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私は8年ぐらい前から空腹時血糖値が110ミリグラムを超えるようになった。これは私
が東京での単身赴任生活を始めた時期と重なっている。つまり、私の単身赴任生活が私の
血糖値を押し上げてきたのだ。それでも、まだ110ミリグラム台でヘモグロビンAlc値
も5パーセント台で、既にイエローゾーンには入ってはいるが辛うじて糖尿病の宣言は免
れていた。
しかし、2年前に突然、空腹時血糖値が140ミリグラム台に跳ね上がり、ヘモグロビン
Alc値も6パーセント台後半の値となってしまい、糖尿病専門医院にて糖過負荷試験を受
けた結果、「糖尿病」との宣告を受けてしまった。
私は、それまでは、糖尿病と言えば、太っている人の病気で、私のようなどちらかという
とやせ型の人間にはあまり縁がないものと思っていた。そして、糖尿病とはその名前から
推察して「尿に糖分が混じって出る病気」程度の認識しか持ってもらず、大好きなケーキ
やチョコレートを控えればいいのだな、といった程度の甘い認識しか持っていなかった。
しかし、糖尿病とはそんなに甘い病気ではなかった。糖尿病は、自覚症状がないために、
そのまま放置されているケースが多いようだが、自覚症状が出てきたら、もう手遅れで、
最悪の場合、失明や重度の腎臓障害、そして両足切断などの取り返しのつかないことにな
ってしまうようだ。
現代社会は、ストレスや食生活の乱れ、運動不足などが原因となって、糖尿病の人がどん
どん増えていると言われている。当初は自覚症状があまりない糖尿病だが、そんな「甘い
病気」ではない。この本を読んで、糖尿病について再認識し、予防に努めたいものだ。

はじめに
・普通、糖尿病というとインポテンツになる病気だとか、金持ちの贅沢病だとか、インス
 リン注射が必要になるらしいとか、合併症が怖いとか、そのような部分的な情報や知識
 はあるのですが、「糖尿病」とは何か、そして「高血糖」を指摘された場合、それが健
 康にとってどのようなリスクを持ち、将来にわたる健康生活の維持のためには、どんな
 対策をとることがベストなのかということについて、一般の方はほとんど無知に等しい
 のではないのかと思うのです。
・糖尿病は、単に血糖の問題だけではなく、全身の代謝病だというふうに理解することが
 大切だと思いました。「糖尿病」というのは、典型的な不治の慢性病だと思います。し
 かし、そこから先どうなるのかは、本当に本人次第なのです。
・うまく「糖尿病」と付き合い、血糖値をコントロールして結構な生活を送るのも、合併
 症によって悲惨な状況に進むのも、まさに本人次第ということがよくわかったのです。
・私の場合は、ヘモグロビンAlcが12.8パーセント、筋肉崩壊も始まり、高脂血症、
 脂肪肝、高血圧と、診断された時は相当重度の「糖尿病」の状態でした。
 
「糖尿病」と宣告されて
・空腹時血糖値が血液100ミリリットルあたり260ミリクラムと非常に高い値でした
 ので、「これは完全な糖尿病だ」と宣告されたのです。
・長期の血糖値を反映するヘモグロビンAlcが12.8パーセントもありました。
・先生は薬を飲んで血糖値をコントロールしているというのですが、お腹が張って困ると
 か、いつもお腹がゴロゴロするとか言っていたので、必ずしも薬は理想的ないと思った
 のです。
・糖尿病にともなって現れる病状として、昏睡状態、インポテンツ、神経障害、視力低下、
 感染症の悪化などがあります。
・現在、日本や多くの先進諸国で急増していて、中年以降に発病する生活習慣病としての
 糖尿病は、日本でも1000万人近くが危険ありとされ、社会的な問題ともなっている。
・膵臓のインスリン分泌機能が完全に駄目になったわけではないのですが、インスリンが
 不足気味になったり、インスリンの働きが悪くなったときに高血糖状態になります。
・糖尿病になると、空腹時でも血糖値が200ミリクラムから300ミリグラム台二上が
 ることがあります。そんなに高い血糖値がつづくと、生体の重要な構成成分であるたん
 ぱく質にブドウ糖が結合し、糖化たんぱく質となります。これができるとたんぱく質の
 機能を失うのみでなく、血管壁を痛めたり、細い血管をつまらせたりします。それが、
 糖尿病の合併症です。
 
わが糖尿病体験を語るー食事編
・中年以降に発病する2型糖尿病は、膵臓のインスリン分泌能力が徐々に衰えて、不足す
 るようになった状態です。それで、血液中にはブドウ糖があふれて高血糖の状態が続く
 のに、細胞内にはそのエネルギーの燃料が届けられないために、次第に痩せるとか、体
 がだるいなどの病状が現れてくることになります。
・中年以降に発病する2型糖尿病は、膵臓の働きが完全に駄目になってしまったわけでは
 ないのです。膵臓が疲れて、インスリンの分泌能力が衰えているのですが、しかしまっ
 たくインスリンが分泌されないわけではありません。ただ、正常よりもインスリンの働
 きが悪いために、血糖値が高めに推移していることが問題なのです。血糖値が高めに推
 移すると、合併症の問題が出てきます。ですから、血糖値を正常の範囲にコントロール
 することができれば、糖尿病の進行を止めることができるわけです。
・検討血が高めであっても、まだ合併症や自覚病状が出ていない段階であれば、インスリ
 ン注射の助けなしに、血糖値をコントロールすることができます。そのための方法が、
 血糖降下率による治療と、「食事と運動」による治療なのです。
・血糖値を低く抑えるためにまず最初にしたことは、毎日を規則正しい生活に戻すことで
 した。不規則な生活を送っていると、体のリズムが乱れるばかりでなく、実際にもつい
 食べ過ぎてしまうためです。食事は一日に三回と決め、朝昼晩を規則正しい時間にとる
 ことにしました。夜も遅くまで起きているとお腹が空くので、九時には寝ることにしま
 した。
・最初に規則正しい生活をして、次に必要なのは食事の量と内容の見直しです。何しろ、
 糖尿病と宣告されるに至った理由は食べ過ぎ、つまりカロリーの取り過ぎにあるわけで
 すから。カロリーの取り過ぎは、即、高血糖となって数値に現れてくるからです。血糖
 値を低く抑えるためにも、摂取カロリーを低く抑える必要があるからです。とりあえず
 一日の摂取カロリーを1600キロカロリーときめました。
・糖尿病治療というのは、まさに最初は空腹感との闘いです。糖尿病の一番の病状は「食
 欲」かもしれません。
・「食事と運動による療法」においては、まず食欲との闘いに勝つ必要があります。食欲
 との闘いに勝利するためには、いくつかの工夫があります。中でも大事なのは、ゆっく
 りと、よくかんで食べるということです。
・人間の食欲は脳の食欲中枢がコントロールしています。満腹感を感じるためには、脳の
 満腹中枢の神経細胞に、血中たんぱく質の一部が結合する必要があります。腸で吸収さ
 れたものが脳に届くには、食べ始めてからだいたい15分くらいかかります。
・制限カロリーを守るために、どうしても取り組む必要があるのが、脂肪の取り過ぎを抑
 えることです。これさえできれば、カロリー制限はそれほど難しくありません。カロリ
 ー制限中の食事からは脂肪を追放するのが、一番効率よく摂取カロリーを減らす良案で
 す。栄養学的にいっても、脂肪の摂取量は、一日の食事のうち約20パーセントもあれ
 ばそれで十分なのです。
・肉よりも魚、それも青みの魚はDHAやEPAを含むので、進められています。
・目に見える油脂類は取らないのがコツなのです。そのような食生活ができるようになる
 と、制限カロリーは意外と楽にクリアできます。天ぷら、とんかつなどはもちらん我慢
 です。野菜炒めなどの油も極力おさえます。それからサラダは体にいいと思ってたくさ
 ん食べる人がいますが、マヨネーズにはけっこう油が含まれているので注意が必要です。
 柚子味のノンオイルタイプのドレッシングをお勧めします。ケーキやクッキーは、甘さ
 もさることながら、油脂が非常に多く使われているので、避けたほうがよい食べ物です。
・食べ物もうひとつ注意しなければならないのは果物です。よく「野菜・果物を健康のた
 めにいっぱい取りましょう」というキャンペーンがありますが、野菜はいいとして、果
 物は意外に血糖値を上げるのです。
・それから、もうひとつはお菓子です。私は甘いものが好きですが、糖尿病には甘いもの
 はいけないと思っている人が多いでしょう。確かに食後の血糖値を上げるのは糖分です
 が、これは運動でコントロールできます。長期的にみれば一番いけないのは脂肪なので
 す。たまには和菓子の饅頭や羊羹など、一日一個ぐらいなら食べても構合わないと思う
 のです。むしろそれを我慢していらいらするより、気分にゆとりが生まれるでしょう。
 
わが糖尿病体験を語るー血糖モニター編
・薬に頼らないで、安全に食事と運動で血糖値コントロールをおこなうには、自分で簡易
 血糖値測定器を買い、常に自分の血糖値の変化を把握することが大事です。
・ます「血糖値測定器を買いなさい。採血用の針がついていて、指先から血液をほんの一
 滴採取し、それを手のひらサイズの小さな測定器で読み取ります。すると、30秒程度
 で血糖値が表示される仕組みです。これは非常に便利な器具です。
・この簡易血糖値測定器が普及しないのは、健康保険の適用が認められていないというこ
 とに大きな原因があったのです。1型の糖尿病には保険の適用が認められているのに、
 2型の糖尿病には認められていないのです。
・それほど高い器具ではなく、せいぜい1万五千円かそこらで買える値段ですので、薬な
 しで血糖値コントロールをおこなおうという人は、ぜひ購入をすることをお勧めします。
・私の場合は食べ始めて30分ぐらいで、あるいはものによっては1時間ぐらいで血糖値
 がピークになるということがわかった。ピーク時には、血糖値が250〜300ミリグ
 ラムになりますが、運動をすれば50〜100ミリグラムも簡単に下がることもわかり
 ました。ちなみに口の中が苦しくなったり、食後眠くなるときは血糖値が300ミリグ
 ラム近くになっています。
・スバゲティなどは、GI値が白米に比べると60パーセントぐらい、つまり、吸収が6
 割ぐらいで、血糖値を上げないということで推奨される食べ物です。
・スパベティのように消化・吸収に時間がかかるものは、二時間値、三時間値は低いけれ
 ども、そのあとじょじょに消化されて夜中に吸収され、かえって次の朝高くなるという
 ような具合の悪いことがあるのでしょう。
・血管におきる合併症を防ぐには、ビタミンやミネラル、そして抗酸化物質も必要です。
 抗酸化物質としては、ビタミンCyaビタミンEが有名です。それらは体内に発生した
 活性酸素の害を抑えることができると考えられています。
・合併症を防ぐ意味で、抗酸化能をもつ食品を多く含み食事を取ることが大事です。高血
 糖になると代謝が変化し、活性酸素が増える状態になりやすいからです。
・アルコールは、やはり血糖値にはよくありません。やせ型の人はアルコール量で23グ
 ラム、一日一合程度のアルコールでも糖尿病促進に働くといっています。
・私は小豆を混ぜて炊いた玄米を普段食べています。おかずとして野菜の煮物や炒め物、
 魚の照り焼きや網焼きに果物をそえればよいのです。これに汁物として、ワカメやキノ
 コ類の味噌汁やスープを選び、食後はお茶やヨーグルトで締めくくれば、手軽に理想的
 な食事になります。
 
わた糖尿病体験を語るー運動編
・歩くことの目標を1万歩に定めました。
・ヘモグロビンAlcdeで、4.3パーセントから5.8パーセントが正常の範囲とさ
 れています。
・ヘモグロビンAlcは、空腹時とか満腹時とか、睡眠時とか、それらの血糖値を平均し
 て、だいたい三ヶ月の平均どれくらいかという値なのです。そして、この値は糖尿病の
 合併症になるリスクとよく関連しているのです。
・私のヘモグロビンAlcの値は、最初に糖尿病と宣告されたときにはなんと12.8パ
 ーセントもありました。後で糖尿病の専門の先生に聞いてみると、糖尿病でヘモグロビ
 ンAlcno値は、高くても最高で13パーセント台だと言っていました。
・糖尿病の合併症は、ヘモグロビンAlcが9パーセント以下だと、その危険性が急激に
 減るのです。
・合併症の危険は9パーセントから急に高まること、平均は6パーセント以下であること、
 6パーセント台でも合併症のリスクはほとんどないと考える。
・食事と並んで、運動はやはり血糖値コントロールの重要な鍵なのです。
・軽めの運動でも、十分な血糖値コントロール効果があることがわかってきました。例え
 ば、30分ほど外を歩くだけで、血糖値はすぐに下がります。
・夕食後に血糖値が高いまま寝ますと、一晩中高いままの状態になってしまうからです。
・筋肉も脂肪も何十キログラムもの大きさがあり、体の中での最大の臓器といえます。そ
 して運動血糖が下がるということは、インスリンによらなくてもブドウ糖が取り込まれ
 る仕組みがあるということになります。
・有酸素運動のジョギングやマラソンのさいに、特にブドウ糖を積極的に取り込んでいる
 可能性があります。ですから、運動をしながら血糖値を測ると、如実にさがってくるの
 が誰でも実感できるはずです。
・糖尿病患者は脂肪肝になりやすい。
・私は、運動すればするほどいいのかと思い、マラソンやトライアスロンなど激しい運動
 にも挑戦しています。一時間ぐらい目一杯の体力を使ってレース用の自転車で走っ帰っ
 てきたあと、これだけ運動したのだから、さぞ血糖値も落ちたかなと思って期待して測
 ると、180とか200ミリグラムというように案外高いことがあります。激しい運動
 をすると逆に血糖値が上がるという現象が起きたのです。
・激しい運動は一時的には血糖値を上げますが、ときどき血糖値を上げることも必要では
 ないのかと考えています。もし運動しなければ、肝臓には糖がどんどんはいっていき、
 グリコーゲンがすでに飽和状態にあるので、残りは全部中性脂肪のほうに回っていって
 しまうでしょう。すると、脂肪肝や高脂血症になるのではないのかと思います。
・やはり食前の運動よりは食後の運動のほうが効果的だということがわかりました。食前
 の運動は、必ずしも食後の血糖値上昇を抑えないのです。それから、特に血糖降下剤を
 服用している人では、低血糖になる心配があります。
・食前の運動はむしろ血糖値が上がったりさがったりで、不規則なカーブになることがわ
 かりました。それに対して、食後30ふんから運動すると、血糖値は確実に下がります。
・運動の内容として、食後30分走るのと歩くのではどちらがいいかということも調べま
 したが、歩くだけで十分だということがわかりました。
・普通の場合は、食後30分程度歩くのが血糖コントロールに一番いいというのが、私の
 体験から来た結論です。
 
区別が必要な「高血糖症」と糖尿病」
・現在どのくらいの血糖値だと「糖尿病と診断されるのでしょうか。検査方法にはいくつ
 かの方法があります。もっとも一般的なのは、朝の空腹時血糖値を測ることです。血液
 100ミリリットルあたり110ミリグラム未満が正常、126ミリグラム以上は糖尿
 病、110から125は境界型糖尿病とされます。境界型は、糖尿病予備軍とも呼ばれ
 ています。
・もうひとつは75グラムのブドウ糖を飲んで、2時間後の血糖値を測る方法です。正常
 な人は140ミリグラム未満、200ミリグラム以上は糖尿病とされます。140から
 199ミリグラムの人は境界型とされます。この異常を耐糖異常といいます。
・1999年4月までは、糖尿病の定義として空腹時血糖値が140ミリグラム以上とい
 う基準が使われていました。ところが、1999年5月に、126ミリグラム以上を糖
 尿病にするというように基準が引き下げられたのです。この定義の変更によって糖尿病
 患者の数はいっきに増えました。
・現在の糖尿病の診断基準の、126ミリグラムという値は、じつは欧米の糖尿病疫学研
 究をベースとしているのです。今や126ミリグラムという数値が一人歩きして、何が
 なんでも126以下に血糖を抑えなければ、合併症の危険が目の前に迫っているように
 脅す医師もいるようです。しかし、126を少し超えたからといって、すぎに合併症を
 発病するというデータはありません。
・もちろん、予防的な観点からは、126ミリグラム以上に危険ありということも間違い
 ないでしょうが、126を少し超えたからといって、ただちに薬物投与をすることはい
 かがなものかと思います。薬を飲んだら本当に糖尿病は進まないのか、という疑問もあ
 ります。
・最近の米国の研究によると、心筋梗塞のリスクは耐糖能異常者で糖尿病患者と同じリス
 クにあるのに対して、空腹時葛藤による境界型糖尿病患者におけるリスクは認められな
 かったのです。
・私の場合、空腹時血糖値が300ミリグラム近い、かなり高い値で発見されました。そ
 れでも薬を飲まずに食事と運動だけで血糖値コントロールをおこない、10年になりま
 した。なんら副作用のことを悩まず血糖値コントロールに成功しているのです。
・私の体験から考えると、「高血糖」は、発見されたときに基準値を多少オーバーしてい
 るくらいの値であれば、それほど緊急を要する問題ではないと思います。
・たいていの患者は、医師の前に現れるまでに高血糖の状態で数年の経過期間があるはず
 です。もちろん合併症を伴った重症の糖尿病は別ですが、検査で高血糖が発見されたく
 らいでは、すぐに薬でどうこうしなければならないほどの緊急時代ではないはずです。
 つまりそれが、本格的な「糖尿病」と、検査で高血糖あるいは耐糖能異常が発見された
 だけで、まだ身体by病状や自覚病状がない「高血糖症」の違いだと思うのです。
・多くの医師はすぐにでも合併症が始まるかのような危険を指摘して、二度の検査で「糖
 尿病」を宣告し、目標の数値まで血糖値を下げるように薬を処方する場合が多いようで
 す。しかし、合併症のリスクは直線的に上がるものではありません。
・合併症のリスクはヘモグロビンAlcが9パーセントぐらいから急激に上がります。ヘモグ
 ロビンAlcが6パーセント台なら、ほとんど合併症のりすくはなく、7パーセント台でも
 数パーセントの増加でしょう。そのことを考えても、それほどすぐに薬に頼ってよいか
 どうかは大いに疑問です。糖尿病の薬にも副作用があり、そのリスクも考えるべきです。
 しかし、高血糖を放っておくと怖いことも事実です。それは、高血圧を放っておくと、
 やはり大きな病気のリスクファクターになることと同じです。
・健康診断で「血糖値が高めです」といわれたとき、一番怖いのは、「医師は合併症が危
 険というが、まあ今のところ具合の悪い病状でもないし、とりあえず放っておこう」と
 思って、そのままずるずると生活習慣を変えないことです。しばらくは大丈夫でしょう
 が、3年、4年、5年と経つと、次第に膵臓が弱って本格的な糖尿病に移行するでしょ
 う。 
・糖尿病実態調査では、役6000人を調査すると、半分の人が高血糖を指摘されながら
 診療を受けていないのです。何もしないというのは非常に危険なことです。
・尿糖は、決闘が200ミリグラムを超えないとテステープでプラスになるような糖は出
 ないのですから、糖尿病という診断名自体が妥当な名前ではなくなっています。
・疾患概念として、「高血糖症」を定着させ、それで合併症を伴った真の「糖尿病」に発
 展させない対策を講じることが大事です。高血糖が指摘されて5年もたって、視力障害
 や歩行困難があらわれてから受診する人が大勢いるのは問題です。そうならないために
 も、「高血糖症」の段階で、食事と運動による生活習慣の改善に取り組むことが最善の
 方法と思います。
・糖尿病の合併症には、おもにふたつのタイプがあります。ひとつは細い血管にくる病変
 で、もうひつとは太い血管にくる病変です。血糖値が高めであると、血液中の糖化タン
 パク筆が細い血管の壁内に沈着して弾力性を失わせ、徐々にその機能を駄目にしてしま
 うのです。特に細い毛細血管が集中している大事な臓器が、目の網膜と腎臓です。
・糖尿病性の網膜症は細い血管にくる病変の中で、代表的なものです。成人以降に失明す
 る人の実に多くが、現代でも糖尿病性の網膜症から失明しています。網膜の毛細血管に
 微小血管瘤ができて、眼底出血や網膜剥離の原因になります。
・初期の単純網膜症は毛細血管瘤や小さな点状出血程度で、自覚病状はありません。中期
 の前増殖網膜症になると、線状出血や網膜最小血管異常がみられるようになります。後
 期の増殖網膜症になると硝子体出血が起き、飛蚊症や赤いカーテンがかかったように見
 え、やがて失明します。
・また白内障や緑内障にかかるリスクも高くなります。単純網膜症が発病するまでに5年
 から10年かかります。血糖値のコントロールがわるいとき、単純網膜症から前増殖網
 膜症には2〜3年で進行し、さらに1〜2年で増殖網膜症へ進展します。
・成人してからの失明は、点字を習うものも大変で外出もできなくなり、生活の質は想像
 できないほど悪くなります。
・腎臓にくる病変は、腎臓の紙球体という血液の濾過装置を詰まらせて、それがうまく機
 能しなくなることから生じます。
・2002年現在で人工透析を受けている患者さんのじつに28パーセント、6万1千人
 が、糖尿病による腎症で人工透析を受けています。腎不全であらたに透析を受けるよう
 になった患者数3万3千人のうち、糖尿病に由来するものは39パーセント、1万3千
 人であり、年々増えている状態です。この場合も、悪い血糖コントロール、高血圧、尿
 路系感染症がリスクとなります。
・太い血管にくる病変の代表的なものが動脈硬化です。そして、太い血管の動脈硬化が引
 き起こす心筋梗塞や脳出血など、突然死の可能性も高まることになります。大血管疾患
 は、高血糖よりも血圧が関係しているといわれますが、ブドウ糖負荷後2時間の血糖値
 が140から200ミリグラムの耐糖能異常患者でもリスクが高まるといわれいます。
 空腹時血糖値が110から126の境界型ではリスクが上がっていません。リスクを下
 げるには高血糖の血糖値コントロールのほかに、収縮期血圧を130ミリ以下に保つ
 ことが必要になります。
・またそのほか、高血糖が続くと神経細胞にソルビトールという糖が溜まるため、神経が
 麻痺して、手足のしびれを起こしますし、抹消の血液の循環が悪くなることから手足の
 壊疽を起こします。壊疽を起こして足指の切断に至ると生活のクオりぃティが大幅に落
 ちることになります。下腿切除になると歩くこともままならなくなります。神経障害と
 循環障害があいまってインポテンツの病状が出ることもあります。
・また、高血糖が続くと、免疫能力が落ち、感染症にかかりやすくなります。糖尿病患者
 は歯周炎などにもなりやすく、抵抗力が弱いため、死因として肺炎などの感染症がかな
 りあります。
・合併症の予防には血糖値のコントロールとともに、血圧のコントロールが大事で、むし
 ろ合併症のリスクを下げるには血圧のほうが重要という研究結果もあります。
・一定基準以上の高血糖症、高血圧症は、さまざまな合併症を発病する危険が増すので、
 それを予防するためにも、ヘモグロビンAlcを7パーセント以下に、収縮期血圧を130
 ミリ以下に保つ必要があります。この両方を長期にわたって達成するためには、「食事
 と運動療法」以外に道はありません。
・日本人の死因をみると第一位はがん、二番目が心筋梗塞です。あとは、脳出血がありま
 すし、糖尿病もジワジワ増えてきています。
・しかし、血糖値コントロールのよい人は天寿をまっとうする人がいくらでもいます。

メタボリックシンドロームとしての糖尿病
・私が糖尿病と診断されたとき、肥満と高脂血症があり、血圧も多角、筋肉崩壊と微量の
 たんぱく尿もあって、合併症を伴った典型的な糖尿病でした。
・2型糖尿病になる人は、その前に何年も肥満があるなど、特の肥満のリスクが指摘され
 ています。場合によっては、高血圧が先に指摘される場合もあります。私の場合も血糖
 が高いと同時に肥満があり、血圧も少し高く、特に血中脂質が高かったわけです。最近、
 これらの病気の根っこは共通なのではないかという考えが出てきました。それがメタボ
 リックシンドロームという病名です。病状としてまる@内蔵に脂肪がいっぱい蓄積する、
 A耐糖能異常(高血糖症)がある、B中性脂肪の値が高い、CHDLコレステロールが
 低い、D高血圧がある、というような状態を内蔵肥満症候群と名付けたのです。
・インスリンは食欲を増大させる方向に作用しますから、血液中に利用されないインスリ
 ンがあふれると、食欲が増して肥満につながるという問題もあります。
・日本人は白人にくらべるとインスリンの量が半分ほどしかなく、それだけ血糖が細胞に
 利用されにくく、肥満になりやすい体質なのです。
・人間医は3万数千の遺伝子がありますが、40種以上もの遺伝子が太る能力、つまり、
 エネルギーを貯め込む能力に関係しています。人類の歴史は99.9パーセントが飢餓
 との闘いだったのです。
・肥満はどのぐらいから肥満と呼ぶのでしょうか。日本人の場合、1999年のガイドラ
 インではBMIが25以上で、ウエストが85センチ以上、女性で90センチ以上を内
 蔵肥満といっています。
・BMIとは体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ったものです
・糖尿病患者の肥満度をみると、日本糖尿病学兄けんきょうによると、普通の日本人の平
 均のBMIは22.7であるのに対し、糖尿病の患者は23.1となっていて、それほ
 ど太っているとはいえません。
・一方、イギリス人は一般人の平均は24.5に対し、糖尿病の人は29なので、相当太
 ってから糖尿病になるということになります。
・メタボリックシンドロームは、そのように肥満が基礎にあり、高脂血症や高血圧、ある
 いは高血糖の病状として表れます。そしてそれらが、メタボリックシンドロームという
 大枠の中でのできごとだということがわかれば、基本的な食事療法、運動療法が個別の
 治療に先行すべきだと理解されるでしょう。この部分の是正がなければ糖尿病をコント
 ロールすることはできません。
・個別の病状に対する治療法では、三種類も四種類もの薬を同時に飲まなければなりませ
 ん。一種類の薬でも副作用の問題があるのですから、何種類もの薬を同時に飲んだとき
 の副作用は、複雑なものになるでしょう。なにより投薬で一時的に検査値がよくなった
 り病状が軽減すると、患者自身の生活習慣を変えねば、という動機が消えてしまいます。
・日本人の場合、戦後の食生活の急激な変化、つまり肉食や、油脂類の大量消費が、正常
 な代謝能力の限界を超えてしまったと考えられます。日本人は長い歴史の中で、江戸時
 代の終わりまで、基本的には肉食をしませんでした。穀物、野菜、海藻類、豆類などを
 中心にした食生活を送ってきました。ところが戦後、急激に肉食が増え、油脂類の大量
 消費の時代に突入しました。そのことが体に何らかの代謝異常を引き起こしているので
 はないかと考えられます。
・また、車社会が進み便利になったための運動不足、ストレスn多い生活、過食なども原因
 のひとつとして挙げられています。そのあたりの食生活の見直し、運動習慣の見直しが
 まず必要になってくると思います。
 
糖尿病薬の作用と副作用
・多くの糖尿病患者が誤解している点ですが、血糖値を下げる飲み薬は、疲れた膵臓の機
 能を回復させるものではありません。そのような作用をする薬はないのです。尿素剤は、
 むしろその反対の作用をします。尿素剤を使い続けると、ほぼ数年のうちに膵臓の機能
 が完全に駄目になり、インスリン注射に移行する人が多いようです。つまり膵臓の弱っ
 てしまったポンコツ車を無理して毎日高速フル回転で使い、とうとう壊してしまうよう
 なことになります。
・最近、即効性のインスリン分泌促進剤が開発されましたが、やはり、膵臓に無理な負担
 をかけて、無理やりインスリンの分泌を促進することになります。長期の影響はまだわ
 かっていません。
・この薬は、肝臓からのブドウ糖の放出を抑える薬ですが、副作用として低血糖を起こし
 やすいという問題点があります。それ以外にも肝細胞内のグリコーゲンを減らさないと、
 吸収されたブドウ糖は脂肪酸の方に合成されるようになり、中世脂肪が増えることにな
 ります。かえって脂肪肝などが増えないか心配です。
・糖尿病の治療薬には副作用が多く、なあkには重篤な副作用を起こす例も多々報告されて
 います。決して気軽に飲む薬ではないのです。飲み薬を処方された患者の側が、そのこ
 とを十分に認識しているかどうかが、これから問題にされるのではないでしょうか。特
 に最近は医療訴訟なども頻発しています。
・もっとも基本的な糖尿病治療薬の問題点は、高血糖を抑えることを目的とするために、
 低血糖を引き起こしやすいことにあります。高血糖は800ミリグラムくらいになって
 も昏睡にはならないといわれますが、低血糖は50を切ると低血糖性昏睡を起こし、危
 なくなります。ですから、薬を飲んでいる場合は、高血糖を抑えることと同時に、常に
 低血糖に気配りする必要があります。
・人によって効く薬と効かない薬があり、いろいろ試してみて、血糖値を下げる薬を見つ
 けるという方法です。しかし、そうまでして薬で血糖値を下げるのは何のためでしょう
 か。もちろん、血糖値を下げるのは合併症のリスクを下げるためです。しかし、薬には
 膵臓機能を回復させる働きはありませんから、一時的に血糖値を低く抑えても、必ずま
 た、もっと重大な膵臓機能障害による高血糖の問題が再燃してきます。
・空腹時血糖値が250ミリグラム以上、あるいは随時血糖値が350ミリグラム以上と
 なった2型糖尿病、重賞の腎障害や肝障害があるときはインスリン治療が必要になると
 いわれます。しかし、増殖性網膜症のあるときは急速な血糖コントロールが網膜出血を
 きたすので、ゆっくりとヘモグロビンAlcを下げねばなりません。
・糖尿病の治療としてまず普通は血糖降下剤が使われ、合併症の病状があれば高脂血症薬
 や血圧降下剤も使われます。
・大勢の糖尿病患者のカルテを見ていますと、薬では糖尿病の進行を防げないことがはっ
 きり見て取れます。ほんの一時的に、2年か3年は血糖値を下げますが、確実に膵臓は
 弱っていきます。
・薬で血糖が下がるため、高血糖症あるいは糖尿病が治ったと思い、食事と運動療法を中
 断したり、おろそかにするようになる人がずいぶんいます。それほどのリスクがあるの
 に、一時的に血糖値を下げる必要があるのでしょうか。
・私は、薬を全然飲んでいないので、薬の副作用について実際に経験したわけではないの
 ですが、薬を飲んでいると、低血糖の問題など、いろいろやっかいなことが多いようで
 す。命に関わる副作用もあります。薬を飲んで血糖値が50ミリグラム以下になります
 と、ひどい寒気を感じ、震えがくるといった病状に続いて低血糖性の昏睡が起こります。
・英国の研究では血糖を下げる以上の効果が血圧を正常範囲にすることによって得られる、
 という結果でした。つまり、血圧が低い状態に保たれればまず合併症にはかからない、
 と考えてよいでしょう。
・糖尿病だといわれて、これから一生糖尿病と付き合っていこうという人は、ぜひ、まず
 は「食事と運動」による治療を試してみてほしいと思うのです。厚生労働省によると糖
 尿病治療のカイドラインでも、「まず始めは、十分な食事と運動による指導があって、
 それでも改善が見られない場合に限り、薬を処方する」となっています。
・いろいろな人が糖尿病について相談にくるようになったのですが、そのとき、「お医者
 さんに食事と運動の指導はされましたか」と聞いてみると、そんな指導はされたことが
 なく、いきなり薬を出されて、これを飲みなさいと言われたという人がほとんどでした。
・考えてみると、全国に医師は20万人以上いても、糖尿病の専門医は3000人しかい
 ないので、大方の人は専門医でない医師の治療を受けていることになります。それで、
 十分あ知識を与えられず適切な指導もされないままに、薬が処方されている場合が多い
 のではないかと私は思っています。
・血糖値をコントロールする生活を送っているうちに、それまであった高血圧症や高脂血
 症といってよい数値がみるみる改善され、全身のだるさや疲れやすさ、肩こり、何とな
 く気分の優れない感じなどの不定愁訴が全部きれいに治ってしまったからです。
 
治療法の選択肢
・空腹時血糖値126ミリグラム以上を糖尿病とすると決めたのは、アメリカの糖尿病学
 会の決定に倣ったことですが、それが日本人にも妥当な数字なのかという疑問が残りま
 す。私たち日本人を含むモンゴロイドは、欧米人に比べて血糖値が上がりやすい遺伝子
 をr持っているからです。
・血糖値が上がりやすいというのは、それだけ食べ物を有効活用できる体の仕組みでもあ
 るわけです。
・単にアメリカの学会に追従して、けっとうちミリグラム以上を糖尿病と決めてしまうの
 ではなく、これからは日本人にとって、本当はどのぐらいの高血糖が危険水域となるの
 かという、詳しい、長期間にわたる調査が必要になってきています。そういう調査があ
 って始めて、本当の合併症の危険もわかってくるのだtと思います。
・空腹時血糖値110ミリグラムから126ミリグラムの間にある「糖尿病予備軍」とい
 われる人は、食生活の改善や生活習慣の見直しで、それほど無理なくもとに戻ることが
 できるはずです。早急に生活習慣の見直しをおこない、食事と運動に気をつけ、体重を
 減らす努力を始めれば、無理なくもとに戻ることができるのです。
・「糖尿病予備軍」といわれる人は、それほど高血糖の状態が長年続いているわけではな
 いので、膵臓の機能があまりダメージを受けていないと推察されます。できるだけ早く
 生活習慣の見直しをおこなうことが大事です。もちろん、たばこは禁煙する、アルコー
 ルもほどほどに、ということも大切です。
・しかし生活習慣を変えて、次の検査で血糖値が正常に戻っても、そこで治ったと考え、
 気をゆるめて元の食生活、生活習慣に戻すのは危険です。一病息災でイエローカードを
 もらったと考え、食生活の見直しや運動の習慣を継続する必要があります。
・126ミリグラムを超えていても、合併症がなければ、やはり比較的簡単に元に戻すこ
 とができると思います。問題は、かなりの高血糖の状態で発見された人たちです。食後
 二時間の血糖値が、200とか300ミリグラムの数字で発見されると、お医者さんは
 「完全な糖尿病です」と宣告することが普通です。そして、すぐに薬物による血糖値コ
 ントロールを勧められます。
・いったん「完全な糖尿病です」と言われるくらいの「高血糖症」の段階で発見されたら、
 その時点で一生の付き合いと覚悟を決めることです。それはまず、元の健康体には戻ら
 ない、治らないものと考えた方がいいと思います。それはなぜかというと、発見された
 時期が問題なのです。私のように血糖値300近くという完全な糖尿病の状態で発見さ
 れた場合は、じつはその前にそうとう長い期間、高い値の高血糖症の時代が続いていた
 のだと思うのです。
・空腹時血糖値が150ならヘモグロビンAlcは7パーセントぐらい、200だと8パーセ
 ントぐらい、300だと9パーセント、400で11パーセントぐらいの見当になりま
 す。
・長く高血糖状態・高インスリン血症の状態が続くと、糖尿病と診断された時点ですでに、
 膵臓がポンコツ車になっているわけです。それはもう元には戻らなくて、あとはそのポ
 ンコツ車をいかにいたわって走っていくかということになるのです。いわたって走るこ
 とによって、まだ30万キロでもはしれるかもしれまいし、反対にそこでさらに乱暴に
 走り続けていれば、それこそすぐ先に車が壊れてしまうかもしれません。
・では、膵臓をいたわりながら生活するとはどういうことでしょうか。まず、膵臓がポン
 コツ車になってしまっているのですから、インスリンがあまりたくさん分泌されないと
 覚悟を決めることです。そして、それに見合った小食の生活をすることが膵臓をいたわ
 ることにつながります。油脂類を避けて、カロリー制限を守るようにします。
・インスリンの代わりに、運動により血糖値を下げることも膵臓の負担を軽減します。反
 対に尿素剤などの血糖値降下薬は、疲れた膵臓に鞭打つことにつながります。しばらく
 は高速で走れるでしょうが、やがて完全に壊れえしまう時期が早めます。
・血糖値が200ミリグラム以上で発見された場合も、やはり「食事と運動」による療法
 がベストであると考えララます。
・網膜症や腎症が進んでいないかぎり、軽い有酸素運動は効果的です。マイペースで無理
 しない程度から始めれはよいのです。食事と運動で血糖値がどう変動するかを実感する
 のが効果的な治療のスタートです。
・しかし、血糖値が200ミリグラム以上で発見されると、合併症の危険が高いのです。
 そこで、血糖値コントルールをかなりしっかりとおこなうことが必要になってきます。
 それには簡易血糖値測定器で、こまめに自分自身の血糖値をチェックし、さらにヘモグ
 ロビンAlcの値を6パーセント台に下げてそれを保つことが大事です。あわてて薬を使わ
 なくても多少の合併症はそれで消えていくでしょう。簡易血圧計も買って時々血圧を測
 ることも必要です。130ミリグラム以下に保つのが理想的、これも食事と運動で達成
 できることです。
・これからは自分の健康は自分で守らなければならない時代になりました。刻金医療費が
 30兆円を越え、結構保険でまかなえる部分も頭打ちになってきています。年金もどん
 どん減りそうな中で、できるだけ元気に働き続けねばならないでしょう。医者にパター
 ナリズムを期待して、全幅の信頼を置いて治療をまかせる時代は終わったように思いま
 す。
・つまり、自己責任によって治療の選択をすることが要求されるようになったのです。病
 院で治らない病気も多々あります。自分の健康には、それこそ自分で気をつけていかな
 ければならないのです。
・糖尿病は遺伝や環境の影響もあるのでしょうが、基本的には過食や運動不足が長年続き、
 肥満になってついにある一定の水準を超えると、過労状態の膵臓機能の衰えは、もう元
 に戻らないのです。あとは、ゆっくりと自分の膵臓をいたわりながら生活することが大
 事です。
・一番悪いのは、生活習慣を変えずに、今までどおり過食、運動不足、不規則な生活を送
 り、食べたいものを腹いっぱい食べて、それで薬を飲んで、安心していることです。
・膵臓を回復させる薬はありませんから、その生活は3年、4眼mm、あるいは数年後には
 必ず破綻します。そのままのデイ活を送っていたのでは、重篤な合併症が起きて後悔す
 る羽目になります。
・血糖値が高めで発見されたら、早めに生活習慣の見直しをおこなうことがもっとも適切
 です。ぐずぐずと投薬をうけているよりも、食事と運動により体重を落として、無駄な
 脂肪細胞を減らす必要があります。食事と運動で肥満を解消すれば、たいていのインス
 リン抵抗性は改善します。
 
天寿を全うする知恵
・究極的には薬に頼らない決心が第一です。基本的な食事療法や運動療法を取り入れず、
 薬を使った血糖値の見かけ上の低下に安心していると、合併症など、必ずリスクが高く
 なるほうにつながっていきます。
・糖尿病の発症には、心の問題も重要です。私が糖尿病を発症したきっかけにはストレス
 もあったのでしょう。自分がストレスだと思っていなくても、体のどこかでそれをスト
 レスと感じていたのでしょう。生きがいをもって仕事をしていると、疲労を感じないた
 めに、過労死にいたる者はほとんどこのタイプだそうです。
・糖尿病あるいは血糖が高いといわれて落ち込む人は多いでしょう。「なぜ自分が」と理
 不尽さに怒りを覚える人もいるかもしれません。しかし、考えてみると、それは天が与
 えた警告でもあります。「今までの生活を見直し、今後のことを考えなさい」と転機を
 与えてくれているのです。それを前向きに受け止めるか、自分に降りかかった災厄のよ
 うに受け止めるかで、体の反応は随分違うのです。ホルモンの分泌の仕方まで変わって
 きます。
・食に関して、現代の日本人はものすごく傲慢になっている面があります。ですから、国
 全体でいうと、食べ物の四分の一も捨てる羽目になっています。実際、宴会場などに行
 っても、食べ残しがいっぱいあるのではないですか。自給率が50パーセントを切って
 いるのに、これでは問題です。
・食べて命を養う、という感覚。植物にしろ動物にしろ、他者の命を食べて自分の命を養
 っているという感覚を日本人は失ってしまったのではないでしょうか。
・日本人もかつて持っていたという宗教心というか、食べ物をありがたいと思う心を取り
 戻すことが大事だと思うのです。食べ過ぎて肥満になり、高血糖を指摘されたことは、
 そういう人生哲学を見直すよいきっかけになたと私は思っています。
・最近は医学というと実験の結果報告が多く、ラットやマウスを使った結果がそのまま人
 に当てはまるという発想になりがちですが、そもそも動物は、心やストレスなどが人と
 はまったく違います。そのあたりのことを加味して考えると、やはり医療というものを、
 きちんと人の立場に立って考えることが重要だと思うのです。