかりが独り歩きをしました。
・やはり、政治家の二世、三世には、「心の問題」というのがあるのですね。パパ・ブッ
 シュは非常に賢かったから、湾岸戦争で、イラクをクウェートから追い出したけれど、
 その先、イラク本国に手を出したら大変なことになるとわかっていて追撃を止めました。
 ところが息子のブッシュは、それがわからないから、「パパができなかったフセイン・
 イラク大統領打倒をやってやろう」とイラク戦争を始めて、結局、今の難局を招いてし
 まった。このアナロジーは、イスラエルでもよく耳にしました。「安倍さんと岸信介さ
 んの関係は、パパ・ブッシュと息子の関係と同じか」と。  
・アメリカと中国は、結局、対峙しないと思います。金持ちの喧嘩せずです。アメリカ国
 務省も、主流はやはり中国重視です。ですから、日本の親米派やその周辺の有識者たち
 のアメリカへの影響力というのは、限定的なものでしかないでしょう。安倍総理にして
 も、「親米」というけれど、同時に「戦後レジームからの脱却」を掲げている。「戦後
 レジームからの脱却」は、アメリカから見れば、「サンフランシスコ平和条約体制から
 の脱却」でしかない。むしろ「親米」と矛盾するはずで、訳がわかりません。
・こうした時代には、国家においては、政治も、軍事も、経済も、科学技術も、あらゆる
 「力」を総合しなければ生存できないのですが、どうも今の日本は世界からズレている。
 ズレた日本国に暮らすわれわれ日本人は、あらゆる方法を使って生き延びなければなら
 りません。とりわけ情報力、分析力といったインテリジェンス能力が個人にとっても重
 要になってきます。

地球は危険に満ちている
・核兵器がつくられて以来、「核兵器は人類を滅亡させるところへ行きつくから、もう大
 国間の戦争はなくなった」というのが、ついこの間までの常識でした。しかし、どうや
 ら人類には、核を封印しながら、適宜、戦争をするという文化が新たに生まれてきてい
 るのではないでしょうか。   
・第一次世界大戦の開戦から2014年でちょうど100年経ったというのに、なんであ
 んな戦争が起きたのか、いまだにわからない。みんな本当はやる気がなかった。何とな
 く戦争はしなくなかったというのに、ああいう結果になってしまった。 
・現在、日本の安全保障政策やインテリジェンス能力は、世界の現実と大きく乖離してい
 るわけですが、対イスラエルについては、実は、安倍外交の一番の成果と言えるような
 大きな動きがありました。2014年5月に発表されたイスラエルとの共同声明です。
 イスラエルとの防衛協力が言われています。
・日本が導入する可能性のあるイスラエルの先進兵器に無人機があります。イスラエルの
 無人機は、アメリカの無人機プレデターやーパーの10分の1以下の値段で買えます。
 それに、アメリカ製より小回りが効く。プレデターやリーパーは高空から攻撃して皆殺
 しにするというだけで、効率的ではありません。それに対し、イスラエルの無人機は、
 個別の家や個別の人間を攻撃するように、決め細かく設計されている。 
・日本で極端な思想をもつ人たちの受け皿が、かつてのような左翼過激派ではなく、イス
 ラム主義になる可能性が十分にある。集団的自衛権で日本が中東に出て行った場合、向
 こうからすれば、イスラム世界への侵略だということになるわけだから、それに対する
 防衛ジハードとして、日本国内でテロが始まり得る。

まず民族と宗教を勉強しよう
・国家の新しいあり方として不気味なのは、「イスラム国」です。「イスラム国」が特異
 なのは、シリアやイラクをいった国家を支配することを目標としていない点です。では、
 彼らの目的は何かを考える上で、格好のサンプルになるのがロシア革命です。
・「イスラム国」の中期的な目標は、「西はスペインから東はインドまで」です。かつて
 のイスラム王朝が支配していた土地を取り戻したい、というものです。 
・国際法上の国家として証人されるための条件は、第一に、当該領域の実効支配が確立し
 ていること、第二に、国際法を守る意思があることです。シリアの場合などは、自国民
 に毒ガスをまくなどして国際法を守る意思もなく、当該領域の統治もできていませんか
 ら、従来の国際法の解釈からすれば、すでに「国家」ではないのです。その意味で、
 「国家ではない国家」がたくさん出現しているのが、今の世界の特徴です。
・最近になって格差が広がってきたというけれど、そうじゃない。昔から人口の5パーセ
 ントの人間に富が偏在していた。東西冷戦の間は、共産主義に対抗するために、その5
 パーセントの人間が国家による富の再配分に賛成していたけれども、冷戦後は、もはや
 そういうことに関心を持たなくなった。いまやその5パーセントの格差がうんと広がっ
 て、ビル・ゲイツの資産は、ヨーロッパ諸国の予算を軽く上回っているし、アフリカ諸
 国のGDPよりも大きい。こんなことはかつてなかった。しかし、大富豪、あるいは
 IBMのような大企業は、自分たちの儲けの半分を吐き出さないとつぶれることを経験
 則でわかっている。そこで自分たちのつくったファンドで、慈善基金という名で富の再
 配分をしている。ただし、それは公平な再配分ではない。  
・世の中には旧来型の戦争観をもっている国がある。戦争の勝者には、歩留まりはいろい
 ろだけれども、戦利品を獲る権利がある。そう思っているのが、ロシアであり中国であ
 り、イランだ。ウクライナもそうだ。民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって
 解決しようとする。ところが戦利品が獲れるという発想を持つ国は、本気で戦争をやろ
 うとする。すると、短期的には、戦争をやる覚悟を持っている国のほうが、実力以上の
 配分を得る。これが困るところだ。
 
歴史で読み解く欧州の闇
・表向き、ソ連には健全娯楽しかありませんでした。風俗産業などはなく、喫茶店もすべ
 てつぶしました。あれば、そこに人が集まって謀議をするからです。ロシア革命は、レ
 ーニンもトロッキーも、スターリンも、みんな喫茶店で陰謀を企てたことが出発点だっ
 たからです。その代わり夏休みは、6月から9月の間に、2カ月間、夫婦でも別々の場
 所で取る。ここで思い切り自由恋愛をしてガス抜きするのですが、そのための保養施設
 が、オリンピック開催地となったソチやクリミアにありました。 
・ナショナリズムには、大きく分けると血統的ナショナリズムと領域的ナショナリズムの
 二つがあります。ロシア人の場合は、本来、土地にこだわる領域的ナショナリズムです。
 ドイツのような血統的ナショナリズムではない。ところが、クリミアでは、血統的ナシ
 ョナリズムが強く出た希なケースと言えると思います。とはいえ、プーチンは、「ロシ
 ア帝国の復活」など決して目論んでいません。ウクライナを抱え込もうとも思っていな
 い。 
・ロシアは十分広いのだから、ウクライナは緩衝地帯にしたほうが得策です。日本の報道
 では、こうした点はまったく触れられていませんので、日本人からすると、ともすれば、
 黒海に面して、ヨーロッパに近いウクライナのほうがロシアより文明的に見えるかもし
 れません。しかし、ロシア人の感覚としては、モスクワを中心として、西へ行けば行く
 ほど貧しくなる。とくに西ウクライナは山岳地帯で、中央ウクライナと比べても収入は
 6割くらい。ウクライナの西側に対する憧れなど皆無、「貧乏なところ」という印象が
 あるだけです。そしてロシア人は、貧乏な人を基本的に尊敬しません。貧乏な連中と一
 緒にやりたいとは思わない。ウクライナをどうして軽く見るかというと、貧乏だからで
 す。EUもそこはよくわかっている。だから、本気でウクライナと一緒にやろうとは思
 っていません。ただ、西ヨーロッパの経済事情として、汚い仕事をする労働力は必要だ、
 ということがある。
・そもそもイギリスというのは、スコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイル
 ランドの四地域からなる「連合王国」です。男性のスカートのようなキルトや楽器のバ
 グパイプが有名なスコットランドは独自の文化や歴史を持ち、度々イングランドと抗争
 してきました。1707年にイングランドと合併しましたが、これは、実際はイングラ
 ンドによる吸収の意味合いが強く、そのためスコットランドでは、イングランドへの対
 抗意識が強い。もし独立した場合、北海油田のほとんどは、スコットランド領になって
 しまいます。イギリスの人口の1割しかないスコットランドがあれだけの油田を所有す
 れば、事実上、クウェート(イラクから見て油田の集中するクウェート)化してしまい
 ます。あの陰険なイギリス人たちがそれを座視するはずがありません。
・そもそもイギリスは、ネーション・ステートではありません。国名自体が、「グレート
 ブリテン及び北アイルランド連合王国」でしょう。国の名前のどこにも民族の要素がな
 い。同君連合(複数の君主国の君主が同一人物である体制)です。つまり帝国として、
 うまくナショナリズムを躱してきた国なのです。
・スコットランドが本当に独立となれば、イングランドースコットランド戦争、あるいは
 スコットランド内部のイングランド統合派とスコットランド独立派の衝突が起こりうる
 でしょう。むしろ武力衝突も含みます。
・新自由主義的な経済政策による格差の問題が、古くからヨーロッパにある民族や宗教の
 対立を露わにするということが各地で見られます。EUとして集結しようというベクト
 ルと、スペインのカタルーニャ地方やバスク地方みたいに、既存国家から分離しようと
 いうベクトルの両方があるのです。旧ユーゴスラビアでは分裂した国家が、いま次々に
 EUに加盟している。    
・もう一つ、これからヨーロッパで危険なのは、ベルギーです。南北の対立が激化してい
 て、北部のフランドル地方に独立の動きがある。もしそういうことになれば、NATO
 中心で、かつ「EUの首都」のような国が壊れることになりますから、かなり深刻です。
 EUの本部がなぜベルギーのブリュッセルに置かれたかと言えば、「ベルギー語」とい
 うものがないからです。フラマン語(オランダ語の一種)とフランス語とドイツ語が公
 用語となって、一つの国を構成している。一つの国でいくつもの言語があるのは、これ
 こそEUの縮図のようなところだ、ということで、ブリュッセルになったのです。
 北部のフランドル地方の住民は、もとはオランダにいた人たちです。そのオランダから
 カトリックの連中がどんどん南に集まってきて、独立したのがベルギーです。フランド
 ル人というのは、不思議な人びとなんです。カトリック教徒なのに、働くスタイルはプ
 ロテスタント。「勤勉なカトリック」です。昼寝したり、食べ物に情熱を傾けたりしな
 い。だからベルギーの北部は食べ物がまずい。一方、ベルギー南部のワロン人は、お祭
 り好きで、、食べるものも大好き。人生は楽しむためにある、と思っている。
・いま起きている問題は、すべて克服したはずの古い民族問題です。自分たちの民族は一
 つの政治単位を持たないといけない、文化的に共通な人々は政治単位を持たなければい
 けないという国民国家神話の復活です。ポストモダンの時代においてそんなものはもう
 機能不全になった、現にEUができたではないいかと言っても、実際には、姿を隠して
 眠っていたナショナリズムがまた噴き出しているのです。 
 
「イスラム国」で中東大混乱
・イスラム教徒は大きく「スンニ派」と「シーア派」に分かれます。それは、預言者ムハ
 ンマドが亡くなった後の後継者選びに端を発する対立です。ムハンマドの後継者は「カ
 リフ」と呼ばれ、預言者の代理人です。このカリフには、ムハンマドの血筋を引く者が
 なるべきだという信者と、ムハンマドの信頼が厚く、信者からも信頼されている人を据
 えるばきという信者とで意見が分かれたのですが、当初の三代は、血筋重視よりも、ム
 ハンマドの信頼のあったほうの後継者が続きました。四代目でようやくアリーという、
 ムハンマドのいとこであり、かつムハンマドの娘と結婚した男がカリーとなった。アリ
 ーとアリーの血を引くものこそがカリフにふさわしいと考える信者たちは、「アリーの
 党派」と呼ばれ、やがてただ「党派」と呼ばれるようになりました。党派のことを「シ
 ーア」と呼ぶため、シーア派と称されます。
・一方、血糖にこだわらないでイスラムの習慣を守ればいいと考える信者たちは、「慣習
(スンナ)派」と呼ばれました。 日本や欧米でのメディアではスンニ派という呼び方が
 定着しています。全世界のイスラム教信者の85パーセントをスンニ派が占め、シーア
 派は15パーセント。スンニ派の大国がサウジアラビア、シーア派の代表的な国がイラ
 ンです。
・シリア、イラクの問題が重要なのは、中東全体の構図が大きく変わりつつあることを示
 しているからです。アメリカとイランの接近です。そもそもイランは、ハタミ大統領時
 代には、9.11テロの後、アメリカに歩み寄ろうと努力していました。ところがブッ
 シュ大統領が、2002年の一般教書で、「悪の枢軸」として北朝鮮とイラクを名指し
 する際、三カ国ないと収まりが悪いというので、イランを加えてしまった。
・アメリカも、イランと仲良くしたくて仕方がない。ところがそうなると、イランと反目
 している親米国サウジアラビアが怒る。アメリカは、そういうジレンマに陥っています。
・アラブの春を考えるときに、もう一つポイントがあります。アラブの春で独裁政権を倒
 すのは、「民主化運動だ」と信じて行動していた人もいました。アメリカやヨーロッパ
 も、そう期待した。しかし、それよりも一歩踏み込んで、アラブの春によって、中東に
 おける共和政型の政権を壊すことに関心をもった国がある。それは何処かと言うと、湾
 岸の王政の国々、とくにサウジアラビアです。アラブの春による混乱に乗じて、サウジ
 アラビアが中東における覇権を確保することを狙っていたのではないか。  
・サウジアラビアは、ペルシャ湾に浮かぶバーレーンに「友好の橋」という大きな橋を架
 けました。この地域の国々(サウジアラビア、アラブ首長連邦、バーレーン、オマーン、
 カタール、クウェート)は、湾岸協力会議(GCC)という集団安全保障体制をつくっ
 ています。これもイラン対抗策の一環です。イラン発のイスラム革命によってシーア派
 の勢力がここまで迫ってきたから、小さな湾岸諸国はひとたまりもないというので、大
 国サウジアラビアを入れてGCCをつくりました。バーレーンが危機を迎えると、サウ
 ジアラビアが、「友好の橋」を使ってバーレーンに軍を送り込み、反政府運動を弾圧し
 たのです。「友好の橋」が何のためのものか、これではっきりしました。集団安保です。
 どこか一国の政権が危うくなると他の国の政権が協力して、反政府運動を弾圧するわけ
 です。 
・莫大なオイルマネーを手にしているサウジアラビアというのは、あの地域の超大国。そ
 のサウジアラビアの行方は、今後の大問題です。まず国王の後継者問題がある。しかも
 一夫多妻制で、いろいろなところに小さい権力のセンターがあるから、一人移動すると
 全部玉突きで動く。複雑系の世界です。サウジアラビアには王子が一万人いると言われ
 ています。イスラムでは夫人を4人までもてる。しかも新しい人が好きになったら前の
 4人のうち誰かと離婚して新たに結婚すればいい。もともと結婚するとき、離婚したら
 財産をこれだけ与えると契約してありますから。
・イランなどでは時間婚というのが発達しています。結婚時間3時間、慰謝料3万円とか。
 イスラムでは売春は死刑、それも石打ちの刑です。しかしこのエスコートクラブは売春
 ではなく、3時間の結婚で、別れるときは慰謝料300ポンドとすれば逃れられる。
・サウジアラビアでは、結婚は「同時期に4人まで」の枠さえ守ればいいので、王族の中
 には妻が延べ十数人という例があります。だからオサマ・ビン・ラディンだって、兄弟
 が40人とか、すごいたくさんいます。それぞれがまた同じようなことをするので、人
 数が増えていきます。ただ、そうしないと、各部族のバランスが取れないわけです。別
 に自由恋愛で結婚しているのではなく、部族間のバランスのために結婚して子供をつく
 っておかないと具合が悪いという面もある。結婚が政治になっている。
 国会も国政選挙もありませんが、国すなわちサウド家が国民の生活の面倒を全部見てく
 れる。汚い仕事あきつい仕事はイエメン人やパキスタン人にやらせて、サウジアラビア
 人は高級官僚になる。今だって王族が巡行するときに、メープル金貨などの袋を持って
 行ってベドウィンなどに配っているじゃありませんか。 
・スンニ派は四つの法学派から成り立っています。まずハナフィー法学派。これはトルコ
 に多いです。次にシャーフィー法学派。これはインドネシアと、ロシアの北こーカスに
 いる。それからマーリキ法学派で、エジプト、チェニジア、リビアにかけての地域にい
 る。しかしこの三つは忘れてもいいです。各社会の慣習や祖先崇拝と適宜折り合いをつ
 けているからです。過激になりにくい。過激な運動に出て来るのは、四番目のハンバリ
 ー法学派です。これは原理主義そのもの。コーランとハディース(ムハンマドの伝承集)
 しか法源として認めない。だからお墓に一切価値をおかないし、聖人を認めない。アメ
 リカが「オサマ・ビン・ラディンの墓ができるとそこが聖地になる危険性がある」と言
 ったことがありますが、彼らの教義からして、あり得ません。墓に何の価値も認めない
 からです。この半バリー法学派の中のかなり急進的はグループがワッハーブ派です。サ
 ウド王家のサウジアラビアの国教が、これなのです。そしてちょっと乱暴に整理すると、
 ワッハーブ派の中の最大の過激派で武装集団であるのがアルカイダや「イスラム国」な
 のです。  
・イラクを統治したのはイギリスです。イギリスは、植民地支配するときに近代的な裁判
 所や行政機関をつくったりしないのです。部族どうしが殺し合いをするときは、イギリ
 スの警察署に事前に計画を提出しろ、そして殺してきたあとは、どれだけ戦果があった
 か報告しろ、それだけやっていれば構わないという。西側基準の文明的な統治する考え
 はいっさいないわけです。自分たちの統治に服していれば、あとは適宜にやらせておけ
 て構わない。これがイギリス流です。 
・現代の中東は、近代主義者からすれば、中世世界のように見えるかもしれません。イエ
 メンなどは完全に中世で、30年戦争当時のドイツみたいというか、戦国時代がそのま
 ま続いています。首都サヌアの街からちょっと外れたら誰でもたちまち誘拐されかねな
 い。 
・もう一つ、シーア派の特徴として、嘘をついていい、ということがあります。シーア派
 は、イスラムの中の非主流派です。主流派のスンニ派はインチキなんだから、インチキ
 に対しては、「お前はシーア派か」と問われたら、「とんでもない、私はスンニ派です」
 と答えてもいいのです。 
・ただ、「スンニ派が怖くなくてシーア派が怖い」というのは、アメリカの作った神話で
 す。アメリカ人は、「善い原理主義」と「悪い原理主義」がある、と思っていた。目玉
 をくりぬいたり手を切ったりしても、革命を輸出しないし、アメリカ人をやっつないサ
 ウジアラビアの原理主義は「善い原理主義」。だからオサマ・ビン・ラディンも大丈夫。
 アメリカ大使館を占拠するイランのシーア派は「悪い原理主義」。そういうふうに「善
 い原理主義」と「悪い原理主義」にわけないとアメリカ人はわからないのです。しかし
 その後、やはり両方とも「悪い原理主義」だということになり、最近はイランのほうが
 マシじゃないかという雰囲気になってきました。 
・不思議な現象が起きています。イスラエルが全力を挙げて、シリアのアサド政権を支持
 している。これは要するに、イスラエルからすれば、アサド政権は予測可能な敵である
 というのです。もう四回も戦争をした相手で、大体何をやるかわかっている。政権が倒
 れてシリアが混乱したら何が起こるか予測不能だから、それよりわかる人たちに敵とし
 てほしいというわけです。
・もう一つ、今イスラエルが最も恐れているのは、隣国ヨルダンの王制が崩壊することで
 しょう。イスラエルと国交を結んでいるのは、アラブではヨルダンとエジプトだけです
 から。ヨルダンは国王暗殺があったら崩壊します。後継者がきちんと育っていないから。
 サウジアラビアが「サウド家のアラビア」であるのと同様に、ここは「ハシム家のヨル
 ダン」です。中東情勢で一番怖いのが預言者ムハンマドの出身部族のクライシュ族につ
 ながっているところのハシム家のヨルダン。もし今、テロでアブドゥラ国王が殺された
 ら、この国はほんとうにカオスになります。 

日本人が気づいかない朝鮮問題
・安倍政権は非常に近い視野しか持っていません。単細胞という批判もありますが、私に
 言わせれば、半細胞です。北朝鮮から拉致被害者を取り返せば、内閣支持率が上がるだ
 ろうと考えている。安倍政権の日朝交渉は、それ以上でも以下でもないと思うのです。
・北朝鮮は安全保障をリアリズムで考えています。リビアのカダフィ大佐の教訓から学ん
 でいる。それからイランやイラクの教訓からも学んでいます。要するに、下手に出ても、
 核を持たなければ、つぶされるということです。アメリカに到達する弾道ミサイルを持
 つことが、アメリカから安全保障を取り付けるための唯一の方策さというのが、今の
 正恩政権
の発想です。  
・一方に拉致問題があり、他方に大量破壊兵器問題がある。国際社会、なかんずくアメリ
 カと、日本では、この二つの比重が逆なのです。ここが北朝鮮問題の一番のネックにな
 っています。興味深いのは、安倍さんにとって、民主的な指導者よりもプーチンと金正
 恩のほうが、波長が合うように見えることです。
・拉致についても、もう構図はできている、と私は見ています。金正日、首領さま、党中
 央の深い信頼を裏切って党内に深く侵入したスパイ、つまり裏切り者の張成沢一味が拉
 致事件の中心人物であり、インチキな報告をしたのもこの一味であった。では責任はど
 うするかといえば、全員処刑した、というシナリオになります。
・金正恩体制が一番恐れているのは中国だ。というのも、中国への依存度がどんどん強ま
 っている。金正恩体制になってから民生を向上させなければいけないということで、配
 給を増やし、微々たるレベルなのだけれども食料事情も良くなった。しかしそれは、す
 べて中国からもらっているのだ。今後さらに中国依存度が強まると、中国が北朝鮮にミ
 サイルと核の開発をやめろと言ってくる危険性がある。その代わり何かあったときは、
 中国の核の傘の中に北朝鮮を入れることにするわけだ。そうなった場合、朝鮮半島の地
 政学図はまったく変わる。北朝鮮は完全な従属国になる。ロシアはそれを非常に心配し
 ている。   
・韓国の朴槿恵大統領からすれば、中国がいかに怖いかは自分たちが一番よく知っている、
 というのではないですか。ロシアやアメリカや日本は、中国の本当の恐ろしさを知らな
 い。朝鮮民族が中国のすぐ傍にいながら同化されずにやってこれたのは、決定的な喧嘩
 をしなかったからなんだ、と考えているはずです。歴史を振り返ると、日本と朝鮮が単
 独で戦争したことはないのです。
・2009年、日本と韓国は安全保障上の関係強化のための軍事協定を結ぶ方向で協議を
 進めていましたが、調印のわずか一時間前に韓国がキャンセルしました。中国から「日
 本と新たな軍事協定を結ぶな」と脅されたのです。朝鮮戦争では、多くの韓国人が中国
 軍によって殺されています。本来なら中国に謝罪要求や責任追及をしてもいいはずです
 が、中国に対してはそんな感情を抱いていない。これが韓国の「事大主義(小が大に事
 える)」ですね。韓国は、歴史上、長い間、中国に「事大」し、中国の臣となることで
 生き延びてきましたから、今も大国・中国の懐に抱かれているのが、心地よいのでしょ
 う。
 
中国から尖閣を守る方法
・今日本の外務省のホームページを見ると、尖閣は1895年の閣議決定によって日本領
 になったとありますが、私が外務省にの現役職員だったときは、そんな記述はありませ
 んでした。もし私が現役なら、こんなことはやめろと絶対に主張したでしょう。なぜな
 ら、この閣議決定が公表されたのは、11952年3月に刊行された「日本外交文書」
 においてです。これは秘密閣議決定でした。帝国主義の時代ですから、外国からクレー
 ムをつけられるような領土問題は、すべて秘密閣議決定にして、一切公表しませんでし
 た。官報にも出していません。中国側から、「いつ公知の事実になったんだ」と問われ
 ると困るわけで、この閣議決定を根拠として持ち出すのは、日本にマイナスにしかなら
 ないわけです。むしろ「1970年代初頭までは中国は尖閣諸島に関する領有権を主張
 したことがない」とだけを繰り返していればよかったのです。領有の正当性を秘密閣議
 決定などを根拠に主張しては立場が弱くなるに決まっています。中国の中でも、尖閣問
 題に積極的なのは主に海軍や国家安全部といった、いわば新参の役所です。これに対し
 て陸軍は慎重です。ベトナムとの中越戦争の経験がトラウマになっているのでしょうね。
 1979年に「ベトナムを懲罰する」と言って侵攻したけれども、大損害を受けて撤退
 する結果になりましたから。
・中国は、いま航空母艦をつくっていますが、これをわれわれは恐れるどころか大歓迎し
 ないといけない。歴史上、航空母艦を5隻以上実践で運用した経験があるのは、アメリ
 カとわが連合艦隊だけです。最低3隻ないと空母は安定的に運用できません。中国が所
 有している空母「遼寧」は飛行甲板の前が上に反っていますが、搭載機を発進させるカ
 タパルト技術がないからです。カタパルト技術は、アメリカが秘密にしていて、アメリ
 カとイギリスしかもっていない。だから甲板を反らせて発進させる「スキージャンプ台
 式」なのですが、戦闘機が頻繁に墜落してパイロットが何人も死んでいます。
・ネットが偏っているというのは中国だけでなく、日本も同じ、今の選挙によって選ばれ
 ている政治家も明らかに偏っています。本来、日本の国民感覚は、こんなに右ではあり
 ません。にもかかわらず、地方議会も含めて、日本の政治家は、国民の平均的な感覚よ
 りも右にシフトしていますよ。女性議員も、よりマッチョになることでしかアイデンテ
 ィティが保てなくなっている。国際的に見ると、奇妙な政治になっている。ネットも偏
 っているけれど、政治も偏っているので、あちこちで「耐エントロピー構造」ができて
 いるわけです。 
・地理的に見てもウイグルの背後には、イスラム世界が延々と広がっています。ましてト
 ルコ系です。周囲のウズベクスタンやトルクメニスタンなど、「〜スタン」というのは、
 みんなトルコ系のイスラム教徒の国です。そのネットワークからいろいろな情報も入っ
 てくるとなると、これは、制圧するといっても容易なことではありません。 
・今は誰も注目していませんが、イスラム主義は、今後、中国国内のイスラム教徒である
 回族のネットワークにつながる可能性があります。北京に羊料理を出す店が結構ありま
 すが、あれは回族の店です。イスラム教徒で豚を食べないから羊料理になる。「自分た
 ちは漢族に弾圧されている、これは宗教弾圧だ」と回族が思うようになると、世界のイ
 スラム主義につながるかもしれない。そうなると、フィリピン南部のミンダナオからモ
 ロッコまで続く「イスラム・ベルト」の問題になります。
  
弱いオバマと分裂するアメリカ
・東西冷戦崩壊後も、唯一の超大国として君臨してくたアメリカは、良くも悪くも、時の
 大統領の資質によって左右されてきたと思います。そう考えたとき、黒人初の大統領で
 あるオバマは、教養が邪魔しているという感じがします。前任者のブッシュ大統領に比
 べて、はるかにインテリで、思慮深く、いろんなことを考えるわけですが、あれこれシ
 ミュレーションもするものだから、決断に時間がかかる。ブッシュ前大統領の場合は、
 熟慮せずに決断してしまうところがありました。  
・いまアメリカは、日本ではあまり議論されることのない問題に頭を痛めています。アメ
 リカで地下に潜んていた人種主義が再び表に出始めたのです。アメリカの民主主義は、
 黒人、あるいは先住民を排除したところに成り立つ民主主義であり、この問題がいまだ
 に克服されていないのです。  

池上・佐藤流情報術5カ条
・いまの日本は、ある意味で、民主主義が進みすぎて息が詰まりそうになっているように
 思います。民主主義は、独裁と矛盾しません。100人の議員が99人に減っても問題
 はありません。98人でも問題ない。その操作をずっと続ければ、最後には1人でも問
 題ないとなる。それに対し、自由主義の根本原理は「おれが人に迷惑をかけていない限
 りおれに触るな」というものです。今の日本は、民主主義の危機ではなく、自由主義の
 危機なのです。民主主義が自由主義の領域に侵犯しようとしている。
・ネットに自分の意見を書き込むような人は、まだまだ少数派であることを忘れて、ネッ
 トの論調を社会全体の論調と思い込み、すぐに「マスコミは偏向報道している」と言い
 出すのはとても残念であり、不健全な考え方です。  

なぜ戦争論が必要か
・「近代」というのは、自由、平等、友愛でしょう。「自由」というのは、おそらく「資
 本」のことです。資本の自由な働き。そうすると、それがとんでもない格差を生み出す
 のは、当然です。「平等」というのは、これは力が背景にないと実現できません。その
 力とは、おそらく「国家」です。国家機能のよって平等を実現していく。これは独裁制
 にも帰結する。平等を追及すると、そうなるのです。あるいは皇帝がいて、そのもとで
 フラットにする、という発想になる。イスラム帝国というのは、おそらく「平等」の考
 え方が出てくる。しかし、すべての人を平等にするためには、圧倒的に強い人が必要に
 なる。
・「自由」「平等」「友愛」という、この三つが、資本主義システムのなかに埋め込まれ
 ているのです。三つのうち、いずれかが強くなると別のものが出てきて、それを抑える。
 一番目の「自由」によって、新自由主義的な形で経済の力が大きくなりすぎて、格差が
 広がる。すると、システムが壊れてしまうからというので、「国家が出てきて制御しよ
 うとする。  
・私は、これまで「20世紀はソ連が崩壊した1991年に終わった」という見方をして
 いましたが、最近、これは間違いだったと思い始めています。20世紀は、まだ続いて
 いるまもしれない。戦争と極端な民族対立の時代が、当面続いていくのかもしれない。
・ウクライナ問題がなぜ解決しないのかというと、誤解を恐れずに言えば、まだ殺し足り
 ないからです。パレスチナ問題が解決しない理由も、流血の不足です。「これ以上犠牲
 が出るのは嫌だ」とお互いに思うところまで行かないと、和解は成立しないのです。
・要するに、「嫌な時代」になってきたのですよ。これからの世界を生き抜くために、個
 人としては、嫌な時代を嫌な時代だと認識できる耐性を身につける必要がある。そのた
 めに、通時性においては、歴史を知り、共時性においては、国際情勢を知ること。知識
 において代理経験をして、嫌な時代に嫌なことがたくさんある、というのをよく知って
 おくことです。 
・歴史を改めて勉強する必要ですね。学生時代は、歴史を何のために勉強しているのかま
 ったく理解できなかったし、全然おもしろくなかった。今になって、歴史を読むと「あ
 あ、歴史は繰り返す」と思います。その通りには繰り返さなっけど、何か同じようなこ
 とが起こる。   
・そして実践的な課題としては、軍事エリートと政治エリートのトップから馬鹿を排除す
 ること。バカな兵隊、馬鹿な政治家がいても、彼らが自滅して終わりになるのはいい。
 しかし、トップにいた場合は、部隊もしくは国家が全滅することになりますから。