国債・非常事態宣言    :松田千恵子

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先般、米国の格付け会社が、日本の国債格付けを「AA+」から「A」へと、一気に二段
階も引き下げた。いよいよ日本国債暴落の日「Xデー」が、目前に迫ってきたという気が
する。まさに、日本国債の非常事態だ。
何かをきっかけに、日本国債の投げ売りが始まる。一旦投げ売りが始まると、もう止まら
ない。少しでも高いうちに売ろうと、売りが殺到する。売りが売りを呼び、さらに国債の
価格が激落する。
国債が暴落すれば、円も暴落する。株価も暴落する。トリプル暴落が起きるのではと、思
われている。それによって、国の財政も一気に悪化し、それに対処するために、急激な増
税が行われる。それでも追いつかず、社会保障や医療、教育などの公共サービスは、どん
どん悪化していくであろう。
日本はすでに、ソフトランディングできる時期を逸していると言われる。もう残された道
ハードランディングしかない。ハードランディング、それは、国が借金を踏み倒すこ
とだ。それは過去にも行われている。
これからは、国や組織に頼ることはできない。当たり前のことであるが、自力て生きてい
くしかない世の中になるであろう。そんな時代が刻々と迫ってきている。

はじめに
・「決断できない」「実行できない」「変革できない」という病はまさに危機的といえま
 す。3.11の重すぎる代償として、我々はこの病を克服する糸口をつかんだかに思い
 ました。すべてが失われたのであれば、ゼロからまた始めることができるのではないか、
 できあがってしまった社会で既得権益や抵抗勢力に妨げられ重症化する病から立ち直る
 ことができるのではないか。日本全体で取り組むのは難しくても、まずは東北から、東
 北のためにならできるのではないか。
 
国債と格付けの正しい関係
・日本国が現在借りているお金の額は、国債の残高として見ると約668兆円です。とて
 も大きな金額です。本当はもっと大きいのですが。
・日本の税収は年間約41兆円です。これをすべて借金の返済に充てたとしても、668
 兆円の借金を返すとしたら約16年かかります。
・ちなみに、支出のほうは年間約92兆円にものぼっています。収入の倍以上も支出があ
 るということです。
・「もし日本がひとつのいえだったら」、月収40万円の会計が、月々37万円の借金を
 して、77万円の生活費を支払っているとされています。とんでもない浪費ぶりですね。
 これが毎年続いて借金の額は6661万円。
・歳出の中身は様々ですが、最も大きなものは「社会保障費」で、全体の31.1%を占め
 ます。これは、生活保護費、老人福祉や児童保護などにあてられる社会福祉費、国民年
 金や国民健康保険費、保健衛生対策費、失業対策費などのことです。
・2011年3月には、未曾有有の大危機が日本を襲いました。東日本大震災からの復興
 は、日本が喫緊に手を付けなければならない最優先課題です。ここでお金をケチッたり
 している場合ではありません。しかし、歳出の観点から見ると頭の痛い問題です。ただ
 でさえ家計は火の車なのに、すぐに出費しなければならない多額の費用が発生してしま
 ったのですから。
・日本の法人税は他国と比較してすでに高いので、法人税を上げたりしたら新しく日本に
 入ってくる企業がいなくなってしまうなどとも言われています。しかし、本当にそうな
 のかはやや怪しいところです。企業が日本脱出を図るのは、指導力のない政府に見切り
 をつけたからかもしれません。今回の震災でひとつの地域に集中して事業を行なうリス
 クに気づき、海外へ分散を図る動きもあります。少しくらい法人税を下げたところで、
 それに魅力を感じで外資系企業が続々と日本に入ってくるはずもありません。
・国債を買っている、すなわち日本国政府にせっせとお金を貸してあげている三大期間は、
 ゆうちょ銀行を含む銀行、保健、年金です。
・皆さんのお金は、預金として金融機関に預けようが、年金として積み立てようが、その
 行きつく先は、「国債購入」に充てられているのです。もし、国債に何かあったらどう
 なるでしょう。ある日、国が借金を払わない、といったら?銀行や保険、年金が買って
 いる国債が紙切れになってしまったら?皆さんのお金はたぶん戻っては来ません。
・日本の状況というのは世界の各国に比べてどのくらいの水準にあるのでしょう。実は主
 要先進国の中で断トツのワースト・ワンです。おまけに、この状況はさらに悪くなって
 いくのでは、と予測されています。 
・財政危機が実際に火を噴いているギリシャなどよりも、数字だけみれば日本のほうが悪
 いのです。 
・今の日本で何が最も怖いかというと、金利の上昇なのです。固定金利の国債に関しては、
 いちどきにすべての国債の金利が上がるということはありませんが、金利水準が上がれ
 ば毎年新たに発行される国債の金利はその影響をまともに受けます。 
・インフレになると、金利が上がり、借金と預金は目減りするということです。もし、中
 途半端にインフレになると、金利が上がる影響が大きいですから国債費のうちの金利支
 払い額は莫大なものになり、国家財政を圧迫します。その影響を緩和するには、もっと
 極端なインフレにしてしまえばいいわけですが、そうすると国の借金はほぼ棒引きにな
 る一方で、あなたの預金もほぼ消えてなくなります。
・日本の問題は、すべての政党が「大きな政府」党のようになり、しかも高い福祉を低い
 負担で実現できるかのような幻想をばらまいてきたところにあります。実際はそんな
 ことはできません。お金は入って来るだけしか出せませんし、それ以上に使おうとすれ
 ば借金を膨らませるしかありません。そして、まさにそれを行ってしまったのが近年の
 日本お姿なのです。
・消費税を1%上げると約2.4兆円の税収増になるといわれています。10%上げれば
 約24兆円。実際にはこれではまだまだ日本の財政状況を良くするには足りないのです
 が、いずれにしてもここまで膨張させた借金を返すためには、国民は重税にあげくしか
 ない、ということです。でも、こんなに借金をしてほしいと、本当に国民は望んでいた
 のでしょうか。高速道路の無料化や、高校無償化などの「高サービス」って、本当に税
 金を上げてまでもやってほしかったものなのでしょうか。
・高サービスは提供してほしいけれども高負担は嫌、というのは成り立たないのですよね。
 いたずらに高サービスをばらまいてきた政府の責任は大きいですが、その因果関係を見
 ようとしない国民の側にも今の事態を引き起こすに至った責任があるような気がします。
・国や地方が負っている債務は約1156兆円と、すでに1000兆円を超えています。
 これでは、よく言われる「日本医は金融資産が1400兆円あるから大丈夫だ」という、
 その金額と似たり寄ったりのところまできてしまいます。このまま借金が増えていけば、
 1400兆円の金融資産額と、公的な借金の額が逆転するのもそう遠い日ではありませ
 ん。その”X-Day”は2016年になっていますが、東日本大震災の影響でこの予測は
 さらに早まるかもしれません。 
・現在国債の問題が深刻化しているギリシャやアイルランドなどでは、自国での消化でき
 る国債はせいぜい2〜3割程度で、残りはすべて海外投資家が買っています。より高い
 利潤を求めて一瞬にして世界を駆け巡るタイプのお金を持っている人々です。 
 ギリシャがまずい、となればさっと手を引きます。
・そもそも、日本国民の金融資産は国債を買うためにあるわけではないのですから、金融
 資産がたくさんあるから大丈夫ということ自体、相当おかしな議論です。
・日本国民お金融資産をあてにして、どんどん国債を増やし続けていくのは極めて危険だ
 ということです。国の借金が家計の金融資産を上回るようになれば、いつかは海外の投
 資家に国債を買ってもらわなければなりません。すでに、中国は2005年以来、6年
 連続で日本の長期国債を最も多く保有している海外投資家です。
・中国が日本の国債を多く保有するようになったら、それを「売ろうかな」といっただけ
 で日本経済に大きな打撃を与えることができます。
・日本は年以降、対外純資産世界一を続けており、その残高のピークは2001年だった
 ものの、その後も横ばいながら高水準を維持しています。
・日本人が海外の株を多く買い、外国人が日本の株をそれほど買っていないということは、
 それだけ日本の株に魅力がないということにもなりませんか。お金があるかどうかの問
 題ではなく、日本人がお金を持っていても、それを日本株ではなく外国の株に投資して
 いるということですし、外国人投資家は日本の株にあまり興味がないという意味にもと
 れるのです。
・輸出企業は、今後しばらくは日本のために税金をせっせと納めてくれるかもしれません。
 しかし、それだけに依拠していては日本の経済は成り立たなくなってきます 。国内で
 元気に活動して税金を納めてくれる起業を増やし、さらにその活動が成長軌道を描いて
 くれないと、日本の財政が健康を取り戻すのは難しい状況なのです。
 
国債暴落のシナリオ
・格付けが表すのはおおよその信用リスクの程度を占めす「しるし」であって、完璧かつ
 客観的に信用リスクの精密な内容を指し示している定量的指標ではありません。
・日本では債券市場がさほど発達していないので実感がないかもしれませんが、格付けが
 下がるとお金を借りるときの金利が上がります。
・多くの資金が成長政策ではなく金利支払いに向けられてしまうことで、格下げは成長の
 足を引っ張る要因にもなります。経済が滞ってしまえば、投資や雇用にも影響すること
 でしょう。
・実際にはまだ暴落すべき確たる要素が発生していないとしても、市場で売買している多
 くの人々が「暴落するのではないか」という大きな懸念を持って動いたとすると、それ
 が原因となってみんなが雪崩を打って同じ方向に殺到し、結局のところ暴落が自己実現
 してしまうということが起こります。特に、悪循環を恐れる債権者が多くいる債券市場
 においてはなおのことです。
・格付けの低下は、こうした投資家の動きを誘発する可能性があります。すでに日本国債
 暴落という予測を織り込んで、空売りして儲ける態勢を整えている投資家もいると申し
 上げましたが、格付けはこうした投資家が動くにあたってのひとつの目安にもなりえま
 す。格付けが下がったところを見越して売りを仕掛ければ、市場が反応して連鎖的な売
 りを招き、さらに儲けることもできます。
・メガバンクが保有する国債の平均残存期間は、3年前には2年超だったのが、現在では
 1年超まで短くなってきています。これ以上短くするのは難しいというところまで来て
 いるわけです。
・今のところ、貸し出す先もないので、国内の銀行で国債の保有が増えてしまったようで
 す。2011年6月末の保有残高は過去最高水準の約154兆円に達し、総資産に占め
 る割合も国内銀行平均で19%になっています。実は20年前は3%台でした。
・すでに国債の売却といった動きは徐々に見え隠れするようになってきています。
・金融機関が国債を売ればそれが長期金利上昇につながり、国債の価格下落につながる。
・日本の年金基金などは、これから高齢者の増加に伴い、保有資産を売却して年金の支払
 いに充てていかなければなりません。したがって、現在大量に保有している国債を徐々
 に売却していく、という方向に向かうでしょう。国債の売却圧力というのは相当強まっ
 ているといわざるを得ません。格下げが起きれば、こうした圧力が顕在化することが十
 分に考えられます。
・日本国債は、今はこの水準を充分に維持していますが、もしシングルA格などに落ちる
 と話は変わってきます。AA格とA格の扱いの差は大きいのです。これがBBB格まで
 落ちると大変です。国のおひざ元である独立行政法人などでさえ、国債が買えなくなっ
 てしまいます。A格居城の商品でなければ運用してはいけないといった基準を設けてい
 るところも多いからです。
・こうした格付け会社は何を憂慮しているのでしょうか。実は、ここにきて最も明確に不
 安視されているのは、政府の管理能力です。日本政府は、目標はたてているものの実現
 できりかどうか怪しいといっているのです。
・日本の状況は、たとえていえば、悪徳高利貸しにお金を借りたら一瞬でアウトだけれど
 も、親のすねをかじっている分には何とかなる、という感じでしょうか。
・政治家は常に耳に心地よいことをいいがちです。「税金は上げません」し、「社会保障
 は潤沢に」行ない、「財政規律を保って」「経済成長を実現」します、と。これがいか
 に無理なことかおわかりいただけているかと思います。こんな八方美人の生ぬるいこと
 を続けてきたがゆえに、国の借金はここまで膨らんでしまったのです。
・おいしい話はこの世にそうは転がっていないのに、楽をして果実だけをむさぼろうとし
 た姿が透けて見えてしまうのです。手厚い年金を求め、安い税金を望み、潤沢な補助金
 を期待し、リスクを取ることを避けてきたわれわれの姿と、どこか重なるところはない
 でしょうか。
・多くの国民の声は無視されました。「国土の均衡ある発展」などと平等を重視するあま
 り、なににでもどこにでもばらまきを行なう政治が当たり前になってしまい、お金ばか
 りかかる一方で、ひたすら国に依存する体質も生まれました。
・そうこうしているうちに、社会全体が成熟化し、高齢化してきます。年を取れば誰しも
 守りに入ることが多くなります。なかなかリスクを取れなくなってきますし、築いたも
 のを失いたくないという気持ちも強くなります。また、いったん出来上がってしまった
 社会では、規則や決まり事ばかりがやたらと細かくなり、ただでさえ守りに入ってき
 た人が多い中ではそれが過度に守られ、ちょっと外れたことをすれば出る杭として打た
 れてしまいます。まだ何も築いていない若者でさえも、あまり何も考えずにじっとして
 いよう、という雰囲気に染まります。
・すでに日本の成長させてきた社会の仕組みというのは機能しなくなっているのに、それ
 を変えるだけの力が出てこないことで、閉塞感がこの上なく高まります。本当は、この
 閉塞感を打破してくれることを、国民は民主党政権に期待したのでしょうね。しかし、
 実際には「打破」以前の問題として、そもそも政治にも経済にも素人だったと露呈して
 しまっているのが現在の状況といえましょう。
・日本国の財政を企業にたとえれば、まさに倒産寸前、ということができます。不況でモ
 ノは売れず、入ってくるお金はどんどん減るばかり、一方で借金は雪だるま式に膨れ上
 がって、金利支払いをするのもやっとです。今のところ昔から親密な銀行と物言わぬ株
 主が何とか文句もいわずに支えてくれていますが、彼らにももうそれほど余裕はありま
 せん。
・企業や事業を再生するとき、考える順番は決まっています。まずは、「再生させる価値
 があるか」を十分見極めることです。ここで「ない」という結論がでてしまったら、そ
 もそも事業再生する意味はありません。無理して存続するよりも、会社をたたんで社員
 を新しい世界に送り出したほうが社会に価値をもたらせるからです。
・これから先、われわらはしばらく「鎮火」の時期を過ごさなければならないでしょう。
 しかし、それは今行われているように増税一本やりの話ではありません。
・日本国や日本国民は別に借金を返すために存在しているのではないわけですから、国債
 を返すことだけを目的にこれらを考えると、今なされている議論のように「目的は消費
 税増税」などといった主客転倒したものになりがちです。そうではなく、これまで使っ
 てきた社会の仕組みがまるごと金属疲労を起こして使えなくなっているのだから、次の
 世代に役立つような新しい社会の仕組みを作ろう、と目線を高くしたものです。
・本当に「大きな政府」が望ましいと考えるなら相当の税金負担を甘受するべきしょう。
 また、税金負担という税率を上げることばかりが問題になりますが、取り方の問題も大
 きいのではないでしょうか。
・重要なのは「世の中の仕組みを時代に合わせて変えるべき時に来ているのだから、聖域
 を設けずに一度フラットに考えてみるべき」ということです。入ってくるお金をひとつ
 残らず見直すのは「事業再生」の基本です。また、納税者をきちんと把握して脱税に厳
 罰で臨むことや、給与天引きに任せずに税金支払いを個人で行ない、税への意識を変え
 ることも必要でしょう。そもそも「納税」という言葉も見直したほうがいいのではない
 でしょうか。
・どこにでも何にでもばらまくのではなく、優先順位を付けて配分を行なうといった大き
 な転換が必要です。「選択と集中」は営利企業の専売特許ではありません。
・リスクマネジメントの基本は、「時間」「情報」「感性」ですが、今の状況では時間の
 感覚と、情報をうまく読み取る能力と、被災地の人が今すぐに資金を必要としているそ
 の痛みを分かち合う完成のいずれも決定的に不足しているようです。震災直後には、一
 日も早く復興国債を発行して資金の確保を、という論調だったのが、国債の発行は簡単
 にはできない、だからやっぱり増税で資金を調達するのがよろしい、などという話にな
 ってきてしまいました。
・税金で出すか、国債で出すかの二者択一論議に決着をつけることではなく、一日も早く
 必要としているところに復興資金を行き渡らせることが大事なはずです。それができる
 のであれば、子ども手当の財源をひっぺがそうが、高校の無償化をやめようが、何でも
 よいわけです。
・消費税を増税したら国債の問題は見事に解消するのでしょうか。そんなことはありませ
 ん。現在考えられている増税幅は2010年代半ばくらいまでに10%へ、、というは
 なはだ不透明なものです。はっきりいうと国民が嫌がると思ってわざとぼかしているの
 かもしれません。いずれにせよ、今後5年間のうちに消費税が5%上がるかもしれない
 ということです。
・2010年度の税収予算のうち、消費税は12兆円ですので、単純計算すれば1%上が
 ると2兆4000億円が国庫に入ってくる計算になります。
・消費税を25%に上げて、入ってきたお金をすべて債務減らしに使い続けたとしても約
 9年かかります。
・増税すれば消費意欲は通常減退します。突然消費税が25%になった世界で、クルマを
 買ったり家を買ったりしたくないですよね。とにかく行き先はより不安になりますし、
 お金は使わないのが一番、そう思うのが自然なはずです。
・いろいろな税金の率や取り方を見直すことは必要ですが、消費税増税ばかりに焦点をあ
 てても問題は解決しません。これだけでは国債問題はもちろん復興需要も満たせず、逆
 に何とかしようと思えばかえって悪い状態になるかもしれません。「消費税を上げれば
 すべて解決する」といった幻想を振りまくことなく、あらゆる鎮火手段を迅速に実行し
 ていく必要があります。
・今の日本ではだいたい40歳ぐらいを境に、それより若い世代は、生涯の世代計算をす
 ると、樹液(受け取るほう)よりも負担(支払うほう)が大きいとされています。また、
 現在では最低限もらえる年金額より、生活保護給付のほうが多いのです。これでは支払
 う気になりませんよね。現に、国民年金保険料の納付率はすでに6割をきっているとい
 われています。また、昨今の不況の影響で、保険料を支払うのにも四苦八苦といった人
 々も増えてきています。このままだと制度自体が破綻してしまいます。
・年金の財源ということでいえば、別の問題もあります。国民年金の給付財源は、今まで
 3分の1を国庫負担、3分の2を年金保険料で賄われてきていましたが、保険料の安定
 化のため、2004年度の改正で国庫負担が2分の1に引き上げられることとなりまし
 た。しかし、この国庫負担、決定はされたものの、財源がまだ決まっていません。
・今の状態は「年金が受け取れないかもしれない」という不安と、「病気になったら大変
 かもしれない」という不安のふたつをともに増大させているといえます。このふたつの
 不安は、ほとんどすべての働く日本人にとって、生活に最も大きな影を落としています。
・老後の不安ゆえにお金を使えない、それがゆえに消費が伸びない、そのため不況が長引
 き、税収が減るので社会保障への出費がさらに厳しくなり、さらなる老後の不安を呼び
 起こす。こんな悪循環が繰り返されているように見えます。
・歴史的に見たとき、財政の問題というのは国民にとっては最悪の形で解決される場合が
 結構多いのです。
 
国債暴落後の日本経済
・ここまで状況が悪くなってくると、国としてはこれだけ膨らんだ借金は踏み倒しでもし
 たくなるかもしれません。実際にそういった例がありました。
・昭和21年2月17日には「預金封鎖」および「新円切り替え」が実施されました。そ
 の当時の国債の残高はGDPのなんと約3倍です。とても返せる額ではありません。こ
 こで政府は大変な荒療治をやりました。国民が銀行に預けてあるお金を引き出せなくし
 てしまったのです。正確にいえば、1日あたりに引き出せる金額を少なくしました。そ
 して、さらに日本円を旧円と新円という2種類に分け、一定期間経ったら旧円は使えな
 くなるという政策を実施しました。
・国民は当然、銀行から自分の預金を引き出そうとします。しかし、1日当たりの引き出
 し限度額がとてつもなく低く設定されているので、全額を引き出すには到底間に合いま
 せん。そうこうしているうちに、旧円と新円の移行期間が終了し、国民は引き出せなか
 った旧円の資産を全て失うことになりました。戦前の大金持ちの多くが、このために没
 落したといわれています。これはいってみれば、国民の預金を国が全て取り上げてしま
 ったに等しい政策です。
・国が借金を踏み倒す方法は、預金封鎖だけではありません。戦時中にとてつもない額の
 借金をした日本政府が、借金を返すためにお金を刷りまくって、市中にお金が大量に出
 回りました。お金がじゃぶじゃぶ余っていればその価値は下がります。
・戦後の日本政府は、自らが起こしたハイパーインフレのおかげで借金の重さを劇的に減
 らすことができ、ハイパーインフレによる混乱は預金封鎖と新円切り替えで乗り越えま
 した。
・アルゼンチンでも、1988年から1989年にかけてハイパーインフレが起きました。
 ものの価格は1年間で50倍にもなり、アルゼンチンの経済は大混乱し、結局債務不履
 行となったわけです。
・こうしたことが今後起こらないとは限りません。在籍危機をハイパーインフレによる実
 質的な債務不履行で「解決」するというのは、むしろ歴史的に見た場合に「ありふれた」
 現象であるともいえます。
・より包括的・統合的な長期の展望を描き、それを実行に移すには、今の政府はあまりに
 もコントロール能力を失っているように見えます。
・もうひとつの意味は、「何をしでかすかわからない」という懸念です。法があっても抜
 け穴を作る、未曾有の大震災は好機とばかりに利用する、こうしたことをやって平気な
 人たちは「何でも」します。
・「何をしてかすかわからない」気持ちの悪さは、過去の言動のあちこちにも見て取れま
 す。たとえば、民主党のマニフェストには、堂々と「企業は社員をリストラ」できでも、
 国は国民をリストラできない」と書いてあります。これには本当にびっくりします。時
 の政権は、国民に「選んでいただいている」存在ではなかったでしょうか。国民の立場
 は株主にたとえるほうがまだしも正確です。
・日本国債問題の本質は、これまでは何とか日本政府が事態をコントロールする、そのく
 らいのガバナンス能力は持っているであろう、というのが前提だったのに、「もしかし
 たら持っていないかもしれない」という事象の積み重ねによってそれが崩れてきている
 ところにあります。
・日本が立ちすくんでいる間に、世界では財政問題に関する動きが急になっています。最
 近の欧州各国の動向は、今後日本が体験するかもしれない、過酷ともいえる財政再建の
 状況を如実に表しているかと思います。
・財政危機は日本だけでなく、世界の先進国が直面している危機だともいえます。金融危
 機への対応は、市場の過ちを政府が救うといった形でしたが、救う政府のほうが金庫が
 底をつき始めているということです。もちろん、金融危機はひとつのきっかけにすぎず、
 より本質的には放っておけば肥大する行政組織や、国民への社会保障、硬直的な税金の
 制度などが積もりに積もっているといえます。言葉を変えていえばこれまでの政府とい
 う入れ物のありがた自体がすでに制度疲労を起こしており、根本的な問題をはらんでい
 るからといってもよいでしょう。
・こうした深刻な問題でありながら、日本政府をはじめとして金融機関や国民に至るまで、
 動きはどうも鈍いようにも見えます。東日本大震災でもいわれましたが、日本人は確率
 論よりも決定論に傾きがちなので、「安全だといったら安全」」「ゼロかイチかの問題
 で、ゼロでなかったらもう何でもダメ」といった方向に流れがちなのでしょうか。
・欧州の債務問題にも見られるように、市場の不安感から金利が反応してしまった後では、
 打つ手も許される時間も非常に限られてきます。国債保有構造などの理由からまだ金利
 が低水準にとどまっているうちに、長期的な展望のもと手を打たなければなりません。
・国債が現水準を維持しているのは、いくつかの根拠薄弱な仮説によるものでしかありま
 せん。
・皆が短期的な視野で行動すれば、数年先の国債暴落リスクは市場価格に織り込まれず、
 それだけの価格がすでにないのに高い価格で国債が取引されることを許している。国債
 バブルが起こっているということになります。
・ここに至ってはあまり楽観的な解決は期待しないほうがよいかもしれません。ソフトラ
 ンディングできるような時期はすでに過ぎたといってよいでしょう。国債が急落すれば、
 今起こっている円高も急速に円安に向かいますし、株価もまた大きく下げるでしょう。
 トリプル安で資産価格が毀損された上に、今度は増税や社会保障費の上乗せ、あるいは
 医療や教育などのサービスの質の低下、企業倒産、失業率の増大などが一気に押し寄せ
 てくることになりかねません。適切な手を打てる時間は限られています。
・実際にはいろいろな海外シフトがすでに始まっているようにも見えます。富裕層の海外
 脱出もそのひとつです。自分の身柄ごと海外に移して非居住者になる、という選択もあ
 りますし、少なくとも資産だけは、と自分の資産を海外に持ち出している。こうした富
 裕層は昔からいましたが、最近ではかなり中流に近い層までこうしたことに関心を持
 ってきてように感じます。
・国債がこれだけ絶望的な状況になっているのに低金利・円高であるような状況が長く続
 くはずはない。
・一見、金持ちから税金を取って、貧乏な人に分け与える、というのは美しい姿のように
 も見えますが、日本の場合、ちょっと頑張っているサラリーマンが最も被害を受ける構
 図になっています。国税庁の調査によれば、所得が1000万円超の人が払っている税
 金は、所得税全体の納税額の80%に達します。一方で、年収300万円以下の層の納
 税額は全体の3.3%に過ぎません。
・すでに、企業の場合には法人税が高い日本を嫌って脱出が起こっており、あるいは海外
 の企業が日本に入ってこなくなったりする動きが取り沙汰されています。それでなくて
 も市場がクローバル化している現在、海外へ脱出する日本企業はさらに増えるでしょう。
・国債というバブルが破裂するのがわかっていて安穏と構えていることはたとえ個人であ
 ってもできません。今や、グローバルにすべては移動する世界です。日本人の資産や日
 本人そのものが国境を越えて何の不思議があるでしょう。
・現に、老後の暮らしをマレーシアなど物価の安くて治安も良いところでしたい、という
 高齢者も出てきており、決して一握りの超大金持ちだけの話ではありません。
・そのうち日本国内には赤字で税金を払えない企業と、税金を払うだけの所得がない個人
 と、脱税で潤う輩しかいなくなってしまうのではないでしょうか。
・危機から完全に逃れる方法はもはや少ないといってもいいかもしれませんが、国民ひと
 りひとりが自分の資産を防衛するためにやっておくべきことはあるように思います。先
 に取り上げた日本のハイパーインフレでは、債券や現金を持っていた人は軒並み没落し
 た一方、不動産を持っていた人たちは資産価格が上がって何を逃れたといわれています。
 もしかすると、今現在、自分の持っている資産を見直すことで、将来の禍根が個人とし
 ては少しでも低減できるかもしれません。資産などないから安楽に暮らせれば十分と思
 っていても、倒産や失業の嵐に巻き込まれるかもしれません。何もしないでいる、とい
 うのは選択肢としてはまずい部類に入るのではないでしょうか。
・その時に最もリスクを回避できる可能性があるのが、いわゆる「ひとつのバケットに全
 部の卵を入れない」というやり方です。いろいろな商品に分散して投資をするのです。
・証券化市場にこれくらい、不動産市場にこれくらい、金も少し買って、あとは債券、な
 どという「分散」が、すべてを一斉に失うことを防ぎます。ぜひ、いろいろなところに
 少しずつ、をやってみていただきたいと思います。
・今の日本にいる我々がやったほうがよいのは、日本以外の様々な国の通過で、比較的信
 用リスクの低い様々な商品をいろいろ組み合わせて買っておくことでしょう。
・このままでは、特に若い世代が将来に希望を持てず、かといって高年齢層が幸せかとい
 うと老後の不安は高まるばかりになりそうです。
・働いても楽にならない生活、なかなか安定しない、或いは見つかりさえしない雇用、家
 族や友人と切り離された社会的な孤立。このうえ、じわじわと税金があがり、年金が払
 われる期待が失われ、上の世代がそれを嘆きながらもより豊かな生活を送っているのを
 見たら、閉塞感と不満で息が詰まってしまうかもしれません。
・貧すれば鈍する、といいますが、社会の多数、特に若者が貧しくなってくると、その社
 会は暴力的な解決を選好するようになります。第二次世界大戦を引き起こしたのは、そ
 の前の第一次世界大戦の敗戦で巨額な賠償責任を負われ、経済的に困窮していたドイツ
 国民の選択でした。ナチスは、少なくとも当時において違法な手段をとって政権につい
 てはいません。すべては民衆の選択です。日本においても、あまりいいたくないこと
 ですが、関東大震災の後の混乱は、日中戦争を経て太平洋戦争へと突入していくきっか
 けとなったといわれています。
・しかし、安易に戦争などといった”ガラガラポン”を期待するのは、あまりにも危険か
 つ無知な選択といえます。
・よく誤解があるのは、「国債暴落」というのが、ある一過性のイベントとしてとらえ
 られることです。ある日突然爆弾が落ちて、それ以前にあったものはすべてなくなり、
 以後は全く異なった世界が展開される、というように。しかし、国債暴落というのはそ
 ういった事象ではありません。不謹慎なたとえですが、原発事故のほうが近いようにも
 思います。原子力発電所が爆発したからといって、「跡形もなくなる」わけではありま
 せん。福島の事故においても、じわじわと増え続ける汚染水、目には見えない放射線に
 より明らかに劣化していく生活、健康、子どもや孫の代になっても続く悪影響、それら
 に的確に対応できない政府の混乱。こうしたものが打ち続き未来、が「国債暴落以後」
 ということになるでしょう。
・より苦しい状態になった日本で個人がどう生きていくか。これは、日本が国としてこれ
 からどうしていくか、ということと表裏一体です。
・ひとつだけ確かなことがあります。「国が敗れても、山河が汚染されても、人はそこに
 いて生きていく」ということです。孤島で生き残るために必要なのはなんでしょうか。
 何が食べられて何がそうではない、といった知識。心弱くなった時に自分を鼓舞できる
 ような様々な知恵。もし孤島に現地人がいたら、無事に意志疎通ができるコミュニケー
 ション力。一緒に流された仲間がいたら、共同して物事にあたる連帯力。問題山積の日
 本でも同じです。
・突破口のひとつは、国に頼らず生きていく力をつけることかもしれません。国や何かに
 依存して自分の人生を委ねてしまうのではなく、自分で考え、他とつながることが今ほ
 ど大事な時はありません。
・一国の教育水準はその国の将来を決めます。教育は費用ではなく投資です。現在、国債
 の問題に対していまひとつ理解が進まないのも、破綻寸前にある財政に対して人々の関
 心がなかなか向かないのも、ひとつの大きな理由には、教育の中での経済教育、ファイ
 ナンシャルリテラシーを身につける機械のなさ、ということが挙げられます。
・民主党のマニフェストによって一見教育投資はなされているようにも見えます。しか
 し、その陰で起こっていることは、長年にわたる文教関係費の削減です。
・日本における歳出の削減は「減らしやすいところから減らす」ことが目につきます。
 その結果として日本の研究現場の疲弊ぶりは目に余るものがあります。高等教育という
 ものがなんであり、それが将来の国力を支えることにどのようにつがなっているのか、
 ということにあえて目をつむっているとしか思えません。
・今重要なのは、いかに本当の高等教育を実現し、人材力を高めるかということです。問
 題は山積みです。自分で払える人にまで無償化の恩恵をばらまき、質の悪い悪平等を広
 める一方で、本来の国の競争力を醸成する高等教育については削減の嵐です。
・国債暴落の懸念の背後で、日本は一番削ってはいけないものを削っているような気がし
 てなりません。
・なんとか借金をコントロールしていかなければなりません。そのためには、入ってくる
 お金を増やし、出ていくお金を減らせばいいのですが、それもなかなか簡単ではありま
 せん。
・これらをうまくコントロールしていくべき政府は、現在その機能を果たせるような状態
 ではないように見えます。あまり明るい未来が描けそうにないですね。今後数年のうち
 に、国債の危機は顕在化しそうです。
・政府はもちろん、こんな体らくを続けていてはいけません。やれることはすべて、あれ
 これキロンをしている場合ではなく実行する必要があります。歳入にも歳出にも、見直
 すにあたっては様々な聖域がありますが、いったんすべてをゼロベースにして考え直さ
 なければいけません。時間はあまりない、というのが正直なところです。
・個人としても、それまで何も手を打たずにただ待っているという方策はありません。別
 に大金持ちではなくても、自分のお金をいろいろなところに分散させるといった手を考
 えていくべきです。単に株を買えばいい、というものではありません。日本にまつわる
 リスクの少ない、かつ信用リスクもそれほどないものに投資することを考えてみてくだ
 さい。
・また、お金がやられたとしても、最後の残るのは人、つまり個人の能力です。政府や組
 織に頼り切ることなく、どうしたら自分の道を切り開いていくことができるか、改めて
 考えてみることも必要なのではないかと思います。特にこれからの世代の人たちにとっ
 ては、安定志向や大企業志向に染まる前に、「自分の頭で考える」「地峡規模で物を見
 る、でも実行は足元から」ということをぜひ念頭に置いていただきたいです。
・ひとりひとりが知恵をだし、考えることで物事は動いていきます。まずは自分の半径1
 メートルくらいのところから、何ができるのか、誰とつながることができるのか、何を
 どのように変えていきたいのか、実際に取り組んでいってほしいと思います。そうした
 ひとつひとつの小さな努力が、危機に直面したこの国を救うかもしれません。