日本経済の真相  :高橋洋一

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筆者は「円安信仰論者」のひとりのようだ。日本で経済不況が続いているのは、円高が原
因であり、円安にさえすれば日本経済は復活し、すべての問題は解決する。円安にするに
は、日銀が「円」を刷りまくって市中に大量に流せば円安になる、との理論である。
現在の安倍首相も、同様の理論に基づき、国を挙げての「円安政策」に大きく舵を切った。
早くも日本の為替市場や株式市場はそれに反応し、為替は79円/ドルぐらいだったのが、
最近では100円/ドル近くまで約27%円安が進み、株価も9000円以下だったもの
が、最近では13500円ぐらいと約50%上昇している。
いまのところ、この円安政策は成功していると言っていいのだろう。
問題は、実体経済がこれと同じように成長していくかどうかである。また、円安の副作用
が、どの程度現れるかである。今のところ、そのどちらも明確に現れたという確認は、で
きていないというところだろうか。
そしてさらに問題なのは、この日本の円安政策が、世界的な通貨安戦争を引き起こすので
はないか、という懸念であろう。米国は、量的金融緩和政策QE3を、さらに継続するこ
とを決めたようだ。つまり、米国もドルを刷りまくっているのだ。これに対抗して、同様
の金融緩和政策を世界各国で推し進めることになりかねない。そうなれば、世界中で通貨
が溢れ、最後には、世界通貨安恐慌を引き起こしてしまう恐れが出てくるのではなかろう
か。
今の安倍首相を見ていると、危うさを感じる。安倍首相は、かつて自身の病気で、首相を
突然辞任するという苦い経験を持っている。そのことが、大きなトラウマとなっているの
ではないのか。今回の首相再任で、「ロケットスタート」と称して、矢継ぎ早にいろいろ
な政策を打ち出しているが、どうも肩に力が入りすぎているのではないかという感じがし
てならない。
円安政策で、一挙に問題の解決を図ろうとして、すべてが安倍首相の思惑どおり成功すれ
ばいいが、もしうまくいかず失敗に終われば、日本は破局に向かうような気がしてならな
い。こんな心配をするのは、私だけなのだろうか。

これが日本経済の真相だ!
・円高について「欧州危機によって消去法的に日本が買われている」といった説明がされ
 ることがあるが、実は為替相場はもっとシンプルな理論で決まっている。どういうとき
 に円高になるか。それは、「マネタリーベース」によって説明がつく。マネタリーバー
 スとは、世の中に出回っているお金と、日銀当座預金残高を合計した額を示す。簡単に
 言えば「お金の量」である。
・多いほうの通貨は希少価値がないため安く、少ないほうの通貨は希少価値が出て高くな
 る。大まかに言えば、日本の円の量を米国のドルの量で割ると、為替レートが計算でき
 る。
・円高というのは、円が相対的にドルより少ない状態である。2007年の世界金融危機
 以降、米国はドルを増やしたが、日本は円をほとんどふやしていない。円高を是正した
 いのなら、円を刷って増やせばいいのだ。きわめて単純な話であり、円高の是正が難し
 いというのは嘘なのである。 
・円高になるとGDPが減り、株価は下がるが、120円程度まで円が安くなるとGDP
 が増え株価は上昇する。そういった関係性を理解していれば、為替を安くしGDPを増
 やし、株価を上昇させることもできる。
・円安になれば輸入企業は大変だが、国際競争にさらされている輸出企業は生産性が高く、
 輸入企業より輸出企業に恩恵を与えたほうが日本全体の経済効果は大きくなる。
・日銀にお金を刷らせれば、円高、株価、税収と、いろいろな問題がいい方向に向かい、
 いい循環が生まれるということだ。
・円に対してモノの量が多ければ、モノに希少価値がないということだから、モノの価値
 は低くなる。逆に、お金が少ないから価値が高くなる。これがデフレという状態だ。円
 高も、デフレも、円が少ないことによる経済現象だということだ。 
・経済成長を続けるために子どもを増やそうという議論もあるが、極論すれば、増えても
 増えなくてもどちらでもいい。個人個人の豊かさは、GDPの大きさではなく、1人当
 たりのGDPに反映されるのだ。人口を増やすことも、人口増加によってGDPが増え
 ることもそれほど重要ではない。 
・国内景気をどう回復させるか。簡単だ。円を安くすればいい。前の安倍政権時代は日経
 平均株価が1万8000円に上昇した。これは円を120円にしたからである。 
・2012年初めの円相場は77円台だが、これを100円程度にすれば、おそらく日経
 平均は1万3000〜1万5000円の間に落ち着くだろう。マネタリーベースでは、
 米ドルが約2兆ドルあるので、円を200兆円まで増やせば、為替は1ドル100円程
 度になる。60兆円程度お金を刷ればよく、難しいことではない。
・日本社会は物事を分けて考えることをせず、何かやると「そいつのすべてが悪い」とい
 う言い方になる。金メダリストが過ちを犯しても、過ちと金メダルの偉業とは関係がな
 いはずだが、すべてを否定するような風潮がある。
・会社を私物化しようと、消費者にいい商品を提供し、会社の業績を上げ、社員を幸せに
 していれば問題ない。一族経営をしたいなら、株式市場に上場して公開会社にしてはい
 けない。上場するというのは、民主主義的な経営手法を受け入れる約束をすることでも
 ある。私物化だという文句を言われたくないなら、株式を非公開にすればいい。あのス
 ティーブ・ジョブズだって独断と専行で会社を動かしていた。常識的に考えればあんな
 経営はない。それでも結果がよくければ勝ちだ。嫌だったら従業員は辞めればいいし、
 消費者はその会社の製品を買わなければいい。 
・マスコミは企業や役所の発言をそのまま報道する傾向があるが、とくに電力会社はテレ
 ビ局や新聞社にとっても巨大なスポンサーであり、原発や電力会社を徹底的に批判する
 のは都合が悪い。 
・ほかの特殊法人は、補助金をもらう代わりに天下りを受け入れているが、電力会社は独
 占利潤を確保するために学者や役人を取り込んでいる。 
・電力会社が負担する補助金や天下りは独占利潤へのお礼だ。そしてその結果が「高い電
 力料金」である。 

これが世界経済の真相だ!
・TPPは合コンと同じで、参加しなければ損である。
・価格が安くなると生産者は大変だが消費者は喜び、消費者の経済的メリットを合計すれ
 ば、生産者のマイナスより大きくなる。
・自由貿易は、マイナスが生じた人にお金を配ってもプラスが残るからこそ成り立つので
 あり、貿易自由化のプラス部分をどう再販分するかは政治の仕事である。きちんと考え
 れば、国内の誰もが損をしない状況をつくることもできる。
・ギリシャは破綻する。これは時間の問題だ。経済的な見地からすれば、ギリシャをユー
 ロから離脱させたほうが、ギリシャにとっても、ユーロにとってもハッピーである。 
・他人任せの金融政策で、一国の経済をうまく運営するのは難しい。共通通貨制度には市
 場が広がるというメリットがあるが、金融政策の自由度を失うというデメリットもある
 のだ。 
・ギリシャは過去の200年で100回暗いデフォルトをしてきた。200年にユーロに
 加盟したあと、10年以上も破綻しなかったのがむしろ不思議で仕方ない。この先もギ
 リシャ危機は何回でも起こる。 
・ヨーロッパ危機の本質は、もっと単純だ。破綻常習国のギリシャがユーロに加盟し、し
 かも加盟時に財政状況で嘘をついた。それなのに、欧州金融機関は破綻常習国であった
 ことを忘れて、無防備にギリシャに貸し込んだことだ。アテネオリンピックなどで一時
 は景気がよかったが、やはり破綻しかけて慌てているわけだ。 
・「中国はバブルの状態にある」と言う人も多いが、「はじけたときに初めてバブルとわ
 かる」のがバブルである。場合によってはバブルが続くかもしれないし、そうではない
 かもしれない。ただ、もうそろそろバブルがはじけると思っている人が多いのは事実だ。

これが国家財政の真相だ!
・日本には1000兆円近い借金があるが、膨大な資産もあり、その額は650兆円にも
 及ぶ。借金1000兆円に対して650兆円の資産があるということは、差額は約35
 0兆円である。この350兆円は、対GDP比で見た場合、世界的に低い数字とは言え
 ないものの、突出して高いわけでもない。
・国債のCDSの契約料(保険料)にも破綻の可能性が反映されており、近いうちに財政
 破綻するなら保険料はかなり高いはずだ。しかし、日本国債の保険料率は1.4%程度
 と、かなり低水準である。日本国債のデフォルトは70年に1度あるかどうかの確率と
 みられているわけだ。
・ちなみにギリシャの保険料は90%以上で、いかに破綻に近い状態であるかがわかる。
 もう保険がきかないという状態だ。日本は、フランス(2.2%)より破綻する確率が
 低く、ドイツや英国(1%)と似たり寄ったり。世界で低いほうに属している。
・今は超低金利であり、歴史的に考えれば金利はいつか上がる。1%程度の上昇は十分あ
 り得ることで、国債価格が10%程度下がることは特別なことではない。金利上昇は将
 来的には当然、起きてくる話であり、先を考えれば貸付部門を強化しておけばいいだけ
 のことだ。  
・セオリーを無視して増税すれば、日本が震災のショックから立ち直るのは、さらに遅く
 なる。被災地で経済活動が元に戻るには時間がかかる以上、被災していない地域が活発
 な経済活動で被災地を支援する必要があるが、増税はその妨げになるからだ。
・日銀がお金を刷ると、世の中に出回るお金の量が増える。お金が増えると経済活動が活
 発になって被災地には好影響がある。お金を増やせばインフレになる心配もあるが、日
 本ではデフレが続いており、インフレになるという弊害は少ない。お金の量を増やすこ
 とは円高の解消にもつながる。  
・ほかの国はリーマン・ショック以後、お金を刷っているが、日本だけはそれをしていな
 いため、円高になって経済的ダメージを受けている。円高を是正すれば、日本経済をリ
 ーマン・ショック以前の状態に戻すぐらいはできる。ただし、ほかの国が同じように自
 国の通貨を増やす経済政策をとれば効果はなくなるため、日本経済を成長させるための
 決定打にはならない。 
・産業政策で日本が成長したというのは、官僚が自分たちを持ち上げたいがために言って
 いる話で、今の研究では、ほとんどの場合、官僚のやったことは意味がなかった、もし
 くは有害だったと考えられている。 
・2008年に起きた金融危機は、サブプライムローン関連の債券を証券化した金融商品
 に最上級の「AAA」という格付けがついており、それがわずか数日で投資不適格とい
 うレベルまで格下げされたことで市場が大混乱したのが発端である。このことからも、
 格付け会社の意見が当てにならないことは明らかだ。 

これが社会保障の真相だ!
・公的年金は積立方式ではなく「賦課方式」であることをご存知だろうか。現役世代の払
 った保険料は、自分が将来受け取る分として積み立てられているわけではなく、ほとん
 ど(9割程度)はそのまま年金給付に使われている。賦課方式は積立金はほとんど必要
 がなく、積立金が枯渇しても少しだけ給付を減額すれば、すぐに年金財政が破綻するわ
 けではない。
・日本では、国民年金未納率の高さが話題になっているが、問題はそれだけではない。法
 人税を納めるのは黒字の企業に限られるため、国税庁は黒字法人だけを押さえていれば
 いい。 対して日本年金機構は、黒字か赤字かは関係ないため、把握しておくべき法人
 には赤字法人も含まれる。本来であれば日本年金機構のほうが押さえるべき法人の数が
 多いはずだが、国税庁が把握している法人280万件に対して、日本年金機構の把握は
 200万件にすぎないのである。言い換えれば、日本年金機構は多くの保険料を取り逃
 がしていることになる。中には従業員の給与から保険料を天引きしていながら、日本年
 金機構に納めていない法人もあるということだ。天引きされている労働者からすれば、
 年金が受給できると思っていたのに額が少ない、加入機関が足りないとなり、気の毒で
 ある。
・海外進出の魅力は安い労働力だとされるが、大きいのは円高で、海外に工場をつくって
 現地の労働者を雇ったほうがコストを抑えられる。韓国や中国からすれば、日本という
 外資がやってきて雇用してくれるのだからこんなに楽なことはなく、円高大歓迎である。 
・デフレを脱却して物価上昇率をプラスにすることが、失業率を下げることになる。デフ
 レを脱却するために必要なのは、お金を刷ることであり、お金の量が増えれば円高も解
 消される。 
・先進国でデフレに陥っているのは、日本だけである。
・一般に経済成長をすると格差が拡大するが、日本の場合は経済成長を要因としない格差
 拡大であり、普通の格差拡大とは性質が異なる。経済成長による格差拡大では最下層の
 人の所得も上がるため、格差は気にならないことが多い。人には、自分より豊かな人を
 うらやむ気持ちもあるが、それ以上に、過去の自分と今の自分を比べるからである。昨
 日より豊かになったと思えば、それなりに満足し、不満は少なくなる。
・自分が過去より豊かになっていれば満足するし、明日という希望を持てる。問題の本質
 は最下層の人の所得が下げり続けていることであり、彼らは希望が持てなくなってしま
 う。今の日本はそういう状態にある。気の毒である。
・まず最下層の所得を上げる。格差の是正よりそっちのほうが不満は減る。
・景気を悪化させる愚かな政策を続けながら、不正受給が多いなどと話しているのはおか
 しい。はっきり言えば、不正受給など、いつの時代にもある。
・格差拡大も、生活保護受給者数の増加も、デフレが原因だ。考えるべきは経済を成長さ
 せること。  

これが日本政治と報道の真相だ!
・生え抜きの事務次官は、自分たちの職員と組織を守るほうに意識が働く。このことから
 考えれば、100%生え抜きというのは、役所の人事をほかの人に触らせないための仕
 組みと言える。これが官僚主導になる要因で、これでは大臣は自分のやりたいことはで
 きない。
・大臣が誰を連れていくかは非常に重要であり、連れていけるようなブレーンがいない人
 は大臣になってはいけない。大臣をお飾りにして、いなくなるのを待っているような人
 ばかりをしたがえても、仕事などできるわけがない。
・遅々として進まない地方分権だが国際的な基準で見れば、地方分権はごくごく当たり前
 の姿である。海外の先進国には、地方にいろいろと指図する総務省に相当する中央官庁
 はまずない。
・身の回りでできることは市町村、市町村で難しければ都道府県、それでもできなければ
 国、とすることが望ましい。
・デフレの状態で消費税増税など愚の骨頂であり、日本経済を疲弊させる愚策でしかない。
・世界の基準からすれば日本お新聞は十分なレベルには達しておらず、ジャーナリズムの
 流儀もわきまえていない。そこから得られる情報を信じ込んでいるというのが日本の国
 民である。

2012年以降をどう生きるか?
・今は新聞に載らない情報がネットで発信されていることも多く、ネット経由の情報が持
 つ役割は徐々に大きくなっている。信頼するニュースソース、信頼できる情報発信者を
 見つけることが重要だ。 
・隠し球が無駄になることもあるが、投資は10本に1本当たれば御の字。無駄になるこ
 とがわかっていても、用意をしておかないとチャンスは生かせない。10発でも20
 発でも用意して、そのうち1発当たったら勝ちだ。
・為替レートの日々の動きには理屈がなく、儲かる確率は五分五分である。需給関係うん
 ぬんと解説する人もいるが、すべてあとづけだ。 
・書籍の印税率を10%とすれば、1000円の本なら1冊あたりの印税は100円、1
 万部売れても100万円。本当に何百万円も儲かられるなら、本を書かずに自分で儲け
 るだろう。 
・お金に換算しづらいが、知的な話を楽しんで、自分で考えるという習慣をつけたほうが、
 はるかに人生を豊かにできる。