中央銀行はもちこたえられるのか :河村小百合

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通貨価格を守るため、政府からの独立性を法で保障されている日本銀行。
その日銀がいま、まるで政府にとって使い勝手のいい現金自動支払機(ATM)のように
なっている。
政府が発行する「借金証文」である国債の半分近くを日銀が保有する。
これでは、財政赤字の穴埋めのために日銀が、せっせと紙幣を量産しているようなもので、
禁じ手となっている「財政ファイナンス」そのものではないか。
たしかに、どの国の中央銀行も金融政策の一環として市場から国債を買っている。
とはいえ、国債残高の半分近くを買い上げている中央銀行は、日銀のほかにはない。
これだけ乱発されている国債を、投資家たちが安心して買うのは、日銀がすぐに確実に高
値で買い取ってくれるからだ。
コロナ禍で当面は借金だのみもやむを得ないだろう。
しかし問題は、政府・与党内で財源調達について中長期的な増税の議論がまったくないこ
とだ。
「財政の日銀依存」というモラルハザードが、政治の世界で想像以上に根を広げている。
日銀が、紙幣をどんどん刷って赤字を埋めても問題がないなら、政府にとっても国民にと
っても、これほど楽なことはない。
打ちでの小づちを手に入れたも同然だからだ。
だが、際限なく発行される紙幣は、いずれは必ず信用されなくなり、紙くずになる。
そして財政は破綻に到る。これが歴史の教訓だ。
正直に言って、この国のマクロ経済政策はいまや制御不能状態にある。
近い将来の財政健全化はどう見ても、不可能だ。
将来世代のために早く財政ファイナンスをやめる必要があるが、急に止めたら国債の価格
の暴落と財政破綻は避けられない。
国民生活に忍び寄る巨大リスクをここまで膨張させたのはアベノミクスであり、異次元金
融緩和である。
にもかかわらず、首相も日銀総裁も、説明責任をまったく果たそうとしていない。
敗戦直前の1944年のわが国の財政赤字は、対名目GDP比で約267%ぐらいだった
と言われている。
ところが、現在のわが国の財政赤字は、これを超えている。
つまり、今の日本の財政は、あの敗戦当時よりも悪いのだ。これは、とんでもないことだ。
これは、国の財政赤字を日銀が穴埋めする「実質的財政ファイナンス」の成れの果てと言え
る。
この国は、いつ財政破綻してもおかしくない状況になっている。
この本は、いまから4年前の2016年に出版されたものである。
この筆者は、その当時においてでさえも、安倍政権と日銀・黒田総裁によって行なわれてい
る「異次元の金融緩和」は、近い将来、この国の国民に重大な危機をもたらす可能性が非常
に高いと、警鐘を鳴らしていた。
そんな危機的状態にあるこの国を、新型コロナ・ウイルスが襲った。感染の防止のための
自粛によって、経済は大きなダメージを受けている。そんな中、渦中にある安倍首相が、
自身の健康を理由に辞意を表明した。
おそらく、わが国にとって、これが致命的となるのではないか。そんな気がする。
今までは「異次元金融緩和」によって、株だけは高値を維持し続けてきたが、それも終わ
りとなるだろう。
今では、「異次元金融緩和」は止めるにやめられない状態になっている。
止めれば国債の価格は暴落するだろう。
金利は急上昇する。そして国の財政運営ができなくなる。財政破綻だ。
この国は、今からは考えられないほどの貧しい国に転落するだろう。
これは、「安倍政権と黒田日銀総裁がこの国の国民を地獄へ引きずり込んだ」との誹りを
受けても仕方ないだろう。
しかし、そのツケを払わされる国民は、それぐらいでは割に合わないほどの苛酷な生活を
強いられることになるだろう。


わが国の政策運営の油断と慢心
・安倍政権は、経済の分野では、「デフレ脱却」「2パーセントの物価目標」達成を、中
 央銀行である日本銀行と共有する目標として掲げ、「アベノミクス」といわれる政策運
 営を行ってきました。
・これは政権発足当初、
 @大胆な金融緩和
 A機動的な財政出動
 B民間投資を喚起する成長戦略
 という「三本の矢」で構成されていた政策運営です。
・2015年9月の自由民主党総裁再選後は、安倍政権は引き続き「デフレ脱却」を目標
 に掲げ、それまでの「三本の矢」を踏襲するとはしつつも、
 @国内総生産(GDP)600兆円の達成
 A子育て支援拡充(希望出生率:1.81の実現)
 B社会保障制度改革(介護離職ゼロの達成)
 という「新三本の矢」を掲げました。
・中央銀行は通常、「政策金利」を上げ下げして金融政策運営を行います。日銀の場合の
 金利について、90年代末に「ゼロ金利政策」が採用されて以降、最近に至るまで、ほ
 ぼ一貫してゼロパーセント近傍にある状態が、もうかれこれ18年近く続いていること
 になります。 
・日銀は、90年代末以降、政策金利をゼロパーセントにまで下げてしまい、それ以上、
 下げられなくなっていました。そんななかでも、不良債権問題後の銀行危機を何とか収
 束させて、日本経済の立て直しにつなげようと、民間銀行から多額の国債を買い入れ、
 その対価として多額の資金を民間銀行に渡すという、新たな試みを実施しました。当初
 は福井総裁の時代で、これが2001年から2006年まで行われた、「量的緩和」政
 策です。このような金融政策運営は、世界でも初めての試みでした。
・お金というのは、中央銀行である日銀から世の中に対して、つまり私たち国民に対して、
 直接、供給されるものではありません。日銀はまず民間銀行に対して供給し、民間銀行
 はそれを元手に企業や家計に対して貸出を行なったりして、世界中にお金を供給します。
・通常のプラスの金利がついている状況では、中央銀行が多額のお金を民間銀行に供給す
 れば、金利が下がり、民間銀行は元手となる資金の調達が楽になるので、企業や家計向
 けの貸出を増やします。その結果、景気はよくなり、物価も上昇します。
・このようなメカニズムが機能するからこそ、その時々の景気の良し悪しや物価情勢に応
 じて、金融政策運営によって調整する意味があったわけです。
・当時の日銀は、すでにゼロパーセントになっていた金利がそれ以上は下がりようなない
 ことを承知のうえで、銀行に供給するマネタリーベースを増加させる量的緩和政策を行
 なっていました。    
・これは量的庵和の導入当初、日本経済が不良債権問題で深刻な影響を受け、民間金融機
 関の破綻が相次ぎ、金融システムが揺らいでいた時期に金融危機を収束させるうえでは
 効果があった、との見方が広く共有されています。ただし、貸出や私たち国民の手元に
 出回るお金が伸びるようなこともなく、物価も目覚ましく回復することはありませんで
 した。
・「量的緩和」政策は2006年3月に解除され、2008年4月には白川氏が日銀総裁
 に就任しますが、同年9月にリーマン・ショックが起こり、2011年には東日本大震
 災が続いたことは、わが国経済にとっても大きな打撃であり、不運であったと言えるか
 もしれません。
・2012年12月の総選挙で自由民主党・公明党が民主党から政権を奪還し、第二次安
 倍政権が誕生しました。翌13年1月、内閣府・財務省・日銀は「デフレ脱却と持続的
 な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という共同声明を発表
 し、安倍政権は、
 ・デフレ脱却
 ・2パーセントの物価目標
 達成に、日銀とともに取り組む姿勢を明確化しました。
・2013年3月、残るわずかな任期を残して退任した白川総裁の後に日本銀行総裁には、
 元財務官の黒田東彦氏が就任しました。黒田氏の持論は、「それまでの日銀の金融緩和
 の度合いが足りなかったから、日本はデフレから長年、脱却できなかった」というもの
 で、「自らが日銀総裁に就任すれば、2パーセントの物価目標を、2年程度で達成する
 ことをめざし、大胆な金融緩和を実施する」と述べていたのです。
・その言葉どおり、日銀は黒田新総裁就任直後の2013年4月から、年間約50兆円と
 いう”型破りの”規模、前代未聞の規模で国債等を買い入れてマネタリーベースを供給す
 るという、「量的・質的金融緩和」を開始したのです。
・「量的」のみならず「質的」とあるのは、EFTやJ−REITの買い入れ額を拡大し、
 株や不動産といった資産価格への働きかけも企図としていたことによります。これには、
 日本国内のみならず、世界中が仰天しました。
・国債等の買い入れの規模は、2014年10月の追加緩和で、年間約80兆円に増額さ
 れました。黒田総裁の就任後、現在に至るまでのこのような金融政策運営は、白川前総
 裁時代の「包括緩和政策」が長期国債を毎月2兆円程度買い入れるものであったことと
 比較してみても、いかに”型破り”の規模、”異次元”の規模で行われているかがわかりま
 す。    
・三党合意に従って、安倍政権は2014年4月に、消費税率の1回目の引き上げ(5%
 →8%)を実施しました。その後、景気は失速を余儀なくされました。引き上げ前には、
 住宅投資などの「駆け込み需要」も発生していましたから、その反動が来ることに、や
 むを得ない部分もありました。 
・しかし、安倍政権は「これでは日本経済が持たない。デフレからの脱却もできなくなる」
 と判断し2014年11月に、三党合意で予定されていた2015年10月の2度目の
 消費税引き上げを、2017年4月へ先送りすることを決定しました。
・政府債務残高の対名目GDP比が200%を超えている国は、現在の先進国のなかでは、
 わが国以外にありません。2012年中に2度の財政破綻に追い込まれたギリシャです
 ら170パーセント台です。これほどの借金大国が、予定されていた増税を先送りする
 といえば、市場は財政再建が遠のいたと判断し、その国が発行する国債を売り浴びせて
 価格を下げ、より高い金利水準を要求してくるのが普通です。先行き、安定的な財政運
 営が維持できなくなるリスクが上昇したとみなされ、金利が跳ね上がることになるので
 す。 
・ところが、わが国の国債は、2014年11月に消費税率引き上げの先送りが決定され
 ても大きく売り込まれることもなく、金利も上昇することはありませんでした。上昇す
 るどころか、ズルズルと下がっていったのです。その理由は、日銀が「デフレ脱却」を
 目標に、”型破り”の規模、”異次元”の規模で、国債を買い入れ続けていたからです。
 いや、「買い占め続けていた」という方が正確かもしれません。
・2015年度末には、中央銀行である日銀がついに、日本国債の最大の保有主体となっ
 てしまいました。その結果、民間銀行などは、国債の保有額を大きく減らしており、市
 場参加者同士での通常の国債取引は極端に細ってしまっています。日銀が国際市場を
 「抑えつけている」結果、市場参会者が先行きの様々なリスクを評価し、それを金利形
 成に反映させる力は、もはや殺がれてしまっているのです。
・このような状況では、たとえ、日銀が直接、政府から国債を引き受けてはいないとして
 も、もはや「事実上の財政ファイナンス」状態に陥っていると私は思います。
・「財政ファイナンス」とは「中央銀行による国債引き受け」のことで、これまでの国内
 外の歴史的な経験からは、必ず放漫財政と財政破綻や高インフレを招来し、国民に甚大
 な負担を負わせる結末を引き起こすとして、現在ではどの国も憲法や法律で禁じている
 ものです。わが国でも財政法第五条で明確に禁じられています。
・確かに、今、日銀が行っている量的・質的金融緩和は、政府から直接、国債を引き受け
 ているものではないため、財政法第五条には該当しません。また、当事者である日銀の
 黒田総裁も「財政ファイナンスではない」と繰り返し発言しています。しかしながらそ
 の実態は、財務省管財局が発行した国債を、民間金融機関が落札し、一晩、手もとに
 「寝かせた」だけで、翌日には日銀が実施する国債買い入れオペレーションに出すとい
 うような形で実現されていることが広く知られています。その結果、実際にも、国債金
 利の変動は抑え込まれてしまっています。これはまさに「事実上の財政ファイナンス」
 に相当する、と思います。
・これに味をしめてしまったのか、2016年6月、安倍政権は、一度目の延期の際に
 「2017年4月には必ず実施する」と約束したはずの消費税率10%への引き上げを、
 再び延期してしまいました。今度は2019年10月まで先延ばしすることにしたので
 す。日銀はそれに先立つ2月から、マイナス金利政策を導入しつつ、年間80兆円ペー
 スでの国債買い入れを続けています。そして6月、消費税率の引き上げの再度延期表明
 によっても、わが国の国債金利は再び、「微動だにしなかった」のです。
・財政再建に向けての取り組みは、ほとんど”棚上げ状態”です。この国は、これほどの政
 府債務を抱えながら、それを今後どうやって維持し、財政運営を回しながら返していこ
 うかなどということを一切、考えていないのかもしれません。
・安倍政権は、自分たちが政権の座にある間は、このままうまくいく、もしかしたら、永
 遠にこのままうまくいく、と思っているのかもしれません。安倍政権のみならず、あた
 かも国全体が、この超低金利が、このまま永遠に続くと信じて疑わなくなってしまって
 いるようです。「事実上の財政ファイナンス」によって、すっかり感覚が麻痺してしま
 ったこの国全体に”油断”と”慢心”が充満してしまっているように、私には見えます。
・しかし、このような状況は、今後いつまでも続けることができるものではありません。
 日銀が質的・量的金融緩和という「事実上の財政ファイナンス」を続けられなくなった
 とき、そのときこそが、わが国の財政と経済にとっての正念場になると思います。

「財政危機」のあり得るシナリオ
・財政危機に陥ったとき、要するに国が借金を膨らませ過ぎて、気がついたときには本当
 に財政運営を回せなくなってしまった。国としてのお金のやりくりが回らなくなってし
 まったときには、積み上がってしまった借金の山、つまり債務の調整をせざるを得ませ
 ん。
・どこの国でも、日本はとりわけそうですが、税収だけで歳出を賄っているわけではなく、
 国債を発行して、借金をしながら財政運営を回しています。借金の額は国によってそれ
 ぞれですが、毎年、必要なだけの借金をできることが、財政運営をつつがなく続けてい
 くための大前提です。
・「国としてお金のやりくりが回らなくなる」事態とは、この借金を続けていくことがで
 きなくなることです。国債を発行して借金をしようとする国が、市場から、すなわち投
 資家から信用されなくなると、貸し倒れに備え、高い金利を要求されるようになります。
 その金利をついに払えなくなったとき、国としての借金を続けられず、財政危機に陥る
 ことになるのです。
・この「債務調整」には、大別して二通りのパターンがあります。
 一つ目は「連続的な債務調整」、要するに、10年、20年といった長期間にわたって
 国民の生活に、さりげなく重たい負担が、じわじわと及んでいくものです。
 二つ目は、「非連続的な債務調整」です。”非連続的”と聞くと、やや物騒な感じがしま
 すが、まさにそのとおりの債務調整です。あるとき、何かをきっかけで突然、ドカンと
 財政危機状態に陥ってしまい、もう財政運営がどうにも回らないからということで、そ
 れまでの国民の生活がスパッと切られてしまうようなものです。本当だったら決して許
 されないようなこと、こんなえげつないことを国がするの?というようなことをやらな
 いと、国の財政運営がどうにも回らなくなってしまうというときに行われるものです。
・一つ目の「連続的な債務調整」の例として、よくいわれるのは「高インフレ」です。中
 央銀行がどんな金融政策運営をしても物価上昇を止められず、手の施しようがなくなる。
 2%や3%ではなくて、毎年10%上がる。下手をすると20%、30%上がる。そう
 いうレベルのインフレです。 
・そのときお給料が物価と同じように上がっていけばよいのですが、企業の収益が良くな
 るわけではないので全然上がらない。上がらないのに物価だけが上がっていく。今年
 100円だったものが次の年は110円だ、120円だとしたら、食料品の買い物にも
 だんだん困ってしまうようになるでしょう。
・そのとき政府の財政はどうなるかというと、借金の額、国債の「元本」すなわち残高は
 名目の金額で決まっていますし、ほとんどの国債の「利率」も名目で固定されているの
 で物価が上がったところで、借金の額も、利息の額も変わりません。
・税収はどうかというと、物価が上がっていけば、同じ税率でも消費税額は大きく膨らみ
 ます。もっとも、消費税収全体がどうなるかは、インフレが売上数量にどの程度影響す
 るかにもよります。  
・高いインフレで楽になるのは、借金をしている人、今のわが国であれば、最大の借金を
 している経済主体は、企業でも家計でもなく政府ですから、政府が一番助かることにな
 るのです。
・実は現在の安倍政権も、この方法でインフレを起こし、”楽”をして財政運営を続けてい
 こうと考えているフシがあります。
・しかしながら、そのような方法を長期間継続させることは、国民からすれば、給料や所
 得が物価と同じだけ伸びることは到底期待できないわけですから、結果的に実質所得が
 相当な期間、目減りさせられ、生活が相当苦しくなることを意味します。
・「連続的な債務調整」のもう一つの例は、「金融抑圧」というものです。これは国債の
 市場金利が下手に上がってしまうと、本当に国のお金のやりくりが回らなくなるから抑
 えつけてしまえ、というようなやり方です。もちろん、国境を超える金融取引が自由な
 状態だと、投資家は無理やり金利を抑えつけている国から金利が高い国にお金をどんど
 ん逃がしてしまいます。ですから、普通こんなことは、国と国との間でお金のやりとり
 がきつく制限される「資本移動規制」がかかっているときにしかできません。ところが、
 実は今、国際間のお金のやりとりは完全に自由なはずなのに、日銀の質的・量的金融緩
 和で、この「金融抑圧」に近いようなおとができてしまっています。これは、リーマン・
 ショック以降、他の主要国でも日本と同様のゼロ金利状態になってしまったため日本か
 らお金が逃げ出さないのです。
・そしてこの「金融抑圧」は、今の日本のように極端に大きい国債残高の山を抱えている
 と、一見、楽をしながら問題を解決できそうな方法です。実際、これは開発途上国によ
 くみられた政策運営の仕方で、最初から絶対悪というものではありません。日本も戦後
 の焼け野原から復興するときには、ほかの主要国と同様にこのやり方をとっていました。
・具体的にはどのようにやるかというと、中央銀行に国債を引き受けさせたり、国内で制
 度を作って国民にとにかく貯蓄を奨励したりします。日本のかつての郵便貯金はこの制
 度の典型です。
・第二次大戦中、軍事費の歳出が嵩んで戦後に財政破綻した国がいくつもありました。戦
 勝国側は、さすがに戦後すぐに財政破綻とはなりませんでしたが、多くの国がこの「金
 融抑圧」をやって、戦後の復興を図りました。
・では財政運営の面で、それでうまくいったかというと、実はうまくいかずに、また借金
 が増えてしまったという国も少なくありません。要するに、単に国債の金利を低く抑え
 つければ、巨額の政府債務残高を解決できるなどという夢のような話が簡単に実現する
 わけではなく、歳出と歳入の改革に継続的にしっかりと取り組んでいかなければならな
 いということでしょう。
・さらに問題なのは、そうやって国と国の間で自由に資金を動かすことを認めない「閉鎖
 経済」のなかで「金融抑圧をやると、国内でお金があふれてしまい相当な「高インフレ」
 を招く、ということです。
・「非連続的な債務調整」には、さらに二通りの方法があります。背負う借金である国債
 を外国勢にたくさん持ってもらっているか、それとも国内でほとんど保有しているかに
 よって債務調整のやり方は違ってくるのです。
・国債を外国勢にたくさん持ってもらっている場合の方法は、「対外債務調整」といいま
 す。これは近年でも割とよくあることで、外国勢が持ってくれている国債を、悪いけれ
 ど利息も払えません、元本も払えません、といって「バンザイ」をしてしまう、踏み倒
 してしまう、という方法です。この方法は、2012年、欧州債務危機のなかで一番苦
 しい目に遭ったギリシャが、やらざるを得なくなりました。
・もう一つの方法は、国債のほとんど国内で持っているケースでとられる「国内債務調整」
 です。日本の場合、もし万が一ということになれば、こちらのパターンにならざるを得
 ません。  
・今、この国で、「個人向け国債」を持っている一部の人々を除けば、私たち国民は国債
 などを直接持っているつもりはないでしょう。ところが実は私たちは、身近な銀行や信
 用金庫、信用組合といった金融機関等にお金を預けることを通じて、その金融機関がそ
 の預金を元手にたくさんの国債を持っていますから、多額の国債を持っているようなも
 のです。そういうなかで、国の財政運営はもう回りません。国内債の利息も払えません、
 元本もお返しできません、という事態に陥ったらどうなるかというと、私たちが預金し
 ている銀行に「国債の元本は返せない、利息も払えない」と通告してくることになりま
 す。そうなれば、市場と取引されている国債は買い手がつかず、トランプの”ババ抜き”
 状態に陥って、価格は暴落します。
・すると、銀行の経営はもう全然回らなくなる。銀行は、国債に投資しておけば半年ごと
 に利息が入ってくるし、満期が来れば元本を全額、政府が払ってくれると思っていのに、
 それがかなわなくなります。国債を誰かに売りつけて”損切り”しようとしても、それも
 できないとなれば、預金者に利息を払うこともできなくなります。取引先の銀行がこう
 やって危ないことになれば、私たちは自分の預金を引き出しに走るでしょう。「取り付
 け騒ぎ」が起こるのです。 
・そのような事態を招かないために、同じ「国内債務調整」でも別のやり方がとられるこ
 とがあります。国債の元利払いだけは何とかして継続できるようにお金をひねり出し、
 その分は他の歳出を大幅にカットするのです。実際には「公務員のお給料を約束どおり
 に払わない」「国として払うと約束していた年金を約束どおりに払わない」「公共事業
 をやらせておいて、完成しても後で建設会社に代金を払わない」という具合に、財政破
 綻の瀬戸際となればどこの国でもやりますし、そのやり方は様々です。実は日本も、つ
 い70年前にこの方法の国内債務調整をやったことがあるのです。
・もっとも怖いのは、国民が銀行の危険を察知して預金を引き出す前に、政府が先手を打
 って預金を全部封鎖してしまうなどというようなこともするのです。「預金封鎖」まで
 いかなくても「預金の引き出し規制」をかけたりします。
 例えば、欧州債務危機で苦しんだギリシャは、2015年に危機が再燃した際には、厳
 しい歳出カットや増税に合わせて「預金引き出し規制」がかけられ、国民が週当たり一
 人日本円換算で約4万8千円しか、預金を引き出せなくしました。
・一度、「預金封鎖」や「預金の引き出し規制」がかけられるような事態になれば、それ
 が長く続き、国民に大きな負担がかかってくる。
・「預金封鎖」は日本でも過去にやっています。第二次大戦で同じく敗戦国となったドイ
 ツやオーストリアもやっています。もっと怖いのは、「通貨切り替え」というやり方も
 あるおとで、これが日本が第二次大戦後、今からほんの70年前に「預金封鎖」とセッ
 トで同時にやりました。  

欧米諸国と日本 「財政・金融政策」比較
・わが国では、第二次安倍政権のもと「デフレ脱却」が最優先の課題と位置づけられ、連
 呼される「成長なくして財政再建なし」というスローガンのもと、財政再建は事実上、
 後回しにされています。
・各国とも、2008年の金融危機で経済は大きな打撃を受けました。ただし、その当時
 のGDPの落ち込み幅が最大だったのは、危機の震源地である欧米各国ではなく、実は
 わが国でした。 
・ユーロ圏では、リーマン・ショックの翌年に発生した欧州債務危機により、少なからぬ
 国々において財政運営の安定的な継続が危ぶまれる事態となりました。ギリシャ、アイ
 ルランド、ポルトガル、スペイン、キプロスの五カ国は、ユーロ圏各国ないしはEU各
 国から、加えてIMFから支援を受けざるを得ない事態に陥ります。当然、自国内でも
 厳しい財政緊縮策をとらざるを得ない状態に追い込まれたため2012年から2013
 年にかけて、経済は落ち込みを余儀なくされました。
・諸外国では、毎年、着実に財政再建を進めていくために、政策運営上、様々な工夫が重
 ねられています。第一には、財政健全化目標として使用する収支の指標を何にするか、
 ということです。わが国が利払費を含まないPBであるのに対し、諸外国は軒並み、利
 払費をも含む財政収支を採用しています。これは、財政再建を経済成長任せにしたりし
 て、将来世代に重い負担を付け回したりすることのないようにするため、PBではなく
 国債残高規模の行方を左右する財政収支ベースで財政再建にきちんと取り組もうとする
 姿勢の表れといえましょう。 
・リーマン・ショック後の2010年、各国は、「2013年の財政収支赤字の半減」を
 共通の財政権目標として掲げました。ちなみに、わが国はその際、まだデフレから脱却
 していないからと、唯一、特別扱いをしてくれ、と各国に申し出、「2015年のPB
 赤字幅を010年対比で半減」という甘い目標で、大目にみてもらっていたのです。
・第二には、中期的予算編成ルールの強化です。財政収支を指標とする財政健全化目標を
 掲げ、「財政制約」が認識できたとして、それを中期的な財政運営上、また毎年度の予
 算編成上、政府や立法府にいかにして必ず遵守せしめるかが次の課題となります。ドイ
 ツやスペインでは、健全な財政運営を行なうことを政府に義務づける条文が憲法に盛り
 込まれたほか、英国の「財政責任憲章」のように、立法レベル、ないしは政治的な合意
 レベルでこのようなルールを設けている例も多くみられます。
・第三には、独立財政機関の設置が挙げられます。選挙によって選出される「議員」に財
 政拡張志向があるのは、わが国のみならず各国に共通する事情です。ともすれば、立法
 府で財政再建を軽視した予算運営が決定されてしまいかねません。
・そうした「政治」の限界を、財政運営のガバナンス面で工夫することによって補おうと
 するのが「独立財政機関」です。具体的には、
 @財政運営方針策定の前提となる見通しを政府や国会から独立した中立的な機関に策定
  させる。   
 A政府に対して、予算案の編成過程で独立財政機関への協議を義務づける。
 B国会に対して、予算案の審議過程で独立財政機関の見解を聴取することを義務づける。
 
金融危機後の「金利ゼロ」の世界と「量的緩和」
・2011年にカナダ銀行は、中央銀行の資産買い入れによる非伝統的な金融政策運営に
 伴う潜在的なコストや問題点として、次の五つを明確に指摘しています。
 @金融市場の歪み
 A中央銀行の財務運営上、損失が発せしたり、金融政策を運営し得なくなる可能性があ
  ること
 B中央銀行の独立性や信認が潜在的に損なわれかねないこと
 C中央銀行が金融の安定を確保するうえで追うべき責任と矛盾すること
 Dマクロ経済上必要な調整が先送りされること
 この@〜Dの点のどれをとっても、今の日本に、まさに当てはまっているように私には
 思われます。 
 
中央銀行は持ちこたえられるか
・質的・量的金融緩和を実際に採用した中央銀行には、あとあといかなる課題や困難が待
 ち受けることになるでしょうか。日銀は、質的・量的金融緩和からの「出口」問題、な
 いしは「正常化戦略」について、「明らかにすることは時期尚早」との姿勢を、着手か
 ら3年以上経過してもなお崩していません。
・量的金融緩和による金融政策運営は、それを実施している間、言い換えれば実体経済の
 回復基調が捗々しくない間には問題が表面化しにくい、というものです。ただし、いっ
 たん正常化プロセスに入り、実体経済の回復の足取りが確かのものとなって市場金利が
 上昇してくれば、中央銀行は財務運営上の困難に直面するのです。日銀が抱える状況も、
 これと全く同様であると考えられます。
・日銀は2015年度決算発表の席上で、金利が1%上昇した場合、日銀自身の国債の含
 み損が20.6兆円に達することを明らかにしています。こうした点からも、日銀にと
 って、買い入れてきた国債を金利上昇局面で売却してバランス・シートを縮小させたり、
 超過準備を解消しようとするのは、日銀自身が被ることになる売却損があまりにも嵩ん
 でしまい、非現実的な選択肢であろうということがわかります。
・日銀はすでに約300兆円規模の当座預金を抱えており、この状態で仮に1%逆ざやが
 発生すれば、年間3兆円がとんでいく、という恐ろしい事態になるのです。
・これに対して日銀の自己資本をみると、資本金わずか1億円、準備金は約3.2兆円、
 引当金は約4.3兆円というレベルに過ぎません。
・日銀は、正常化局面に入って、当座預金への付利の引き上げを始めれば、あっという間
 に「逆ざや」に陥り、国内外の金融情勢次第では、わずか数年のうちに自己資本を食い
 つぶして債務超過に陥りかねない、という状況にあるのです。
・専門家からは、正常化過程で想定される銀行券の動向なども含めてより詳細に試算すれ
 ば、超過準備の解消には約20年を要する、というような試算結果も示されています。
 それほどの期間、年数にわたり、果たして日銀が債務超過状態を乗り切れるか、政府の
 財政運営への影響はどうなのか。これこそが、現在の日銀とこの国が抱える、将来に向
 けての最大の副作用、問題点であるといえましょう。
・いずれの方法にせよ、テクニカルにどう工夫したところで、すべてのツケは預金者、国
 民が払わされることになるのです。 
・日銀の財務運営は、2016年に入って、新たな問題も生じています。日銀はそれまで
 の質的・量的金融緩和に追加する形で「マイナス金利」政策を導入しました。日銀はこ
 のマイアス金利政策を導入しながら、巨額の国債買い入れも、それまでどおり年間80
 兆円のペースで継続することにしました。その結果、どういうことが起こったかという
 と、日銀は、自ら打ち出した「マイナス金利」政策の結果、国債を損失覚悟で買い入れ
 ざるを得なくなったのです。  
・本気で「長期戦を視野に入れた」政策運営に転換するのであれば、日銀自身の財務運営
 の問題や、政府の財政運営との兼ね合いや財政運営への影響の問題は、決して避けて通
 れないはずなのに、日銀はこの問題に完全に蓋をしてしまいました。これで、中央銀行
 として「持ちこたえる」ことができるのか、この国は大丈夫なのか、本当に心配になっ
 てきてしまいます。

財政破綻のリアルT 欧州債務危機の経験から
・欧州の債務危機の経験を振り返ると、財政危機の際に、中央銀行が果たすべき役割とは
 何か、というおとについて、深く考えさせられます。債務危機の緊張がピークに達した
 とき、ECBがとった対応は、「血も涙もない」ものでした。支援はしましたが、あく
 まで民間銀行経由にとどめ、危機の火の手が高く上げるさなかに、各国の国債を買い入
 れることは決してしなかったのです。ドラギ総裁が示して姿勢は、「危機の収束のため
 に中央銀行がやれることは何でもする。ただし、各国が自ら身を切る、血を流すような
 改革をして、財政再建に取り組むのが先だ」というものです。
・どの国だって、できれば財政再建など、やりたくはありません。国債につく金利が上げ
 って、「お尻に火がつく」状況にならなければ、本腰を入れた財政再建など、なかなか
 できるものではないのです。 
・欧州では市場金利の急上昇を各国が実際に経験して、真剣に財政緊縮に取り組んだ結果、
 実体経済には間違いなく重い影響が及びました。それでも、ギリシャのような財政破綻
 の事態に追い込まれるよりははるかによいのではないか、という判断があったのでしょ
 う。それだけの先を見通す力と胆力を、欧州の指導者たちと当局者たちは持ち合わせて
 いた、だからこそ、欧州各国の経済運営は、低成長化という新たな問題を抱えつつでは
 ありますが、安定的に継続することが可能になっているのだと思います。
 
財政破綻のリアルU 戦後日本の経験から
・わが国の場合は、そもそもギリシャのように、国債を外国勢にたくさん買ってもらえて
 いるわけではありません。外国勢が国債の保有主体として大きな存在を示しているのは、
 あくまで国庫短期証券についての話であって、期間が長めの日本国債については、たい
 して保有してくれていません。2015年度末で5.3%に過ぎません。
・一つには、日本国債の金利が諸外国対比であまりにも低いので、投資対象として魅力が
 ないからです。もう一つには、日本国債が外国勢にあまり信用されてはいないから、と
 も考えられます。 
・期間が長い日本国債を買ってしまった後に、いざ日本の財政運営が危ない、となってし
 まったとき、例えば満期まであと五年もある場合、その日本国債を誰かに売って逃げる
 よりほかにありません。そのようなタイミングで、果たして買い手が見つかるかどうか。
 見つかったとしても、足もとをみられ相当な安値で買いたたかれるかもしれません。買
 い手が見つからなければ、自分で満期まで持ち続けるよりほかになくなり、その間に
 日本がギリシャのように財政破綻してしまえば、元本を満額で返してもらえなくなるで
 しょう。だから、信用力のない国の長期国債は、なかなか外国人投資家には買ってもら
 えなくなるのです。
・「日本は貯蓄率が高く、国債のほとんどを国内で保有しているから、財政運営が危なく
 なるようなことはない」という見方を聞くことがあります。しかしながら、実際には、
 それはあくまでも日本政府自身が健全な財政運営に努め、それを市場が評価し、信用し
 てもらい、リーズナブルな低い金利で国債を発行し、財政運営を回すことができている
 限りのおいて、の話です。
・放漫財政で借金を増やし続け、市場金利が上昇する、もしくは今の日本の状況に照らせ
 ば、「事実上の財政ファイナンス」を行ない、巨額の国債を買い入れ続けている日銀の
 金融政策運営が行き詰まることをきっかけに、政府の財政運営が回らなくなったとき、
 わが国はギリシャがとったような手は使えません。急激な債務調整の負担は、すべて私
 たち国民に向かってくることになるのです。
・対外債務調整の場合には、外国にも債務調整の負担をかぶってもらうことになるため、
 否が応でも記録が残りますが、国内債務調整の場合は、あまり明確な形では記録が残さ
 れないことが多いようです。自国民に無理筋の過酷な負担を強いる国内債務調整は、施
 政者の立場としてあまりにも恥ずかしい事態であり、その記録はできれば外国には知ら
 れないように隠しておきたいというのが、おそらく、そうした事態を引き起こした各国
 の政府や当局の本音なのでしょう。
・わが国は実は、第二次大戦時に財政破綻をしています。正確には、この戦争中に対外的
 な財政破綻(国外で発行した外国債の債務不履行)をしているうえ、戦後は、国内で発
 行いしていた国内債の債務不履行はかろうじて回避しつつも、実質的には国債の債務不
 履行にも匹敵する内容での国債債務調整を行なっています。これは戦争で疲弊した国民
 に、追い打ちをかける過酷な経済的負担をも求めるもので、まさに財政破綻の一つの類
 型に相当するものでした。
・敗戦の時点で日本が抱えていた借金の残高を国民所得に対する比率、これは今でいう政
 府債務残高の対名目GDP比とほぼ同じ意味ですが、敗戦の直前の1944年には
 267%、ちょうどいまのわが国の財政と同じくらいに悪い状態です。これが敗戦で財
 政破綻したわけです。     
・太平洋戦争に向かっていった昭和10年代、増え続ける国債の残高は、ほとんど「預金
 部」と日銀が引き受けています。「預金部」とは戦後の大蔵省の資金運用部の前身で、
 要するに政府の資金運用部門も日銀と一緒に、国債を政府から直接、引き受けていたわ
 けです。
・山のように嵩む戦費を、政府が国債を刷って刷りまくって、全部、日銀や預金部に引き
 受けさせる。今であれば財政法で禁じられている完全な「財政ファイナンス」をやって
 いたわけです。
・ただ、当時の日銀は、インフレをできるだけ抑えたいと考え、少しでも世の中にあるお
 金を吸収するため、政府から引き受けた国債を市中に売っていたのです。引受額の8割
 か9割を売却していた年もあります。ここは、現在の日銀が行っている質的・量的金融
 緩和との大きな違いだと思います。
・昭和の初め頃は、ロンドンなどの外国で一定額の日本国債が外国債として発行されてい
 ましたが、そこでつけられていた金利は5〜7%といった高いものでした。それも、
 1942年に日本政府が債務不履行した後は、戦争状態になっていたこともあり、外国
 債での調達は困難となります。
・敗戦によって財政運営は完全に行き詰まりました。当時のわが国の財政当局の判断とし
 て「取るものは取る、返すものは返す」という原則に象徴される対応が決定されました。
 具体的には、一度限り、いわば空前絶後の大規模課税として、動産、不動産、現預金な
 どを対象に、高率の「財産税」(税率は25〜90%)が課税されました。これが「取
 るものは取る」です。それを主な原資に、内国債の可能な限りの償還が行われ、内国債
 の債務不履行そのものの事態は回避されました。おれが「返すものは返す」です。
・民間銀行なども多く保有していた内国債を債務不履行とすれば、金融システムに大きな
 影響がおよび、民間銀行の倒産や社会的混乱も抑えられなくなるため、「債務不履行」
 とは別の形で財政破綻する道を選んだものと思われます。
・他方、戦時補償債務を切り捨てるため、国民に対して、政府の負っている債務と同額で
 の「戦時補償特別税」の課税が断行されました。
・一度限りの大規模課税である財産税の課税対象としては、不動産等よりはむしろ預貯金
 や保険、株式、国債等の金融資産がかなりのウエートを占めていました。戦後の焼け野
 原のなかで、国民にとって唯一の負っていた預貯金までが、財政破綻の穴埋めのために
 お上」に持っていかれてしまったのです。
・国民は、その保有する財産の価額の多寡にかかわらず、要するに貧富の差なく、この財
 産税の納税義務を負うこととなりました。税率は最低25%から最高90%と14段階
 で設定されていました。    
・一人当たりの税額は、もちろん、保有財産額の多い富裕層が突出して多くなるわけです
 が、政府による税揚げ総額の観点からみると、いわば中間層からの税揚げ総額が最も多
 くなると見込まれていました。「財産税」というと、「お金持ちへの課税」を連想しま
 すが、実際には貧富の差を問わず、ほぼすべての国民からその資産を課税の形で吸い上
 げるものだったといえそうです。   
・新憲法制定前の大日本帝国憲法下にあった当時、こうした措置は勅令の形で行われまし
 た。しかしながら、国による国民からの資産のいわば「収奪」が、国民の財産権と侵害
 するような形でなく、あくまで国家としての正式な意思決定に基づく「徴税権の行使」
 によって行われたことに注意する必要があります。これは、現行の憲法下でも当てはま
 ることではないかと思われます。
・こうした財産税課税に先立ち、1946年2月には、「預金封鎖」及び「新円入り替え」
 が断行されています。新円と旧円の比率は1対1でした。日銀や民間金融機関も含めて
 極秘裏に準備したうえで、国民向けの公表は実施の前日に行われ、わずか一日で実施に
 移されるという、いわば「荒業」だったのです。新円の印刷は間に合わないため、証紙
 を貼って対応したそうです。翌日から国民は、世帯主は月300円、それ以外は一人月
 100円しか預金から新円として引き出せなくなりました。
・こうした措置について、国民向けには「インフレ抑制のため」という説明で政府は通し
 ました。 
・その後、1946年10月には、「戦時補償特別措置法」が公布され、いわば政府に対
 する債権者である国民に対して、国側が負っている債務金額と同額の「戦時補償特別措
 置税」が賦課されました。これは、政府として、内国債の債務不履行は回避したものの、
 国内企業や国民に対して戦時中に約束した補償債務は履行しない、という形で部分的に
 国内債務不履行を強行したことに相当します。そしてここでも、国民の財産権の侵害を
 回避すべく、「国家の徴税権の行使」という手段がとられたのです。
・要するに、本来であれば国が国債を発行してでも調達して民間金融機関に公的資金を注
 入するべきところ、財政破綻状態のなか、国債発行による資金調達などままならず、公
 的資金注入など到底できないため、国民の預金を切り捨てて、民間金融機関の債務負担
 を軽くし、経営を継続できるようにしたのです。
・そして1948年7月、第一封鎖預金が自由預金に移されて事実上、封鎖が解除された
 とき、残っていた封鎖預金の残高の価値は、大幅なインフレによって実質的にほとんど
 なくなっていたのです。政府が借金の山をインフレで解決する、ということは、具体的
 にはこのようなことをするのだ、ということがわかります。  
・このような戦後の事実から明らかになるのは、国債が国として負った借金である以上、
 国内でその大部分を引き受けているケースにおいて、財政運営が行き詰まった場合の最
 後の調整の痛みは、間違いなく国民に及ぶ、ということです。
・もちろん、当時と今の状況は、経済的にも政治的にも異なります。しかしながら、一国
 が債務残高の規模を増やし続けたまま永続することはあり得ません。「国債の大部分を
 国内で消化できていれば大丈夫」では決してないのです。
  
蓄積され続けるリスクと遠のく正常化
・赤字国債の発行が急速に伸びたのは1990年代末からで、日銀が「ゼロ金利政策」や
 「量的緩和」といった非伝統的な手段による金融政策運営に着手した時期に重なり、わ
 が国の場合、その後はほぼ一貫して超金融緩和状態が続いていますので、こうした金融
 情勢も、政府の財政運営とその結果としての国債残高の積み上がりに大きな影響を及ぼ
 してきたことは間違いないように思います。
・そして、日銀による金融政策運営が「超金融緩和状態の長期化」などという表現で済む
 レベルではなく、まさに「事実上の財政ファイナンス」状態に入ってしまった現在、わ
 が国の財政運営は、表面上は、消費税率引き上げを二度にわたり先送りしても市場は何
 も起こらず、一見、無風の状態が続いています。しかし、それとは裏腹に、中央銀行で
 ある日銀の財政運営には、国民の目からは隠される形で恐ろしいほどに大きなリスクが
 蓄積されつつあるのです。 
・日銀が今後、正常化局面に入らざるを得なくなった場合、一般会計への納付金がゼロに
 なったとして、実際には、日銀から政府への数千億円レベルでの納付金がなくなるのに
 とどまらず、政府から毎年度、数兆円単位での損失補填をしなければ、日銀の財政運営
 が回らなくなる可能性があるのです。また、そのような局面で当然予想される市場金利
 の一定程度の上昇ともあいまって、政府の財政運営そのものが危うくされかねません。
・さらには、日銀がそうした事態を避けようと、自らの債務超過転落回避を最優先とせざ
 るを得なくなり、付利引き上げによる金融引き締めができなくなってしまえば、国内外
 の金融情勢の変化に応じた機動的な金融政策運営が行えなくなり、結果として、わが国
 の経済全体に重大な影響が及ぶ事態ともなりかねないことが強く懸念されます。 
・わが国は、主要諸外国にはおよそみられない悠長な「60年償還ルール」というものを
 採用しています。これは、国債をいかなる目的で発行しようとも、建設国債の場合のみ
 ならず、赤字国債の場合も含めて、一度発行したら60年かけて最終的に全額を返そう、
 というルールです。
・日本の場合、財政収支の赤字幅の大きさもさることながら、「60年償還ルール」があ
 るのをよいことに、短期債への借り換えを繰り返してきたため、利払費は抑えることが
 できても、この満期負債の規模が極端に高くなってしまっています。そのために、グロ
 スの所要資金調達額の規模も、諸外国対比で突出しています。
・つまり、国内外の金融情勢の何らかの変化によって、政府の国債発行が難しくなり、自
 力の財政運営が行き詰まる可能性が高くなったとき、言い換えれば、対外・対内債務
 調整の瀬戸際に立たされたとき、財政運営というバケツに開く穴の大きさが、諸外国対
 比で極端に大きいことを意味します。  
・対して欧州の各国は、国債を発行する際、どちらかというと長期債が中心で、それは高
 い長期金利を払ってでも、先々の財政運営のリスクに国として備えている、ということ
 を意味します。
・今後、国内外の金融情勢が変化した際、わが国の金融政策運営、財政政策運営がそれに
 ついていかれなくなることが懸念されます。別にリーマン・ショック級の金融危機が起
 これば、というような極端なケースを想定しているのではありません。これまでの各国
 の経済運営を振り返って、今後も「ごくありふれた」範囲で起こることが想定される、
 というレベルの状況変化にすら、この国はついていけなくなる可能性も否定できないよ
 うに思われます。
・国内外の投資家は常に各国の国債金利をにらみながら内外債権の保有ポジションを決め
 ています。米国に引っ張られて日本の長期金利が上昇したり、それでも日米金利差の拡
 大に歯止めをかけられず、外国為替市場で大幅な円安が進むような可能性も否定できな
 りところです。そうして場合、中央銀行は短期金利を引き上げ誘導して金融を引き締め、
 自国通貨の防衛を図ることはよくありますが、今のような状況では日銀がこのような局
 面に遭遇した際、自らが債務超過に陥ることを回避せざるを得ず、本来であれば必要な、
 機動的な金融引き締めができなくなるかもしれません。
・もちろん自国通貨安には、外国為替市場介入で対抗する手もありますが、日本は確かに
 世界でも有数の外貨準備を保有していますが、これまでのいくつもの歴史的な経験に鑑
 みれば、1990年代初めの英ポンド危機も然り、90年代後半のアジア通貨危機もま
 た然りで、ヘッジ・ファンドなどを筆頭に、市場が束になって一国の通貨当局に向かっ
 てきた場合、外国為替市場介入でこれに対抗するのはほぼ不可能です。
・わずかな金利上昇で、この国の利払費が雪だるま式に急増しかねない状況です。利払費
 を払えなければ、国としてデフォルト状態に陥り、それ以降の国債の発行はできなくな
 ります。
・そのような状況下の日銀には、おそらく今のように巨額の国債を引き受け続けられる力
 はもはや残っていないでしょう。大幅な増税を断行するか、他の部分の歳出で大幅切り
 詰めをするよりほかになくなるのです。下手をすると、戦後の日本の国内債務調整に近
 いような事態が再現されることにもなってしまいかねません。
・資本移動規制のような政策を導入せざるを得なくなれば、わが国の民間セクターにとっ
 ては致命的な影響が及ぶものと思われます。資本移動規制で、外貨が国家に管理される
 ことになれば、「成長戦略」どころではなく、産業の空洞化がさらに進展し、私たち国
 民にとっては、国内での貴重な雇用の場が失われることにつながってしまうのです。
・最近、巷ではやっているような「ヘリコプター・マネー」や「政府紙幣」といった議論
 は、こうして点に完全に目をつぶった無責任な議論だと私は思います。
・「日銀に無利子国債を持たせておけばよい」という考え方もあるようですが、まず、問
 題となるのは、政府が国債の利息を払えなくなることではありません。中央銀行である
 日銀が、今後、国内外の情勢変化に合わせて金融政策運営を行っていこうとするときに、
 自らの資産として抱えている巨額の国債についている金利があまりにも低すぎる、とい
 うことなのです。「無利子国債」では「中央銀行の金融政策運営の制御不能」という大
 問題の何の解決策、回避策にもならないのです。
・にもかかわらず、国内では、国全体があたかも、「ヘリコプター・マネー」の一歩手前
 のような「事実上の財政ファイナンス」というぬるま湯に、どっぷりつかってしまって
 いるような状態が続いているのです。
・IMFは、”リフレ派”色の濃い安倍晋三政権の政策運営を最も強力に後押ししてきた
 国際機関であったように思います。そのIMFが、2016年6月に打ち出した「対日
 4条協議終了にあたっての声明」では、打って変わって、日本経済が抱える中期的に深
 刻なリスクについても、かなり分量を割いて相当ストレートに指摘するに至っているこ
 とに驚かされます。
・いずれはこの国も、IMFに支援を求め、その管理下に入らざるを得なくなる日が来る
 かもしれません。そうした際に、日本の財政運営を開くであろうバケツの穴や極めて大
 きく、IMFの支援では到底足りなくなるでしょう。そのときに国際機関からまず通告
 されるのは、これまで私たち日本の国民が、足もとの景気を維持するために逃げ続けて
 きた増税の必要性、ということになるのかもしれません。消費税を例にとっても、日本
 の税率が諸外国対比でかなり低い部類に入るのは事実です。
・異次元緩和では経済の好循環を生み出せなかった。それがはっきりしてきたのに当局は
 政策をやめようとしない。それは当面この状態が最も心地良いからではないか。当局者
 たちが、将来リスクに目をつぶって目先の安定を求め、「とりあえず現状維持で」とい
 う気分になっていいないとは限らない。  
・財務省や日銀の関係者に、その疑問をぶつけてみた。全員が「一刻も早く出口を迎える
 方がいいに決まっている」と言って否定した。ただ、何人かはこんな言い方を付け加え
 た。「一人一人はそう思っている。ただ、組織としては結果的に今の状態が楽だという
 気分になりかけている」
・蓄積するリスクのツケは、いずれ国民に回る。だから、政権や当局にはそんな刹那主義
 に陥ってもらっては困る。とはいえ、少しでも景気が悪くなれば景気対策を求め、大胆
 な金融緩和を歓迎し、消費税増税の延期を喜んできたのも、私たち国民なのだ。
・国民の気づかないところで、先行きにこれほど大きなリスクを抱えるようになっている
 にもかかわらず、これがこの国の政権与党の対応、ということのようです。「政治」が、
 中央銀行の機能や金融政策運営の本当の難しさを理解しないまま、中央銀行の金融政策
 運営に介入してしまうと、その国の将来にとってどれほどの禍根を残すことになるのか、
 ようやく少しは気づき始めてくれているのでしょうか。
・「大胆な金融緩和」はアベノミクスの「第一の矢」でしたし、旧民主党政権時代にも、
 経済財政担当大臣自らが白川前総裁時代の日銀の金融政策決定会合に出席し、大胆な金
 融緩和を迫っていたのです。しかし状況は、そのような政治的闘争に時間を浪費するこ
 とすら、もはや許されない段階にまで差しかかりつつあるように思います。
・成長戦略は重要ではあれ、決して財政再建の代替策とはなり得ないことを肝に銘じ、こ
 れまで逃げ続けてきた社会保障制度、地方財政制度をはじめとするわが国の財政構造の
 抜本改革に、腰を据えて取り組むべきであると考えます。

なぜ掟破りの政策運営は”放置”されてきたか
・「中央銀行は、そもそもどうやって資金調達をするのか?」
 →中央銀行は、世の中に最初にお金を供給する存在なので、やることの順番が民間銀行
  と逆になります。まず市場から資産を買い入れる形で、市場に資金を供給するのです。
・「日銀が抱える超過準備が多過ぎて、いずれ付利の引き上げ誘導をせざるを得なくなっ
 たときに逆ざやになって困るなら、日銀は自らの負債を、民間銀行の当座預金などでは
 なく、全部、銀行券にしてしまえばよいではないか?」
 →銀行券、現金、というのは、民間銀行、もしくは中央銀行である日銀が、私たち国民
  に対して、家計や企業に対して、「〇〇円だけの金額を保有しなさい」と強制できる
  ものではありません。現金通貨というのは、私たちの家計や企業が、それぞれのとき
  どきで手もとに必要な額を自分たちの預金から引き出すことによって、世の中に出回
  る金額が決まってきます。ですから、銀行券の発券残高とは、そのときどきの世の中
  全体の経済活動の規模、言い換えれば名目GDPの大きさに応じて決まってくるので、
  日銀や民間企業がコントロールできるものではありません。裏を返せば、日銀がいっ
  たん巨額の日銀当座預金(超過準備)を抱えてしまうと、あとあとその扱いに本当に
  困ることになるのです。
・「中央銀行である日銀は、いくらでも自分でお札を刷ればよいのだから、何をやっても
 大丈夫なはずではないか?」
 →正確には、銀行券を印刷するのは国立印刷局ですが、円というこの国の通貨を、バラ
  ンス・シートの負債側に立てて、世の中に供給するのは、中央銀行である日銀の機能
  です。「いくらでも刷れるから」というのは「いくらでも負債側に立てて供給すれ
  ばよい」という意味なのでしょう。2008年の金融危機以前、かつて中央銀行が、
  自らの負債に一切利子をつけずに済んだ時代、政策金利の上げ下げを手段に金融政策
  運営を行っていた時代には、確かに、そう言えなくもない側面もあったかもしれませ
  ん。中央銀行の場合、本来、負債には一切コストがかからない、というのが、資産と
  負債の利ざやで基本的に稼ぐ民間銀行との大きな違いです。ですから、中央銀行の収
  益とは、金利の水準次第ではときに大きなものとなり。かつては「王様のお財布」と
  して重宝されました。今日では、どこの国の中央銀行でも、通貨発行益は、必要経費
  を差し引いた残りはすべて国庫に納付するのが普通です。こうして状況下では、確か
  に、中央銀行が簡単に倒れるようなことはありませんが、世の中へのお金の供給が過
  多になればインフレが進行し人々の生活が苦しくなるという結果に必ず至る、という
  のが歴史的な経験から各国で共有されてきた教訓であったわけです。
・現在のようなマイナス金利、ゼロ金利状態が永続するはずはなく、いずれは金利を少し
 ずつ上げていかざるを得なくなります。そうなれば、抱え込んだ巨額の当座預金すべて
 につける金利を引き上げることになり、それが万一、日銀が資産の方で抱え込んでいる
 国債などの金利を上回るようになったとき、日銀は逆ざやとなって債務超過にならざる
 を得なくなる。最終的には、中央銀行としての金融政策運営が制御不能な状態に陥り、
 インフレの進行を止められなくなるかもしれません。要するに、今のような状況下では
 インフレの進行を止められなくなる以前に、中央銀行自身がその財務運営上、自力で立
 っていられなくなってしまう可能性が高くなってしまっています。「中央銀行は、いく
 らでもお札を刷ればよいのだから大丈夫」などとは到底言えない状況にすでに陥ってい
 るのです。
・2016年9月に日銀が行った「総括的検証」においても、日銀は、この自らの財務運
 営リスクの問題には一切触れることなく、それまでの政策運営を検証し、先行きの金融
 政策運営を決める、という姿勢で押し通しました。しかし、そうした姿勢を問題として
 指摘するメディアはほとんどありません。
・こうした状況を鑑みると、通常、報道によって情報を得る側にいる国民の立場からは、
 この問題について「新聞もテレビもほとんど報道されていないから大丈夫」と思わない
 方がどうもよさそうです。
・そうした国民の無理解をよいことに、今の日銀は、これまでの政策運営に端を発する先
 行きの問題点に関する説明から逃げ続けているようにも私には見えます。本来これは、
 当局として国民に対して誠実に説明すべき事柄のはずです。
・国内外の「リフレ派」の人々の議論に共通する特徴は、現下の日銀のような政策運営を
 行った中央銀行が先行きいったいどうやって機動的な金融政策運営を行っていくのか、
 財務運営上の問題をどう乗り切るのか、という点について、一切、言及していない点に
 あると思います。 
・「リフレ派」の主張する海外の学者の場合は、確信犯的な部分もあるようですが、中央
 銀行の機能を否定し、いつまでたっても自分達の手で財政再建できない日本のような国
 の中央銀行など、どうなっても仕方がない、極端なインフレで問題を解決するしかない
 のだから自業自得だ、と思っているようなフシもあるようです。
・いわゆる「リフレ派」が、金融機関関係者には少なく、官界には相対的に多いように見
 受けられるのは、「実際の金融の世界の動きを、身をもって経験できたかどうか」とい
 う違いが背景にあるのではないでしょうか。
・ECBにおいては、採用する戦略を大きく変更するのであれば、その前にまず、ECB
 という組織として、最低限の一定の時間はかけて検討を尽くしたうえで、政策委員会で
 議論し決定することが必要になります。
・新総裁の着任後わずか二週間で、重要な金融政策運営戦略が大きく変更されてしまうと
 いうことは、日銀では、はからずも可能となってしまいましたが、今のECBではその
 組織の設計上、また実際の運営上、そのようなことは絶対に不可能なのです。
・ECBとの比較でさらに言えば、日銀の場合は従来から、政府に対する財政運営の規律
 づけの必要性の認識がどうも甘い、という点も挙げられるように思います。
・現在の日銀は、近い将来から、政府に毎年度、数兆円単位の財政補填をしてもらわなけ
 れば、機動的な金融政策運営は行い得ない状態にすでに陥っているにもかかわらず、そ
 の点については一切、口を閉ざしたまま、という状態にあります。
・一般会計の税収が、よくて60兆円しかないこの国で、30兆円の大台を超えて増え続
 ける社会保障費をこの先、どうやって工面しようかと皆が困っているときに、「今後新
 たに、毎年度数兆円単位の中央銀行への財政補填が発生しかねない」ということがどう
 いう意味を持つのか。現在の日銀には、もはや、政府に財政再建を促す資格などないで
 しょう。  

最近の国会での議論
Q:日銀は、異次元緩和の出口のコストの資産を内部では当然やっていなければおかしい
  が、どうなのか。(共産党:小池晃参議員)
A:いわゆる出口の際に実際に日本銀行の収益がどうなるかというのは、どのような手段
  をどのような順序で進めるかという進め方に加えまして、その時々の金利情勢などに
  よって大きく変わり得るものでございます。したがいまして、観念的にいろいろなこ
  とは検討されるわけでございますけれども、それはあくまでも実際の出口の際の手段、
  順序そして金利情勢などによって大きく変わり得るものでございますので、現時点で
  具体的にお話するおとは適当でないと考えております。
  その上で、従来から申し上げておりますとおり、量的・質的金融緩和あるいはマイナ
  ス金利付き量的・質的金融緩和の下での国債の買い入れ、これは政策を推進していく
  過程では日本銀行の収益を押し上げる一方で、いわゆる出口の局面では収益を押し下
  げる性質を一般的には持っております。
  そこで、日本銀行では、収益の振れを平準化し財務の健全化を確保するという観点か
  ら、御指摘のような点も含めて一部を積み立てるということをやっておりまして、さ
  らに、将来、収益が下振れる局面で取り崩すことができますように、昨年、政府に関
  係政省令を改正していただきまして、引当金制度を拡充したところでございます。
  (日銀:黒田東彦総裁)

Q:FRBは当初から出口コストについての試算を発表し、国庫納付金の減少懸念も明ら
  かにしている。日銀も、今、検討している中身をちゃんと説明すべきではないか。
  (共産党:小池晃参議員)
A:確かに、FRBは出口戦略の原則であるとか、あるいは収益シミュレーション等を発
  表したことは事実ですが、実際の出口戦略は事前に言っていた出口戦略とは全く逆に
  なっております。そういったことで、そういったものをあまり早く、まだ出口に差し
  かかって、出口が具体的に検討されていない段階で、いろんな状況によって具体的な
  出口の手段とか順序も変わりますし、それお収益への影響も変わるわけですので、そ
  ういった不確実でどっちに行くか分からないようなことをあまり早く言うというのは、
  かえって市場に対して不安定さをもたらしてしまうおそれがありますので、出口につ
  いて具体的にお話することは適当でないと申し上げているとおりでありまして、した
  がいまして、出口おところでの収益の情況についても具体的にお話しするおとは適当
  でないと思っております。(日銀:黒田東彦総裁)
  
Q:隊規模緩和が延々と続いて、一向に出口が見えない、一向に効果が見えないという状
  況のなかで、国の財政に何兆円も穴を空ける可能性、危険性がある状況にもかかわら
  ず、この日銀の姿勢のままでよいのか。(共産党:小池晃参議員)
A:出口のことにつきまして、このことにつきましては私どもの所管するところではなく、
  日本銀行の責任でやられているということを申し上げたと存じます。
  (麻生太郎国務大臣)  

Q:出口の問題が財政にとって大変な問題になる、国庫納付金がゼロになるかもしれない
  と言われているなかで、財務当局としては見て見ぬふるをするのか。
  (共産党:小池晃参議員)
A:国庫納付金が減るという点もありますけれど、我々としても、プラスの面もあります
  ので、今の段階で一概にそういった見解は、今の段階から軽々しく言うべきではない
  と思っております。(麻生太郎国務大臣)
  
Q:国庫納付金が減るという問題がありますけれどもで済まされる問題じゃないと思うん
  ですよ。だって、五千億円入り続けることが前提となった財政計画ですから、やはり
  そのことを放置していいのかと。もうちょっと時間がないので。
  私は、この出口コストの問題というのは、日銀だけの問題じゃなくて、財政を含めて
  これは日本の未来に関わる問題だと。ところが、見て見ぬふりで突き進むと、やはり
  異次元緩和やめなきゃ駄目ですよ。やっぱりこのトリクルダウンの政策から抜本的に
  転換するということをしなければいけないというふうに申し上げて、質問を終わりま
  す。(共産党:小池晃参議員)  

Q:利上げ局面で2%の逆ざやが発生した場合の日銀の損失はいくらか。
  (民進党:大久保勉参議員)
A:直近の数字でございますかれども、私どもの保有国債残高が352.9兆円、発行銀
  行券残高が95・2兆円ということでございますので、その差額、銀行券発行残高を
  除いた国債保有残高は258兆円ということでございますので、これに2%というこ
  とを掛けますと5.2兆円ということになるわけでございます。(日銀:雨宮理事)
  
Q:ここで危惧しますのは、今、毎年80兆円国債を購入すると、実際、国債の利回りは
  ゼロ%ですから、運用利回りがゼロ%のものが1年間で80兆円、2年間で160兆
  円増えます。さらに、2%逆ざやになった場合には、これで3.2兆円逆ざやになり
  ます。ですから、合計をしましたら9兆円超です。日銀の狭義の自己資本というのは
  5兆円以下です。ですから、日銀が債務超過になる可能性もあるわけです。
  もっと重要なことは、これは1年で終わりません。毎年毎年逆ざやが続きますから、
  毎年5兆円、つぎの年も5兆円ということで、累積して損失が増えると。こういう状
  況で、日本銀行の経営危機はないのか、そしてそのことが日本の経済にとってどうい
  う影響があるのかと、こういった観点が極めて重要です。
  そこで、財務大臣に質問したいと思いますが、恐らく債務超過でしたら日本銀行に対
  して国から何らかの資本手当てをするということだと思いますが、政府による日本銀
  行への出資を行う場合、現行の日銀法で可能ですか。(民進党:大久保勉参議員)
A:日銀の資本金なんだと思いますが、日銀法において「政府及び政府以外の者からの出
  資による一億円とする」とされておりますのは御存じのとおりで、この規定に基づい
  て日銀の資本金は現在1億円となっておりますので、したがって、現行の日銀法にお
  きましては政府による日銀への追加出資はできないということになろうかと存じます。
  (麻生太郎国務大臣)
  
Q:G7でこれまで債務超過になった中央銀行はあるか。(民進党:大久保勉参議員)
A:アメリカ、イギリス、それからECB、カナダについては、公表の数字を見る限り、
  債務超過ということはないようでございます。
  西ドイツの中央銀行におきましては、1971年から79年の間の7か年間、数字を
  みますと実質的に債務超過とも見れる、という数字が公表されております。
  (財務省理財局長:迫田英典)
  
Q:西ドイツの場合、自知事的に為替における損失が発生して債務超過になったんじゃな
  いですか。(民進党:大久保勉参議員)
A:西ドイツ中銀の先ほどの実質的な債務超過というのは、一つの原因として、マルク高
  の進行による為替差損というものが影響しているというふうに見られております。
  (財務省理財局長:迫田英典)

Q:まさにそうじゃないですか。ですから、今回の要因というのは、日本銀行の国内要因
  によって損失ができるということでかなり深刻なものです。
  チェコ、イスラエル、チリにおいて中央銀行が債務超過となっておりますが、そのと
  きインフレ率は何%でありましたか。また民間銀行の影響はどのようなものでしたか。
  (民進党:大久保勉参議員)
A:御指摘のありました三つの中銀、チェコ、イスラエル、チリは現在においても債務超
  過が残っているわけでございますけれども、これらの中央銀行が債務超過になったと
  きの各国のインフレ率でございますが、チェコが1999年に2.1%、イスラエル
  が2000年に1.1%、チリが1998年に5.1%ということでござました。
  (日銀:雨宮理事)
  
Q:このケースはというのは全ていわゆる為替による損なんです。つまり、外貨を持って
  いた、ところが国内要因で、つまり国債を多量に買ってその結果逆ざやで債務超過に
  なったというケースは、このチェコ、イスラエル、チリにおいてあり得ますか。
  (民進党:大久保勉参議員)
A:例えばベネズエラとかフィリピンですとか、やはり先ほど御指摘のような要因で中央
  銀行が債務超過にならない、あるいは財務に対する配慮を前提に引き締めができなか
  ったということを理由にインフレが高進したという例はあるようでございます。
  (日銀:雨宮理事)  

Q:日銀が2015年度から積み立てを開始した引当金は出口を意識したものか。
  (民進党:前原誠司衆議員)
A:基本的にこれは、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、こういったものを実施して
  いる局面では、長期国債の買い入れに伴う利息収入が増えまして、日銀の収益が通常
  よりも上振れるわけでございます。他方、将来金利が上昇する局面では、収益が下振
  れる可能性がございます。したがいまして、今般の、債券取引損失引当金を充当する
  ことによって、収益が上振れる局面でその一部を積み立て、将来、収益が下振れる局
  面でこれを取り崩すということを可能にしたわけでございます。これによって、日本
  銀行の収益の変動がなされて国庫納付金の額も平準化されるという効果があり、これ
  自体が何か国民負担を増やすというものではございません。(日銀:黒田東彦総裁)
  
Q:この金融政策というのは、よく言われるのは、行きはよいよい帰りは怖い。つまりは、
  お札を刷って、そして国債を大量に購入して、そしてマネタリーベース、マネーサプ
  ライを拡大しているという金融政策、攻めのときはいいわけですよ。では、それを平
  準化というか常態化するとき、つまり帰りですね、出口、これについては非常に難し
  いわけで、それについて本当にうまくいけるのかどうなのかといったところについて
  はわからないという答弁なんですが、キャンブルのようなところがあるんです。
  つまりは、こういうオペレーションというものが最後はうまくいきませんでした、国
  民に対してツケ回しが来ました、請求書が来ましたということでは、これはまさにギ
  ャンブルで、それは黒田総裁が腹を切るだけでは済まない話なんです。
  ここで確約をとるのが我々政治家の責任だと思うのは、必ず国民負担は生じさせない
  という確約ができてやっているのか、そういう確約を持ってほんとうにやっているの
  か。そういう確約を持ってやっていなかったら無責任ということになりますよ、今さ
  えよればいいということで。いかがですか。(民進党:前原誠司衆議員)
A:日本銀行の使命は、物価の安定と金融システムの安定ということでございます。そう
  した際に、日本銀行の財務の健全性というものも十分考慮しつつ、今申し上げた二つ
  の目標に向けて最大限の努力をするということでございます。したがって、財務の状
  況については、十分配慮しつつやっているわけですが、財務の問題、その可能性を言
  って金融政策をしない、あるいは物価の安定、金融の安定の目標を達成しないという
  ことではいけないと思っておりますので、今後とも、物価安定にむけて最大限の努力
  してまりたいというふうに思っております。(日銀:黒田東彦総裁)

Q:つまりは、国民負担は生じ得るということを認められたわけですよ。あまりコミット
  メントを金融緩和でし過ぎると、結果的に副作用とかこういうひずみというものが大
  きくなるので、私は、もう少しマイルドなものにした方がいい、より持続可能なもの
  にした方がいい、あるいは、その最終段階においてよりマネジメント可能なものにし
  た方がいいということは、申し上げておきたというふうに思います。
  (民進党:前原誠司衆議員)

子どもたちへの将来への責任
・私は、この国の施政者の方々、当局者の方々に問いたいと思います。皆さんに、ご家族
 はおられないのですか。ご自分のお子さん、お孫さん、そして、この国の子供たち全員
 に、これからこの国が財政と経済の営みをどうやって続けていくことができるのか、こ
 の国がどうやって生き延びていくとができるのか、堂々と胸を張って説明できますか。
・この国の国民に対する使命感、子どもたちの将来に対する責任感はないのでしょうか。
 今のままの政策運営がこのまま続けられてしまったとき、遠くない将来のいずれかの時
 点で、日銀の金融政策運営がコントロール不能となる可能性が高いのではないかと私は
 思います。そのような状況に陥ったとき、過去の経験を振り返れば、国内外の経済・金
 融情勢の「ごくありふれた」という程度の変化にもついていかれなくなりかねないと思
 います。
・その結果、この国全体の経済の営みに、一億の国民の生活と人生に、大きな打撃が及ば
 ざるを得なくなったとき、施政者の方々、当局者の方々は、まるで大地震が大津波のよ
 うな天災にでも突然、襲われたかのように、「想定外の事態が発生してしまいました」
 と言い訳をするのでしょうか。 
・少なくとも、主要先進国では、どこの国の当局者も、先行きのそのような情勢変化に対
 応できるように常に考え備えつつ、日々の政策運営を行っています。
・「”今”のためなら、この国の将来がどのように犠牲になってもよい」「このまま国内外
 で、ずっと”ゼロ金利”もしくは”マイナス金利”状態が継続する以外の状況は、現時点で
 はすべて”想定外”だ」などという言い訳は、この国の将来に向かって、決して許される
 ものではない、と私は考えます。
・このままでは、近い将来に間違いなく起こるであろう”変化”に備えようとしていないわ
 が国では、危機は起こるべくして起こるのです。
   
あとがき
・今、大体1000兆円借金があって、国の税収が50兆円くらい。今後、一切借金をし
 ないとして、税収の中から例えば10%、5兆円を毎年返しても200年かかる。現実
 的とは全く思えないが、この借金は普通にしていて返せるものなのか。
・普通にしていてはとても返せそうにないからこそ、どこかで、ドカンと非連続的な調整
 が来ざるを得なくなるかもしれない。