現実を視よ :柳井正 |
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現在の日本の国の財政状況を見ると、あらためて国の基盤は経済だなと感じる。国の経済 が良好でないと、いくら脱原発や生活の質の向上、福祉の向上、自然環境の改善等々、い くら声高々に叫んでも、先立つ財源がなければ実現しない。単なる夢や希望で終わってし まう。 政治も、国の経済が成長している時は、その富をどのように分配するかを考えればよかっ た。しかし、今日のように経済が低迷し、国の財政が悪化の一途を辿る状態の中にあって は、政治も富の分配ではなく、経済の成長の後押しが主な役割になると思う。諸外国では、 自国の経済の後押しに懸命になっているが、我が国の政治はどうかというと、そのような 動きはあまり見られない。毎日毎日、永田町内での権力闘争に明け暮れている感じである。 そんな時、2012年12月の衆議院総選挙を前に、次の総理になるのではと憶測される 安倍氏が「私が総理になったら再現のない財政緩和を実施する。円を輪転機で刷りまくる」 というような過激な発言をしたところ、為替は円安に動き国内の株価も上昇した。 「病気は気から」と言われるが、株価も「気から」という面があるようだ。もっとも、こ のようなことから株価が上昇しても、実体経済が伴わなければ、早々下落するのだろう。 バブルがはじけてから20年、他のアジア諸国は着々と発展を続けているというのに、日 本は底に沈んだままだ。筆者の言うように、我々日本人は、この現実を直視しなければな らない。さもないと、日本の財政崩壊は避けられない |
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成長しなければ、即死する ・成長しなければ、即死する。 ・社会の変化は、あるきっかけによって唐突に起こる。そして成長から見放されることは、 すなわち「死」を意味する。 ・89年末に3万8915円の最高値をつけた日経平均株価は、わずか9ヵ月あまりで半 値近くまで暴落。東京や大阪など大都市圏の地価も、一気に下がっていった。ほんとう ならそこで日本人は夢から醒め、覚悟を決めるべきだった。余剰員を抱えた債務超過企 業を整理して、古い産業構造の転換を図り、バブルのツケを積極的に払わなければなら なかった。未来に向かって第一歩を踏む出す必要があったのである。しかし、日本はそ れをしなかった。 ・政治の責任は大きい。バブルの崩壊以降も、無駄の是正はなされず、非効率な組織がそ のまま温存された。 ・国民に日和って景気対策という名目で公共事業などの応急措置を繰り返す。その財源は 国民の預金を担保にした国債である。 ・民主党には定見も、政権担当能力もなかった。子ども手当や高速道路無料化などのばら まきで、国家財政は加速度的に悪化を続けている。 ・さらに私が絶望するのは、「日本はもう成長をめざさなくていい」という意見を、メデ ィアで評論家や経済学者が堂々と口にするようになったことである。経済成長をせず、 いったいどうやって生きていくのだろうか。 ・この国には1億3千万人の人間を食べさせていける資源などない。だから日本人は必死 に働き、知恵を絞って付加価値を生み出し、稼いだお金で生活を成り立たせてきた。い まだにそれなりの暮らしができているのは、過去の蓄積がかろうじて残っているからに すぎない。その蓄えも、もうすぐ尽きようとしている。 ・税収よりも大きな額を、国債を発行して調達しなければ予算も組めない財政状況。 約40兆円の税収で90兆円以上の支出をする国家会計は、誰がどう考えてもおかしい。 ・ますますボーダレス化する国際金融市場がわが国に見切りをつけ、日本国債が売り浴び せられたら、ギリシャ危機は日本にとっても現実ものとなる。国家財政が破綻した例は 歴史上いくらでもある。日本だけが特別ということはありえない。 ・猶予期間は、もう長くない。国民の意識と行動が変わらなければ、Xデーは早ければ3 年以内に訪れる。 ・「清貧の思想」からは、何も生まれてこない。もっと豊かになりたいと思うから、人は 創意工夫し、努力を重ね、成長する。 ・貧しくても心が豊かならよいというのは、豊かになった人だけが言える戯事。「貧すれ ば鈍する」という言葉もあるが、かつかつの生活をしていて、ほんとうに有意義で充実 した人生が送れるだろうか。「「貧しくてもよい」と軽々しく口にする人は、「ぼんと うの貧困」を知らない。 ・貧困は確実に、人びとから夢や希望を奪う。はたして日本が貧乏になったとき、東日本 大地震で世界が称賛した高い精神性は、残っているだろうか。 ・この国に必要なのは、国民一人ひとりが自分たちの立場や置かれた状況を正しく認識し、 「何よりだめな日本」という現実を直視して、自ら誇りをもって、生きていけるだけの 力をつけること。 ・それは、経済的自立をめざすこと、と言い換えてもいい。自分の足で立ち、自分で生活 もできない国が、再び世界に冠たる国家になるなど、とうてい不可能だからである。も う一度稼げる個人、稼げる企業で溢れる国にしないかぎり、この国の破綻は免れない。 いまやアジアは「ゴールドラッシュ」 ・いい加減に目を覚ませ。バブルの崩壊後、20年にわたってこの国は衰退を続けてきた。 そのあいだ、日本もその一員であるアジア諸国がいったい、どれほど変貌を遂げたのか、 現実を直視できている人は、どのくらいいるだろうか。 ・失われた20年間、私たち日本人が昼寝でもするように無為無策に過ごしているあいだ。 近隣諸国は驚くべき変貌を遂げていた。 ・そもそも有史以来、中国やインドが世界の中心地でなかったのは、じつはわずかな期間 でしかない。文明の発祥地である両国は、思想や宗教、学術、文化、政治の諸制度で、 世界に大きな影響を与えてきた。 ・情報が瞬時に駆け巡るようになると、「仮需」が世界を席巻しはじめた。仮需とは株式 や商品などの現物を売買するのではなく、差金決済(決済時に算出された損益のみえお 受け渡すこと)を目的とする取引をいう。気候変動や政変リスクなどの情報を起爆剤に して、世界中の株式市場や商品先物市場を投資マネーが徘徊しやすい時代になっている。 ・日本以上に「学歴信仰」が高い韓国では教育にかける情熱は凄まじく、大学への進学率 は日本よりもはるかに上。ソウル国立大学を頂点とした受験競争も、東京大学を頂点と した日本以上に厳しいものがある。 ・経済的なハンデがあるわけではない。むしろどの国の学生よりも海外留学のハードルが 低いはずなのに、それでも外に行くことを躊躇する。日本人の海外に対する無関心さは、 不思議を通り越して異様にさえ思えてしまう。 ・アジアで「最も収益性の高い企業」50社のリストによれば、中国企業が23社で圧倒 的なトップ。以下、韓国企業8社、インド企業7社、オーストラリア企業3社、インド ネシア企業とタイ企業が各2社で続いている。わが日本はというと、ランクインしてい る企業は1社もない。これが現実である。 ・もしいま日本だけにしかない素晴らしい技術があるとすれば、それは「町工場」の職人 技とでも言うべきものだろう。しかし海外の大資本が本気になれば、その技術は工場ご と簡単に買収できる。 ・日本企業は技術力を最重視して、他社に先んじて新しい機能を開発しては、それを製品 に詰め込むことに血道をあげた。要するに「職人気質」なのである。 ・しかしグローバルマーケットは、必ずしもこの「職人気質」は強みとして作用しない。 場合によっては弱みになることもある。そこでは技術オリエンテッド(志向)ではなく、 どういう技術をどのようなかたちで製品に組み込めば、顧客の生活の質を高められるか、 という発想が必要である。そこで重要になるのは「職人気質」ではなく、「商人気質」 とでも言うべきもの。 ・どれだけすごい技術であっても、顧客に伝わらなかったり、うまく商品化できなければ、 それは生産者の自己満足にすぎない。そこから新しい価値が生み出されることはなく、 宝の持ち腐れで終わってしまうのである。 ・「企業側が何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を求めているか」を追求するのがビ ジネスの要諦。 ・顧客の立場に立って、何がほしいか、何を求めているのかを頭がショートして煙が出る くらい考えなければ、ビジネスは成功しない。 ・現代のビジネスはどの業界でも、世界ナンバーワンでなければ儲からない構造になって いる。ナンバーツーやナンバースリーはそこそこ儲かり、それ以下はなかなか儲からな い。 ・世界は多様である。それをしっかり理解して、どの国、どの地域でも柔軟に対応できる 能力が不可欠。マネジメントを行う側にも、多様な人材が必要となる。 ・全体のために個を調和させる東洋的価値観が、世界的にも注目されている。西洋的価値 観では、個々人の関係はあくまで契約に基づくもので、感情よりも理性が優先される。 あまりにそれが行き過ぎると、とかく利益を最優先する考えに陥りがち。そうした西洋 的価値観が、リーマン・ショックのような金融危機を生んだのかもしれない。 「資本主義の精神」を忘れた日本人 ・この国の人たちの標準的な生活をアメリカやヨーロッパの人たちと比較してみると、明 らかに日本人のほうが下にくる。20年前に金持ちだった日本人は、いまではせいぜい 「中の下」にすぎない。しかし、そこで暮らしている日本人は相変わらず、自分たちは 「上の上」だと勘違いしたままである。 ・人間は、すぐ近くまで危機が迫っていても、実際に痛みを感じないと、それを危機とし て認識できない。その欠陥を補うために知性があるが、そうした知性を働かせることが、 日本人はきわめて苦手なのではないだろうか。 ・目の前にある現実を視ないで、過去の成功体験にとらわれて変化を嫌う。論理よりも情 緒を優先し、観念論に走るといった特性は、時に取り返しのつかない結果を招く。 ・いま必要なのは、現実を直視すること。この20年の間、世界はものすごいスピードで、 ドラスティックに変貌を遂げてきたが、その事実に日本人はきちんと向き合おうとしな かった。 ・いまの日本人は、自分たちの仕事があるからこそ、日々の暮らしや社会が支えられてい る、という自覚をいったい、どこまで持っているだろうか。 ・真っ当な経営者であれば、入が少なくなれば出るほうを抑え、どうしたら無駄を省ける か、入ってくるお金を増やすことができるかを考える。ところが、この国はそうしなか った。代わりに国債を発行し、予算規模をどんどん拡大していった。国民が経済成長を めざしてあくせく働く代わりに、国家の目下の状況をなるばく維持する、痛みを伴わな いやり方を取った。 ・国債というのは、要するに、未来からの借金。返済義務を負わない年配世代が直接、痛 みを感じることはない。 ・2009年に政権をとった民主党は「コンクリートから人へ」というコキ絵のよいスロ ーガンの下、子ども手当や高速道路無料化、農家の戸別所得補償といった「ばら撒き」 を始めた。むろん、そのばら撒きの原資は「未来の国民からの借金」である。 ・不況であろうとなかろうと、借りた金は返すのが商売の鉄則。本来、市場から退場を即 されている企業に対して、借金は返さなくてもよい、国が最後まで面倒を見る、という のは社会主義国そのものである。 ・この国はいつの間にか、お金を稼ぐものではなく、貰うもの、という意識が蔓延してし まった。 ・あそこにお金があるからこちらにもってきて、不足分を穴埋めしよう、足りない人に分 けて凹凸を均そうとの発想は、稼ぐ力のある企業や個人を日本から追い出してしまう。 稼ぐ人も、稼がない人も一様に食べられる社会からは、確実の活力が失われる。 ・「働かざるもの食うべからず」という言葉はどこに行ったのだろうか。モラルハザード が起こり、情熱を込めて働かず、その日暮らしの人たちばかりが大手を振って歩く国に 日本がなって、ほんとうにいいのだろうか。 ・2019年頃までには国と地方を合わせた政府債務残高が、個人金融資産を超えるとの IMFの試算もある。日本人や日本企業が生産性を高め、競争力を取り戻さないかぎり、 どこかで過去の遺産に頼れなくなることは、目に見えている。 ・別にそんなに頑張らなくても、そこそこ働い「身の丈の生活」を楽しめばいい、という 人は、いまの日本人が「身の丈の倍の生活」をしている事実を、まったくわかっていな い。 ・松下幸之助が見た未来とは逆の方向に、いまの日本は転がり続けている。権利ばかり主 張して、義務から逃げようとする。困っても国がなんとかしてくれる、と思い込む。大 事なことは自分や家族の生活で、生まれ育ったこの国に対して何ができるかなど、考え たこともない。 ・かつて日本人には国から保護を受けることを「恥」とする感覚があったが、それが失わ れていることにも問題がある。つまり、経済的自立心の欠如。場合によっては、それが 当然の「権利」であるとすら、彼らは思っているかもしれない。 ・「お金儲けの神さま」邸永漢氏は、「日本は政治家と生活保護を受ける人ばかりになる」 と予言していた。 ・設けないかぎり、稼がないかぎり、人生を楽しまないかぎり、日本は再建できません。 ・サラリーマンという労働形態を、資本主義の進化形という人もいるが、とんでもない。 資本主義の原理とは競争である。競争に勝つだけの力がなければ、報酬もてに入らない。 だから勝てるようになるために自分を磨き、爪を研ぐ。 ・サラリーマン根性が染みつくと、世の中に価値を提供し、自分のお金で稼ぐ実感が、な かなかもてない。会社に時間を提供して見返り、それが給料なのである。 ・いったん既得権益を手にしたら最後、それを絶対に手離さない。かくしてエネルギーの ベクトルは、社会を変えるのではなく、居心地のいい現在の状態をできるだけ温存する 方向に傾いていく。その結果、社会全体が硬直化し、外部の変化についていけずに衰退 する。いまの日本は、資本主義の精神を忘れたサラリーマン社会の成れの果てと言えな いだろうか。 ・サラリーマンは「身分」であると思っているのも、世界中で日本人だけ。 ・日本の官僚は自分たちのことを、難しい公務員試験に合格し、天下りも含めて一生食べ ていくのに困らない「身分」を手にしていると思い込んでいる。 ・日本のサラリーマン、とくに大企業に勤める人ほど、その会社で働くことを身分と信じ て疑わない人が少なくないように思える。 ・海外の管理者階級、いわゆるホワイトカラーたちは、自分たちが会社の一部とは、絶対 に考えていない。自らは独立した事業者で、会社と対等の契約を結んでいるという認識 である。会社から受け取る報酬は、あくまで自分の技術に対する評価。会社に所属して いるから給料が貰えるとは、微塵も思っていない。 ・これからの時代は、個人として競争に勝ち抜いていかなければ、いつ会社がなくなり、 クビになるかわからない。 ・お金さえあればなんでもできる。己さえよければいいという考え方では、たとえ一時は 我が世の春を謳歌しても、長くは続かない。それはどの時代も、どこのくでも同様であ る。 ・いまの新聞は、政治に対して表面的な批判はするが、批判だけで終わっているのではな いか。そこには、国のあるべき姿を提示していこう、という気迫が見られない。 ・いくら過去を振り返ったところで、そこからは何も生まれてこない。改革やイノベーシ ョンは、つねに未来にある。 ・従順や調和を大切にする日本人の特質がすべて悪いと言っているわけではない。しかし それを過剰に強調することは、資本主義社会を生きている日本にとって、プラスにはな らない。 ・人間の成長は失敗から生まれる。挑戦して失敗し、そこでいろいろなことを学び、再び 挑戦する。これが成長のサイクルである。だから人より多く失敗すれするほど、より早 く成長できる。 ・競争を否定し、失敗を恐れて、できるものだけをやろうとすれば、いつまでもその場で 足踏みを続けているようなもの。前には進めず、体力を消耗してしまう。 ・せっかく若い力が社会に入ってきても、いつまでも年配者が第一線から退かなければ、 仕事を通じて学習し、成長する機会がもてない。超高齢社会に進む真っ只中にあって、 それは大変な決断である。しかし年配者が積極的に、若い人に仕事の場を譲っていくこ とは、この国が活力を取り戻すためには欠かせない。それこそ年配世代の仕事であるこ とを、リーダーはもっと積極的にアナウンスすべきだろう。 ・いまの日本に必要なことは、日本人だけの箱庭をやめてオープンソサエティーに移行す ること。純粋培養では、世界で戦えるタフな人材は絶対に育たない。アメリカやヨーロ ッパはもとより、中国やASEANにしても、成長している国は国外からどんどん優秀 な人材を受け入れる。 ・いくら「古きよき日本の伝統を守る」と言って閉じこもっても、日本が没落して諸外国 の草刈り場となってしまえば、結局はその伝統も失われてしまう。 ・この国はもう一度「稼ぐ」ことの重要性を思い出し、「資本主義の精神」を取り戻さな ければならない。成長を否定するような国家からは、世界を驚かせ、新しい価値を生み 出すイノベーションは絶対に生まれてこない。 ・たった一度しかない人生を、低位で安定しているけれど、貧しくて夢も希望ももてない 状態で過ごして幸せなのだろうか。 政治家が国を滅ぼす日 ・いまの日本政治は、愚政のそしりを免れない。日本の政治家も、官僚も、三流どころか 四流である。 ・どうやって成長するのか、と考える人たちがいなくなり、目の前の原資を配ることで、 いまに国民の人気を集めるか、ばかりを考える集団になってしまった。 ・企業でも、家庭でも、収入の範囲内でやりくりするのは当然のこと。ところがこの国は、 税収の二倍以上の予算を組んで、足りないぶんは税収を上回る額の国債を発行し、平然 としている。 ・価格の暴落もなく新規国債が順調に消化できるのは、国民がせっせと蓄えてきた1500 兆円もの個人金融資産があるからである。その資産を国家は国民が気づかないうちに勝 手に担保を取って、好き放題の予算を組んでいる。 ・このままいけば日本は、ヨーロッパ通過危機のトリガーを引いたギリシャの二の舞いに なる。 ・わずか20年前に、経済的な栄華に酔いしれた豊かな国が、いま破綻の瀬戸際に立たさ れている。いかに繁栄を極めても、いったん活力を失えば、国家はあっという間に衰退 していく。 ・投機筋に売り浴びせられて日本国債は暴落し、あっという間に日本円の信用は失われる。 通貨の価格が下がってハイパーインフレが起こり、国民がせっせと貯金してきた財産は、 紙切れ同然になってしまう。 ・10%の消費増税ではどうにもならないくらい日本の病状がひどいことは、みんなわか っている。 ・どう考えても国家財政の根本的な立て直しではなく、破綻を少しだけ先延ばしする延命 策でしかない。 ・財政健全化のために造成がバラ撒きに使われることを、国民は絶対に許してはならない。 同時に、無責任な政治家や官僚が、国民に隠れて好き勝手なことをできなくする仕組み を、そろそろ整えるべきではないか。 ・国民がどんなに頑張っても、このままでは政治家が国を滅ぼしてしまう。カウントダウ ンは、徐々に近づいている。 ・日本の公的年金制度はもう、実質的に破綻している。そもそも平均所得が400万円程 度の国で、高齢者一人当たり200万円あまりの社会保障給付費が賄える、と考えるほ うがおかしい。いまの年金制度はあちこちいじったところで、どうこうなるレベルでは ない。制度自体を一度、捨て去る以外にないだろう。支払った以上の金額を高齢者にな ったら受け取れるという、これまでの考え方は通用しないことを、国民は理解しなけれ ばならない。 ・私が気がかりなのは、「どこかで中国軍部が独走するのではないか」ということ。 ・財政再建というのは「もう少し景気がよくなったら」と悠長なことを言っていたら、い つまでたっても実現できない。国民に甘い顔をしているうちに国が潰れてしまったら、 そのあとには緊縮財政どころではない痛みが待っている。今何をやることが、結果的に 国民をいちばん幸せにできるのか。そおことをもう一度、政治家は胸に手を当てて、考 えるべきではないか。 ・現在の日本の法人税の実効税率は約36%(2012年4月時点)。これはアメリカと 並んで世界一高い。 ・世界各国はどうか。ドイツは約30%、中国は25%、韓国は約24%、シンガポール は17%。 ・産業は「保護」すべきという価値観を、いい加減に日本は捨てるべきだろう。じつは、 行政が保護したことで伸びた産業は、ほとんどない。 ・外国の政治家は、自分の国民によって選ばれた、国民の奉仕者であることが、よくわか っている。しかし、日本は違う。日本の政治家は、自分たちは「認可業」という感覚な のではないか。「税金を払ってくれる企業より、許認可権をもっている自分たちのほう が上だ」と考えているように見えてならない。だから企業に対して、必然的に高圧的な 態度になる。 ・この国の政治家や官僚は、自分たちの給料が何から支払われているのか、ということを、 しっかり考えたことがあるのだろうか。 ・しかし権力を振り回し、威張ってみたところで、その人が自己満足するだけ。企業の成 長や発展を助けるほうが、国が栄えて国民も幸せになり、自分たちにもメリットがある。 ・新しい時代には、「新しい食い扶持を見つけてきたのは誰か」ということが、評価の対 象になるべきだろう。 あなたが変われば、未来も変わる ・「稼ぐ力」を失った日本の財政赤字は未曾有のレベルにまで膨らみ、全体最適を考えら れない政治家はばら撒きに精を出して、増税という手段で国民に負担を押し付ける。歳 出削減という選択肢はどこかに置き忘れたかのように。 ・もはやこの国に、政治家や官僚が変わってくれることをのんびり待っている時間は残さ れていない。 ・何をどうすればいいかは、教えてもらうのではなく、自分に問いかけ、自分で答えを出 す。それが自立した人間。そうした人間たちが集まって、強い国ができあがる。 ・バブル崩壊、デフレ不況、超円高、財政赤字、失業問題、東日本大震災、そして原発事 故。問題が発生するたびに、「国は早くなんとかしろ」「日本は政治が悪すぎる」と人 びとは繰り返してきた。しかし、自分たちの国のために、アクションを起こしただろう か。失われた20年の教訓。みんなが評論家になってしまったこと。傍観者ばかりで当 事者がいなければ、状況は何も変わらない。 ・韓国や中国の企業に比べて、とかく元気がないと評される日本企業。いちばん悪いのは、 時代の変化に鈍感であった経営者であるのは間違いない。それは戦後の安定のなかで、 経営者がサラリーマン化してしまったことに関係がある。すなわち、創業者精神の欠如。 ・企業というものは立ち止まったら、一瞬で時代から取り残され、衰弱していってしまう。 企業はつねに競争を続けている。現状に満足して変化を避けることは、その時点で負け を意味する。 ・人の一生とは、自分の志を遂げるためにある。 ・挑戦しなければ人生ではない。 ・志をもって生きよ。 ・立ち止まることは最大のリスク。 ・何もせずに同じところにとどまっているのは、じつは最大のリスクなのである。 ・この国にもう、安全、安心、安定はない。自分は人生をどうしたいのか、会社をどう変 えたいのか、この国をどうすべきか、一人ひとりが日本の置かれた現実を直視しながら、 志高く毎日を真剣に生きないかぎり、未来も変わらない。 ・起こっていることは、すべて正しい。 ・自分にとって不都合なものであっても、目の前の事実を躊躇なく受け入れること。 ・世界中どこでも、売り手よりそれを買う大衆のほうが、モノの良し悪しを見極めるたし かな目をもっている。世間や大衆をバカにして傲慢な気持ちでビジネスをしても、成功 できるはずがない。 ・自分たちより賢い大衆に頭を下げ、何が正しいか教えを請い、奉仕させてもらう。 必要なのは、謙虚さである。 ・「生きる」というのは、そもそも「求める」ことだろう。 ・もっともっとしたいという欲望があるからこそ、生きるエネルギーが湧き、科学や文明 が進歩したのではないか。「求めない」とはブロイラーのように、口を開けてエサが来 るのを待っている状態である。 ・「求めない生き方」は、自らの可能性を閉ざし、人間性の否定にすらつながる。およそ 馬鹿な話だと思う。 ・菅直人氏の揚げた「最小不幸社会」は、みんなが最小限のものしか求めず、頑張らない、 停滞して活力を失った社会ではないか。そうした不健全で不健康な社会に、魅力がある だろうか。 ・そもそも資本主義社会では、企業は必死で売れる商品をつくろうと競争している。需要 よりも供給のほうが多いのは当然のこと。だから、需要は景気によって左右されるもの とは考えず、自分でつくりだすものという発想が基本となる。 ・需要を新しくつくりだすためには、顧客の立場に立って、「いったい何に不満を感じて おられるか」という潜在ニーズを、頭をふり絞って日夜、考える。 ・グローバル化が進んだ現代では、技術も、情報も、人材すら、いとも簡単に国境を飛び 越えて移動してしまう。自分たちは日本人、向こうは韓国人といった区分けは、ほとん ど無意味に近い。 ・自分たちにないものをもっているなら、それを取り入れることで競争力を高められるな ら、世界のどこにある企業だろうと出向いていって、教えを請う。 ・フットワークの軽さがないと、変化の速いグローバルマーケットを勝ち抜くことは、到 底できない。 ・学ぶことに思い込みはいらない。国境も関係ない。それは企業だけでなく、政治運営で も同じである。 ・売れる商品というのは、国や地域に関係なく、世界中どこでも同じ。 ・いい商品というのは、買った人が自分で使い方を考えてくれる。 ・優秀な人間ほど、過去の思考パターンに引きずられる傾向がある。一つのパターンが何 ども通用するなら、ビジネスで失敗する人はいない。むしろ過去の成功パターンに足を 取られれば、現場に隠れている「将来の成功」に必要な要素が見えなくなってしまう。 だからこそ、「成功は一日で捨て去ら」なければならない。 ・経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。商売には失敗がつきもの。10回新 しいことを始めれば9回は失敗する。 ・何が正しくて、何が間違っているかは、結局のところ、自分で経験してみないかぎりわ からない。いくら本を読んだり、人の話を聞いたりしても、同じである。 ・挑戦し、失敗するから原理原則がわかる。傷を負い、痛い思いをして、自分の血肉にな ったものだけが、次のチャンスで威力を発揮する。 ・資本主義社会では、挑戦は、すればするほど得になる。人言の劣化の度合いは、挑戦の 数の少なさに比例すると言ってもいいかもしれない。 ・戦うならば、負け戦とわかっていることはしない。 ・日本人はとくに集団になると、与えられた目標自体の正当性を疑わず、達成に向けて闇 雲に突き進むところがある。これでは学びも何もあったものではない。精神論だけでな んとかなるというのは、まさに現実直視ができなくなり、敗戦に向かって一直線に突き 進んだ日本人の「失敗の本質」そのもの。 ・挑戦には、こうすれば勝てるという自信と勝算が不可欠。そこに情熱が必要だが、根拠 のない精神論はいらない。 ・スマートに戦う必要はない。勝ちに通じると思えば、なんでもやること。高度経済成長 期の日本企業がそうだった。「野武士」のように泥臭くやったほうが、勝機は広がる。 今の日本企業からは、総じてこの泥臭さが感じられない。いつの間にか「殿様商売」に なってしまったのではないか。 ・グローバル化とは、自分たちが日本人であることを否定するのではなく、この国に生を 享け、日本人の精神を宿した私たちが、日本語で考え、感じていることを、世界の人た ちに向かって伝えること。あくまで思考の基本は日本語であり、日本語で考えることは、 グローバル時代のなかで、ハンデどころか強みにすらなる。日本語で考えた日本語の思 考を、英語でしっかり伝えていく。 ・個人が豊かな暮らしをするために、稼ぐことは必要である。同時に、自分たちが暮らす 社会全体をもっと豊かにするためにも、私たちは稼がなければならない。 ・日本人は商人としてのリアリズムをもち、お得意さん大事の感覚で、世界中に喜ばれる 存在になる以外、生きていく道はない。日本の商人道をきちんと発揮すれば、日本とい う国を富ませるのみならず、日本企業は世界中の人たちを、必ず幸せにすることができ る。 ・東日本大震災から月日が経っても、復興どころか瓦礫の処理すら進まない。原発事故の 原因究明もできず、国家の生命線たるエネルギー政策も曖昧のまま。政治家は増税に命 をかけるというが、増税で何がどう変わるのか、まったく見えてこない。 ・苦しいときほど、理想をもつことが大切になる。こうなりたいという理想があれば、い ろいろなものが見えてくる。逆に理想なくして日々を平凡に生きていれば、目の前にと てものないチャンスがあっても、気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。そして願 わくは、その理想はできるだけ大きいほうがいい。理想は小さいから実現するものでも ない。私の経験から言っても、お起きければ大きいほど頑張れるし、エネルギーも出る。 誰にとっても人生は一度だけ、それなのに、「いまの状態がいつまで続くのだろうか」 「いざとなったら国はなんとかしてくれるのか」と、たった一度の人生を他人任せにし て、びくびくしながら生きるのは、じつにもったいない。 ・人生の主役は自分自身。自分のなかにどれほどの可能性が詰まっているか、試してみな いとわからない。 ・日本人が高い理想を胸に抱き、当事者となってその理想を実現するために行動を起こせ ば、必ずこの国は変わる。 2030年 私が夢見る理想の日本 ・国民が納税を喜ばないのは、不公平感や重性感があったり、自分の金が無駄に使われて いるという不満が存在するから。 ・このままいけば、日本はどうなるだろうか。大増税と大幅な公共サービスのカットで、 道行く人はみな一様に暗い。商店街はシャッターで閉ざされ、若者に夢や希望はなく、 年配者はわずかな既得権を守ることだけに汲々とする。 ・いますぐ手を打たなければ、これまで日本人が想像したこともない「貧困」が、あっと いう間に、この国に押し寄せてくる。 ・とにかく政治家は、コストカットを恐れないこと。40兆円程度の税収で90兆円以上 の支出をしている異常な国家財政を改めるには、発想を根本から変える必要がある。 ・無駄の最たるものは公務員の人件費。失われた20年のあいだ、昇給をストップしてい る、社員の給料を2〜3割カットしている企業は珍しくない。それなのに、公僕である 公務員が民間よりも高い給料をもらい続けている状況は、どう考えてもおかしくないだ ろうか。給料の原資は税金、つまり国民のお金である。 ・国会議員の数も大幅に減らす。衆議院の定数は100名とする。参議院をなくして一院 制にする。 ・日本の財政赤字がここまで膨らんだ理由は、政治家や官僚の裁量で、税金が恣意的に使 わえる不合理が止まらないからである。その責任を彼らはもっと感じるべきではないか。 |