2012年、世界恐慌 :相沢幸悦、中沢浩志

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この本は、2010年に出版されたものである。この本によれば、2012年に世界恐慌
となることが予言されている。今年はその2012年であるが、幸いにもまだ世界恐慌に
はなっていない。しかし、その足音はヒタヒタと近づいて来ていることを感じる。世界は、
ロンドンオリンピックで華やいでいるが、ロンドンオリンピックが終わった後のイギリス
経済は、どうなるだろうか。ギリシャも、オリンピック後に国の経済がおかしくなった。
過去の日本の経済を振り返ってみると、国の政策の失敗でバブルが発生したり、大不況が
発生したりしたように思える。最近の電機業界の不況も、国の地上デジタル化政策によっ
て、まだ使えるアナログテレビを、強制的にデジタルテレビに買い替えさせられたことが、
大きく影響している。国全体のテレビが、いっぺんに買い換えられたのだから、もう当面
テレビ購入の需要がないのは、当然のことであろう。
また最近、消費税増税法案通過の見通しが立った途端、それを当て込んだとも思われる超
大型公共投資案が、自民党や公明党、それに民主党からも出始めている。過去の歴史から
見ても、公共投資を展開しても景気は浮揚しないのにである。ただただ血税を無駄に消費
させ、国の膨大な借金をますます膨らませるだけではなかろうか。それに、そもそも今回
の増税は福祉に回す約束ではなかったのか。
いつの時代も、政治家たちの「自分たちの票集め」のために、血税が無駄にバラまかれる。
日本にこれから訪れるであろう事態を想像すると、ただただ悲壮感しか出てこない。自分
の子供たちや孫たちが、生きる時代の状況を想像すると、心が痛んでならない。

プロローグ
・金融危機というのは、金融期間が資金繰りに走り回るとか、膨大な不良債権や損失をか
 かえて次々と連鎖倒産する一歩手前の状態である。だから、政府や中央銀行が大規模な
 資金供給を断行するとか、マーケットがびっくりするような巨額の見せ金を「出す用意」
 があると宣言するだけでとりあえず終息する。
・ただし、その段階では、金融期間のかかえていた膨大な損失が政府と中央銀行に転嫁さ
 れたということにすぎない。この場合、中央銀行に不良債権や損失が堆積しすぎると、
 発行する通過(中央銀行券)の信認が失われ、経済そのものが崩壊するので、最後はそ
 の損失を政府が肩代わりしなければならない。
・世界のなかで日本だけが深刻な不況に陥っているなら、事態はまだ対処可能だ。ほかの
 国や地域が好景気になれば、輸出を増やしたりすることができるからだ。ところが、今
 回の危機は、世界が住宅バブルに沸き、それが崩壊して危機が発生している。つまり、
 世界中が財政赤字を拡大させてしまったので、逃げ場がないのである。これこそが人類
 が戦後、初めて経験する「未体験ゾーン」である。
・財政赤字が雪だるま式に膨れ上がり、ついには国債を発行しても消化できないという事
 態、すなわちデフォルト(債務不履行)に陥る。一国だけではない。世界各地でデフォ
 ルトが発生する可能性が高い。このようなソブリン・リスクの現実化こそ、現代の恐慌
 の形態にほかならない。

なぜリーマン・ショックは克服できたか
・1997年11月に金融機関同士で資金を融通し合うインターバンク市場で起きた三洋
 証券のデフォルト(債務不履行)を、当時の大蔵省が容認したことが大きく影響してい
 る、インターバンク市場は戦後、どの工業国でもデフォルトとは無縁の絶対安心の市場
 だった。つまり、プロたちがもっとも臆病なお金をやりとりする場であったのだが、こ
 れをわざわざつぶしたのである。その結果、金融機関の間での不信感は頂点に達し、イ
 ンターバンク市場をふくむ短期資金市場では取引がなくなり、北海道拓殖銀行や山一証
 券などの一部大手銀行や証券会社が、いとも簡単に経営破綻した。
・次に日本では、劣化した銀行資産をそのまま放置させていたので、銀区のバランスシー
 トへの投資家・預金者の不信が極端に高まった。そうすると、株価下落と預金流出とい
 う環境下で銀行は生き残らなければならないため、貸し渋りや貸し剥がしがどんどんす
 すみ、つぶれなくてもいい多くの中小企業が倒産することになった。
・金先物価格の上昇は、アメリカでのインフレ懸念の高まりによって超金融緩和策であり
 あまった資金がインフレに強い金に集まったことによるものである。インフレが高進す
 ると金価格も上昇する。現金を持っているよりも、金を持っていたほうが安全だから金
 にマネーが集まったのである。
・アメリカでインフレ懸念が出てきているのは、危機対応策としてとられている超金融緩
 和策で資金がだぶついていることと、ドル安傾向がみられるからである。危機勃発以降、
 投機資本などはリスクをとることに慎重で、安全資産である米国債などに資金を避難さ
 せた。これは「質への逃避」である。「有事のドル」を持ち出すまでもなく、危機にな
 ると米ドルが高くなるのはそのためである。
・ドル安になると輸入価格が上がるので、インフレ懸念がでてくる。また、金はドル建て
 で取引される。ドル安になると外国通過では割安になるので、金は買われ、高くなるの
 である。

世界のマネー爆弾その1 :アメリカの闇
・アメリカで景気を牽引するのは、日本のように設備投資や輸出ではなく、GDPの実に
 7割あまりを占めている個人消費である。日本は6割だが、GDP成長率への寄与度は
 アメリカにおよばない。
・アメリカで個人消費が増えると、日本やアジアからアメリカに向けた輸出が激増する。
 アメリカは、IT産業、軍事産業、農業、金融業などの国際競争力は高いが、消費財産業
 はきわめて低く日本やアジアからの輸入に頼っているからである。
・アメリカで株価が上がるとどうして個人消費が増えるのか。それは個人金融資産の約半
 分が株式関連の金融商品に投資されているからである。株価が上がると儲けが出るので、
 儲けた分で欲しいものを買うことができる。また、「401k」という確定拠出年金に
 株式を多く組み込んでいれば、株価が上がることで将来の受け取り予想年金額が増える。
 老後に不安がなければ、貯蓄をする必要もないので有り金を全部消費にまわせる。
・危機にさいしてアメリカ政府は巨額の財政出動を行ない、中央銀行は膨大な流動性を供
 給している。財政資金は、金融機関への資本注入、公共投資や減税に振り向けられ、景
 気へのテコ入れが行われている。中央銀行による流動性の供給は、金融機関の連鎖倒産
 ということを防止する役割をはたしている。リーマン・ショック以来、流動性危機によ
 る大手金融機関の破綻が発生していないのは、そのおかげである。
・しかしながら、中央銀行の資金のその後の行方を調べると、ほとんど設備投資や住宅ロ
 ーンなどの実体経済に投入されていないことがわかる。そして、そのことが事態の深刻
 さを何より物語っている。なぜなら、たとえ金融危機が回避できても、一方で経済危機
 が深刻化し、その経済危機を抑えようとすれば、財政危機(ソブリン・リスク)がます
 ます深刻化していくからである。
・アメリカ政府は必死で住宅市場を支えているが、そんなことをしたところで経済は収縮
 しているのであるから景気は低迷する。これは需給ギャップともいわれるもので、供給
 が需要を大幅に超過しているというものである。要は、生産設備などが多すぎるという
 ことにすぎない。本来ならば、過剰な設備を廃棄しればいいだけである。これは恐慌の
 役割でもある。ところが、現代経済では恐慌は起こしてはいけないので、需要を増やせ
 となる。国債を増発して減税と公共投資を行え、信用が収縮したら銀行にお金を出させ
 ろ、国がカネを出せ、ということになる。
・今回の危機は、金融危機と経済危機を基底にし、この二つの危機が財政危機に転化する
 という形をとっている。すなわち、世界経済・金融危機は三層から成り立っている。
・アメリカは、危機対応で徹底的な財政出動とFRBの流動性供給を続けざるをえない。
 それは結局は、膨大な財政赤字と中央銀行の資産劣化につながる。中央銀行の劣化資産
 は政府が肩代わりするので。それはとりもなおさず国家の危機、ソブリン・リスクにつ
 ながっていく。

世界のマネー爆弾その2 :ヨーロッパの憂鬱
・一つ目の金融危機は、イギリス、ドイツ、スイスなどの大銀行が、アメリカのサブプラ
 イム関連の金融商品への投資の失敗によって膨大な損失をこうむっていることである。
 バブルにつられて欲深くなった結果だが、アメリカと同様に多くの銀行に公的資金の投
 入がおこなわれている。
・二つ目は、1980年代の初頭から金融自由化をすすめてきたイギリスをはじめ、スペ
 イン、アイルランド、イタリアなどで住宅バブルが崩壊したことである。
・中東欧やバルト三国で「マネー爆弾」が爆発すれば、即座にオーストラリアとスウェー
 デンの銀行が危機に陥る。09年4月に発表されたIMFの国際金融安定性報告書によ
 れば、そうなればドイツ、イタリア、ベルギー、オランダなどに危機が次々に波及し、
 金融危機が燎原の火のごとく広がっていくという。
・社会主義政権のもとでギリシャは、福祉水準の引き上げや公務員にたいする厚遇など国
 民が喜ぶようなバラマキ政策を行ない続けた。このため社会保障が充実し、公務員が就
 労人口の4割を占めるようになったが、当然の帰結として財政赤字が雪だるま式に膨れ
 上がった。
・ギリシャ国債の格下げによって、同じく多額の貿易赤字と財政赤字をかかえるポルトガ
 ルやスペインのほかイタリアなどの国債が売られ、ドイツ国債とのスプレット(利回り
 格差)が拡大した。とくに景気が低迷し、税収も増えないポルトガルの売りがはげしい。
・何よりの特徴は、経済成長お主導セクターに金融業をすえたことだった。ロンドンを本
 格的に国際金融センターにする政策が積極的にすすめられ、その象徴が1986年には
 じめられた金融ビックバンだった。それはイギリスの「金融立国宣言」というに等しか
 った。
・しかし、住宅バブルが崩壊すると、そのことが裏目に出た。経済の中心を占めていた金
 融セクターが急激に縮小したので、ほかの国より影響をもろにかぶったからである。大
 銀行の国有化をはじめとする銀行救済が行われ、同時に景気浮揚のために膨大な財政出
 動も迫られた。こうして危機が深刻なヨーロッパにあっても、イギリスは突出した財政
 危機に見舞われ、ソブリン・リスクが顕在化していく可能性が高い。
・イギリスの財政赤字がGDP比12%を突破し、急速に持続不可能な財政状況に突き進
 んでいる。
・ユーロから脱退すれば、ギリシャ自体は「自由」を手にすることができる。中央銀行が
 独自の金融政策を行うことができるようになるし、為替制度が変動相場制に移行してギ
 リシャ通貨ドラクマの為替相場が下落すれば、輸出を増大させることで景気の浮揚をは
 かることができる。だが、その半面で、莫大な規模のユーロ建ての債務を返済しなけれ
 ばならない。そんな巨額の返済を続けられるはずがなく、結局、外貨を大量に取り入れ
 た結果、危機で自国通貨が暴落して返済額が激増したアイスランドとおなじになってし
 まう。
・そうなれば、ギリシャに貸し込んでいたヨーロッパの銀行が膨大な損失をこうむる。
 「次はどこか」とマーケットは獲物を探し始め、次々に財政危機が表面化する。すると、
 そこへ貸し込んでいる西ヨーロッパの銀行の損失はさらに増える。結局、ギリシャ支援
 のためにさらなる財政出動をしなければ、ユーロの信認が失われてしまうことになる。
・ユーロの信認を維持するためには、EUが資金支援を続けていくしかないのである。そ
 うなれば、ギリシャはこれからも財政赤字が増えるだろう。ギリシャの財政赤字が認め
 られるなら、PIGS諸国も財政赤字削減努力を放棄する。ここでもEUによるさらな
 る大規模な財政支援が不可欠になる。
・中東欧諸国の景気がさらに悪くなって金融危機に見舞われれば、オーストリアとスウェ
 ーデンの銀行が膨大な損失をこうむる。そうすると、この二つの国に資金を提供してい
 るスペイン、イタリア、フランス、ドイツなどが金融危機に襲われる。
・ギリシャ・ショックは、世界的な金融危機の最重要課題が不況からの脱出ではなく、財
 政持続性に移ったことをしめしている。
・いずれにしても資金をつぎ込んでいけば、ユーロの信認が消滅していく可能性が高い。
 しかしユーロ信認にこだわっていては、事態は悪い方向にすすむ。ユーロの信認を捨て
 なければ、ヨーロッパの経済・金融システムが崩壊してしまうだろう。ヨーロッパは、
 爆発寸前、まさに一触即発の状態である。
 
世界のマネー爆弾その3 :日本の能天気
・日本銀行は、平成大不況が深刻化するにつれて超低金利政策を強化した。深刻なデフレ
 がはじまった1999年3月には、インターバンク市場の無担保コール翌日物の金利を
 実質ゼロにする。いわゆる「ゼロ金利政策」を実施した。それでも足りないとなると、
 2001年3月には「量的緩和政策」に踏み込んだ。
・ところが、量的緩和政策を実行したのにもかかわらず、日本では不況は終わらなかった。
 というのも、実体経済側にマネーを調達したいという資金ニューズがとほんどなく、経
 済活動活発化の好循環が起きなかったためである。
・そもそも1980年代末の不動産バブルは、70年代初頭の高度成長の終結後、公共投
 資によって経済を成長させる政策の帰結として発生したものであった。その結果、銀行
 と建設・不動産業などが不動産取引で膨大な利益をあげた。
・不動産バブルが崩壊して彼らは膨大な不良債権に悩むことになったが、本来なら、この
 時に日本はハイテク産業やIT産業などを中心とする経済・産業構造に転換しなければ
 ならなかった。
・だが、旧態依然たる公共投資を続けることによって、建設・不動産を支え続ける政策が
 遂行された。しかし、金融機関に膨大な不良債権が蓄積していたので、いくら財政出動
 しても平成大不況は終息しなかった。金融仲介機能が機能マヒしていたからである。結
 局、90年代だけで300兆円あまりの国債が発行されて公共投資が行われたが景気の
 落ち込みをふせぐ程度で、いっこうに景気の回復はみられなかった。
・さいわいにも、日本の「金融立国化」はついに日の目をみなかった。というのは、「貯
 蓄から投資」に移行するのが金融ビックバンであったにもかかわらず、最後まで銀行シ
 ステムを「創造的に破壊」することができなかったからである。
・銀行は200兆円もの不良債権をかかえることで、日本経済を「人質」にとっていた。
 もし「破壊」しようとすれば、おそらく日本経済も崩壊していただろう。
・一時は、当時の小泉政権まで、こうしたマネーゲームを推奨するかにみえたので、つい
 に「検察」が前面に登場し、ライブドアの堀江元社長や村上ファンドの村上元代表など
 が逮捕された。
・2009年8月に戦後はじめて本格的な政権交代が行われた。そうすると、民主党が選
 挙で掲げたマニフェストを実現させるために、バラマキといわれる予算が組まれ、財政
 拡大路線に拍車がかかった。それは、新政権には、日本経済再生の長期ビジョンがまっ
 たく欠如しているからである。
・新政権は、それまでの大企業優先と輸出によう経済成長路線を根本的に転換し、賃上げ
 や福祉充実などによる内需主導型の経済システムに転換しなければならなかった。そう
 でなければ、戦後はじめてといわれる政権交代の意味がない。ところが、旧態依然たる
 バラマキ政策で景気を回復させようとしている。 
・10年度予算の財政規模は92兆円余りまで膨れ上がり、国債発行が約44兆3000
 億円と税収見込みの約37兆4000億円を上回った。国債発行額が税収を上回るのは、
 第二次世界大戦直後の1946年度以来64年ぶりという異常事態である。
・国と地方を合わせた政府債務残高は10年度末で863兆円、GDP比で180%に達
 する見通しだ。この比率は、ギリシャなどよりもはるかに高い。それにもかかわらず、
 いままで日本で財政赤字や国債が累積してもそれほど大きな問題にならなかった。それ
 は、アメリカと違って、国債の90%以上が国内で消化されてきたからである。しかし、
 このような状態がいつまでも続くとか思えない。
・不況期には超低金利政策がとられたし、ほかにいい投資先がなかったので日本国債は優
 良金融商品であった。発行された国債は日本銀行をはじめ銀行や郵貯、機関投資家が購
 入したので、国債価格はさほど下落することはなかった。
・国内でファイナンスされているが故に安心であると信じられていた状況も、終を告げつ
 つある。2010年2月の政府発表では、家計の純資産額は1063兆円で政府債務残
 高863兆円との差額はわずか200兆円まで接近している。このことは、単純な見方
 をすれば、あと200兆円しか国債を新規に発行できないということを意味している。
・買い手が減れば価格を下げないと売れなくなり、価格の下落は即、長期金利の暴騰につ
 ながる。
・IMF(国際通過基金)は、政府債務残高は14年にGDP比で250%まで増大し、
 19年には政府債務残高が家計の純資産を超えると指摘する。
・日本は平成大不況で財政赤字の限界を超えた。日本国債を外国に買ってもらえる可能性
 はなくなりつつあるので、結局、引き続き日本国内で消化するしか道は残されていない。
 もし、株価が下落するとか、投資信託の価額が低下すれば、純資産は1000兆円を下
 回り、差額がさらに減少する可能性が高い。
・そうなると、いままでのような超低金利で国債発行はできなくなる。発行金利を高くす
 るとか、発行価格を低くして国債を売らなければならない。その結果、長期金利が急上
 昇するので、利払い費が膨れ上がり、19年よりもはるか以前に政府債務残高が家計の
 純資産額を超える。長期金利が上昇すれば株価も下落し、企業の資金調達も困難になり、
 恐慌状態になる。
・これこそ「マネー爆弾」の炸裂だ。このような事態を回避するには、歳出の抜本的削減
 と消費税率の引き上げなど増税が不可欠である。しかし、日本の政治の現状で、すんな
 り増税ができるとはとても思えない。
・であるとすれば、のこされた道は、政府債務残高を減らすために、インフレを誘導する
 ことである。簡単にできることは、「財政法」を改正して、日本銀行に国債を直接引き
 受けさせることである。
・しかしながら、それは大恐慌に四敵するくらいの規模で日本経済を崩壊させる。日本だ
 けでハイパーインフレが高進すれば、国内の資金が外国に流出するからである。インフ
 レになると円安になるので、海外に資金を移せば、インフレヘッジになる。銀行預金は
 解約され、国債や社債などは売られて資金が海外に逃げれば、銀行倒産、企業倒産が激
 増する。株式はインフレに比較的強いが、企業倒産が予測されれば株式を打って海外に
 資金を移すであろう。どう転んでも、日本経済は崩壊するしか道がないように見える。
 
大恐慌との奇妙な類似
・1929年の世界大恐慌の本質を見抜いたアメリカの政策担当者はほとんどいなかった。
 自由競争資本主義が終了し、独占資本主義における質的にまったく異なる大恐慌だとい
 うことをだれも理解できなかったのである。
・ニューディール政策には航空母艦の建造も入っていたが、この政策は大恐慌を悪化させ
 ない程度の役割しかはたさなかった。
・アメリカは、デフレ対策としてとられたニューディール政策では大恐慌を克服できず、
 1937年に二番底となる深刻な恐慌に見舞われた。アメリカも結局は第二次大戦によ
 って、ようやく大恐慌を克服できた。恐慌前の株価の最高値を回復するには、なんと戦
 後、1950年代のことである。 
・リーマン・ショックが起こると、ケインズ政策こそが危機を救うとばかりに、なんのた
 めらいもなく、すさまじい財政出動が行われ、中央銀行には膨大な資金供給を迫ったか
 らだ。それは、民間の需要がこれだけ落ち込めば、もはや政府が需要をつくりあげてい
 くしか恐慌を防ぐ道はない。
・1929年の世界大恐慌当時の主流派経済学であった「政府はなにもしない」という政
 策が、正しさゆえに恐慌を深刻化させたように、今回も皆がケインズ政策を実施するこ
 とが「正しい」ゆえに間違いをもたらす可能性がある。
・金融機関の連鎖的父さんの直前という金融危機と、景気の悪化という経済危機をなんと
 しても食い止めようと、ケインズ政策が徹底的に遂行されていくと、最後は中央銀行の
 経営危機と財政破綻という経済破綻に行き着く。しかも、一国だけでなく、世界中が同
 じ危険性をかかえている。これこそソブリン・リスクの正体である。
・日本の平成大不況では、金融機関の不良債権処理を推進するために、ゼネコンや建設業、
 不動産業に潤沢な資金が供給された。そのために、積極的な公共投資が行われた。金融
 機関の不良債権処理と破綻処理でも膨大な公的資金が投入された。おかげで、バブル崩
 壊当初の政府債務残高のGDP比は60%程度だったものが、いまでは180%あまり
 と絶望的な水準にある。ギリシャですら110%程度にすぎないのに、である。
・1990年代の平成大不況は不動産バブルの崩壊によるものであったが、日本だけで発
 生したものであったことがさいわいした。しかも、政府が財政出動を行って景気のテコ
 入れと銀行の不良債権処理を推進したが、その財政出動する資金は国債の増発によって
 まかなうことができた。新規に発行された国債のほとんどは日本国内で消化できたから
 である。
・いま、政府債務残高のGDP比180%と危機的な状況になっても長期金利が上昇しな
 いのは、いまのところ国債は国内で消化できているからである。
・不況がある地域に限られ、ほかの地域では好況が続いていれば、マネーは貿易などを通
 じて回っていく。ところが、今回の危機は、全世界を巻き込んでいるところに事態の深
 刻さがある。
・欧米諸国は、景気対策と金融機関の不良債権処理のために膨大な財政出動を行ない、債
 務残高が急激に増加している。中国も財政出動で景気対策を行っているし、日本は危機
 による輸出減退で景気後退に見舞われたため、絶望的な財政状況であるにもかかわらず
 なお財政出動をしている。
・アメリカは、米国債の半分を世界に購入してもらっている。アメリカがさらに国債を増
 発すれば、国債価格が暴落して、長期金利が暴騰する可能性がある。そんな中でも国債
 を消化させようとすれば、社債の発行や増資などが困難になってしまう。
・今回の危機に対処すべく、財政出動、中央銀行の超低金利と流動性供給などが全世界で
 とことん断行されている。その結果、世界中の国々が財政危機に陥り、国家の信用の危
 機であるソブリン・リスクが深刻化し、いずれ世界中で国家破産が頻発するだろう。
 
蓄積されたマグマは破裂する
・各国政府は世界的な住宅バブルで発生した毒性の強い「ゴミ」を民から官に移し、民の
 需要の急激な落ち込みを官のマネーで埋め合わせることで乗り切っているように見える。
 しかし、その結果、国債が積み上がって「国債バブル」が発生した。
・厄介なのは国債バブルは「茹でガエル」とおなじで、なかなか問題の深刻さを実感でき
 ず、実感できるようになったときにはすでに手遅れになっている可能性が高いことであ
 る。国際的なセイフティ・ネットがあるし、中央銀行の国債引き受けという究極的な方
 法もあるので、国家が突然死することはありえない。つまり、国債の債務不履行(デフ
 ォルト)にいたるまでは少なくとも数年はかかるということである。
・各国の財政赤字の累増による財政危機、国債の激増というすさまじいマグマを世界はか
 かえている。このマグマはいずれ国債の消化不良、国債の債務不履行、国家破産として
 爆発する。
・マグマに火をつけるトリガー(引き金)の枠目をはたすものは何であろうか。世界マネ
 ーの動きを子細に眺めると、それは三つに絞られる、すなわち、投機筋の暗躍、正常化
 を急ぐあまり当局が起こす政策ミス、そしてエマージンブ市場バブルの崩壊、の三つで
 ある。
・このギリシャ国債がデフォルトすれば金儲けできるケースがある。国債をもっていなく
 ても。当該国債についてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を契約している
 場合である。CDSとは、保証料さえ支払っておけば、デフォルトした場合に損失金額
 が保証されるという契約である。すると、国債がデフォルトすれば、国債の額面金額と
 二束三文の時価との差額を手に入る。保証料よりも差額のほうが格段に大きいから、そ
 うなれば丸儲けである。
・つぶせば儲かるなどという「金融商品」が存在すること自体がおかしい。しかし、現実
 はそれが存在している。CDSが世界大恐慌の引き金を引く可能性はおおいにある。
・ただでさえ中間層の没落をふくむ貧富の拡大で民衆に不満感がただよっているなか、危
 機対応で金融機関に多額の公的資金を投入した。さらに悪いことに、アメリカの投資銀
 行幹部なの高額報酬問題が一気にクローズアップされた。かれらにモラルをもとめるこ
 と自体がおかしいのかもしれない。少しは自制しればいいのに、その程度の謙虚さすら
 なく、あまりに巨額の報酬が一般国民の怒りに火を注ぐ結果となってしまった。だから
 今後、金融機関の破綻が生じると、当局は、その金融機関の破産処理を容認するが、正
 確には容認せざるをえない事態になるかもしれない。
・今回の危機は、金融危機が経済危機を招来し、その二つが深刻な財政危機をもたらし、
 ついには国家の信用力の低下であるソブリン・リスクの顕在化にいたる。行き着く先は、
 国家の連鎖破綻という現代の世界恐慌になる。その現実化が一歩一歩近づいているよう
 に思えてならない。
・しょせんバルブというのは、はじめるまでわからない。今は適当に理由をつけて現在の
 株価や不動産価格が正当な評価であると主張する投資家が跋扈しているため、価格が維
 持されているが、今後の動きがどうなるかは誰にもわからない。
・中国は社会問題でも数多く問題や矛盾をかかえている。貧富の格差問題はますます拡大、
 深刻化しており、2009年の都市部と農村部の所得格差は過去最大の3.3倍にいた
 ったという。中国の最低賃金はアフリカ32ヵ国よりも低いという。雇用に関しては七
 百万人以上の大卒者に就職の機会がないともいわれている。汚職問題も増える一方でそ
 の金額も高額化している。「危うい均衡」がいつ崩れるかわからなという危険な状況に
 あるのが中国の現実である。
 
エピローグ 
・日本が独自に取り組むべきことだが、まず、まだ1500兆円近くある個人金融資産を
 思い切って海外投資に振り向ける決断をするべきだろう。日本経済の長期的衰退に伴う
 円安によって購買力が低下することが懸念されるが、こうすればこそヘッジとなる。
・次に、移民政策をふくむ人口維持政策を積極的に進めるべきだろう、待機児童問題は論
 外としても、「子どもを育てることは損」とする意識があまりにも日本国民の間に広か
 ってしまった。これは世代間問題であり、簡単に言えば高齢者への年金を減額しても育
 児・教育と若年者雇用に国民のカネを振り向けるべきである。
 
おわりに
・一度目の悲劇である1929年の世界大恐慌は煎じ詰めれば重化学工業からハイテク産
 業への産業構造を変えるように、人類に大転換を強制するものであった。
・本来なら重化学工業が行き詰まりを見せていたなか、経済・産業システムを根本的に転
 換する対策を積極的にとる必要があった。にもかかわらず、旧態依然たる自由放任と金
 本位制維持のための金融引き締めという、当時は「正しい」政策を続けたので、恐慌が
 とことん悪化した。
・奈落の底に落ちて初めて、人類はようやく管理通過制への移行とケインズ政策の採用に
 踏み切ったのである。 
・今回の世界経済・金融危機でも「正しい」政策が世界各国で行われている。膨大な財政
 出動と中央銀行によるゼロ金利・資金供給がそれである。そして今回も、この「正しい」
 政策がマネー爆弾を爆発させ、それに続く世界恐慌を必然的に悪化させる。
・先進国とエマージング諸国が「地球環境」をめぐって不毛な対立を繰り返しているが、
 ハイテク産業が行き着くところまでいってしまった今、真に地球環境と人間に優しいシ
 ステムへの転換こそが求められている。 
・歴史的に必然である世界恐慌というステップを踏んだのちに初めて、人類は「地球環境」
 と「人間」を慎重する態勢に移行するのではないだろうか。