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超高齢化社会と言われる日本では、高齢者の孤独死が問題化されている。確かに、誰にも
みとられずにひとりで死亡し、死亡した後も何日もあるいは何か月も発見されなかったと
いうニュースは、高齢者の心には突き刺さってくる。
しかし、その孤独死の前にも、大きな問題が立ちはだかっていることを、この本は指摘し
ている。それは「ひとりぼっちの高齢者」という問題だ。定年退職などして、現役から引
退したあとの人生で、社会との接点を失い、孤独な老後を過ごしている人々が多いという
ことだ。これは、特に男性に多いらしい。
男性は、会社などを定年退職しても、いつまでも自分の現役時代に所属した組織や地位や
肩書に執着して、なかなかそれから離れられない人が多い。「もう自分はだだの高齢者」
だということが、なかなか受け入れられない。しかも、そのことを本人自身は気づかない。
しかしこれが、新しい環境になかなか溶け込めず、周りから避けられ、孤立化の原因にな
る。
生涯独身者だった人や離婚した人はもちろんだが、仲の良い夫婦であっても、どちらかが
先に逝くと、残された者はひとり老後を送ることになる。ひとりぼっちになった高齢者に
とって、一番の問題になるのが、「身元保証人」という問題だ。アパートなどを借りる場
合はもちろんのこと、有料老人ホームに入居する場合でも「身元保証人」を求められる。
さらには、病気で病院に入院する場合でも「身元保証人」を求められる。手術をする場合
でも「身元保証人」が求められるのだ。
しかし、高齢者となった者にとって、この「身元保証人」を見つけるということは、なか
なか困難だ。親や兄弟はもう亡くなってしまっていないという場合が多いし、頼れる子供
がいないという人も場合も多い。「身元保証人」がいなければ、病気になっても手術も受
けられない。
このことに目を付けて、「保証人ビジネス」も盛んのようだが、これもなかなか問題が多
いようだ。過去には大手の保証人サービス会社が、高齢者の預託金を流用するという事件
も起きている。
この問題を根本的に解決するには、政治による解決しかないように思う。身元保証人を求め
ることを法律で禁止することだ。すでに3割近くを高齢者が占めるこの国で、身元保証人を
求める習慣は、もはや「悪」でしかない。法律によって即刻禁止にしてもらいたい。


はじめに
・ひとり身の高齢者が最後まで自分らしく生きるために、見落とされている大きな問題が
 ある。それが「保証人」問題だ。大事な場面での保証人要求だ。身内のいない単身高齢
 者の弱みにつけ込むように、「保証人ビジネス」も横行している。
・一口に「老後ひとりぼっち」と言っても、寂しいひとりぼっちもいれば、幸せなひとり
 ぼっちもいる。 

「老後ひとりぼっち」時代の到来
・これからの時代は”ひとり”ですよ。結婚していてもしていなくても、みんないずれ
 ”ひとり”になる。”ひとり”は、”特殊な人たちのこと”ではなく、皆さん一人一人
 のことなのです。
・推測するに、男性は女性と違い、「ひとり」を自分の事として捉えている人が少なく、
 また、男同士の集まりが苦手だからだと思われる。
・女性は、結婚していても、いずれ夫が亡くなったらひとりになると自覚している人が多
 く、早くから、「ひとりの老後」について勉強したり、情報を集めている人が多い。
・昨今、問題になっている孤独死や下流老人などが、男性に多く見られることからもわか
 るように、ひとりは、もはや独身女性の問題ではなく、男性の問題と言っても過言では
 ない。  
・昨今「ひとり」と言う時は、「寂しさ」より「気楽さ」という意味合いのほうが強いよ
 うに思われる。しかし、それも若い時の話で、死んでゆく現実が実感できる年齢になる
 と、「気楽さ」は影を潜め、再び「ひとりの寂しさ」という現実が、まるでゾンビのよ
 うに復活し、苦しめだすのも事実である。
・2012年の内閣府の調査によると、日本は現在、およそ10世帯に1世帯が、65歳
 以上の単独世帯なのだ。 
・1980年には、65歳以上のひとり暮らし人口は約88万人だった。それが2010
 年には、約480万人。2035年時には、約770万人にまでふくれ上がる推計だ。
 これが何を意味するかというと、日本は「ひとりで過ごす老人ばかりの国」になる、と
 いうことである。あなたも、あなたの奥さんもだんなさんも、誰もが「老後ひとりぼっ
 ち」になる可能性があるといえる。
・ニッポン一億総活躍時代ならぬ、日本総ひとりぼっち時代が、いよいよ現実のものにな
 りつつある。
・昨今、特に都会はおひとりさまだらけだ。「結婚できない」、「結婚したくない」・・。
 未婚でいる理由は人それぞれだろうが、いまや、30代で独身だろうが、40代で独身
 だろうが、誰も不思議がらない。それは単純に「ひとり者」の数が増えたからだ。
・未婚者だけでなく、離婚する人も多くなった。昔は離婚というだけで、親戚中が大騒ぎ
 になったが、昨今では、離婚と聞いても誰も驚かなくなった。それだけ、離婚が当たり
 前になったと言える。 
・1970年の離婚率は9.3%。そこからぐんぐん上昇し、2002年には38.3%
 とピークを迎える。その後、ゆるやかに下降し直近のデータの2009年では35.8%。
 3組に1組以上が離婚していると見ることができる。3組に1組が離婚して、その先の
 生活は大丈夫なのだろうか。
・先進国の人口千人当たりの年間離婚率(2015年)を見てみると、
 ・ロシア   4.5%
 ・アメリカ  3.6%
 ・ドイツ   2.2%
 ・イギリス  2.1%
 ・フランス  2.0%
 ・日本    1.8%
 ・イタリア  0.9%
・結婚も離婚も本人の自由だが、これだけ離婚が増えている現実を前にすると、「ひとり
 老後」も予測して生活設計を立てることは、花嫁道具よりも先に準備しておくべきこと
 かもしれない。 
・親が「いつでも帰ってきていいよ」と娘が孫を連れて帰ってくることを拒まず、むしろ
 歓迎している。そんな母娘関係が離婚率を引き上げているかもしれない。別れた男はと
 いえば、運よく優しい女性と出会えればいいが、そうでない人は、いや、出会えたとし
 ても、いつまた危機がくるかもわからないので、断定できないが、限りなく「老後ひと
 りぼっち」の要素を含んだ道を行くと言える。
・言葉は悪いかもしれないが、結婚して家庭を持つというのは、老後の保険のようなもの
 なのだ。語弊がないように言っておくが、なにも既婚者のすべてが老後の保険で結婚し
 たと言っているのではないので、怒らないでほしい。本人は気づいていないかもしれな
 いが、家庭を持つ、家族を持つ、というのは、老いた時の安心材料になる。
・しかし、昨今では、3組に1組の離婚率の数字が示すように、「結婚」という制度が音
 をたてて崩れ始め、もはや、結婚は、老後の保険にはなりえない時を迎えている。
・これまでは、高齢化が問題になり騒がれていたが、これからは単身高齢化社会がクロー
 ズアップされるのは、目に見えている。
・20年後の2035年には、全国高齢者世帯の44%が単身高齢者世帯になるだろうと
 予測されている。つまり、東京の高齢者世帯の4割以上が、ひとり暮らしということに
 なる。  
・今でも、特養(特別養護老人ホーム)に入れない人が全国で52万人もいるのに、20
 年後の高齢者福祉はどうなっているのだろうか。お年寄りは介護保険料だけ徴収され、
 利用できない状況に陥るのではないか。
・国は、戦後のベビーブームの時に、こうなることを予測できたはずだ。先を見据えた対
 策を怠ってきたツケが、そして、国民がおまかせ主義だったツケがついにきたのだ。
・国会議員という人たちはなんて想像力のない人たちなのか。年金財源を株につぎ込むな
 んて、相場師のすることで、国がすることではないはずだ。

「老後ひとりぼっち」の現実
<Aさん(女性)の場合>
・彼女の2DKの部屋に上がらせてもらい、家事が苦手なことがすぐにわかった。玄関は
 暗く、モノが置いてあり足元が怖い。使用済みの食器がシンクに溜まり、清潔とは言え
 ないキッチン。食器棚の中はレトルト食品がぎっしりで、料理をしている気配は伝わっ
 てこない。居間は、新聞や本が山積みになっており、どこに坐っていいのか困るほどだ。
・最初は、雑然とした室内に戸惑ったが、こうした暮らし方は、高齢者のひとり暮らしの
 お宅には多いのかもしれないと、後に、他のお宅にお邪魔した時に思った。男性のひと
 り暮らしは汚いと言われているが、女性も高齢になると同じなのかもしれない。
・自立したシングル女性の草分け的な存在の彼女はシャキシャキしている。趣味は平和運
 動というのだから、どんな方は想像がつくだろう。難しい本やしんぶん赤旗などが散在
 している。  
・勤続25年で退職金が50か月分、約1000千万円をもらえるのがわかった彼女は、
 60歳になったとき、ちゃっかりとボーナスをもらってから退職した。しっかりものの
 独身女性の考えることらしいので、おかしくなった。
・彼女が生涯独身で通した理由は、「結婚より年金」のほうを選択したからだ。彼女は、
 結婚と年金を天秤にかけ、相手に左右される人生より、人をあてにしない人生を選んだ。
 そして、彼女の予定通りの年金生活が始まったのである。その日から、亡くなるまでの
 30年間、年金という頼りがいのある夫が彼女の長いひとり暮らし生活を支えたのであ
 る。  
・定年後の60歳から75歳ぐらいまでは、地域のボランティアや平和運動をしながら退
 屈しない毎日を送ったと言う。しかし、80の声を聞くようになってから、年金の額は
 変わらずとも、彼女を取り巻く状況は変わってきた。80代に入ると周りの接し方が一
 変したという。市役所も民生委員も彼女をお年寄り扱いし始めたのだ。
・ボランティアをしようと出かけでも、年齢を聞くと皆がひく。いくら自分に社会参加の
 意欲があろうと、60代のグループには入れない雰囲気があった。「あそこの野菜が安
 い」という話題しかない近所の人とは話が合わない。政治の話がしたいが、同じ関心を
 持つ人と話がしたくても、周りにはいない。80代に入ってからは、ほとんど誰ともし
 ゃべらずに、家にいることが多くなったと嘆く。80代になってから、人としゃべるの
 はスーパーのレジ係の人と、一言二言交わすだけだという。
・生活できるだけの年金をもらっていて、幸せなはずなのに、年金が少なく経済的に困窮
 している人が聞いたら、なんて贅沢なことを言っているんだと怒るかもしれないが、孤
 独は、貧困と同じぐらいつらいものかもしれない。
・結婚か年金か。その選択は正しかったのか。どっちに転がっても人生は同じだったのか。

<Bさん(男性)の場合>
・彼が20年務めた新聞社を辞めたのは、4年前の2012年のことだ。サラリーマンを
 辞めてみて初めて社会で生きていくことの厳しさを知ったと、彼は苦笑する。サラリー
 マンと言っても、職種や会社により違うので一概には言えないが、正社員の立場を捨て
 るというのは相当に覚悟がいるに違いない。
・正直な話、社会部から生活家庭部に回された時は、ショックを隠し切れなかったと言う。
 家庭面をバカにしているわけじゃないが、社会問題に関心があって、入社したのだ・・。
 その後は、週刊誌に回され、さらに意欲を失った。安定収入か、生きがいか。決心がつ
 いたのは、3.11がきっかけだった。こんな大事故が起きたのに、メディア側にいる
 自分は何をしているのか。彼は、自分で取材して自分の言葉で、現実を伝えたいと強く
 思うようになり、フクシマ担当を上司に申し出たが、あっさりと却下され、それを機会
 に辞めることを決めた。
・新聞社にいれば経済的に不自由のない彼がったが、自分の中から湧き上がる熱い思いに
 ふたをすることができず、妻の反対を押し切り、フリーのジャーナリストとなった。
 不定期な仕事のため、そんなに収入があるわけではない。貯金を切り崩しながら、駆け
 回った。  
・それから3年後のことだ。突然、妻から三行半を突きつけられたのだ。共稼ぎだからこ
 そ買えた浦安の分譲マンションのローンは、まだ10年以上も残っていたが、慰謝料は
 なし、ローンは妻が払うかわりにマンションの名義は妻にすることで離婚が成立した。
・本人としては、働き方を変えたかっただけだったが、家を失い、妻を失うことになった。
 自分の信念を貫く生き方の代償は大きかった。海外の貧困地帯を取材した経験から、屋
 根と食事さえあれば、どこでも暮らせる自信はあるが、先は明るくはないという。
・日本経済が右肩下がりで福祉が頼りにならない上に、増税を迫られる社会の中で、生き
 て行かなければならない30代、40代の働き盛りの人たち。安定しているように見え
 る現在の生活条件も、ひとたび崩れてしまうと、そこから怒涛のごとく崩れ落ち、最後
 は貧しい老後ひとりぼっちになる可能性は、誰にでもありそうだ。

<Cさん(女性)の場合>
・彼女は、30代のときに現在連れ添っている男性と結婚した。自営業だった彼を彼女は、
 共に将来の夢を描きながら支えてきた。二人は若く、夫婦2人の生活を満喫していた。
 子供はいないが、結婚生活に疑問を持ったこともなく、このまま一緒に年をとり老後を
 迎えるつもりだった。しかし、その想像は見事に打ち砕かれた。
・夫の行動は今でも理解できないと言うが、6年前に夫は突然、家を出て行ってしまった
 のだ。そして自らの意志に関係なく、彼女は守られた主婦から突然、ひとり暮らしの高
 齢単身者にさせられたのである。
・年金はもらっているが、国民年金だけなので、手取り3万円ほどだ。若い時に年金の掛
 け金を払っていなかったため、受取額が3万円になってしまったということだ。サラリ
 ーマンと違い、自営業の場合は自分で年金の手当てをなしなくてはならない。
・彼女は生活費を得るために働くことを決意した。ところが、仕事を得るのは容易ではな
 いことをハローワークに行って思い知らされることになる。仕事はたくさんあった。し
 かし、年齢を入れると、ビルの清掃員しかヒットしない。資格がないとだめだと気づい
 た彼女は、ヘルパーの資格を取り、ヘルパーの仕事に就くことを決意する。
・しかし、ヘルパーの資格でできる訪問ヘルパーの仕事はあるものの、甘い仕事ではない
 ことを思い知らされる。掃除や食事の生活支援をするぐらいではお金にはならず、しか
 も大変な肉体労働だった。ヘリパーの仕事は、とても50代以上の女性の仕事ではない。
 ヘルパーという仕事は、体力のある年齢の人にしかできないというのが彼女の結論だ。
・人生は何が起こるかわからない。まさか、これから老後という時に、ひとりにされてし
 まうとは。まさに、青天の霹靂だった。夫の仕事を支えながらきちんと税金を払い続け
 てきたのに、人が一人生きていくだけの年金を保障されてないこの日本に怒りを感じる。
 この国は公務員かサラリーマンでない人は、勝手にしてくださいということなのか。生
 活保護以下の収入なのに、何の手立てもないのがおかしい。
・持ち家の人でも、収入がないと生きていけない。屋根があっても生活費がなければ生き
 ていけない。これは基本的人権に反するのではないだろうか。
・日本には、老後の蓄えがないのは、個人が悪いと考える人が多い。自業自得だと。それ
 は、自分がたまたま安泰な場所にいるだけではないのか。最低の年金(生活費が賄える
 分)は、国が保証すべきだ。生活保護ではなく、最低年金の底上げこそが必要だと、私
 は強く思う。    
  
<Dさん(男性)の場合>
・現在、77歳の彼は、30歳で結婚。結婚の数年後に借りた都内の団地に、四十数年経
 った現在も暮らしている。独身時代は会社勤めをしていたが、結婚後に妻が病気で入退
 院を繰り返すようになったことから、彼は非正規契約の校正者になった。当時は時代が
 よく、お金が良いわりに自由があったこの仕事は、妻の看病もしやすく、彼にとっては
 いい働き方だった。
・娘と息子の2人の子供を授かったが、結婚10年目の時に、妻は病気で38歳の若さで
 亡くなる。そこから、彼の男1人で2人の子供を育てる生活が始まった。
・男1人で生活費を稼ぎ、家事をこなし、子供をきちんと学校に行かせた。2人の子供た
 ちがそれぞれ就職し、結婚して家を完全に出て行ったのは、今から12年前の彼が65
 歳のときだ。  
・正社員ではなく非正規ということで自由の利く働き方をしていたことが、2人の子供を
 1人で育ててこられた大きな要因だと彼は言う。世の中は、非正規という働き方を不安
 定な働き方であることからマイナス面ばかりを見がちだが、実は良い面もある、と経験
 者の彼の言葉には説得力がある。
・非正規だったので、サラリーマンのように定年がない。収入は不安定で、少ないかもし
 れないが、やれるところまで働くことができるのが非正規の良さだと彼は語る。ラッキ
 ーなことに彼には仲間にも恵まれた。しかし、いくら年齢制限がなく働けると言っても、
 白髪の年寄りが、会社内をうろうろしてはいけないと思うようになったことと、ガンに
 なったことをきっかけに、校正の仕事はやめた。
・実は3年前に直腸ガンと前立腺ガンがあることがわかり、それ以来、ガンとどう生きる
 かが彼の人生のテーマとなった。ガンを患ったからと悲観することなく、むしろ「ガン
 よ、ありがとう!」という心境だということだ。
・ひとり暮らしで困ったことは入院する時の行き帰り。息子が来てくれたが、関西にいる
 娘はなんの役にも立たなかった。結局、入院中に助けてくれたのは、友人だった。
・彼はこれまでの生ききた間が苦労の連続だったので、今はひとりでホッとしていると言
 う。「ひとり暮らしで寂しい?そんなものは私にはないですよ。ひとりほど自由ですば
 らしいものはない。私は、毎日、楽しくてしようがない。息子夫婦が時々来るが、早く
 帰ってくれという心境だ」    
 
・昨今は、高齢化社会の需要に応えて、介護付き有料老人ホームが全国にできている。特
 に大手が経営するホームは、雨後のタケノコのようにその数を増やしている。
・有料老人ホームと言っても、規模や対象となる入所者層はいろいろで、自立した人向け
 のものもあれば介護中心のものもあり、その形態はさまざまだ。
・見学させてもらったホームは、海が見える位置に建つ、まるでリゾートマンション。そ
 れにしても、こんな素敵な場所に入所できた方は、どんなに幸せだろうか、と思いなが
 ら、館内に入った。    
・ちょうどお昼時だったこともあり、1階の多目的ルームに入所者の方が集まっていると
 ころだった。ホームの入所者はほとんどが女性と聞いていたが、ここは男性も多い。し
 かし、男性は何がおもしろくないのか知らないが、無表情だ。みんなと離れたテーブル
 の前に座り、配膳を待つ80代の男性は、身なりはきちんとしている。食堂はとても静
 かだ。誰もしゃべらない。ただ、黙って待っている。食べてる間も誰も言葉を発しない。
 大勢いるのに、誰もいないかのような静けさだ。特に男性は、こちらがニコニコとして
 もまったく反応してくれない。「何しに来たんだ、見せ物じゃないよ」と心の中で言っ
 ているかのようだ。
・老化により体の機能が衰えてきた高齢者は、頭はしっかりしているのでその分、わが身
 を憂えることも多くつらいのではないか。
・ちなみに福祉大国オランダは、高齢者と障碍者の区別はない。老人も障害者も同じ福祉
 が受けられる。考えてみると、年をとるということは、身体に不自由をきたすというこ
 とでもあるのだ。   
・昨今では、貧困にあえぐ老人の様子が盛んにマスコミで取り上げられるようになった。
 電気も水道も止められ、極貧生活を強いられている高齢者。年金額3万円の高齢者もい
 る。これは個人の問題ではなく福祉の問題だと、テレビで特集を見るたびに腹が立つ。
・昼食を試食させてもらったが、あまりのまずさに同行した友人と目を合わせてしまった。
 ご飯がまずいとはどういうことなのか。「日本のどこに、こんなまずいお米を作ってい
 るところがあるの?」と聞きたくなるほどのまずさだった。ほうれん草のおひたしと焼
 き魚に小鉢がついていたが、どれも、「どうしてこうなるの?」と首をかしげたくなる
 調理の仕方だ。 
・見た目は立派な定食になっているが、基本的なご飯、味噌汁が失格点だ。あとで、くま
 なく見学させていただきわかったことだが、ここには厨房がない。つまり、センターか
 らレトルトパックが運ばれてきて、それを温め直し盛り付ける。そういうやり方なのだ。
・介護付き老人ホームに入ることができる財力のある人は、幸せなのか。はたまた不幸な
 のか。財力がなければ、ホームに入る選択肢もないので、それだけ気楽と言えはしない
 か。 

誰もがなりうる「老後ひとりぼっち」
・彼の老後の予定は、ひとりになったら老人ホームに入ることだった。どんなところでも
 いいと思っていたので、月に10万円も払えば入れると思っていたらしい。ところが、
 役所に行き、どこか紹介してくれないか聞いたところ、彼の年金では入れるところはな
 い、とあっさりと断られた。
・これまで一度も滞納することなくきちんと税金を納めてきたのに、なんで最後がこれか。
 怒りと悲しみがこみ上げてきたと言う。
・老後の世話をしてもらうために子供を育てたわけではないと思うが、今、子供たちの世
 代は子供たちの世代で大変だ。親の気持ちを汲める余裕がないのが普通だろう。
・老いてひとりになった時、心の支えになるのは、やはり家族だろう。結婚して別世帯を
 持っていたとしても、子供は唯一の存在だ。しかし、残念なことに、その子供がまった
 くあてにならないのが現実だ。
・老いていく親のことより、これからの人生が長い子供たちは、自分の生活で精いっぱい。
 親の面倒をみる余裕などないのが現実だ。 
・長い間の会社生活の中で、男性たちは会社の遺伝子を組み替えられてしまったようだ。
 それにも気づかずに会社人間の多くの男性サラリーマンを見るにつけ、「日本は男性が
 不作だ」と、昔、人生の師が言っていた言葉を思い出す。
・男性にケチをつけるつもりはないが、もっとバランスのとれた人間であってほしいと思
 う。いい学校を出て、いい会社に就職できて自分は勝ち組だと思っているかもしれない
 が、人生は年収の額で決まるものではないというところも、わかっていない男性が多い。
・大企業で役員まで務めた人でさえ、「ひとりぼっち?ああ、僕には関係ないの」の一言
 で終わり。その関係ない理由は、言わずと知れた「俺は女房より先に死ぬから」である。
 そんな時、意地悪な私は心の中で、「そうならないと困るものね」と笑う。しかし、本
 人は本気だ。定年退職後は、週2日のゴルフと晩酌が楽しみだと言う。役員までやって、
 社会の貧困問題とか老後破産のことに関心がないことにがっかりする。
・ひとりの老後を送る心と知識の準備なく、女房に先立たれた男性の多くは、取り残され
 症候群にかかり、孤立の壺の中で泣き続けているのが見える。
・高齢者になる前に病気で亡くなる女性を見てみると、やはりガン死が多い。急増する女
 性のガン発生、その要因の一つは、働く女性がさらされてきたストレスではないかとい
 うのが、私の見方だ。
・女性の社会進出が目覚ましいのはいいが、それにより、生物としてか弱い女性の体や精
 神に、本人の想像を超えるストレスがかかり、それが引き金になっているように思う。
 夫の稼ぎだけで暮らせる女性と比べ、社会で働ている女性のほうが、ガン発生率が高い
 ような気がする。     
・男性が女房に先立たれる可能性は、これまでの時代には考えられないほど高くなるはず
 だ。その時、1人取り残された男性は、はたして、ひとり暮らしを幸せに送ることがで
 きるのか。
・仕事柄、これまで多くの有料老人ホームを見てきたが、高級であればあるほど、本人の
 意向で入所していないことがわかる。「わあ、素敵なホームですね。羨ましいわ」と声
 をあげたくなるホームに入所しているお年寄りに限って、笑顔は少ない。お金持ちが悪
 いとはいわないが、お金持ちの娘夫婦や息子夫婦に入れられているからだ。高級なホー
 ムに親が入っていれば世間体もいい。
・高級有料老人ホームに入れない私や皆さんは、幸せな人たちとも言える。お金がないと
 いうことは、悪いことばかりではないのだ。有料老人ホームに入る選択しがない分、自
 宅でがんばる気になれて、それはそれでいい老い方ではないか。
・シニアハウスの草分けの会社が運営している有料老人ホームに入所後にわかったことは、
 何をするにも別途費用を請求されることだった。具合が悪いので部屋に食事を運んでも
 らうにはお金がかかる。そのぐらい管理費のうちだと思うが。部屋で具合が悪くなり倒
 れた時も、翌日の昼まで誰にも発見されることがなかったと言う。これなら家にいても
 同じだ。それだけではない。恐ろしいのは、入手後の管理費や食費、サービスの値上が
 りだ。「食事の質も味も落ちた」と彼女は嘆く、経費節減により、安く請け負ってくれ
 る業者に変えるので、こういうことが起こるらしい。
・運営に不信をいだいたその女性は、入所1年後に、社会福祉法人が運営するケアハウス
 に移ることを決める。入所の際に払ったお金の大半が戻らないにしても、そこを退去し
 てケアハウスに入るほうがメリットがあると踏んでの決断だった。
・駅前の10階建ての立派な有料老人ホームにから田んぼの中の簡素なケアハウスに移っ
 た彼女は、とても幸せだと満面の笑みで話す。元のところに比べたら、ご飯代が安いう
 えにすばらしくおいしいと、大満足だ。なぜ、ご飯がおいしいかというと、近所のおば
 さんが厨房で作っているからで、業者を入れていないからだ。ぜひ、このことは、有料
 老人ホームを選ぶ際の参考にしてほしい。
・世間一般で目にする未亡人を見ているとわかるように、女性はおしなべて、ひとりにな
 ってもあまりかわらない人が多い。いえ、こんな言い方をしたら失礼だが、未亡人にな
 ったとたんにいきいきしているようにさえ見える。    
・「亭主、元気で留守がいい」集まって楽しそうに話している主婦の会話を聞いていると、
 「旦那が死んだらどうしよう」という会話は皆無と言っていいほど聞こえてこない。そ
 れどころか、「退職して、家にいられて、うっとうしいわ」「早く、旦那を送って、せ
 いせいしたいわ」と、むしろ、ひとりになりたい会話が飛びかう。
・昼間の主婦の会話を聞いたら恐ろしくなる夫諸君だが、男性は本当に純粋というか、単
 純というか、たとえそのような会話を耳にしても「本当は寂しいくさに」と解釈してし
 まうようだ。 
・女性はとても現実的で自己中心的な動物だ。一心同体の仲良し夫婦は別として、普通の
 日本の夫婦関係はとても淡泊だ。夫婦で毎日、愛情を確認し合うこともないし、子供が
 できた時点で女性は母親になってしまい、夫への関心は以前にも増して減るのが一般的
 だ。
・男性が家族のために一生懸命働いてくれているうちに、男性の家庭での存在は薄くなり、
 退職して稼げなくなり、子供も巣立ってしまい、気づくと、うっとうしい夫と2人だけ。
 愛情を育ててきた夫婦は、手をつなぎ美術館巡りで第二の人生を謳歌できるが、一般的
 な夫婦は、女性は女性の友達と遊び、男性はひとりで図書館通い。
・女性がひとりになっても強いのは、幸せを男性との人間関係に求めないからではないか
 と思う。女性は女性同士でわいわいおしゃべりするのが好きだ。夫がいなくても、友達
 としゃべることで、孤独の底に追いやられなくてすんでいる。話し相手がいること。そ
 れは何も異性でなくてもいいことなのだ。
・一方、男性はどうだろうか。男性は妻を失ったとたんに、風船の空気が抜けたような状
 態になる人が多いように感じる。日本の男性は会社の肩書がなくなったとたんに、しょ
 ぼくれてしまうように見える。特にサラリーマンはいけない。サラリーマンだった人は、
 長いサラリーマン生活の中で、自分を見失ってしまっている人が多い。もともと、ただ
 の人だったのに、会社の看板で生きてくると、どうも本来の姿より大きい存在の人間だ
 と勘違いしてしまうようで、退職してからもその癖がとれず、周りから避けられ、孤立
 しやすい。  

「ひとり」に冷たい日本
・結婚して家族を持つのは幸せなことだが、なかなか親の思うようにいかないのが、子供
 だ。いじめや不登校からひきこもりになり、いつまでも子供から解放されない親も多い。
 もちろん、家族を持つのは、煩わしいことばかりではなく、喜びがあるのも事実だが、
 ひとりの人には、家族の喜びがない代わりに、自由がある。
・ひとりの人を困らせている社会における問題、それは、人生の大事な場面で、「保証人」
 を要求されることだ。日本の社会では、就職する時、家を借りる時、病院に入院する時、
 介護施設に入るときに身元を保証する「保証人」を要求される。しかも、保証人の要求
 だけでなく、身内の保証人を立てるのが通例だ。まるで、この社会には身内のいない人
 はいないかのように。
・社会にはいろいろな人がいるのに、身内の保証人を当たり前のように要求するのは、
 「人は結婚して家族を作るのが当たり前」という前提に建っているとしか言えない。
・これから、単身の高齢者は増える一方だ。高齢というだけでつらいのに、そこに、保証
 人がいないと家も貸してもらえないというのは、おかしくないだろうか。しかたがない
 という人がいるが、それでいいのだろうか。私はそうは思わない。
・人は誰でも年をとる。年を取れば無職になる。そして、ひとり暮らしになる。そして老
 後ひとりぼっちになる。2035年には、都市部では5人に2人が高齢単身世帯になる
 という予測がされているのに、身内に「保証人」がないと家も借りられないこの悪しき
 習慣はなくさないといけないだろう。    
・保証人なしでは、アパート一つ借りられないのが、今の日本の現状だ。保証人になって
 もらえる人がいない人はどうしたらいいのか。答えは簡単。民間賃貸住宅では借りられ
 ないことになる。公団の場合、身元保証人はとらない。その代わり、預貯金の残高証明
 書、納税証明書などを求められる。これはとても妥当だと思う。
・日本の制度は、すべてと言っていいくらい、強者保護の立場でできている。個人の所得
 税や消費税は上げても、法人税は下げる、税法にもそのことがよく出ているのではない
 か。 
・借り手は敷金、礼金、家賃を払う上に、まるで犯罪者のように縛りがある。これは日本
 の悪しき慣習で、国が国民を管理するのと構造が同じだ。家賃のとりはぐれはないか。
 変な人に借りられたら困る。トラブルがあったら困る。大家を守るために、身元保証人
 がいるのだ。何かあった時は、身元保証人に責任を取らせるために身元保証人という人
 質をとるのだ。
・最後の家となる介護施設や有料老人ホームに入るのも、保証人という壁が立ちはだかる。
 お金さえあればなんとかなると思っている方も多いだろうが、どっこい、お金があって
 もこれらの施設には入れない。 
・ひとり身で高齢の場合、身内の保証人を立てるのは非常に難しい。本人が高齢になるこ
 ろは、親も兄弟もいないのがふつうだ。お金のバックをかかえながら施設の前で立ち尽
 くす、悲しき高齢者の姿を容易に想像できる。 
・大家族の時代ならともかく、核家族、ひとり家族が主流に時代に、身内の保証人を求め
 るほうが本来、間違っていると思うが、現実の社会はそうなんで、事実を述べるしかな
 いのがつらいところだ。
・病院は何を患者に保証させたいのか。それは入院費や医療費の支払い保証、手術や治療
 に対する同意・死亡時の手続きや身元引受人である。もし、手術が失敗に終わって死亡
 したら遺体の引き取り手が必要だ。死ななくても病院から退院するのに人の手が必要だ。
 ひとり身の人を玄関に置き去りにするわけにはいかない。
・高齢の単身者は、時代がどんなに変わっても、身寄りのいない高齢者なのだから、救済
 が必要ということになる。収入、預貯金の額に関係なく、本来なら、どんなに安っぽい
 ところでもいいから、最低の住まいを与えられてしかるべきだと思うが、まあ、今の冷
 たい政治に言っても無理だろう。オスプレイの購入を控えれば、どれだけの人が助かる
 か。
・ひとり身の高齢者の前に立ちはだかるのが、介護施設や有料老人ホームの入所の際に要
 求される身元保証人だ。ほんとうに嫌になるが、死ぬまで「ひとり」では生きさせても
 らえないのが日本だ。なんて不自由な国なのかと絶叫したくなる。お金はあっても、身
 元保証人がいないことで、有料老人ホームなどに入所できなくて困っている人はたくさ
 んいる。
・これが日本の冷たい習慣だ。老いてひとりになり、介護施設のお世話になろうとしても、
 保証人のない人は拒絶されるのだ。2035年には都心部の5人に2人の高齢者が単独
 世帯になるというのに、そのうちのどれくらいの高齢者が保証人を立てられるというの
 だろうか。
・簡単に成年後見人と言うが、成年後見制度のことを熟知して答えているのか、はっきり
 言って疑問だ。成年後見人制度は成立したが、中身がまだ確立されていないのが現状だ。
・後見人と聞くと、自分の代わりに責任を持って、やってくれる人、と思われるかもしれ
 ないが、後見人の仕事というのは、財産管理をするだけで、身元保証をする仕事は含ま
 れていない。しかも、成年後見人の仕事が始まるのは、認知症などにより、本人の判断
 能力が落ちてきた時からで、頭がしっかりしているうちは、後見人と言えども何もでき
 ない。認知症が発症してはじめて、後見人が本人に代わって入所先を探すことになる。
・本人の財産管理をしている後見人は、本人の通帳から病院などへの支払額を引き出し、
 支払うのが仕事だ。つまり、自分が管理している他人の通帳から、自分で引き出すこと
 になる。もちろん、家庭裁判所に報告する義務はあるが、どこまで正確にするかは、後
 見人によることになる。  
・新聞などで取り上げられているが、昨今は使い込みをする弁護士も出ていて、社会問題
 になっている。弁護士だからといって、信用できるわけではないのだ。今後、ますます、
 後見人に関する問題は出てくると予測される。特に家族のいない高齢者は、仮に詐欺に
 あったとしても訴えてくれる人もいないので、闇に葬られることになる。
・ちなみに、法律上は、病院や施設に入る際に「保証人」がいなくても問題はなさそうだ
 が、実際には、保証人要求が当たり前になっているので、病院で保証人を要求された時
 に、「法律で定められていないので、私は保証人を立てません」と言えるのだが、果た
 して、言える度胸があるか。 
・この他者を立てないと身動きができない悪しき習慣を当たり前にしたのは、病院側が悪
 いのではなく、何も疑問を持たずに受け入れてきた私たちの側にも問題があると思う。
・日本人は権威に弱い。上から要求されると、素直に「はい」と従い、「しょうがない」
 と思う。そこで、「おかしいじゃないですか。どうしてですか」と聞く人が少ない。
・子供ではないのに、身内の保証人を立てろ?誰が決めたのかと言いたい。病院側の気持
 ちもわかる。治療費を踏み倒す患者もいるので、取りはぐれを防ぎたい気持ちはわかる。
 でも、それなら、保証人ではなく、治療費の前払いでいいのではないか。お金の取りは
ぐれが問題なら、いくらでも方法はあるはずだ。
・自分の家族を持たなかったひとりの人の唯一誇れることは、人に迷惑をかけずに生きて
 きたことだ。それが、最後の最後にきて、しかも重要な場面で、身内のサインがないと
 事が進まないというのは、あまりに悲しい。
・病院が保証人を要求する最大の理由は、治療費の取りはぐれを防ぐことである。身内の
 保証人を要求されたら、「ひとり者なので、身内はいない」とはっきりした口調で言う
 こと。「身内はいることはいるんですが、頼みたくないんです」などと、余計なことは
 言わないことが肝心だ。    

「ひとり」に群がる身元保証ビジネス
・家族に代わって、身元保証をやるところは、この20年間で100以上の民間事業者・
 法人が参入している。私が知る限りで大手と思えるところは、NPOりすシステム、
 NPOきずなの会、日本ライフ協会だ。
・法人が家族の代わりに行っているサービスは、大きく分けて次の3つだ。
 ・身元保証人を引き受ける
 ・生活支援
 ・葬送支援
・契約の進め方
 ・説明会に参加する→納得する
 ・会員として入会する→入会金や年会費を支払う
 ・必要なプランを選び指定の金額を支払う。葬送など死後に必要な費用を預託金として
  預ける。 
・費用について
 ・最初に100蔓延ぐらい必要で、その後、預託金として、100万〜200万円以上
  が普通のようだ。
・日本ライフ協会、高齢者預託金2.7憶円を流用(2016年1月)
 毎日新聞にすっぱ抜かれると同時に、いとも簡単に全理事が辞任したのにはびっくりさ
 せられた。そんな無責任なことってあるのか?これが国が認めた公益法人のありさまな
 のか。
・日本ライフ協会は、大坂地裁から民事再生手続きを続けることができないと判断され、
 これにより、破産が確実となったのだった。
 
悲惨な「老後ひとりぼっち」にならないために
・定年を迎えると、誰もが、人生は仕事で成功することでも、経済的に豊かな暮らしをす
 ることでもなく、老後を心穏やかに送れることだと気づかされるものだ。
・日本の男性はよく言えば照れ屋だが、意地悪な見方をすると、サービス精神のないつま
 らない人と言える。「愛している、なんて恥ずかしくて言えないが、心では愛している
 から伝わっているはずだ」という人がいるが、時代劇ではないのだから通用しない。
 もし言葉で相手を喜ばせるのが苦手なら、とっておきの方法がある。それは、サプライ
 ズをすることだ。家庭という日常の中に、サプライズで非日常を演出することだ。これ
 は女性には効く。日ごろ、いばっている妻でも、サプライズされたら、泣くかもしれな
 い。 
・普段は強がっている妻だが、本当は小心者で強くなんかない。愛してほしいだけなのだ。
 ただ、愛してほしいだけ。老後は長い。
・人間は本来、自己中心でわがままだから、家族は時々、重い鉛のように変化することも
 あるが、人間は社会で生きる動物なので、しがらみを捨てて、無人島で暮らすわけには
 いかない。人間が重荷であるにもかかわらず、人を求めるのが人間だ。
・友達の良さは、嫌なら「さよなら」できる点だ。そして、求めればいつからでも持つこ
 とができる。
・趣味を侮るなかれ。趣味はお互いの心の距離を近づける。まだ、老後ひとりぼっちにな
 るまでに時間があるので、焦らず、一生の友達を作りたい。職場の友達もいいものだが、
 リタイアすると終わってしまうことが多いので、退職して「ただの人」になっても崩壊
 しない趣味の友達を持つことを私はお勧めする。
・同じ趣味を持つ友達の心地よさに似ているのだが、同じ価値観を持つ友達も貴重だ。あ
 の人とは気が合わないと感じるのは、価値観が違うからだ。違う価値観の人の話を聞く
 のも、自分を成長させるうえでは大事だが、楽しい老後ひとりぼっちを前提に考える時、
 同じ価値観の友達ははずせない。
・男性は友達作りが苦手のようだが、それは、誰も関心がないのに、自分だけ掴んで離さ
 ないつまらないプライドがあるからだろう。肩書というお化けに付きまとわれ、ただの
 人を生きられない人になってはいけない。悲惨な老後ひとりぼっちにならないためには、
 早めに死ぬか、それとも、早く「ただの人」になるか、そのどっちかしかないだろう。
・妻に先立たれた男性の寂しそうなこと。まるで、突然、植物が枯れるように、精気を失
 い地面を向いて暮らすようになる。昨日までシャキッとしていた人でもだ。それは、妻
 しか頼る人がいない狭い人間関係の中で、生きてきたからではないだろうか。
・シングル女性の皆さん、申し訳ございませんが、地域デビューはお勧めできません。自
 分に合わないことをすると体を壊すので、悲惨な老後ひとりぼっちにならないためにも
 無理せず、開き直り、「地域を頼らない」という覚悟を持つのも一つの選択ではないか
 と思う。私はその覚悟を決めてから、地域の集まりには行かなくても不安がなくなった。
 自分の地域は自分で作る。そして、私は再び地域のないマンション暮らしに戻ろうとし
 ている。
・日本には、女性を異性としか捉えない男性が多い。偉そうで申し訳ないが、このタイプ
 の男性は、寂しい「老後ひとりぼっち」になりかねないので、今から心したほうがいい
 だろう。
・男性は、妻と死に別れると、すぎに次の妻を探そうとする。別に非難する気はないが、
 そういう老後対策しか浮かばないのかしらと皮肉の一つも言いたくなる。
・これまでの時代は、定年退職しても、そこそこ豊かな暮らしが保障されていたので、新
 しい妻も来てくれたが、これからはそういうわけにはいかないだろう。日本経済が右肩
 下がりのこの時代は、自分の世話は自分でするのが基本になってくるはずだ。
・中高年の男性を悪く言う気はないが、いつまでも「男」捨てきれず、ただの人になれな
 い諦めの悪い人が多いのには驚かされる。はっきり言って、男女共に、60を過ぎたら、
 全員が中性だ。そのことがわかっていない中高年男性が多すぎる。実は、言葉には出さ
 ないが、女性たちは男が抜けきらない男性にうんざりしているのである。
・私たちはここで大きな声で言いたい。「60過ぎたら、恋はないのよ」。60からは、
 恋の相手ではなく、同志なのだ。はっきり言うが、「男」にこだわる男は女性から嫌わ
 れる。性別を捨てた男性は、女性に好かれる。ここをよく学んでほしい。
・「灰になるまで、恋はできる」とか言っている人がいるが、そういう人は、勝手に灰に
 なってください。老後ひとりぼっちを楽しく生きようという男性は、恋ではなく、同志
 を求めてほしい。老いらくの恋を否定するわけではないが、人間も果物と同じように、
 食べごろの時期というのがある。  
・仕事をしていれば尊敬される時代は終わった。これから老後に向けて、身につけておき
 たいのは、生きていく上での基本的なことだ。その第1が炊事だ。家事を侮ってはいけ
 ない。部屋が汚くても死なないなどと豪語する人がいるが、そういう人はゴキブリと仲
 良く暮らせばいい。そういう暮らしをする自由もあるのだから。寂しい老後ひとりぼっ
 ちの人の典型的な暮らし方は、掃除をしない、汚いである。男性は特に、ひとりになる
 とだらしなく、かまわない生活になりがちなので、注意が必要だ。
・男性はひとりになってしまうと、何もしなくなる。それは、それまでの人に面倒をみて
 もらっていたからだ。家族を失ってから習慣を変えるのは難しいので、今のうちに、自
 分で炊事する。自分で洗濯する、自分で掃除する人になっておきたい。そうすれば、老
 後ひとりぼっちになったとしても、寂しいどころか、掃除しまくり、洗いまくり、作り
 まくりの楽しい毎日が待っているので、楽しみにさえなる。
・個人事業主には厚生年金がないので、スズメの涙程度の国民年金しかもらえない。厚生
 年金組と国民年金組の差の大きさに、受給する年齢になると愕然とさせられる。会社員
 と違い個人事業主には定年がないので、いつまでも働けると思われるが、いつまでも仕
 事があるという保証はない。いつまでも働けることと、いつまでも稼げることはイコー
 ルではないのだ。
・よく、ひとりの人は家で倒れても、救急車を呼んでくれる人がいないので不安だと言う
 が、救急車を呼んでくれる人がいない幸せもある。もし、家族がいたら、あわてて救急
 車を呼ぶだろう。そして、やってほしくない延命措置をとるだろう。いくら、延命措置
 はしないとか家族に話しておいても、その場になると、家族も動揺し「お願いします」
 ということになりやすい。
・もし、ひとりだったら、倒れてそのままになっていれば、気を失って自然にあの世に逝
 ける可能性が高い。病院に運ばれて、あれこれやられることを考えると、いい死に方で
 はないのか。
・孤独死、孤独死。などという言葉に振り回されてはいけない。大事なのは、ひとりで死
 ぬ覚悟を持つことしかないように思う。
・もし、寂しい老後ひとりぼっちの人生を送りたくないと心から思うなら、ぜひ、見た目
 を変えることをお勧めしたい。若い人は服装に敏感だが、ひとり暮らしの中高年になる
 と、あまり服装にかまわない人が多いように感じる。 
・見た目は中身より大事。まずは、寂しい人に見える格好をしないことだ。人生を楽しん
 でいる人に見える格好をすること。これが大事だ。
・もし、あなたが死ぬほど寂しくて毎日死にたくなっているとしても、茶系やグレーの服
 装で外に出ないことだ。グレーやベージュを身につけている人は、シックなお洒落をし
 ているつもりかもしれないが、中高年の場合、心の色だと言える。
・男性にお勧めの色は、白。まずは白。真っ白でアイロンのかかった白をベースにしたシ
 ャツ。パンツはともかくシャツや上着は、茶系(土の色)やグレー(コンクリートの色)
 を避けること。