政府は必ず嘘をつく :堤未果

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過去の歴史を振り返ると、大手マスコミが政府のプロパガンダ化し、世論を煽り、それに
よって戦争に突入したという事例が多く見受けられる。近年では3.11テロからイラク
戦争に突入した事例がいい例だ。本来は、中立の立場で正確な情報を伝えるのがマスコミ
の使命だと思うのだが、現実的にはそうはなっていない。
最近問題になっている朝日新聞の慰安婦問題や福島原発事故の吉田調書問題の誤報道の事
例も、まさにそうだ。記事の内容が新聞社側の思い込みや主義主張によって捻じ曲げられ
ていた。まさに大手マスコミが新聞記事によって、意図的に世論を煽っていたのだ。
これは許しがたいことであるが、気になるのは、その後の政治家や他のマスコミによるこ
の朝日新聞に対する異常なまでのバッシングだ。これもまたそれら政治家やマスコミの思
惑が多く含まれており、世論を煽っている。結局、政府やマスコミの放つ情報を、そのま
ま鵜呑みにしては危険だということだ。
米国では、3.11テロをきっかけに、政府やマスコミが煽る「テロの恐怖」で思考停止
状態にされ、「テロとの戦い」という言葉で戦争へと掻き立てられ、国民から自由を奪う
ような「愛国者法」などの、本来ならば通してはならない法案を通してしまった。
同じようなことがいま日本で起きている。政府やマスコミが「周辺国からの軍事的脅威」
で国民を煽り、集団的自衛権行使容認へと突き進み、「戦争をする国」へと日本を向かわ
せている。そして、後でひどい目に合うのは、意図的に煽られ、そのような暴挙を許した
我々一般国民なのだ。

プロローグ
・アメリカのウォール街デモは「反格差」を掲げる若者のデモとして、日本でもニュース
 となった。これは1%と99%の戦いだ。1%の超富裕層が99%の人間に負担をすべ
 て押し付けて異常な利益を手にする。狂った仕組みへの反発なのだ。
・アメリでは上位1%の人間が、国全体の富の8割を独占している。この「狂った仕組み」
 は、想像を絶する資金力をつけた経済界が政治と癒着する「コープラティズム」だ。
 9.11テロをきっかけに加速し始めたそれは、大幅な規制緩和とあらゆる分野の市場
 化を実施、この10年でアメリカの貧困層を3倍に拡大させた。「コープラティズム」
 は、日本でも同じ問題を引き起こしている。
・原発事故のあと国民に正確な情報を伝えようとしない日本政府や東電、学者やマスコミ
 には怒りがこみ上げる。
・「原子力村」は原発事故直後から、重要な情報を隠蔽し、矮小化し、今も国民を欺き続
 けている。福島第一原発が次々と爆発、政府は「放射性物質の拡散状況を予測する緊急
 時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算結果を米軍だけに
 知らせ、福島の住民には知らせなかった。その結果、福島の子供の半数以上が甲状腺被
 爆をし、溶けた核燃料の場所は今もわからず、放射性物質が東北だけでなく関東まで広
 がり続けたにもかかわらず、「安全」だと繰り返した。弱い立場の人々を平気で切り捨
 て、次から次へと独裁的な政策決定を行なう政府と、正確な情報を伝えないマスコミの
 実態に怒りが膨れ上がるいっぽうだ。
・国内の二極化が進むほどに、国家は権力を集中させ監視体制を強化する。「ファシズム」
 と「コープラティズム」は、両方そろうことで最も効率よく望ましい結果をだすからだ。
・アメリカで警察の暴走が加速し始めたのは今じゃない。10年前だ。それはウォール街
 や民衆の不満とは全く関係ない別の理由、「安全保障」という大義名分を掲げた政府に
 よって合法的に進められた。皮肉なことに、国民の安全を守るために巨額の税金を投入
 したシステムが、今国民の命を危険にさらしている。
・電力会社と官僚、学者、マスコミの4者がからむ利権構造である「原子力村」は、「コ
 ープラティズム」の最たる例だ。
・2011年12月、被災地や避難先でいまだに苦しんでいる住民と、一向に収束せず海
 や大気に大量の放射性物質を毎日放出している原発をよそに、野田総理は世界に向かっ
 て「収束宣言」を出した。かつて世界有数を誇っていた「食と水の安全」は崩壊し、破
 綻間近だと囁かれる国の政務や年金、医療については将来が全く見えない状況だ。「原
 子力村」に象徴されるように、政府が、マスコミが信じられなくなった今、アクセル技
 術だけ進化した情報の洪水の中で、どうしたら私たちは真実を手にできるのか。

「政府や権力は嘘をつくものです」
・医療が市場に支配される米国では、国民は病気になると二つのことに打ちのめされる。
 「病気との闘い」と「医療費の請求書」だ。特に、がんは医療費が高すぎてほとんどの
 保険でカバーされておらず、肺がんは手術代だけで1000万円を超えてしまう。
・「ただちに健康に害はない」というフレーズは日本中を駆け巡り、放射性物質への不安
 を抱く国民の上に、絶え間なく降り注いでいった。人間は恐怖を感じると、無意識にそ
 れまでの日常や、思考パターンを続けようとする。私たちの多くもまた、「安全だ」と
 いう政府や学者たちの言葉に疑心暗鬼になりながら、それでもいつもと同じ生活を続け
 るほうを選んだ。
・経済産業省原子力安全・保安院の西山審議官(当時)は「メルトダウン」を認識しなが
 ら、それを公開しなかったことについて、「隠す意図はなかったが、国民に示すという
 発想がなかった。反省したい」と釈明。だが、すでにその2か月間で、原発内の放射性
 物質は、ベントにより何度も放出されていた。
・イラク攻撃が、実は9.11テロのわずか4日後に会議で発案されていた。アメリカ国
 民は感情的にパニックになっていたために、「フセインは9.11に関係している」「
 大量破壊兵器を隠し持っている」という政府発表をいとも簡単に鵜呑みにしました。で
 すが、ブッシュ大統領はずっと後になってから「9.11テロとフセインは、全く関係
 がなかった」と発表したのです。アルカイダとの関連も大量破壊兵器も、初めから全く
 嘘だった。そのことにアメリカの国民が気づいた頃には、途方もない数の人たちが犠牲
 になっていました。
・9.11後のアメリカで、大義のない戦争に国民を引きずりこんだのも、政府の情報操
 作とそれを煽る大手マスコミの癒着だ。特にリベラル派を掲げるニューヨーク・タイム
 ズ紙の「フセイン政権の大量破壊兵器保有」の記事は、世論を煽り、国全体を一気に戦
 争に向かわせるきっかけとなった。
・9.11後、米国民が政府とマスコミの発表を信じたために始められたイラク戦争。
 2011年12月の終了宣言までに1兆ドルの税金が注ぎ込まれ、述べ150万人が派
 兵され、約4500人の戦死者と3マン2200人もの戦傷者を出した。イラク国内で
 はインフラが破壊され、教育の荒廃と貧困が拡大、失業率は50%を超え、100万人
 が死亡、470万人が難民となり、イラク国内の国営企業は外資系企業に根こそぎ奪わ
 れた。
・イラク戦争は、政府とマスコミが始めた戦争です。でも今思えば、結局それを後押しし
 たのは私たち米国国民だったと思うんです。
・日本人の中にはまだ「東大神話」をはじめ、大学教授の言うことを無条件に信じる傾向
 がある。だが、大学という場所も昔と違い、もはや研究だけをしていればいいという聖
 域ではなくなった。米国では大学に対する政府予算削減より、おおくの大学を外部資金
 調達に走らせ、企業との癒着を増大させている。学者は、大学名や肩書きでひとくくり
 にせず、その人物の背景を見ることが重要だ。
・世界唯一の被爆国とし半世紀もの間、核廃絶を訴えている日本の国民が、なぜこんなに
 も放射能について無知なのか。そして、地震大国でありながら54基もの原発と共に生
 きる子供たちに、なぜ大人は放射能に関する教育をしないのか。 
・2001年10月26日にアメリカ議会をスピード通過した「愛国者法」は、アメリカ
 国内をすみずみまで監視する許可を当局に与えた。表向きは「危険思想を持つテロリス
 ト予備軍のあぶり出し」だったが、実際には電話盗聴やネット検閲の対象は自国民だ。
 この法律により、政府に求められたネット・プロバイダーは、利用者の個人情報を全て
 提供しなければならない。
・問題は「国民の安全」という大義名分の下、誰が「危険思想」を定義するかという部分
 なのです。政府関係者を中心とする国土安全委員会が非公式に決定し、大統領が承認す
 るんですよ。警察が誰でも自由に逮捕できるようになってしまう。時限立法だったこの
 「愛国者法」は、オバマ大統領によって恒久化された。
・貧困率の高い地域では、子供たちの進学率を公立の学校が支えている。だが、病院や公
 共住宅、交通インフラなど他の公共機関と同様に、公立学校もまた、大幅な予算削減の
 対象にされていた。公立学校がつぶされ、代わりに営利目的の学校が次々に建てられて
 いった。融資元を大手金融機関やマイクロソフトなどのグローバル企業が占める営利学
 校は、市場原理ベースで運営されるため、テストの点数が低い子供たちは切り捨てられ
 てしまう。
・東北のことが他人事に思えない。被災地復興で一番優先されるべきは、大資本に市場を
 提供することじゃない。そこに住む人間の暮らしと、地域産業の再生なんだ。「被災地
 を応援する」という美しい言葉を、情緒的なスローガンで終わらせないでほしい。可哀
 想だと言うだけではダメだということだ。政治の動きをしっかりチェックすることこそ
 が、本当に被災地を救うカギになる。
・2010年10月に突如として現れた「TPP」は、2015年までに工業製品、農産
 物、知的所有権、司法、金融サービスなど、24分野の全てにおいて、例外なしに関税
 その他の貿易障壁を撤廃するという内容だ。まさに投資家や企業にとって、「バラ色の
 未来」と同義になる。しかもこれは、政府が外資の参入に対し国民を守る責任を放置し
 てくれるだけでなく、自分たちの利益を損なう規制に関しては、その国を相手に訴訟を
 起こす権利までついてくるのだ。現時点での加盟国は9か国だ。だが、アメリカにとっ
 ては日本の参加が重要な意味を持っている。日本が加わると全加盟国のGDP比は日米
 2か国が9割以上を占めるため、TPPは実質、日米の二国間貿易協定となるからだ。
・限りなく低コストを追求する市場原理主義社会では、中流以下の労働者は価格競争の中
 で自然に切り捨てられてゆく。
・俺たちは、すっかり忘れたたんだ、この米国の政府が、今じゃ途方もない資金力を持ち
 多国籍企業に、がっちり首根っこをつかまれてるってことを。誰が大統領になったとし
 ても、政策に影響力を持つのは1%の連中であることを。今日の集会で誰かが言ってい
 たよ。去年亡くなったハワード・ジン教授がよく言っていた、あの言葉を。「政府や権
 力は嘘をつくものです」 
・自由貿易で儲けるのはグローバル企業だけです。そこと癒着した政府もマスコミも、私
 たち労働者には決して本当のことを伝えません。
・もし我々の国から第二次産業が流出し続けていったらどうなります?アメリカという国
 は消滅してしまう。国家の形をした、巨大な株式会社になってしまうでしょう。財界と
 政府の距離が近くなりすぎると、国の優先順位が国民ではなく企業利益という数字に変
 わるのです。そして、優先順位の下に落ちた私たちは、正確な情報は知らされなくなる
 のです。
・日本でも政府とマスコミは、TPPに関する情報を国民に隠してきた。例えば24の分
 野が存在することや、企業が政府を訴えるISD条項について、いったいどれほどの国
 民が知らされていただろうか。
・政府は、TPPにおいて、公的医療保険制度は議論の対象外だ、と繰り返し説明してお
 り、国民向けに配布した資料の中にもそう明記されていたという。だが、実際には、厚
 生労働大臣は外務省を通じ、米国政府の「公的医療保険の運用で自由化を求める声明」
 を受け取っていた。
・中流が消滅し、二極化したアメリカでグローバル企業の収益だけは上がり続けている。
・政府が嘘をついたり、マスコミが偏向報道をするのは今に始まったことではありません。
 グローバル企業が巨大規模になるほどに、本当に必要な情報は国民から隠されてゆく。
 当然、そのほうが効率がいいからです。
・9.11以降のアメリカの10年を見れば、大衆がいかにたやすくコントロールされる
 ものかが、よくわかります。国民がテロへの恐怖で思考停止している間に戦争は拡大し、
 自由の国は「警察国家」になってしまった。そこで気づけはよかったのに、今度は「チ
 ェンジ」というスローガンに酔って、再び政治から目を離したのです。その結果、貧困
 率は過去最大になり、1%が支配する社会が完成した。ウォール街デモをしている連中
 は政府や富裕層を責めますが、繰り返される嘘や捻じ曲げられた情報を鵜呑みにしたの
 は、彼ら自身なのです。
・米国民は、この10年、巨大権力による理不尽な暴力や腐敗、嘘や強欲、無責任といっ
 たものを嫌というほど見てきたはずだ。でも、高速で流れくる大量の情報や皮膚感覚的
 なニュースの中で、だんだん物事を深く追求するのをやめてしまったのです。
・1%が力を持つ世界で、彼らの息のかかった政府やマスコミの動きを想定し、自らの頭
 と体で集めた情報を検証してゆく。政府は憲法に沿った私たちの権利や暮らし、コミュ
 ニティを全力で守ろうとしているか。検証に値する情報が政府から出され、選択肢を提
 供すべきマスコミによって、ちゃんと国のすみずみまで届けられているか。そうしたこ
 とを機能させなければ、TPPに参加しようがしまいが、寄せては返す波のようにやっ
 てくる外圧から国民を守ることは難しい。
・「政府や権力者は嘘をつくものです」という言葉。それは単なる政府批判ではなく、未
 来を創る際の選択肢を他人に任せにするなという、力強いメッセージだ。 
・「原子力村」を肥大化させ、無責任な政府や選択肢を提供しないマスコミを野放しにし
 てきたものの存在が、アメリカの「失われた10年」を通じて私たちを揺さぶってくる。
 問われているのは、私たち自身なのだ。

「違和感」という直感を見逃すな
・人間の意識は、時代のスピードより30年ほど遅れてついてくるのではいか。情報を取
 捨選択する際、最も大きな障害となるものは、私たちの中の思い込みと現実の時差だ。
・世界市場拡大を目指すグローバル企業にとって、マスコミと政府を抑えることは常識だ。
 形としての二大政党は、民主主義の基本である「選択の自由」がまた機能していると国
 民に思わせる効果もある。かくして、大資本からの政治献金は両党に均等に配られ、選
 挙における「政策」はもはや重要ではなくなっていったのだった。
・原発を推進してきた自民党」と「原発事故が起きた時に隠蔽する民主党」の根っこは同
 じだった。官僚と企業の癒着が安全神話をまき続け、マスコミや学者も支配下において
 いた「原子力村」の存在は、3.11以降、海外メディアにも大きく取り上げられてい
 る。
・コーポラティズムが進むほどに、選挙もまた消費活動のひとつとしてマーケティング戦
 略に組み込まれていく。わかりやすいスローガンとドラマチックな演出、高揚感と感動。
 全て有権者の嗜好と社会の流れという市場データに基づいて、綿密に計算されるのだ。
・9.11以降、「テロとの戦い」とセットになって、嫌というほど撒き散らされた「民
 主主義」という言葉。「テロリストが我々を攻撃するのは、この国の自由と民主主義が
 憎いからだ」という宣伝文句が、毎日のように流れてきたのを覚えている。マスコミが
 煽るテロの恐怖で思考停止状態だった米国民は、敵から「井優と民主主義を守るため」
 に次々と行われる新法導入や法改正に関心を向けず、それらの法律が自国の政府に自分
 たちの「自由と民主主義」を奪う許可を与えることに気づかなかった。
・誰でも「ファシズム国家」は論外だと言い、「共産主義国家」も問題だと言う。なのに、
 民主主義国家についてはたいした検証もなく、問題なしと見なされるのはなぜだろう。
 民主主義体制は「最終目標」であるかのように言われ、その中身についてはほとんど問
 われないのだ。「民主主義」は大資本にとって都合の良いスローガンのひとつだ。
・アメリカによる「民主主義」を装った新しいタイプの侵略手法。1980年代以降、米
 国は非協力的な外国の政権を不安定化し転覆させるために、従来のような軍事力ではな
 く「人道主義・民主主義」というソフトパッケージ」に包まれた手法を採用していると
 いう。まず、ターゲットになった政府や指導者を、CNNやBBC率いる国債メディア
 が「人権や民主主義を侵害している」として繰り返し非難する。そして、水面下で米国
 が支援し、時には訓練した市民団体がツイッターやフェイスブックを通じて人を集め、
 反政府運動を起こすのだ。彼らは暴力的な行動で政府を挑発し、国債メディアがそれを
 「独裁者」に弾圧される市民」というわかりやすい図に当てはめてイメージを広げてゆ
 く。無防備な市民を救うという理由でNATO軍の武力介入が正当化され、最終的にタ
 ーゲットになった政権は「民主化革命」という崇高な目的のために、内部から自然に崩
 壊したことにされるという仕組みだ。
・市民運動という形で他国の政権を転覆させる手法は、すでに米国の外交政策のひとつと
 して過去何度も使われています。  
・革命は「劇場型選挙」と同じです。「独裁者VS民主化を求める市民」という構図は、体
 臭に好まれます。ですが、その背景にあるものを見極めるために重要なのは技術的ツー
 ルではありせん。真の目的はドラマが最も盛り上げるクライマックスではなく、人々の
 関心が薄れた頃の状況をチェックすべきでしょう。 
・2000年にミロシェビッチ政権が転覆させられた後のセルビアは、国の大規模な規制
 緩和と民営化により市場開放され、莫大な公共部門の産業や事業、そしてヨーロッパ最
 大規模の埋蔵量であった鉛、亜鉛、石油といった天然資源が次々とアメリカの投資家と
 多国籍企業の手で落札された。
・戦争の大義名分が途中で「大量破壊兵器」から「独裁者を倒してイラク民主化を支援」
 に変わったイラクも、わかりやすい例のひとつだ・投資家や金融機関のための大幅な規
 制撤廃と民営化が行われ、国内企業が次々と倒産する中で、外資が巨額の利益を手に入
 れている。仕掛けているのは誰なのか。何のための「民主化」なのか。体制転覆後に利
 益を得ているのは誰か。
・「民主化」「市民運動」という言葉のイメージに騙されず、背景や利害関係を見て判断
 しなければならない。「民主化」を掲げる反政府運動は、わかりやすい「正義VS悪」の
 イメージに踊らされず、まずは市民団体や運動家の資金元をチェックすべきだろう。息
 もつかぬショーのような報道がテレビから消えたときこそ、その実態が表れてくる。
・湾岸戦争直前、イラク兵が312人のクウェート人の幼児を保育器から取り出し、病院
 の床に放置して死なせた、というニュースが流れた。衝撃的なこのエピソードは政治家
 によって強調され、議会の「砂漠の嵐作戦」支持拡大の道具として使われる。アメリカ
 最大の広告会社のひとつで政界とのつながりが深いヒル・アンド・ノウルトン社が、ク
 ウェートでイラクが残虐な行為をしたと議会や世論に信じ込ませようとして、この話を
 ねつ造したことが明るみに出たのは、湾岸戦争が終わった後だった・
・9.11後、テロの首謀者であるアルカイダと関係を持ち、大量破壊兵器を所有してい
 るという理由で死刑にされたサダム・フセイン。この時、CNNが報道したのは、大勢
 の市民が引き倒されたフセイン像の上で踊っている姿だった。画面の下のテロップには、
 「独裁者の消滅と、手にした自由に喜びの声を上げる市民」の文字。さらに「これはベ
 ルリンの壁の崩壊や、1944年のパリの開放に匹敵する歴史的な快挙だ」という米政
 府高官の言葉までつけられた。だが、これはのちに、ワシントンポスト紙によって「や
 らせだ」と批判される。実際に銅像の周りにいるのは報道陣と米兵に囲まれた数十人だ
 け、広場の周囲は米軍戦車数台が包囲して他の市民から隔離しているというのだ。
・2011年10月、リビアのカダフィ大佐が殺害されたニュースをきいたとき、何とも
 言えない違和感を覚えた。同年5月に報道された、米国特殊部隊によるウサマ・ビンラ
 ディン殺害と重なったからだ。両者ともハーグ国際刑事裁判所などの国際法廷で裁かれ
 る代わりに、拘束直後に殺害され、真相は闇に葬られている。 
・NATO軍は3月に「カダフィ大佐の反政府軍に対する容赦なき弾圧から人民を救うた
 めに、あらゆる措置を容認する」という国連安保理決議を受け、以来2万回以上の出撃
 と8000回近い爆撃を行った。これはどう考えても不自然な決定だった。国際社会は
 強権的な政権であっても、自治国家に軍事介入することを許していない。中国やロシア、
 ブラジルはNATOの「無差別攻撃」は安保理決議の枠を超えているという批判したが、
 爆撃はそのまま続けられた。
・反米・反イスラエルを掲げ、数々のテロに関与し「アラブの狂犬」と呼ばれたカダフィ
 大佐。カダフィ大佐殺害を伝える日本や欧米の報道には、「独裁者がついに死亡」
 「民主革命である「アラブの春」がリビアにも拡大」というような見出しが踊り、歓喜
 するリビア国民の写真が掲載された。
・リビアはNATOの侵攻前までブラジルやロシアよりも高い生活水準を持つ国だった。
 カダフィ大佐はすべての国民にとって、家を持つことは人権だと考えており、新婚夫婦
 には米ドル換算で約5万ドルもの住宅購入補助金を、失業者には無料住宅を提供し、豪
 邸を禁止していた。車を購入する時は、政府が半額を支払う。電気代はかからず、税金
 はゼロ。教育、医療は質の高いサービスが無料で受けられる。もし、国内で必要条件に
 合うものが見つからなければ、政府が外国へ行けるよう手配してくれる。大家族の食料
 費は固定相場、すべてのローンは無利子でガソリンは格安。農業を始めたい国民は土地、
 家、家畜、種子まですべて国が無料で支給、薬剤師になりたい場合も必要経費は無料だ。
 42年前、カダフィ大佐が権力の座に就く前に10%以下だった識字率は、今は90%
 を超えている。これらの政策を可能にしたのは、アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源
 だった。カダフィ大佐が残した功績は、日本人が西側メディアから見聞きしたような、
 国民の犠牲の上に立つ専制君主国家ができることではない。
・日本のニュースの中身は、アメリカの通信社からくる情報だ。日本のマスコミも専門家
 に検証させることすらぜず、ロイターからのものをそのまま流している。 
・私たちが日本国内で得る情報の大半は、西側の大手メディアやアルジャジーラなどの報
 道がベースになっている。だが、「コーポラティズム」がメディア支配を強める21世
 紀、大手マスコミの報道を鵜呑みにすれば、大きなリスクが伴うだろう。だからこそ、
 ニュースは常に、現場の声や企業の息がかかっていない独立ジャーナリストの報告と比
 較することが重要になる。 
・リビアは、アフリカ諸国でも最高の生活水準を持った国だった。少数民族である黒人に
 聞けばわかります。40年間、北アフリカと中東の国々の中で、彼らの最も平等に扱っ
 た国がどこだったかを。
・NATOは、いるから国家元首を殺すようになったのか。これは国連決議1793をは
 るかに超えた暴力行為だ。NATOはリビアで、「戦争のメディア化」を行ったのだ。
・ブッシュ前大統領が「対テロ戦争」というコンセプトを打ち出したとき、21世紀の戦
 争はそれまでとは違う新しい形態に入れ替わった。巨大な軍事予算を背景にアメリカ政
 府が手にしたものは、国境を超えた無制限の戦線拡大と、国を無期限に緊急事態下にお
 ける大義名分だ。「コーポラティズム」はたちまち「戦争の民営化」を加速させ、空前
 の利益を上げていった。
・ロシアの暗部を見たければ、欧米のニュースは有効でしょうね。反面、欧米メディアが
 絶対に伝えないニュースについては、ロシアのニュースは教えてくれる。重要なのは、
 どちらか一方のメディアだけを鵜呑みにせず、比較しながら真実を探すことです。
・経済グローバリゼーションの波が、世界のメディアを次々に統合させている。ひとつの
 ニュースを見るときも、国内、海外という2種類だけでは見えなくなってしまう。受け
 手である私たちは、立ち位置の違うメディアの発信する内容を比べることで、真実に近
 づいてゆくしかない。
・人間の歴史を振り返れば、ファシズムを最も強力に生み育てるのはいつだって大衆の無
 知と無関心だ。9.11をきっかけに、アメリカ政府は「テロとの戦い」という「錦の
 御旗」を手に入れた。国を無期限に「緊急事態下」においておけば、国家権力を拡大し
 過激な政策を通しやすくなる。
・テスト用紙に正しい回答を書く能力は高くとも、批判的思考をせず、理不尽な権力に対
 する抗議をせず、物事に対し好奇心や疑問を持たないロボットのような子供たちが大量
 に生み出される社会。民主国家に不可欠な「市民」を育てる場所であるはずの教育現場
 が、市場原理を効率よく回すための「従順な国民」を製造してゆく。
・イランや北朝鮮がファシズム国家だと名指しで批判される中、一見変わらぬ日常を送っ
 ている国で情報が統制され、「考え、表現する自由」が合法的に奪われる。その国は、
 果たして「民主主義国家」だといえるのか。
・点数至上主義と厳罰化によって従順な国民を大量に生み出す「教育改革」に警鐘を鳴ら
 す指摘は正しいだろう。ファシズムと市場原理主義は仲がいい。セットで実行されるこ
 とで、効率よく結果を出せるからだ。
  
真実の情報にたどりつく方法
・「大衆は理性ではなく、感情によって物事を決める」という、アドルフ・ヒットラーの
 言葉が浮かぶ。大事件などで混乱しているとき、人は冷静な検証よりも、スローガンの
 もたらす兄な高揚感のほうに飛びつくのだ。
・放射能で汚染された瓦礫を一般焼却炉で燃やせば、大気中に濃縮された放射性物質が撒
 き散らかされるからだ。日本国内にある焼却炉のほとんどは、放射能大気拡散を防ぐフ
 ィルターが付いてない。そんな中、東京都が、今後10年間にわたる50万トンの瓦礫
 受け入れを表明。だが、都内に1日100トン以上の処理能力のある産業廃棄物処理施
 設を持っている業者は1社しかいない。江東区青海の「東京臨海リサイクルパワー株式
 会社」だ。つまり、同社が事実上入札なしで受注することになる。だが、この会社は、
 95.5%東京電力が出資している子会社だ。東京電力は、瓦礫処理にかかる費用を一
 切負担しなくていいどころか、汚染瓦礫の処理で利益を得ることができ、さらに瓦礫償
 却により発電からも利益を得られることになる。なぜ、東京都は都民の反対を無視して、
 瓦礫の受け入れと償却を強行したのか。設立以来、東電に天下りした官僚の約半数を、
 東京都幹部が絞めている。そして東京都は、東電の大株主なのだ。税金をつかった政府
 プロジェクトについて、私たちはそこで動く資金と受注企業、関連団体を注意深く見て
 ゆく必要があるだろう。
・原発を作るときも、原発が事故を起こしても、同じ連中にカネが入る。「イラク戦争」
 と同じだ。戦争のための武器を売って儲け、戦場に兵士を派遣して儲け、兵士が破壊し
 たバクダットの街の復興ビジネスで、また儲ける。  
・西側の報道ばかり見ている人の多くは、IMFのことを、まるで弱い国を救う赤十字の
 ような機関だと錯覚している。IMFと世界銀行、WTO(世界貿易機関)の目的は、
 地球規模の自由貿易推進で、ゲームのルールはアメリカ中心の西側に有利なようにでき
 ているのに。
・IMFの救済プロセスは債務国にとって非常に不利な仕組みになっている。高金利融資
 と引き換えにIMFが債務国に課す「経済構造調整プログラム」は、「通貨の切り下げ」
 「政府の公的支出の削減」「貿易規制の撤廃」によって、その国の構造を根本から変え
 てしまう。
・1990年代のアジア危機、IMF介入で受け入れた韓国、インドネシア、タイといっ
 た国々は、金融機関をはじめ国内の主要セクターが民営化され、総数2400万人の失
 業者と共に2000万人が貧困層に転落した。同地域から中産階級を消滅させたのは、
 危機そのものではなく、IMFによる介入だった。
・IMFは国連総会のような一国一票制度ではく、その議決権は出資額に比例する。ダン
 トツの1位は17%のアメリカだ。毎回、専務理事は欧米人が選ばれ、途上国の声は反
 映されにくいシステムになっている。ちなみに、IMF出資額2位は日本。日本も間接
 的に、加害者サイドにいるのだ。
・「99%は1%に抗議する」彼らから選択肢を奪っている1%とは誰だろう。同じ二極
 化構造がアメリカ一国だけでなく、世界各地で起きていることは偶然ではない。市場規
 模を広げるほどに、グローバル資本にとって利益は拡大する。そのための規制撤廃を望
 むのは、特定の顔や国籍を持たない1%の層なのだ。
・「TPP」といった自由貿易協定において、ISD条項が医療にもたらす弊害に警鐘を
 ならしている。ISD条項によって、製薬会社は知的財産を盾に、ジェネリック薬品の
 製造を許す政府を訴えることができる。この条項によって、公衆衛生という人類の基本
 的な生きる権利が、利益のために切り捨てられてしまう。ISD条項は、自由貿易の最
 も危険な要素のひとつだ。 
・なぜ毎年、アメリカ国内で無保険ゆえに4万人の患者が死に、保管がありながら100
 万人の被保険者が破産し、薬の副作用で30万人が命を落とすのか。グローバル企業に
 とって、患者の国籍や名前など意味を持たないからだ。アメリカ人だろうが日本人だろ
 うが、グローバル経済の前で命は「数字」なのだ。それ以上でも以下でもない。
・自由貿易というコンセプトそのものが、グローバル企業と法治国家の力関係を変えてし
 まう性質を持つ。グローバル経済が支配する世界の中で、今後ますます各国の憲法や法
 律、規制といったものは意味を失っていく。国の介入は、小さければ小さいほど利益が
 上がる。グローバル経済の最終ゴールは、規制ゼロの「統一世界市場」だからだ。
・グローバル企業が世界に市場を拡大するほどに、国境は意味を持たなくなる。先進国で
 国内の労働者が失業する一方で、年金や生活保護など国の負担は重くなっていく。第三
 国はますます資源を奪われ、通貨は効率よく統一されていくだろう。その時「国家」と
 いう形は、いったいどうなってしまうのか。 
・株主の利益が正義だという思想の前に、世界はほとんど壊れかけている。「ワシントン
 コンセンサス」も「TPP」も「原子力村」も、1%の人間だけが身の丈を超えて富と
 権力を手にする同じ流れです。
・ISD条項とは「投資家対国家の紛争解決」条項の略で、日本が参加表明した「TPP」
 でも問題になっている項目のひとつだ。たとえ主権を手放してでも「海外からの投資拡
 大と国際競争」が経済成長に不可欠だという考え方が本当に万能なのかどうか。私たち
 はもう一度慎重に検証し直す必要があるだろう。
・それまで西側の資本家たちは、ロシア革命のような労働者の反乱を恐れていました。だ
 から、共産主義が象徴する貧しい生活の対極だというアピールを含めて、国民に福祉や
 社会保障を通じて、税を還元する政策を取ってきたのです。けれど、ソ連崩壊によって
 そのタガが外れたとき、資本主義は本来の獰猛な姿を現し、走り出したのです。効率よ
 く利益を生み出すためには、進化した技術で生産コストを削減するか、労働者を最安値
 で働かせるしかない。目覚しいスピードで進むIT技術が、市場の国境を超えた拡大を
 加速させ、グローバル経済があっという間に世界を覆いました。
・多国籍企業は市場にとっても最も邪悪な国家の規制を、自由貿易という旗を掲げながら、
 国家間の枠組みで次々に緩めていった。多国籍企業にとって、カネで手に入らないもの
 など何もない。目に見えるものも、見えないものも。民間も公共も。ひとつの国家でさ
 えも。規制を取り払う一番手っ取り早い方法は、それを作る機関ごと買ってしまうこと
 だ。だから、アメリカでは多国籍企業は政治を買い、メディアを手に入れ、「コーポラ
 ティズム」が社会のあらゆる場所に、市場原理支配を浸透させてきた。 
・アメリカ型独裁資本主義の最大の功罪は、国民を市民ではなく消費者にしてしまったこ
 とだろう。顔があり名前があり、生きる選択肢を持つことを根底に置いた市民と、単に
 生産を支える数として位置づけられることとは、天地ほど違う。今、世界中で起きてい
 る社会現象は、全てこれに対するアンチテーゼなのだ。
・誰が民主主義を作るのか?それは市場の見えざる手ではなく、私たちのようなごく普通
 の人々の手によって作られるべきだろう。単なる計算方式だったはずなのに、いつの間
 にか幸福を測るものさしにすり替わった GDP信仰を手放し、幸福とは何か、子供た
 ちに手渡したいのはどんな社会だろうかと、ひとりひとりが本気で考えることで。 
・顔の見えない消費者から、名前や生きてきた歴史、将来の夢や健やかな暮らしを手にす
 る権利を持つ「市民」になると決めること。失望した政治を見捨てる代わりに、誰もが
 人間として尊厳を持って生きられる「参加型民主主義」の枠組みを作るために、自分の
 行動に責任を持つこと。人間が太古からの歴史の中で繰り返し生み出してきた。数字で
 測れない価値を持つ数々の宝をも守ることは、私たちがより人間らしく生きられる社会
 を作ることと同義語だ。

3.11から未来へ
・地震活動期に入った日本で、54基原発にどんな影響が出るか。国民から不安の声がた
 くさん出てきているにもかかわらず、政府の対応は相変わらず安全説を繰り返し、原発
 推進の方向だ。
・体制側についてマスコミが事実でない内容を拡散すればするほどに、国民は少しずつ、
 マスコミそのものに冷やかな目を向けるようになっている。
・3.11で明らかになったのは、情報に関して私たちは主権者として扱われていないと
 いう事実だろう。知らされるべき情報を握っているのは、一部の官僚、政治家、マスコ
 ミ上層部に財界人たちだ。
・3.11で露呈したことのひとつに、原発そのものが持つ闇の深さがある。エネルギー
 問題から原発を考えるだけでは見えてこない、私たちの得る明るさや便利さや快適さと
 引き換えに使い捨てにされる、何万人という原発労働者たちの存在だ。原発事故後に週
 刊誌やネットで取り上げられた原発労働者の作業環境の劣悪さや、ずさんな放射能管理
 の実態、嘘の求人広告で騙されて原発労働をさせられる話などを読むと、取材で出会っ
 た多くの米兵が、「経済徴兵制」によって戦地に送られてゆく姿と重なってくる。彼ら
 はイラクやアフガニスタンで何も知らされないまま被ばくさせられて、政府がそれを認
 めないために治療も保証も受けられず、黙って切り捨てられてゆく。
・巨額の利益をもたらず戦争や原発を維持するために、数え切れない兵士や労働者たちの
 苦痛が闇に葬られる。推進する業界や癒着したマスコミ以上にそれを長い間支えてきた
 のは、他でもない私たちの無関心と、利益と効率至上主義の価値観なのだ。
・震災をきっかけに多くの人にもたらされた、大切なものの優先順位や「自分にとって本
 当の幸せとは何か」という問の答えが、生き延びるための情報を選り分ける、自分だけ
 のものさしになるだろう。あふれかえる情報の中から、そうやって見つけ出した「真実」
 を手にしたとき、私たちはモノではなく人間になる。