「定年からの人生(日本とアメリカ)」 :袖井孝子

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この本は、定年に関して、日本とアメリカの状況を比較したものである。この本を読ん
でみると、アメリカでも定年後に悠々自適の生活を送れるのは、ごく一部の人々だけの
ようである。
やはり、定年は人にとって人生の中でも一番大きな節目となるのだろう。それがどのぐ
らい大きなものなのかは、経験した者でないとわからないのだろうと思う。
この本の冒頭にある「自ら進んで退職した人の半分から3分の2は辞めなければよかっ
たと後悔している」という部分はかなりショッキングなことではないのかと思う。
やはり、人は働いて収入得るという行為が、生きていく上で大きな意味を持っているの
だと実感する。
しかし、人は必ずいつしか定年を迎えなければならない。自発的な定年もあれば、不本
意ながら定年に追い込まれる人もいるだろう。
定年後の最大の苦しみは何もすることがないことだという。そしてそれと共に大きな不
安となるのが経済的な問題あるという。定年後に経済的な不安を持たない人はごく少数
の人々だけだろう。多くの人は年金に大きく依存することになるが、その年金も支払い
年齢がどんどん繰上げられ、もらえる金額も減少してきている。また、そんな年金すら
もらう資格がないという人も多く存在する。こういう問題は日本だけかと思ったらアメ
リカのほうが先を行っているようだ。
こんなことを考えると、定年は恐怖のように思えてくる。この本を読んでますます「定
年後に好きなことをやろう」というのが夢物語であると実感した。やはり、好きなこと
をできるのもある程度の収入が得られ、体も自由がきく今しかないのだとつくづく感じ
る。
なお、この本の後半には、そういう辛い定年後の生活の仕方の指南もあるので参考にな
る。

リタイアメントー日本とアメリカ
・日本の定年は、強制的な退職に近いが、アメリカの定年は自発的な退職により近い。
 退職者のうち強制的にやめさせられるのは5パーセント足らず。約5割は健康上の理
 由で、残りは自ら進んで退職している。健康上の理由なしに、自ら進んで退職した
 人のうち約3分の2は、社会保障年金が全額支給される65歳に達する前にやめてし
 まう。
・もちろん、自分で退職の日を決めるからといって、アメリカの退職者が何の心の動揺
 もなく会社をやめていくわけではない。退職理由のトップは、病気やけがのために働
 き続けることが困難だからである。おそらく、かなりの人が、心の底では働くことを
 望んでいるのではなかろうか。
・自ら進んで退職した人の半分から3分の2は、やめなければよかったと後悔している
 という。妻と話し合って退職後の計画を十分に組み立てたはずの人でさえ、退職の前
 後にはいろいろ思い悩む。もし急に病気になったら、明日交通事故にあったら、どう
 やって暮らしていこうか。
・退職後の生計については、しっかり計画を立てたつもりだが、どこかに抜け穴はなか
 っただろうか。インフレの進行がはげしいので、貧乏生活に追い込まれるのではない
 か。定年後は新しい仕事を始めるつもりだが、はたして成功するだろうか。やはり定
 年まで勤め上げるべきではなかったか。
・悩み、冷や汗は流れ、動悸は高まり、血圧は上がる。長年生活の中心であった職業活
 動から離れることは、生活のさまざまな面での調整を必要とする。働いていた時は会
 社の決めてくれたスケジュール通りに動いていればよかったが、退職をすれば自分で
 日課をつくらねばならない。空白の予定表を前に、朝から晩まで予定のつまっていた
 日々を懐かしむことになる。
・強制的に退職させられるにせよ、自発的に退職するにせよ、何らかの退職ショックは
 避けがたい。しかし、まだ十分に働ける能力があり、会社のために貢献したい気持ち
 でいっぱいなのに、不当にも退職させられた、という感覚を持たないだけ、アメリカ
 の退職者のほうが、会社離れが容易なのだろう。

神話の崩壊
・退職後は、自分の好きなことをして過ごすというアメリカ人の「黄金の神話」は崩れ
 てしまった。かつて退職者の最大の悩みは、何もすることがないということだった。
 無為の苦しみから抜け出すために、余暇やボランティア活動が奨励された。しかし、
 今や退職後の生計をいかにして維持するかが、最大の課題である。
・定年後といえば、何よりも先にお金の話が出てきる日本は、進んでいるというべきだ
 ろうか。

男が袴をぬぐ日
・アメリカ人はしばしば転職を繰り返し、自分の仕事への愛着心は強いが、会社への帰
 属意識は弱い、とよく言われる。しかし、これはトップエリートの特性ではないだろ
 うか。日本のビジネスマンや学者が会って話しをするのは、おおむね普通よりも抜き
 ん出た人たちだ。こうした人は自分の能力に自信を持っているから、簡単に勤め先
 がかわる。しかし、卓越した能力に恵まれない凡人は、おいそれと会社をかわるわけ
 にはいかない。日本にくらべれば数は少ないかもしれないが、アメリカで会社人間に
 も何度かお目にかかったことがある。
・日本の会社人間を見ると、これはまさに滅私奉公。生活時間に関する国際比較調査の
 結果をみると、日本の男性が職場で過ごす時間は世界一。おまけに、職場の同僚と過
 ごす時間、バーやレストランで過ごす時間も世界一。よほど仕事熱心なのか、さもな
 くば、よほど家に帰るのが嫌なのだろう。事実、帰宅拒否症の男性サラリーマンが増
 えているという。
・会社一筋できたサラリーマンの存在証明は、自分自身ではなくて会社にある。会社か
 ら離れることは、自分の存在理由が失われるに等しい。定年後に備えて、資格を取る、
 趣味を育てる、会社以外の仲間を持つ、といったアドバイスは、単に定年後の生活方
 法を示唆するだけでなく、会社にとらわれない自分を育てることへのすすめでもある。
・最近、女の自立という言葉をよく耳にする。その内容は論者によって違っているが、
 手短にいえば、夫に頼る必要のない経済力と子に頼る必要のない精神力を身に付ける
 ことだろう。しかし、女に比べて男が自立しているかといえば、はなはだ疑わしい。
 男が自立しているように見えるのは、会社という支えがあるからではないだろうか。
 支えをとってしまえば、パタンと倒れてしまうかきわりのようなサラリーマンが少な
 くない。

七十歳の大統領
・働くことに生きがいを見いだす日本人と違い、おおかたのアメリカ人にとって、働く
 ことは生計を維持するためにしかたなくやっている”苦役”のようなもの。一日でも
 早く職場を離れて、のんびり暮らしたいと思っている。

破綻する年金制度
・これまでアメリカ人は、社会保障制度を信頼し、退職をすれば年金が受け取れるもの
 と信じてきた。このところへきて、にわかに年金財政の悪化を知らされ、愕然とし、
 不安を抱き、怒り、絶望し、おろおろしている。ほとんどの人は、社会保障制度の仕
 組みについて関心を払わなかったし、財政がどのような状態にあるか知ろうともしな
 かった。突然、お化けの入ったつづらを開けられて仰天しているのが今日のアメリカ
 だ。
・突然、実態を知らされてあわてふためかないように、そして、退職の日に、もはや年
 金制度が存在しなかったとか、年金がもらえるとしても涙金にすぎなかったというよ
 うなことのないように、政府の年金政策には十分に関心を払うことが必要だ。

早期退職
・早期退職者のすべてが、自ら進んで退職への道を選んだのではない。半数近くは健康
 上の理由で退職しているのである。平均寿命が延長し、高齢者の健康状態が改善され
 たにもかかわらず、病気やけがのために定年まで働き続けられない人はかなりたくさ
 んいる。特に、きつい、きけん、きたないの3K職業に従事する者の多い非白人には、
 健康上の理由で早期退職せざるをえない人が少なくない。
・高度産業社会では、労働の密度やスピードが増すにつれて、事故のために労働能力を
 失う人が増えている。また、職場のストレスのために精神に異常をきたす人も多い。
 昔にくらべ長生きで健康な老人もふえた代わりに、健康でない中高年者も増えている。

一枚の名刺
・日本は肩書社会、どの組織に所属し、どんな地位にあるのかをはっきりさせておかな
 いと暮らしにくい。それに比べ欧米では・・・と、日本の会社主義を、欧米の個人主
 義に比較して、批判ないしからかう文章をよくお目にかかる。ところが、ワシントン
 に住んで、びっくり、大変な肩書社会であり、名刺社会だ。

どこに住むか
・「もうじき定年をむかえます」といえば、たいていの日本人は、「つぎの就職先はみ
 つかりましたか」と聞く。それに対して、「どこにお住まいになりますか」と聞くの
 がアメリカ人。
・アメリカ人は、家族の生活周期にあわせて、気軽に住み処をかえていく。夫婦だけの
 ときには小さなアパートに住み、子供の成長につれてしだいに大きな家に移り、子供
 が家を離れると再び小さなアパートで暮らすようになる。
・競争社会のアメリカでは、配偶者を獲得するのも競争だ。相手に配偶者がいようとい
 まいと、これときめたら押しまくる。とりわけ女が余っているところでは、夫をとら
 れないよう、妻はしっかり手綱をひきしめていなければならない。

年金で暮らせるか
・家計を賄うために、高齢者はどこから収入を得ているのだろうか。これまでアメリカ
 では、公的に年金、企業年金、資産の三本脚が高齢者世帯を支えるといわれてきたが、
 ここ数年は、勤労収入を加えて四本脚で支えるべきだ、と説く人がふえてきた。高齢
 者に働くことを勧めるもっとも直接的な理由は、社会保障制度の赤字解消にある。
・アメリカの退職者は、公的年金と企業年金で安定した老後生活を送っていると思って
 いたが、これはどんな勘違い。事実は、公的年金だけでは、まともな暮らしができな
 いということだった。低所得の高齢者ほど公的年金に依存する割合が高く、貧困老人
 の約半数は公的年金だけで暮らしている。現在、企業年金の適用を受けている人は、
 男六割に対して女四割。中小企業の退職者やパートタイマーには企業年金が適用され
 ない場合が多い。

退職後は大学へ
・わが国は年齢によって、何をするかがはっきりときめられている社会。だから、勉強
 は青年期まで、仕事は定年まで、趣味は定年後に楽しむものと思い込んでいる人が多
 い。しかし、学問にも、仕事にも年齢制限はないはずだ。レジャー三昧の若者に高い
 授業料を払うくらいなら、社会経験を積んだ親のほうが大学に入学したほうが、よほ
 ど得るところもあるだろう。

服装は人なり
・毎朝同じ時間に起きて、ドブネズミ色の背広を無地か縞柄のネクタイをしめ、同じ電
 車に乗り、昼にはほぼ同じランチを食べ、あきもせず同じバーに顔を出して、夜遅く
 ご帰館。こんな判で押したようなサラリーマン生活から解放された後までも、世間並
 みであることに気を使うのは馬鹿げている。退職後は思い切ってそれまでの生活を捨
 てようとする人は、働いている間も、会社以外の世界を持ち、そこに仲間を見いたし
 てきた人が多い。

夫婦の役割交代
・大部分の退職者は精神的には妻にもたれかかるようになるが、経済的にはまだまだ一
 家の生計中心者だ。だが、経済的にも妻のほうにおんぶしてしまう例もある。
・家庭の外に出て働くことを望む女性は、年を追うごとにふえてきている。とりわけ、
 長い間家庭にとじこまれてきた中高年主婦の就職熱はきわめて高い。これは、早く結
 婚して家庭に入りたいと思っている若い女性とは対照的だ。

親と子は別
・日本の家庭は親子中心だが、アメリカの家庭は夫婦が中心といわれている。日本のサ
 ラリーマンにくらべ、残業が少ないし、週休二日なので、家庭で過ごす時間は長い。
 おまけに社会生活の単位は夫婦だから、パーティへの出席や長期の出張には必ず妻が
 同行する。
・最近わが国では、留年をしたり大学院に進学して、社会に出ることを先延ばししたり、
 なかなか結婚に踏み切らない青年がふえている。独立自尊を重んずるアメリカでも、
 このところ依存型の青年が増えている。モラトリアム人間の増加は、どうやら世界的
 な現象らしい。
・いつまでも自立しようとしない成人した子供を抱える親に対しては、いつまで家にい
 るつもりか、いつになったら出て行くつもりなのか、きちんと話し合う。毎月家に金
 を入れさせる。家事を分担たせる。どうしても親の言うことを聞かない場合や、親と
 の間でしょっちゅうもめごとがある場合には、家族問題の相談機関を利用する、とい
 ったアドバイスが与えられる。

秋の炎ー老年期の性
・老人の性に関しては、未だ古めかしい固定観念が残っている。女性も男性と同じよう
 にセックスを楽しむ権利があることは認めらえるようになったが、老人も若者と同じ
 ようにセックスを楽しむ権利があることを、人々はなかなか認めようとはしない。
・年をとると性欲は衰え、性的能力は減退し、性への関心が弱まると思い込んでいる人
 は多い。年を取っても、常に活動を続けることを勧めるアメリカ社会においてさえ、
 性については”枯れる”ことを期待しがちだ。また、赤の他人の性生活にはわりに理
 解がある態度を示す人でさえ、父親や母親はあくまでも親であって、生身の人間とは
 考えにくいので、彼らとセックスを結びつけて考えることを拒否してしまう。だから、
 老人が性的関心を示すと、「いやらしい」と感じ、年老いた親が異性の友人を作ると、
 「みっともない」と非難することになる
・しかし、年をとれば性欲がなくなるというものではない。大学の老人調査によると、
 「しばしば性交をする」者は60~70歳で47パーセントいたし、78歳以上でも
 16パーセントを占めていた。
・年をとると、男性は性的能力の減退を恐れ、女性は性的魅力が失われることを恐れる。
・アメリカでも更年期を過ぎると、一般に女性の性的関心は低下してくる。これは、も
 っぱら心理的な原因によるものだというのが専門家のあいだの一致した意見である。
 女性は閉経を迎えると、自分には女としての魅力が失われてしまったと諦めてしまい
 がちだ。しかし、もはや妊娠の恐れがないのだから、それまで以上にセックスを楽し
 むことも可能である。閉経の前後には、頭痛、肩こり、目まい、情緒不安定といった、
 いわゆる更年期障害が生ずるといわれるが、約六割の女性には何の変化もみられない
 ともいわれている。
・退職後のセックスの最大の敵は、お互いにしょっちゅう顔を合わせているために、新
 鮮な感覚が失われ、セックスがマンネリ化し、やがて間遠になることだ。明け方や昼
 下がりのセックスや、寝室ではなく居間を使うことで気分転換をはかり、体位を変え
 ることで新たな情感を得ることができる。
・性的能力の衰えを気にするのは、どの国の男性も同じこと。わが国のサラリーマン向
 け雑誌でその種の広告をよく見かけるが、アメリカでも、若返りの薬や精力増強剤と
 称するインチキ商品をつかまされる老人が少なくない。なかには健康をそこねるよう
 な危険な薬もあるから、こういうものにはてを出さないにこしたことはない。
・勃起能力が衰え、無理な体位ができなくなる老年期には、肉体的な交わり以上に精神
 的な交流が重要になる。わが国女性老人にセックスへの拒否反応が強いには、男性の
 自己本位、思いやりのなさ、そしてコミュニケーションの欠如によるところが大きい。
・青年期のセックスが、むさぼりあい、奪いつくす愛ならば、中年期以降の愛はいつく
 しみ、よろこびを与え合う愛である。春の炎はそれ自体美しいが、秋の炎もまた努力
 しだいではすばらしくなりうるのである。

増える中年離婚
・最近、ひそかに家庭裁判所や相談機関を訪れて、離婚したらいくら手に入るかを調べ
 ていく女性がふえている。離婚をすれば、必ず慰謝料が取れるものと信じ込んでいる
 女性もあり、「夫に何の落ち度もなく、勝手に妻が離婚を申し立てても一銭も取れま
 せんよ」といわれ、「じゃあ、離婚するのやめた」と帰っていく妻もいるという。
・子供の手が離れ、時間のゆとりが出てくると、妻は来し方行く末を考えるようになる。
 とつおいつ考えるうちに、私の人生これでよかったのかしら、今ならやり直しがきく、
 という結論に飛びつく人もいる。突然、妻から分かれてくれといわれ、気も転倒とい
 うことにならないよう、日ごろの対話を大切にすることを中年男性にはお勧めしたい。

再婚のすすめ
・男性の世界と女性の世界とがはっきりと分かれているわが国では、夫婦の交友関係も、
 夫と妻が出かける場所も全く別だ。だから、連れあいを亡くしたら、とたんに家から
 一歩も出られないといった不便さはない。ところが、いつも夫婦一緒に行動すること
 がタテマエのアメリカでは、外出も思うにまかせなくなる。
・ウーマン・リブのおかげで、どんなところへも夫婦で出かけるというカップル文化は
 崩れてきているが、それでもパーティーに女性がひとりで出かけるにはかなり勇気が
 いる。ひとり身の女は自分の夫をねらう潜在的なライバルと思っている女性が多いの
 で、夫と別れた後は食事やパーティーに招かれる機会も減ってしまう。特定の相手が
 いないと暮らしにくいことも、アメリカの再婚率を高めている要因だろう。

いかに死ぬか
・いざその場になってみなければ分からないのが人の死だ。延命治療には反対なはずの
 人が、親の死に直面すると、たとえ意識がなくとも一日でも長生きしてほしいと願う
 のが人情だ。死について語り合うのはそれほどたやすいことではない。だが、できれ
 ば元気な間に、病名を知らせてほしいか否か、延命治療を望むか否か、どこで死にた
 いかなどについて、夫婦や親子間で話し合う機会を持ちたいものである。

のこされる者のために
・おおかたの日本男性は、妻を亡くしたとたんに、炊事、洗濯、掃除などに支障をきた
 してしまう。思いやりのある女性たちが現れて身の回りの世話をしてくれるならば問
 題ない。だが、そうした女性がすぐに見つかるというものでもないし、たとえ見つか
 ったとしても、子供の反対で一緒に暮らすことができないということもありうる。少
 なくとも簡単な料理と下着の洗濯ぐらいは自分でできるようにしておいたほうがよい
 だろう。
・夫に先立たれても困らないよう、女性に対しては経済的自立と精神的自立が説かれる。
 妻に先立たれても困らないよう、男性に対しては、日常生活における自立が説かれな
 ければならないだろう。

病気になったら
・個人主義の国、自由競争を重んずる国アメリカでは、医療費の問題も個人の力で解決
 しようとする。だから、日本人の目から見ると信じられないほど高い金を保険会社に
 払い込む。
・わが国では一部の自治体を除いて、救急車はただ。タクシー代の代わりに使う人もい
 るほどだ。ところがアメリカでは、ちゃんと利用料をとられる。救急車の利用料も、
 この医療保険で支払われる。
・日本では老人の医療費は無料である、というとアメリカ人はなんともうらやましそう
 な顔をする。
・日本の老人自殺の原因のトップを占めるのは病苦だが、苦しみそのものではなく、家
 族に迷惑をかけてすまないという気持ちから死を選ぶ人が多いという。医療費の負担
 が家族にかかることになれば、収入の少ない老人は一層心苦しさを感ずることだろう。
 医療費の自己負担分を増加が自殺の増加につながらないことを祈りたい。

サンダース小父さん
・定年後の生き方については、仕事から離れ、なるべく付き合いも減らし、隠遁生活を
 したほうがよいという説と、年をとったからといって何もしないでいると心身の健康
 を損ねるので、つねに活動し続けたほうがよいという説とがある。
・人間は何歳であろうと働いているほうが充実感が得られるし、何歳であろうと新しい
 仕事に手をつけることが可能である。

退職準備教育
・退職後への計画に手をつけるのは、早ければ早いほどよい。十分に計画の立っている
 人ほど不安は少ないし、退職したからといって生きる目的を失い、急にふけこむこと
 もない。
・退職後の生活を考え、ほとんどの人がはげしい不安にとらわれる。限られた収入で暮
 らしていくにはどうしたらよいか。退職をしたら毎日何をして過ごしたらよいか。妻
 や子供とはどう付き合っていくべきか。退職は職場中心の生活から、家庭中心、コミ
 ュニティー中心の生活へと移行していく過程である。

手をつなぐ退職者
・退職をして困ることのひとつは、世の荒波から身を護ってくれる防波堤がなくなって
 しまうこと。定年になれば、会社や組合に頼るわけにはゆかない。かといって、ひと
 り難局に立ち向かえば、たちどころにつぶされてしまう。