「粗食のすすめ」 :幕内秀夫

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 毎日の食事が健康な体を維持する上で最も基礎になっているはずなのに、私たちはその食事に対し
てそれほど注意を払っていないことが多いのではないだろうか。太りすぎという美容面の他にも糖尿
病など食生活が原因となっている病気も多い。戦後、日本は経済成長とともに、食生活も欧米化する
と共に豊かになってきた。反面、車社会化などにより運動量が減少し、カロリーバランスが崩れてし
まっていることが多い。
 この本は、一言で言うと、欧米化した食生活を見直し、日本の伝統的な食生活に戻そうという内容
のものである。そもそも欧米人と日本人とは、長い歴史の中で作られてきた食生活に適した体になっ
ているので、日本人が欧米を真似た食生活をしても、体が適応しないというのである。肉を食べたり
牛乳を飲むようになったのも、戦後からとのことであるという話は、日本の食生活の歴史を再認識さ
せられた。
 私もここ数年、血糖値が高い状態が続いていて、糖尿病予備軍になってしまっているが、この本に
書かれているような粗食な食生活にしたら、それも改善するかもしれない。もっとも、単身赴任生活
を送っている私の食生活は、別な面でかなりの「粗食」ではあるが(^_^;)

食生活の「55年体制」崩壊へ
 ・実際に長生きしている人たちに「食生活」について聞いて見ると、麦やアワ、キビ、ヒエなどの
  雑穀、芋類を主食にして、野菜や山菜などを副食してきたという。
 ・それが最近では白米一辺倒、肉、乳製品、卵中心の食生活に変わり、このような食生活で育った
  若い世代に「成人病」が急増し、死亡者も増加しているというのだ。
 ・その結果が、「粗食」を続けてきた高齢者は元気に暮らし、「豊かな食生活」の若い人が病気で
  倒れるという現象を生み出してしまった。
 ・肉、卵、牛乳などをたくさん食べている現代人、生まれた時から食べ続けている現代の子供たち
  の健康状態が良くなったかといえば、答えは「ノー」と言わざるを得ない。例えば、成人病の急
  増、子供たちのアトピー、若い女性の貧血、冷え性、便秘といった病状に悩む人が多くなった現
  象など、私にはどうしても、今の日本人の食生活が正しいとは思わないのである。
 ・パンを食べるということは、食卓に油だらけ、砂糖だらけの食品が並ぶことを意味している。
 ・中年太りを気にしたりして、ダイエットでご飯を控える人もいるが、実はこれがかえって太る原
  因にもなる。
 ・もうそろそろ、欧米の食生活が理想という、無意識のうちに信じている「錯覚」から抜け出して、
  日本の伝統的な食生活を見直す時期だと思う。
 ・日本人の中には、牛乳を飲むと下痢をしたり、ガスでお腹が張ったりする人がいる。それを乳糖
  不耐症というが、これは牛乳の主成分である乳糖を消化するラクターゼという酵素の活性が低い
  ためである。日本の成人の約95パーセントがこのような病状を起こしているそうだ。これは、
  長い間、牛乳を飲む習慣がなかったためである。
 ・日本や東南アジアは温暖で降雨量が多いため、食物が育ちやすい。そのため、穀類や芋類、野菜
  などで満腹にすることが可能だったのである。それに比べ、ドイツやイギリスなどの欧米の国々
  は寒くて降雨量が少ない。そのため、冷涼で湿度の低い条件でも栽培可能な麦類を作ってきた。
  ところが、麦は畑作のため同じ作物を続けて作ると、地力が低下して連作障害が起きてくる。欧
  米人の人たちが、肉や食肉加工品、乳製品、野菜などに少しのパンという食生活をしてきたのも、
  パンを腹いっぱい食べることができなかったからなのだ。決して豊かだったから、肉や乳製品を
  食べてきたわけではない。

「栄養素信仰」の大罪
 ・過去何千年という歴史のなかで、先祖たちが食べては捨て、食べては選んで、ようやく作り上げ
  た食習慣を守っているからなのだ。伝統的な食習慣は、世界中どこでも、その土地に育った人の
  体質に一番合うものがあるはずなのである。
 ・以前、小学校時代、「健康優良児」に選ばれたのは、欧米人並の体格をした子供だった。また、
  「頭がいい」とほめられるのも、欧米の文化を取り入れるために必要な英語や、科学技術文明の
  基礎ともいえる算数や理科ができる子供であり、決して国語や社会ができる子供ではなかったの
  を記憶している人も多いだろう。
 ・また、趣味の分野でも、欧米のクラシックは高尚というイメージがあるのに対し、日本の民謡の
  に高尚というイメージを持つ人はあまりいない。私たちは無意識のうちに「欧米的なものに価値
  があり、日本的なものには価値がない」という色メガネで物事を見てきた気がする。現代の食生
  活も例外ではなく、「欧米の食生活は豊かで、日本的な食生活は貧しい」という、先ほども示し
  たような戦後の”栄養指導”によって作られたものなのだ。
 ・「55体制の崩壊」という言葉は主に政治や経済の世界で使われているが、食生活の世界にもあ
  てはまる言葉なのだ。1955年(昭和30年)を境に、日本人の食生活は急速に変化した。わ
  ずか40年の間に、肉や食肉加工品、牛乳、乳製品など欧米の食べ物を口にする機会が多くなり、
  食べ物の種類も格段に増え、ある意味では豊かな食生活を送れるようになった。しかし、それで
  健康になったかというと、これまでも述べてきたように、「ノー」といわざを得ないのが現状だ。
 ・今では歯並びのまともな子供を探すのは難しい。アトピー性皮膚炎の子供は30パーセントを超
  えるという。まさに黄信号の時代だ。おそらく、このままいけば、50パーセント、70パーセ
  ントの時代がやってくるだろう。赤信号になる日は、そう遠くはないのだ。そのときに初めて、
  55年体制の「食生活の常識」が問われることになるだろう。
 ・「栄養素信仰」を助長している代表的なものが、「肉」と「牛乳」である。どちらも、戦後、急
  速に日本の食生活に入り込み、「豊かな食生活」を象徴する食物として現在でもその位置にある。
 ・肉はダメ、牛乳も一切ダメといっているのではない。私がいわんとしているのは、「肉を食べれ
  ばスタミナモリモリ」「牛乳は完全栄養食品でカルシウムは万全」などという、”迷信”のこと
  である。
 ・日本の長寿村といわれた山梨県棡原の長寿者も、肉や牛乳などほとんど食べずに、何ら困ること
  なく、むしろ重労働をこなしてきた人たちなのである。
 ・これらのことに関して、腸内細菌の研究で有名な東京大学農学部の光岡教授は「人間はタンパク
  質を食物としてとらなければ生きていけないというこれまでの考え方は、腸内細菌の働きを考慮
  に入れて見直す時期にきている」と述べている。つまり、「人間のからだはタンパク質が中心に
  なってできている。だからタンパク質をどんどんとらなければならない」という、従来のこのよ
  うな考え方が必ずしも正しくはないということが分かってきたのである。
 ・日本人もまた、肉を食べずに、それでいて元気に過ごしてきた民族なのだ。世界には長寿者のた
  くさんいる村がいくつか残っているが、その中でも肉を多食しているところはない。
 ・私たち日本人は、肉よりも長い間食べ続けてきた魚介類を中心に食べていくべきだと思う。高タ
  ンパク質高エネルギーのエサを食べて、成長はいいが病気だらけという家畜を見たとき、なぜか、
  現在の日本人の姿と重なって見えてしまったのは、私だけであろうか。
 ・健康なお母さんのおっぱいから出る「母乳」、これは正真正銘、完全栄養食品だ。大人のように、
  やれ主食は何がいいとか、副食は何がいいだとか考えなくても、生命を維持し、成長する上で必
  要なものは全部含まれているのである。まさに「驚異の食品」と呼ぶにふさわしいものである。
  牛乳もまた完全栄養食品だ。しかし、人間にとってではない。あくまでも牛の赤ちゃんにとって
  の完全栄養食品だ。
 ・牛乳は100g中100mgのカルシウムを含んでいる。それに比べ、同じ100g中、サクラ
  エビ2700mg、ひじき1400mg、昆布800mg、わかめ1300mg、  煮干し
  2200mgもカルシウムが含まれている。意外だと思われるかもしれないが、昔から日本人が
  摂取する食物に多く含まれているのだ。
 ・私は、牛乳も肉と同じで私たち日本人にとって絶対必要不可欠なものとは考えていない。牛乳を
  飲まなくても困ることは何もないと思っている。実際に、日本人はつい最近まで牛乳を飲まずに
  何ら困ることなくきたわけである。

食源病時代の食事法
 ・一品健康法や健康食品を追い回す患者さんは、日々の食生活を見直すことをしない。ビタミン類
  やミネラル類の不足した食生活をしながら、せっせと高価なビタミン、ミネラルの錠剤を胃袋に
  詰め込んでいるのだ。そのために、いつまでたっても病気は治らない。健康食品は補助食品とも
  いい、まさに、日々の食生活の補助をするものだ。食生活そのものを見直した上で、健康食品の
  利用を考えるべきなのである。
 ・「医療は進歩している」といわれながら、現実には病気は増える一方だ。なぜ病気は増え続ける
  のか。アメリカ議会は2年間の歳月と膨大な予算を投じて原因解明に乗り出した。その結果、原
  因はたった一つ、「毎日の食生活に無関心だったため」という結論に達した。先進諸国の食事は、
  我々が気づかないうちに非常にアンバランスで内容の悪い不健康な食事になってきてしまった。
  食事の悪さが病気多発の最も大きな原因だ。
 ・ガンや糖尿病、心臓病のみならず、精神病やノイローゼ、登校拒否、自閉症といった精神的な問
  題さえも、その背景には誤った食生活があると指摘している。
 ・何を食べるか、どれだけの量を食べるか、何を飲むかによってガンになる危険性は高くなったり
  低くなったりする。
 ・健康(Health)のHealは「全体」という意味だ。健康は食生活を抜きにしては語れない。しかし、
  食生活だけで語れるものでもないのだ。ましたや、一つの食物、一つの栄養素で健康を語ること
  は、少し「部分」的過ぎるのではないだろうか。
 ・「これさえ飲めば、これさえ食べれば」という特別な食物や栄養素、魔法の食物を追い求めるよ
  りも、身近な毎日の食生活に問題はないか、そのことに目を向けてほしい。
 ・現代の食生活を改善して「食源病」を防ぐ、てっとり早くしかも簡単な方法を紹介しよう。それ
  は、日常的に食べるものを「カタカタ食品」から「ひらがな食品」に変えるということである。
 ・もう少し真剣に食生活改善に取り組みたいという人は、次の10箇条を実行してみていただきた
  い。
  1)ご飯をきちんと食べる
  2)穀類は未精製のものに
  3)副食は野菜中心とする
  4)醗酵食品を食べる
  5)肉類を減らす
  6)揚げ物は控えめに
  7)白砂糖の入った食品は避ける
  8)砂糖や塩は未精製の物を使う
  9)できるかぎり安全な食品を選ぶ
  10)食事はゆっくり噛んで

現代型栄養失調の改善策
 ・現代の日本人の食生活を一言で表現すれば、”現代型栄養失調”ということができるのではない
  だろうか。食糧難時代の栄養失調は石炭そのもの、つまり燃料自体が不足していたのである。しか
  し、現代では、燃料はたっぷり入れているにもかかわらず不完全燃焼になっているのだ。
 ・原因は五つ考えられる。
  1)現代は飽食の時代と言われている。みんな食べすぎなのである。その一方で、身体を使わなく
   なっているのだから完全燃焼しない。
  2)私たちは穀物や芋類、野菜、豆類、魚介類を中心とした食生活にすべきなのである。それなの
   に、肉や食肉加工品、牛乳、乳製品、油脂類など、あまりにも欧米化しすぎた食生活になって
   しまっている。
  3)私たちの体にも微量栄養であるビタミン、ミネラルが必要である。しかし、白米、漂白小麦粉、
   精製塩、白砂糖などの精製食品が増えすぎている。
  4)化学物質(農薬、食品添加物)などが、多量に体内に入ってきている。
  5)現代人の多くが便秘、あるいはそれに近い状態にある。その主な原因は、食物繊維の極端な不
   足にある。
 ・私は現在、登校拒否、家庭内暴力、ノイローゼ、精神病など、精神的健康に関して問題のある人
  たちに食生活のアドバイスもしている。その際、今までどのような食生活をしていたか、必ず聞
  いているのだが、ほとんどの人がケーキ、チョコレート、まんじゅう、清涼飲料水など白砂糖の
  固まりともいうべき食品を食べている。

FOODは風土が決める
 ・フランス人は、フランスの料理さえ食べていれば偏食とはいわれない。中国人は、中国の料理さ
  え食べていれば偏食といわれることはない。それなのに、日本人は、あらゆる国々の料理を食べ
  なければならない。なかんずく、日本の子供たちは、”外国の料理”を食べなければゲンコツを
  もらうことさえあるのだ。アメリカの子供が「納豆はくさいからいやだ」といって食べないのを
  見ても、なんの疑問も持たず当然だと考え、日本の子供が「チーズはくさいからいやだ」という
  としかられる。
 ・栄養学者といわれる人の中には、「戦後、日本人の食生活は豊かになった」という人もいる。た
  しかに、飢えるようなことはなくなった。量的には豊かになったと思う。しかし、内容的には豊
  かになったといえるだろうか。私には伝統的食生活崩壊の40年であったとしか思えないのであ
  る。
 ・国立がんセンター研究所の平山博士が、「みそ汁と胃がんの関係」を調査した。それによると、
  胃がんで死亡する率は、みそ汁を「毎日飲む人」が一番低く、「ときどき飲む人」から「あまり
  飲まない人」「ほとんど飲まない人」となるほど高くなり、「みそ汁ゼロの人」の胃がん死亡率
  は「毎日」の人より50パーセントも高いという調査結果になった。さらにこの調査では、みそ
  汁が胃潰瘍、虚血性心臓病、肝硬変などの死亡率も下げていることがわかった。
 ・ご飯を補い、支えるものとして、日本人はたくさんの漬物を食べてきた。しかし最近は、塩さえ
  減らせば成人病を予防できるかのごときヒステリックな減塩運動によって、みそ汁は食塩水、漬
  物は塩の固まりであるがのごとく考えている人もいる。アトピー性皮膚炎で相談にくる子供の中
  には、みそ汁も漬物も食べたことがない、などという子供さえいる。

食生活改善の主役はご飯
 ・第二次世界大戦前には、一人が一年間に消費する米は150キログラムといわれ、戦後も食糧事
  情がよくなってきたことには、平均140キログラム消費されていた。ところが、1980年に
  は87キログラムにまで減っている。平均的日本人は、1日に茶碗3杯程度しか食べていないこ
  とになる。しかも都市部に限れば、茶碗2杯足らずだ。20代は平均1杯ちょっとというのが現
  状だ。
 ・日本人は米を食べなくなった代わりに、副食を多く食べるようになってきている。その中でも、
  肉、卵、牛乳、乳製品といった動物性食品が増えている。つまり、食生活の洋風化が米離れを招
  いているともいえるのだ。その背景には、戦後の栄養教育が大きく関わっている。「タンパク質
  が足りないよ」という言葉が、その典型といえるだろう。
 ・食生活に限らず、あらゆる意味において欧米色の強いメガネをかけはじめた時代背景と見事にマ
  ッチして、「先進国といわれるヨーロッパなどは、ほとんど主食・副食といった観念がなく、肉、
  野菜に少量のパンが添えられる」のに対し、「後進国ほど穀物の摂取量が多い」という誤った常
  識が作り上げられることによって、米離れに拍車をかけてきたように思う。たしかにヨーロッパ
  などの食生活を見てみると、主食、副食といった区別はない。しかし、それはほんとうに「豊か
  な食生活」であったのであろうか。
 ・人間が穀物を直接口にしたときと比べると、その穀物を家畜に与え、肉なり牛乳なりを口にした
  場合では、カロリーでは7パーセントから21パーセント、タンパク質では10パーセントから
  32パーセント程度しか確保できなくなってしまうのだ。
 ・私たち日本人は、米という素晴らしい主食がありながらそれを食べず、国家レベルで米の生産を
  制限し、飢えに苦しむ人たちを尻目に金にものをいわせ、穀物を買いあさって家畜に与え、その
  肉や牛乳、乳製品をむさぼり食べているのだ。
 ・私は、本当に豊かな食生活として、「玄米中心」の食生活をすすめている。玄米には、夏にニオイ  
  がつくこともあって、嫌いだという人も多い。家族全員で食べるには、難しい面もある。それよ
  り大事なのは、できれば「白米でないご飯」をたくさんとるということだ。副食は野菜中心にし
  動物性のものをとるなら魚介類と卵を少々にする、といった程度のことだ。
 ・中でも、「ご飯をきちんと食べる」というのが重要である。必要な栄養を摂るためには、副食な
  しては一日茶碗10杯ぐらいご飯を食べる必要がある。それがあまりにも少ないと、自然にお菓
  子や油ものを食べたくなってしまうのである。
 ・パンを主食にすべきでない理由は、パンには砂糖や油脂類、添加物が入っていることと、どうし
  ても肉や油を使った副食になってしまうことである。
 ・動物性食品の過食は禁物だと述べたが、副食は野菜を中心に食べていくべきだと思う。ただし、
  何をどれだけ食べればいいかというと、やはりある程度考えて食べる必要がある。特に最近の傾
  向を見ると、偏った食べ方をしている人が多いようだ。偏りと一言でいえば、季節感を無視した
  サラダ偏重のことである。
 ・四季を通じてサラダの材料に用いられる生食用野菜であるレタス、キャベツ、キュウリ、トマト
  が多く購入されていることが分かっている。サラダ用野菜と共に、カレーやシチューに使われる
  玉ねぎ、にんじん、じゃがいもが多く購入されていることが分かる。逆に、小松菜のような和野
  菜、ごぼう、里芋、レンコンというような根菜が少なくなっていることだ。
 ・サラダなどの野菜ばかり食べている人に注意したいことは、本人はたくさん野菜を食べているつ
  もりでも、実際には野菜不足になっている人が多いということだ。例えば,サラダボール一杯の
  野菜でも、水分が抜けてしまうと意外なほど少ないものである。
 ・もう少し季節感を考えて、生野菜ばかりでなく、煮たり、ゆでたり、炒めたり、いろいろな調理
  をした方がいいだろう。特に、冬場に生野菜ばかりだというのは感心できない。
 ・旬の野菜
  @春:うど、キャベツ、さやいんげん、さやえんどう、じゃがいも、たけのこ、アスパラガス、
     にら、ふき、みつば、野草
  A夏:枝豆、オクラ、かぼちゃ、キュウリ、サラダ菜、しそ、しょうが、ずいき、セロリ、そら豆、
     ナス、ピーマン、みょうが、らっきょう、トマト
  B秋:かぶ、ごぼう、里芋、しいたけ、しめじ、にんじん、ねぎ、はつたけ、ほうれん草、まつ
     たけ、山芋、れんこん
  C冬:あさつき、えのきだけ、カリフラワー、京菜、くわい、小松菜、春菊、大根、白菜、やつが
     しら、大和いも

間違いだらけの食事常識
 ・現代の慢性病は、人間関係を含めた精神的な問題、ストレス、自動車、電化製品の普及による運
  動不足、水、空気の汚染、そして食生活の問題など、原因は複雑で複合的になってきている。し
  たがって、薬や注射だけでは簡単に解決できない病気が増えている。
 ・いくら家庭における食事の管理を万全にしていても、外食や昼食などでとんでもない食事をして
  いたのでは、いかに食事指導、食事療法をしていても、なんの役にも立たないことになる。特に
  昼食はほとんど外食というサラリーマンの人たちは、この昼食にこそ注意をはらう必要がある。
  もちろん、昼食も「粗食」を実行すべきことはいうまでもない。
 ・例えば糖尿病にしても、食べすぎが原因だとは考えていないからだ。糖尿病は現代病だといわれ
  ているが、量としては昔の方が食べていただろう。それよりも内容が問題だ。減塩も特殊な病気
  でなければ、特に指導しない。肉類で十分なナトリウムを摂るアメリカ的な食生活では減塩も必
  要だろうが、日本的なご飯中心の食生活では、ある程度の塩分は必要なのである。
 ・健康維持のために、安易に錠剤に頼ることはすすめられない。それよりも、普段の食生活を見直
  す方がはるかに大切なのである。
 ・1960年ごろ、脳卒中死亡率が極めて高かった秋田県で行われた減塩運動で、高血圧の人が減
  り、脳卒中による死亡が激減したことで、減塩の有効性が認められたのだ。しかし当時の秋田県
  では、一人当たり1日30〜40グラムも塩分をとっていたのに対し、現代の日本人の平均摂取
  量は1日12グラム。多量に塩分をとる人は別として、塩分の摂取量がそれほど多くないから、
  1〜2グラム減塩するよりは、仕事のストレスや運動不足という生活環境を改善することのほう
  が、有効なことが多い。
 ・今、日本には500万人の骨粗しょう症の患者さんがいるといわれている。高齢化社会に向かっ
  ている現在、今後とも増加することが予測できよう。ご存知のように骨粗しょう症は骨が弱くな
  って、すぐ骨折したりと、高齢者に多い病状とされている。となると、短絡的に考える人は、 
  「骨を丈夫にするには、カルシウムを多くとればいい」となり、それならカルシウムが多く含ま
  れているとされる「牛乳を飲もう」というのが、現実的に信じられていることだ。
 ・結論からいえば、牛乳を飲んで骨が丈夫になることはないし、また牛乳を飲まなければ骨が危く
  なるということもない。むしろ、乳糖不耐症のことを考えると、逆なのではないかと考えられる。
 ・私たち日本人、中国人、韓国人のように、昔から牛乳を飲む習慣のない民族は、牛乳の主成分で
  ある乳糖を消化するための酵素、ラクターゼの活性が低い。上手く消化できず便がゆるくなった
  り、下痢をしてしまうのだ。そのため、他の食物からカルシウムを摂取しても、一緒に排泄され
  てしまう危険性があるのである。
 ・骨粗しょう症が増加しているのは、カルシウム不足ではなく、カルシウムを上手く利用(消化)
  できないライフ・スタイルに原因がある。例えば、第一に、電化製品や自動車などの増加による
  極度の運動不足が挙げられる。次に挙げられるのが暗闇生活である。現代の日本人は、あまりに
  も太陽に光を浴びる時間が少なくなっている。ご存知のように、カルシウムは十分に日光を浴び
  ないと吸収されない。その上、ストレスの増加によってカルシウムを溶かすための胃酸の分泌が
  悪くなっていることも考えられる。
 ・骨粗しょう症は、牛乳を飲めばよいという話ではない。まさに現代人のライフ・スタイルへの警
  告なのである。
 ・そもそも太るということは、だれでも分かるように、食べる量が、運動量を上回るために起こる
  ことなのである。つまり、問題の一つに現代の社会生活(仕事など)があまりにも機械化され、
  自動車社会になり、あるいは頭脳労働が増え、極端にからだを使うことが減っていることが挙げ
  られる。