安倍政権のメディア支配  :鈴木哲夫

石破茂の「頭の中」 [ 鈴木 哲夫 ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

若き政治家下村博文 [ 鈴木哲夫 ]
価格:1296円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

安倍政権のメディア支配 (イースト新書) [ 鈴木哲夫 ]
価格:929円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

誰も書けなかった東京都政の真実 [ 鈴木哲夫 ]
価格:1512円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

最後の小沢一郎 誰も書けなかった“剛腕”の素顔 [ 鈴木哲夫 ]
価格:1620円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

覇王習近平 メディア支配・個人崇拝の命運 [ 加藤青延 ]
価格:1620円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

マーケティング化する民主主義 (イースト新書) [ 西田亮介 ]
価格:979円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

総理の影 菅義偉の正体 [ 森 功 ]
価格:1512円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

激論!安倍崩壊 [ 佐高 信 ]
価格:972円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

偽りの保守・安倍晋三の正体 (講談社+α新書) [ 岸井 成格 ]
価格:864円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

原発広告 [ 本間龍 ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

安倍晋三への毒言毒語 佐高信の筆刀両断 [ 佐高信 ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

安倍政権・言論弾圧の犯罪 [ 浅野健一 ]
価格:2592円(税込、送料無料) (2019/6/24時点)

まもなく2016年夏の参院選に突入しようとしている。前回の2013年の参院選では、
マスコミまでが「争点はねじれ解消」だと、まるで衆参両院がねじれていることが「悪」
だというような報道を繰り広げた。しかし、本来、衆参両院がねじれているからこそ参議
院の存在意義があるのではないのか。衆議院の暴走を参議院がチェックする機能が働いて
こそ、参議院の存在意義があるのだ。
今、衆議院は自公が3分の2議席を占めている。参議院でも2分の1以上の議席を占めて
いる。「ねじれ」は解消され、自公が何でも決まられる独裁体制となっているのだ。これ
がもし、今回の参院選で、参議院でも自公が3分2議席を占めてしまったなら、憲法改正
さえも思いのままとなってしまう、まさに独裁国家と呼んでもよい体制となってしまう。
まさにブレーキのない暴走車化するのだ。これは非常な危険なことだ。今回の参院選は、
日本の将来を左右する非常に重大なる選挙となるだろう。我々国民は、そのことをしっか
り意識して投票しなければならない。


はじめに
・2015年3月から4月にかけて、「政治とテレビメディア」の問題がクローズアップ
 された。きっかけはテレビ朝日の「報道ステーション」で繰り広げられた一場面。コメ
 ンテーターで元経済産業省キャリア官僚の古賀茂明が、「官邸の圧力がテレビ朝日など
 のトップにかかり、それが理由で降板する」と語ったのだった。さらに、これが官邸や
 政権与党である自民党を怒らせ、なんと自民党の情報通信調査会がこの番組を放送した
 テレビ朝日と、同時期に「やらせ疑惑」が発覚したNHKもあわせて同調査会に呼び、
 報道番組の内容をめぐって両局幹部から事情聴取したのである。
・本来、「高い壁」を越えて、そこで起きていることを知る権利を有しているのは国民一
 人ひとりだ。その代役として突っ込んでいくのがジャーナリストであり、テレビ報道現
 場で働く者たちというわけだ。そうした役目を負ったテレビの報道番組やその現場に
 「権力を持った政治家や政党」が過剰な介入や圧力をかけることなど許されるはずがな
 いではないか。番組の背後には国民がいることが見えていないのだろう。テレビ局を情
 報通信調査会に呼ぶことで、それは圧力になり、テレビ局が必要以上に自主規制に走る、
 呼びつけた自民党はそんなシナリオを描いたのかもしれない。今回の例だけではない。
 とくに最近の自民党はメディア対策が強化され、それが目に余る。バックには安倍政権
 のメディア戦略があると言っていいだろう。
 
賀茂明×鈴木哲夫「報道ステ問題で本当に伝えたかったこと」
・私が最後の出演で言いたかったのは、権力や官邸の圧力によってテレビ報道が変わって
 しまう怖さです。自分たちの役割は政治や制度の監視なんだという気持ちが薄くなてき
 ていませんか。安倍政権になってから、たびたび官邸や自民党からの圧力がテレビ局の
 報道現場にあったことがわかっていました。だからそれでいんですか、という議論をし
 たかったんです。マスコミが大事なことを伝えなくなったら、日本も国民も危機的です。
・ガンジーの言葉をフリップにして用意して、最後になんとか出しました。あれが言いた
 かったすべてです。古賀が番組の最後に手に取って見せたマハトマ・ガンジーの言葉と
 は、「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなければならない。
 そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられな
 いようにするためである」という文言だった。
・政治からマスコミへの圧力というのは昔からつねにありましたが、知り合いの記者など
 を通じてこっそりやったいやのやり方はトップを抑えるんですね。安倍総理から直接携
 帯に電話がかかってきて喜んでいるトップの人を目の前で見ました。そうやってトップ
 を抑えれば、現場は忖度して自主規制になるんです。  
・自民党は口では改革と言っているが、既得権とくっついている。そこで民主党が出てき
 て、政治主導を標榜して期待されたが、結局は自民と同じダメになった。日本維新の会
 が出てきたけど、もたもたしているうちに、結局はみんなダメじゃないか、ということ
 で安倍さんが出てきた。でも、安倍さんは憲法改正や安全保障をやればいい。その環境
 をつくるためには官僚とも仲よくしておけばいいと。これでは改革はできません。
・安倍政権は農業にしても中小企業にしても、十把一絡げというひとが多い。それは、も
 はやバラマキです。一般市民には普通に頑張ってもらい、それができない人たちに、ど
 こまで、何をやるかが改革だと思います。  
・古賀の訴える「改革」は自民党の理念である「自助、公助、共助」のメリハリをよりい
 っそう実現するものである。むしろ安倍政権のほうが、いまは「改革」を標榜しながら
 も、一般的な人気取りのバラマキに傾いていて、逆に無責任とも言えるかもしれない。
・安倍自民は改革をやらないし、タカ派です。公明党もそれについていっている。民主党
 もバラバラでよくわからない。共産党は戦争はしないがバラマキです。そこで「真の改
 革はするけど戦争をしない」という第4のポジションに政党が必要になると思います。
・安倍政権がやろうとしていることは、20年は遅れています。たとえば外交と安保。い
 まの世界は、じつは憲法の発想がいちばんぴったりくる時代なんです。というのは、日
 本がもはや大国じゃないからです。いくら頑張っても大国や列強に戻るのは無理。安倍
 さんはそれがわかっていない。経済成長にも限界がある。中国を上回る軍備増強などで
 きるのか。そして少子高齢化を乗り越えられるのか。無理です。ならば、あとはいかに
 知恵を出してムダな国防費やムダなお金を出さないでやっていくのか、というのが政治
 家の知恵じゃないですか。アメリカと一緒に世界を仕切るとは、列強の仲間入りとか、
 せめてイギリスぐらいになろうとかいう発想は、1970年代から1980年代の経済
 の最盛期ならわかりますけどね。いま、日本がいちばん苦しいときに「俺は強いんだぞ」
 とやっているこのセンスはどうなんでしょうかね。世界中には日本の文化や自然が大好
 き、日本の平和主義がいい、という人がたくさんいる。そういう人たちを仲間に引き入
 れてやっていくべきです。 
   
なぜメディアは政権に「全面降伏」したのか
・そもそも、とくに民主党から政権を奪い返したあとの自民党はメディア対策が強化され、
 それが目に余る。一度、野党に転落した経験から、もう二度と落ちたくない。だから、
 どんな報道がされているのかなどにも官邸や議員たちがピリピリしているんではないか。
 また、安倍総理を昔から支えてきたいわゆる「お友だち側近」と呼ばれる幹部たちも、
 たびたび番組の編集権まで立ち入るような批判や要請文書をテレビ局側に突きつけてき
 た。象徴的なものとして、2014年暮れの総選挙前のこんな出来事があった。TBS
 の夜の看板報道番組「NEWS23」に安倍総理が出演したが、その際に流れた街頭イ
 ンタビューに対して安倍総理がスタジオで不快感を示し、「厳しい意見を意図的に選ん
 でいる」と語る場面があった。   
・今回の「報道ステーション」のケースも大々的に局幹部を呼ぶこと自体がテレビ現場に
 は無言の圧力となり、自主規制に追い込まれていく危険性が高いのである。自民党の調
 査会はテレビ局への圧力を強めてきた一連の流れの延長線上で、今回も確信犯と言えそ
 うだ。呼んだあとの話の中身ではない。呼ぶこと、世間にさらすこと自体に意味がある
 んです。それによってテレビ現場はどんどん萎縮していきます。あれこれ気を回して、
 安倍批判などには消極的になる。   
・そもそも呼んだのが、もし自民党という政党ではなく政府(総務省など)だったならば、   
 それはもう明らかに大問題だ。政府とは「国家権力」である。「国家権力」が報道の自
 由に介入してあれこれ注文をつけるなど絶対に許されない。表現の自由や報道を担保さ
 れないなら、それはもう独裁国家である。
・今回の自民党の調査会というのは、自民党とはいえ、あくまで私的機関だから、その手
 前の段階だ。もちろん与党であるから圧力行為がエスカレートして、やがて政府の動き
 につながっていく可能性を警戒しなければならない。
・いずれにしても、自民党に呼ばれたからといってテレビ局が必要以上に委縮したり頭を
 下げたりする話ではないのではないか。要は、呼ばれたあとにテレビ局が「報道番組に
 懸けているプライドを示せるかどうか」「政治の圧力と戦う覚悟があるかどうか」の問
 題だと思う。加えて、私が現状を情けなく思うのは、テレ朝に対しては本来、他のテレ
 ビ局も今回の事情聴取について世間に問題提起して援護射撃をすべきなのに、それがで
 きていない。テレビ全体が、どこか弱腰なのだ。 
・過激な言い方かもしれないが、そもそも「公平性」などと声高に言っているのはきれい
 ごとではないか。「公平性」という概念はテレビ現場では番組をつくった瞬間に吹き飛
 ぶのではないかと思っている。番組はそれ以降、「公平性」を担保するために次のカッ
 トはどうするか、構成上、別の意見はどこに持ってくるかなど工夫するが、それとて限
 界はある。人がつくる以上、それは主観なのである。
・「公平性」というものは、いまテレビ現場では現実的に「たんなる体裁程度のもの」と
 してしか具現化されていないのだ。理由をあれこれつけているものの、突き詰めれば、
 大した「公平性」にはなっていないのである。
・安倍さんは幹事長や官房長官、そして第一次内閣のころから一貫してメディアに対して
 ものすごく警戒していました。とくにNHKのドキュメンタリーや朝日新聞、テレビ朝
 日など自分の方向性に批判的なメディアには、陰でいろいろな対応をとってきていたん
 です。  
・自民党や政権に対して批判的なことをやっていたら、すぐにその担当がテレビ局の自民
 党担当記者や政治部デスクなどに接触して「ちょっと違うんじゃないか」「きちんと説
 明したい」などと言うんです。それでも態度が変わらなければ、今度は安倍さん自身が
 自民党の元総理大臣経験者やベテラン大物などを動かして、テレビ局のトップなどと会
 食しながらプレッシャーをかけるといった具合です。  
・いまの安倍総理のやり方はトップを抑えるんですね。安倍総理から直接、携帯に電話が
 かかってきて喜んでいるトップの人を目の前で見ました。安倍総理はまめに、謙虚にマ
 スコミの重鎮たちに接し、しかし結局は自分の掌にのせてしまうというもの。
・いまのところ、ほぼみんな安倍政権には好意的ですよ。全国紙と民放テレビを徐々に抑
 えていきながら、残る最後の仕上げはNHKやテレ朝というシナリオでやったんだと思
 います。   
・2013年11月、NHKの経営委員4人の人事案が衆参本会議で賛成多数で同意され
 た。しかし、この4人は明らかに安倍総理に近すぎると言っていい人物。安倍総理との
 雑誌対談以来、意気投合したという作家の百田尚樹、思想的な熱烈な支持者である長谷
 川三千子
、安部総理を囲む財界人の「四季の会」のメンバーでもあるJT顧問の本田勝
 彦
、そして安部総理の後ろ盾でJR東海名誉会長の葛西敬之が設立した私学校の校長で
 ある中島尚正。この人事には明らかにNHK戦略があるという。 
・テレビ報道分野でNHKを抑えることは、とても大きな効果がある。ニュースやドキュ
 メンタリーに対する視聴者の信頼度が高いからだ。
・安倍政権や自民党によるテレビメディアへの接触は、話の内容ではなく、呼びつけるこ
 とでそれが圧力となり、報道現場の自粛につながってしまう。それをムチとするなら、
 安倍総理自身は雨をバラまく。親近感のある電話や会食で多くのメディア幹部などが
 「政権批判」をしにくくなっている。 

つくられた「安倍政権誕生」
・まず政党が声高にあれこれ言っていることは争点から外して考えたほうがいいと思いま
 す。政党や候補者は必ず、「争点ぼかし」と言うか、「争点隠し」をやるのだ。必ずや
 る。理由は簡単だ。そもそも選挙に勝ちたいのだから、ウケの悪いことを言うはずがな
 い。 
・私は「衆参ねじれ」は、むしろ歓迎すべきことだと思っている。一党独裁の大政翼賛的
 政治が危険だからだ。ブレーキ役や監視役がいなくて政治は大丈夫か。危ないに決まっ
 ている。私は断言する。いつ政権から転げ落ちるかという危機感なくして、政党も政治
 家も正直にはならない。権力の座について政党や政治家は、事実や真実を隠し、必ずコ
 ントロールする。だからこそ、政権交代の緊張感は絶対に必要なのだ。自民党にいつで
 も代わることができる二大政党の片方が必要だ。
・安倍さんが一番やりたいのは憲法改正です。それをやるために総理大臣になったと言っ
 てもいいぐらい。国防軍の明記をはじめ、強い外交と安全保障が安倍さんの目指すとこ
 ろですからね。安倍は衆参両議院で憲法改正の手続きに必要な3分の2の勢力を確保し
 なければならない。
・日本の安全保障を沖縄に押し付けているという現実をもう一度、真摯に考えることも必
 要だ。政府は「法的」などと言うべきではないだろう。すべてを「法」で処理するなら
 「政治」はいらない。多種多様な意見や、それぞれの生き方や人権があるから、それを
 調整していくのが「政治」ではないか。「流血」などに突っ込んでいく前に、徹底した
 政府と沖縄の話し合いが必要だ。 
・2013年の参院選で、私が最後にどうしてもメディアに反省を求めたいことがある。
 それは、全国紙やテレビキー局のなかで、この参院選の争点を「ねじれの解消」と大々
 的に報じたところが多かったことだ。「ねじれが解消されれば政治が安定する」とまで
 書き加えていたところも結構あった。自民党と公明党自身が、「争点はねじれ解消」と
 言うならわかる。彼らの目標は権力維持であり、衆参のねじれを解消して政策を実現し
 たいと言うのは当然だ。だが、マスコミが口にするのは絶対に間違っている。そもそも
 衆参はねじれているからこそ意味がある。衆議院の暴走を参議院がチェックする、それ
 が二院制ではないか。それを「ねじれ解消が争点」などと書くということは、言い換え
 れば「ねじれ解消のために自公に投票しろ」と言っているのと同じなのだ。
・実はいま、自公で衆議院は3分の2という数を持っている。もし参議院で否決されても
 衆議院で3分の2で再議決すれば法案は通るようになっている。ねじれなんか解消する
 必要はない。むしろ解消されて衆参で独裁体制になることのほうが危険だというのが私
 の考えだ。   
 
政党と代理店に操られる選挙報道
・選挙の広報活動については、長くもたれ合ってきた広告代理店との関係も特徴的だ。選
 挙になると、ポスターやテレビコマーシャルを手がけるのは広報本部。ここが広告代理
 店に発注し、共同で対応するというしくみだ。自民党の選挙広報の仕事を長くほぼ独占
 状態で引き受けてきたのが電通だ。電通は業界ナンバーワンで仕事も着実というのが理
 由だ。
・気になるのは、こんな馴れ合いの仕事で、どのぐらいの予算が使われるかということだ
 が、2003年〜2004年には衆参の両方の選挙がありましたが、その2回の選挙で、
 ざっと30億円ぐらいだったと記憶している。選挙のたびにこんな形で大手代理店に数
 十億円単位のカネが動いていたとは驚きだ。
・ある企業が発展し、業績を上げるためには、イメージや商品の紹介など、企業と社会を
 うまく橋渡しする広報が重要。それは政治も同じ。官邸や政党がいい仕事をするために
 は、政治と国民の橋渡し役がいなければならない。日本のリーダーがどんな人柄か、ど
 んな政策をやろうとしているのか、政党が何を考えているのか、逆に国民が政治に何を
 求めているのかを探る。それが広報であり、コミュニケーション戦略だ。
  
政治ニュース「劇場化」の内幕
・メディアは平等、平等と言うが、いったい誰を意識して、誰に向かって言っているのか。
 各政党や候補に対して気を使っているだけではないか。有権者のための選挙報道なら、
 各候補の欠点や問題点を等しく批判してほしい。いいところばかりだと、まるで選挙管
 理委員会の広報紙でしかないじゃないか。  
・テレビ朝日の「報道ステーション」でキャスターの古館の「勝ち組だけをつくる自民党」
 との発言をめぐり、自民党が質問状なるものを送りつける騒ぎがあった。抗議というよ
 りは脅しである。しかし、古館は後日、番組内で真意を説明し、最後まで謝らなかった。
 自民党だけに厳しいのではなく、各党すべてに等しく厳しくあたるという姿勢を示した。
 全部の政党や候補者の悪口を言わないのも平等だが、すべての政党の悪口を言って批判
 するのももちろん逆の意味でまた平等ではないか。ジャーナリズムは後者であるべきだ。
 
インターネット選挙と安倍政権のゆくえ
・「憲法改正」への勝負は、総裁再選挙のあとから2017年4月までの間、つまり
 2016年ということになる。さらに、ここで安倍総理が憲法改正に一気に勝負を懸け
 る「仰天プラン」があるという。それは「衆参ダブル選挙」だ。
・「衆議院で3分の2、参議院で3分の2、そして国民投票で過半数といった具合に進め
 ていこうとすれば、多数派工作なども含めて、どれだけ時間と労力を費やすかわからな
 い。とくに連立を組んでいる公明党は、憲法改正については安倍総理とは何を変えるか、
 また第九条については差がありすぎる。   
・公明党に対しては、安倍総理もこれまでは連立に気を使ってさまざまな意見を受け入れ
 てきた側面もある。しかし、いよいよ一丁目一番地の政治生命を懸けた「憲法改正」で
 は安易な妥協や譲歩はないと見るべきだろう。そこで出てくるのが「2016年夏のダ
 ブル選挙」なのである。安倍さんは衆議院を解散して、このダブル選挙を、ズバリその
 もの「憲法改正」を問う選挙にする。争点を「憲法改正」一点にして国民投票的な色合
 いにして、他の各党にも踏み絵を踏ませる。国民に向かって「憲法改正よしと思うみな
 さんは、衆議院も参議院も、自民党や憲法改正する政党に入れてください」と。一気に
 衆参で3分の2を獲って、そのあと国民投票にもなだれ込んでいく。公明党や他の野党
 にとっては「憲法改正」を掲げられれば、それはかなり頭の痛い「踏み絵」である。
・こういうダブル選挙をやれば、第九条改正には慎重な公明党だって、果たして連立を離
 脱してまで改正に反対するか相当悩むだろうし、維新の党や民主党のなかにいる憲法改
 正派は党を飛び出して新党をつくったり、自民党に合流したりするかもしれない。「憲
 法改正」によって世界再編も起きて、それがひいては一気に改憲を実現させる可能性が
 あるということだ。
・もちろんダブル選挙は賭けだ。だが、時間をかけすぎても前に進まない。どこかで一気
 に勝負をかける類いのものだという。
・総合的に考えると「憲法改正」の勝負は2016年夏から秋と見ていい。だが、政治は
 「一寸先は闇」だ。安保法制論議のゆくえや沖縄の基地問題といった「安保問題」、原
 発再稼働、そして株価などどこまで経済がもつかなど政治的難題がこれからも切れ間な
 く押し寄せてくる。舵取りを間違えれば政権が行き詰まる可能性もある。2016年夏、
 秘策の「ダブル選挙」で「憲法改正」を果たせるか、保証はない。