国家の暴走 :古賀茂明

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まさに暴走する安倍政権。そこには「国民は愚かだ。悪いようにはしないから、愚かな国
民は、私の言うとおりにしていればいい。」という安倍首相の一貫した姿勢が見て取れる。
「私はみんなとは違うんだ。私は由緒ある家系の出である」という想いも見て取れる。し
かし、果たして安倍首相が思うように日本国民は愚かなのだろうか。いずれそれがわかる
ときが、きっとくる。
この国家の暴走を、なんとしても止めなければならない。このままこの安倍政権の暴走を
許せば、かつてドイツがナチス政権の暴走を許したことと同じようなことになる危険性が
ある。それには、国政選挙で安倍政権に対して「NO」を突きつけるしかない。


加速する暴走
・2014年7月、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更が閣議決定された。安倍
 総理は「限定行使」を強調しているが、閣議決定に盛られた武力行使の三要件は、曖昧
 な表現に留まっている。はっきり言って、時の政権の判断によって、「限定行使」の範
 囲が際限なく広がる恐れがある。
・安倍総理は、「集団的自衛権が現行憲法の下で認められるのか。そうした抽象的、観念
 的な議論ではありません」と、憲法論議をいとも簡単に切り捨てた。異論の拒絶。この
 言葉を聞いて、民主国家のリーダーとしての資質に不安と疑念を覚えた国民は、少なく
 なかっただろう。
・安保法制懇には標準的な考え方を持っている憲法学者はおらず、メンバーには安倍氏に
 近い「お友達」が揃っていた。「有識者会議」を隠れ蓑にして自分の考えを強引に押し
 通すやり方は、明らかに民主主義の手続きに反していた。一連の安倍政権のやり方を見
 た私は、「国家の暴走」という言葉がぴったりだと思った。
・テレビ画面を通しても、安倍総理が非常に高揚しているのがわかった。「内閣総理大臣
 の私は、いかなる事態であっても、国民の命を守る責任があるはずです。そして、人々
 の幸せを願ってつくられた日本国憲法が、こうした事態であって国民の命を守る責任を
 放棄せよと言っているとは私にはどうしても考えられません」。そんなことは誰でもわ
 かる。
・「国民の命を守るため」「平和な暮らしを守るため」と何度も口にし、ときに拳を振り
 上げながら、二枚の大型パネルを使って、集団的自衛権を行使できない場合の「危険性」
 を力説する安倍総理。「世界平和のために汗を流している日本人ボランティアや国連の
 PKO要因を、自衛隊は守ることができない。他国の部隊から援助要請を受けても、自
 衛隊は彼らを見捨てるしかない。」国民の不安を煽るような言葉が続く。
・「国民は愚かだ」という一貫した安倍内閣の哲学に支えられた戦略だ。そこには、「愚
 かな国民に迎合する、愚かなマスコミ」という冷徹な読みもあった。安倍総理を支える
 経産省中心の官僚たちの考え方が、みごとにはねいされていたといってもよい。
・安倍総理は「巻き込まれるという受身の発想ではなくて、国民の命を守るために、何を
 なすべきかという能動的な発想を持つ責任があると、私は思います」と言った。この記
 者会見を見て、私は、嘘をつくときの安倍さんは、こういうふうになるのだろうかと思
 ったものである。「フクシマについて、お案じの向きは、私から保証をいたします。状
 況は、統制されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことは
 なく、今後とも、及ぼすことはありません」世界中が注目するプレゼンテーションの舞
 台で、こんな大嘘をついても、オリンピックが来れば国民は単純だから、歓喜して原発
 事故のことなんかみんな忘れるという読みだ。五輪誘致決定直後から、それまで隠蔽さ
 れていた汚染水問題が次々と明るみに出たが、マスコミは五輪招致報道を優先し、汚染
 水がコントロールもブロックもされていない惨憺たる状況に蓋をした「隠蔽発言」は、
 ほとんど追及されなかった。そうした国民を愚弄する基本姿勢は、集団的自衛権の論議
 でも変わらない。この人物は、いとも簡単に、しかも、堂々と、嘘をつける人間なのだ。
・今、世界の先進国の多くは、おれから顕在化する少子化・高齢化に対応するための経済
 構造改革や限りある資源を枯渇させずに持続可能な社会を構築すること、そのために地
 上国との間で対話と協調の枠組みを作ることに力を入れている。ところが、わが国には、
 日本を「列強国」にすることを最優先課題と位置づける人達がいる。ここで言う列強国
 とは、主に軍事力を背景に経済的、外交的、文化的に世界規模の影響力を持ち、しばし
 ば、小国に対して支配的な力を行使する国家である。
・列強国になるとは、「戦争ができる国」になることではない。「戦争と縁の切れない
 国」、「戦争なしでは生きられない国」になってしまうことだ。表では「人道のため」
 「自衛のため」と銘打って、実は自国の利権のために戦争をする。そして、戦争が起こ
 れば武器が売れ、軍需産業は巨利を得ることができる。
・日本を列強国にした人達は、「国民の命と財産を守る」との名目で若者を戦場に送り込
 み、子供達に過酷な状況を強いることに、何の疑問も持たない。武器屋原発を世界中に
 輸出し、日本の軍事的・経済的影響力を高めようとする。
・安倍総理の周囲にいる官僚の中には、今は経産省のウエイトが非常に高い。政務や事務
 の秘書官、広報官などは皆、経産省の人間だ。
・現在、官邸で幅を利かせている官邸官僚は、明るくて話も面白い、口八丁手八丁で、は
 ったりの強さは誰にも負けない。時には何年も年次が上の気弱な局長クラスを恫喝した
 りもする。議論を始めたら絶対に譲らない。強引なことでは誰にも負けない、という人
 達だ。自身過剰も彼らの共通項だ。上から目線という面では、財務省の官僚といい勝負。
 バリバリの原発推進派でもある。
・前のめりになる安倍氏が東アジアの問題児になるのではないかとの米国内の一部の懸念
 を受けて、本来なら、もう少し慎重に動くようにアドバイスするのが彼らの役割だ。だ
 が、安倍氏の非常に明確な右寄りの姿勢に、怖じ気づいた外務官僚達は、わざわざ不興
 を買うようなことを安倍氏に言うことをためらっている。
・マスコミも暴走装置に加担している。「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかな
 い」と公言したNHK会長の籾井氏やNHK経営委員の百田氏、長谷川氏などがそうだ。
 公共放送は視聴者のものなのに、時の政権が、息のかかった人達を経営陣に送り込んで
 いるのである。この人達は安倍総理以上に右寄りで、NHKの報道姿勢に大きな影響を
 与えている。
・安倍総理は、自ら積極的に広報戦略に関わっている。その一端が垣間見えるのが、新聞
 社やテレビ局の社長や幹部との夜の会合だ。公邸に呼んだりして、マスコミ幹部に直接
 働きかける。情けないことに、マスコミの社長達は、安倍総理の公邸によばれたり、携
 帯に総理から電話がかかったりすることを喜んでいるという。「安倍さんからの電話だ」
 などと聞こえよがしに口にしながら電話に出る、という具合である。
・安倍総理は、「日本は米国に次ぐような世界の仕切り役になる」という基本理念をずっ
 と持ってきたと思う。
・安倍政権にとっての最重要課題が「列強になるための13本の矢」だ。
・ある種の暴走装置と言える大きな集団がもう一つある。「憲法96条改正を目指す議員
 連盟」という超党派の議員連盟だ。96条議連は、憲法改正の国会発議要件の3分の2
 から過半数に緩める狙いで旗揚げされた組織で、参加議員は役350人に達している。
・今の安倍総理の取り巻きは、従来型の結びつき方をしていない。96条議連のコアメン
 バーのように、右寄りの政治思想で結びついている。
・最近の自由主義経済の先進国家では、政党が、経済的な改革の仕方、あるいは配分の仕
 方めぐる政策で対立構造を形成していることが多い。外交安全保障の考え方中心で勢力
 が分かれたり、政権が交代したりするようなことはあまりないが、途上国においては、
 軍を握っている方が勝つことが多いし、それで政権が変わることもある。その意味では、
 今の日本は途上国型にシストしていると言ってよいだろう。
・彼らはどこまでも自分の政治信条を貫くので、安全保証面で譲歩という発想はない。彼
 らの議論では、常に日本の「優越性」が重んじられる。とりわけ、日本文化が中国や韓
 国のそれよりも非常に優れていることが強調されている。日本が優越しているわけでは
 ないし、人間は皆同じだという発想で物事を考える人達は、彼らを見ると、誤った「歴
 史認識文化観」を持つ「非日本人」的な人間として切り捨てられることになる。
・安倍総理は、自ら中韓との関係を悪化させて国民の不安感を煽り、両国に対する国民の
 敵意を高めている。こうした国民感情は、安倍政権の暴走の環境を整える。そして、安
 倍政権が暴走すれば、中韓の日本への敵対的な言動が高まる。そうなれば、ますます安
 倍政権の暴走がやりやすくなる。こうして、「暴走スパイラル」が始まると、誰も止め
 られなくなる可能性が高まる。
・「強い日本。それを創るのは、他の誰でもありません。私達自身です」2013年2月
 安倍総理の施策方針演説が、この言葉で始まったのは象徴的である。
・安倍総理の言う「立派な国、強い国」とは、「軍事的に立派な国、強い国」である。
・安倍政権の暴走の第一弾は、11月に成立した日本版NSC法。第二弾は、12月に強
 行採決された特定秘密保護法だった。閣議ではなく、わずか4人の閣僚で戦争開始の決
 定ができるNSC。戦争に至る過程の情報隠しを許し、マスコミの取材活動を制限する
 特定秘密保護法。いずれも、戦争に必須の手段だ。その年のうちに、NSCが武器輸出
 三原則を完全に無視して韓国への弾薬供与を決定し、恐れていた事態が早くも起こり始
 めた。
・日本人の関心の的は、短期的には景気や雇用の話、長期的には年金や社会保障の話だ。
 特に若い人達は、日本経済がマイナス基調を続けているデフレの時期しか知らない。給
 料がどんどん減っていき、正社員の雇用は少ない。「とにかく景気を良くしてほしい。
 ちゃんとした職が欲しい」と望んでいたところに安倍総理が登場し、突然円安になり、
 株価が上がり、「賃金を上げろ」と企業を呼びつけて言ってくれた。「アベノミクスで
 これからますます景気は良くなるかもしれない。思い切った改革をすると行っているし、
 これで私達の生活も良くなりそうだ」との期待がある。それが高い支持率になっている
 最大の理由だ。
・安倍総理の場合は、まだ人気がそれほど落ちていない。集団的自衛権行使容認の閣議決
 定で、多少揺らぎが出ているものの、「日本が戦争に巻き込まれることなんでことは、
 あり得ないでしょ」と思っている若者も依然として多い。もちろん安倍総理も、聞かれ
 れば「平和主義は守り抜きます」と言う。多くの若者は、「安倍さんは「戦争をしない」
 と行っているのに、「する、する」って、何でそんないちゃもんをつけるの?」と、首
 をかしげていたのがこれまでの状況だ。 
・歴代政権が、言いたいことも言えずに中国や韓国から馬鹿にされるシーンも見せつけら
 れてきた。だから、「安倍さんは、自分達の「敵」である中国・韓国に思いっきりもの
 を言ってくれる。すごく頼りになるね」と捉えている若者は以外に多い。
・戦争経験者はだんだん少なくなっている。実体験として戦争の話を聞く機会が減ってい
 ることが、国の内部から暴走装置が生まれ出てきた要因の一つといえるだろう。これか
 ら先は、戦争体験が語り継がれる機会はもっと少なくなり、やがて皆無になる。そうな
 れば、戦争を身近なものとして感じることも、戦争は怖くておぞましいものだとお想像
 する能力も、どんどん衰えていくだろう。
・日本が戦争に突き進む日は、そう遠くないかもしれない。「日本版NSC」「特定秘密
 保護法」「集団的自衛権」という3枚のカードが揃えば、現行法制化で戦争ができるよ
 うになるからだ。日本も米国と同じように国際世論を無視して戦争に突っ走り、人的に
 も経済的にも、多 大な損害を出す危険性は十分にある。
・今の日本には、軍事力を強化している余裕などない。むしろ、いかにして、そうした国
 民生活の向上につながらない出費を抑えて、社会保障や子育て支援など国民生活のため
 の予算を確保するのかという議論が必要になっているが、今の日本の財政の状況だ。そ
 れを可能にするには、既得権と闘い、真の弱者に陽を当てる、国民のための成長戦略を
 実行しなければならない。つまり、戦う相手は中国でも中東のどこかの国でもない。国
 内に巣食う、既得権者たちとの闘いこそ、今すぐ取り掛かるべき課題だ。
・安倍政権において世界中へ原発と武器を輸出する政策は加速している。「クールジャパ
 ン」と言いながら原発と武器を売り歩き、「死の商人」を演じる安倍晋三の名が、「ス
 ーパーナショナリスト」の呼称とともに世界中に轟きつつある。このままでは、「第三
 の矢」は、武器輸出と原発輸出の二本柱だけで終わってしまうのではないか。日本の
 「平和ブランド」が70年の歴史に幕を閉じることになるのではないか。
・日本は今、「列強国クラブの一員」となるべく突き進んでいる。集団的自衛権の行使も、
 国民の声を聞くことなく、一内閣の閣議決定によって強引に押し通されてしまった。戦
 場に送られるのは、いつお若者である。「集団的自衛権行使による日本人戦死者第一号、
 日本人殺人者第一号」が出ないうちに、なんとかこの暴走を止めなければならない。

「軍事立国」への暴走
・NSC法、特定秘密保護法、集団的自衛権行使について個別に議論すると、問題の核心
 がよくわからなくなってしまう。三つがセットになって運用される時、実際の政策決定
 の現場でどんなことが起こるかを、リアルに想像することが大事だ。
・たとえ、「集団的自衛権の行使は、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び
 幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合』に限定する」などと言って
 みても、現行のNSC法と特定秘密保護法が集団的自衛権とセットになると、無責任な
 判断で国民を無用な戦争に巻き込む事態が起こり得るのだ。
・「集団的自衛権の行使に賛成か、反対か」と聞かれても、ほとんどの国民は判断できな
 い。アベノミクスの「第一の矢」である日銀の金融緩和の効果が非常に大きかったため、
 国民ななんとなく、「安倍さんは、いいことをしてくれる」と思い込んでいたし、今の
 ところ戦争は身近な問題ではないので、外交安保に積極的に関心を持つ層は少なかった。
・若者の間では、安倍政権のやることが肯定的に捉えられていた。アベノミクスですべて
 が美化され、どんな政策もプラスの評価をされるという地合いができていたように思う。
 「安倍さんの政策で日本は良くなる」という認識は、客観的に正しいものなのだろうか。
 もし正しいとするならば、安倍総理は高値安定の支持率を背景にタカ派的な政策を推し
 進め、それで日本は豊かになっていくはずだ。しかし私は、そうなるとは思っていない。
・その理由の第一は、現在のアベノミクスでは日本経済の再生はまったく不十分だからだ。
 今の程度の経済政策で押していったとしても、出口がなくなって日本経済の再生には繋
 がらないと見ている。そして二つ目に、外交・安全保障問題は経済と一体でしか語れな
 いからである。端的に言えば、安全保障には莫大なカネがかかる。
・日本の安全保障は米国におんぶに抱っこの「安保タダ乗り」だった。黙っていても米国
 が守ってくれた。おかげで日本は経済に集中することができ、非常によい成果を得た。
 「安保タダ乗り」をしなければ、日本は軍事力に莫大な税金を投入せざるを得なくなり、
 それで経済の伸びを相当下げる結果になっていただろう。自民党が唱える「安保タダ乗
 り」論は、沖縄に基地の負担を相当押し付けてしまったことを考えると、実は、正しく
 ない。タダではなく、沖縄の人がその代償を払ってくれていた。その負担は、タダ乗り
 分を相殺しても余りあるくらい大きすぎたのではないかと思う。 
・ここ数年の日本は、経済主導から軍事主導の国づくりに転換されつつある。尖閣諸島や
 竹島の領土に関する中国や韓国との対立も先鋭化している。国防の重要性を叫ぶのは間
 違いではないが、その前に自らの足元を見つめ直し、経済を成長軌道に戻さなければな
 らない。日本のコクぢを守る意味からも、経済的基盤がガタガタでは、その上に軍事力
 を乗せて国を支えていくことは不可能だ。
・企業が貯め込んだカネを国内の投資に回し、新しい産業を創出するための構造改革を進
 めていかねければならない。そのためには、規制緩和を含めた既得権との闘いが喫緊の
 課題だ。また、国防の大前提は、国民の間の一体感である。格差が広がり、国民が分断
 されるようでは、国防の基盤が喪失してしまう。
・ただでさえ国土が狭く資源に乏しい日本が、中国や韓国とことららに事を構えるような
 ことをしても、得るものは何もない。 
・中国との関係は重要である。なんといっても人口14億人近くを抱える中国は、日本に
 とって非常に魅力的なマーケットだ。いくら総理がベトナムやトルコでトップセールス
 をしたところで、中国市場を失った分をそれで取り戻すことはできない。むろん、中国
 もいずれは日本のように少子化の影響と成熟化によって経済力が落ち始める時期が来る
 だろうが、それまでにはまだ十年単位の時間がかかる。こうした長期的視点も踏まえた
 上で、中国と対峙しつつ、経済的結びつきを強化する方向性を見極める必要がある。
・太平洋戦争が侵略戦争だったかどうかは後世の歴史家に委ねるという発言や、A級戦犯
 が合祀されている靖国神社にどうしても参拝する姿勢から考えると、太平洋戦争を真摯
 に反省しているとは思えない。 
・日本の一部政治家には、日本は常に正しい国であり、先の戦争は侵略戦争ではなかった
 とする人達がいるが、安倍総理もそれに近い論理の基づいて「日本のあるべき姿」を理
 念的に考えているのだろう。その延長線上にある安倍総理の中心的な理念の一つが、日
 本はGHQに押し付けられた現在の憲法を捨て、独立国家として独自の憲法を持たなけ
 ればいけない、ということだ。 
・もう一つの理念は、日本は世界をリードする列強国でなければいけないということだ。
 日本は、自国の利益を維持拡大するために、米露中英仏に伍して経済的、軍事的、外交
 的に国際社会をリードし、世界の秩序を作る上で仕切り役となるべきだ、との覇権主義
 的な発想を持っている。とりわけ、軍事力を背景とした力の外交に憧れているように見
 える。
・明治から昭和の戦前まで、日本がずっと覇権主義でやってきたのは歴史的事実である。
 太平洋戦争に負けたあとはおとなしくしていたが、基本的には「世界の仕切り役になり
 たい」との願望を持ち、そのために戦争を休みなく続けてきた。明治以降の歴史の中で、
 戦後の平和日本は「例外」であった。その「例外期」が70年の長きに及び、国民の間
 には、日本は戦争なんかしない国だ、という思い込みが広がった。しかし、そうした
 「平和ボケ」から脱して戦前の日本に戻るべきだとの思いが、安倍総理の言動からは窺
 える。「日本を取り戻す」という安倍総理の言葉が目指すところは、経済・軍事両面で
 欧米列強に並びかけた戦前日本、しかないだろう。 
・世界というのは、正義や民主主義といった価値観や理念で動く部分もあるが、必ずその
 裏には経済的な利害が絡む。この20年、どの国も中国と日本を天秤にかけているのは
 客観的事実である。日本が世界の中で存在感を取り戻すためには、経済的な魅力を高め
 ていくのが正道だが、今の安倍総理は、経済より軍事優先の発想に傾いている。日本が
 強い軍隊を持てば、中国を力で封じ込めることができるし。世界の中で主要なプレイヤ
 ーに復活できる。それこそが真の独立国だというイメージが、安倍総理の中にはあるよ
 うに思う。
・日本が戦争のできない国であることは、覇権主義的発想を持つ人から見ると、完全に国
 家としての欠陥である。あらゆる力を使って、自分の理念を世界の中で実現するのが正
 義だとする発想に立つと、「あらゆる力」の中には、強大な軍事力がなければいけない
 ことになる。自衛のための軍事力ではなく、自国の価値観や利益を積極的に拡大してい
 くための軍事力だ。安倍総理のお気に入りの言葉、「積極的平和主義」には、そういう
 意味が込められているのだろう。
・安倍政権は次々に新たな政策を打ち出している。将来、実現を図ると推測されるものを
 含めると、その数は13になった。不吉な数字だ。
 @日本版NSC法
 A特定秘密保護法
 B武器輸出三原則の廃止
 C集団的自衛権の行使容認
 D「産めよ増やせよ」政策
 E集団安全保障での武力行使の容認
 F日本版CIAの創設
 GODAの軍事利用
 H防衛軍の保持
 I軍法会議の設置
 J基本的人権の制限
 K徴兵制の導入
 L核武装
 いわば、「戦争をするための13本の矢」だ。
・欧州や米国議会でさえ反対したシリアへの攻撃について、安倍総理は一人、真っ先にオ
 バマ支持を打ち出した。それだけならまだしも、「アサド政権は道を譲るべきだ」と政
 権打倒を意味するようなことまで言い、オバマ大統領を慌てさせるほど前のめりになっ
 ていた。
・オリンピック誘致のために安倍総理が発した、福島「アンダーコントロール」、汚染水
 「完全ブロック」発言を思い出していただきたい。世界中の人々に、あの大嘘を平気で
 ついた人が、「戦争なんかしません」といくら大声で繰り返し叫んでも、信じる人がい
 るだろうか。

戦争をするための「13本の矢」
・国家安全保障会議(NSC)設置法は、特定秘密保護法の陰に隠れてほとんど大きな混
 乱もなく2013年11月成立した。NSCでは、外交・安全保障政策の基本方針や中
 長期的な戦略を決めるだけでなく、首相が指定する閣僚らによる緊急事態会合も行われ
 る。緊急事態会合では、戦争をするかしないかというような、国民の命に直接かかわる
 事項を扱う。特に、「戦争を効率的に遂行する」というところに、非常に大きな意味が
 ある。
・2013年末に、南スーダンでPKOに参加している陸上自衛隊の銃弾1万発を、国連
 経由で韓国軍に無償供与したのも、NSCでの決定だ。この時は、安倍総理、菅官房長
 官、岸田外相、小野寺防衛相の四大臣会合で事実上決めた。
・銃弾のような殺傷能力のある武器を、日本が他国軍に供与したのは初めてで、武器輸出
 三原則に完全に違反していたが、「例外扱い」として簡単に決まってしまったのだ。も
 しも閣議を開いたら、公明党との関係調整に大変な時間がかかっただろう。
・NSCの議事録は作成されることになったが、その内容は特定秘密に指定されるので、
 議事録を作っても作らなくても国民には何も知らされない。議論のプロセスは、いまま
 でも秘密にできる。
・仮に、日本が戦争をするかしないかという重大な議論になったなら、政府は「米国との
 関係があるから」「安全保障上重大な支障が生じるので」などと言って、重要な情報は
 「絶対に出しません」と拒否するに決まっている。
・現行のNSC法では、ねつ造情報に基づいて戦争が行われても、我々はその事実を知る
 ことができず、誤った情報・判断によって戦争に巻き込まれる可能性がある。これが日
 本版NSCの最大の問題点だ。政権の側からすれば、NSCは迅速に戦争遂行を決めら
 れる便利な体制だが、国民にとっては危険きわまりない暴走装置なのである。
・日本が米国と一緒に戦争をするかどうかを判断する場合に、米国から提供される情報を
 守る目的の他に、NSCの議事内容を半永久的に隠せるような仕組みを作っておこうと
 いうことで、特定秘密保護法が必要になったわけです。端的に言えば、NSCのメンバ
 ーが責任追求の不安を免れて、自由に、勝手気ままに、戦争を決めやすくする効果があ
 る。 
・特定秘密保護法は、情報公開と公文書管理法との三点セットで議論しなければならない。
 それは、国民の知る権利を担保し、国民が正しい判断をできるにするために重要なだけ
 でなく、政治や行政によって誤った判断、不公正な判断、そして無責任な判断を防止す
 るために不可欠であることを、強く訴えたい。
・2014年4月、武器輸出三原則が廃止され、「防衛装備移転三原則」が閣議決定され
 た。防衛装備移転三原則は、武器輸出が認められる場合として、@平和貢献・国際協力
 の積極的な推進に資する場合、または、A我が国の安全保障に資する場合等に限定する
 と書かれている。いずれも抽象的な言葉ばかり並んでいて、客観的基準にはなり得ない。
・最近、世界各国で深刻な国際紛争が生じている、各地で繰り広げられる果たしい戦闘を
 見ていて気づくのは、国境を越えて、いともたやすく武器が拡散している事実だ。「反
 政府武装勢力」と呼ばれるグループが、高度な武器を使って急速に支配地域を広げる現
 象が見られるのだが、それを可能にしたのが、米英仏露、サウジアラビア、カタール、
 イラン、そして最近は中国などの武器輸出である。表向きは、自衛のため、人道のため、
 と言うが、本音は単純に自国の利権の維持拡大である。そこでは、自国の敵の敵は味方、
 味方の敵は自分の敵という短絡的・短期的な視点で武器が供与される。
・今や、「正義とは何か」がわからなくなっている。だからどの国も、地域紛争に軍事介
 入することに極めて慎重だ。安倍政権は、武器輸出解禁に当たって、国際紛争を助長し
 ないように歯止めをかけたと説明したが、実際には、今日ではまったく通用しない時代
 遅れの「正義の味方」路線を採っている。米国は正義で、かつ、日本の味方。だから米
 国の味方は正義だし、日本の味方だ。そして、米国の敵は日本の敵だと考える。極めて
 危ない考えだ。 
・米国の軍需産業は強大な政治力を持っている。だから、多少のリスクはあっても慎重論
 は蹴散らかされて、米国政府は危ない橋を渡る。日本はそれに付き合ってノコノコ出て
 行くのだ。 
・防衛装備移転三原則は、安倍政権にとっていいことずくめだ。日本製の武器を買った
 国々は、いざという時に「もう武器は売りません」と言われたらおしまいだから、かな
 りの程度日本に従属するか、従属しないまでも非常に強い協力関係を保っていかざるを
 得なくなる。また、武器の大量生産・大量輸出が可能になれば、これまで単価が高かっ
 た自衛隊向けの武器も安くなるので、予算があまりない中で日本の軍隊を強くすること
 もできる。
・日本では、ゼネコンが強いために公共事業を削減できず、農協が強いために農業補助金
 を削減できない。これと同様に、軍事産業が大きな政治力を持てば、日本は軍事費を削
 減できなくなる。産業構造が大きく変わり、「戦争を待ち望む国」になる。
・日本は「戦争をしなければ経済がもたない国」になってしまう。どおかで紛争や戦争が
 起これば、それを仲裁するどころか、当事国に武器を売り、日本の軍隊もそこへ出て行
 く。産業と戦争がセットになって巨大化していくのだ。そうしなければ経済がもたない。
・米国内には武器の生産拠点がたくさんあり、工場に多くの人が雇われているが、すでに
 国防費削減のスケジュールができていて、これからはどんどん予算が減っていく。予算
 が減れば採算が取れない工場は閉鎖しなければならず、景気や雇用に大きく影響する。
 特に地域経済にとっては、放置するkとおのできない大問題だ。この問題を解決するに
 は、定期的に戦争をやるしかない。
・安倍総理は、憲法九条に基づいて集団的自衛権の行使を否定してきた従来の考え方を
 「受身の発想」と決めつけたが、今、日本が戦争に巻き込まれることを一番真剣に考え、
 心配しているのは、現場の自衛隊員だ。
・安保法制懇の報告書を受けて、安倍総理自らのイニシアティブで、集団的自衛権の行使
 容認の範囲を限定したという体裁をとったのだ。そして、「自衛隊が武力行使を目的と
 して湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありま
 せん」と述べて、いかにも日本が戦争することなどありえないような印象を国民に与え
 ようとした。しかし、集団的自衛権による武力行使を無限定に認めるなどということは、
 元々あり得ない話だ。報告書では、あり得ないほどイケイケドンドンの話を書かせ、そ
 れを否定することで、いかにも安倍総理が平和主義者であるかのように装う芝居を演じ
 たのである。
・集団的自衛権とは、自国と同盟関係など、親密な関係にある国が武力攻撃された時に、
 自国が攻撃されたのと同じとみなし、同盟国と共同して反撃できる権利のことだ。あく
 までも「反撃できる」という意味であって、「反撃しなければならない」ということで
 はない。安倍政権は、そう説明している。だが、米国なとどの関係では、「しなければ
 ならない」関係になることは確実だ。
・米国から「一緒に行こう」と言われたとき、「集団的自衛権は行使できることになりま
 したが、いろいろ事情がありまして、今回は遠慮させていただきます」とは非常に言い
 にくい。米国からすれば、「あれだけ『いきたい』と言っていたのに、結局、日本は我
 々を騙したのか」ということになるので、怒り心頭である。仮に「戦争反対!絶対に行
 くな!」と国内世論が大きく盛り上がって、政府が自衛隊の派遣は政治的に難しいと判
 断しても、簡単に米国の要請を断ることはできない。結局は、いやいやでも米国に従わ
 ざるえお得なくなるのだ。そして、たとえ日本が直接攻撃を受けていなくても、同盟国
 である米国のために戦争をすることになる。
・現場の自衛隊員達は、災害復旧援助などを本当に一生懸命やっているし、日頃の訓練に
 も怠りはない。もちろん彼らは、「日本が攻められたら銃を取って戦おうと思っている
 し、自分達の仕事に誇りを持っている」と言う。だが、米国が戦争を始めたからという
 理由で、それまでは日本と何の争いも起きていなかった国にでて行き、そこで女性や子
 供やお年寄りを巻き添えにしてまで人殺しをしろと言われても、そんなことはとうてい
 できない。
・憲法解釈の変更というG難度の裏技を用いて、「悲願」である集団的自衛権の行使容認
 を決めた安倍総理。しかし、日本が攻撃されていないのに海外で戦争できるということ
 が、どうして健保から読み取れるのか。本質論を放棄し、手続き論や言葉遊びで国民を
 幻惑しているように見える。 
・集団的自衛権の行使による犠牲の話になると、抽象論や感情論でかわしてしまうケース
 が多く、質問と答えが噛み合わないのだ。安倍総理は、議論する能力がない総理でもあ
 る。
・集団的自衛権の閣議決定を読む限り、まったく限定容認ではないことがわかる。地域へ
 の限定もないし、米国以外のどの国との関係で行使できるかも限定されていない。だが、
 安倍総理は一貫して、「限定している」と言い続けている。
・安倍総理は批判的なことを言われたとき、「日本は戦争をするともりだろうと言われる
 が、そんなことはありません」という具合に、何の根拠も示さずに、一言で否定する傾
 向がある。そして、「私を信じてください。私は国民のことを考えています、国民の命
 を守るために働いています」と言い続ける。これが安倍氏のレトリックである。要注意
 だ。
・これまで安倍総理は、ゴリ押しで数々の政策変更をしてきた。国民の目をごまかしやす
 い事例を挙げ、大きな原則に対するとんの小さな微修正だという装いをとるが、気づい
 てみたら、当初の説明とはまるで違って大原則は廃止され、まったく新しい原理が確立
 されている、というやり方だ。騙されたと思った時はもう遅い。
・安倍総理は集団的自衛権行使容認の閣議決定を非常に急いでいたのに、関連法案の提出
 は、なんと2015年春の統一地方選挙後まで持ち越されてることになった。そこには、
 変幻自在のしたたかな安倍政権の戦略と、国民を愚弄する基本姿勢が見て取れる。
・改正する法律は20本近くになるかもしれない。そんなに多くの審議を、6月下旬の通
 常国会会期末までの約2ヶ月間で個別にやるのは無理ではないかと、誰もが思うだろう。
 しかし、審議時間を大幅に短縮する「魔法の三点セット」があるのだ。第一は、いわゆ
 る「束ね法」だ。法律はなるべく一つに束ね、仮に分かれた場合でも審議は一括で行う
 のがベターというのが常識。審議時間は短くて済むし、経験則上、多くの場合、国会議
 員の関心が世論の動向などによってある特定の部分に集中し、その他の部分は比較的突
 っ込まれずに済むからだ。二番目は、「安全保障大臣」の設置だ。法案をせっかく束ね
 ても、集団的自衛権の法案審議に関係大臣をいっせいに出席させるのは指南の業だ。だ
 が、安全保障全体を統括する大臣を置けば、この大臣一人が出席すればよいことになり、
 大臣の日程上の都合で審議が滞ることは、ほとんどなくなる。三番目は、「特別委員会」
 である。特別委員会を置かないと、束ね法にしてもその中に含まれる各委員会担当の法
 案の部分について、各委員会でばらばらに審議させざるを得なくなる。それを避けるた
 めに合同審査という形を取れるのが、各委員会で異なる定例日の調整が必要で大変難し
 い。特別委員会を作ってしまえば、関連委員会の都合にとらわれず審議日程を組めるし、
 そこには担当大臣一人が出ればよいので、ほとんど自由に集団的自衛権の法案審議に専
 念できる。
・安倍政権は、「魔法の三点セット」が揃えば国民の反対がどんなに強くても、かなりの
 スピードで法案を成立させると思う。むろん、それで支持率が下がることは覚悟の上だ。
・そううまくいくかどうかはわからないが、6月下旬の国会会期末直前に参議院で集団的
 自衛権の法案を強行採決、その日に安倍総理が北朝鮮に出発という段取りにして、その
 情報を少し前にリークすれば、強行採決前から「何人帰国するのか」などと報道が加熱
 し、集団的自衛権の法案はとうせ成立するのだからと、扱いはどんどん小さくなる。  
・その戦略転換を支えるのは、「国民は愚かで単純である」という哲学だ。具体的に言え
 ば、@ものすごく怒っていても時間が経てば忘れる、A他にテーマを与えれば気がそれ
 る、B嘘でも繰り返し断定口調で叫べば信じてしまう、ということを基本にしている。
・政府が集団的自衛権に強くこだわる背景には、かつて湾岸戦争やアフガン紛争、イラク
 戦争などで、日本が多国籍軍に参加して戦えなかったことが、「日本の外交にとって大
 きなダメージになった」という前提がある。特に、イラク軍のクウェート侵攻に端を発
 する湾岸戦争では、米国から「国際貢献」として戦闘への参加を強く迫られたが、海部
 総理が必死になって断った。その時の最後の砦が憲法九条だった。ブッシュ大統領は激
 怒し、戦後、クウェート政府が出した感謝広告に日本の名前が入っていなかったことか
 ら、日本政府は「ぜんぜん感謝されなかった」と受け止めた。
・当初、海外の報道は、日本を非難するものではなかった。日本には憲法九条があり、海
 部総理は湾岸戦争への対応を深く苦悩し、国内でも大変な議論になっていると、非常に
 中立的な報道がなされていた。ところが、湾岸戦争が終わってしならく経つと、まず日
 本国内に「米国は激怒し、日本は世界中に馬鹿にされている」という報道が流れた。そ
 れをキャリーする各国の新聞の中には、「日本というのはとんでもない国だ」などと書
 くところもあり、やがて日本中に、「わが国はこんなにひどいことを言われています」
 と喧伝されていった。その裏には、外務省の暗躍があったのではないかと、私は見てい
 る。実際には、クウェート政府は日本に感謝していたし、東日本大震災の時には原油
 500万バレルの復興支援を提供してくれのだ。
・集団安全保障制度とは、複数の国家がが互いに武力の不行使を約束し合い、その約束に
 反した国に対して、残りのすべての国が制裁を加える制度だ。つまり、日本の自衛とは
 まったく関係のない世界である。他方、集団的自衛権は、同盟国の一部の国が、同盟国
 外の国から武力行使を受けた時に発動されるので、基本的には外部に対して身を守る手
 段だが、集団安全保障は内部秩序維持のための手段だと言える。
・我々国民から見ると、集団的自衛権は、日本と同盟関係にある国などが対象になるので、
 誰のために戦うのかがイメージしやすい。しかし、集団安全保障になると、日本とはあ
 まり関係のない国のために戦争をすることも起こり得る。アフリカの名前も知らないよ
 うな国が近隣国から不当な攻撃をされていて、その被害者に当たる国が、たまたま欧米
 の国にとって大事な国である場合は、多国籍軍を派遣しろというおkとになる。しかし、
 日本人には、そんな国のことはほとんど知らない、ということが起こり得るのである。
 これを認めれば、自衛隊が戦争に行く機会は、飛躍的に増えることになるだろう。
・幸いにして、集団安全保障に対する公明党の拒否反応は強く、集団的自衛権の閣議決定
 には明記されなかったが、政府・自民党は諦めていない。自衛隊の軍事活動の範囲は、
 際限なく拡大していく危険性をはらんでいる。我々国民には、なおいっそうの用心が必
 要だ。  
・一方、集団的自衛権が安全かというと、もちろんそうではない。集団的自衛権は、国連
 安保理の決議がなくても発動できる。軍隊の出動にブレーキをかける国がないので、国
 際世論と関係なく軍事行動を起こせるという大きな危険性をはらんでいる。しかも、米
 国は弱体化しているので、日本が米っくの思惑によって動かされる可能性も否定できな
 い。その先に待っているは報復だ。イラク戦争の時には、「融資連合」に加わったスペ
 インでは2004年3月に首都マドリードで同時列車爆破テロが起こり、191人が死
 亡、1800人以上が負傷した。英国では、2005年7月にロンドン地下鉄・バス同
 時爆破テロが起こり、自爆テロの実行犯を含む56人が死亡した。日本もイラク戦争を
 支持したが、平和憲法を堅持して戦闘に加わらなかったため、テロの犠牲者を出さずに
 済んだ。
・安倍総理は、政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」に対して、合計特殊
 出生率や出生数お数値目標を設定するように指示した。ところが、同会議では「ノルマ
 と伝わってしまう」などと慎重論が続出。結局、少子化対策費の倍増などを求める内容
 の提言がまとめられ、具体的な数値目標を出すことは見送られた。当たり前の判断だ。
・政府の「選択する未来」委員会は、「50年後も人口一億人レベルを維持するために、
 合計特殊出生率を2.07に引き上げる」という数値目標を立ててしまった。もともと
 は、社会保障を持続可能にするとか、長期的な労働力確保という、主に経済的理由で考
 えられたことだが、安倍総理は別の思惑で飛びついてしまったかもしれない。「産めよ
 増やせよ」政策には、「富国と強兵両面で、人口増加は大事な要素だ」との思惑がにじ
 み出ている。いくら言い訳をしても、「女性は生む機械」と言ってクビになった大臣と
 同じ発想なのは明らかだ。
・自民党は、「日本もCIAのような諜報機関を自前で持つべきだ。その方が、間違った
 戦争に巻き込まれなくて済む」という議論を始めた。「無用な戦争回避のため」という
 ロジックで日本版CIAを作ろうということだ。集団的自衛権の行使が容認されたから
 には、「戦争をするには正しい情報の収集・分析が不可欠だ」との議論がますます高ま
 っていくことは必至だ。
・安倍政権は、ODAの基本原則を定めたODA大綱を改定する予定だ。現行のODA大
 綱は、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」と定められ、途上国の軍事
 支出や兵器開発などの動向にも十分注意を払うことが明記されている。これらの規定を
 見直し、ODA資金による外国軍支援を可能にすることに、政府は意欲を示している。
・日本のODA供与額は年間8000億円を超える。政府は国民の反発を予測して、軍が
 行う災害救助活動のための人材育成支援や、シーレーンの警備能力を向上させる巡視船
 の提供など非軍事的分野」に使徒を限定すると言っている。だが、提供した技術や装備
 やカネは、相手がその気になれば、軍事目的に転用されてしまう。実際にそうなれば、
 提供した日本側の道義的責任が問われ、国際世論の批判を浴びることになる。
・たとえば、武器を買わせるために、他の名目で巨額の援助をすれば、それで浮いたカネ
 で日本の武器を買ってもらいやすくなる。米国では、イスラエルやエジプトなどにそう
 いうことをしている。ODAで武器をたくさん売るのは良いイメージではない。他方、
 カネに色がついているわけではないから、軍事目的とはまったく名目の違う資金援助を
 してやればいい、という発想だ。 
・自民党の改正草案は、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、
 内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」である。これだと、国防軍の保持
 が「憲法上の義務」となる。つまり、国防軍を持たなければ憲法違反になってしまうの
 だ。「自衛のための軍隊なら持っても合憲、持たなくても合憲」という現状の憲法とは、
 意味がまったく変わってくるのである。
・自民党は、「日本では『自衛隊』でも、海外では『国防軍』と言っています。現に、自
 衛隊は日本が保有する国防軍です。事実を事実として憲法に書くだけなので、これまで
 と何も変わらないし、それに電装になるようなこともありません」と説明している。憲
 法の「本質的変更」を覆い隠そうとしているのだ。
・この憲法改正が通ってしまうと、どうなるか?たとえば、、中国の軍事力がどんどん強
 くなってきた。日本の軍事力をそのままにしていると、中国にやられてしまう。それは
 憲法違反だだから、増税して、あるいは社会保障を削ってでも、日本の軍備をどんどん
 強くしなければならない。それが憲法上日本政府の義務なのだ、ということになる。
 残念なことに、「国防軍保持」の意味を正しく理解している国民は非常に少ない。
・自民党の憲法改正案で新設された「第九条の二」の第五項にはこう書かれている。「国
 防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する
 罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。
 この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。」
・たとえば、捕虜や市民に対する拷問など非人道的な行為は、原則的にはもちろん禁じら
 れるが、万が一、自衛隊員が拷問をしてしまった場合には軍法会議にかけ、そこで無罪
 となれば起訴しない、といった法律が作られるかもしれない。日本で米兵がレイプ事件
 を起こしても、軍法会議で裁かれるため、米国では処罰されないことが多いのと同様だ。
・また、日本はこれまで長く平和主義を貫いてきたから、いざ戦争になったら出動命令を
 拒否して逃げる人もかなりいるだろう。その場合に罰則は、逆に極めて厳しくなるだろ
 う。
・自民党草案の本音は、「国家の利益のために個人の権利を制限する。そして、国家に逆
 らって秩序を乱す者は排除する」ことであり、それが効果を発揮する典型例が戦時とい
 うことになる。もしも、この草案が実現したら、戦争または戦争に近い状況になったと
 いう理由のもとに、基本的人権におおきな制約がいろいろと加えられる可能性がある。
・現場の若い隊員達の中には、「もう自衛隊にはいられない」「辞めるほうがいいのでは
 ないか」と考えている人もいる。そういう人達は、おそらく増えていくだろう。新たに
 隊員を募集しようとしても、反対する家族は増えるだろうから、これからはリクルート
 するのも大変になる。もともと少子高齢化で分母が小さくなっている上に、いつ戦争す
 るかもしれない状況になれば大量の隊員離脱も起こりかねず、自衛隊員不足はさらに深
 刻度を増すだろう。
・これまで政府は、自衛隊に徴兵されて無理やり戦争に行かされるようなことは憲法十八
 条違反だとし、国会でもそう答弁してきた。私も憲法違反だと考えてきた。だが、石破
 茂氏などは、「自衛隊の仕事である国防や災害救助は非常に重要であり、そういう仕事
 を苦役というのはおかしいのではないか」という議論をしてきている。  
・憲法改正手続きを定める国民投票法が改正され(2018年から実施予定)、投票年齢
 が現行の20歳から18歳に引き下げれらたのは、憲法改正をやりやすくするためだと
 考えられていた。憲法改正に関しては、年齢が高いほど反対派が多い。実際に戦争を体
 験した人や、親や祖父母から戦争体験を聞かされた人が多いからだ。テレビの街頭イン
 タビューなどを聞いていても、戦争の実態をしらない若い人達はの方が改憲には積極的
 である。政権にとって若い人達は「騙しやすい」。
・集団的自衛権行使容認が徴兵制に繋がるとの批判については、安倍総理自身、「あり得
 ない」と否定している。しかし、これは、集団的自衛権との関係で述べられてたことに
 すぎない。安倍総理が強調する考え方、すなわち、戦争を抑止するためには強い軍隊が
 必要だという論理からは、少子化で兵士の数が足りなくなることは許されないはずだ。
 徴兵制を絶対に導入しないというのでは、安倍理論は破綻してしまう。 
・若い世代を騙して憲法第九条を改正したら、次の段階で徴兵制の導入に向かうという作
 戦なのだろう。おそらく、「徴兵制は憲法上の要請だ」とか、「あなた達の命を守るた
 めの抑止力です。戦争になることはありません」というような理屈をつけるだろう。
・安倍総理は世界中に向かって堂々とウソをつける人間だ。そういう人間がいくら否定し
 ても、他の様々な要因から考えれば、列強を目指す安倍路線の先は、徴兵制導入が待っ
 ているということを、国民はよく理解しておかなければならない。戦争というのは、
 「現場で死んてくれる若者」をリクルートしなければ遂行できない。それが現実だ。
 「若者の愛国心にきたします。ぜひ手を挙げてください」というきれいごとではなく、
 「誰も来てくれないなら、有無を言わさず引っ張ってこい」という世界だ。昔の赤紙と
 同じである。  
・米露中仏英の五カ国は、核拡散防止条約(NPT)で核兵器の保有を国際的に認められ
 た核保有国だし、中東ではイスラエルが核を保有し、イランが核開発をしている。トル
 コが日本か原発を導入しようとしているのも、単に電力需要を賄うためだけでなく、最
 終的は目的は書くのゴミを再処理してプルトニウムに変え、核兵器を作る技術を開発す
 ることになる可能性がある。覇権主義国家の仲間入りをしたい安倍総理も、核兵器の保
 有を熱望しているであろうことは、容易に想像がつく。特に、安倍総理が頻繁に口にす
 る「抑止力」という考え方は核武装に繋がりやすい。軍事力を高めるのは戦争のためで
 はありません。それによって、潜在的にな敵国に、我が国を攻撃することを思いとどま
 らせる抑止力になるのです。つまり、軍事力を高めるのは、戦争をしないためなのです、
 という理屈だ。この論理でいけば、核兵器を持つのが究極の抑止力である。安倍総理が
 原発の再稼働や核燃料サイクルの維持に強くこだわる最大の理由は、核武装である可能
 性が高い。
・集団的自衛権の行使は日本人の世界観を変えるような出来事なにに、ニュースはどうも
 細切れになってしまう。解釈改憲は立憲主義の否定なのに、その根本の批判がいつの間
 にか忘れ去られて、個別ケースの論議を一生懸命報道する事態になったのも、安倍政権
 の注文相撲に乗ってしまったということだ。
・もちろん、今すぐに戦争が起きるわけではないだろう。実は、私が一番心配しているの
 は、米国が次の政権になった時だ。シリア内戦やウクライナ紛争への対応を見ても、オ
 バマ大統領は武力行使に関しては非常に慎重で、基本的に戦争はしたくない人なのだと
 思う。しかし、仮に、次が共和党政権だとすれば、選挙キャンペーンの最中から必ずオ
 バマの「弱腰外交」を批判し、政権に就けば、すぎに戦争の準備を進めるだろう。そう
 なったとき、日本が戦争に巻き込まれる可能性は飛躍的に高まる。その時に日本の総理
 が安倍氏であれば、むしろ、日本が米国の大統領を焚きつけて一緒に戦争に行くことさ
 え考えられる。

本当の「積極的平和主義」とは
・米国がイラク戦争で失敗を犯した最大の原因は、政権に都合のいい情報だけが上にあが
 り、都合の悪い情報が葬り去られたことだ。軍や諜報機関の中では、そうした情報操作
 がしばしば勝手に行われる。情報の収集・分析に膨大なエネルギーとカネをかけている
 米国でさえ、操作されたねつ造情報で戦争を始めてしまうほど、情報というのは脆いも
 のである。
・本来、外国から入る情報は、かなりの部分がカセネタであるとの前提にたたなければい
 けない。だが、安倍政権の論理は、「米国がきれる大事な情報だ。絶対に守らなければ
 いけない。だから特定秘密保護法だ」というものだ。こういう発想では、いずれ米国の
 二の舞となるのは避けられないだろう。
・私が聞いた当時の官邸スタッフの話では、誰かが後生大事に持ってくる「秘密情報」の
 約半分は、カゼネタではないかという。だが、日本の官僚や政治家には、情報の真贋を
 見分ける能力がほとんどない。特定秘密保護法の危うさは、ここにある。皆で議論すれ
 ば、勇気ある人が「ちょっとおかしいぞ」と声を上げることでチェック機能が働くが、
 特定秘密保護法で情報を見られる人の数を限定すれば、情報の信ぴょう性に疑問を持つ
 人や、「証拠がなければダメだ」と突き返す人は減る。その結果、内部のチェック機能
 がうまく働かなくなるからだ。まして、日本版NSCの中核メンバーはたった四人。総
 理の力は圧倒的に強い。ニセ情報で国家の命運が左右されてしまう危険性は、かなり高
 いと言える。
・集団的自衛権の必要性を安倍政権が国民に訴えるとき、一番の根幹となったのは、「現
 在の日米安保条約は片務的である」ということだ。米国は安保条約によって日本を守っ
 てくれるのに、日本は米国を守らなくてよいことになっていますと。もしも、日米安保
 条約が本当に米国にとって一方的に不利な条約であるとしたら、そんな条約に米国がサ
 インするわけがない。仮に、途中から情勢が変化して米国に不利になったとするなら、
 必ず改訂を要求してくる。米国というのはそういう国だ。自分が不利だとわかったまま
 放置することなど、絶対にあり得ない。
・ところが米国は、「安保条約を改定しよう」とは口が裂けても言わない。日米安保が、
 実は米国にとって非常に都合のよい条約だからだ。どこが有利なのかというと、沖縄の
 基地である。米国にとって沖縄の基地は、世界中に何百とある米軍基地の中でも非常に
 特殊な「素晴らしい」基地なのだ。まず、ほぼ米軍の思うままに使える。基地周辺の管
 制権なども全部米軍が持っている。自国の領土と同じだ。まるで日本が植民地になって
 いるようなものだといってもよい。しかも、「思いやり予算」と称して、日本政府は多
 額の維持経費まで払ってくれる。その上「基地を置いていただく」などと言っている。
 さらに、沖縄からグアムなどの他の地域に米軍基地を移転する際には、「その経費を出
 します」とまで日本政府は言っている。こんなありがたい国は、世界中どこを探しても
 他にない。
・沖縄の人達は、毎日毎日騒音などに苦しめられ、米兵の犯罪でとんでもない被害を受け
 ている。ものすごい負担ではないか。それなのに、自国の政府に「米国だけが義務を負
 っていて日本は負っていない。米国に申し訳ない片務条約だ」などと言われるのだから、
 怒り心頭に発していると思う。これは沖縄に限ったことではない。日本にある米軍基地
 周辺の住民すべてに当てはまる話だ。日本側には目に見える、日々負わされている義務
 や負担が山ほどあるのに、米国が負っている義務といえば「何かあったら守ってあげま
 す」だけである。しかも、その義務さえ果たしたことはない。日米安保条約は、米国に
 とって非常に有利な条約なのだ。
・不思議なことに安倍政権は、自分の方から「日本は米国を守ります。集団的自衛権でそ
 れができるようにしてあげます」と言っている。こういう場合、「米国を守る見返りと
 して日本は何を取るか」があって当然なのに、そういうものが何もない。しかも、集団
 的自衛権は米国が本気で要求しているわけでもないのだ。自ら「傭兵にしてください」
 と言っているようなものである。
・仮に米国が、「日本が守ってくれないのなら、俺たちはもう日本のことを守らないぞ」
 と言うのだったら、「それなら米軍基地は日本から出て行け」と言い返せばいい。向こ
 うのほうから「置いてください」と言うに決まっているのだから。なぜなら、米軍がも
 し沖縄から撤退すると、その移転先には、日本のような莫大な資金を負担してくれる国
 などない。ハワイやグアムやサイパンなど自国領に移しても、日本から受け取っていた
 資金の分を誰が負担するのか。ところが政府は、「今のままでは米国に悪い、悪い」と
 言っている。このコンプレックスは、いったい何なのだろう。
・もう一つ、日本国民が錯覚に陥っていることがある。たぶん、安倍総理も勘違いしてい
 るのではないかと思う。それは、集団的自衛権の行使は米国と一緒に中国と戦うための
 もの、という幻想だ。集団的自衛権の議論では、いかにも日米が協力して中国と戦うイ
 メージで、それを期待している日本人もかなりいるようだが、米国は中国との戦争を絶
 対に回避するはずだ。
・米軍が日本のために尖閣を取り戻そうと多くの血を流すことまでしてくれるかどうかは
 わからない。今の米国は、何とか戦争をしないでやっていこうとしているからだ。「日
 本への行為でやってくれるかもしれない」と期待する人もいろだろうが、今の米国の思
 惑からすると、まず起こり得ないだろう。なぜなら米国は、常に「正義」とともに「自
 分の損得」を考えるからだ。
・外交や安全保障は、経済と一体でしか語れない。経済力という基礎の上に外交力や軍事
 力を乗せて国を支えるという観点からすると、今の米国の損得勘定では、中国と戦争を
 したら失いものが非常に大きい。それは軍事的な打撃だけでなく、中国のマーケットを
 失うことによる打撃で、将来性も勘案すれば、日本のマーケットを失うことより、その
 損失ははるかに大きい。そういうことを米国は冷静に判断している。現在の米国は、中
 国とともに太平洋を何とかうまく仕切っていきたいと考え、その中でできるだけ多くの
 利益を得ようとしている。
・つまり米国は、日本と中国とを常に天秤にかけなければならない立場に置かれている。
 仮に日本が中国と事を構えれば、米国は踏み絵を踏まされることになる。もしも日本が
 中国と事を起こそうとしたら、米国にすぎに止められてしまうだろう。下手に拳を振り
 上げると下ろしどころがなくなり、日本政府は大恥をかいて譲歩せざるを得なくなるく
 らい、米国に追い込まれる可能性が充分にある。
・北朝鮮が米軍を攻撃する可能性は極めて低い。米国に届く長距離弾道ミサイルを実戦配
 備するにはまだ時間がかかるし、それが実現したとしても、米国を攻撃するのは、まっ
 たく勝ち目のない自殺行為だ。朝鮮の近海にいる米軍艦にミサイルが当たって沈没させ
 たとしても、その直後に反撃を受けて徹底的に叩かれる。米国本土から大陸間弾道弾を
 いくらでも打ち込めるから、日米が共同して北朝鮮と戦うために集団的自衛権が発動さ
 れる可能性は、ほとんどないだろう。 
・問題は、韓国と北朝鮮が戦争になって、米国が韓国側についた時だ。その時、北朝鮮の
 動きには、二つの可能性がある。一つは、「米軍は沖縄の基地から出動するのだから、
 日本はわか国の的である」とお理屈で、北朝鮮が日本を攻めるという選択肢。ただ、そ
 うなると北朝鮮は日米韓を相手に戦うことになり、絶対に負けてしまう。そこで、日本
 が中立でいてくれるなら北朝鮮は日本を攻撃しない、というのが二つ目の選択肢になる。
 このオプションが提示されたとき、今の安倍政権の考え方では、「一番大事な米国が韓
 国を助けて北朝鮮と戦争をし、それで朝鮮半島が大混乱になれば、日本にとっても一大
 事。北朝鮮を叩くことこそ日本のため」といった理屈をつけて、戦争をするだろう。
 実際にそういう選択をするとしたら、非常に大きな間違いだと私は思う。最も大事なこ
 とは、他国と戦争をしないこと、日本が攻められないようにすることだ。
・韓国と北朝鮮が戦争になり、米国がそれを助けに行くときには、必ず沖縄の基地から出
 動する。つまり、日本はすでに事実上戦争に巻き込まれているわけだ。北朝鮮の場合は
 直接ミサイルを撃ち込まれる可能性が十分にある。
・「日米安保が大事だ。集団的自衛権で行かなければいけない」というロジックでノコノ
 コ出て行けば、ミサイルを何発か東京などに撃ち込まれ、ものすごい数の死人がでるか
 もしれない。安倍総理は集団的自衛権の閣議決定のとき、「日本国民を守る」とあれだ
 けはっきり言ったのだから、そんなことは絶対にすべきではない。
・それでは集団的自衛権はどこで使われるのか?もっと遠いところだ。具体的に言えば、
 中東かアフリカだろう。中国相手に使われるより、何百倍も可能性が高いと思われる。
 特に、安倍総理の言動から見て、当面は中東で何かあった時に行使される可能性が高い。
・米国内の世論は、中東に出兵して自国民の血を流すことに、かなり批判的になっており、
 自国の人的犠牲と財政的負担をなるべく小さくしたいと考えている。そんな折りも折り、
 日本で集団的自衛権の行使が認められた。これを利用しない手はない。自国民の代わり
 に日本人に血を流してもらえばありがたい、と考えている。最悪のケースとして、米軍
 との共同作戦ということで日本軍が中東に行ってみたら、米軍は司令官と無人機だけだ
 った、ということさえ起こり得るのではないかと、私は思っている。
・日本の挑発に乗らず、「中国もやりすぎた」という国際世論を高めていくことを考える
 べきだ。日本がいくら「軍備を増強します。集団的自衛権で米国に協力します」と言っ
 ても、中国は引くどころか、「自分達も頑張らないといけない」と考えるだけだ。最終
 的な抑止力になるのは、強い軍隊ではない。国際世論であり、国際的にな経済の結びつ
 きである。現実に、これらが戦争に対する最大の歯止めになっている。
・尖閣諸島では中国が突然占領することもあり得るかもしれない。国際的に尖閣の問題は
 議論されておらず、尖閣が日本の領土だということが認知されていないからだ。しかし、
 日本の領土だと国際社会が疑いもなく認めているとことを、中国あるいは他の国がいき
 なり攻め取ることなど、今の時代にはあり得ない。そんなことは国際社会が絶対に認め
 ない。日本がなすべき最も重要なことは、「強大な軍事力をつける」ことではなく、
 「国際世論を味方につける」ことである。 
・70年間も武器を取って人を殺したことがない国民というのは、世界的に数少ない。そ
 れが国際社会での信頼に繋がっている。だからこそ、日本のNPOやNGOは紛争地域
 に行った時、どちらの国の側にも偏らず、どちらの国からも敵とみなされず、常に中立
 な立場で積極的な役割を果たしてこれたのだ。 
・「米国は正義の味方だ。武器輸出も安全保障も、正しい国と一緒にやっていれば日本は
 安全だし、自分達の行動も正しいと評価される」という安倍政権の単純な思い込みが、 
 いかに危険であるかわかる。実際には米国は、ベトナムで間違え、アフガニスタンで間
 違え、イラクでも間違えた。集団的自衛権で最も問題なには、「友達の敵は敵」という
 論理である。「日本にとってネイ国は一番の親友。一番の親友が嫌いな奴は俺も嫌いだ」
 という論理構成は、非常に大きな間違いに繋がる。なぜなら、「米国なんて大嫌いだ」
 と思っている国が、「日本のことは大好きだ」と思ってくれているケースがあるからだ。
 イラクやイランはその典型だ。世界中にそういう国はたくさんある。特に中東には多い。
・今後、日本が米国と一緒に海外に出て行って人を殺すようにことをすれば、、戦後70
 年間で築き上げてきた国際的信頼、「日本の平和ブランド」を、一瞬で失うことになる。
 当然、日本にも米国と同じ色が付き、その戦いの正義がどちらにあるかにかかわらず、
 日本は必ず多くの敵を作ってしまう。 

アベノミクスの限界
・日本国民も政府も、円安になればドーンと輸出が伸びると思い込んでいるが、実際には
 伸びなかった。これは安倍政権の大誤算だ。金融緩和で実現した円安による輸出増や、
 それに伴う大規模設備投資の復活という予想は外れ、当初のシナリオは完全に崩れた。
・景気対策として公共事業を増やすのは、工事量を増やして景気をよくするのが目的だ。
 しかし、すでに建設業界の受注量は限界に来ているので、これ以上公共事業の執行を増
 やそうとしても価格を上げるだけで、景気対策にならないばかりか、税金の無駄遣いに
 なるだけだ。それでも安倍政権は公共事業のバラマキをやめようとしない。アベノミク
 スは、完全に公共事業中毒の悪循環経済に陥っている。 
・安倍総理が目指す「列強志向・富国強兵」には、長期政権が必要だ。そのためには何を
 おいても、内閣支持率の維持が至上命題となる。そこで、国民の支持を繋ぎとめる方策
 として、「経済が良くなるのではないか」と期待を持ち続けさせることが大事になって
 くる。一番わかりやすいのは、手っ取り早く株価を上げるか、少なくとも維持すること
 だ。 成長戦略も、そのための道具の一つと言える。株価対策だけには全力を挙げた。
 株価が上がれば、こういう言い訳ができるからだ。「株価を見てください。上がってき
 たでしょ。市場は将来を楽観しています。もう少し待てば、皆さんの暮らしも良くなり
 ますよ」
・実は、日本企業の約七割は赤字で、法人税を納めていない。大企業は最近では黒字だが、
 過去に赤字を出した企業は翌年度以降黒字でも、最長9年間、過去の赤字額を黒字額か
 ら差し引いて納税額を減らすことができる。 
・市場から見れば、法人税減税は、確実の株価が上げる政策である。なぜなら、一応利益
 を出している企業であれば、それ以上何の努力をしなくても、税金をまけてもらった分
 だけ確実に税引き後利益が増え、それで配当を増やしたり、自社株を買ったりできるし、
 そういうことをしなくても、剰余金が増えれば企業価値が上がるからである。
・「法人税さえ下げれば日本は栄える」と思い込んでいる人もいるようだが、それは間違
 いだ。米国は日本よりも法人税が高いが、企業が動きやすい環境が整っているので、法
 人税が少しくらい高くてもたいした問題にはならない。日本も、法人税減税以外のこと
 をどれだけやるかが問われている。  
・新たな成長戦略には、官民を問わない女性の積極登用や、子育て環境の整備など、かな
 り思い切った女性の活用促進策が盛り込まれた。女性を敵に回すと、日本を「戦争がで
 きる国」にすることは非常に難しくなるからだ。戦争に対する女性の拒否反応は非常に
 大きい。いろいろな世論調査を見ても、原発再稼働や集団的自衛権に賛成の女性は明ら
 かに少ない。とりわけ、集団的自衛権行使容認の閣議決定の強行後に支持率が急激に落
 ちた背景として、女性が非常に強く反対したからだということが、世論調査で明確にな
 った。 

間違いだらけの雇用政策
・仮に日本が成長を目指さないとしたら、成長が泊まるだけではすまない。今の国民の生
 活水準を維持していくことはできなくなるのだ。いくら日本が「競争をやめます」と言
 っても、グローバルは競争は止まらず、今後ますます激化する。日本の産業が現在の実
 力を保っても、相対的に競争力が落ちることになるので、分かち合うはずのパイは縮小
 するばかりだ。世界中の国々がどんどん豊かになっていく中で、日本だけが「今のまま
 でいい」と言い続けることも、おそらくできないだろう。他の国の人々がいい生活をし
 ていれば、「それと同じような生活がしたい」と皆が思うに違いない。
・世界の国々が、それぞれ異なる価値観を持ちながら競争し、成長を目指す中でも、日本
 人として「まあまあ幸せだね」と言える水準を守っていくためには、皆で知恵を出し、
 力を合わせて、やはり「頑張る」ことがどうしても必要だということは、忘れてはなら
 ない。しかし、今の安倍政権は、その「頑張り」の負担を、すべて国民に押し付けよう
 としている。企業を守らなければいけないから、残業代をタダにしましょう。競争に勝
 ち残らなければいけないから、正規雇用を非正規雇用に変えてコストを下げましょう。
 企業には、国際競争のために減税しましょう。消費者には、財政再建のために消費増税
 で負担してもらいましょう。そういうことを言っている。「何のための成長なのか」が
 忘れられ、まさに成長のための成長という成長至上主義になっている。
・日本人は有給休暇を使うことさえ後ろめたさを感じる人が多いが、フランス人は1年の
 うち1ヶ月以上休みを取ると決めている。だが、国際競争をする上で、「企業は儲けな
 ければいけない」という箍がカッチリはまっているから、1ヶ月以上休んでも他の国と
 競争できるように、仕事の効率を上げようとする。できるだけ働かないで儲けよう、も
 っとたくさん生産できるようにしようとする意識が、経済の進歩を裏で支えている面が
 あるわけである。ところが日本の場合は、とにかく働くことがいいことだと考えられて
 いる。だから、兵器でムダなことなかりやる。「働くことはコストである」とは考えら
 れていない。
・私は、「怠惰のすすめ」を提唱する。怠けようと思えば、効率のよい仕組みを考えるよ
 うになる。「怠けることは良いことだ」と考える方が、日本経済は発展すると思う。働
 かないことによるメリットとして、最近よく言われるのは、少子化対策になるというこ
 とだ。日本の男性は、「企業奴隷」と言われるほどよく働く。特に、子育て世代の働き
 すぎは目に余る。男性は自由な時間がないから、家事や子育ての手伝いはできない。そ
 の結果、女性に負担が偏り、少子化に繋がる。逆に言えば、労働時間を減らせば、直接
 的に少子化対策になるということだ。 
・日本では、基本的に「労働=社会にすべてを捧げる」という考え方が主流なため、リタ
 イヤした人やお年寄り以外は自由に使える時間が圧倒的に足りない。そのため、会社以
 外での社会活動が極めて低調だ。この点は、欧米先進国に比べてものすごい格差がある。
 欧米と日本の最大の違いは何かと問われれば、私は、社会の公的な活動における個人の
 役割の大きさだと答えている。 
・日本では、消費者活動が弱いから、消費者保護は消費者庁にお願いします、労働運動が
 弱いので、労働者お権利保護は厚生労働省に、環境保護団体が弱いので、環境問題は環
 境省に、という具合に、何でもかんでも役所任せにする。結果的に役所の権利が強くな
 り、社会における存在感も巨大になっている。
・日本社会は、公的な活動はすべて「官」がやり、「官」に対する「民」は企業しかない
 状態だ。つまり、「個人」が役所と企業の二つに埋没している。ここが他の先進諸国と
 の大きな違いで、非常に歪んだ社会である。その意味では、日本は、まだ一度も先進国
 になったことがない。 
・米国には、アップルやグーグルやアマゾンなど、新しい商品を生み出すというよりは、
 システムそのものをつくり変えるような企業群があり、他の国の企業には真似できない
 非常に付加価値の高い産業が、次々と生まれている。しかし、日本の経営者がやってい
 るのは、新しいビジネスの創出という本来の経営者の仕事ではなく、労働者に向かって
 「もっと競争しろ」と言うことだけだ。
・安倍政権は外国人労働者の導入を緊急閣議で決めた。途上国から人を連れてきて、技能
 実習で日本の高い技術を学んでもらおう、これも国際貢献の一つだ、という大義名分だ
 が、実態はまたく違う。米国務省は、安倍政権が新たな成長戦略の素案に拡充を盛り込
 んだ「外国人技能実習制度」について、強制郎度の悪用されている事例が後を絶たない
 と批判している。「強制労働」だと言われているのに、安倍政権の反応は極めて鈍い。
・経営者は、ふたこと目には、中国との競争と言い、労働者にもっと頑張って働けと言う。
 しかし、彼らにはマクロ的な状況が理解できていない。過去20年ほど、日本の経営者
 は、ほとんど何も考えず、コストカットだけに明け暮れていた。グーグルやアマゾンや
 アップルのようにまったく新しいビジネスモデルを考える能力がない経営者ばかりだか
 ら、結局、今あるまったく独創性のないビジネスで競争するため、途上国にすぎに追い
 つかれ、労働者にコストカットのために生活を切り下げることだけを押し付けてきた。
・日本の雇用問題を解決するには、環境を根本から変えることが必須だ。私が考えるのは、
 次の策である。
 ・「同一労働・同一賃金」の実質化
 ・マイナンバー(共通番号)と年金をリンクさせる
 ・サービス残業に懲役刑という法律をしっかり運用
 ・残業の割増率を高くする
 ・有給休暇の義務化
 ・雇用関連の情報公開の義務化

日本再興への提言
・これらの日本は、海外にモノを輸出する以上に、外資にどんどん入ってもらって経済を
 活性化させるべきだ。その海外企業が、どうやって付加価値の高いビジネスをやるのか
 を見せてくれれば、日本企業も変わるかもしれない。
・安倍総理は、軍事力増強と武器・原発輸出などを「武器」にしようとしているが、国際
 世論が日本を自死する状況をつくっていく上で必要なのは、むしろ、「ソフトパワー」
 だ。クールジャパンの文化や価値観を世界に売っていけば、大きな「武器」になる。原
 発がそびえ、世界に武器を売る「死の商人」の国を好きになる人は少ない。
・日本のアニメは面白い、ファッションがかわいい、自然が美しい、おもてなしの心に癒
 される。といったイメージは相互に関連して、日本ファンを拡大する。「里山資本主義」
 も、同じ流れの中で「日本らしさ」を活かしたビジネうになるはずだ。
・日本のように技術レベルが世界のトップレベルの国では、従来型の生産消費様式から脱
 却し、新たな価値観に基づく経済社会を築いていくことが可能になってきた。単なる懐
 古趣味ではなく、日本人が日本人らしい生活を実現できる機会をついて手にしたと考え
 るべきだ。このような新しい考え方に立てば、日本人はもっと楽しく仕事ができるよう
 になるはずだ。   
・日本人にとって「原発ゼロ」は、単なるエネルギー政策ではなく、成長戦略でもある。
 競争力を持つ産業は自動車と一部の機械や素材産業ぐらいしかない中で、風力、太陽光、
 バイオマスなどの再生可能エネルギー産業に集中投資すれば、新たな雇用と所得を生み、
 税収を増大させ、福祉により多くの予算を回す好循環をつくることができる。
・鉄のコンクリートで自然を破壊する大量生産・大量消費型の成長の仕方から、脱原発で、
 環境を維持しながら国民の生活水準も落とさない、国としての新しい生き方だ。
・世界の覇権を握るのは原発を制する者ではなく、再生可能エネルギーを制する者である。
 原発を売り歩くのをやめて、再生可能エネルギーとスマートシティーと省エネ技術を世
 界に広めれば、「死の商人」から「夢の伝道者」に日本の立場が変わる。  
・世界の人が驚くのは、京都の醜さである。京都は本来美しく歴史ある街だったのに、安
 っぽい商業カラーを塗りたくってメチャクチャに破壊している。 

「改革はするが戦争はしない国」へ 
・安倍晋三という総理は、中国に勝とも劣らなぬ覇権主義のスーパーナショナリストらし
 い、という疑いが広がっている。天秤の傾きをもう一度日本に戻すためには、「成長の
 ための改革はするけれど、戦争はしない国、日本」という方向を目指していくべきだ。 
・「日本は国際秩序を守る立派な国だ。アジアお安定を損なうような行動はしないいs、外
 交的にも大人の対応をしている」という国際的な信頼を勝ち得れば、仮に日中間を紛争
 が起きたとしても、「どちらが悪いのか?」と国際世論が迷うようなことになならない。
 国際世論が「どう考えても日本の方が正しい」と思ってくれれば、中国に対する圧力に
 繋がるだろう。しかし、今の安倍政権はまったく逆のことをしている。
・安倍総理の言動から察せられる理念の究極部分は、「太平洋戦争を侵略戦争とは言いた
 くない、A級戦犯は悪くない」ということに尽きる。そんな独りよがりの理念は、国際
 的には通用しない。  
・かなり多くの国民が、「中国も韓国もけしからん、あんな奴らはやっつけろ」となりや
 すい雰囲気の中で、安倍政権を支持する状況になっている。こうした状況が大きな危険
 性をはらんでいることを、日本人は真剣に考えるべきだ。安倍政権にとっては、今の状
 況は好都合で、中国の脅威という危機感を煽りながら、軍事力強化路線を突き進んでい
 くことができる。だが、世論をそのように誘導することによって、安倍総理自身がその
 世論を引きずられ、自縄自縛自の状況に陥ることも考えられる。
・外交安全保障の問題は、反中反韓の騒然とした雰囲気が漂う中で議論して決めるべきの
 ものではない。むしろ、国内のそうした流れを抑え、いきり立っている国民をいかに説
 得し、抑えていくかに心を砕きながら外で交渉をするのが、信の意味での国家のリーダ
 ーである。 
・安倍総理は、中国や韓国に対する敵意を煽り、中韓が反発すると、保守層は「安倍さん
 頑張れ」と旗を振って支持率が上がる、という計算をしている。外に対する国民の反感
 を自分の支持率を上げるために利用する手法は、独裁国家でよく使われるやり方だ。こ
 れは、リーダーが絶対にやってはいけないことである。その意味では、中国、韓国、北
 朝鮮も同じだ。米国や欧州諸国は、腹の中では「どっちもどっちだ」と思っているだろ
 う。情けない話である。
・本当のリーダーとは、国内にナショナリズムが沸き起こった時にはそれを抑えながら、
 外とは厳しい交渉をする。安倍総理も、「日本は大国だ」と言うのなら、大国らしく真
 のリーダーとしての姿を示し、国内を説得しながら外との交渉に臨んてほしい。