妻のトリセツ :黒川伊保子 |
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夫婦とは、まことに難儀な関係である。交際していた頃や結婚し始めの頃は、大きな夢と 期待を持っていても、長年連れ添ってくると、お互いの考え方や価値観や生活習慣の違い が、だんだん露わになってくる。長い間一緒に暮らしてきたということもあって、お互い に最初にはあった”遠慮”もなくなってくる。そうなってくると、時々お互いの感情が衝突 する場面も出てくる。相手が、自分が期待したように行動してくれないという溜まり溜ま ったイライラが、怒りの感情となって噴出するのだ。 男は、”妻のため家族のために”一生懸命仕事をしてお金を家に持ち帰れば、それが妻や家 族を大切に思っているという”愛の証”なのだと思っているが、妻からすると、どうもそう ではないらしい。男にとっては、そんな妻は理解できない存在である。”夫婦”といっても 所詮は”他人”とも思ってしまう。 以前は、夫が定年になってずっと家にいるようになると、それがストレスになって、心を 病む妻が多いと言われた。しかし最近は、逆に、定年になった夫が、妻からの精神的な虐 待を受けて、”妻が怖い”と心を病むケースが多くなってきているという。女性がそれだけ 強くなったのか。 もっとも、ずっと会社という組織の中にどっぷりと浸かって、退職した後のことなど全然 考えもしないで過ごしてきた男にとって、会社から放り出された後に、どんなふうに毎日 を過ごしたらいいのかわからず、大いに戸惑う男も多い。そんな戸惑っている夫を見て、 ”何やってんの!”とますます妻は”檄”を飛ばす。その激しい妻からの”檄”の嵐の中で、夫 は”恐れおののき”、ますます自信を失っていく。しかし、そんなことで夫が病気にでもな ったら、妻にとってもいいことはない。夫婦にとって不幸なことなのだ。 この本は、”怖い妻”とはどういう生き物なのかを解説した”妻の取扱説明書”である。女と は、男とはまったく違う生き物であることを解説し、そんな生き物をどう取り扱ったらよ いのかを指南している。この本によって、すべてが解決できるわけではないと思うが、世 の御同輩には、この本を読んで、少しでも、時々襲ってくる妻の”カミナリ”から回避する こと願がわずにはいられない。 |
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はじめに ・「妻が怖い」という夫が増えている。夫側から申し立てた離婚の動機として注目されて いるのが、妻からの精神的虐待。司法統計(2017年度)によると、2000年度の 6位から2位に急上昇している。 ・精神的虐待というと大げさな気がするが、具体的には、いつもイライラしている、口調 がキツイ、いきなりキレる。急に怒り出す、何をしても怒られる。口をきかない、無視 する、夫の分だけ家事をしない、人格を否定するような言葉をぶつけてくるといった妻 の言動を指す。 ・ほとんどの夫にはその”怒り”の本当の理由がわからないし、たとえ理由を聞き出すこ とに成功し、解決策を提案したところで、妻の機嫌がよくなることはない。それは、妻 の望む夫の対応と夫が提案する解決策が根本からずれているからなのだ。 ・そもそも妻の怒りの理由は、「今、目の前で起きたこと」だけではない。過去の関連記 憶の総決算として起こるものなのである。 ・女性は、感情に伴う記憶を長期にわたって保存し、しかも「みずみずしく取り出す」こ とが得意な脳の持ち主だ。日常生活で起こる感情が、さまざまな色合いを帯びており、 この感情の色合いごとに体験記憶が収納されているのである。心が動くと、その「感情 の色合い」と同系色の引き出しに収納された過去の体験記憶が数珠つなぎになって、一 気に引き出される。「感情によって連鎖される記憶」なので、当然、感情が増幅されて 溢れる。 ・体験記憶を数珠つなぎで引き出すきっかけとなる「感情の色合い」は、まさにトリガー (引き金)であり、それにはネガティブトリガー(怖い、辛い、ひどいなどの嫌な思い) と、ピジティブトリガー(嬉しい、美味しい、かわいいなどのいい思い)がある。女性 脳は、自らの身を守らないと子どもが無事に育てられないため、危険回避のためのネガ ティブトリガーのほうが発動しやすい傾向にある。身の回りにいる、自分より力が強い 者には、特にそうなる。 ・一方で、全身で頼ってくる小さな者にはポジティブトリガーが発動されやすい。「夫に はひどく厳しく、子どもやペットにはべた甘い」が母性の正体であって、男たちがロマ ンティックに憧れる「果てしない優しさ」が母性なんかじゃないのである。 ・それゆえ、夫にとっては「たったこれだけのこと」で、しかも10年も20年も前の出 来事まで含めて、一気に何十発もの弾丸が飛んでくることになる。問題は、怒りの弾丸 で撃たれているうちに、夫が徐々に命を削られてしまうことだ。 ・夫にとっては、甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、きずなを求める気持ち の強さゆえなのである。母性本能は、生まれつき女性脳に備わっているもので、恋人時 代から「理不尽な不機嫌」の萌芽はあるが、特に周産期(妊娠、出産)と授乳期に強く 現れ、子育て中はほぼ継続していく。やがて、男性脳を理解して、男への期待のありよ うを変えられた女性は、自らの感情をただ漏れしないようになるが、男に期待し続ける 女性は、死ぬまでそれが続くことになる。「怒り」は「期待」の裏返し。夫一筋、家庭 一筋の妻ほどこうなる傾向にある。つまり、かわいい妻ほど豹変し、夫一筋のうぶな妻 ほど一生それが続くことになる。 ・これが、ほとんどの男性が知らない世にも恐ろしい、結婚の真実だ。だから結婚をする ならば、愛らしくて可憐でうぶな女性よりも、度量のある女性を選ぶべきなのだ。とは いえ、どんな女性でも多かれ少なかれ、「理不尽な不機嫌」の道に一度は足を踏み入れ る。男性諸君は、その真実をしっかりと受け止めるほうがいい。 ・男にとって結婚の継続とは、女性の母性ゆえの攻撃から、いかに身を守るかの戦略に尽 きる。ぼんやりしていたら、生き残れない。家庭を、のんびりくつろぐ癒しの場所だと 思ったら大間違い。それは、母親の翼の下にいた時代の「家庭」のことだ。 辛い記憶「ネガティブトリガー」を作らない ・周産期・授乳期の妻は、激しいホルモン量の変化に翻弄され、栄養不足で、寝不足で、 自分で自分をコントロールすることもままならない「満身創痍」の状態であることを、 まず理解すべきだろう。 ・この時期、女性脳は男女の情愛という乱暴さーこれは意外と乱暴なものーに耐えられな いと感じている。まして、一日中、小さくて清らかな赤ん坊と過ごしている妻は、夫の 言動、存在そのものが乱暴であり、ひどくガサツに見える。仕事から帰るなり、妻から 「デカイ!」だの「臭い!」だの、まるで汚いもののように言われて、夫が傷つき、関 係にヒビが入る夫婦も多い。 ・しかし。これは妻の満身創痍状態からくる一時的な心の変化だ。そのことを知っておく と、いちいち傷つく必要もない。「おっぱいをあげている間はしょうがない」とわかっ ているだけで、ちょっと楽になれるはず。この時期は、オトコ風を吹かせず、妻の女友 達のように接することを心がけよう。 ・女性脳の、最も大きな特徴は、共感欲求が非常に高いことである。「わかる、わかる」 と共感してもらえることで、過剰なストレス信号が沈静化するという機能があるからだ。 それによって、怖かった、悲しかった、痛かった、淋しかった、惨めだった、辛かった という神経回路のストレスが軽減される。逆に共感が得られないと一気にテンションが 下がり、免疫力も下がってしまうのだ。 ・女の会話とは、「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントし、受けたほうは共感で 返して、「しばしの癒し」をプレゼントする、いわば共感のプレゼント大会なのだ。な のに、男は、どちらかのプレゼントを出し惜しみする。というか、子育てに疲れている 妻に、会社のつまらない話なんて到底聞かせられない、という男心で、封印してしまう。 さらに、男性脳にとっては、共感よりも問題解決こそがプレゼントなので、共感を端折 って、「○○すればいいんじゃない?」「やらなくてもいいよ、そんなもん」と、いき なり問題解決してしまうのだ。かくして、女たちは、「思いやりがない」「私の話しを 聞いてくれない」「いきなり、私を否定している」となじってくるのである。 ・知ってほしいのは、「なじる人は傷ついている」ということだ。1週間前の出来事であ ろうと、30年前の出来事であろうと、なじっているのは、今、この瞬間にも心が傷つ いているからなのである。解決方法は、真摯に謝る。それしかない。「もう何度も謝っ たけど」と思うかもしれない。しかし、男性は誤っているつもりなので、なんでそれを 言ってしまったか、やってしまったかの理由や原因を言い募りがちだ。 ・妻とは、ことごとく意見が合わない。いや、意見のみならず、こちらが暑がりなら向こ うは寒がり、向こうが神経質ならこちらは大雑把といった具合に、感性が真逆という夫 婦は多いはずだ。というのも、恋に落ちる男女は、生物多様性の論理に則って、感性が 真逆の相手を選んでいるからにほかならない。 ・地球上の生物のほとんどは、生殖をその存在の第一使命としている。生殖して遺伝子を 残す。その最も効率的な存在は、「タイプの違う相手との掛け合わせ」と「生殖機会ご とに相手を替えること」。感性が違うほど、遺伝子は多様性を極め、子孫の生存可能性 が高まることになるからだ。 ・遺伝子の型が違えば違うほど男女は強く惹かれ合うという。免疫抗体の型は、その個体 の生態としての感性を決める。この型が異なる相手と子どもを作れば、子孫のバリエー ションが増えるというわけだ。簡単に言えば、寒さに強い個体と厚さに強い個体が交配 すれば、子孫にどちらの型も混じる。地球が温暖化しても寒冷化しても、誰かは生き残 る。だから神経質と大雑把、せっかちとのんびなど、感性が真逆で相性が悪いと感じる 夫婦ほど、生殖相手としての相性は抜群なのである。 ・逆に、好きな食べ物も、好きな映画も、笑いのツボも一緒という夫婦は、相手にイライ ラすることが少なく、まるで親友のような穏やかな関係を築くことができる。その代わ り発情しにくいので、セックスレスになりやすい。 ・感性が真逆の夫婦であっても、子どもの教育方針、家、親の問題など、どうしても話し 合って意見をまとめないといけないときがある。しかし、いくら話しても平行線。つい には夫婦喧嘩にまで発展してしまう。 ・まず、多くの夫が気づかずにやってしまうことが、いきなり拒否系を使うこと。妻は自 分の主張のメリットしか言わず、夫は相手の主張のデメリットしか言わない。これでは、 いくら話し合っても折り合いがつかないはずだ。そんなときこそ、男性が得意が「ブジ ネスプレゼン」のメソッドを思い出してほしい。 ①双方の提案に対して、互いにメリットとデメリットを上げる ②実際に調べて検証する ③デメリットを回避する消極的なメリットではなく、互いのゲイン(手に入れられるも の)示す。 ④以上を踏まえて、結論を出す 妻を説得する上で、特に大切なのは③.相手のデミリットの反対、消極的なメリットで はなく、それをすることによって得られるゲイン、つまり「手に入れられるもの」を提 示することが重要だ。 ・娘は、母親にとって、頼もしい女友達であると同時に、かなり手ごわい同居人なのであ る。その妻と娘が対立したとき、男がとる道は、ただ一つ。あくまでも、妻の味方をす ることに尽きる。たとえ、子どもの主張が当たっていても、それを緩やかに認めたうえ で、「それでも、大切なママに、そんなひどい口を利くことを、パパは許さない」と毅 然とした態度をとるべきである。 ・妻と子どもが対立する原因のほとんどは、子どもの側の怠惰を戒めたり、欲望を制動す ることに端を発していて、妻が正論であることが多い。しかし、日頃から妻の小言に辟 易している夫は、つい子どもの「おまえの気持ちはわかるよ」などと言ってしまいたく なる。子どもが、一人前に妻の言い分の矛盾点などを突いたりして、小気味よいと感じ ることさえあるはずだ。しかし、妻を侮辱する夫の対応は、娘の未来を幸せにしないし、 息子の将来にも影を落としてしまう。 ・父親のやるべきことは、妻と娘がもめていたら、どちらの言い分が正しいかをジャッジ することではない。「どちらが正しいかは関係ない。お母さんを部局した時点で、お前 の負けだ」と娘に告げることだ。娘は、どんなに反発していても母親を大切にする父親 を嫌うことはない。むしろ、父親の強さと頼もしさを知ることになる。 ・息子が妻に反抗した場合には「俺の大切な妻に、そんな暴言は許さん!」と毅然と言お う。息子の暴言を見て見ぬふりをする父親は、軽蔑されても尊敬されることはない。何 よりも、子どもたちに対して「妻が一番大切だ」と宣言することは、妻の心に響く。こ のひとことがあれば、一生夫と寄り添っていけると妻も少なくない。また、こういう夫 であれば、必然的に妻も夫も大切にし、何かにつけて夫を立てるようになる(はず)。 これが、息子にとって大きな意味を持つ。 ・勉強を頑張り、必死に働いた挙げ句、妻にないがしろにされている父親が「行き先」で は、息子は道に迷ってしまう。妻から「家で一番偉いのはお父さん」と言われる父親が いてこそ、息子はモチエーションが上がり、自我を確立していける。 ・とはいえ、ふだんは妻をいい加減に扱っていながら、急に息子のために俺を立てると言 っても「ハイハイ」と言う妻はいない。何があっても妻の味方でいる。この一貫した姿 勢が妻の信頼を勝ち取り、結果、娘と息子の未来を幸せにする。 ・名もなき家事に太刀打ちできない男性脳が、名もなき家事と戦っている妻を助けること は、不可能に近い。それでも、毎日毎日、チリのように詰まり続けている妻の怒りが、 いつか大爆発するのを防ぎたければ、とにかにねぎらうことである。 ・「夫のプロ」を目指すなら、「名もなき家事」の存在を知覚することから始めよう。そ して、妻がしてくれている名もなき家事の一つを自分のタスクにすることを申し出よう。 妻は「名もなき家事」に夫が気づいて、ねぎらってくれただけで、かなり気が晴れるし、 その中のどれかを担おうという夫の気持ちが嬉しいものなのだ。 ・男性でもできそうなタスクをリストアップすると、 ・お米を切らなさい ・冷蔵庫の製氷機の水を切らさない ・コーヒーを切らさない ・トイレの黒ずみを防ぐ薬を週1で投入する ・毎朝、ベランダの食物に水をやる ・洗面所の鏡をきれいにキープする ・肉を焼く ・そばをゆでる ・コーヒーを淹れる ・寝る前に米を研いで炊飯器にかける ・家事をしても夫と妻が見ている世界は違う。だから、片付いているという感覚も違うの だ。女性脳は、立体がよくわからないので、3次元空間で片付いているものでも、片付 いていないように感じる。また、縦方向に分類されていても、パッと見て整理されてい ないように感じたりする。 ・男性脳は扇状に、しかも立体的にものを見るので、夫は自分の動線に合わせて道具を整 理したつもりでも、妻からは、道具をあっちに置いたりこっちに置いたりしているよう に見えることもある。皿の裏の小さな汚れを妻は見逃さないが、夫にはそもそもそんな 汚れが見ていないという可能性もある。そこには、お互いに認識すべきである。 ・この問題の解決策は、一軒の家の中で、それぞれテリトリーを決めることだ。夫の部屋、 妻の部屋を決める。また、ふたりで使っていてもここは妻のコーナー、夫のコーナーと 決め、それぞれテリトリーには口出ししないというルールを作る。 ・トラブルはたいていリビングで起きるもので、リビングに置いてもよいものは、話し いで決めるのも手。しかし、基本的には、リビングで過ごす時間が長い妻が主導権を持 つべき。その代わりに、夫には、妻が出たしできない自分の部屋や専用コーナーを持つ ことをおすすめしたい。 ・妻と夫の永遠のテーマに「買い物問題」がある。これはプロセス指向の女性脳とゴール 指向の男性脳の差が生み出す悲喜劇だ。一般に女性は、時間に余裕がない場合を除いて、 目的の売り場に一直線には向かわない。目についたバックを鏡の前でかけてみたり、ブ ラウスを肩に当ててみたり、パンプスを履いてみたりした挙げ句、今度は隣の雑貨屋で クッションを抱きしめてみたりする。夫は、このあてのない寄り道をストレスい感じる。 ゴール指向の男性脳は、目標地点に最短時間、最短距離でたどり着きたいと思っている からだ。 ・実は、男性脳からは意味がないと感じられる妻の寄り道も、脳科学上は意味がある。女 性脳は感じる領域である右脳と顕在意識の領域である左脳の連携がよく直感が働く脳。 もちろん買い物にも直感を使う。この直感のために使われる神経線維は比較的長い。数 センチから数十センチ、長い人では1メートルを超える神経繊維もあるといわれる。長 い神経線維にいきなり信号を流すのは大変なので、予行演習が要る。靴売り場をのぞい て、きれいな色のパンプスにわくわくしたり、猫グッズに「カワイイ」と声を上げたり しているうちに、脳内の電気信号が活性化する。そうしておいて、目的の冷蔵庫売り場 に向かえば、直感が働き、パッと候補が目に入ってくる。そこから候補数点の条件を比 較して、いきなり「これがいい」とイチオシの1点を選んでしまうのだ。 ・一方、男性脳は、「比較検討」でものを選ぶ。だから、目的売り場に速やかにたどり着 いたとしてもそこからが長い。商品構成の全容を理解したがり、スペックを細かく検討 する。女性から見れば、予算15万円の冷蔵庫を買うのに、30万円の冷蔵庫のスペッ クをじっくり見る意味がわからないし、イライラする。しかし、数ある候補の中から、 「ベストを選びたい」男性脳にとっては、比較検討する代替案がないと買い物ができな いのだ。つまり、15万円の予算であっても、10万円の冷蔵庫のスペックも、30万 円の冷蔵庫のスペックも確認せずにはいられない。こうして「全体」を把握したうえで、 ベストな「このメーカーのこの冷蔵庫」がすとんと腹に落ちる。理にかなって、腹に落 ちることが大切なのである。 ・そういう男性脳の持ち主である夫から見ると、妻の「ビビッときたから」は選ぶ理由と しては甚だ心もとない。それゆえ、揺るぎないイチオシを選んでいる妻に対して、親切 心で「ほかにも、もっと見たら?」と言ってしまう。妻の高揚した気持ちを萎えさせる 夫のひとことだ。 ・そこですすめたいのが、買い物の時間差攻撃。妻は寄り道し放題。夫は、先に目的の売 り場に行き、じっくりと商品を比較検討する。吟味したらスペック的に納得できる候補 を数点選んでおこう。後から売り場にやってきた妻が、磨きをかけた直感力で、ビビッ ときたイチオシの商品を選んだら、夫の出番。サイズやスペックをもとに頼もしいアド バイスを。妻の直感に、夫の論理的なフォローがあれば、確実で、しかも双方が満足の いく買い物ができる。夫は、妻の面倒くさい寄り道に付き合わないで済み、さらに、買 い物に対する意欲も感じさせられるという奥の手だ。ぜひ試してみてほしい。 ・女性脳は、大切な対象に意識を集中し、ちょっとの変化も見逃さず、相手が何も言わな くても、何を求めているのか、どうすれば相手が嬉しいか、その意図を察して生きてい る。これは、物言わぬ赤ん坊を育てるために女性脳に装備された能力であるから、「察 すること」イコール「愛の証」だと信じているのだ。 ・「察してなんぼ」の女性脳にとって、「言ってくれれば、やったのに」にいうセリフは、 察することを放棄した言葉であり、「僕はあなたになんの関心もない」「あなたを大切 に思っていない」と同義語なのである。 ・男性脳は大切なものに対して、習慣的に責務を果たすことを旨とする。毎月給料を渡し、 毎週決まった日にゴミを出し、毎日同じように帰宅する。これが男性脳が「妻を大切に している」証なのだ。察する機能がついていない男性脳に察しろというのは難しい。 「言ってくれれば、やったのに」は本音であり、思いやりでもある。しかし、このよう な場面で、言うべきなのは「気がつかなくてごめん。僕がやるべきことだったね」だ。 察したい気持ちを伝えるこのセリフは、ときには愛を伝える言葉にもなる。 ・妻が絶望する夫のセリフをリストアップする。もし心当たりがあるなら、妻の不機嫌は、 このセリフのせいだと心得てほしい。 ①「だったらやらなくていいよ」 ・僕(あるいは世間)にとってそれほど重要ではない。やらなくても気にならないと 聞こえる。 ②「つまりこういうことだろう?」 ・頼んでもいない要約や解決策の提示は余計にストレスを増やすだけ。 ③「おかず、これだけ?」 ・「たってこれしかないの?」に聞こえる。 ④「今日何してたの?」 ・一日家にいて、家事も満足にできないのかと聞こえる。 ⑤「いいな~きみは。一日子どもと一緒で」 ・それが何より辛いと感じている妻もいる。 特に要注意は④と⑤だ。妻が専業主婦や育児休暇中である場合、このセリフは致命傷と なる。 ・特に、優秀な専業主婦を持つ夫ほど、妻の家事労働の量や大変さに気づきにくい。プロ セスを見逃す男性脳は、妻が要領よく家事をこなしていると、「本当に楽な仕事」に見 えてしまう。それゆえに、「専業主婦なんだから、時間あるだろ」「会社には、仕事し ながら子育てしている部下もいるぞ」と言ったりしてしまい、傷を広げがちである。 ・「心の裏腹な妻の言葉」を翻訳すると ①「あっちに行って!」 ・あなたのせいでめちゃめちゃに傷ついたの。ちゃんと謝って、慰めて! ②「勝手にすれば」 ・勝手になんてしたら許さないよ。私の言うことをちゃんと聞いて。 ③「自分でするからいい」 ・察ししてやってよ。察する気がないのは愛がないってことだよね。 ④「どうしてそうなの?」 理由なんて聞いていない、あなたの言動で、私は傷ついているの。 ⑤「なんでもない」 ・私、怒ってるんですけど?私、泣いているんですけど?放っておく気なの? ⑥「ひとりにして」 ・この状況で本当に一人にしたら、絶対に許さない。 ⑦「みんな私が悪いんだよね」 ・えっ?それって私が悪いの?私のせいなの?あなたのせいでしょ。 ⑧「やらなくていいよ」 ・そんな嫌そうにやるならもう結構。私はあなたの何倍も家事をしていますけどね。 ⑨「理窟じゃないの」 ・正論はもうたくさん。「愛しているから、君の言う通りでいい」って言いなさい。 ⑩「別れる」 ・ここは引けないの。あなたから誤って! ポジティブトリガーの作り方 ・念のために伝えておきたいのは、だからこそ、どんなに夫が準備に手間暇かけたとして も、サプライズを喜ぶ妻はほとんどいないということだ。誕生日にデートしようと誘わ れて出かけると、予告もなしに連れて行かれたのが高給フレンチレストラン。食事が終 わり、キャンドルの炎が揺れるアースデーケーキが運ばれてくる。と、同時に、楽団が バースデーソングを演奏し始め、あらかじめ預けておいたバラの花束を渡されて・・と、 こんなロマンチックな演出をされても、あまりうれしくない、どころか、その場に合わ ない(と男性は気づいていないが)服装や、完璧でないヘアやメイクの姿のまま注目を 浴びることが恥ずかしいし、惨めに感じていたりする。何よりもその日を思い描きなが らドレスを選んだり、美容院に行ったりする、そういう楽しみを全部奪われてしまった ことが悲しいのだ。妻の気持ちを考えないサプライズは、時として、特大ネガティブト リガーを作り出す。これもぜひ覚えておこう。 ・男の子たちは、赤ちゃんの頃から世の中を俯瞰して遊ぶ。男の子は、消防車などの動く 車のように、かたちや構造が目でわかるものが、やや離れたところにあると興奮する。 脳の中でそこまでの距離を測り、かたちを想像し、仕掛けを動かしたくてワクワクする。 それが空間察知力の高さを生み、好奇心を育てる。 ・こうして、男の子が「自分」そっちのけで、働く車に夢中になっている頃、女の子たち は、人形やぬいぐるみを抱きしめならが「自分」を感じている。自分が気持ちいい、自 分が楽しい、自分がちやほやされるのが、女の子にとっては、何より大切だ。 ・なぜかというと、哺乳類のメスは、自分が健康で快適な状態でないと子孫が残せないか らだ。自分を大切にすることは、そのまま種の保存につながる。種の保存は、生物にお ける最も基本的な本能である。したがって、自己保全に対する要求は、哺乳類のメスの 最も大切な本能なのである。 ・だから、女性は自分の体調変化を男性の何十倍も敏感に把握している。ちょっと寒けれ ば寒いと騒ぐし、ちょっと暑ければ暑いと文句を言う。おなかが空けば不機嫌になるし、 足が痛ければ歩けないとのたまう。 ・男から見ると、ただのわがままに見えるが、これは常に、自分を快適な状態においてお かなければならないという、責任感からくる言動だ。交尾さえ遂行すれば、その場で死 んでも種が起こせるオスとは、その責任の重さがまったく違っているのである。 ・女性脳は、自分と自分が大切に思う人のことを最重要視し、愛情と時間を注ぎたい、究 極のえこひいき脳なのだ。だから、いつでもどんなときでも相手を思うことを、愛の行 動だと信じている。残念ながら男性脳が向かっているのは、自分よりも、世界や宇宙。 「自分の気持ち」に関心がないから、自分の身内=妻にも関心が向かない。妻を自分の 近くに感じれは感じるほど、関心は薄れていく。それが男性脳だ。 ・自分の右手をわざわざ褒めないように、男は妻を褒め続けたりしない。自分の右手に 「愛しているよ」と言わないように、男は妻に愛を伝えたりしないのだ。拡張感覚の低 い女性脳は、一体感がないゆえ、言葉の「きずな」を欲しがるが、男には、なかなかそ の気持ちは通じない。 ・夫の一部になってしまった妻は、男にとって、一体化すればするほど、愛の言葉ももら えないし、一生懸命料理を作っても「美味しい」とも言わらず、髪を切ってきても「い いね」のひとこともないと嘆くことになる。 ・夫たちよ、褒めることなど思いつきもしないほど一体化した妻に、もし先立たれでもし たら?きっとからだの一部をなくしたかのような喪失感があるはずだ。ときには、妻に 愛の言葉をプレゼントしようではないか。 ・対象となるものを基点として、自分の立ち位置を把握する男性脳は、「一番」と言われ るのが好き。たくさんの中で、比較されて「あなたが一番」と言われたら気分がいい。 しかし、女性脳が好きなのは、唯一無二。男は、自分が言われて嬉しいから、「君が一 番きれいだ」などと言いがちだが、比べる対象がいるだけで、女はなんとなく不愉快な 気持ちになる。だから、「一緒にいることに意味がある。そんな女は君だけだ」「自分 にとって、君がオンリーワンの女だ」という言葉はハートに刺さる。 ・男女平等だと叫んでおきながら、こういうときだけ、女をふりかざすなんてズルイと思 うだろうか。しかし、哺乳類である人類の女性たちは、残せる個体数が少なく、生殖リ スクが高い。だから、比較的栄養に恵まれ、自らが所属する系の中で、比較的優遇され ていないと、生殖を安全に完遂できない。つまり、「えこひいきされたい」「大切にさ れたい」という気持ちは、ふわふわした恋心ではなく、やむにやまれぬ生殖本能なので ある。欧米男子たちのレディ・ファーストというマナーは、女性脳の本能にぴったりか なっているのである。 ・そもそも、男性脳には、女性脳が勝手に夢見る「包み込むような思いやり」という機能 はついていない。標準装備ではなく、経験で培うオプションなのである。欧米の男たち とて例外でない。彼らは、自然に思いやって行動しているわけではなく、子どもの頃か ら、母親にこのエスコートを男の心得として叩き込まれるのだ。 ・女性脳は、決まりきった言葉を欲しがる癖がある。特に、夫のことが大好きな妻は、 「私のこと好き?」「私がいないと寂しい?」と、同じ質問を繰り返す。答えは「もち ろん大好きだよ」「寂しいに決まっている」と、これも定型の肯定を繰り返すだけでい い。へそ曲がりな男は、この決まりきった質問に対して「どうしてかな?」とか「そう いう君はどうなの?」と変化球で返そうとするが、この場合は茶化すのは得策ではない。 女はわかりきった定型の答えを、飴玉を舐めているように何度も舌の上で転がして楽し みたいだけなのだから。 ・同居期間が20年以上の熟年離婚が増えている。厚生労働省が発表しているデータによ ると、同居期間が20年以上の離婚件数について、1985年には約2万組だったが、 2015年には約3万8千組に変化。つまり、この30年で熟年離婚は2倍近く増えて いることがわかる。同居期間30年以上の離婚件数に至っては、おの30年で約4倍に 増えている。 ・離婚の原因・理由は、異性問題、浪費や借金、肉体的暴力、精神的暴力、経済的虐待な ど、客観的にみてはっきりわかるもの以外に、長い年月をともに過ごした夫婦ならでは の原因・理由がある。それが、「この先ずっと、この人と一緒に人生を歩んでいく自信 がない」というもの。人生100年時代になり、60歳で定年退職を迎えても、人生は あと40年近く残されている。その年月を「この相手とともに過ごしていけるかどうか ?」と考えたとき、自分らしく生き直すために離婚という選択をするケースが増えてい るのだ。 ・ともに人生を歩み自信がなくなる「妻からの理由」を挙げてみると ①夫が家にいることがストレス ・夫が定年退職し、一日中家にいることで、今まであまり気にならなかった生活習慣 の違いが、妻のストレスになる。 ②性格の不一致 ・結婚当初から性格が合わないことに気づきながらも、子どもや生活のためにずっと 我慢していた。しかし、一緒に過ごす時間が増えることで、我慢の閾値を超えて何 もかもが嫌になってしまう。 ③会話がない ・子どもがいるうちは気がつかなかったが、夫婦ふたりになると会話が続かない。寂 しいだけでなく、一緒にいる意味がわからなくなる。 ④価値観の違い ・歳をとるに従い、価値観のズレがどんどん大きくなってきた。 ⑤義理親の介護問題 ・介護の負担が妻に偏る。また、それに関しての感謝がない。労わりの言葉がない。 夫や義理親に対する積年の恨みが噴出する。 ⑥家事に関する不満 ・夫は退職してのんびり過ごしているのに、妻には退職がない。夫が家にいるように なって家事が増える。また、家事に対して無関心、家事に口出しをするなど。 ・妻にとっては、昨日今日、別れを思い立ったわけではなく、夫の定年、子どもの独立、 親の介護などをきっかけに引きずり出された、過去のネガティブトリガー総決算の結果 なのだ。 ・夫にとって不幸なのは、男性脳の「愛の証」と女性脳の「愛の証」がまったく違うこと にある。男性脳にとっての愛の証は、責務を果たすことだ。小学生は、小学校へなんの 疑いもなく通う。「将来のために必要だから」とか「好きだから」とかいちいち考えな い。男の愛は、これに似ている。 ・毎日行きさえすれば、毎日教室に席があって、毎日美味しい給食が食べられる。男が思 い描いている女の愛も、そういうものである。だから、男は、雨の日も風の日も、二日 酔いの朝も当たり前のように仕事に向かい、家に帰り、稼ぎを渡す。それが男の「愛し ている」だ。 ・ところが、女という「小学校」は、男の気持ちを勝手に探る。男たちは思いもよらない ことで「誠意がない」「心がない」と判断されて、席が教室の外にあったり、給食がな かったりする。女という小学校は、けっこうひどい。 ・女性を察する能力は、本人の想像をはるかに超えて、本人も無意識のうちに大切に思う 存在のわずかな変化に気づいている。目の前のものを舐めるように見て、ちょっとの変 化を見逃さない能力で、もの言わぬ赤ん坊に健康状態がわかるし、子どもや夫の病気も 察知するし、嘘も見破る。「なんとなく気になる」というが、女性脳のリスクヘッジの トリガーであり、夫はそれに命を救われているのだ。 ・察することが愛だと思う女性脳。褒めて、認めてもらいたい女性脳。自分だけを特別扱 いしてほしい女性脳。ときには、愛の言葉や甘い優しい言葉も欲しがる女性脳。どれも これも、男性脳からすると難儀な脳ではある。しかし、女性脳が拗ねたり、怒ったり、 口うるさかったりするうちは、まだ夫に惚れている証拠。妻のためにと思わずに、自分 のリスクヘッジのために、妻の女性脳をせっせと慰撫しようではないか。 おわりに ・実は、脳科学的に「いい夫」とは、時に妻の雷に打たれてくれる夫のことだからだ。女 性脳は、家事と育児を片付けるため、生活の中で、あらゆる気づきとタスクを多重させ て走らせている。このため、日々をただ生きているだけでストレスがたまる脳なのだ。 さらに周産期から子育て中の女性は、ホルモンバランスが激変していくので、生体ホル モンが半端ない。 ・女性たちは、ときどき、このたまったストレスを”放電”する先を探しているのである。 そんなとき、まんまと夫が何か気に障ることをしてくれると、気持ちよ~く放電できる。 ・夫が完璧だと、その放電先が子どもになったり、自分に跳ね返ってうつに転じたりして、 危なくてしようがない。いい夫とは、「おおむね優しくて頼りがいがあるが、時に下手 をして、妻を逆上させる男」にほかならない。 ・逆上されたからといって、すべての原因が夫なのではないのである。だから、原因を真 面目に究明しようとしても、まったく埒が明かない。女はただ怒るために、怒っている。 本人も気づいていないけれど。そう。女は、本当のところ、かなり理不尽なのである。 ・しかし、その女性脳のストレスは、夫の6倍近い家事や、「家族のための気づき」を休 みなく行っている結果、たまったものだ。その放電の手伝いをするのは、ある意味、理 にかなっていると言えなくもない。 ・夫が家事を完璧にこなしてやり、親身に話を聞いてやれば、放電は少ない。家事や会話 をサボれば、放電は多い。女と暮らさなければ放電はないが、生活をすべて自分で回さ なきゃならないし、多くの場合、生きる意味を見失う。男の人生とは、この三択なので ある。さて、あなたは、どれを選ぶのだろうか。 ・夫婦というのは面白い。かつて、永遠の愛を誓ったあの日の煌めくような「愛」とは、 似ても似つかないところに「愛」の正体がある。しかし、結婚も35年を超えれば、 「理不尽な怒り」と「とほほ(苦笑い)」こそが、暮らしのアクセントであり、生命力 の源であり、ふたりにしかわからないきずなになるのである。 ・結婚の始め、「この人がいなければ生きていけない」と思った、その気持ちの色合いは 全然違うけれど、私は、またあらためて「この人がいなければ生きていけない」と思っ ている。私の感情の露出に、まったく動じないのは、この人だけだから。思いっきり放 電できて、手放しで泣いてなじって甘えられる、唯一無二の相手だから。 ・多くの結婚35年超えの妻たちが口にする実感である。夫婦の道は、照る日も曇り日も 嵐の日もあるけれど、継続は力なりである。最後の峠に咲く花は、案外、優しくてふっ くらしている。 |