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 多くの憲法学者たちが「これは憲法違反だ」と指摘し、また多くの国民が支持しないとい
う状況の中で、安倍政権により集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、安保法制の改定
が強行された。これによって、それまで「専守防衛」だった自衛隊の役割が大きく変わり、
遠く海外の戦場に派遣されるる可能性が高まった。
 このことは、単なる自衛隊の中だけの問題で、自衛隊に関係しない一般国民にはあまり
関係がないように思われがちであるが、そうではない。なぜなら、自衛隊を構成する自衛
官の成り手と、国民の経済状況が密接に関係しているからだ。自衛官の成り手の中には
「国の防衛のために役立ちたい」という強い志を持って自衛官になる者も少なからずいる
だろうが、それ以上に自分の置かれた経済状況を理由に自衛官になる人が多いのが実情だ
からだ。このことは日本だけではなく、米国においても同様であると言われている。
 集団的自衛権の行使容認等により、一時日本でも再度徴兵制が復活するのではないかと
心配されたが、戦前・戦中のような徴兵制が復活するということについては、否定的な識
者は多い。しかし、それで安心はできない。というのも、かつてのような強制的な徴兵制
ではなくても、経済的な理由により、否応なく自衛官になるしかないという状況が作りだ
されつつあるからだ。格差がますます拡大していくことによって、富める者はますます富
み、貧しい者はさらに貧しくなる、富が一握りの者たちだけに集中していくという今の社
会状況がさらに進むにつれて、生活基盤を築くには自衛官になるしか道がなくなるという
社会が生まれる可能性が高まっている。
 それでも、「専守防衛」のうちならば、自分の国を守るという大義があったから、まだ
よかっかもしれない。しかし、集団駅自衛権による他国の軍隊のために命をかけなければ
ならなかったり、PKOの名の下に何の関わりのない国のために命をかけなければならな
くなった今、その大義は見えなくなってしまっている。ある時は、時の「政権の都合」の
ために、ある時は「富める者の利益」を守るために、遠い海外で命を消費することになる。
つまりは、経済的に恵まれない若者の命が、カネによって買われ「消費」されるのだ。
政権の側にいる者も、富める側にいる者も、自分たちは派遣されることはない。派遣され
るのは、もっぱら「経済的に恵まれない者」たちだ。「富める者が戦争を始め、そのため
に貧しい者が戦う」あるいは「老人たちが始めた戦争を、若者たちが戦う」。そんな状況
になっても、「徴兵制」ではないからいいのではないか、自分たちには関係ないと、果た
していつまで言い続けられるのだろうか。

はじめに
・自衛隊は毎年、市町村が管理する住民基本台帳から18歳の住民の情報(氏名、住所、
 生年月日、性別)を入手し、高校生に対する求人活動の解禁に合わせて、自衛官募集案
 内のダイレクトメールを発送している。しかし、これまでは、あまり話題になることは
 なかった。安倍政権による集団的自衛権の行使容認が、その「意味」を大きく変えたの
 である。
・徴兵制については、安倍首相が「憲法第18条が禁止する「意に反する苦役」に該当す
 る。明らかな憲法違反で、たとえ首相や政権が代わっても徴兵制の導入はあり得ない」
 などと繰り返し否定してきたにもかかわらず、国民の中で徴兵制への不安が消えなかっ
 たのは、それなりに理由があると思う。まず、歴代政権が「明らかな憲法違反」として
 きた集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更によって容認した安倍政権が、憲法解釈を理
 由に「徴兵制はあり得ない」と言っていても説得力が欠ける。
・また、安倍首相は、現代の兵器はハイテク化されているため任期の短い徴兵制の隊員で
 は役に立たず、政策上も徴兵制を導入する合理的な理由がないと説明している。たしか
 に、ハイテク化された現代の「軍隊」はプロフェッショナルな隊員を必要とする。しか
 し、それはすべてではない。自衛隊には多くの職種があり、ハイテク兵器を扱うものば
 かりではない。それに、現に、毎年1万人前後の「任期制」隊員を採用している。素人
 の隊員が役に立たないのであれば、今でも任期制隊員の募集は不要ということになって
 しまう。それに加えて、徴兵制があり得ないのであれば、どのように隊員を確保してい
 くのかという「対案」をまったく示していないことも、徴兵制への不安が消えない理由
 になっているのではないか。 
・東日本大震災の時の大規模な災害派遣で、国民の自衛隊への評価はかつてなく高まった。
 しかし、これがストレートに隊員募集につながったかというと、そう単純ではない。
 災害派遣で自衛隊に対する世間の評価が高まっても、実際に自分の子どもがやるとなる
 と、やはり危険性は志願するかどうかを考える上で大きなファクターとなるのである。
 しかも、これはあくまで災害派遣のケースである。そもそも、災害派遣にリスクと戦争
 のリスク、それも日本防衛と直接関係のない海外の戦争に派遣されるリスクを「同列」
 に扱うこと自体が適切ではない。たとえば、中東やアフリカのどこかの国で米軍の「後
 方支援」のために派遣された自衛隊の部隊が戦闘に巻き込まれ、隊員が多数「戦死」し
 た場合、隊員募集に与える影響は東日本大震災の比ではないだろう。現時点で7倍の競
 争率があるからといって、安全保障関連法案の成立で海外に派遣される隊員のリスクが
 格段に高まったいま、今後も必要な隊員を確保し続けることができるという保証は何も
 ない。将来、もし志願者が激減した場合、政府はどのように必要な隊員を確保するのだ
 ろうか。徴兵制を導入しないのであれば、別の方策をとらなければならない。
・アメリカでは、貧困層の若者が大学に進学するため、あるいは医療保険を手に入れるた
 めにやむなく軍に志願するケースが多い。2000年代の中頃、アフガニスタンやイラ
 クで米兵の戦死者が増大して志願者が減った時は、この傾向はいっそう強まった。この
 ように、貧困層の若者たちが経済的な理由から軍の仕事を選ばざるを得ない状況のこと
 をアメリカでは「経済的徴兵制」と呼ぶ。
・自衛隊の海外派遣が「付随的任務」から「本来任務」に格上げされたのに加えて、非正
 規雇用の急速な拡大にともなって、貧困と経済格差が社会問題になりつつあったことも
 あり、私は直感的に日本も将来アメリカと同じようになるのではと思った。
・今後、自衛官のリスクが誰の目にも明らかになり新隊員の確保が困難になった場合、政
 治的ハードルの高い徴兵制導入よりも、まずは「経済的徴兵制」の強化が先に来ると私
 は考えている。その条件は、「生涯ハケンで低賃金」の派遣労働者をいっそう増大させ
 ると懸念されている労働者派遣法の改定など、貧富の格差を拡大させる安倍政権の経済
 政策によって、着々と作られているように見える。
   
「経済的徴兵制」の構図
・政府が集団的自衛権行使の容認をする閣議決定を行った2014年以降、自衛隊の退職
 者が増えている。2014年度は退職者が増えただけでなく、志願者も軒並み減った。
 志願者が減少している理由について、防衛省は「景気回復で民間雇用が増えたため」と
 説明し、集団的自衛権行使容認の閣議決定の影響について否定している。しかし、自衛
 隊内部の自衛官募集に関する会議では、集団的自衛権行使容認の閣議決定が志願者の減
 少に影響していることが報告されている。
・集団的自衛権の行使を認めれば、米兵を守るため相手国の兵士と殺し合わかければなり
 ません(ベトナム戦争では5万人の韓国兵が派兵され、数千人の兵士が殺傷されたとい
 います)。今、自衛隊員が安全なインド洋や非戦闘地域のイラクに派遣されるというだ
 けでも、見送る自衛隊員の家族は、涙を流してその無事を祈っているのではないか。そ
 れが外地で戦う米兵を守るために殺されたとなれば、その、自衛隊員の家族は黙ってい
 るだろうか。自衛隊員の離隊が続出し、志願者は激減するでしょう。
・自衛隊の任務がこれまで通りでも、急速な少子化により今の態勢を維持するのが困難に
 なると予測されている。今後、仮に海外で「戦死者」が出るような事態になれば、自衛
 官募集が行き詰ることは火を見るより明らかである。
・今や、昼間の四年制大学に通う学生のうち、奨学金を受けている割合は52.5%と半
 数を超えている。20年前と比べたら倍以上に膨らんでいる。いま奨学金を借りると、
 卒業時に背負う借金は、大学生で平均300万円、大学院まで進学すると多いケースで
 1000万円にも達するという。しかも、それだけ借金を背負って大学や大学院を卒業
 しても、安定した職に就ける保証はまったくない。政府の調査によれば、現在、全労働
 者の約37%がパート、アルバイト、派遣社員などの非正規雇用となっている。正社員
 が「狭き門」となるなか、大学・短大などを卒業した30〜50代の3分の1以上が、
 年収300万円以下の賃金で働いているのが現実である。安倍首相は、アベノミクスで
 雇用が100万人以上増えたと言うが、増えたのは非正規雇用で、正規雇用は逆に減っ
 ている。
・国立大学の学費は、1970年には年額1万2千円だった。それが今では学費の安い文
 化系学部でも50万円を超えている。もちろん物価も上がっているが、物価が約3倍に
 なっているのに対して、国立大学の学費は45倍に跳ね上がっている。ここまで学費が
 高騰した原因は、歴代の自民党政権が、「大学教育を受けることで学生個人も利益を得
 るのだから、その分は個人負担すべき」という「受益者負担」の方針をとってきたから
 だ。その結果、日本のGDPに占める高等教育予算の比率は0.6%と、OECD参加
 国の中で最低レベルとなってしまった。
・歴代自民党政権の新自由主義的な政策によって、憲法や教育基本法の定める「教育の機
 会均等」は骨抜きにされ、大学に進学することは学生にとっての「リスク」になってし
 まった。政府の政策により大学進学の選択肢を奪われた若者を、経済的な利点を餌にし
 て軍隊に誘導する。まさに「経済的徴兵制」である。  
・「経済的な利点を餌にしてリクルートするのは、民間企業でも普通にやっていることで
 は?」と思う人もいるかもしれない。しかし、自衛隊を含め国防を担う軍事組織には、
 民間企業と決定的に異なる性格がある。それは、「国家の命令により命を懸けなければ
 ならない仕事」だという点だ。
・2000年代の中頃、アフガニスタンとイラクでの「対テロ戦争」が泥沼化し、米兵の
 犠牲者がうなぎ上りに増えていった時期のアメリカは、まさに「経済的徴兵制」だった。
 大学に進学するための資金も医療保険も持たない貧困層の若者たちが、それらを得るた
 めに軍に入隊し、アフガニスタンやイラクの戦場に送られて負傷したり命を落ちしたり
 した。幸運にも生きて帰還しても、PTSDなどで苦しみ、家族やコミュニティから孤
 立し、除隊後も仕事に就けずホームレスとなる者も少なくない。2014年現在、約5
 万人の退役軍人が路上生活を送っているという。戦争は、大量の武器や弾薬とともに人
 間の命も消耗する。そして消耗される命のほとんどは、愛国心に燃えた富裕層の若者で
 はなく、教育を受けたり病院にかかったりする基本的な権利すら奪われている貧困層の
 若者なのである。   
・このように、貧しい若者たちの命を「消耗」することで成り立っているのが、アメリカ
 が続ける戦争なのである。この国では、巨大な貧困が巨大な戦争を支え、巨大な戦争が
 さらに巨大な貧困をつくり出している。日本は、そのアメリカの後を追うように新自由
 主義的な構造改革を推し進め、かつては「一億総中流」と言っていたが、気付いたらあ
 っという間に世界有数の格差社会になってしまった。そして、今度は、海外で武力行使
 はしないという「専守防衛」のストッパーを外し、軍事でもアメリカの後を追いかけよ
 うとしている。日本も、アメリカのように「貧しい若者の命を戦争で消耗する国」にな
 ってしまうのか。「経済的徴兵制」の足音は、すぐそこまで近づいてきている。
 
徴兵制から「経済的徴兵制」へードイツ・アメリカの場合
・現在、世界で60ヵ国以上が徴兵制を採用している。日本の近隣国では、韓国、北朝鮮、
 台湾、ロシアが徴兵制を敷いている。中国は実質志願制になっているが、制度としての
 徴兵制は存在している。一方、ヨーロッパでは冷戦終結以降、徴兵制を廃止あるいは停
 止する国が相次いでいる。ベルギー、オランダ、フランス、スペイン、イタリア、ポー
 ランド、スウェーデン、ドイツなどが徴兵制から志願制に切り替えた。
・ドイツでは、「徴兵制は民主主義の正統な子である」として、ナチスのような軍事政権
 の暴走を繰り返さないための手段として徴兵制を位置づけた。職業軍人だけでなく、
 「軍服を着た市民」を入れることによって、軍が市民社会から乖離しないようにしたの
 である。戦前の反省に基づくこうした強い理念がありながら、それでも志願制に切り替
 えたのは、国防費削減という財政上の理由に加えて、軍の役割の変化に徴兵制が合わな
 くなってきたからだ。軍の任務の中心は、冷戦期の防衛的なものから、90年代前半の
 カンボジアやソマリアのPKOへの参加を皮切りに海外での活動に移っていった。こう
 した任務に対応するには、高度化した兵器や情報誌システムに習熟した少数精鋭の機動
 的な軍隊が求められる。周辺国の侵略の可能性がほとんどなくなり、国際的な活動が中
 心任務となった現在、徴兵期間が短い”素人”の兵士は不要と判断されるようになった
 のだ。一方、正確に言うと、ドイツの徴兵制は「廃止」ではなく「停止」された。平時
 には志願制でやっていくが、有事の際はいつでも徴兵制を復活できるように、憲法上の
 規定は残されている。
・アメリカは、独立以来、平時の軍隊は志願兵でまかなうのを原則としてきた。合唱国憲
 法には兵役義務の規定はなく、戦争など国家の緊急事態の時に限って、必要に応じて特
 別立法で徴兵制を敷いてきた。また、常備軍は必要最小限しか保持しないということも
 基本方針としてきた。これは、平時における強大な常備軍は、権力者の人民抑圧の道具
 になるとして嫌悪してきたイギリスの伝統を受け継いだものであった。現在でも、合衆
 国4その後、選抜徴兵制は延長と修正を重ね、ベトナム戦争
 では190万人が徴兵された。しかし、国内でベトナム戦争への批判が高まり、反戦運
 動が高揚するのと合わせて、選抜徴兵制への不満も強まっていった。選抜徴兵制への最
 大の不満は、その不公平性にあった。大学や大学院に進学することのできる一定の経済
 的条件のある者たちが徴兵を免れ、戦争の負担をそうでない者たちに偏った。一方、志
 願制に切り替えた場合、「志願兵になるのは貧乏人だけで、金持ちの起こす戦争を貧乏
 人が戦うことになる」なり、いっそう不公平になると徴兵制廃止に反対する議員もいた。
 アメリカの徴兵制廃止の背景にも、やはり大規模な通常戦が起こる可能性の低下と、
 「量より質」を重視する少数精鋭志向があった。
・アメリカの若者が軍に志願する理由のトップは「奨学金」と「医療保険」である。そし
 て、軍のリクルーターはそれを”餌”にして貧困層の若者たちを軍に勧誘している。
 2014年に「オバマケア」が施行されるまで、アメリカには国民皆保険制度がなかっ
 た。そのため、約5千万人、国民のおよそ6人にひとりが保険に未加入であった。アメ
 リカ公衆衛生協会は、2009年に保険がないために年間4万4千人以上が死亡してい
 ると報告してる。「オバマケア」の施行せアメリカも国民皆保険になったが、日本の国
 民皆保険制度と異なり、高齢者や低所得者などを対象とした一部の公的健康保険を除い
 て基本的に民間の健康保険に加入しなければならない。「オバマケア」施行後、保険料
 や薬代が高騰して庶民の家計を苦しめ、「医療破産」や病院の倒産も増えているという。
 こうした状況の中で、軍の健康保険制度は、貧困層から中流層出身の若者たちにとって
 今なお魅力となっている。
・2011年に徴兵制を停止して志願制に切り替えたドイツだが、新兵募集に苦しんでい
 る。ドイツ軍は毎年1万5千人〜2万人の新兵を採用するが、徴兵制停止以降、目標未
 達成が続いている。ドイツでは、2002年1月から2014年末までのアフガニスタ
 ン派遣で35人が銃撃や自爆攻撃などによって戦死し、アメリカと同様、少なくない帰
 還兵がPTSDに苦しんでいる。こうした海外派遣の危険性やリスクも、新兵募集にネ
 ガティブな影響を与えていると指摘されている。
 
自衛隊入隊と経済格差
・「経済的動機」から自衛隊に志願する若者は少なくない。自衛隊の最大の役割である
 「国の平和に貢献したい」を志願理由に挙げたのは、2009年度は回答者の約13%、
 2014年度は約28%と、それほど多くないのも自衛隊の特徴である。この傾向は、
 任期制だけでなく、非任期制でもそれほど変わらない。2014年度の一般曹候補生志
 願者のうち「国の平和に貢献したい」を志願理由に挙げたのは約29%、幹部候補生で
 も約28%にとどまっている。
・世界各国の国民の価値観調査の2010年の結果では 「もし戦争が起こったら国のた
 めに戦うか」という質問に「はい」と回答したのは、日本では約15%と78ヵ国中、
 断トツで最下位であった。この結果は、自衛隊の志願理由調査の傾向と一致している。
 ちなみに、アメリカは約58%、中国は約74%が「はい」と回答している。日本と同
 じく第二次世界大戦の敗戦国であるドイツは約42%で下から8番目である。
・安保法制の成立で、自衛隊の海外での任務は大きく拡大されたが、志願理由に「国際的
 な分やで貢献したい」を選択したのは、任期制で約7%、一般曹候補生で約7%、幹部
 候補生で約11%(いずれも2014年度)しかない点も注目される。
  
「学校を開拓せよ!」−募集困難時代への対応
・安倍内閣が2013年に閣議決定した「国家安全保障戦略」は、国家安全保障には軍事
 力だけでなく、それを支える「社会的基盤」が不可欠だとして、「(国民一人ひとりに)
 我が国と郷土を愛する心を養うとともに、領土・主権に関する問題等の安全保障分野に
 関する啓発や自衛隊、在日米軍等の活動の現状への理解を広げる取組を推進する」との
 方針を打ち出している。少子化・高学歴化加えて、安保法制の成立による影響でいっそ
 う募集難が予想されるなか、この「基本方針」に基づき、今後政府として安全保障教育
 の必修化が検討されることは十分あり得るだろう。
 
戦地へ行くリスク−イラクの教訓
・自衛隊のイラク派遣で死者が出なかったことがよかったが、日本が軍事力を外に向ける
 方向に一歩踏み出したことは間違いない。今の安保法制の議論は、イラク派遣の活動の
 中身を総括せずに、自衛隊をもっと活躍させようという議論の方向に向いています。イ
 ラク派遣の検証をしないまま、安保法制でさらなる海外任務の拡大に突き進むのは非常
 に危ういと感じていた。
・2003年の通常国会で、アメリカのイラクへの先制攻撃に真っ先に支持を表明した小
 泉純一郎内閣は、アメリカの求めに応じてイラクに自衛隊を派遣する方針を決め、その
 ための特別措置法案国会に提出した。その国会審議で、「イラクは全土が戦闘地域。自
 衛隊を送れば攻撃され戦闘に巻き込まれる」という野党の追及に対し、小泉首相は「自
 衛隊が活動するのは「非戦闘地域」に限られる。戦争をするのではなく、非軍事の復興
 支援をしに行くのだ」とひたすら繰り返した。しかし。これは現地の実態とかけ離れた、
 日本国内で法案を成立させるための「方便」に過ぎなかった。
・陸上幕僚監部が2008年にまとめた「イラク復興支援活動行動史」を読むと、自衛隊
 はいつどこで攻撃を受けるかわからないという現地の実態に合わせた準備と訓練を行っ
 ていたことがわかる。派遣前の訓練については、「至近距離射撃訓練基準に基づき、射
 撃検定を実施し、射撃能力の向上を図った。この際、至近距離射撃と制圧射撃を重点的
 に練成して、射撃に対する自身を付与した」などと書かれている・「至近距離射撃」と
 は市街地戦に必要な射撃方法で、建物の中や物陰からゲリラが突然攻撃してくるような
 ケースを想定している。また、「制圧射撃」とは、一人ひとりにねらいを定めて撃つの
 ではなく、ひたすら機関銃を連射し、火力で圧倒して敵の自由行動を阻止する射撃方法
 である。  
・イラク特措法では、海外での武力行使を禁じる憲法第九条との整合性をとるため、相手
 に危害を与える射撃は「自己保存」のための正当防衛と緊急避難に限られた。さらに、
 統制を欠いた武器使用によりかえって生命・身体に対する危険や事態の混乱を招くこと
 を防止するために、原則として上官の命令が必要とされた。しかし、それはあくまで
 「建前」だったという。実際には、危険を感じたらとりあえず自己判断で撃って、事情
 聴衆で「急迫不正な侵害があったと認識した」と説明するように指示されていたという。
 命令を待っていたり、正当防衛か緊急避難かを考えていたら、その間にこっちが撃たれ
 てしまいますから、(指示は)当然だと思いました。
・「危ないと思ったら撃て」は、米軍のROE(交戦規定)に近い。実際の敵対行為がな
 くても、「敵対意思」があると感じたら、先制的に武器使用することが認められている。
 しかし、これは米軍の誤射が多い理由として、しばしば指摘されてきた。民間人に対す
 る誤射が多くなると住民感情が悪化し、結果的に部隊を危険にさらすことになる。  
・事案維持任務を持たず、人道復興支援に活動を特化した自衛隊は、現地住民との信頼関
 係を構築し、活動地域を「友好の海」とすることで安全を確保しようとした。そうやっ
 て苦労しながら信頼関係を積み上げてきたからこそ、「一発の銃弾」でそれがいっきに
 崩れてしまう危険性についても、現場の指揮官は認識していた。実際、米軍は検問所な
 どで危険を感じたらすぐさま発砲し、子どもや女性を含む多くの一般市民に危害を与え、
 イラクの人々の不信感を増幅していった。それが敵を増やし、ゲリラの活動が強くなる
 原因となった。
・今回成立した安保法制では、「非戦闘地域」という活動地域の制限を取り払い、現に戦
 闘が行なわれている現場でなければ米軍などへの後方支援ができるようになった。さら
 に、PKOでは、駆け付け警護や治安維持任務もできるように変えた。陸自イラク派遣
 の教訓からも、自衛隊員のリスクが格段に増大することは明らかである。
・安倍首相は、安保法制の国会審議で、「アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか」
 という野党の質問に対し、「絶対にない。(派遣は)我が国の国益に従い主体的に判断
 する」と繰り返した。イラク戦争では、フランスやドイツはアメリカの同盟国でありな
 がら、国連安保理決議を経ない先制攻撃は国際法違反だとして反対し、最後まで軍隊を
 派遣しなかった。はたして、今の日本政府にこのような主体的な判断ができるだろうか。
・防衛省は、イラクに派遣された自衛隊員の中で、陸上自衛隊で21人、航空自衛隊で8
 人の計29人が自殺していることを明らかにしている(2015年3月末現在)。これ
 は在職中に自殺した人数なので、退職後も含めるともっと多くなる可能性がある。イラ
 クに派遣された自衛隊員は、陸上自衛隊の中でも精神的に精強な隊員が選考された。そ
 れにもかかわらず、これだけの隊員が自殺しているのだ。
・アメリカでは帰還兵の自殺者が年間8千人以上と、前線での戦闘による戦死者の数を圧
 倒的に上回っている。これが「現代の戦争」の現実なのである。そのアメリカと一緒に
 世界中で「共に戦う」ことの意味を、私たちはもっと深刻に考える必要がある。
  
「戦死」に備える精神教育
・2015年、日米両政府は「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を18年ぶ
 りに改定し、日米の軍事協力の地理的範囲を、それまでの「日本とその周辺」からグロ
 ーバル(全地球規模)」に拡大した。これは事実上の安保条約の改定であったが、国会
 にはかられず政府間の合意だけで決めてしまった。
・自衛隊の「服務の宣誓」は、ただ「自衛官は命をかける」と書いてあるのではない。何
 にために命がけで任務に臨むかという「大義」についても、あわせて述べている。つま
 り、隊員たちが入力時に「命がけで任務を遂行する」と宣誓しているのは、@日本の平
 和と独立を守るために、A日本国憲法や法令に基づき、B国民の負託にもたえて、とい
 う三つの前提があるのだ。
・外国の日本への侵攻に備えるだけが任務であれば、この「宣誓」の通りで何の問題も生
 じないが、いまや自衛隊の活動範囲は世界に広がっている。安保法制が成立し、今後は
 危険な任務が増え、隊員たちのリスクは格段に高くなるだろう。その時、隊員たちが何
 のために海外で命がけの任務に当たらなければならないのか、その「大義」が問われて
 いる。 
・万々が一ということを我々は念頭に置いておかなければならない。海外派遣の自衛官に
 犠牲者が出たときに、政府も、国民も、それ相当の覚悟を決めておくべきだ。だが、国
 民に覚悟を求めるのであれば、その前に「国論の一致」を図るべきだろう。しかし、安
 倍政権と与党は最後まで国民の理解を得ることのないまま、安保関連法案を強行成立さ
 せた。成立直後に「朝日新聞」が行った全国世論調査では、同法に「反対」が51%と
 半数を占め、「賛成」の30%を大きく上回った。こうした結果からも、安保法制に基
 づく自衛隊の海外での任務拡大に「国論の一致」がないことは明らかである。国民の理
 解も支持もないなかで、自衛官に国家のために海外で命を懸けさせるようなことはあっ
 てはならない。
 
「政・財・軍」の強固なスクラム
・安倍政権は国会審議で「国民の命と平和な暮らしを守り抜くための法案」と繰り返し、
 あたかも国民一人ひとりの命と暮らしを守るための立法であるかのように説明したが、
 彼らが自衛隊の海外任務の拡大でねらっているのは、軍事力を後ろ盾とした「国益」の
 擁護と追求であり、グローバル市場で日本の企業が自由に活動てきる環境を守ろうとし
 ているのである。   
・防衛問題の専門家は、「国益を守る」とは「生命線を守る」ことだ。そしてその「守る
 べきもの」は日本の領土以外にも多く存在していることを、われわれ国民はしっかりと
 認識しなくてはならない、と述べている。「生命線」は、かつて日中戦争の遂行のため
 に用いられた「満蒙は日本の生命線」というスローガンを想起させる。しかし、現在の
 シーレーンなどの「生命線」は、やたらと脅威ばかりが叫ばれる中国も含めて、世界の
 多くの国も利益を共有しているものだ。「仮想敵」をつくる軍事同盟の強化ではなく、
 より集団的で平和的な安全確保の枠組みを目指すべきではないのか。
・グローバル化は、今後も世界的な繁栄をもたらし続けるが、同時の世界中にテロを広げ
 るだろう。相互依存経済は巨大な富の獲得を可能にした。失敗のリスクが大多数の者に
 持たされる間に、この富の恩恵が少数の者の手に集約され続ける。この富の不平等な配
 分は、「持つ者」と「持たざる者」の関係を生みだし、しばしば紛争の種となる。専門
 家は、2015年までに最大で28億人が(その大多数は発展途上国の「持たざる者」
 地域の人々だろう)貧困レベル以下の生活となっていることを予測している。これらの
 人々は、過激派グループの勧誘に弱い。グローバル化はすでにいくつかの国を置き去り
 にしており、これからさらに多くの国が加速ずるテンポについてこれなくなるだろう。
 その結果、これらの国の住民は苦しみ、そのフラストレーションから急進的なイデオロ
 ギーを受け入れやすくなる。
・アメリカは2001年の9・11同時多発テロ事件以降、圧倒的な軍事力によってねじ
 伏せるようなやり方でテロを撲滅しようとした。国外の貧者を押さえつける戦争に、国
 内の貧者が動員されたのだ。しかし、そうした軍事力だけに頼った方法は住民の反米感
 情を増幅させ、敵の戦闘員を増やし、むしろ治安を悪化させるということを、アフガニ
 スタンやイラクでの戦闘の泥沼化を通じて米軍は学んだ。
・安倍政権は2014年、これまでの武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を
 閣議決定し、紛争当事国や国際条約違反国など以外への武器輸出を原則として解禁した。
 重要なことは、オーストラリアやフィリピンなどへの武器輸出・共同開発が、これらの
 国との防衛協力の拡大と同時に進められているという点である。安保法制の国会審議で
 も、集団的自衛権の行使の対象となる「密接な関係にある外国」が、同盟国であるアメ
 リカに限らないことが明らかになっている。これは、自衛隊の海外での活動の拡大が、
 そのまま武器輸出ビジネスに直結するということを意味している。アメリカでは、巨大
 な「軍産複合体」の存在が、常に世界のどこかで戦争を続ける要因になっていると指摘
 する人は少なくない。巨大な軍需産業とその既得権益を維持・存続させるには、兵器を
 大量に消費する戦争がないと成り立たないからだ。
・自衛隊はこれまでも、人事施策において企業・経済界との連携を重視してきた。最大の
 理由は、精強性を保つために任期制と若年定年制をとっているためである。一般の国家
 公務員60歳が定年だが、自衛隊の場合は非任期制隊員でも大半が54〜56歳で退職
 しなければいけない制度となっている。そのため、自衛隊は退職隊員に対する再就職支
 援を重視している。国は退職後の再就職先の面倒もしっかり見てくれる、そうでなけれ
 ば隊員たちは士気高く任務に当たれないし、優秀な人材も入ってこないということだ。
・ジュネーブ条約は、拷問の禁止など捕虜の人道的待遇を義務付けているが、政府は「ジ
 ュネーブ条約上の捕虜とは、紛争当事国の軍隊の構成員等で敵の権力内に陥ったものと
 される。自衛隊の後方支援は武力行使に当たらない範囲でおこなわれるので、自衛隊が
 ジュネーブ条約上の捕虜となることはないと、岸田外務大臣は説明している。
 国際的には、補給・輸送などの後方支援(兵站)は武力行使と区別されないし、「兵站
 を叩け」というのは軍事の常識だ。実際には、活動中に攻撃を受け拘束されるリスクが
 あるにもかかわらず、政府は自衛隊の法的地位に欠陥があるまま、弾薬輸送などこれま
 で以上に危険な任務を与えようとしている。あまりにも無責任だし、自衛官が、自分た
 ちは「使い捨てなのか」と感じるのも当然だろう。
・「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。その国家としての意
 志を明確にしたいと思う。一人ひとりの日本人誰もが、家庭で、職場で、地域でもっと
 活躍できる社会を創る。「ニッポン「一億総活躍」プラン」を作り、その実現に全力を
 尽す決意だ」安保関連法がせいりつした5日後の2015年9月、安倍首相は国民の同
 法のことを忘れさせるかのように、新たな「経済最優先」政策を発表した。
・「1億総活躍社会」は、戦時中の政府のスローガンを想起させる。太平洋戦争開戦後の
 1942年には、大政翼賛会が「進め一億火の玉だ」というスローガンを打ち出し、戦
 況悪化していくと、これが「一億総玉砕」となっていった。「一億ーー」といスローガ
 ンは、国策としての戦争に国民を総動員し、最後の一人になっても国家のために戦って
 死ぬことを強いるものとして使われたのである。安倍首相の「一億総活躍社会」は、戦
 争のために「活躍」することまで想定しているものではないだろうが、経済成長などの
 「国策」がまず先にあるきなのは否めない。
・政府が自衛隊{自衛官の命)を海外での国益追求のツールとして活用しようとしている
 ことと、国内で非正規雇用を増やして貧困と格差を広げるような政策をとっていること
 は、底流に共通する思想がある。それは、国民一人ひとりの人権や生命より国策や国益
 を優先させる思想である。国民を、国策や国益実現のための「資源」として捉えている
 のだ。そこが共通しているので、二つの政策は別々ではなく一体のものとして映るので
 ある。
・国家が国民を「資源」として「消費」する、その最たるものが戦争だ。そして、国家対
 国家の総力戦ではなく、ゲリラなどを相手にする非対称戦争が主となった「現代の戦争」
 では、アメリカがそうであるように、戦地に送られ犠牲となるのは、「一部の貧困な国
 民」なのである。
・自衛隊の「経済的徴兵制」は今に始まったことではない。しかし、安保法制が成立した
 ことで、その意味は大きく変わった。「専守防衛」の下であれば、若者の「雇用対策」
 「貧困対策」と言えたかもしれない。しかし、海外の戦地に送られ、命を落とす危険性
 が出てきた今、もうそれだけで片付けることができないのだ。

おわりに
・安倍首相は「安保法制によって防衛費自体が増えていくことはない」と説明するが、本
 当ならば、人を増やすつもりもないということだ。実際、日本の財政状況から考えても、
 防衛費を大幅に増やすのは困難だろう。しかし、現状でも人が足りないと現場から悲鳴
 が上がっているのに、どうやって任務だけ大幅に拡大できるというのか。このように人
 的な基盤を無視した今回の安保法制は、「隙のない(防衛)態勢を整える」(安倍首相)
 どころか、逆に大規模災害への対応も含めて「防衛崩壊」を招きかねない。もし、拡大
 した任務に対応するために自衛官の数や装備を増やすならば、防衛費の大幅増額は避け
 られない。そうなれば犠牲となるのは社会保障費だろう。結果、格差と貧困はますます
 拡大し、「経済的徴兵制」は強化される。どちらにせよ、「亡国の道」と言わざるを得
 ない。 
・自衛隊の海外での軍事行動を大幅に拡大する安保法制が成立したことで、「経済的徴兵
 制」の意味合いは、専守防衛の時代から大きく変わった。「経済的徴兵制」の何が問題
 か。答えははっきりしている。国土防衛ではなく、富める者たちの利益にために行われ
 る海外での戦争で、貧しき者たちの命が「消費」される。それは不正義以外の何物でも
 ない。使い捨てにされてよい人間など、この世界に存在しない。まして、これから本格
 的な少子高齢化を迎える日本には、貴重な若年労働力を使い捨てにする余裕などこれっ
 ぽっちもないはずである。