中国発世界恐慌は来るのか? :門倉貴史

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中国は、とうとう日本を脱いて、世界第2位の経済大国となったらしい。アメリカをも抜
くのも、時間の問題ではないかとも言われる。しかし、その中国は国内においては、多く
の問題を抱えている。その一番の問題は、貧富の格差だろう。沿岸部の第年部と内陸部の
農村部とでは、6倍以上の貧富の差があるとも言われる。
さらには、中国共産党一党独裁の弊害や、権力層の権力の乱用による横領や贈賄なども、
後を絶たないらしい。もっとも、これは中国に限ったことではないようにも思えるが、さ
らに中国は、「一人っ子政策」の弊害として、男児が女児よりも1200万人以上も多い
状況にあると言われている。つまり、将来的に中国では1200万人以上の女性が不足と
なることが予想さている。これは近い将来、中国男性が、嫁を求めて日本に押し寄せてく
る可能性も内在している。その頃の日本は、財政が破綻している可能性も高く、多くの日
本女性が、中国男性と結婚を決意することになるかもしれない。そうなれば、日本民族の
危機となる。
大きな問題を抱える経済大国の中国は、まさに綱渡り状態である。もし、その中国が、国
の運営に失敗し、大不況に陥ることにでもなれば、その影響ははかり知れない。もっとも、
そんな中国の心配よりも、わが日本の国家財政のほうが、もっと深刻なような気がするが、
もうそれを口にすることさえ怖くて、だれも口にしない。

はじめに
・中国の世界経済における存在感の高まりは、逆に考えると、もし中国経済がなんらかの
 ショックで変調をきたすようなことになれば、世界経済全体が大きなダメージを受ける
 ということを意味する。かつては、「米国がくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言
 われたが、いまでは「中国がくしゃみをすると、日本と米国が風邪をひく」といった状
 況になりつつあるのだ。
・米国経済の停滞に、最悪のタイミングで中国経済の失速という状況が重なれば、世界経
 済はかつて経験したことのないような、未曾有の大不況に見舞われることになるだろう。
・中国の金融引き締め政策がうまく機能して、短期的に中国経済がソフトランディングに
 成功したとしても、上海万博が終了した後の2011年以降は、少子高齢化の進展や通
 過人民元の切り上げ、あるいは所得格差の拡大など様々な問題が噴出して、それが中国
 の高成長を妨げる要因として浮上してくることになるだろう。

チベット動乱、四川大地震と北京五輪
・中国はわざと貿易黒字を減らそうとしているのだ。つまり、海外需要が低迷した結果と
 して輸出が伸び悩んでいるというよりは、そもそも政策的に輸出を抑制しているという
 ことだ。
・現在、中国は貿易収支の不均衡を、通過人民元のレート切り上げによってではなく、税
 制度の改定によって調整しようとしている。税制度を臨機応変に変更することによって、
 輸出の伸びの抑制を図っているのである。
・中国が加工貿易の奨励を取りやめたもうひとつの理由は、急激な経済発展に伴い原油を
 はじめとする国内のエネルギー事情が逼迫するようになったため、大量にエネルギーを
 消費する加工貿易は望ましくないという考え方が強まっていることである。
・サブプライム問題によって、中国の金融システム健全化の流れが遅れるということには
 ならないだろう。そして、中国経済がサブプライム問題の影響を受けづらい最大の理由
 は、中国の経済成長のパターンが、それまでの輸出主導から内需主導へと転換しつつあ
 るという点である。内需主導の高成長とは、家計の消費活動や企業の投資活動が経済成
 長の原動力になっているということだ。内需主導の高成長は、自分の国の力だけで独自
 に成長をしていることを意味するわけだから、ネイ国経済の減速など海外経済の動向に
 よって景気が左右される度合いが小さいということになる。
・一方、世界景気が下降局面にあるときには、世界景気とは独立して拡大する中国の内需
 が世界の輸出・生産の受け皿となり、中国経済が世界景気の落ち込みを和らげるクッシ
 ョンの役割を果たすことになる。
・なぜチベット動乱が起きたのか。今回、大規模な暴動が発生した背景には、中国政府に
 よるチベット仏教への厳しい弾圧がある。
・実は、中国当局はチベット仏教に限らず、キリスト教やイスラム教など様々は宗教に対
 して厳しい統制・管理を行なっている。中国の憲法は信仰の自由を認めているが、現実
 には宗教活動を自由に行うことはできない。表向きは宗教活動の自由を認めているが、
 中国共産党が厳格に管理をしているというのが実情である。
・中国政府は、北京オリンピックを前に、07年以降、抗議運動や独立運動などが起きな
 いように宗教活動や少数民族などへの締め付けを強化したが、これが逆効果となって、
 少数民族が不満を募らせることになり、今回の暴動に発展したと考えられる。
・中国当局が、各種の宗教活動の自由を尊重したうえで完全は宗教の自由を認めない限り、
 いくら弾圧を強化しても、少数民族の独立運動や抗議運動は今後も散発的に起こり続け
 ることになるだろう。宗教的な弾圧を緩めることが、暴動や抗議活動を沈静化するため
 の唯一の方策といえるのではないか。
・中国が、半世紀以上の長きにわたって、チベットの独立を頑として認めない背景のひと
 つには、同地域にたくさんのちか資源が眠っていることがある。これまで実施された地
 質調査などによって、チベット自治区内には、銅や鉄鉱石といった鉱物資源が豊富に存
 在することが確認されているのだ。
・急速なスピードで工業化、都市化が進む中国では銅や鉄鉱石の需要が高まっているが、
 現状ではそれらの鉱物資源の多くを南米など海外からの輸入に頼っている。
・鉄道が開通してからは、チベット自治区に多数の漢民族が流入するようになり、チベッ
 ト族と漢民族の経済競争も激しさを増している。このため、中国政府がいくら財政資金
 を投入して、チベット自治区の発展を促しても、それではチベット族の人心をつかむこ
 とはできない。今後も中国共産党とチベット族の対立の構図は続いていくとみられる。
・中国が抱えているもうひとつの問題が深刻な大気汚染である。高成長が続く中国では、
 工業化やモータリゼーションが急激に進展しており、その結果、工場の煙突から出る煙
 や車から出る排気ガスなどが急増しているのだ。
・原油需要が急拡大する中国は、産油国のスーダンから大量の原油を輸入したり、油田の
 開発に関わっており、その見返りにスーダンで道路などのインフラ建設を請け負ったり、
 武器を輸出したりしている。
・中国人のマナーの悪さは、日常生活の様々な場面で散見される。たとえば、地下鉄やバ
 スに乗る際にはきちんと順番を守らない人が多い。列に並んだり、譲り合いをするどこ
 ろが、割り込みなどを平気でするのだ。また、路上のあちこちでタンを吐いたり、タバ
 コのポイ捨てをするなどの行為も目立つ。
・2008年5月12日、中国内陸部の四川省を震源とする巨大地震が発生した。中国政
 府は、当初、今回の地震による死亡者が最終的に5万人に上る可能性があるとしていた
 が、すでにその数を大幅に上回る犠牲者が出ており、行方不明者の数も急増しているこ
・被災地の人々の間では、犠牲者の数は、中国政府の公式発表よりも、実はずっと多いの
 ではないかとの憶測が飛び交っている。これは、観光イメージが傷つくことを恐れて、
 地方政府が被害者の数を少なめに報告しているので、「大本営発表」はあてにならない
 という疑惑である。
・さらに二次的な被害としてもっとも恐ろしいのは放射能漏れによる核汚染である。四川
 省には核兵器関連施設や核燃料生産施設、実験用の原子炉などがあるため、地震の影響
 による放射能漏れが懸念されている。

中国経済、3つのシナリオ
・日本は人口の減少や賃金の伸び悩みで国内の消費マーケットが飽和状態となっているの
 で、製造業を中心に多くの日本企業が中国向けの輸出に引き続き活路を見出していくこ
 とになるだろう。サブプライム問題の影響で米国経済が低迷を続けるなか、中国の高成
 長が日本の景気を支える最大の要因になる。
・その一方で、日本国内では「中国脅威論」が一段と強まってくるだろう。技術力や資金
 力を蓄えた中国の巨大企業が次々に日本の優良企業を吸収・合併して、中国企業の傘下
 に入る日本企業が増えてくることも予想される。ふと気づいたら、自分の上司が中国人
 だったというサラリーマンもたくさん出てくるだろう。また、拡大を続ける中国の消費
 マーケットに目をつけた日本企業が相次いで中国に進出していくため、日本の雇用が中
 国に奪われるという事態も予想される。
・高成長を続ける中国では、通貨人民元の価値も他国の通貨に対して上昇していく。この
 ため、日本に入ってくる中国製品には割安感がなくなり、「100円ショップ」が「2
 00円ショップ」と看板替えするようになったりするかもしれない。
・中国の高成長が世界的なインフレを加速させて、米国を中心におおくの国々がインフレ
 との戦いに四苦八苦することになるだろう。
・中国が北京リンピック後に金融引き締めのスタンスを放棄すれば、投資主導で経済が高
 成長するようになるが、最終的には深刻な景気の悪化とデフレに行き着くことになり、
 これは持続不可能な成長シナリオといえる。
・中国にとってもっとも恐ろしいのは、金融引き締めの政策が効きすぎてしまうことだ。
・どういった経路を辿るかといえば、ます金利が上昇することによって、投資活動が抑制
 されるようになる。その結果、不動産価格が下落するようになり、資産バブルが崩壊す
 る。それによって建設業界や不動産業界は不況に見舞われるようになる。さらには、不
 動産の分野に多額の融資をしていた金融機関も多額の不良債権を抱えることになり、深
 刻な金融システム不安が生じることになるだろう。そして、不動産や株式に投資をして
 いた中産階級の人たちの間では、いわゆる「逆資産効果」(自分の保有する資産価格が
 目減りすることによって消費を抑制する行動)が働くことによって、消費が大きく落ち
 込むことになる。
・中国経済が失速すると、中国向け輸出の伸び悩みを通じて日本の製造業が大きな打撃を
 受けることになるだろう。とくに素材などオールド・エコノミーの製造業が破滅的な被
 害を受ける。それだけではない。富裕層・ニューリッチ層を中心とした中国の消費パワ
 ー拡大に期待をして、果敢に中国に進出していった日本企業も中国でモノがさっぱり売
 れなくなって、大変なことになる。その結果、中国市場から撤退する日本企業が目立っ
 て増えてくるようになるだろう。
・高成長を期待して、中国の株式市場や不動産市場に多額の投資をしていた日本の個人投
 資かも巨額の損失を被ることになるだろう。中国株の暴落によって、何万人もの日本の
 個人投資家が破産に追い込まれてしまう。さらには、中国市場で売り上げを伸ばしてい
 た日本企業の株価もひどく落ち込み、売りがパニックのように続く、大不況で賃金をカ
 ットされたり、解雇されたりした中国人の労働者は、生活苦から日本に大挙して出稼ぎ
 にくるようになり、まともな職に就けない一部の中国人が犯罪に手を染めることによっ
 て、日本の治安が悪化するかもしれない。
・バラ色のシナリオと暗黒のシナリオのどちらが現実的なのだろうか。筆者は、60%程
 度の確率で、とりあえずはバラ色のシナリオが実現するのではないかとみている。

深刻化する所得格差
・中国経済が11年以降も高い成長を続けるとみる専門家は多い。
・いずれは米国発ではなく、中国発の世界大恐慌が訪れると予想する人すらいる。
・筆者自身は、11年以降の中国経済について、失速まではいかないにしても、減速して
 くる可能性は高いとみている。
・近年では、日本でも所得格差が広がってきているが、中国の所得格差は日本とは比較に
 ならないほど大きい。とくに目立つのが、都市部と農村部における格差の拡大である。
・都市部と農村部の所得格差は、実態としては6倍以上であると指摘する専門家もいる。
・好景気に伴う物価の上昇によって低所得層の暮らしが苦しくなると予想される。最近の
 中国における物価の高騰は、食料品価格の上昇によるところが大きい。このため、消費
 に占める食料費のウエイトが高い低所得層の生活が厳しいものになる。
・一方、沿岸部を中心に不動産価格が高騰しているが、不動産に投資をしているのは富裕
 層・ニューリッチ層の人たちである。彼らは、不動産価格が上昇したところで、それを
 転売することによって、多額の利益を得ているのだ。物価の上昇や資産インフレに歯止
 めをかけない限り、高所得層と低所得層の格差は広がる一方といえるだろう。
・中国では内陸部に居住する貧しい農家の娘が、生計を立てるために沿岸部の大都市地域
 に出ていき、そこで売春を繰り返すといったケースが後を絶たない。
・沿岸部の第年に年収の多い単身赴任のビジネスマンが集中していることも、売春ビジネ
 スの拡大に拍車をかけている。ちなみに、中国における一般的な売春の相場は日本円に
 して5千円程度、高級娼婦の場合には、2万5千円程度となっている。
・沿岸の都市部だけではく、「偽装結婚」のかたちで日本や台湾に入国、そこで売春をし
 て荒稼ぎをしている女性も多い。
・沿岸の都市部や日本、台湾まで出てきて自らの意思で売春婦になる娘のほか、人身売買
 によって強制的に地方から都市部に連れてこられ、売春を強要される中国人女性もいま
 だに多数存在する。
・北朝鮮を抜け出して、中国に入った脱北者の女性が、組織的な人身売買の被害に遭って、
 売春を強要されるといった事件も多発している。
・経済発展の過程で、人々の所得格差・資産格差が拡大していけば、当然、格差の最底辺
 に位置する「物乞い」の数も増えてくる。「先富論」に基づいて格差拡大を容認する姿
 勢をとってきた中国では、それに伴って「物乞い」の数も相当数に上っているとみられ
 る。
・最近、中国国内では、各地で暴動やデモが頻繁に発生するようになっている。
・1件のデモや暴動に参加する人数も拡大傾向にあり、数千人規模の大規模な抗議行動が
 起きるケースも少なくない。インターネットが発達してきたため、各地で発生するデモ
 や抗議行動は、携帯電話のメールやパソコンのメールなどで呼びかけられることが多い。
・拡大する所得格差への不満や官僚の汚職に対する不満などが、暴動やデモの直接的な引
 き金となっているが、暴動・デモが頻繁に起こる根本的は背景には、「権力に対する根
 強い不信感」の高まりに加えて、経済が急速に発展していくなかで、中国国民の「権利
 意識」が強まってきたことがある。
・中国国内では、低収入に苦しむ農村部の人たちだけでなく、豊かになった富裕層・ニュ
 ーリッチ層の間でも共産党の一党支配に対する不満が出始めている。頻発する汚職が共
 産党の一党支配体制に対する中国国民の政治不信に拍車をかけているのだ。
・90年代後半には、絶対的な特権を背景に、公金の横領、公金による宴会・賭博・企業
 からのピンハネなどほとんどの幹部が汚職に手を染めていたといっても過言でない。
・共産党幹部の汚職には、必ずといっていいほどに愛人の影がつきまとう。汚職で摘発さ
 れた共産党幹部の9割が、愛人を囲っていたという調査結果もある。愛人は様々な場面
 で汚職に利用されており、たとえばある企業の経営者は、なんらかの便宜を図ってもら
 うために、自分の愛人は「はい、どうぞ」と、おカネのかわりに共産党幹部に差し出す。
・近年、中国国内では、経済のIT(情報技術)化の進展に伴って、インターネットなど
 のニューメディアを通じて政府を批判するケースが増えてくるようになった。このため、
 政府当局は、既存のメディアだけではく、ニューメディアに対する統制も強化する方針
 を採用している。
・様々なニューメディアのなかでも、特に当局が取り締まりを強化・徹底しているのが、
 ポルノを含む有害・違法サイトである。
 
ニューリッチという新階層
・中国の富裕層は、豊かになって日が浅いということもあって、高級自動車、高級衣料、
 高級時計など、いわゆる「見栄」の消費を増やしている。自分の消費力を周囲に示すこ
 とが、富豪の証となっているのだ。
・米国のサブプライムローンの焦げ付き問題をきっかけとして、世界経済の減速懸念が強
 まっている。しかし、そうした流れと逆行するかのように、世界の美術品市場がかつて
 ないほどお活況を呈している。
・世界の美術品市場が活況となっている背景のひとつとして、急成長を続ける中国やロシ
 ア、中東諸国で、多数の富裕層・ニューリッチ層が台東して、彼らの潤沢な投資マネー
 が美術品市場にまで流入するようになったことがある。とくに、チャイナ・マネーの美
 術品市場への流入が顕著だ。
・美術品市場が活況を呈するなかで、一部では、将来の値上がりを期待した投機目的で美
 術品を購入する人たちも出てきており、中国で、かつての日本が経験したような美術品
 バブルが発生しているのではないかと懸念する声も上がっている。
・中国では、富裕層・ニューリッチ層の拡大に伴って、金(ゴールド)の消費も盛り上が
 っている。
・中国では宝飾品需要に加えて、投資目的の金の購入も増えてきている。
・金相場は、投機も含めて様々な要因が複雑に絡み合って形成されるため、行き先を見通
 すことは難しいが、需給面のみに注目すると、①最大の金消費国であるインドで需要が
 一段と拡大するほか、金の個人購入解禁措置などによって中国における個人の金購買意
 欲も高まると見込まれること、②金生産国である南アフリカで鉱山の開発が遅れ気味と
 なっていること、③欧州の中央銀行による金の大量売却がピークアウトしたこと、など
 から、当面、金需給の逼迫した状況が続くとみられ、これらが金相場の押し上げ要因と
 して作用するのではないか。
・また、最近ではサブプライムローンの焦げ付き問題で、米国のドルに対する信任が低下
 していることから、自分の保有する資産価値の防衛のために金を購入する投資家が増え
 るとみたれ、これらも金価格の押し上げ要因となろう。 
 
「一人っ子政策」の歪み
・近年、中国では出生数が大幅に増加している。
・空前のベビーブームを迎えて新生児の数が急増しているため、北京や上海などの沿岸の
 大都市部では、妊婦用のベットが不足したり、幼稚園や学校が不足するなどの問題も出
 てきている。ただし、近年のベビーブームは一時的なもので、中長期的な傾向として中
 国の出生数がこのまま増加していくわけではないという点には十分な注意が必要だろう。
・ベビーブームが去った後は、「一人っ子政策」の影響で、新生児の数は急激に減少して
 くるとみられ、ベビーブーム後の反動の影響が懸念される。
・かつての中国は経済が未熟で、巨大な人口を抱えながらも国民の多くが貧困にあえいで
 いたため、人口爆発が起きないように細心の注意が払われていた。しかし、近年では事
 情が大きく変わってきている。中国の生産力や資本蓄積は劇的に高まり、巨大な人口を
 養えるようになってきている。このため、人口の増加はむしろ中長期的な経済成長にと
 ってプラスの要因になるという見方が広がってきたのだ。
・中国は2033年からは人口減少社会へと突入することになるのだ。最終的に2050
 年の中国の人口規模は、14億885万人に落ち着くことになる。
・政府が行員位若年層の人口抑制を図った結果、今後数十年の間に人口構成の高齢化が史
 上希なスピードで進展していくことになる。
・2025年から35年頃には高齢化が深刻な社会問題として浮上することになるだろう。
・65歳以上人口が総人口に占める割合の推移をみると、中国の数値は05年時点では
 7.7%にとどまるが、15年頃から急速に上昇し始め、2040年には22.2%と、
 国民の5人に1人は老人という超高齢化社会を迎えることになる。高齢化は米国をしの
 ぐスピードで進み、40年には中国の数値が米国のそれを上回る。しかも、中国の場合、
 経済の発展が未成熟な段階で急激な高齢化の問題に直面する可能性が高い。
・日本が高齢社会や超高齢社会を迎えるときよりも人々の平均的な生活水準がはるかに低
 い段階で、中国は高齢社会や超高齢社会を迎えなければならず、労働投入量や資本投入
 量の伸びの低下に伴う経済成長率鈍化により、先進国のキャッチ・アップが滞ってしま
 うリスクがある。早い段階での高齢社会・超高齢社会の到来により未熟な社会保障シス
 テムの整備にも支障をきたすことになるだろう。
・「一人っ子政策」の推進から生じることになったもうひとつの問題は、男女比の不均衡
 である。とくに伝統的に跡継ぎとして男子を重んじる風潮がある農村部では、産児制限
 を受けると、女子よりも男子を出産しようというインセンティブが高まる。
・政府は、人工中絶を禁止しているが、出産前に胎児の性別を超音波で調べて、女子であ
 ることが判明した時点で中絶してしまう者は後を絶たない。その結果、戸籍に登録され
 る新生児の男女比バランスが大きくくずれてきている。
・2005年時点で中国の新生児は女子100人に対して、男子122.6人となってい
 る。農村や立ち遅れた地域の多い湖南省や江西省などでは、この値が130を越えてし
 まう。現在、マクロ的にみた9歳未満の男児の人口は女児よりも1200万人以上も多
 いといった状況である。中朝的にみれば、男性の結婚難が深刻な問題として浮上してく
 るだろう。
・さらに、「一人っ子政策」導入の結果、「一人っ子」世代の未婚率や離婚率が高まり、
 それが中国の少子高齢化のスピードを一段と加速させるというリスクもある。どういう
 ことかといえば、両親や祖父母、さらには親族からも寵愛を受ける「一人っ子」たちが
 わがままに育ち、結婚することや、結婚した後の夫婦せいかつが難しくなるということ
 だ。 
・「一人っ子政策」が適用されるようになってから間もない時期に生まれた「小皇帝」ら
 が結婚適齢期に差し掛かってきたことから、花嫁と花婿の双方の親が結婚式に多額の資
 金援助をするようになってきた。それを受けて結婚式場業をはじめてするブライダル産
 業も活況を呈している。バブル崩壊以降の日本では、「ジミ婚」が増えているが、現在
 の中国ではむしろ「ハデ婚」が増えているのだ。
・ただ過保護に育てられ、わがままな「小皇帝」が、結婚して子供をつくったとき、きち
 んと子育てをしていくことができるのか不安なところではある。「一人っ子」同士が結
 婚して子供をつくったものの、子供の面倒をみずに、祖父母に子供を預けてしまう親が
 増えているという。
・中国では、結婚してもすぐに離婚してしまう「マクドナルド結婚}カップルが増えてい
 る傍らで、いつまでも結婚をしない晩婚志向の「一人っ子」も増加傾向にある。親が溺
 愛してくれるため、結婚して独立するより親元で暮らしているほうが、居心地が良いと
 いう理由で、いつまでも親元を離れず、親のすねをかじっていく若者が増えているのだ。
 日本流にいえば「パラサイト化」が進んでいるのである。子供が結婚する意志がないた
 め、親のほうが焦って子供の結婚相手探しに汗水たらして奔走するといったケースも増
 えている。
・中国では、若者の高学歴化が進み、大学進学室が急激に上昇している。経済成長によっ
 て所得レベルの向上した親が子供の教育にかけるお金を増やしていることが、大学進学
 ブームにつながっている。
・大学を卒業した中国の若者の多くは、北京や上海、広州などの沿岸大都市部で、高収入
 が約束されているホワイトカラーの職に就くことを夢見ている。親に甘やかされて育て
 られてきた「一人っ子政策」世代の若者は、プライドが高く、汗水たらして働くことを
 嫌う傾向が強いという。
・しかし、これまで「世界の工場」と呼ばれた中国では、自動車工場や電気機械工場など
 で、加工組立の作業を行うブルーカラーのポストはたくさん用意されているものの、ホ
 ワイトカラーのポストはまだそれほど多くはない。
・今後については、中国国内でも、金融や情報産業などが発展していくことが予想される
 ため、それに伴って、徐々に大卒者が賃金の高いホワイトカラーの職に就きやすい環境
 が生まれてくるだろう。問題は中国の制動業だ。このままのペースで(ブルーカラーの)
 人件費の高等が続くようであれば、旨味がなくなったクローバル企業は中国以外の地域
 へ生産拠点をシフトする動きを加速させるだろう。

人民元の切り上げと資産バブルの崩壊
・現在の中国では、カネ余りが発生している。中国のカネ余りが発生している根本的な背
 景には、通貨人民元の他通貨に対する変動幅が小さく抑えられていたということがある。
・為替介入によってカネ余りが発生しているので、このまま人民元を割安に管理しておく
 ことのリスクは大きくなってきている。有り余った人民元は株式市場や不動産市場に流
 れるだけでなく、最終的にはインフレーションの元凶にもなる。
・インフレが発生すれば、インフレを押さえ込むために、金融引き締め政策が強化される
 ことになり、それが経済成長に急ブレーキをかける恐れがある。すでに、石油関連製品
 や穀物の価格高騰の影響などによって、中国のインフレ圧力は相当に強まってきている。
 今後は食料品を中心にさらにインフレ律が高まる可能性もある。
・現在、中国は世界最大の外貨保有国であるが、これまでは巨大な外貨準備のほとんどを
 基軸通貨の米ドルで保有していた。しかし、これだけたくさんの外貨を保有していると、
 ドルが人民元に対して下落した場合、自国の通貨に換算したときの外貨準備が大きく目
 減りしてしまうというリスクが生じる。
・そうしたリスクに対処するため、中国は巨額の外貨準備高を海外で効率よく運用するた
 めの、国家ファンド「中国国家投資有限責任公司」CICを設立した。
・これまで、中国は外貨準備高を米国債などの安全資産で運用してきたが、今後はより高
 利回りが期待できる投資先に運用対象を広げていく。
・CICに脅威を感じているのが、投資先のターゲットとされる先進諸国である。なかで
 も、とくに強い懸念を表明しているのが米国だ。CICは「国家ファンド」なので、運
 用方針を情報公開する義務を負っていらず、外からはCICがどのような投資・運用を
 行っているのか、その実態をつかむことができない。
・仮に、米国以外の金融資産で中国の巨額の外貨資産が運用されることになれば、米国国
 債が売られて、米国の中期金利が上昇するリスクがある。また、資金が米国に向かう場
 合であっても、それが米国債以外の資産へ向かって暴走することになれば、米国のマー
 ケットをかく乱する要因にもなる。
・実態の見えないCICの存在は、日本にとっても大きな脅威となるだろう。日本には優
 れた技術を持つ有力企業が多数存在するが、バブル崩壊以降の株式市場の低迷などが災
 いしたこともあって、国際的に見た場合、各企業の時価総額はそれほど大きなものとは
 いえない。もしCICが技術を吸収するなどの目的で、日本企業を買収しようとすれば
 比較的容易にそれを実現することができるだろう。
・近年の中国企業の国際競争力の向上や、「国家ファンド」の膨大な資金力を踏まえると、
 「国家ファンド」とタイアップした中国企業による日本企業買収の動きが広がってくる
 ことが現実味を帯びてくる。
・日本政府は、国内の貴重な資源や技術、生産ノウハウが中国によって脅かされる可能性
 があることを十分に認識したうえ、国の安全保障にかかわる分野については、国を挙げ
 て外資の参入を防ぐ必要があるだろう。
・中国本土の株式市場では、株価が、まるで高速ジェット・コースターのように乱高下し
 ている。06年の年初からピークの07年10月までの期間で、株価の水準は4.7倍
 にもなった。しかし、07年11月以降は急落するようになり、08年4月には一時ピ
 ーク時と比べて株価が半分程度の水準まで落ち込んでしまった。中国本土の株価バブ
 ルは完全に崩壊したと言っていいだろう。
・中国の個人投資家の間では、株式投資が空前の大ブームとなり、証券会社の口座数は1
 億口座に達している。個人投資家の6割以上は月収が5万円程度の庶民で、彼らはギャ
 ンブル感覚で株式投資による一攫千金を夢見ている。個人投資家のほとんどが株式投資
 の初心者であるにもかかわらず、これまで蓄えた全財産を株式投資に注ぎ込んだり、会
 社の就業時間中に仕事もせずに株式売買を行うなど、その投資熱は異様なまでに高まっ
 ている。最近では、なにをしているかも知らない企業の株を、安いという理由だけで、
 大枚をはたいて購入する個人投資家も増えていたと聞く。
・株価が急落するようになったのは、景気の過熱でインフレ懸念が高まり、中国人民銀行
 がさらに金融引き締め政策を強化するとの観測が強まったためである。
・株式市場で発生したバブルははじけたが、不動産市場で発生したバブルについてはどう
 だろうか。中国の不動産市場は、いまなお過熱した状態にある。

衛生面でのチャイナ・リスク
・信じられないことに、中国では2007年の1年間だけも258人が食中毒で死亡して
 いるという。しかも、この数字は中国政府が公式に把握している人数であって、氷山の
 一画にすぎない。実際にはその数倍の人たちが毎年、食中毒で死んでいる可能性が高い。
・食料品の多くを海外からの輸入に頼る日本にとっても、中国の食の安全は重要な問題と
 いえる。
・北京で販売されている有料飲料水の約半分は、水道水を入れたペットボトルに偽のラベ
 ルを貼った偽物であるという。なぜ、市場に出回っている有料飲料水の約半分が偽物で
 あるかが分かるかといえば、小売店などで販売されている有料飲料水の数が、有料飲料
 水メーカーが製造している有料飲料水の約2倍になっているからだ。
・中国製の漢方薬についてもたくさんの偽物が出回っており、中国国内では米や小麦粉な
 どをもとに巧妙につくられた偽物の「冬虫夏草」が主に観光客を対象として販売されて
 いる。一説には、中国では毎年250万人がなんらかのかたちでニセ薬の被害に遭い、
 そのうち20万人が死亡しているともいわれる。
・2011年以降の中国の経済がどうなるかである。より中長期的な視点に立って考える
 と、中国発の世界恐慌が起こる可能性は排除できない。11年度以降の中国経済にとっ
 て景気を左右する大きなリスクとして浮上してくるのは、国内に厳然として存在する所
 得格差、資産格差の拡大によって社会不安が高まり、それが経済活動にも打撃を及ぼす
 可能性があるということだ。
・考えられる最悪のシナリオを描けば、所得格差の拡大や失業の増加によって、中国各地
 で大規模な内乱が頻発するようになり、中国政府がそれを制御することができなくなる。
 そうして結果、政治・治安面の破綻によって、国家が分裂し、中国国内の経済活動は麻
 痺することになるだろう。
・その結果、中国国内には貧困層だけが残って、経済が急成長を始める前の段階まで時間
 が逆戻りしてしまう。そして、こうした経済的な津波は、中国と密接な関係にある日本
 や世界の国々を呑み込んでいくことにもなるだろう。
・世界中の国々が中国との経済関係を強める流れのなかで、2011年以降、どこかの時
 点で中国の経済が沈没するということになれば、その影響を免れることができる国は皆
 無だろう。当然のことながら、日本経済やアジアの有力新興国の経済にも大きな悪影響
 が及んでくる。その衝撃は、1929年の世界大恐慌以上のものとなるかもしれない。
 日本企業の立場で考えると、今後はいざという時をもっと意識して、中国以外の諸国に
 ももっと目を向ける必要があるのではないか。
・「チャイナ・リスク」を分散するという観点から注目に値するのがBRICsの一角を
 占めるインドである。中国に次いで世界第2の人工規模を誇るインドは、基本的に産児
 制限を行っていないので、これから先も急速な勢いで人口が増え続け、国際連合の予測
 では、20205年にインドが中国の人口規模を抜いて世界最大となる見込みだ。
・ビジネス・リスクの分散という意味においても、助走をはじめたインド経済に日本はも
 っと目を向けてもいのではにか?