株価の読み方   :安達智彦

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この本は、1997年の発行されたものでちょっと古いが、タイトルに惹かれて読んでみ
た。しかし、内容的には私の期待するものとは、ちょっと違っていた。結論的には、株価
を予想するのは、やはり非常に困難であるということである。株価を予測する手法には、
いくつかあるみたいであるが、結局は「丁か半か」の世界のようである。これは結局は株
価は理屈では動かない。その時その時の雰囲気で、動くということだろう。経済評論家が
いろいろ理屈をこねるが、それは結局は、結果を見て理屈をつけているに過ぎない。いわ
ば「後出しジャンケン」であるということだろう。
中には、株で大儲けしたという人もいるだろう。しかしそれは、「運がよかった」に過ぎ
ない。多くの人は、損をしているのである。
今の時代は、預金金利がゼロに近い低金利の時代なので、お金を銀行に預けておいても、
増えることはない。このため、自分の大切な退職金などを株に投資して、お金を増やそう
という人もいるようであるが、やめておいたほうがいいということである。株をやるなら、
せいぜい小遣い程度の金額で、遊び程度に止めておいたほうがいいようだ。

はじめに
・これからの投資家に強く求められることは、目先の相場観に振り回されず、株価は基本
 的には個々の企業のもつ収益性と成長性に基づいて決まるものだと知って相場の流れを
 読み解く目をもつことである。

株式と株式相場
・株主の地位には、利益配当請求権、議決権、株主代表訴訟提起権などの権利が含まれる。
 株主の会社における地位は、株数分だけ細分化して所有できるということである。
・株式会社は、資本を大規模に集めて事業を行い、その利益を配当として株主に分配する
 という制度である。すべての株主に対して投資額までの有限責任を保証することによっ
 て、経営に対して責任を負うつもりのない大衆投資家も、その株式会社に参加できるよ
 うになる。
・取引動機によって分類した株式市場への参加者のうち、おそらくシェアにおいて最も大
 きいのが投機を動機とする参加者である。ここで投機と呼ぶのは、企業の将来収益や成
 長性などとは無関係に、他の市場参加者が将来の株価をどう予想しているかを推測して
 行う、株式の売買のことである。
・1949年に行われた株式分布状況調査では、69.1%が個人所有であることが確か
 められた。1995年度の株式分布状況調査では、個人の持ち株比率は23、6%に
 まで低下していた。金融機関の腫瘍分が41.4%を占めシェア最大で、次いで大きい
 のは事業法人等の23.6%だった。

株価の決まり方と株価予測
・株価ほど予測の難しいものはない。もし簡単なら、持てるものはその財産をさらに増や
 し、世の中の貧富の差は際限なく広がるだろう。たとえ核兵器が廃絶され、あるいは月
 面に観光基地の建設される日がこようとも、株価がぴたりと当てられるという日がやっ
 てくることはないと思う。それほどに、株価予想は難しい。
・にもかかわらず、多くの人々がその予想に躍起になっている。できるなら将来の株価と
 その日付を、もし無理なら業種だけでも、それも難しいというのであれば相場全体が上
 にいくのか下にいくのかを当てたい。株式市場にはそういう切なる願いが渦巻いている。
・株価予想の方法は、主に五つに分類できる。
 @シナリオ分析によって相場全体の行方を予想する方法
 A個別企業のファンダメンタルズ分析による方法
 B株式投資収益率の確率分布を使う方法
 C株式の需給分析による方法
 Dテクニカル分析による方法
・ジョージ・ソロスのファンドは1969年の創始以来、平均すると年率で約33%の運
 用成績を出し続けてきた。ソロスの予測方法は、強引に分類すれば「シナリオ分析」で
 ある。
・予測が当たっているか間違っているかは問題ではない。当たっているときいくら儲けら
 れ、間違っているときにはいくらの損にとどめるかが重要なのだ。
・株価が天井を打つときには、三つの山をかたち作る。最も高い真ん中の山の脇を二体の
 菩薩が護るように、である。三つ目の山を市場で確かめたら、それを売り時とするのが
 チャートの教えである。

株価指数とデリバティブズ
・株価の先行きに関する見通しが変化すると、投資家は自らの保有ポジションが株価変動
 のリスクにさらされる度合いの変更を行う。保有株式を売って債券に替えるというのが
 典型的な方法である。
・先物取引という現物株取引に代替する手段を与えられているので、そのような変更をす
 るのに今では、現物を売るか(または買い増すか)、あるいはそれを先物で行うか、ど
 ちらかの方法を選ぶことができる。これもまた短期的なヘッジに使える。
・オプションは取引対象の商品をあらかじめ決められた価格で、決められた数量だけ、限
 月までの間もしくは限月当日に買うことのできる権利や売ることのできる権利のことで
 ある。
・先物取引というと何か難しそうな気がするかもしれないが、中身はいたって簡単である。
 「先物」という銘柄が先々上がるか下がるかを予測し、それを当てればいい。そう考え
 れば株式取引と何ら変わらない。ただし、株式と違って持ちっぱなしはできず、期限付
 きになる。また、取引をする金額が手持ち資金との比較で過大にならないように気をつ
 ける必要がある。
・ヘッジ・ファンドというのは米国の投信の一種である。ヘッジ・ファンドのレバレジ倍
 率は平均すると約15倍だといわれている。
・米国証券取引委員会は、ヘッジ・ファンドが資金を個人から募るとき、募集対象は、
  @100万ドル以上の資金を有する者
  A年収20万ドル以上を2年以上にわたって稼得した者
 とすべきことを規定している。これらの条件は、かなりのリスクをとってもよい投資家
 と読み替えると理解しやすい。
・ジョージ・ソロスが運用するファンドに限っていえば、それへの投資をおこなっている
 者には米国市民や居住者が含まれず、大部分がヨーロッパ人だといわれている。

株式市場と日本経済を読む
・1954年末〜1972年を高度成長期とみて、この間の東証ダウの上昇率を求めると、
 14.6倍である。
・東証ダウが初めて1000円の大台に乗せたのは1961年2月末のことである。
・1962年10月からの「東京オリンピック特需」や、相次ぐ金融緩和策を好感し、
 1963年4月には、東京ダウは1634円まで上昇した。
・しかし、株式市場の活況と背景として行われきた大量の増資や新規上場は株式需給を極
 端に悪化させ、結局、1963年の年間を通じると東証ダウは13.8%の下落となっ
 た。 
・1964年の東京オリンピック特需が終焉する中で、企業業績は急速に悪化し、
 1965年3月期の上場企業の利益は4.3%の減益となった。
・1965年に入り、大型の企業倒産が相次いで起こり、相場は1963年4月のピーク
 アウト後、1965年7月の1020円まで2年3ヵ月で37.5%下落した。
・バブルの起点をどこにおくかは意見が分かれるが、ここでは、1986年1月21日の
 日経平均12、881円の「底値」をスタートにみたてる。その後、日経平均はバブル
 の追い風に乗って急上昇し、1989年12月末には38、915円の史上最高値を記
 録した。4年足らずの間に日本お株価は幅にして2、603円、やく200%上昇した
 のである。 
・バブルというのは泡のことである。株式市場で起こるバブルをどう定義するかは難しい
 が、ここでは「株式が急騰して、やがて天井を打つと、急激に下落する現象」としてお
 く。1980年代後半から90年代はじめにかけて日本の株式市場で起こった現象は、
 まさにこの定義に当てはまる。
・1987年10月19日に起こったアメリカ株式市場の大幅な下落(ブラックマンデー)
 は、この日一日だけで22.6%の下げ率となった。このブラックマンデー時には、日
 本市場においても株価は暴落したが、東証における下落率は14.9%で、世界の三つ
 の主要な株式市場の中では最も小さかった。
・現代の日本のように経済的繁栄を謳歌した国において、国富が充実し、国民の資産蓄積
 が進行するいっぽうで、国内経済力が成長力を失い、海外進出を余儀なくされるという
 のは、いわば歴史の必然である。古くは古代ローマが、また近代以降においてはイギリ
 スやアメリカがこれを経験した。
・資本は一つの資産である。鉱物資源、森林資源、エネルギー資源、人的資源などにおけ
 ると全く同じように、一国の経済的発展や国民の豊かな生活を支えるために利用するこ
 とのできる、文字通りの財産である。特に東西冷戦終結後、世界各国が国民経済の充実
 を競っている現在にあっては、他の資源と比べて、資本の希少性は際だっている。
・資本は長期的視野に立って採用される資本案件の実施に当てられ、投資家に収益をもた
 らす。リスクを調整した上で、より多くのキャッシュフローが期待される案件から順次
 配分されるとき、その配分は効率的といえる。年1%程度の低い成長率しか期待できな
 い日本に資本が滞っていることは、国際経済の円滑な発展という点からみて非効率的
 である。もちろん、資本の本源的提供者である日本国民にとっても同じことがいえる。
 現在の国民経済の運営と企業経営の状況に大きな変更がない限り、日本国内においては
 資産の効率的な運用は困難なのである。
・1200兆円を超えた日本の個人金融資産残高は、国民一人当たりでみるとアメリカを
 も上回る。しかも、その約6割は預貯金等に運用されており、いわば資産運用市場とし
 ては未開拓である。この金融資産が効率的に運用されるようになれば、日本経済は確実
 に活性化する。
・株式についてみると、現代はポートフォリオ運用の時代である。個別株で運用しても、
 長い目でみればリスクに見合った運用収益は期待できない場合が多い。したがって、投
 信の時代ともいえる。ところが日本の投信は、これまで投資家の負託に十分に応えない
 できた。
・日本経済と日本企業の抱える課題は多い。その中でも、株式に関するもので最重要なの
 は企業が資本コストを満たすような効率的な経営を目指すということである。株主が期
 待する収益率という意味での資本コストを上回る投資収益率をもたらす事業を採用し、
 そうでなければ躊躇なく切り捨てる。それができる経営者が優れた経営者であり、その
 ような企業こそ投資に値する良い企業である。
・機関投資家には、そのような企業を発掘して育てるという意識改革が求められる。名前
 の知れた、古くから付き合いのある、大きな企業が、単にそれだけで良い会社たり得た
 時代は、はるかかなたに過ぎ去った。企業は、今日では、高度成長期において伸びきっ
 た事業分野を整理し、事業をこれから伸びるものに絞り込んで、企業全体として株主の
 要求するキャッシュフローを稼ぎ出すときにのみ投資対象となりうる。
・いま、日本の投資家に求められるのは、日本と生きる産業に投資し、また日本を支える
 産業をみつけ育てるということである。
・企業経営者には投資効率を念頭において「絞って生きる」という哲学が望まれる。それ
 はたとえば、「儲からない分野からは手を引く」という哲学である。経営者にも、保有
 資産と事業に関する「賢明な選択」が求められているわけである。規模を競うなど論外
 である。