金融資産は今すぐ現金化せよ :須田慎一郎

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この本は、今から5年前の2008年頃に書かれたものである。そのため社会背景が、現
在と少し変わっている部分もあるが、その根底にあるものは、今もぜんぜん変わっていな
い。
当時は、「リーマン・ショック」による影響で、マーケットが炎上し、円高・株安に慄い
ていた時だった。1929年の世界恐慌の再来だ。もはやマーケットは信用できない。金
融証券は、いつ紙くずになるかわからないという雰囲気が、漂っていたような気がする。
しかし、それから5年後の現在、マーケットはほぼリーマン・ショック前までの状態に、
回復したのではと言われる。リーマン・ショック後の当時は、これほど早くマーケットが
回復するとは、誰も想像できなかったのではと思う。
しかし、実体経済もほんとうに回復したのだろうかという点においては、疑問が残る。マ
ーケットが、実体経済を正確に反映していないのは、明らかだ。米国を始めとする各国が、
競って異例の経済緩和政策を取り始めてから、実体経済とマーケットとの乖離は、さらに
大きくなったきたのではと感じる。
日本においても、昨年からのいわゆる「アベノミクス」で株価が急上昇し、「日本の経済
は回復した」と、政府やマスコミなどがはしゃいでいるが、実体経済は回復したという状
況からは程遠く、我々庶民の生活も、苦しいままだ。そして、金融資産リスクも依然とし
て高い。
異次元の規制緩和で、市中にお金をじゃぶじゃぶ流し込んで、無理やり株価を押し上げて
いる現在の状況は、いつまで続くのだろうか。近い将来、金融大崩壊時代が到来するので
はないかと、戦々恐々の心境なのは、私だけなのだろうか。

「現金化」のすすめ
・甘言を弄して、投信を大量販売してきた銀行や郵便局は、顧客である私たちがハッピー
 になるために投信を勧めているわけではない。自らが手にする各種手数料が目当てであ
 り、それはあくまで自らがハッピーになるために行ってきたことに過ぎない。
・投信は旧態依然とした常識のなかでいまも運用されている。そのような「古いコンセプ
 ト」の商品にいくら資金をつぎ込んでみたところで、資産を殖やすことができないばか
 りか、元に戻ることすら考えにくいだろう。すでに役割を終えた商品の先に見えてくる
 のは「損失」ばかりではないだろうか。
・「総員退却せよ!」現状をつぶさに検証すればするほど、いまは投信できる環境にない
 ことが見えてくる。プロと称する人たち、さらには銀行や郵便局といった金融機関の誘
 惑に乗っている場合ではない。もしあなたが、いまもなお投信を続けているなら、すぐ
 さま「現金化」を急いでいただきたい。

炎上する地震地・米国
・リスクとリターンはイコールの関係にある。ノーリスクのリターンはないし、逆にノー
 リタンでリスクだけあるような商品には誰も手を出さないのは当たり前だろう。「ハイ
 リスク・ハイリターン」などといわれるように、リスクとリターンは必ず正負の相関関
 係にあるといえる。
・これに対し、金融の世界では、利益を高めるために、なるべくリスクを減らして、リタ
 ーンを増やそうという試みが長年されてきた。そこで生み出されたのが、保証会社とい
 うシステムだ。例えば銀行からローンを借りる際、多くの場合は保証会社に対する保証
 料というものも盛り込まれている。借りるときは銀行から資金が出ていたとしても、万
 が一、ローンの返済が不可能、つまり債務不履行となった場合には、保証会社が銀行に
 対して残債を払うようになっている。そうすることで銀行はリスクを減らしているわけ
 だ。
・借り手の信用力が極めて低いサブプライムローンは、デフォルト率の高い融資であるこ
 とは間違いない。そしてデフォルト・リスクを回避するCDSを組成しようとしても、
 CDSプレミアムが適正水準に設定されていたならば、最終的に貸出レート(貸出金利)
 が極めて高率になり、借り手側にとって借りたくても借りられない状況に陥る可能性が
 高くなったはずだ。しかしCDS市場に多額の資金が流入したために、CDSプレミア
 ムが大きく低下し、結果的にサブプライムローンの貸出レートも大きく低下していくこ
 ととなったのである。これがサブプライムローンが、まさに爆発的に残額を増やしてい
 った最大の理由だ。
・サブプライムローンは、万が一住宅ローンが返済できなくなった場合、自宅を明け渡し
 さえすれば、以後の返済は免除されるという「ノンリコースローン」となっている。日
 本ではローンが返せなくなっても返済の義務は残るが、サブプライムローンの場合は家
 を手放せば終わりとなるのだ。それによって決して裕福とはいえない米国民が安易な借
 金を繰り返し、そこに金融機関が群がっていった結果、サブプライムローンは異常なま
 でに膨らんでいったのである。
・改めて米国産業の実態を検証してみると、実はこれといった好調な業種がなにもないこ
 とに驚かされる。不振叫ばれて久しい自動車業界をはじめ、製造業はほぼ壊滅状態にあ
 る。あえて産業として成立していた業界をあげれば、軍需関連に金融・不動産、コンピ
 ュータ関連ぐらいだろうか。そのたまで米国経済を潤わせてきたのは、GDPの約7割
 を占める「個人消費」だった。しかも、その消費は米国民の「借金」によって支えられ
 てきた。
・米国のFRB(連邦準備制度理事会)は利下げを久留かえ氏、マーケットに大量の資金
 を供給し続けた。それによって住宅バブルが醸成され、米国民は住宅価格の上昇を当て
 込んで自動車などを次々と買いあさり、個人消費は大きな盛り上げりを見せた。大量消
 費に沸く米国経済の恩恵にあずかろうと、世界各国からモノが輸入され、米国は世界最
 大の消費市場として突き進んでいった。
・米国は、製造業が主導した実体経済の好調さではなく、金融を中心に盛り上げっていた
 に過ぎなかったのだ。実体をはるかに上回るマネー・ゲームに沸く米国経済は、明らか
に「バブル」だったのである。

世界中で火の手があがる
・中国経済は、原油をはじめとするエネルギーを安定的、かつリーズナブルに仕入れるこ
 とで成長を遂げてきた。だが、その発展を支えてきたエネルギーに不安要因が持ち上が
 っている。しかも、それは一時的なものではなく、この先10〜20年といったスパン
 で襲いかかろうとしている。中国の発展がエネルギー問題に大きく依存している以上、
 その保証は、どこにもない。
・米国をはじめ4〜5%の経済成長を遂げてきた国々は、多かれ少なかれ、急成長を遂げ
 てきた中国経済と関係を深めることで発展してきた。ましてや、米国の景気が失速しつ
 つあるなか、中国の経済成長は、世界経済の成長エンジンのひとつとして存在感が増し
 ている。そこでエンジンが止まる、あるいは停止しないまでもスピードがあがらない状
 態に陥れば、世界経済全体に大きなブレーキがかかるのは間違いない。そのエンジンを
 うまく動かせるかどうか、そのカギを握るのが、エネルギー需給である。
・「グローバル経済」が浸透するなか、経済動向を先々まで見通そうと思ったら、日本の
 産業や米国の金融界だめに目を凝らしてばかりでは見えてこない。そもそも世界中の出
 来事をすべて把握しろ、ということ自体、絶対に不可能である。おそらく金融や経済、
 運用の世界にいる「プロ」は、世界情勢について、それなりの知識を有しているだろう。
 しかし、知識として持っていることと、そのような問題が将来どういう展開を見せてい
 くかということを正しく見通せるということは別である。
・改めて申し上げておきたい。「マーケットの予想はあたるはずがない。」「リスク分散
 には意味がない。」

日本が抱える「政治的危機」
・日本のような財政赤字の国が景気対策のために財政出動をして景気回復を図るというこ
 と自体、無理な話なのだ。日本には、国と地方を合わせると800兆円を優に超える借
 金がある。そこで赤字国債を新規に発行すれば、国債の流通量が増えることで国債その
 ものの価値が下がることから、その価格は下落する。債券価格が下落すれば、金利は上
 昇する。金利が上昇すれば、内外の金利差によって、総体的に日本円の魅力が高まり、
 円を買う動きが起こってくる。そうなると「円高」になる。円高になると、どうなるか。
 国内で生産して海外に輸出する企業は、ドル建て決済であるため、円で受け取る金額が
 目減りする。
・財政出動によって発生したプラス効果は、円高によるマイナス効果によって打ち消され
 てしまう。いくら財政出動を仕掛けても、景気拡大にはつながらないうえに、借金ばか
 りが積み上がるという構図になるのだ。
・先進7か国の財政を見るときに、その国が健全かどうかを見る明確な基準が設定されて
 いる。国際基準でいえば、DGPと借金額が同額であれば、100、それ以下であれば
 健全視され、それを上回ると「不健全」という烙印が押される。
・2007年の債務残高比率は、日本の場合、180.3%にものぼる。それに続くのが
 イタリアの116.9%であり、その他の先進国はいずれも100%以下に収まってい
 る。ちなみに、財政赤字に苦しむとされる米国でも62%ほどに過ぎない。
・日本は年々膨らむ借金に苦しめられ、最悪の場合、国家財政破綻という事態まで予想さ
 れる。実際、2年ほど前には、日本は国際マーケットから「日本の財政は破綻寸前」と
 見られていた。マーケットの共通認識が「破綻寸前」から「破綻」に変わった時点で、
 日本はどうなるか。まず、国際が見向きもされなくなる・財政破綻している国の借金証
 文を買う人間は自ずといなくなり、新規国債を発行しても売れず、手持ちの国債も叩き
 売られるだろう。そうなれば、国債価格は暴落必至の情勢である。債券価格が下落すれ
 ば金利は上昇するので、長期金利の上昇局面が訪れるだろう。
・国債価格が暴落すれば社債もつれて安くなり、株価も暴落する。乱暴な言い方をすれば、
 財政が破綻しているような国にある企業の株は、誰も買わなくなるだろう。
・日本の国債が暴落→債券もダメ、株式もダメとなれば、日本には魅力的な投資先がなく
 なり、資金が引き上げられていく。当然、日本円も投資対象から外れ、円売りが加速し
 「円安」となる。つまり、行き着く先は、債券安、株安、円安の「トリプル安」である。
 「日本の財政は破綻状態にある」とマーケットで烙印を押された瞬間に、極めて悲惨な
 状況が襲いかかってくる。政府は日本経済が「トリプル安」という壊滅的打撃を被らな
 いように、なんとしてでも「財政の健全化」を図らなければならないのである。

金融商品の「現金化」を急げ!
・投資信託の最大の特徴は、「長期投資」と「分散投資」にあるとされる。一般的に投資
 期間が長ければ長いほど、変動リスクは小さくなるといわれる。それが「長期投資」
 のメリットだ。異なる値動きが予想される株式や債券といった複数の投資先への「分
 散投資」をすれば、収益性が安定的になるといわれる。
・しかし、「長期投資」についていえば、長期だからといって必ずしも変動リスクは小さ
 くならない。この18年間で世界の株は3倍近くに殖えたのに対し、日本株は半分以下
 に目減りしてしまっている。18年という長期間にわたって日本株に投資したとしても
 儲けにつながらない。
・「リスク分散」もまた、意味を成さなくなっている。「世界同時株安」によって日本株
 はもちろん、先進国の株式は軒並み下落した。投資先をいくら広げてみたところで、株
 式も債券も為替も商品も、世界全体を覆う信用収縮の前にはひとたまりもないのだ。
・投信は、それらの投資先をパッケージ化した商品に過ぎない。そうである以上、儲かる
 わけもない。 
・グロソブが爆発的な任期となった最大の理由は、「分配金」にある。それまでの投信は、
 当初の資金が将来的に値上がりすることを狙って設計されていた。ところが、グロソブ
 は、将来まとまった形でリターンを得られることよりも、「分配金」という形で毎月少
 しずつ受け取れるという「お得感」を前面に押し出した。折からの「年金不安」とも重
 なった。
・しかし、米系投信会社幹部は、こんな表現でグロソブの問題点を視敵する。「あれは
 「錯覚」を利用した商品にほかならない。人間というのは、遠い将来のロス(損失)よ
 りも、目の前ですぐに得られるリターンの方がよく見えてしまう。たとえ遠くにリスク
 があることを承知していたとしても、近くのリターンに目を奪われてしまうのだ。そう
 いう意味では、人間心理のアヤにつけ混んだ商品といえる。そんな商品は本来、つくる
 べきではなかった」
・グロソブのような「毎月分配型投信」は本来、長期運用には不利な商品だ。分配金を支
 払った分だけも元本が目減りするので、利息が利息を生む「福利効果」を得られないた
 めである。 
・日本財界は「日本の人件費は諸外国と比べ高い」などと主張し、賃上げ抑制の論拠とし
 ているが、実はそうでなない。日本労働研究機構がまとめた「制動業の時間あたりの賃
 金」(2005年時点)は、日本よりも欧州の方が高くなっている。これは、ただ単純
 に金額を比較するのではなく、各国の物価などを考慮してより生活実感に近づける購買
 力平価で換算して比べたものだ。それによれば、日本を100とすると、米国は123、
 英国は135、フランスは133、そしてドイツは153、と欧州の人件費の高さが際
 立っている。むしろ二品は欧米諸国に比べれば、「人件費が最も安い」のである。
・投信は「平時の金融商品」であり、いったん「有事」に突入すれば、為すすべを持たな
 い。いままでの延長線上でしか通用しない商品といえる。
・MMF(マネー・マーケット・ファンド)は、流動性や安全性が高い公社債や短期金融
 資産で運用される投信だ。元本保証はないが、これまでに額面割れとなったことがほと
 んどない。特に証券界では、銀行の普通預金に限りなく近い存在として位置づけられて
 きた。ところが、リーマン破綻の翌日(2008年9月16日)、リーマン社債を組み
 入れたMMFの基準価格が額面の1ドルを割り込んだのである。
・一番安全と思われた商品にまで火の手があがったことで、「なにが正しいのか」「なに
 を信じればいいのか」という前提が崩れた。まさに「不果実性の時代」が到来するなか
 MMFよりもリスクの高い「投信」の信頼性は、完全に揺らいでいる。
・投信には、購入時にかかる「売買手数料」のほか、保有している間はずっと払い続けな
 くてはならない「信託報酬」というコストがある。この2つを合わせれば、3%前後の
 コストがかかり、それを上回る運用成績がなければ、ただただ手数料を食われてしまう
 だけだ。なおかつ腹立たしいのは、売買手数料が販売会社である銀行などに消えていく
 のはまだいいとしても、信託報酬まで販売会社に入る仕組みになっていることである。
・投信とは、売り手の事情に基づいて設計された商品で、高い手数料を払いながら、リス
 クは投資家が負う。手数料を取られている分、リターン以上のリスクを負っているとも
 いえるだろう。ましてや「運用のプロ」などいない。国債金融システムが崩壊すれば、
 それとともに下落してしまうのだ。そして、その「売り方」が、やはり問題となってく
 る。ターゲットを中高年層に絞り、「ライフプラン」と称して高齢者の財布の中身を握
 ろうとする狡猾さも見え隠れしている。
・投資信託販売現場では、フィナンシャル・プランナーが口にした「リタイア後の生活を
 年金と退職金で賄うのは不可能」といった、将来不安を煽るようなセールストークが横
 行している。これなどは「老後不安ビジネス」と名づけても差し支えないだろう。
・国際金融マーケットは崩壊し、金融だけでなく、実体経済まで焼き尽くそうとしている
 のだ。  
・従来の常識や理屈がまったく通用しない「新たなステージ」に入ったのだ。「貯蓄から
 投資へ」という国をあげてのスローガンがある。ならばいったいどこへ投資しろという
 のか。いま、われわれができることは、世界経済が焼け落ちる前に避難することだ。も
 し、あなたが金融資産をお落ちなら、すぐさま「キャッシュアウト」(現金化)」する
 べきである。一日も早い「現金化」をお勧めしたい。

新たなステージに向けた処方箋
・大企業という上流にあるダムから、中小企業や従業員という下流にお金が放流されなけ
 れば、賃下げや人員削減が進み、消費が盛り上がらず、当面、景気も回復しないだろう。
 まだまだ「悪循環」は断ち切れない。それがいまの日本の置かれている「現実」である。
・正社員になれず、派遣社員として働いても、満足な収入も得られず「ワーキングプア
 (働く貧困層)」に落ちてしまう若者が後を絶たない。ならば、派遣社員の労働条件を
 変えるだけでいい。彼らはもともと貯蓄志向が低いため、余分なお金は消費に回る。そ
 れが内需を拡大し、日本経済は立ち直るというハッピー・シナリオだ。労働者の方に目
 を向けた政策を打つのだ。
・個人投資家のシェア24.5%に対し、外国人投資家は59.1%と個人の2倍以上に
 のぼる。外国人の動向がマーケットに最も大きな影響を与えている。外国人投資家は個
 々の材料ではなく、経済全体を見通して分析する「マクロ分析」で投資する傾向が強い。
 彼らは「政治動向」にも敏感だ。
・一日に、株価が400円も、500円も上がったり下がったりする局面では、長期投資
 なんてほとんど意味はない。この状況下で利益をを出そうとするならば、このジェット
 コースターのような粗湯にうまく乗ることだ。マーケットは、まさにバクチ場と化した
 のだ。