定年ですよ  :日経ヴェリタス編集部

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あたり前のことであるが、定年は突然やってくるものではない。それなのに、いざ定年と
いう声を聞くと、なんだか心を取り乱してしまう人が多いようだ。定年は人生の終わりな
のか。はたまた人生の新たな出発の時なのか。
定年後の心配ごとは、健康、経済、生きがいなどいろいろあるが、やはり一番の心配ごと
は経済面であるように思えてくる。定年となり今までのような収入が得られなくなるとい
う問題は、心理的に大きな不安となる。多少の蓄えがあるといっても、普通の人の蓄えは、
この不安を打ち消すほどの蓄えではない。これからはこの蓄えを取り崩すだけなのかと思
うと、ますます不安が増す。定年後は新たな人生をと思っても、残された気力、体力を考
えると不安になる。現役時代は「早く定年を迎えて自由人になりたい。自由になったら思
いっきり好きなことをやりたい」と思っていても、いざ定年を迎えると、経済面での不安
が先に立ち、もう少し働きたいという気持ちにもなる。やはり定年は経済問題が一番なの
かもしれない。

準備編
・老後はいくらあれば安泰なのか。家があって金融資産が3千万円あれば基本的には大丈
 夫。ただし老後資金を年2〜3%で運用することが前提だ。
・一部を日経平均株価に連動した株式投信や外債などの大きな市場の商品で運用し、2%
 を確保したい。
・リスクの高い投資は、万が一失っても大丈夫と割り切れるお金で運用を考えること、た
 だ、株式の信用取引など損失が老後資金を脅かすものは禁物だ。 
・収入が多い人は支出も多い。このため老後は安泰だと言い切れる資産額は明示できない。
・投資初心者が勉強もせずに大切な老後資金を個別銘柄に投資するのは危険だ。年率2〜
 3%での運用を目指すならTOPIX連動の上場投資信託(ETF)や外債などを使うこと。 
・定年後の再雇用制度は、多くは年収が現役時代の5〜6割程度。年収にして3百万円く
 らいだ。
・定年後の再雇用での収入があまり多いとかえって損をしちゃうこともある。給料よりも
 やりたいことを考えたほうがいい。
・高年齢雇用継続基本給付は、会社に勤めている60歳以上65歳未満の人で、雇用保険
 の加入期間が5年以上あると受け取れるもので、60再以降の新しい給料が現役時代の
 75%未満なら給付金がもらえる。以前の68%なら新しい給料の7.5%、61%未
 満なら新しい給料の15%が支払われる。
・年金と給料の合計が28万円以下であれば、年金は全額もらえる。28万円を超えると
 年金が減ったりもらえなくなったりする。   
・加給年金は、夫が一定の年齢(65歳)に達したら、その後、妻が65歳になるまでの
 間、手当のようなものが出るというもの。
・パートや嘱託でも勤務時間が一般社員の4分の3を超えたら厚生年金に加入しなくては
 ならない。  
・一度失業手当をもらうと、今まで37年間も加入していた雇用保険への加入期間がリセ
 ットされてしまう。今度は再就職しても、高年齢雇用継続基本給付金がもられなくなる。

年金編
・サラリーマンの場合の年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」二つから成る。「基
 礎年金」は加入期間に応じた定額制で、最長40年加入した時にもらえる満額が年額
 79万2千百円になる。
・年金定期便の封筒は2種類。普通の人は「水色」だが、標準報酬額に誤記載の可能性の
 ある人などには「オレンジ色」の封筒で送付される。すべての加入期間の標準報酬月額
 などが載っている完全版は、今後35歳、45歳、58歳の切目にしか送られてこない。
・60歳の誕生日の3ヵ月前にくる請求書はとても大事。年金は自分から請求するもの。
 自動的に手にできるモノではない。
・年金の受給権を得るのは、60歳の誕生日の前日から。だから年金請求書の提出もそこ
 からだ。
・国民年金や厚生年金を受け取るためには必ず、「請求」しなくてはならない。
・401k(確定拠出型年金)は企業が自社従業員用に導入する「企業型」と自営業者や企
 業年金のない会社員が加入する「個人型」に分かれる。  
・老齢基礎年金の本来の支給開始は65歳だが、希望ずれば60歳以降、65歳になるま
 での間で1ヵ月単位で早めにもらうことができる。ただその場合は1ヵ月早めるごとに
 本来の受取額より0.5%減額される。1年前倒しして64歳からもらえば6%減、5
 年早く60歳からもらい始めれば30%減だ。  
・生活が苦しい場合は別だが、長生きしそうだと思ったら繰り上げはしないほうが賢明だ。
 本来の年金額を65歳からもらう場合と、30%減の年金を60歳からもらう場合を比
 べると、76歳ごろまで生きれば前者のほうが受取総額が大きくなる。ほかにも不利な
 点が多い。例えば、繰り上げ請求後に重い障害状態になったとしても、障害基礎年金を
 もらえない。
・国民年金は原則、保険料を払うのは60歳になるまで。でも「任意加入」を利用すると、
 最長で65歳になるまで払い続けることができ、その分、年金の受取額を増やせる。
・例えば勤めた年数が38年で、その間で平均月収が40万円くらいだと思う人の年金額
 は、厚生年金が年に139万円で、基礎年金と合わせると214万円となる。 

定年世代のお金事情編
・すぐに再就職しない人などは健康保険の任意継続か国民健康保険かを選べるが、保険料
 の算出方法がそれぞれ異なるうえ、自治体によってもまちまちなので保険料との見合い
 で選ぶ。
・現在、公的な医療保険は、企業の健康保険組合や、自営業者らが加入している国民健康
 保険、それに原則75歳以上の人の後期高齢者医療保険制度といった具合に、職業や年
 齢で複数の保険に分かれている。
・「高額療養費」という制度により、普通の病気やケガであれば、およそ9万円弱が1ヵ
 月の医療費の上限です。ただ、がんなどで健康保険の適用対象外の治療を受けたときや、
 個室に入院した場合にかかる「差額ベット代」などは高額療養費の補填の対象にはなら
 ない。
・子供が独立し、教育資金の必要性などがなくなったら多額の生命保険は不要だ。
・介護保険の被保険者は満40歳以上の人。そのうち65歳以上の人は第1号被保険者、
 40〜65歳未満の人は第被保険者と分かれる。第2号の人は、脳出血とか骨粗しょう
 症で骨折とか、特定の16の病気でないと保険の対象にならない。
・介護保険を利用しても医療費や雑費で1ヵ月にかかる介護費用はおよそ3満5千円にな
 るという。
・「加給年金」とは、夫が年金をもらい始めた時に65歳未満の妻などを扶養していると、
 加入期間など一定の条件を満たした場合、妻自身が年金をもらい始めるまでは「加給年
 金」といって夫の年金に家族手当が上乗せされる制度だ。
・夫が年金をもらい始めると専業主婦は第3号被保険者ではいられなくなるので、第1号
 被保険者として自分で国民年金の保険料を払う必要がある。
・夫が亡くなったあと、妻は夫の高齢厚生年金の4分の3を遺族厚生年金としてもらえる。
 遺族となる妻は年間約90万円もらえるのです。
・リバースモーゲージとは住宅ローンの反対で、家を担保にお金を借りて、死後に銀行が
 売却して精算する融資のこと。ただし、日本では「土地」のみでマンションは対象外。

税金と運用編
・東京で普通の墓を建てようとすると、土地の利用代(永代使用料)や墓石で200〜
 300万円が相場とされる。「ブランド霊園」ともなると空きがでても1平方メート
 ルで300万円以上もする。
・葬儀代の全国平均は約230万円もする。
・「直葬」は病院などで亡くなった場所から火葬場に直接向かう方式。通夜や告別式の費
 用が大幅に減るので30万円程度ですむらしい。都心部では既に3割程度の人がこの形
 を選んでいるという。
・海や山などの自然に帰す「散骨」、墓石の代わりに樹木の根本に眠る「樹木葬」なども
 徐々に市民権を得てきた。
・退職金の使い方はおよそ半数が貯蓄、17%が投資運用。投資運用の運用先は7割が株
 式取引。しかし、投資対象を株式だけに限定するのはリスクがある。債券や国際分散型
 の投信などを加え、年2〜3%の利回りを目標にするのがよいだろう。
・会社に勤めている時は、12月の年末調整で税金が精算されて6月から翌年の5月分ま
 での1年間の住民税が給料から毎月徴収される。だが退職すると、会社は当然天引き処
 理をしてくれない。退職後は翌年5月までの分を自分で納めなくてはならない。しかも
 退職の月で請求されかたが違う。 
・1月から5月に退職した場合、たいていは退職月の給料から5月までに納付する分の住
 民税がまとめて徴収される。6月以降に退職する人が退職月の給料から徴収されるのは
 その月の分の住民税だけ。退職した翌年5月までの残りの分は自治体から納税通知書が
 来て払うことになる
・定年直後お年の住民税は前年の所得をもとに計算されるので住民税の負担が重い人が多
 い。 
・会社を退職した翌年の2月16日から3月15日の確定申告期間は要注意。会社員は毎
 年12月の年末調整で税金が精算されている。だから年収が2千万円以下など、普通の
 人は申告しなくてもいい。でも年の途中で退職すると年末調整がないから、生命保険料
 や自宅の地震保険料を払っている人などは、確定申告して税金の還付を受ける必要があ
 る。
・税金の手続きなどに必要になるのが、「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴
 収票」だ。大切に保管しておく必要がある