糖質制限の真実 :山田悟

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日本人の6人に1人が血糖異常者、40歳以上に限定すると3人に1人が血糖異常者だと
いわれている。いまや糖尿病は国民病ともいえる病気である。しかし、糖尿病はほとんど
自覚症状はなく、危機的状況にまで悪化するまで気づかないことが多いといわれる。また、
医者などから「あなたは糖尿病です」と言われても、自覚症状がないため、あまり深刻に
考えずに、そのまま放置したままの人も多いようである。しかし、糖尿病は、深刻化する
と非常に恐い病気である。高血糖が続くことが原因で細小血管が傷み、それが腎臓、目、
そして神経の障害と進んでいく。さらには動脈硬化症へと進むと、冠動脈疾患といった心
臓病や脳卒中などの脳血管障害、そして足に障害が起こってくる。また、ガンや認知症へ
のリスクも非常に高くなる。とても、気軽に「おれは糖尿病だが」などと言いながら、大
食いなどしていられないのだ。
かつては、糖尿病に対処として、カロリー制限の方法がとられていたが、今は違う。今は
糖質制限の方法が一般的になっているのだ。糖質制限とはなにか。ロカボとはなにか。
今まで常識と思っていたことが、実は間違っていたということも複数見受けられる。この
本を読んで、正しい基本知識を得て、日常の食生活に取入れていくことが重要だ。糖尿病
の自覚症状が出たときではもう遅いのだ。
しかし、それは十分にわかっているのだが、甘い物が大好きな私には、なかなか止められ
ない。困ったものだ。

日本人の体に起きている異変
・今、日本人の死因は、1位がガン、2位が心臓病、3位が肺炎、4位が脳卒中となって
 います肺炎のほとんどは脳卒中の後遺症で起こっている物ですのでひとくくりにすると、
 ガン・心臓病・脳卒中の3つが、日本人の死につながる主な病と考えていいでしょう。
・かつては成人病と呼ばれていた生活習慣病とは、食事、運動、喫煙、飲酒などといった
 日々の生活習慣が発病や進行に関与する病気の総称です。現在の社会では、生活習慣病
 の増加が非常に大きな問題になっています。高齢者になるほど頻繁に病院にかかり、多
 大な医療費がかかるようになりますが、その大半が生活習慣病によるものです。
・一口に生活習慣病といっても様々な病気がありますが、糖尿病と高血圧と脂質異常病の
 3つで8割がたを占めるといわれています。そしてこの3つの疾患はまったく無関係な
 独立した疾患かというと、実はそうではないということも分かっています。
・生活習慣をもとにしてまず肥満が起こり、その下流で血糖・血圧・脂質の異常が、ちょ
 うど三つ子のように起こっていることが分かります。この段階のことを、メタボリック
 シンドロームと呼んでいます。そこからさらに下流に下がると糖尿病があり、糖尿病の
 さらに下ってきて透析、失明、足の切断、脳卒中、認知症など、色々なことが起こって
 います。   
・糖尿病に限定すると、だいたい日本人の6人に1人が血糖異常者、40歳以上に限定し
 たらおおよそ3人に1人の割合となります。そして糖尿病の増加は日本だけの問題では
 ありません。
・糖尿病とは一口でいうと、インスリンホルモンの働きが悪くなり、血液中のブドウ糖の
 値=血糖値が異常に高くなってしまう病気のことです。健常者の場合、血糖値は空腹時
 でおよそ100mg/dl未満、食後は140mg・dl未満に保たれています。これ
 が空腹時126以上、または食後200以上になると糖尿病と診断されます。
・糖尿病で本当に恐ろしいのは、糖尿病そのものよりも、糖尿病が発端で発病してしまう
 合併症です。糖尿病には三大合併症といわれるものがあります。細小血管が傷むことに
 よって起こる、腎臓、目、そして神経の障害です。
・そしてこの三大合併症と並んでリスクの高い病気が、動脈硬化症です。糖尿病から動脈
 硬化症へと進むと、冠動脈疾患といった心臓病や脳卒中などの脳血管障害、そして足に
 障害が起こってきます。
・高血糖はまた、ガンのリスクを高めます。大腸ガンや肝臓ガン、膵臓ガンは、普通の人
 と比べて、糖尿病の人の発症率が1.8〜1.9倍も高くなります。それ以外にも、子
 宮体ガンや乳ガンのリスクも高まります。
・実は、自分が血糖異常であることは、かなり深刻な状態になるまでなかなか自覚できま
 せん。血糖異常はまず食後高血糖として現れます。しかし、食後の血糖値が異常に上が
 ってしまっている人でも、空腹時血糖値は最後の最後、本当に糖尿病になる直前まで上
 がってきません。そのため、空腹時血糖値だけを測定する通常の健康診断では、異常が
 見つかりにくいからなのです。
・生物にとって糖質というのは、もっとも効率のいいエネルギー源なのだろうと考えられ
 ています。ご飯、パン、麺類などの農耕作物から作られる食品、いわゆる主食系の食べ
 物は、糖質がたっぷり含まれているからです。糖質は体の中で、基本的にブドウ糖とな
 ります。単糖類の一種であるブドウ糖は、人間を含むあらゆる動物が活動するための、
 エネルギー源となる物質の一つです。
・かつての人類は、体内に取り込んだ糖質を1日の活動で消費し、バランスが取れていた
 のだと思います。ですが、文明が高度に発達して体をあまり動かさなくなり、多くのエ
 ネルギーを必要としなくなった現代社会に暮らす私たちにおいては、糖質は体の中でダ
 ブつきやすくなってしまっているのです。
・糖質は、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、単糖類、そして糖アルコール類の5つに分類さ
 れます。単糖類というのは、ブドウ糖や果糖のように、1個だけで存在するものです。
 二糖類は、いわゆる砂糖やショ糖、麦芽糖といったもので、単糖類が2つ結合したもの
 です。  
・糖類とは、二糖類と単糖類の総称です。
・甘いものを控えていれば糖質を控えている、ということにはなりません。糖質を多く含
 む食品は、ご飯(米)、パンや麺類(主に小麦)、イモ類、カボチャ、大豆以外の豆類、
 お菓子、果物などです。逆に糖質の少ない食品としては、肉、魚、大豆製品、イモとカ
 ボチャ以外の野菜、ナッツなどが挙げられます。また調味料では片栗粉やみりん、ハチ
 ミツなどに糖質が多く含まれています。
・欧米の人はインスリンの出す力が強く、太らない限り、最終的に糖尿病にはなりません。
 太っていなければ、食べても食べても十分な量のインスリンが出るため、血糖は上がり
 にくいのです。一方、日本人の場合、そもそもインスリンを出す力が弱く、肥満になる
 前に血糖が上ってしまう人がたくさんいます。事実、日本人の場合、2型糖尿病を発症
 する人の半分以上は肥満ではありません。ですから、私は痩せているから大丈夫などと
 いう過信は禁物です。 
・血糖値の上限値が高いほど、体の色々な細胞に負担がかかり、インスリンをどんどん出
 せなくなっていきます。結果的に、さらに血糖値が上がりやすくなってしまうという悪
 循環に陥ってしまい、糖尿病を発病します。
・そして、残念ながら年齢とともに、インスリン分泌能力の低下が進んでいくということ
 は間違いありません。
・かつて糖尿病の治療には、脂質制限が有効だと信じられていました。しかし今では、そ
 の意味は完全に消え失せてしまいました。   

黒が白になった栄養学の激変
・血糖は糖質の摂取量が多いほど上がりやすくなります。三大栄養素のうちのたんぱく質、
 脂質、また炭水化物のうち食物繊維に、血糖を上げる機能はありません。これらは逆に
 食後血糖を抑制する働きをします。
・血糖値を上昇させるのは糖質のみであるということ。さらに、同じ量の白米を食べても、
 メインディッシュのたんぱく質や油脂、そして野菜を一緒に食べた食事のほうが、血糖
 値の上昇を防ぐことができるということです。結果的に、カロリーの摂取を増やすほど、
 血糖値の上昇を防ぐことができています。白米だけでなく、たんぱく質や脂質、あるい
 は食物繊維を加えることにより、血糖の上昇はなだらかになっていくのです。つまり、
 単純にいえば、白いご飯で食べるよりも、チャーハンや卵がけご飯のほうが、血糖値を
 抑制できるのです。
・おかずとして豆腐を加え、さらにマヨネーズをかけて油を加えれば、カロリーは増えま
 すが、血糖の上昇はより緩やかになります。さらに、ほうれん草などの野菜をつけて食
 物線維を加えたほうが、より血糖値が上りにくくなるのです。
・食事をする時の順番も大切です。野菜が最初である必要はありません。肉や魚が先でも
 OK。大事なのは、糖質を最後にお腹の中に入れる。
・食物繊維は単に糖の吸収を緩やかにするだけでなく、脳を介して肝臓の糖の放出にブレ
 ーキをかける働きがあり、これによって血糖値の上昇をさらに防いでくれるということ
 なのです。食物線維はさらに、インスリンが筋肉と脂肪組織に働いて糖を取り込ませる
 働きをしているとき、脂肪組織の側だけフタをし、筋肉のほうを優先させてくれるとい
 う働きもします。そうすると、より太りにくいということになります。
・血糖の上昇を抑えるためには、たんぱく質や油の摂取を増やすことが重要なのです。し
 かし私たちは昔からずっと、「健康のために油はなるべく控えたほうがいい」と言われ
 続けてきました。    
・少なくとも一般的に魚の油、植物性の油、そしてオリーブ油は積極的に摂ったほうがい
 いということになったのです。 
・ナッツは1日一つかみ程度、オリーブ油は1週間に1リットルでしたが、日本人の食生
 活でこの量の油を使いこなすのはなかなか難しいと思われます。ですから今は、これま
 でと正反対に、どうやって油を使おうか、どうやって食べていこうかという新たな観点
 で考えていく必要が出てきているのです。
・糖尿病とも関連の深い動脈硬化の予防のためには、積極的にバターなどの脂質を摂った
 ほうがいいという最新の考え方が紹介されています。
・とにかく、健康のために食べる油を控えるべきだという考え方は、一般には疑われるこ
 ともなく、長く信じられてきました。ところが21世紀になってからの様々なデータは、
 たとえ食べる油を控えたとしても、血液中の資質の指数は良くならないし、食べるコレ
 ステロールを控えても血液中のコレステロール値は下がらないということが明らかにな
 りました。   
・日本でもアメリカと同様、かつて糖尿病の増加は、自動車の普及などに伴う身体活動量
 の低下と油の摂取の増加が原因であると考えられていました。しかし現実には、日本人
 が油の摂取量を増加させ、同時に糖尿病も増加していたのは20世紀までで、21世紀
 入ってからは油の摂取量を減らしたにもかかわらず、糖尿病は増える一方だったのです。
・2013年には「たんぱく質の制限はしてはいけません。なぜなら制限しても何もいい
 ことがないからです」となりました。このあまりにも急激な変化に、戸惑われるのも無
 理もありません。この10年間で、油についても糖質についてもたんぱく質についても、
 それまでの常識だったと思われていたことが軒並み打ち消され、正反対になりました。
・低糖質の食事にすると、血糖の上昇の幅が小さくなります。これが糖質制限の食事法が
 良いとされるゆえんです。
・もちろん高血糖自体も細胞の死を生みますが、血糖値が激しく上下動を繰り返すほうが、
 細胞が死ぬ確率は上昇します。激しく上下動するよりも、高血糖のまま安定しているほ
 うがまだましかもしれません。
・血糖の上下動が大きければ大きいほど、認知機能が低下するという結果が出ています。
 血糖の激しい上下動が起こった結果、多くの脳細胞が死に、認知機能が低下していくと
 いうことになるわけです。     
・血糖値の上下動の大きさが、認知機能と関わり、負の相関関係があるということは、ほ
 ぼ間違いありません。実はこれから先、アルツハイマー病に代表される認知症は、発展
 途上の貧しい国で増えるといわれています。認知症の患者さんは高齢者が多いので、ア
 ルツハイマー病は長寿の人が多い先進国の問題という印象が強いと思いますが、貧しい
 国では若い頃から認知症、いわゆる若年性アルツハイマーが増加すると考えられていま
 す。 
・食べ物とエネルギーあたりの費用=エネルギーコストを考えると、一番安くエネルギー
 を確保できる食品は油です。しかし油をそのままごくごくと飲む人はいないので、普通
 の食べ物で安いものと考えると、次にくるのが穀類なのです。必然的に、貧しい国ほど
 安い穀類でエネルギーを摂ろうと考えます。糖質を大量に摂取することになり、そして
 そして血糖の上下動が激しい日常生活を送ることになります。その結果として糖尿病や
 認知症が増えるだろうと考えられているのです。
・あらゆる原因での死亡率の高さは、空腹時血糖値よりも食後の血糖値によって規定され
 ているという結果が出ています。つまり、食前及び食後の血糖値はもちろんですが、空
 腹時血糖値が正常でも食後血糖値が異常の場合、心臓病をはじめとする重大の病気の発
 症リスクとなり、死亡率を高めているということがわかります。
・インスリンが通常の濃度で正常に働いている間はいいのですが、糖質をいっぱい食べて、
 インスリンの分泌が完全に間に合い、血糖の上下動がさほど起こってなかったとすると、
 今度はインスリンが過剰に出すぎている高インスリン血症という病態になります。この
 高インスリン血症も問題となります。実はインスリン自体が、ガン細胞を増殖させてし
 まう原因ではないかともいわれています。
・インスリンの分泌が過剰だと、血糖値は正常だけれど太るという現象が起こります。こ
 のように、高血糖そのものも血糖の上下動もよくないし、インスリンの分泌が多くなり
 過ぎることもよくない。ということは、糖質摂取量を少なくして、必要最小限のインス
 リンで血糖値をなだらかに保っていくというほうが、体にとっては一番負担が少ない方
 法だということになるのです。
・常々、多くの糖質を食べていて、インスリン分泌の頻度が高いほど、膵臓に負担がかか
 って早く傷みやすいと考えられています。また、普段から筋肉を使っている人ほど、イ
 ンスリンに対する反応性がいいということも分かっています。毎日の食事を低糖質なも
 のにした上で、トレーニングをしてある程度の筋肉量を保っていれば、膵臓もアンチエ
 イジングができて血糖が上げりにくい体になります。
      
カロリー制限は意味がない
・厚生労働省もこれまで、メタボ対策としてカロリー制限を推奨してきました。確かにカ
 ロリー制限は今でも太っている人の減量法としては有効です。しかし、カロリー制限の
 食事は、おいしくない・量が少ない・楽しくない、と、苦痛が多く、続けるのが非常に
 困難なものです。
・アンチエイジングに効くといわれたカロリー制限が、人間では骨粗しょう症のような病
 気を引き起こす原因になり、またカロリーを減らせば筋肉が削られるのは確実なので、
 将来寝たきりになるリスクの高いロコモティブシンドロームの要因になる可能性までも
 指摘されるようになりました。
・低比重リポ蛋白(LDL)の中に含まれるLDLコレステロールは、動脈硬化との関連
 が深いことから悪玉コレステロールとも呼ばれ、健康を害するものとして減らすべしと
 されています。コレステロールはエネルギー源ではないので、運動で燃やして減らすこ
 とはできません。コレステロールを下げたいと思ってウォーキングをしている人は、気
 の毒ですがまったく無駄な努力をしているということになってしまいます。
・血中のコレステロールが高いと、やはり動脈硬化を惹起します。だから下げなければい
 けません。運動もダメ、食事もダメとなると、基本的にコレステロールを下げる一番有
 効な方法は薬ということになります。しかし、それを言ってしまうと身も蓋もないので
 別の解決法を探すならば、太っている場合にはまず痩せることです。痩せれば血中のコ
 レステロールが下げるということがよく経験されています。
・糖質の少ないナッツ(特にクルミ)については、その摂取でLDL−CやTCに改善が
 生じることが、複数の無作為比較試験で報告されています。その意味では、糖質制限食
 を実践している際にクルミ摂取を心がけるとさらに良いものと想定されます。コレステ
 ロールと糖質制限についていえることは、今のところそれくらいになります。
   
緩やかな糖質制限=ロカボが人類を救う
・欧米人はもともと、インスリンの分泌能力が日本人と比べて高いので、糖質の高い食品
 を摂ると、血糖値が上がる前にインスリンがどんどん出ます。すると体内の糖は脂肪細
 胞のほうへ取り込まれていくので、必然的に太りやすくなります。そうして肥満になる
 と、今度は脂肪細胞のほうからインスリンの働きを邪魔する物質が出てきて、インスリ
 ンは出ていても自由に働けなくなってしまいます。すると、ついには血管から糖を細胞
 に放り込めなくなるという状況になり、糖尿病を発症するのです。
・このように欧米人の2型糖尿病は、カロリー制限で痩せることが、治療の第一選択肢で
 あるということは確かです。しかし、これを日本人にそのまま当てはめることはできま
 せん。もともと欧米人よりもインスリンの分泌能力が弱い日本人は、肥満になる前にイ
 ンスリンが相対的に不足し、痩せていても糖尿病になってしまう人が多いからです。
・日本人で太っていないのに糖尿病になってしまう人は、糖尿病患者全体の半数以上にも
 のぼります。そのため、とにかく痩せることが主目的のカロリー制限食が、糖尿病の治
 療食として妥当かどうか、特に日本人の場合は疑問符がつくということになります。
・ダイエット法として最初に広まったのは、「炭水化物抜き」でした。しかし炭水化物抜
 きだと、糖質だけではなく、炭水化物の中に同時に含まれる食物繊維までも抜くことに
 なってしまいます。食後の血糖値を上げているのは炭水化物の中に糖質だけで、食物繊
 維はたんぱく質や脂質と同じく、一緒に食べることによって、糖質摂取に伴う血糖上昇
 をなだらかにできるということがわかっています。つまり、食物繊維は決して控えるべ
 きではないので、「炭水化物抜き」はあまりよくないということになります。
・ロカボ食をやって損することはまずありません。特に積極的にロカボを取り入れるべき
 なのは、中年期以降の人です。20代の人たちもやって悪いことは起こりませんが、食
 事で制限するよりも体を動かす習慣をつけることのほうが大切です。
・30代半ば以上の人は、たとえ運動習慣を持っていたとしても、ロカボを取り入れるべ
 き対象となります。中年期以降の市民ランナーの人で、健康だと自信を持っているにも
 かかわらず、食後高血糖の人が実は多いのです。これを見てしまうと、中年期以降は運
 動も過信しないほうがいいのだと思います。運動してスリムな体型をキープしている人
 は、どこか自分の体に過信しているところがあります。そういう人こそ、年齢を重ねた
 ら客観的に自分の体と向き合ったほうがいいと思います。
      
ロカボ生活をはじめよう
・ロカボな食事は1食あたりの主食の量を減らすことからスタートします。ご飯なら70
 グラムほどの盛りつけにしましょう・おかずはたっぷり食べて構いません。主食を減ら
 すことで物足りないと感じる分は、おかずの量を増やすことでカバーするといいでしょ
 う。   
・ロカボで積極的に摂るべき食品は肉、魚、豆腐などの大豆製品、野菜、そしてナッツで
 す。野菜でも芋、かぼちゃ、豆は糖質が多いので注意が必要です。日本人は比較的、ナ
 ッツと豆を混同していることが多いのですが、ナッツは脂質豊富で糖質の少ない食材、
 一方大豆以外の豆類は糖質を豊富に持っている食材なので、きちんと区別して考えまし
 ょう。
・ご飯70グラムとはどのくらいかということですが、厚生労働省が定めた基準でいえば、
 ご飯茶碗にふんわり持った1膳分は150グラムとなりますので、約0.5杯分という
 ことになります。
・ご飯70グラムをパンに置き換えると、6枚切りの食パンちょうどい枚分になります。
 麺類を家で調理する場合は、半玉程度にするといいでしょう。
・カロリー制限の世界で考えると、ざる蕎麦などはとても健康にいいもののように思えま
 る蕎麦1枚は、わずかなネギやノリ以外に具材がないので、たんぱく質と脂質、食物繊
 維が摂れていないということになります。それでは血糖値が上がって当たり前なのです。
 蕎麦は確かに低カロリーですが、糖質を大量に含んでいるので、高血糖を是正すること
 はできません。  
・あまり意識されないことが多いですが、たいていの果物はたくさんの糖質を含んでいま
 す。特に昨今の日本の果物は、消費者の求めに従って甘みを増す方向で品種改良がされ
 ていますので、糖質量はますます多くなってきています。
・果物に関しては、世の中一般のイメージよりも、現在はお菓子としての側面が強くなっ
 ていると考え直さなければいけないと思います。糖質は制限しているつもりでも果物を
 ふんだんに食べていると、血糖値も中性脂肪も下がらず、肥満が良くなりません。果物
 は健康に良いという短絡的なイメージは一度捨て、糖質の多い嗜好品であるということ
 を頭に入れておいていただきたいと思います。
・糖質にも数多く種類があります。その中で特に注意しなければならないのが、果物の甘
 さのもとである果糖です。果物やハチミツに多く含まれている果糖は、他の糖質の同量
 摂取したときと比べ、血糖値の上昇は多くても20パーセントほどしか見られません。
 血糖値の上昇があまり見られない果糖は食後血糖値の上昇度を示す指数のGI値が低い
 ので、健康的なのではないかと誤解されるている方が多いようです。
・果糖は体内で中性脂肪に変化して内臓にくっつき、脂肪肝などを引き起こしやすくなり
 ます。その結果、血糖値を下げるインスリンの働きが弱くなってしまうのです。
・朝ご飯として、スムージーにフルーツとハチミツをたっぷり入れて飲んだり、朝は果物
 だけにしたりという人がいます。ただでさえ朝は血糖値が上がりやすいところに、果物
 とブドウ糖をたっぷり入れているわけですから、これは高血糖と肥満を維持してしまう、
 危険きわまりない食事法ということになります。
・果物以外にも、健康に良いというイメージを持たれがちにもかかわらず、ロカボも観点
 からは特に注意を要する食品があります。例えば十穀米や玄米がそうです。これらのお
 米は、精製をしていないので食物繊維がふんだんに含まれ、健康的な食材と考えられて
 います。しかし糖質量は白米とまったく変わらないという事実を忘れてはいけません。
・ふすまパンと全粒粉パンを勘違いしている人も多いようです。ふすまが小麦の表皮だけ
 を使った低糖質食材であるのに対し、全粒粉は小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にし
 たものですので、まったく低糖質ではありません。白米と玄米では糖質量が変わらない
 のと同様、胚芽の部分が入っている限り、全粒粉パンは普通のパンと同じ糖質量を持っ
 ています。
・スポーツ飲料は健康にいいと信じ、ゴクゴク飲んで血糖値を上げている人が多数いるの
 ではないかと思います。また最近特に利用が増えているエナジードリンクと呼ばれる滋
 養強壮剤の類も、血糖値を上げる物質が豊富に含まれているので、細心の注意が必要で
 す。
・最近では、ケーキ屋さんや一流のパティシエさんが、低糖質スイーツの開発に力を注い
 でいて、糖質の少ない人工甘味料を使用したおいしいスイーツが次々と発売されていま
 す。食べたいときにはそういうものに注目して、手に取っていただけたらいいと思いま
 す。   
・自分で低糖質のスイーツを作ることもおすすめです。インスタントコーヒーに人工甘味
 料を加え、ゼラチンで固めたコーヒーゼリーです。これであれば糖質ゼロのスイーツと
 いえます。
・お酒に関しては、ウイスキー、焼酎、ジン、ウォッカなどの蒸留酒は、もともと糖質ゼ
 ロですのでまったく問題ありません。醸造酒は糖質を含みますが、糖質が多い日本酒で
 あっても、1合に含まれる分量は、せいぜん8〜9グラムほどですので、食事のほうを
 コントロールすれば、十分に飲むことができるはずです。また、醸造酒の中ではワイン
 が比較的糖質の少ないお酒です。シャンパンでも白も赤も、3杯飲んだとしても5グラ
 ムもいきませんので、あまり気にせずに楽しんでいいと思います。最近では低糖質ある
 いは糖質ゼロの発泡酒や日本酒が多数発売されていますので、そういう商品を選ぶのも
 一つの方法です。
・ロカボ生活を実践するにあたり、強い味方となるのが血糖値への影響が少ない甘味料=
 広義の人工甘味料です。その一方で、人工甘味料は、巷でよくその危険性が噂されてい
 ます。 
・糖質の摂取量が多いほど、肥満あるいは糖尿病の発症率が高いというデータは複数あり
 ます。そして肥満も糖尿病もガンとからんでいることが分かっているので、糖質の摂取
 量が多い人ほど、ガンになる確率が高いのは当然なのかもしれません。また、太ってい
 る人が糖尿病やガンになりやすいのも当然で、その人たちが人工甘味料を変えることに
 よって、ことによるとガンの発症率を落とせる可能性もあるのではないでしょうか。こ
 のようなデータがある中で、天然のものがいいと過信し、人工甘味料をやめて砂糖を選
 ぶなどというのは、非常に馬鹿げたことだということになります。
 
疑問にお答えします
・日本人はこれから超高齢化社会を迎えるにあたり、筋肉や骨が衰えないようにしなけれ
 ばなりません。  
・認知症に対する対応は、やはり食後の高血糖を是正するということが重要になります。
 肉体的には筋肉と骨を維持しなければならないので、たんぱく質を積極的に食べるべき
 です。   
・筋肉や骨を作りたいと思ったら、肉が一番効率的です。そういう意味ではやはり、年を
 取ってからも肉はしっかり食べておくべきだと思います。肉を食べるときにカロリー制
 限の考えかたに基づいていると、脂身は良くない、鶏のささみが一番といわれますが、
 ロカボの考え方ではその必要もありません。もちろんささみが悪いわけではないので、
 ささみを食べたい日は食べて構いませんが、サーロンステーキを食べたい日は食べれば
 いいし、ラムの美味しい脂身を落とす必要はなく、美味しいものを美味しく食べて下さ
 いということになります。
・子どもにロカボは不要ですが、気をつけなければならない糖質があります。それは糖質
 制限というよりも食育という観点からの話になりますが、是非注意してもらいたいこと
 があります。糖質の一種である果糖ブドウ糖液糖です。この甘味料で味つけされた、ス
 ポーツドリンクに代表されるジュース類などは、大量に飲むと非常に太りやすく、小児
 糖尿病の危険性も増してきます。
・糖質制限に懐疑的な人の声として、脳がブドウ糖を必要とする、という一つの知識から、
 勉強や仕事でたくさん頭を使うなら、たくさんの糖質を摂ったほうがいい、甘いものを
 摂ったほうがいいというものがあります。そして、ロカボ食を食べ続けると脳機能が低
 下するのではないかと質問を受けることがあります。しかしこの考え方は、ナンセンス
 もいいところです。脳がブドウ糖を使うたびにいちいち低血糖になってしまうような人
 は、何百万年という危機の時代には死に絶えて、現在の人類として生き残れていないは
 ずだからです。 
・口から砂糖、ブドウ糖を摂れないと、脳みそが働かなくなるなどというのは完全な嘘、
 あるいは迷信です。