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先の大戦での日本の大本営は敗けるということを絶対認めなかった。敗けて撤退する場合
でも、「転進」という言葉に言い替えて戦争と続け、国家滅亡の危機を招いた。これと同
じような状況が今の政治でも起きているのではないだろうか。
安倍政権における「アベノミクス」や黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和」がそうだ。す
でに始めてから3年半も経つというのに、その成果は一向に見えていない。それなのに、
「まだ道半ば」とか「さらに安倍エンジンを最大限にふかして」などという言葉を使って、
失敗であることを認めようとせず、どんどん泥沼に入りこんでいる。撤退ということがで
きない日本組織の弱点がここに再現されているのだ。まさにバック・ギアのない、前に進
むことしかできない暴走車だ。このまま突き進むと、先の大戦とおなじように国家滅亡と
いう事態に直面する可能性すらあるのではないのか。
筆者の考えでは、今の日本の目のくらむような借金でも、国が破綻することはないという。
なぜならば、国は「徴税権」を持っており、いざとなったら、国民からたくさん税金を取
ればいい。国はいくら借金があっても、国民からたくさん税金を取れば穴埋めできる、国
が破綻することはないというが、それを破綻と言わずして何というのだろうか。「国残っ
て民滅ぶ」ということが我々を待ち受ける未来ということなのか。
この本は、日本は財政破綻しないという大前提で書かれている。そうであるなら、それは
本当に幸運なことだ。この大前提が崩れないことを願うばかりである。

この10年間で何が起きるのか
・大まかに言えば、東京オリンピックが開催される2020年までは、日本の景気は横ば
 いもしくは良い状況で推移していくでしょう。そして、オリンピックが終わる2020
 年から景気は急激に悪化する可能性があります。なぜかと言えば、2020年までは、
 国の金融政策など様々な面で景気の後押しがあるのですが、2020年頃から、無理な
 金融政策はほころびが見え始めてくる可能性があるからです。
・拡大する東京オリンピックバブルを下支えしているのが、日銀が実施している「異次元」
 の金融緩和です。かつてないほどの大規模な金融緩和という意味で、日銀は、当初この
 「異次元」金融緩和を2年で終わらせる予定でした。ところが、現状では、2013年
 にスタートしたこの金融政策は、オリンピック開催まで続くかもしれないという雲行き
 になっています。
・日本の金融政策では、日本国際の約3分の1(2015年9月時点で312兆円)を日
 銀が持つという、まさに「異次元」の状況に突入しています。この政策は、2年で功を
 奏し、世の中の不況は消え去るはずでした。そして、確かに一時的には日銀のアナウン
 ス効果で曇った景気に薄日が射しました。ところが、こうしてどんどん銀行にお金を流
 す金融緩和を2年以上続けているにもかかわらず、ここに来てその効果が見えなくなっ
 てきています。
・お金の量がどんどん増えると、お金の価値が下がってモノの値段が上がるので、庶民は
 モノが値上がりしないうちに買っておこうとして、消費が活発になるだろうというのが
 日銀の読みでした。ところが、この読みが完全に外れてしまっているのは、日本経済全
 体が需要不足に陥っているからです。簡単に言うと、給料が上がっていないのに、税金
 や社会保障料などがどんどん上がっているので、家計の消費する力が弱くなってモノが
 売れない。モノが売れないなら、企業は、工場をつくったり人をたくさん雇ってモノを
 つくろうという意欲がモテない。つまり、供給能力に需要が追いついていないというこ
 とです。
・本来なら日銀が銀行に流すお金は、銀行から企業に貸し出さなければなりませんが、企
 業が銀行から積極的にお金を借りようとしないので、お金は銀行の中に滞ったままにな
 っています。こうしたお金を、銀行は当座預金というかたちで日銀に預けていますが、
 この当座預金の残高は、2013年3月には約58兆円だったのに、なんと2015年
 10月末時点ですでに約247兆円となっています。日銀は、1年で80兆円の国債を
 買い入れ、その代金を銀行に流しています。そのいっぽうで、この2年半で約189兆
 円も銀行の当座預金が増えているということは、銀行からほとんどお金が出て行ってい
 ないということになります。
・日銀は個人の常識を、完全に見誤っています。モノの値段が上がえるなら、「値段が上
 がる前にモノを買っておこう」とみんなが思うはずだというのが、日銀の読みですが、
 実際には、「給料が上がってもいないのにモノの値段ばかりが高くなるのだから、もう
 買うのは最小限にしておこう」ということで消費はますます減退しています。だとした
 ら、中央銀行としては「今までの金融政策は誤りでした」と早々に白旗を揚げて方向転
 換すべきでしょう。ところが、「アベノミクス」として鳴り物入りではじめた政策だけ
 に、方向転換ができない。
・今の日銀の政策は、アベノミクスの目玉政策なので、成功するまでやめるわけにはいか
 ない。成功すればいいのですが、今の状況だと安倍政権が続く限りは続けざるを得ない
 でしょう。
・自民党総裁に任期は2期6年が上限ですから、本来なら2018年には安倍政権は退陣
 するはず。けれど、党内にはすでに3期9年に伸ばすべきだという声が上がっています。
 そうなると、日銀制作も続行される可能性があります。黒田総裁の任期は2018年ま
 でですが、安倍政権としてもアベノミクスの旗をおろすわけにはいかないので、安倍首
 相退陣まで一緒に続投ということになる可能性があります。つまり、「異次元」の金融
 緩和は、東京オリンピックまで続く可能性があるということです。
・かつて日本は、第二次世界大戦中に、負けて撤退することを「転進」と言い替え、負け
 てても勝ったという大本営発表で突き進み、手痛い打撃を受けました。どうも、強力に
 推し進めた政策というのは、一度始めると後戻りできない傾向にあるようです。
・私たちの年金積立金は、2015年6月末現在で約141兆円あります。以前は、積立
 金のうち日本株で運用できるのは15%まででしたが、2014年10月にルールを変
 えて25%まで運用できるようになりました。25%といえば35兆円。実際には25%
 からプラス・マイナス9%の増減が容認されるので、目一杯買い入れれば34%の約48
 兆円までは日本株を買うことができます。しかも、日銀も株を買っています。こちらは
 「異次元の金融緩和」で、インフレになるまで年3兆円の株を買い続ける方針。 
・「官製相場」で株価は上昇していますが、しかもこの状況は、東京オリンピックが終わ
 るまで続くことになりそうです。なせなら、ここまで膨れ上がってしまった「官製相場」
 をやめたら、そのとたんに市場が大暴落するので、やめるにやめられないからです。
・個人的には、東京オリンピックが終わるまでには、ハイパーインフレどころかインフレ
 に転換するのも難しいのではないかと見ています。なぜなら、多くの国民が肌で感じて
 いるように、収入が増えない中で、モノの値段だけが上がり、生活が徐々に苦しくなっ
 てきているからです。そうなると、当然ですが、家計は出費を減らす方向に動くので、
 モノが売れず、企業の利益も増えにくくなっていくでしょう。今、モノの値段が上がっ
 ているのは、円安で原材料の仕入れ値が上がっているからで、値上げしたぶん企業が儲
 かってるというわけではありません。 
・政府は、2014年の春に、東証1部上場企業の46.7%が賃上げしたと発表。アベ
 ノミクスの成功を印象づけました。確かに、約半数の企業が賃上げしたというのはすご
 い数字ですが、実は、これは経済産業省のアンケート調査で、アンケートに答えた企業
 の中から賃上げした企業の割合を出したものです。そもそもこのアンケートでは、回答
 しなかった企業が約半数もありました。なぜ、回答しない企業が半数もあったのかとい
 えば、甘利経済再生担当大臣が、利益が出ているのに賃上げしない企業はけしからんか
 ら、社名を公表すると脅したからです。ですから、回答しなかったところは、ほぼ賃上
 げしていない企業と思っていいでしょう。つまり、回答が無かったところも含めて分母
 として賃上げした企業の割合を出せば、東証1部上場企業でも賃上げしているのは2割
 程度といったところでしょう。
・グローバル化された中では、日本にこだわらず、コストの安い現地に工場をつくってモ
 ノを生産したり、人を雇って利益を増やそうとします。こうした企業にとって、給料は
 最大のコスト。ですから、グローバル化している企業のもっとも合理的な選択は、最大
 のコストである給料を少しでも下げることなのです。そのために、社員の非正規化や、
 仕事の割安な外部発注化を積極的に進めます。しかも、グローバル化で、海外の企業と
 も戦わなくてはならないので、体力を増強するために、企業の貯金とも言える内部留保
 を貯め込みます。加えて、グローバル化した企業では、株主が強い発言権を持つので、
 株主にしれなりの利益の支払いをしなくてはならず、これが従業員の給料よりも優先さ
 れます。結果、会社が儲かっても、従業員の給料は上がらなくなるということです。
・東京オリンピックバブルは、5年の間に景気を冷え込ませる大きな要素を2つ抱えてい
 ます。それはマインナンバー制度の導入と消費税の10%へのアップです。マインナン
 バー制度を使えば、国は洩らさず税金や社会保険料を徴収できるので、財政上のメリッ
 トは大きいように見えます。けれど、企業にとっては、導入に手間ひまがかかる割には
 メリットがなく、むしろ源泉徴収票などいままで使っていた帳票類が使えなくなったり、
 企業から情報が漏れたらペナルティを受けるかど、デメリットのほうが目立つ制度です。
 特に、多くの人を雇っている小売業や飲食業、小規模で経営している中小企業などは、
 新たに厳しい情報管理が求められるので、セキュリティーシステムにかけるコストもバ
 カにならず、そのぶん利益が減ってしまうことに繋がりかねません。
 消費税については、2015年10月から現行の8%が10%に上がる予定でしたが、
 これは2017年4月までに先延ばしされました。ただし、先延ばしが決定された際に、
 契機の状況を見て上げるかどうかを判断するという附則に景気弾力条項が削除されまし
 た。ですから、ほぼ、確実に上げると思ってもいいでしょう。
・残念ながら日本には、次世代を担う成長戦略がありません。TPPの効果は限定的でし
 ょうし、2015年版の成長戦略は2014年版の焼き直しに終始しました。しかも、
 安倍首相は、経済政策よりも外交・安保政策に前のめり。次世代エネルギーの開発の芽
 も、原発再稼働でつぶれました。今後、アベノミクスの最大の成長戦略となりつつある
 のが、東京オリンピックです。ただ、オリンピックバブルは、オリンピックの終焉とと
 もに消えます。しかも、再利用できない膨大な箱モノと多大な借金を残して。東京オリ
 ンピックバブルが終わると、それまで見えなかった、経済の様々なほころびが表面化し
 始めることでしょう。
・株式相場で言えば、明らかに、政府系の資金が主導し、7割を占める海外投資家が相場
 を盛り上げています。海外投資家にとっては、これほど安全な市場はないでしょう。な
 ぜなら、相場が下落しても、政府系の資金が大量に買い支えにまわるので、マーケット
 が奈落の底に落ちていく心配がないからです。   
・いったんマーケットに入った年金などの政府系のお金は、儲かったからといって簡単に
 マーケットから引き出すわけにはいきません。なぜなら、「政府が売りに走った」とい
 う話がマーケットに伝わった途端に、政府の方針が変わったということで海外投資家な
 ども我先に株を売って逃げ出そうとする可能性があるからです。こうした相場で、最後
 にババを引くのは、一番最後まで残っているもの。つまり、私たちの税金や年金、預金
 を使った政府の投資ということになるでしょう。
・いまの日本経済は、モノの値段が上がっているにもかかわらず、消費が活発にならず、
 いまだデフレという状況が続いています。いわゆる「良いインフレ」には到底なりそう
 もなく、その逆に向いているということです。ところが、消費の冷え込みがますます厳
 しくなっているにもかかわらず、日銀の黒田総裁は2%の物価上昇に固執し、アベノミ
 クスの旗を降ろすまいとしています。さらに、オリンピックまでは安倍首相、黒田総裁
 ともに続投する可能性があるので、そうなると、歪んだ官製相場は、東京オリンピック
 が終わるまで続くということになります。仮に、東京オリンピックまでの5年間に年間
 80兆円の国債を日銀が買い続けるとしたら400兆円。日本の借金といわれる日本国
 債の半分近くを日銀が買い取るという、まさに「異次元」で異常な事態が起きるという
 ことです。そうなると心配なのが、日本国債への信任が崩れて金利が上昇し、「悪いイ
 ンフレ」が起きるのではないかということ、こうした状況でよくいわれるのが、極度に
 貨幣価値が下がるハイパーインフレの危険性です。
・確かに、日本でも、第二次世界大戦で敗戦した後に、金利が急上昇し、激しいインフレ
 に見舞われました。政府の力も弱まり、一時は年率200%くらいの物価上昇に見舞わ
 れています。ただ、そうなったのには、理由があります。日本は、戦争で食料をはじめ
 としてあらゆる物資を使い尽くし、しかも男は戦地に駆り出されて生産力も下がり、物
 が生産できずに圧倒的に欠乏して供給不足の状況に陥りました。生産したくても工場は
 焼け野原となり、食料は一朝一夕には生産できない。そんな圧倒的な供給不足があった
 からこそ、モノの値段が上がりました。では、今はどうでしょうか。モノ余りで供給過
 多な状況が続いています。日銀が一生懸命にインフレを起こそうとしても、モノ余りで
 すからなかなかインフレにはならない。こうした状況で、戦後のような極端な供給不足
 の状況に陥るとはとても考えられません。
・財政破綻した国のインフレ率を見ると、アルゼンチン(1990年)が1343.9%、
 ブラジル(1990年)が1621%、ロシア(1998年)は84.4%。ハイパー
 インフレの経済学的な定義となっている1万2875%には及びませんが、庶民生活を
 苦境に陥れるには充分な数字と言えるでしょう。アルゼンチンやブラジル、ロシアなど
 を見ると、共通点があります。それは、軍事独裁政権や国体の崩壊など、政治的な激動
 の中で財政破綻が引き起こされているということです。そういう意味では、政治的な安
 定が続くいまの日本では、不満はあってもこれが流血を招くような劇的な政治体制の変
 化になることは考えにくいでしょう。 
・日本の国債残高は1053兆円あり、数字だけ見ると、目のくらみそうな借金です。け
 れど、注目したいのは、この国債を誰が持っているかということ。よく、「日本はギリ
 シャよりも国の借金が多いので破綻する」という人がいますが、ギリシャと決定的に違
 うところは、誰が国の借金である国債を持っているかということ。日本の国債は9割以
 上を政府の目の届く身内が持っていますが、ギリシャの国債は8割をフランスやドイツ
 など海外の人たちが所有しています。ギリシャは取り立てが厳しい海外の金融機関に借
 りているということです。海外の金融機関となると、危ないとなったら容赦なく返せと
 言われるので、返済ができずに国は破綻する可能性があります。
・また、国債は、個人の住宅ローンのように、毎月きちんと元金と利息を合わせて払わな
 くてもいい金融商品なのです。利息さえ払えればなんとかなるのですが、実は、このこ
 とを知らない人が意外と多いのです。 
・日本の国債には、60年かけて返せばいいという「60年償還ルール」があります。こ
 の「60年償還ルール」は、そもそも建築物が60年しか持たないところからきたもの。
 国が決めているルールです。ですからこれを改定し、「最近は、技術も発達していて建
 物も100年は持つ」ということにして、「60年償還ルール」を、「100年償還ル
 ール」に延ばすことも不可能ではありません。もしこうしたルール変更を行えば、さら
 に国債残高が増えても、支払い負担は軽くなります。また、日本国債の約3分の1を持
 っている日銀に、国は利息を支払う必要がありません。こういうと語弊があるので正確
 に記すと、日銀に支払われた利息のほとんどは、日銀の利益として国庫に返納されます。
 つまり、日銀が大量に日本国債を買うと、政府は実質的には利払いが減り、借金が減っ
 ているのとおなじ効果になります。
・ただ、だからといって、中央銀行が大量に国の借金を肩代わりするという不自然な状況
 を永遠に続けられるかといえば、そえほど甘くはないでしょう。今の日本が置かれてい
 る状況は、過去の栄華を誇った老舗に似ています。来る客は減っているので売り上げは
 落ちていて、従業員も減っているので業績も上がらない。けれど、身内にはまだお金を
 持っている人がたくさんいるので、借金もできるし、羽振りの良い時に貯めた財産も切
 り崩せる。それがあるうちは、屋台骨が傾くことはないといったところでしょうか。
・しかも、日本には、まだ経済破綻などしなくても大丈夫な「伝家の宝刀」が残っていま
 す。それは、徴税権という、国民から税金を取る権利です。どんなに国の借金が多くて
 も、税金さえ国民からたくさん取れば、借金はいくらでも穴埋めできますから、国は破
 綻しません。 
・単に、社会保障のためにマインナンバーという国民総背番号制度を導入するなら、住基
 ネットの拡大バージョンでいいはずです。けれど、わざわざマインナンバー制度を導入
 したのは、最終的には銀行や証券といった金融機関とつなげることで、企業や個人の収
 入や財産などを漏らさず政府が把握したいということでしょう。
・企業の内部留保は2014年度は過去最大の354兆円。日銀の資産循環統計によれば、
 2015年3月末の家計の金融資産は、はじめて1700兆円を超えました。つまり、
 企業と個人を合わせて2000兆円以上の資産が、民間に眠っているということです。
 この資産をしっかり捕捉できれば、200兆円くらいのお金はすぐに出てくるでしょう。
・マインナンバー制度は、税金も社会保障料も、完全に捕捉します。税金では、ありとあ
 らゆる税金逃れが摘発できるだけでなく、企業や個人の財産も正確に把握できるように
 なるので、財産課税などがしやすくなります。そうなると、驚異的に税収は上がるでし
 ょう。 
・さらに社会保障面では、保険料などの徴収漏れが無くなります。日本では、年金や健康
 保険には、全員が加入しなくてはならないことになっています。ところが、実態を見る
 と、国民年金は4割しか徴収できておらず、6割の人は払っていません。さらに厚生年
 金も、日本年金機構によれば徴収されるべき企業や事業所は約250万カ所あるにもか
 かわらず、しっかりと厚生年金保険料を納めているのは、約180万カ所。つまり、3
 割の企業や事業所は、払っていないということです。これは、健康保険も同じで、収納
 率は90.42%。約1割の人が、保険料を払っていないのです。
・こうした未納を、マインナンバーでしっかり捕捉し、払わない人の財産を差し押さえす
 れば、社会保険料の徴収額は飛躍的に上がるでしょう。つまり、マインナンバー制度は
 個人や企業の消費を停滞させる要因になるという「悪い面」がある一方で、国家財政を
 増やし、破綻のリスクを減らす「良い面」もあるわけです。
・2020年までは東京オリンピックバブルで景気はそこそこ良いけれど、それが終わっ
 た途端に景気は急激に悪化するでしょう。この景気については、実感できるのはごく一
 部の人で、ほとんどの人は実感できないかもしれませんが、東京オリンピックバブルが
 破綻した後の悪影響だけは、確実に受けることになるでしょう。ただし、それで国家破
 綻してハイパーインフレになるのかといえば、今の日本の状況を見ると、まずあり得な
 いでしょう。どう考えても、国が破綻するような状況にはなりそうもありません。
・東京オリンピックのために多額の国家予算が使われますが、その間、私たちの生活を支
 える社会保障費は削られ続けることになっています。これから高齢者が増えていくので、
 社会保障費も自然増で上がっていくのですが、その自然増分を削るということです。そ
 のぶん、サービスは低下する可能性があります。
・そんな中、2017年度4月には消費税が10%にまで上がる予定。実質賃金が上がら
 ない中での社会保障費の削減や増税で、生活はますます苦しくなりそうです。すでに、
 オリンピックが終わったら都心の地価が暴落することは、不動産業者なら誰もが織り込
 み済みのこと。  

この10年を乗り切る資産防衛術
・この10年の間に予測できる最も大きなことは、東京オリンピック景気がやってきて、
 それがバブルとなってはじけ、再び不況がやってくることだ。同じバブルでも、平成バ
 ブルと東京オリンピックバブルは、あきらかに違います。東京オリンピックバブルでは、
 仕事も金も都心の一部に集中し、地方の小さな企業などは潤うどころか疲弊する可能性
 のほうが大きいでしょう。みんなの収入が増え、世の中全体が楽しく浮かれるといった
 バブルにはなりそうもありません。
・平成バブルでは、バブルがはじけても10年弱は主として働く男性の給料がまだ上がっ
 ていたので景気の良さの余韻がありましたが、今回のオリンピックバブルは、給料は多
 少上がってもそれ以上に物価や税金、社会保険料などの負担が増えるので、多くの人が
 バブルを実感することはないでしょう。しかも、グローバル化が進んだことで、貧富の
 差も広がりました。平成バブルでは、多くの糸が豊かさを享受しましたが、東京オリン
 ピックバブルでは、豊かさを充分に感じることは、土地や株などを持つ一部の金持ちに
 限られそうです。
・今回のバブルでは、平成バブルのように不動産の価格上昇が、地方にドーナッツ状に伝
 播していくということはないでしょう。なぜなら、オリンピックが都心で開催されるた
 め、土地のニーズが都心に集中しているからです。そして、不動産業者のほとんどは、
 オリンピックが終わったら土地は大暴落すると思っているので、その前に値上がりしや
 すく売り抜けやすい土地、つまり都心の土地にしか目が向いていないからです。
・マンションを販売する時の土地価格には、消費税はかかりません。ただ、新築マンショ
 ンなどは、建物価格に消費税がかかります。ところが、中古マンションは、だいたいは
 個人対個人の取引きになるので、個人間の取引には課税されないという消費税のルール
 により無税のものが多くなっています。割安感と同時に、こうしたことも考慮され、中
 古マンションが人気となっています。だとすれば、今から都心の中古マンションを投資
 用に買っておいたほうがいいのでしょうか。結論からいえば、資金が潤沢にあるなら物
 色することも悪くないでしょうが、普通の人が投資して儲かるような状況ではないでし
 ょう。
・マンションは、売ったり買ったりするとそれだけで多額の手数料を業者に支払わなけれ
 ばなりません。特に中古の場合には手数料が高く、買ってから売ると、業者に支払う手
 数料だけでも6%プラス12万円かかります。さらにそこに登記料その他の費用がかか
 ってくると、軽く購入価格の10%は超えます。また、不動産の売り買いは、タイミン
 グが大切。せっかく買っても、売りのタイミングを逃すと大変なことになり、老朽化し
 ていく物件に、ただただローンを返していかなくてはならないことになってしまうかも
 しれません。
・東京オリンピックが終わるまでは「官製相場」が続く可能性があります。日銀、ゆうち
 ょ銀行、かんぽ生命という強力な相場の支え手も控えています。中国経済が破綻すると
 いった大きな外的要因や、国内で大災害が起きるなどという内的な大きな要因があれば
 別ですが、そうしたことがなければ、相場自体がボロボロに崩れるという可能性はきわ
 めて少ない。  
・株式相場の約7割を占める海外勢などは、日本政府が下支えするのをいいことに空売り
 などで揺さぶりをかけて儲けようとするので、株価そのものは乱高下しやすくなります
 が、下がればまた買いが入る相場ですから、下がりっぱなしになる可能性は低いという
 ことです。
・株に興味があり、それなりに潤沢な資金を持っていて、それを失っても生活に打撃を受
 ける可能性が少ない人なら、投資の勉強のつもりで参加してみるのは面白いかもしれま
 せん。ただ、貯金もそんなに潤沢にあるわけではないし、日銀が金融緩和したとしても
 自分にはチンプンカンプンというような人が、なけなしのお金を投じてわざわざ参加す
 るような相場ではありません。失ってもいいお金でギャンブルするには面白い時期かも
 しれませんが、元金を少しでも失いたくないという人は、投資などせずに、現金でしっ
 かり持っているべきでしょう。
・確かに、インフレになれば、貨幣の価値は相対的に目減りします。ですから、金融商品
 を買うということも必要になってくるかもしれませんが、少なくとも、今はまだデフレ
 です。インフレ対策を考えるなら、日銀がデフレ脱却宣言をして、日本が本格的にイン
 フレに突入してからでも遅くはないでしょう。インフレは一朝一夕には起きません。朝、
 目が覚めたら、物価がとんでもないことになっていた・・・なんてことはありません。
 対策はインフレの兆しが見えてきてからでも間に合うのです。実現するかどうかわから
 ないインフレに怯えるよりも、デフレの間は、少なくともデフレで価値が上げる現金を
 しっかりキープしておくべきではないでしょうか。
・1997年のアジア通貨危機で経済破綻した韓国は、破綻と同時に急激なウォン安に見
 舞われ、破綻前には13%だった住宅ローン金利が、27%まで上がりました。アジア
 通貨危機の直前には700ポイントだった韓国総合株価指数は、つるべ落としに300
 ポイントまで下がりました。こうした中で最も儲けたのは、誰だったでしょうか。意外
 に思うかもしれませんが、預金をしていた人でした。金利の上昇で、定期預金金利がい
 きなり31%まで高騰しました。そのまま預金をし続けても高い金利が得られて儲かり
 ましたが、預けた預金を銀行から引き出して、暴落した株や土地を安値で買った人たち
 は、さらに大儲けしました。ちなみに、1998年に300ポイントまで下がった韓国
 総合株価指数は、2000年には、1000ポイントまで回復し、2008年5月には
 1900ポイントをつけました。韓国が経済破綻した後にまんべんなく韓国の株を買っ
 た人は、持っている株が2年で約3倍になったということです。つまり、「国の経済が
 破綻すれば、ハイパーインフレに襲われて紙幣が紙くずになるので、借金してでもイン
 フレに強い株や土地を買っておいたほうがいい」という話は、少なくとも韓国の経済破
 綻には当てはまらなかったということです。
・急激なインフレに対して最も弱いのは借金で、株や土地も売られるので価格が下落する
 ということは覚えておいたほうがいいでしょう。日銀の政策目標が達成されて緩やかな
 インフレになるにしろ、逆に国が財政破綻してハイパーインフレになるにしろ、あわて
 て借金までした株や不動産などを買うことはないということです。デフレが続くにしろ
 インフレが来るにしろ、今、しておかなくてはいけない一番大切なことは、借金を減ら
 しておくということです。
・安心な老後を迎えるには、今から老後のために、投資信託などをコツコツ買い続けたほ
 うがいいでしょうか。それとも、現金をコツコツ貯めたほうがいいでしょうか。正解は、
 現金でコツコツ貯めておく。なぜなら、現金だと、その時々の状況に合わせて何にでも
 使うことができるからです。
・もちろん、投資信託も、お金が必要な時に売れば現金化できます。けれど、投資商品は、
 売らなくてはならないときに値上がりしているとは限らない。もし、目減りしているの
 に、現金が必要で売らなくてはならないとなれば、大損しるかもしれません。大切なの
 は、投資を考える前に、借金のない家計にしておくことです。特に、この10年間は、
 日本経済が激動しそうです。良くなるにしろ悪くなるにしろ、借金が少ない人は身軽で
 すから、素早い対応ができるはずです。   
・外貨預金は、普通の預金と同じですが、違うところは2つあります。ひとつは、預ける
 お金を外貨に換え、引き出すときには日本円に換えなくてはいけないので、必ず為替の
 影響を受けるということ。そして、もうひとつは、出し入れに手数料がかかるというこ
 とです。為替しだいで「大儲け」することもあれば「大損」することもあるのが外貨預
 金です。為替の影響を必ず受けるのですから、ギャンブルだと思ったほうがいいでしょ
 う。ですから、外貨預金をするなら、無理のない損をしても良い金額で、生活に影響を
 きたさないようにしましょう。
・「金」の価格は世界共通ですが、その時々で変わります。しかも、価格がドル建てなの
 で、日本で販売されている「金」は為替の影響を受け、円安になれば高値になるし、円
 高になれば価格が下げる傾向にあります。さらに、「金」は、買う時と売る時に手数料
 と消費税がかかります。この料金は、売買レートに含まれます。
・財産としての「金」は、長い目で見ればインフレに強いのは確かです。長期間持ってい
 ても資産として一定の価値をキープすると考えられます。ただ、相場商品なので、価格
 変動が激しい側面があります。そして預金や株と違って、「金」は持っていても利息も
 配当もうみません。ですから、「金」を買うなら、短期で売り買いするのではなく、子
 孫の将来のために買っておくというような長期的な資産として、余裕の資金で買うべき
 でしょう。ちなみに「金」の短期的な売り買いで儲けたい人は、「金ETF」を購入す
 るという方法もあります。
・これから10年の間に、不安が少ない家計にしておくためには、借金を減らしておくこ
 とが一番大切です。そしてあと2つ、やっておきたい大切なことがあります。ひとつは、
 家計のダウンサイジング。もうひとつは、家計全体の収入を増やしておくことです。家
 計のダウンサイジングとは、ひとまわり家計のサイズを縮めて、そのぶん出費を減らす
 こと。無理な目標は達成しにくいので、とりあえず、今の家計を1割ダウンサイジング
 することを目標としてはどうでしょうか。家計のダウンサイジングが必要な理由は、2
 つあります。ひとつは、家計をダウンサイジングすることで貯蓄する余裕が生まれるこ
 と。少しでも貯蓄が増えていれば、将来への家計の安定度がグンと増します。もうひと
 つの理由は、10年後に今の収入が減っても、慌てなくてすむということです。10年
 後、大部分の方は、収入が増えているよりも減っている可能性のほうが高いのではない
 でしょうか。
・遺族年金があれば生命保険の死亡保障を削れるし、健康保険に加入していれば入院費は
 それほどかからないので生命保険の医療保険は削れます。ところが、生命保険会社の外
 務員の言うがままに保険に加入しているという人が多く、実はそんなにたくさんの保障
 は必要ないのに、不安を煽られて、無駄なお金を支払っているというケースが多々あり
 ます。 
・サラリーマンの場合、奥さんや幼い子どもをおいて他界したら、子どもが18歳になる
 まで月々15万円前後の遺族年金が出ます。会社から、まとまった金額の死亡退職金も
 出るところがほとんど。さらに、住宅ローンも本人名義で組んでいると、多くは団体信
 用生命保険で残りのローンが相殺されます。つまり、子どもが学校を卒業したら、生命
 保険の死亡保険は必要なくなるので、削ることができるということです。
・いまや、1人が1台、携帯電話を持っている時代。家族全員が携帯電話を持っているの
 に、家に固定電話が必要でしょうか。使っていなくても、毎月基本料金などを負担しな
 くてはなりませんから、、見直し余地があります。
・2015年5月、公益財団法人総合研究開発機構が、公的年金の支給開始年齢を現行の
 65歳を67歳から68歳に引き上げることを提言。加えて、70〜74歳の男性の就
 業率を現在の30%から70%に、女性は現在の20%から60%に引き上げる目標を
 示しました。すでに、日本よりも平均寿命が短いアメリカやドイツが67歳支給を(ア
 メリカは2027年、ドイツは2029年から)決めているので、これも追い風になっ
 ているよう。仮に支給年齢の引き上げが決まると、引き上げは段階的に行われるので、
 今の50代の多くは逃げきれる可能性があります。40代はたぶん67歳支給というこ
 とになるのではないでしょうか。
・2015年4月から、「マクロ経済スライド」という制度が導入され、年金支給額の実
 質カットが始まりました。今まで、日本の年金は「物価スライド」で、物価や賃金が上
 がればそのぶん年金の支給額も上がりました。けれど、少子高齢化が進み年金受給者の
 数が増える中で、何とか年金の支払額を抑えなくてはならないということになりました。
 そこで、2004年の年金改革で、物価や賃金がインフレで上昇しても、今までのよう
 に年金スライドして増えないという制度ができました。これが、「マクロ経済スライド」
 です。具体的には、実際の物価上昇よりも0.9%、支給される年金額が少なくなりま
 す。
・厚生労働省が発表した厚生年金の改革例では、夫が1938年度以降生まれ、勤続40
 年、平均月収42万8千円、妻が専業主義の場合ご家庭の平均支給額は、夫婦合わせて
 月22万1507円の年金になります。2014年度は21万9066円だったので、
 一見すると月2441円増えています。しかし、「マクロ経済スライド」もデフレ調整
 もなかったら、あと6000円くらいは増えているはずでしたから、年間にすれば7万
 円以上実質的には年金がカットされたのと同じことになります。
・28年後の年金額は、月額24万4千円となっています。月24万4千円なら、現在の
 約22万円よりも増えているのでうれしい気がします。けれど、28年後ですから、こ
 の頃には働く世代の給料も1.39倍に増えている前提で、今の価格に置き換えるとす
 れば月18万円くらいになってしまいます。つまり、厚生労働省の試算の、「標準的な
 ケース」だと、28年後には実質的な年金支給額が、今よりも月4万円ほど減っている
 かもしれないということになります。
・ただ、これはあくまで厚生労働省が都合よく作り上げている数字で、年金支給額は、加
 入期間や現役時代の給料、家族構成、社会状況などで変わります。すでに、サラリーマ
 ンの実質賃金は3年以上下がり続けていますし、最近は、40年間フルに勤め続けてる
 ことも難しいケースが出てきています。こうしたことを考えると、厚生労働省が出して
 
 と下がっていくことを覚悟しておいたほうがいいでしょう。このように年金は、あまり
 にも不確定要素が多すぎて、実際には将来のことはわからないし、計算しても無意味か
 もしれません。ほぼ確実にわかっているのは、今後は支給額がかなり目減りするだろう
 ということだけです。 
・「年金が破綻する」ということは、さまざまな本で書かれています。けれど、もらえる
 年金額は少なくなるでしょうが、年金制度そのものは破綻しません。なぜなら、年金は、
 「保険料を上げる」「支給額を下げる」「支給年齢を上げる」という3つの方法を繰り
 返せば、財政は健全化するからです。
・今まで、日本の年金制度は、財政健全化のために「保険料を上げる」「支給額を下げる」
 「支給年齢を上げる」という3つのことを繰り返してきました。しかも、「これで大丈
 夫」という年金の約束は、改革のたびに毎回破られ続けてきました。日本の年金制度を
 家に例えると、老朽化してボロボロなのに、取り壊して建て替えることができない古家
 のようなもの。なぜ、建て替えが不可能かと言えば、多額の借金があるからです。年金
 という家は、今まで利権まみれの増改築を繰り返し、そのたびに多額の借金を重ねてき
 ました。そのため、家そのものに抵当権がベタベタ付いていて、その借金を全額返さな
 いうちは、家そのものを壊すことができないし、壊せないので新しい家も建てられませ
 ん。その借金とは何か。それは、年金を受け取る権利がある人たちにこれを支払うと約
 束している年金です。日本の年金制度では、25年加入すると年金をもらう権利が発生
 します。25年以上加入していたら、国は、将来必ず年金を支払わなくてはなりません。
 この、必ず支払わなくてはならない年金の多くが過去勤務債務と言われるもので、なん
 と830兆円もあります。しかも、この過去勤務債務から、国庫負担や現在ある年金の
 積立金など払えるお金を支払ったとしても、550兆円足りないとの試算が出ているの
 です。年金加入者は約6700万人いますから、この現在の加入者で550兆円を支払
 うとなると、1人820万円、つまり、今の年金をやめたら、積立金を分けるどころか、
 1人820万円ずつ払わなくてはならなくなるのです。妻と2人なら、約1600万円
 になりますから、多くの人はこんなお金はとても支払えないでしょう。今の年金という
 家は、不安定きわまりない耐震偽装の中古住宅のようなものです。取り壊しできない以
 上、なんとか騙し騙し住み続けるしかないというのが現状です。こうした状況をもって
 「年金が破綻している」と言うのは、当たらずとも遠からずと言えるかもしれません。
・日本の年金は、すでに建て替え不可能な欠陥住宅で、「保険料を上げる」「支給額を下
 げる」「支給年齢を上げる」という補強を繰り返しながら、何とか建っている古屋です
 が、年金が将来もらえるか、もらえないのかだけを考えると、国が破綻しない限り、年
 金がもらえなくなるということはないでしょう。
・「この国は借金だらけなので、国が破綻し、ハイパーインフレになって、年金も紙切れ
 同然の価値になる」という方がいます。これについては、国が破綻する可能性はきわめ
 て少ないと言えるでしょう。 
・日本の年金は、25年以上加入していると、年金を受け取る権利が発生します。日本の
 年金に関する法律が機能している以上、これをゼロにすることはできません。もし、そ
 んなことをしたら、さすがの国も耐えられるはずがありません。ちなみに、デフレのと
 きに払いすぎていた年金支給額2.5%を国が2年半かけてカットしましたが、それに
 対しては全国で1500人が憲法違反だとして国を相手取って訴訟を起こしています。
 2.5%のカットでも訴訟が起きるのですから、年金をゼロにするなどということにな
 ったら、政権がひっくり返る程度では済まないかもしれません。 
・2016年10月からは、パートでも週20時間以上、月の賃金8万8千円以上(年収
 106万円以上)、勤務期間が1年以上、会社の規模が従業員501人以上なら、会社
 の厚生年金、健康保険に加入しなくてはいけなくなります。厚生労働省は、「年金の加
 入者を増やしても、将来的にはその人たちにも年金を給付しなくてはいけないのだから、
 財政的にはほとんど貢献しない。多くの人の老後が安定するようにと考えてのこと」と
 いいます。けれども、今まで行き当たりばったりで目先のことしか考えてこなかった役
 人に、急に長期的なビジョンを語られても、素直に受け止められないのが普通でしょう。
 パートは30〜40代が多いので大量に年金に加入させても、もらえるのは65歳以上
 なので年金の支払いはまだ先でいい。しかも、厚生年金は労使折半なので、企業の年金
 支払い負担は増えますが、インフレが進めば、政府の支払い額は減る。しかも、それま
 でには自分たちはリタイアしているので、責任は取らなくていい。そんな役人の腹積も
 りが見え隠れするような気がします。  
・2017年からは、年金の受注資格が、現在の25年加入から10年加入に引き下げら
 れる予定です。これは、消費税の引き上げとセットで低所得者対策ということで行われ
 ますが、それだと、10年しか年金に入らなくていいという若い人が増えて年金の支え
 てが減りそうな気がして心配です。10年で年金がもらえるようにするには無年金者対
 策ですが、パートは強制的に年金に加入させながら、10年で年金がもらえるように
・年金の将来は暗澹としていますが、そんな中、公務員の年金だけは磐石のようです。国
 民年金加入者は老齢基礎年金をもらい、厚生年金加入者は老齢基礎年金だけでなく老齢
 厚生年金の2階建てになっています。さらに共済年金加入者は老齢基礎年金と退職共済
 年金の上に職域加算がつき3階建てでした。  
・2015年10月に、厚生年金と共済年金が一元化されました。一元化というのは、一
 緒になるということですから、当然ながら共済年金も今までの3階建ての優遇がとれて、
 厚生年金同様に2階建ての年金になるのだと皆さんは思うことでしょう。ところが、実
 際には公務員の年金だけ3階建てのまま。なぜかといえば、一元化された年金とは別に、
 共済年金だけは、「年金払い退職給付」という新しい年金がつくられ、それが上乗せさ
 れたからです。つまり、一元化されても、公務員の年金優遇は変わらないということ。 
・会社員の厚生年金は、官僚の天下り先のグリーンピア建設などでいいように使われまし
 たが、公務員の共済年金は、財務省がしっかり管理していたので、損失も少なく守られ
 てきました。なのに、なぜここに来て「一元化」ということになったかといえば、共済
 年金がピンチになってきたからです。そこで今のうちに、加入者の多い厚生年金と一緒
 にして、自分たちの将来を少しでも安定させたいということなのでしょう。だとしたら、
 一緒になるのを機に、それまで共済で積み立てていたお金を持参金として、すべて厚生
 年金に出すのが筋というもの。 けれど、それについては拒否。それで、新たな自分た
 ちだけがもらえる年金を創設して、やはり3階建てになっています。
・老後にもらう年金額ばかりが気になりますが、実は、将来支給される老齢年金のほかに、
 大黒柱を失った時に支給される遺族年金や障害を負った時に支給される障害年金があり
 ます。今、年金に加入している人は、老後に老齢年金でお金を給付されるだけでなく、
 遺族年金、障害年金にも入っているのです。
・住宅ローンについてですが、多くの家庭では、住宅ローンを借りる時に、大黒柱のご主
 人の名義になっているのではないでしょうか。住宅ローンを借りる時に、ほとんどの銀
 行が団体信用生命保険への加入を義務付けています(ただし、35年間借りられるフラ
 ット35の場合は、銀行によって団体信用保険は任意加入となっています)。団体信用
 生命保険に加入していると、住宅ローンを借りている人が死亡した場合には、残りのロ
 ーンを支払わなくても残債は消えることになっています。ということは、大黒柱が死亡
 したら、多くのご家庭では住宅ローンの支払いが無くなった家に住み、月々15万円前
 後の遺族年金が支給されるということ。家族を亡くすということは精神的なダメージが
 大きいですが、経済的なダメージについては最小限にとどめられるということです。あ
 とは、奥さんがちょっとパートで稼げば、子どもがいても、何とか食べていけるでしょ
 う。イザとなれば、ローンが無くなった家を売却してまとまったお金を手にすることも
 できます。ただし、子どもを大学まで行かせることを考えたら、子供1人につき1千万
 円くらいの教育費がかかるので、そのぶんは生命保険に入っておいたほうがいいでしょ
 う。夫ではなく、専業主婦が亡くなった時はどうなるでしょうか。実は、2014年4
 月以降、妻が亡くなっても子どもが18歳未満なら遺族年金が出ることになりました。
・妻が死亡しても遺族年金が出るようになったので、これからは妻の死亡保障は、妻が大
 黒柱として家計を背負う立場にない限り必要ないかもしれません。子ども2人なら月十
 万円程度の遺族年金が子どもが18歳になるまで出るので。  
・公的年金に加入していれば、障害を負った時に、障害年金をもらうことができます。障
 害年金では、厚生年金加入者だけでなく、国民年金加入者も補償されます。生活保護と
 違って、収入がある人でも、減額されずにもらえる年金だ。ただ、あまり知られていな
 いのが、はっきりとわかる障害だけでなく、うつ病などの精神障害も対象になるという
 こと。サラリーマンのうつ病が増えていますが、うつ病で働けなくなった時には、障害
 年金は強い味方となってくれます。また、障害年金と同時にはもらえませんが、病気や
 ケガで会社を休むと、サラリーマンの場合には、傷病手当金が支給されます。支給額は
 給料に3分の2で、支給期間は最長1年6ヶ月。これはうつ病で働けなくなった場合
 でも同じです。
・「病気になったら、お金がかかりますよ」と保険の外務員の方が勧めるケースが多いか
 らです。けれど、病気で入院しても、高額療養費制度が使えるので、それほど自己負担
 額は多くありません。高額療養費制度とは、入院などでお金がかかっても、一定額を超
 えたぶんは戻してもらえるという制度です。たとえば、入院して医療費が百万円かかた
 としましょう。自己負担は3割なので30万円だと思うかもしれませんが、高額療養費
 制度があるので、普通の収入の人なら8万7千4百円の支払いで済みます。しかも、4
 ヶ月目からは4万4千4百円に下がります。しかも、家族で入院している場合も、合算
 で高額療養費制度が適用されます。夫婦それぞれが入院して月百万円の治療を半年間受
 けても、治療費だけなら自己負担は30万円ということです。
・65歳より早く年金をもらい始めることを「繰り上げ受給」といいます。損益分岐点が
 77歳、76歳までに死ぬと、60歳からもらい始めたほうがよかったことになります
 が、77歳以上生きていれば、65歳からもらい始めたほうがよかったということにな
 ります。 
・逆に65歳を過ぎても年金をもらわず、支給開始を遅らせることを「繰り下げ受給」と
 いいます。損益分岐点は82歳。81歳までに死ぬと、65歳からもらい始めたほうが
 よかったことになりますが、82歳以降生きていれば、70歳からもらったほうがよか
 ったことになります。 
・そもそも収入が少なくて、保険料そのものが支払えないという人もいるでしょう。そう
 いう人は、免除申請をしておくと、保険料を支払わなくても、将来、年金をもらうこと
 ができます。なぜ、一銭も支払っていなくても将来年金がもらえるかといえば、年金の
 支給額の2分の1は税金で補われているからです。税金は、年金保険料を払っていな
 い人でも国民の義務として払わなければいけないので、そのぶんはもらえるということ
 です。たとえば、40年間一銭も保険料を支払っていなくても全額免除の届け出を40
 年間していたら、将来は、年26〜39万円の年金をもらえるということになります。
 しかも、免除の申請をしている人は、たとえ保険料を一銭も払っていなくても、幼い子
 どもを残して他界したら家族に遺族年金が出るし、自分が障害を負ったら障害年金もも
 らえます。生活が苦しくて、年金保険料が払えない人は、とりあえず、年金事務所に相
 談してみましょう。
・「公的年金の将来が不安」だということもあって、個人年金が売れています。では、将
 来を安定させるためには、個人年金に加入したほうが良いのでしょうか。答えは、ノー。
 あらかじめ将来もらえる額が決まっているオーソドックスなタイプの個人年金は、時間
 というリスクを抱えているので、1割増えた程度ではわざわざ入る価値はないのです。
 しかも、今の個人年金の運用利回り(予定利率)は、ほとんどが1%前後。どんなに世
 の中の金利が上昇しても、いったん入った個人年金の運用利回りは最後まで変わらない
 タイプがほとんどです。運用利回り1%なら、銀行預金よりもずっといいと思う人もい
 るでしょう。けれど、預金なら1万円預けると預けた1万円に対して0.02%でも利
 息がついて増えますが、保険や個人年金は、1万円の保険料を支払うと、そこからまず
 保険会社の経費が引かれ、何らかの保障料が引かれ(保障がないと保険にはならないの
 で)、残りが1%で運用されるので、払った1万円がなかなか1万円以上に増えていか
 ないからです。ただし、すでに以前から個人年金に加入している人は、そのまま続けた
 ほうがいいかもしれません。1993年以前の加入なら、運用利回りは5.5%と、か
 なり高いので、ずっと加入していれば大きく増えていくからです。そういう人は、解約
 を勧められても絶対に応じないことです。
・変額個人年金は、預かったお金を、株や債券などで運用していく保険商品。運用次第て
 大きく増える可能性もありますが、逆に目減りしてしまう可能性もあります。チャンス
 はフィフティー・フィフティーという気がしますが、そう思ったら大間違い。実は、減
 る可能性のほうが大きい。なぜなら、手数料が高いからです。もしこの商品で、運用で
 増えもせず減りもしないという状況が25年続いたら、どうなるでしょう。損もせず、
 トクもしないのだから、預けた金額のままだと思いがちですが、とんでもない。加入す
 る時の4%と、毎年約3%の手数料が引かれ続けるので、25年後には、なんと預けた
 お金額の半額を切ってしまいます。しかも、途中で解約しようとすると、時期によって
 は高い解約手数料が取られます。さらに、運用が悪化すると、損が永遠に確定してしま
 うケースもあります。実際に、1千万円預けたのに、運用が悪くて8百万円になってし
 まい、この時点で会社が運用をやめて、元本が確実な金融商品位シフトしてしまったも
 のがいくつかあります。確かに、相場次第で増える可能性もありますが、高い手数料を
 考えると減るリスクのほうが大きい。安心な老後を得るために入る年金が、もし目減り
 してしまったら、逆に老後の不安が増えると思うので、この手の年金には、入らない方
 がいいでしょう。

「この10年」の介護事情の基礎知識
・10年後の2025年、団塊の世代が全員75歳を超えると、日本には大量の介護難民
 が出てくると言われています。これは、高齢者だけでなく、高齢者を支える40代、
 50代の問題でもあります。
・現在、介護保険制度を利用している認知症患者は全国で280万人。要介護の認定は受
 けていないけれど、病状がある人は約160万人。さらに、正常と認知症の中間にある
 人は約380万人いるそうです。しかも、10年後には65歳以上の認知症の高齢者は
 730万人に増え、5人の1人が認知症になるというデータさえも出ています。こうし
 たご老人の面倒を見る代表的な施設としては、特別養老老人ホームがありますが、現在、
 入居待ちをしている待機老人が52万人います。しかも、2015年4月からは原則と
 して要介護3以上でないと入居できなくなっています。今後15年の間に、さらに厳し
 い状況がやってきそうです。なぜなら、1947年から49年までに生まれた団塊の世
 代約700万人が15年後には80歳を超え、かなりの人が介護される側になっていく
 可能性があるからです。
・8割の人がなんらかの形で老後に不安を抱いているようです。自分の肉体的・精神的不
 安もありますが、時間が拘束される、介護保険で足りるか、経済的に大丈夫かというよ
 うな不安も大きいようです。
・世帯主または配偶者の介護をするにはどれくらいの費用がかかるのか。アンケート調査
 の結果では、多くの人が予想する金額の平均は3千3百万円くらいとかなり高いもので
 した。ちなみに、介護が必要と予想される期間については、平均で14年間。14年間
 も介護が続き、しかも3千万円以上のお金がかかるかもしれないと思うと、なんだか暗
 澹たる気持ちになります。ただ、このアンケートは、今まで介護をしたことが無い人に
 予想してもらったもの。実際に介護に直面した経験者に行ったアンケートでは、一時的
 にかかった費用は平均91万円。月々かかった費用は平均約8万円、介護に要した期間
 は4年9ヶ月。つまり、トータルすると実際にかかった費用の平均額は530万円で、
 多くの方が予想する平均3千3百万円に比べると約6分の1、介護に要した年数も約3
 分の1となっています。
・介護保険は、介護の状態が軽い順に、要支援1、2、要介護1〜5の7段階であり、各
 段階で、一定額まで介護サービスを安く受けられます。たとえば、要介護1は日常生活
 で何らかの部分的な介護が必要な状態で、月約16万7千円がサービスの上限。1割負
 担の人なら、その介護サービスを受けても、自己負担は約1万7千円で済むということ
 です。最も重度の要介護5は、上限が約36万円。つまり、月約3万6千円でサービス
 が受けられるということです。超えた分だけは自己負担になります。
・介護保険には、支払額が一定額を超えたら、超えた分が払い戻される高額介護サービス
 費支給制度があるからです。高額介護サービス費支給制度では、同一世帯内に、現役並
 みの所得相当の人がいれば、月額の世帯上限は約4万4千円で、かかった費用がこの額
 を超えると超えた額を戻してもらえます。現役並みの収入はないけれど世帯内のどなた
 かが住民税を支払っているという一般的なご家庭の場合は約3万7千円。住民税が非課
 税になるレベルで年金収入が80万円以上あるなら上限約2万5千円。それ以下は、上
 限約1万5千円となっています。 
・働きに出ている間、介護が必要なご老人を預かってくれる民間施設のデイサービス(通
 所介護)は、実はどんどん増えていて、なんとバブル状態になっているのです。現在、
 デイサービスの事業所は、全国に3万7千施設。郵便局が全国で約2万4千局なので、
 それよりもたくさんあるということです。ちなみに、コンビニは全国で約5万店舗。で
 すから、コンビニの7割以上もの事業所があるということです。つまり、利用する高齢
 者の数よりも事業所の数のほうが多くなっていて、今やデイサービスは、どこでも入れ
 るウェルカム状態になっているということです。しかも、競争が激しいので、送り迎え
 のサービスから、預かり時間の延長、お泊まりまで、いろいろなサービスを用意してい
 ます。
・デイサービスとは、介護が必要なご老人を預かってくれる通いの施設で、イメージ的に
 は保育園に子どもを預けるように、朝お年寄りを預けて、夕方引き取り、その間は食事
 をさせてもらったり、遊ばせてもらったりする施設です。要支援、要介護の人が受けら
 れるサービスで、介護保険の範囲内なら1割の自己負担(人によっては2割)で利用で
 きます。しかも、2012年からは、介護保険の範囲内で1日最長12時間までサービ
 スを受けられるようになっています。施設にもよりますが、朝9時に施設から迎えに来
 てもらい、夜9時まで施設に滞在できるということ。
・介護保険の在宅介護では、日中にご老人が過ごせるデイサービスなどの施設を使うほか
 に、自宅に来て食事、排泄、入浴などや掃除、買い物、調理などの生活支援をしてくれ
 るホームヘルパー(訪問介護)を頼むこともできます。さらに、看護師と介護職員が訪
 れる訪問入浴介護、訪問介護、訪問リハビリテーションなども利用できます。加えて、
 地域によっては、夜間帯にホームヘルパーが自宅を訪ねる夜間対応型訪問介護や定期巡
 回・臨時対応型訪問介護看護で、24時間365日必要な対応をするケースも出てきて
 います。施設に入りにくくなっていますが、在宅で介護するためのサービス自体は、少
 しずつ便利になってきているということです。こうしたサービスに、連続利用日数30
 日までのショートスティ(短期入所生活介護)や施設通いを中心に短期間の宿泊や利用
 者の自宅への訪問を組み合わせた小規模多機能型介護サービスも、地域によっては始ま
 っています。 
・市町村の事業として、食事をつくれない人への配色サービスや紙おむつの購入助成など
 を行うところも増えています。また、民間ではありますが、NPOの主催で、認知症の
 人や家族、地域の人などが集まり、お茶や食事をしながら交流できる、認知症カフェな
 どもできています。
・食事の宅配。生協やワタミだけでなく、セブン・イレブン系列のセブンミールやファミ
 リーマート系列の宅配クック123、食材配達の老舗タイヘイ、ベネッセのおうちごは
 んなど、多くの企業が参入していて手頃な価格で良質な食事の提供競争が始まっていま
 す。また、ダスキンやニチイライフなど、介護のプロが認知症などを進行させないよう
 な工夫のもとに、家事代行をしてくれるサービスも出てきています。
・認知症で大変なのは、徘徊がはじまること。行方不明で警察に出された届け出は、
 2013年だけで約1万3千人もいたのですから、もはや他人ごとではありません。た
 だ、これには自治体も力を入れ始めていますし、民間も様々な見守りシステムがでてき
 ています。 
・民間でも、携帯電話では、ほとんどが、GPS機能で居場所が特定できるようになって
 います。警備会社のセコムでは、ココセコムという端末を貸し出していて、これを本人
 に持たせておけば、パソコンや携帯電話で居場所が確認できるほか、オペレーションセ
 ンターに電話すれば専門のオペレーターが現在地を知らせてくれたり、家族から依頼が
 あれば現地に急行するサービスもあります。また、本人が道を歩いていて具合が悪くあ
 った時などは、ココセコムの通報ボタンを押せば緊急対処員が来てくれます。こうした
 サービスは、ALSOK、セントラル警備保障でも行っています。日本郵便やヤマト運
 輸も、利用者宅を訪問する見守りサービスに乗り出しています。
・家電に「見守り」という新たな機能を付けようと実証実験を開始しています。シャープ
 では、テレビの電源を入れた時や、普段ならテレビを見ているはずなのに長時間電源が
 入らない時にメールで知らせるサービスを始めています。象印マホービンは、電気ポッ
 トの利用状況をメールでするビジネスを始めました。東京ガスでは、ガスの利用状況
 で食事や入浴などの状況がわかる見守りサービスを始めています。 
・老人というと、貧乏だというイメージを持っている方も多いかもしれません。確かに、
 「老後破綻」「下流老人」という言葉が流行っているように、経済的な問題を抱えてい
 る高齢者も増えています。ただ、多くの高齢者は、意外に大きな貯えを持っています。
 世帯主が60歳以上で2人以上世帯の平均貯蓄額は約2千4百万円と、60歳未満の世
 帯の平均と比べて1.5倍。しかも、6世帯に1世帯が金融資産で4千万円以上持って
 います。さらに、金融資産のほかに9割以上は持ち家はあり、加えて先祖伝来の田畑な
 どを持っている人も多くいます。こうしたお金を、生き金として使ってもらえば、かな
 りの介護サービスが受けられるはずです。
・いよいよ自分で様々なことが判断できないようになったら、法定後見制度を利用して本
 人に代わって介護のサービス業者と契約を結んだり、在宅介護のための自宅のリフォー
 ムなどに残さんを使わせてもらいましょう。
・ケアマネージャーとは、現状を把握し、働いている状況を理解し、最も必要なサービス
 を組み合わしてケアプランをつくってくれる人です。ここで重要なのは、よいケアマネ
 ージャーを選ぶこと。ケアマネージャーは、介護の水先案内人。知識が豊富でベテラン
 のケアマネージャーについてもらえば、不安に思っている介護のかなりの部分を解決し
 てもらえます。
・ケアマネージャーは自分で選ぶことができるし、合わないと思ったら途中で換えること
 も可能です。市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに行くと、ケアマネージャ
 ーのリストをもらえます。介護では、ケアマネージャーと付き合いが長くなりがちだけ
 でなく、家の中の事情なども知ってもらわなくてはならないことが往々にしてあります。
 たとえ良い方でも、お互いの相性が良くないと続かないというケースも出てきます。で
 すから、ケアマネージャーを探すなら、リスト頼みだけでなく、かかりつけの病院の医
 師や看護師、ソーシャルワーカー、ヘルパー、ディサービスを利用中のご近所さんなど
 に、その評判について聞き、実際に会ってみましょう。
・ケアマネージャーの多くは、居宅介護支援事業所や介護施設などに所属しています。も
 ちろん、その事業所や施設が気に入ればいいのですが、専門家として様々な施設やサー
 ビスを比較して最もよいところをチョイスできる力量があることが望ましいでしょう。
・特別養護老人ホームは、日常生活の世話や機能訓練の介護サービスが受けられ、生活の
 場としてお活用されています。介護保険の1割負担を利用すれば、月2〜3万円で利用
 できます。これとは別に賃料や食事代が月5〜10万円かかるので、合計で月7〜13
 万円かかりますが、ずっとサラリーマンとして厚生年金に入り続けて定年退職されたと
 いう方なら、年金の範囲内で何とかなる金額ではないでしょうか。ただ、現状では待機
 老人が多く、なかなか入れない状況です。
・身寄りがない人や、家庭環境、経済状況などの要因で家族と同居が困難な高齢者向けに
 は、自治体の助成を受けたケアハウス(軽費老人ホーム)があります。軽度の介護サー
 ビスがついていて、基本的には自立てきる人が対象の施設です。お金のある方は、有料
 老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅という選択もあります。これらの施設では、
 最初にまとまった入居金を払い込み(数十万円から上は億単位のところまで)、入居後
 に月々10万円から30万円、豪華施設だと50万円前後の費用を払うというところも
 あります。中には入居金ゼロというところもあります。月々数十万円かかると聞くと負
 担感は大きいですが、生活の場が施設になるので、仮に本人に15万円ほどの年金があ
 れば、それを差し引いた差額を負担すると思えばいいでしょう。
・負担が増え続ける介護の状況に対して、国も、「地域包括ケアシステム」を介護の切り
 札として打ち出してきています。「地域包括ケアシステム」とは、地域でお年寄りを支
 えようというもの。たとえば、今までは医療や介護が必要だと、本人が医療機関などに
 出向いたり施設を探して入居したりしていましたが、今は施設自体が足りなくなってい
 るので、逆に、医療機関から医師や看護師が自宅に派遣され、さらには介護ヘルパーな
 ども自宅を訪れ、本人は自宅で生活しながら様々なサービスを受けられるようにしよう
 というもの。そのサービスのつなぎ役となる「地域包括支援センター」は、実はすでに
 7千カ所にあります。政府は、10年後の1025年に向けて40万人分の介護施設を
 増やす計画ですが、それではとても対応できないということで、この方法を強化してい
 く方針です。こうした中で期待されているのが、地域の専門家だけでなく、支え手とし
 てのボランティアの存在です。介護保険では、対象になることとならないことの線引き
 が厳しく、高齢者が望んでも、庭の草むしりや家族の衣類の洗濯などは対象ではないの
 でできません。こうしたところを地域のボランティアに支えてもらおうというもの。
・介護されるのも支えるのもご老人という「老老介護」になるケースもありますが、手伝
 ってもらう側は相手が少し若い同じ地域に住むご老人ということで気が許せるし、介護
 する側のご老人は、弱ったご老人を支えることで自分の生きがいにもなります。また、
 お小遣いも稼げるので経済的なゆとりもできます。団塊世代は、活発に働いてきた人が
 多く、リタイアしても家でくすぶっているよりは地域のために役に立ちたいという前向
 きな人も多いので、こうした、地域ぐるみの介護が進めば、「老老介護」の未来も、明
 るくなるのではないでしょうか。  
・「看護師バブル」という言葉をご存知だろうか。今まで、いろいろなところで看護師不
 足が取りざたされていましたが、なんとこの看護師が、10年後には、余ってくる可能
 性があるというのです。なぜなら、看護師不足対策のために、1991年には11校し
 かなかった看護大学や大学の看護学科が、2014年にはなんと226校にも増えたか
 らです。入学定員数も、1991年は558人だったのに、今や2万人近くになってい
 るというのです。結果、現在は看護師不足と言われていますが、10年後には14万人
 もの看護師が余剰になると言われているのです。 
・看護師のキャリアを活かして何らかの仕事をしていきたいということになれば、訪問介
 護の看護師として介護の世界に入ってくることが予想されます。さらに医者余りの現象
 も出てくるかもしれません。研修医の採用状況を見ると、2014年度までは7千人台
 でしたが、2015年度は8千人台と急増しています。医師不足が取り沙汰される中、
 国は2019年度まで、医学部の定員を増やし続けるとしていて、この人たちが一人前
 の医者になる頃には、医師バブルになっているかもしれません。そういう意味では、今、
 介護の現場では看護や医療のスペシャリストが不足していますが、将来的には、介護の
 現場でも頼もしい看護師さんやお医者様たちが働いていることでしょう。
・施設についても、今は施設不足の状況で、特別養護老人ホームなど、待機老人が52万
 人もいます。けれど、この老人の数も、2042年の3千8百万人台をピークに減り始
 めます。そうなると今の40代が介護を受けなくてはならない状況になる頃には、施設
 が増えすぎて入居者を奪い合う状況いなっているかもしれません。 

マンションを粗大ゴミにしない基礎知識
・高度成長時代の日本は、土建国家と言ってもよいほど公共事業の比率が高く、土地を持
 っている人は大金持ちになりました。国も、持ち家政策に力を入れていました。ですか
 ら、「家を持てた」ということにアイデンティティを見出した団塊の世代も多く、子ど
 もたちにも「家を持ったら一人前」という考えを吹き込んで育てました。今の若者は、
 それほど家には執着しません。兄弟が少ないので、いつまでも家にいられる人が多いと
 いうこともあるでしょうが、わざわざ大きなローンを抱えてまで家を買うということを
 重荷に考える人も多いからです。家を買うために頑張るということは、意味がないと思
 っている人も多くいます。
・日本の住宅は、平均30年で建て替えられると言われています。マンションの場合には、
 構造も違い、建て替え例がそれほどないので、よくわからないというのが実情ですが、
 それでも、築30年といえば、かなり古い感じがします。
・築43年のマンション。建物のいたる所にひびが入り、ベランダはさびてボロボロ。水
 道の蛇口をひねると赤みの帯びた水が出てくるという状態で、住民はペットボトルを月
 に何十本も買って飲料水にしなければ生活できない有様。こうしたマンションはレアケ
 ースではありません。部屋に入るときれいにリフォームされていても、踊り場の鉄骨が
 錆びてむき出しになっていて今にも崩れるのではないかと怖い思いをしたり、室内に入
 ってもどことなく下水の臭いがしたものもありました。
・しかも、老朽化したマンションは、さらに恐ろしい事態を引き起こす可能性があります。
 特に怖いのは、他人を巻き込んだ事故です。最近増えているのが、壁やタイルがはがれ
 て落下し、通行人にケガをっせるという事故。もし、おうした事故が起きたら、誰がケ
 ガをした人への賠償責任を負うのでしょうか。新築マンションなら、設計ミスというこ
 とで、設計者や施工会社が責任を負うということになる可能性があります。けれど、築
 何十年もたつ中古マンションの場合には、こうした事故の賠償は、入居者全員で行わな
 くてはならないのです。
・マンションは、基本的にはみんなで住むことが前提で、共有部分が多くあります。共有
 部分はみんなのものですから、管理の責任もみんなで共有しなくてはなりません。まず、
 玄関を入ってエレベーターに乗って、廊下を歩いて我が家にたどり着く。この間は、す
 べて共有部分。部屋に入っても、自分のものと言えるのは、手で触れるところだけ。
 建物の躯体は、共有部分なので、隣り合わせの部屋を購入して、部屋と部屋の間の壁に
 行き来できるドアをつけるということは禁止されています。また、ベランダに出たら、
 手すりもすべて共有部分。
・管理組合は、通常はマンションの修繕・修理のために一定額を積み立てていますが、事
 故賠償のためのお金は徴収していません。ですから、そのぶんのお金は、戸別に負担す
 ることになるのです。マンション内で起きた水漏れなどの事故についても、共有部分の
 老朽化などが原因で起きた事故は、マンションの管理組合が保険に入っていない限り、
 みんなに支払いの責任があります。火災保険や個人賠償責任保険に加入しているので大
 丈夫だと思っている方もいるかもしれません。確かに通常の水漏れなら、住まいの保
 険や個人賠償責任保険で補償されます。けれど、排水管が老朽化しているために起きた
 水漏れは、個人で加入しているような保険が利かないケースが多いことは覚えておいた
 ほうがいいでしょう。
・古いマンションを立て直すとすれば、建設費用だけでなく、古いマンションの取り壊し
 費用や引っ越し費用、引越し先の家賃などもかかります。こうしたものをすべて含める
 と、同じ大きさのマンションを建て替えるとすれば、新しいマンションを買うのと変わ
 らない値段になるケースも。つまり、もう一度、住宅ローンを組んでマンションを買う
 くらいの資金力がないと、民間マンションの建て替えは難しいということです。マンシ
 ョンの建て替えについては、住人の5分の4以上の賛成があれば建て替えの決議ができ
 ます。ただ、8割の人が賛成してマンションを建て替えることになっても、残りの2割
 の人に対しては、金銭的に補償をしなくてはいけません。もし、2割の人が反対したら、
 その人のマンションをみんなで買い取らなくてはいけないので、そのぶん、建て替えで
 負担する1人あたりの費用は大きくなるということです。
・メンテナンス次第では、今のマンションはかなり長持ちします。マンションは、人体と
 同じで、骨にあたる鉄筋を、肉にあたるコンクリートが覆っています。正常なかたちで
 コンクリートに覆われた鉄筋は、よほどのことが無い限りは、その強度を保ち続けるこ
 とができます。鉄筋がしっかりしていて、コンクリートが正常ならば、マンションは百
 年でも持つといわれているのです。
・最も大切なのは、しっかりした長期修繕計画と定期的なチェック、定期的な修繕で、こ
 の3つがしっかりしていれば、老朽化はかなり防げます。また、何か突発的なことが起
 きても、迅速に対応すれば心配しなくてもマンションは永く住み続けられます。
・定期的にマンションの健康診断を行い、管理組合がしっかりとした修繕計画を立て、そ
 れを実行していかなくてはならない。その際に大切なのは、大きな修繕と小さな補修を
 定期的に行う「長期修繕計画」を立てることと、それに見合った積立金を積み立ててい
 くことです。
・マンションは買って終わりではないということ。ファミリータイプのマンションの場合、
 大規模修繕も含めた修繕費だけで、30年間で一戸あたり約400万円かかるとも言わ
 れています。マンションは管理組合がしっかりしていないと、老朽化して取り返しのつ
 かないことになる。
・マンションの価格が下落して、買い替えが難しい中で、今のマンションに永住するなら
 修繕などで建物に気を配るだけでなく、マンション内で、日頃から良好な人間関係を築
 いておくことが大切です。それを実感させられたのが、東日本大震災でした。2011
 年3月に発せした東日本大震災では、震災直後、公の援助が届かない中で、マンション
 の住民が自主的に災害対策本部を設置し、物資の受け渡しや安否確認、情報の共有や提
 供、介助、炊き出し、廃食などを、それぞれチームに分かれて的確に行った事例などが、
 いくつも上がってきています。
・仙台では、被災後、避難所に行ったマンション住民が、収容可人数オーバーで入れず、
 集会室やロビーで一夜を明かし、特例的に「準避難所」の指定を受けた事例や、マンシ
 ョンのロビーが、マンション住民だけでなく、被災した近所の人たちの避難所の役割を
 果たした事例も報告されています。
・仙台市の50戸が入居していた某マンションでは、なんと築2年だったにもかかわらず、
 壊れた共有部分の補修に1億円かかることがわかりました。
・マンションは個人のプライバシーを守るもので、隣近所は関係ないと思いがちですが、
 とんでもない。実は、一戸建て以上に多くの人が関わりを持ち、助け合わなくてはいけ
 ない共存する住まいなのです。 
・居住者同士のふれあいが希薄だと、管理組合の運営もうまくいきません。夏祭りや防災
 訓練など、顔を合わせる機会を増やすことに努めましょう。そうすることで、マンショ
 ンはみんなで暮らす場所なんだという意識を持っていただけれな、トラブルも減り、補
 修やメンテナンスなどにも協力的になってもらえるからです。結果、長生きで健康なマ
 ンションを維持できます。住民にまとまりがあれば、たとえば屋上にソーラーパネルを
 置いて売電したり、余っている駐車場を外部に貸し出して収入源にするなど、さまざま
 な試みもできるはずです。
・地域でのコミュニケーションが少なくなり、今や都会では、町内会も消滅一歩手前の状
 況です。いま町内会を支えているのは、主に地域の高齢者なので、20年後には、こう
 した人たちもだいぶいなくなり、町内会そのものが消滅しているかもしれません。その
 ため、町が荒れ、犯罪なども増えている可能性があります。そんな中、こうした従来の
 地域町内会に代わって重要になってくるのが、「マンション町内会」の役割です。
・最近は都心の高層マンションでも、管理組合が主導で、挨拶大会やママたちのしゃべく
 り会、県人会、防災訓練など、月に4〜5回の交流イベントを実施するなどというとこ
 ろも出て来ています。 
・古いマンションに住んでいて、多少安値でもそれを売って、「住み替え」を見当してい
 る場合、「マンションを売って新たにマンションを購入する」「マンションを売って賃
 貸に移る」「マンションを売って戸建を買う」という選択が考えられます。仮に、都心
 の古いマンションを持っていて売りたいと思っているなら、東京オリンピック前までが
 売り時。オリンピックが終わると、都心のマンションは大幅下落する可能性が高いから
 です。
・これからは人口が減って空き家が増えてきます。そういう意味では、無理して住宅ロー
 ンを組むのではなく、ずっと賃貸で暮らすという選択もあることでしょう。地方の場合
 には、オリンピックバブルはあまる関係ないですが、都市圏に住んでいる方は、買うな
 らオリンピックバブルがはじけてからにしたほうがいいでしょう。
・住まいは、賃貸と購入でどちらがいいかというような議論があります。金銭的な面から
 いえば、今は、ほとんど変わらないといってもいいでしょう。あとは、ライフスタイル
 や好みで、自分が好きなほうどちらかを選ぶということになります。老後、地方で暮ら
 すという人は、わざわざ購入しなくても、賃貸で十分です。なざなら、買った物件が値
 下がりし、20年も住めば売っても二束三文にしかならないからです。

あとがき
・正直にいえば、20年先の日本や世界がどうなっているかは、よくわかりません。「わ
 からない」とはいえ、それでも確実なのは、今以上に誰もがインターネットを使い、買
 い物や仕事などあらゆることをこなす超ネット社会になっているということでしょう。
・「20年後」には、今のアメリカの雇用の半分は、コンピュータに取って代わられるの
 だそうです。「20年後」に、今の仕事の半分が無くなるというのは、日本でも充分に
 起こり得ることです。 
・資格というのは、技能の裏付けにもなるので持っていて損はありません。けれど、だか
 らといってそれで将来が安定するかといえば、そんな甘い話はないでしょう。資格を取
 ることに、意味がないと言っているのではありません。何のために資格を取るのかとい
 うことを、まず考えなくてはいけないということです。資格は無いよりあったほうが良
 いのは当然ですが、これから取得するとなれば、お金も時間もかかります。やっとの思
 いで取得しても、それでちゃんと仕事ができるほど、世の中は甘くありません。そうや
 って、苦労して資格を取っても、ニーズがなければ、単なる飾る物のひとつということ
 です。はっきり目的がある人はよいですが、何をやりたいかわからないで、とりあえず
 資格にすがるというのは、やめたほうがいい。つぎ込む時間も費用も無駄になる可能性
 が高くなります。大切なのは、今、自分がやっていることが、世の中のニーズとマッチ
 しているかどうかです。
・20年もサラリーマンをしていると、「給料取りの自分に、起業なんてできるわけがな
 い」と思いがちですが、それを本業にではなく、まず副業として始めてみましょう。起
 業といっても、そんなに大上段に構えることはありません。たとえば、商売をしたいと
 思うなら、いきなり店を構えるのではなく、誰もが気軽に参加できるネットーオークシ
 ョンからはじめてみてはいかがでしょう。そこから、商売につながりそうなヒントを掴
 む。ダメなら、やめる。そのくらいの、気軽な気持ちで。
・また、それとは別に、給料の1年分くらいの蓄えを現金で持っておきましょう。年収5
 百万円の人なら、5百万円の貯金が必要。これだけあれば、収入のメドが立たなくなっ
 ても、失業保険と合わせて2年くらいは食いつなげるはずです。
・妻には、仕事のことなどわからないだろうと侮ってはいけません。実は男性はタテ社会
 で生きていますが、多くの女性は、ヨコ社会で生きている。そして、これからは、タテ
 ではなく、ヨコの繋がりがモノを言う時代になります。そして、こうした関係を巧みに
 使って、商売をしている女性も多い。2010年には21万人だった助成社長数が、
 2014年には31万人に増えていて、その多くが、女性ならではの生活者の視点を活
 かした、小さく始めるプチ起業で成功しているそうです。生活目線での女性の企業が盛
 んなのは、日本だけではありません。アメリカの経済誌フォーブスによれば、全米企業
 の23%が女性経営者。 
・すでに、ひとつの会社で一生を終える時代ではなくなっています。人生二毛作。いや、
 三毛作も四毛作も。そんな時代になっているかもしれません。そんな中で心豊かに健康
 に楽しく過ごすために必要なのは、無理しない程度の仕事と、一緒にごはんを食べてく
 れる友人とパートナーとして相談相手になってくれる妻。特に子どもが巣立っていたら、
 生涯を共にする妻の存在はますます大切になってくることでしょう。