節約の王道 :林望

知性の磨きかた (PHP新書) [ 林望 ]
価格:726円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

役に立たない読書 [ 林 望 ]
価格:792円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

節約の王道 (日経プレミアシリーズ) [ 林 望 ]
価格:858円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

金遣いの王道 (日経プレミアシリーズ) [ 林望 ]
価格:935円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

夕顔の恋 最高の女のひみつ [ 林望 ]
価格:1540円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

思想する住宅 [ 林望 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

フランス人の贅沢な節約生活 (祥伝社黄金文庫) [ 佐藤絵子 ]
価格:649円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

心も生活も整理されて輝く!貯金・節約のすすめ [ 横山光昭 ]
価格:1540円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

節約する人に貧しい人はいない。 [ 中川淳一郎 ]
価格:1210円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

英国式節約術 [ リチャード・テンプラー ]
価格:1540円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

(お金をかけずに老後を楽しむ)贅沢な節約生活 [ 保坂隆 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

おひとりさま節約 Deli [ up-on Girlfriends ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

食費革命 さらば、「節約主義」 [ 松沢 直樹 ]
価格:1320円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

節約時代の病院へのかかり方 [ 前田清貴 ]
価格:1047円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

シンプル生活術 捨てて整理して節約する [ リベラル社 ]
価格:1100円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

豊かな節約暮らし (60歳からのスロ-ライフ) [ 丸田潔 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

58歳から日々を大切に小さく暮らす [ ショコラ ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

年金だけでも暮らせます (PHP新書) [ 荻原 博子 ]
価格:880円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

ひとり暮らしの時間とお金の使い方 [ 主婦の友社 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

まちがいだらけの大規模修繕 [ 伊藤洋之輔 ]
価格:1760円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

お金とモノに支配されない暮らしかた [ リムベアー ]
価格:1320円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

賢いお金持ちが絶対に破らない 人づき合いの基準 [ 田口智隆 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

すっきり暮らすための時間とお金の使い方 [ 主婦の友社 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

電気代500円。贅沢な毎日 [ アズマカナコ ]
価格:1540円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

貯め込むな! お金は死ぬ前に使え。 [ 荻原博子 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

今すぐ会社をやめても困らないお金の管理術 [ 井形慶子 ]
価格:1320円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

惰性と思考 [ 外山 滋比古 ]
価格:946円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

老後資金の「ちょこっとスマート」やりくり術 [ 保坂 隆 ]
価格:1210円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

後悔しないお葬式 (角川SSC新書) [ 市川愛 ]
価格:836円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

超三流主義 清く・貧しく・ゴージャスに! [ 金子哲雄 ]
価格:1320円(税込、送料無料) (2019/11/3時点)

節約と言うと、なんだか「ケチくさい」という思いが先に立ってしまうが、しかし節約と
は合理的なお金の使い方をするということであるのではと思う。それに、お金を節約する
こととお金を稼ぐこととは、同じことなのではと思う。つまり一万円稼ぐことと一万円節
約することとは、結果的に同じことなのである。
節約はお金に関することだけに限らない。時間を節約するということも、とても重要であ
る。一人ひとりに与えられた人生の時間は有限である。その限られた時間の中で、いかに
自分のやりたいことをやり、自分の人生を楽しみ、有意義な人生だったと思える生き方を
するのか。それには、自分に与えられた時間をムダにしない。ムダな時間をできるだけ節
約し、自分のやりたいことに時間を振り向ける。そういうことが重要なんだと思う。
この本は、そのような合理的な生き方を、具体的に指南していて、とても参考になる。

節約は楽しい
・イギリスに今もいる、伯爵や公爵といった人種も、その日常生活たるや、驚くほど地味
 なものです。彼らの間では、むやみにお金を使わず生活を質素にすることこそ、品位の
 ある、望ましい暮らし方である、という価値観が脈々と受け継がれているように思いま
 す。要は、どのような暮らし方が人間にとって気持ちの良い暮らしか、ということをよ
 く知っているのではないでしょうか。それはつまり、人と張り合わない暮らしというこ
 とでもあると思います。同僚よりも良いところに住みたい、あの人よりも素敵な服を着
 たい、そういう気持ちで生きることは、結局その人自身を苦しくさせます。人間の欲望
 というのは限りなく、もっと良い家、もっと良い車、と上を見ればまた限りがないから
 です。
・生活の無駄を省くことは、人生の楽しみを損なうこととは違います。ものの見方や捉え
 方を少し変えるだけで、お金の無駄をなくすだけでなく、健康にもつながり、家族との
 絆も深まる、そのような足し算の節約論を提案できればと思うのです。


・私流の買い出しの秘訣と言えば、「前もって献立を一切考えない」、ということに尽き
 ます。その夜の献立を決めるのではなく、基本的な食材をまんべんなく、冷蔵庫にちょ
 うどいっぱいになる分だけ買ってくるのです。後からその食材を組み合わせ、献立を考
 えて料理する。そして、それを、2、3日で食べきって、すべてなくなったら次に買い
 に行く。このサイクルを常に保っています。
・ここでもうひとつ大切なのは、「食材を使い切ること」。買った食材は余さず使い、冷
 蔵庫が空っぽになるまで次を買いに行かないと決めておくことです。
・「献立を考えずに買い出しをする」「食材を使い切る」、この習慣を続けていると、自
 然と食費の無駄がなくなっていく実感があります。
・こういうサイクルで買い物をすることの利点として、家計簿をつけなくても、月々の食
 費の目安がわかるということも挙げられます。すなわち、冷蔵庫に入る野菜の量、肉や
 魚の量というのは限られているわけですから、毎回冷蔵庫がいっぱいになる分だけ買っ
 ていれば、その金額がおのずと定まってくるからです。
・毎日スーパーのチラシを点検して、こっちは大根が安い、あっちは干物が安いと、朝も
 早くから行列に並んで何軒ものスーパーを回って買ってくる、こういう行為はよろしく
 ない。
・お金と同時に節約すべきだと思うのは時間です。お金は「添加の回りもの」で循環する
 ものですが、人生は有限。お金はいつか取り返せることがあっても、時間の浪費は二度
 と取り戻すことはできません。10円安いからといって何キロも先のスーパーまで行っ
 て、何十分も並んで会計を待っているなどというのは、私から見れば、大いなる人生の
 無駄遣いとしか思えない。そんなことをするくらいだったら、一軒のスーパーで、その
 日の安いものを見繕って買ってきて、どうやって無駄なく料理して食べきるかを考える
 ほうに時間を使ったほうがいい。
・スーパーでよく売られている、出来合いの調味料、あれを買うのもまことに愚かしいこ
 とだと嘆かずにはいられません。わざわざ別に買う必要があるのでしょうか。家庭にあ
 る醤油と清酒と砂糖だけで、誰でも簡単に作れるはずです。そもそも、こうした調味料
 は使う機会が思いのほか少ないうえ、開封してからは足が早い。冷蔵庫の中でいつの間
 にか賞味期限切れ・・という末路をだどることも少なくないのではないでしょうか。こ
 ういうものを買うのは、まったくもって、お金の無駄遣いだと思います。
・出来合いの調味料は値段が張るうえ、今の時代、材料にどんなものが使われているか保
 証の限りではありません。農薬漬けの野菜が入っているかもしれないし、賞味期限切れ
 の再利用かもしれません。だからこそ、自分の目でしっかり見て買ってきた肉や野菜を
 使って、自分で作る。そうすれば、節約になるのはもちろんのこと、安心安全で、おい
 しく満足のいくものが食べられると思うのです。
・料理をする際、私は「まるごと食べる」を基本にしています。食材の捨てる部分を極限
 まで減らして、すべてを食べきる。野菜の皮も根っこも、魚の骨も内蔵もすべて食べ尽
 くすということを実践しているのです。
・私は魚もすべて食べてしまいます。干物はちゃんと骨が付いた開きのものを買ってきて、
 頭も中骨もひとつ残らず食べる。骨ほど一生懸命に噛まないとのどに刺さってしまうの
 で、必死になって延々と噛む。そうすると、骨からカルシウムが摂取できるのはもちろ
 んのこと、唾液がたくさん分泌されるので健康にもいい。噛んでいる間にお腹が膨れて
 くるから食べ過ぎ防止にもなる、といいことずくめです。 
・私は今、脂肪を極力摂らない野菜中心の食生活を続けています。この食生活に切り換え
 るきっかけとなったのが、数年前にかかった急性胆嚢炎です。それに加えて、以前から、
 私は酒をまったく飲まないにもかかわらず脂肪肝で、内臓脂肪なんかもかなり気になっ
 ていたのです。その成果あって、体重にして十キロ減、いまや脂肪肝からもすっかり回
 復しました。
・私は、ひとり暮らしの人には「ごはんは炊くな」といつも言っています。コンビニやス
 ーパーで、ごはんだけ買ってきなさいと。それも、「二分でゴハン」のようないわゆる
 レンジアップ商品ではなくて、惣菜売り場でパックに入って売られている、炊いた白い
 ごはんです。これだったら、費用の面でも安いもので、節約の原則に反しません。
・一回の外食費の目安をいくらにするかと考えたときに、私は「五日間食べ続けても懐が
 痛まない金額」という基準で決めています。収入によって自由に使えるお金の額という
 のは人それぞれ異なりますから、ここで絶対値を決めても意味がありません。額はとも
 かくとして、自分の収入から、それぞれの分野ごとにある程度の枠組みを決めて、その
 範囲内で使うというのが賢いお金の使い方です。  

お金の管理
・家計簿をつけたからといって、出ずるを制することは難しい。だからいっそ、家計簿は
 つけない、必要ないと考えています。家計簿を付ける作業に多大な時間と脳味噌を費や
 すくらいなら、その時間と脳味噌を使って勉強したり、パートでもなんでも、新たにお
 金を生み出す手段を講じたほうがよっぽどいいのではないかと思います。 
・私は投資の類というのは一切やらないと決めています。たとえお金が余っていたとして
 も、株を買ったり、相場に投資したりということはしない。過去にも一度もやったこと
 がありません。基本的に貯金しかしないのです。そして、貯金がある程度まとまった額
 になったら、私の妻が郵便局の定期貯金のような少し利率のよいものに預けます。
・マネー情報誌を見れば、「大きく殖やすために、リスクを恐るな」というような、投資
 マインドを煽る記事も見られます。しかしながら、「一攫千金」を狙ってする行為は、
 結局いちばん損になるのではないかと私は思っています。儲けだけを目的にお金を転が
 すようなことをすると、人間ろくなことにはならない。もしもそういうマネーゲームの
 ようなことをやって、大きく儲かってしまい、お金の単位が違う生活を体験してしまう
 と、もうばかばかしくて普通の生活に戻れなくなるのが人言の常です。毎日コツコツ働
 いて、地道に報酬を得る暮らしなどやっていられなくなります。そうすると、今度はど
 んどん、たがが外れていく。待っているのは身の破滅です。
・お金を儲けるなら美しく儲けなければならない。マネーゲームのように、せわしなく売
 ったり買ったりするようなことは本質的に間違っている。お金は生業を以て稼ぐ、これ
 に尽きると思うのです。
・金融機関にお金を借りたら、必ずついてくるのが利子です。節約の最大原則は、いかに
 その利子を少なくするかです。銀行の利子というものは、短期に借りると安く、長期に
 借りると高い。だからできるだけ期間を短く借りる、この認識を忘れないことが大事で
 す。
・住宅ローンを組む場合は、毎月無理なく払える金額を借りるというのが当然の鉄則です。
 銀行が貸してくれるから、将来収入が増える見込みがあるから、などという理由で、背
 伸びした金額を設定するのは絶対に避けたほうがいい。ローンの支払いの目安は、せい
 ぜい総収入の三分の一くらい。その程度にとどめたほうが良いと思います。
・金は天下の回りものですから、失ってもまた稼いで取り返すというのも可能ですが、友
 人は失ったら二度と取り戻すことはできません。そう考えれば友人同士でのお金の貸し
 借りなどというものは、一切すべきではありません。例えどんなに信用している友だち
 から貸してくれと懇願されても貸さないし、自分からも絶対に借りません。もしやむな
 く借金をしなくてはならない事態になったら、返済計画などがきちんと整った形で、銀
 行から借ります。

交際費
・私は、人にプレゼントは贈らない、そう決めています。プレセントというものは、もら
 ったらもらいっぱなしというわけにはいきません。必ずお返しをしなければならない。
 もらった物に対して、「これはいくらぐらいだろうか」と瀬踏みしなければならないと
 いうことです。親しい間でそういうことをするのは、あまり好ましいことだとは思えま
 せん。ですから、誕生日だろうと父の日だろうと、私には誰も何もくれません。林家で
 は、ほかの家族は何かやり取りしているのかもしれなせんが、妻も子どもたちも私には
 何もくれない。変わっているといえば変わっているかもしれませんが、私自身プレゼン
 トごときに頭を悩まさずに済んでいるので、まことにいい塩梅だと思っています。
・人並みに社会生活を送ろうとすると、冠婚葬祭を中心としたお付き合いというものは、
 なかなか避けて通れないものです。しかしながらも、私はこういうものに盛大にお金を
 かけるのは、究極の無駄遣いだと思っています。そんな虚礼のようなことに、お金は極
 力使いたくない、というのが正直なところです。
・私は結婚式をやるのですら無駄遣いだと思っています。ウェディングドレスや披露宴の
 演出などに金を掛けるのはまったくのナンセンスです。私の娘はアメリカ人と、アメリ
 カの片田舎で挙式しましたが、掛かった費用は結婚式と披露宴を合わせても、たった
 三十万円程度です。それでもとても印象に残る、素晴らしい結婚式でした。協会で式を
 挙げた後、付属の集会所に地元のケータリングサービスがやってきて、ちょこちょこと
 料理やデザートを用意してくれて、そこでパーティーを行いました。
・イギリスの田舎の結婚式というのも、とても素朴で温かい、大変にいいものです。披露
 宴は、町にある質素な集会所や公民館のようなところを借りて、料理はお母さんの手作
 り。それでみんなでダンスパーティーをやっておしまい。だから何もお金が掛からない。
 その代わりご祝儀も持っていかないし、引出物も出ません。結婚式とはこうあるべきだ
 と思います。
・葬式も同じで、葬式ほどばかばからしいものはありません。その最たるものは戒名です。
 戒名料などは、ランクによっては数百万円も取られたりするのです。そもそも戒名など
 というものは、神道にはないし、キリスト教にもありません。あるのは仏教だけです。
 日頃から仏教を信じている人であれば戒名をつけてもいいかもしれませんが、私のよう
 に一切仏教も信じないという人間には、まるで必要のないものです。
・自分や死んだ場合に、参列してくれた人にお金の心配をしてもらうのは心苦しいので、
 あらかじめお香典はお受けしないと決めています。自分が死んだ時にどうするかという
 ことを心に決めていて、それを家族にもよく話してあるのです。まず葬式はやらない。
 戒名もつけない、宗教は介在させない、墓は先祖代々のものに入る、もし葬儀をやりた
 いのであれば、お別れ会のようなものをする。その代わり一切香典は受けてはならない、
 というふうに思い定めています。
・この不況の影響で、仕事がらみの会食や飲み会をする機会は、かつてに比べればずいぶ
 んと減ったことと思います。しかし回数が少なくなったとはいえ、一回参加すれば五千
 円、八千円という出費は、給料が上がらず、残業代もカットされているような現状では、
 大変痛い出費であるに違いありません。
・「飲み会」はしない、行かない。酒を飲みたいなら、自分が飲みたいと思う人と、飲み
 たいと思う店に行って、ただ飲めばいい。なぜ「飲み会」という「会」にする必要が
 るのでしょうか。
・会社員である以上、職場の人間関係は大切ですから、誘われたらむげには断れない、と
 思うかもしれません。けれども仕事上の人間関係などは、本来仕事中にしっかりと築く
 べきものであって、日ごろから上司や部下とよい関係ができていれば、飲み会を断った
 ところで特に影響はないはずです。 
・飲み会にしろ何にしろ、自分のお金を使うのであれば、何に使うのか、何に使いたいの
 かを、自分で主体性を持って選ぶことが大切だと思うのです。  
・飲み会は嫌い、飲むのは好き。無用な出費を避けたいのであれば、そんなふうにメリハ
 リをつけることが必要だと思います。行きたくもない飲み会に参加するのに、一回八千
 円取られて、それが月に三回あったら、それだけで二万とか三万になってしまう。それ
 はとても不愉快だと思います。それなら、自分の好きな人、二、三人と、ちょっといい
 料理屋へ行って楽しく飲んだほうがいいと思うのです。

衣服と車
・いやしくも大人は、自分の服装に無責任であってはいけない、と思います。年配の男性
 に多くみられるような、着るものはすべて奥さん任せ、というのはいただけない。たか
 が洋服ではないか、と軽く考えるのは浅はかです。ファッションとは、外に向かって自
 分を表現するもの。人任せにしてなおざりにしているということは、表現すべき自分を
 持たないということと同義です。
・私は、ベーシックなデザインで、着心地がよくて、しかも安い、という理由でもっぱら
 ユニクロの服を愛用しています。自分で気に入って選んで着ているわけですから、それ
 をちっとも恥ずかしいとは思いません。また、そのような大衆向けの安い服を着ている
 からといって、私がおしゃれに無頓着だということもできないと思います。オジサンく
 さい格好はしたくないし、くたびれた服を着て貧乏たらしく見えるのも嫌だと思ってい
 ます。
・洋服に関しては、値段やブランドに一切関係なく、これは自分が着たいものだ、自分と
 いうものを表現するのに適したものだ、と思えるものを選ぶのが、大人の美学なのでは
 ないでしょうか。
・いい大人が、流行が変わるごとに毎シーズン服を買い揃えるなどというのは、どうもお
 金の無駄遣いという気がしてなりません。流行りのデザインというのはあっという間に
 すたれてしまうので、1〜2年もすればすぐにやぼったくなって着られなくなります。
 従って、洋服は流行には関係ないものを着る。これがもっとも聡明にして被服費の無駄
 を省けるやり方だと思います。
・私は、いわゆるブランドというものに、まったく興味がありません。とにかく、これ見
 よがしに、ブランドのロゴやマークがついたものを身につけている人の気が知れない。
 一見して、「これはグッチのネクタイです」とわかるようなものをするなんて、私には
 とても恥ずかしくてできません。
・ファッションは、自己表現の手段。ですから、ゴテゴテとロゴのついたブランド物で全
 身を固めている人は、値段で換算して自己表現をしているということになります。
・なかでも、特に格好悪いと思うのが、一点豪華主義というものです。洋服は駅ビルでか
 ったような安物なのに、靴だけが妙に高級ブランド物だったり。こういう格好をいい大
 人がしているのは、貧乏くさくて見るにしのびない。
・お金の使い方で、もっとも大切なのは、自分の身の丈を知るということですが、それは
 もちろんファッションについても同じです。
・同じ収入であっても、洋服にはお金を掛けたくないという人もいれば、他のことはとも
 かく洋服にだけはお金を掛けたいという人もいて、それはその人の価値観、人生観によ
 って変わってきます。従って、「いくら」という絶対値を出すのではなく、適正額の割
 り出し方を考えたいと思います。例えば、男性のスーツの金額について考えた場合、そ
 の適正額とは、「一度に三着買っても懐が痛まない」額ではないかと思います。
・身の丈から外れた額の、一点豪華主義的なものというのは、きっと自分の思うとおりに
 は着こなせない。傍目にも、その洋服に「着られている」という印象を与え、高価なス
 ーツがかえってその人を貧乏くさく見せてしまうはずです。従って、一度に一着しか買
 えないような値段の洋服は買わない。着ない。いっぺんに三着買っても、心も懐も痛
 まない額のものを買う。
・自分の身の丈の合った車の購入価格の上限とはいったいいくらだろうかと考えたときに、
 私は、「年収の1ヵ月分」というのが妥当であると思っています。そもそもローンを組
 んでまで車を買うというのは望ましくありません。「年収の1ヵ月分」という適正額を
 目安に、自分にとってもっともベストな車を探す。もし、もっともいい車に乗りたいと
 思うなら、無理してローンを組むのではなく、収入を殖やすように一生懸命に努力する。
・私は車両保険を掛けません。車両保険とは、車の車体を傷つけた場合に、その修理代を
 補償してくれる保険のことです。自動車保険に加入する際、この車両保険を掛けるかど
 うかで悩む人は多いのではないかと思います。というのも、車両保険というのは、保険
 料が高い。その額は、保険会社や車の種類、ドライバーの優良度などによって変わって
 くるので一概には言えませんが、普通の自動車で大体年間8万円くらい掛かります。少
 し高級な車になるとすぐに10万円、15万円くらい取られてしまう。従って、私は車
 両保険を掛けない主義です。その代わり、私の場合、対人対物の賠償保険は最高額を掛
 けてあります。しかし、そういう保険の保険料は、車両保険に比べたら大した金額では
 ないし、無事故であれば漸減していきます。つまり、無事故無違反でいれば、どんどん
 お金が節約になるわけです。従って、ほ燃料を節約したいなら、とことん安全運転を心
 がける。これに尽きると思います。

旅行、趣味
・旅先でお金を使うとしたら、まずはその土地土地の郷土色豊かなものを食べるのに使い
 たい、と思います。私は、市場の中にある大衆食堂だとか、ごく普通のうどん屋だとか、
 そういう地元の人しか行かないような店を選んで入ります。当たり外れはありますが、
 そのほうが断然楽しいし、たとえ失敗だったとしても、それこそが旅の醍醐味であって、
 話の種にもなるというものです。
・旅先でお金を使うとしたら、骨董屋です。観光客の集う、いわゆる「みやげ物屋」なん
 てのには、むしろ信念を持って近づかないようにしています。骨董といっても、一枚五
 百円くらいの小さな醤油皿とか、そういうなにか小軽いものでいいのです。そういうも
 のでも、買ってきて自分の家で使うと、使うたびに「ああ、これは唐津で買ってきたな
 あ」とかいうように、旅の思い出がよみがえってきます。それはとても有意義なことだ
 と思うのです。
・わけのわからないキラキラしたペナントだとか、イニシャルがくっついた携帯ストラッ
 プだとか、土地の名前が書いてあるだけの饅頭だとか、そんなどうでもいいみやげ物を
 買ってあげたところで、誰も喜ばない。同じお金を使うのなら、喜ばれるものに使うと
 いうのが、節約の節約たるゆえんだと思うのです。
・私は旅先の泊まるホテルの予約は、毎回、「楽天トラベル」などのインターネットの旅
 行サイトを利用しています。例えば楽天トラベルの非常に良い点は、ホテルの料金が必
 ず割引になっていること、それから、自分の希望する日の予約が確実に取れるというこ
 とです。
・もちろん、旅のガイドブックなどを見て、自分で直接プロントに電話をかけて予約する
 という方法でもいいのですが、そうすると正規料金を取られてしまうので、それは非常
 にばかばかしい。同じホテルの部屋なのに、旅行サイトで予約すれば二割引、どうかす
 ると半額くらいになることもあります。ですから、こういう割引サイトを使わない手は
 ないでしょう。
・私自身の宿選びの基準は
 ・常に車で行くので、駅に近い必要なし。その代わり駐車場完備
 ・部屋は極力広いこと。常にツインの部屋を取る。
 ・日本旅館は決して泊まらない。ホテルに限る。
 ・窓の開く部屋で、ベットは毛布ではなく、掛け布団であること。
 ・禁煙室に限る。
 ・インターネット接続完備。できれば無料で。
・旅行サイトを見ていると、直前になっても予約が埋まらなかった部屋が、驚くほど安く
 出ている場合があります。
・日本の旅館やホテルでは、客寄せのためにいろいろなプランが出ています。そういうこ
 とをやって一泊二食付きで一人三万五千円くらい取っている。旅館としては、なんとか
 独自色を出そうと努力しているのかもしれませんが、私はそういうものは一切無視しま
 す。原則としてホテルでは食事はしません。従って、泊まる時には常に素泊まりです。
・旅館の食事というものは、我々が本当に食べたいものなのか、といったら非常に疑問で
 す。ぬるくなった刺身やら、冷めたトンカツやらフライやら、固形燃料の鍋やら、どう
 考えても料理としては三流としか言えないようなものばかりです。
・私はホテルや旅館で朝ごはんも食べません。そもそも日本のホテルの朝食というのは、
 高すぎると思います。シティホテルに泊まると、朝食に二千二百円から二千五百円、高
 級なところだと三千五百円くらい取られます。はたして、朝食に三千五百円も払う必要
 がどこにあるのでしょうか。
・私の場合、日本だけではなく海外へ行く際も、すべて手配はインターネットでしていま
 す。いまはネット社会ですから、いちいち旅行代理店などに頼まなくても、海外のホテ
 ルだってエアチケットだって、ネットで簡単に予約できます。
・海外旅行というと、すぐにツアーだとかパックだとかで行こうとする人がありますが、
 そういう団体旅行では、旅の本当の楽しさはやはり味わいにくい。細々とした面倒な手
 続きを自分でしないで済むし、観光名所には勝手に連れて行ってくれるし、手っ取り早
 くていいかもしれませんが、その代わり、自分の好きなことはできないし、興味のない
 ことにも付き合わなければなりません。
・海外旅行の場合、どのくらいの期間行くかというと、私はたいてい一ヵ月と決めていま
 す。旅行というよりも、滞在したいんですね。
・節目節目のときに、自分の人生の来し方行く末を考えながら、旅に出てゆっくりとした
 時間を楽しむ。そういう贅沢も大切なのではないでしょうか。そのためのお金を惜しむ
 必要はないのです。そんなときに、団体旅行で慌ただしくあっちこっち駆け回って旅行
 するというのは、いかがなものかと思います。
・私は、酒は飲まない、煙草は吸わない、ゴルフはやらないと、世のオヤジたちがやるも
 のはどれもやらないし、またやりたいくないとも思っているのです。そもそも、日本で
 ゴルフをやろうと思うと、非常の金がかかります。キツネかタヌキしかいないような山
 奥のゴルフ場でも、軽く二万円はかかると聞きます。
・日本のサラリーマンたちは、ゴルフをやるのにいきなりコースへ出るわけにはいかない、
 と言って、打ちっぱなしなどというところで、むやみに稽古します。しかし、そうやっ
 て稽古をすればするほど、それだけ金が掛かるわけです。ゴルフ練習場には、休日とも
 なると朝から晩までオヤジ連中がひっきりなしにやってきます。こういう人たちは、家
 に自分の居場所がないのではないかと思うのです。せっかく家族というものがありなが
 ら、その家にいるのが嫌で、ゴルフの珠をひっぱたいて時間をつぶしている、これこそ
 まさに、金と時間の無駄遣い。間違いなく人生の無駄遣いをしている。
・そもそも家庭というのは、人間がもっともリラックスできるところです。家族みんなが
 素顔でいられる、そういう場所のはずです。それなのに、家に帰っても居場所がないか
 ら、ゴルフの打ちっぱなしだとか、赤提灯だとかで時間をつぶすなどというのは、実に
 もったいないことです。そういう人は、長いこと家庭をないがしろにして、ろくに妻子
 と話もせずに過ごしてきたつけが回ってきたのでしょう。家族が互いに和気あいあいと
 語り合う時間を持つことが最も大切だと思います。私は、家族団欒こそが、一番金の
 掛からない、究極の趣味だと思っているのですが、どうでしょうか。
・仕事だけではやはり人間はつまらないですから、人生を豊かにするという意味でも、趣
 味は大いにやるべきだと思います。けれども、家族に迷惑をかねるようなものはできる
 だけやめたほうがいい。また、たとえ自分がやりたいと思うこと、好きなことであった
 としても、それをやることで家計を圧迫してしまうような、身の丈に合わない趣味は当
 然よろしくないものです。身の丈に合った、自分の経済でまかなえる範囲で「ささやか
 に」やるというのが、趣味をやるうえでの鉄則です。
・本というものは、基本的に自分でお金を出して、買って読むべきだと思います。人から
 借りたり、図書館から借りたりというのは望ましくない。本を読んでなにか実りを得よ
 うと思う人は、そのお金をケチってはいけません。それなりにお金をかねないと知識は
 本当にその人のものにはならないと思うのです。 
・たくさん読む人は、読みたい本をすべて買うのは難しいかもしれません。そういう人が
 図書館を利用するのはやむを得ませんが、それでも、借りて読んでみて、自分でとても
 いい本だと思ったらならば、やはりその本は買うべきです。
・単行本を一冊買ってきて、通勤電車の中とか、夜寝る前にベットの中でゆっくりじっく
 り精読したとしたら、少なくとも三日間くらいは楽しめます。そう考えると、本という
 ものは決して高いものではないのです。まして缶ビールを飲み、タバコを二、三箱吸う
 お金を本に換えるなら、その知性は日々増していきましょう。
・また、本というのは、一度読んだくらいではそのうち忘れてしまいます。図書館で借り
 て、二週間かそこらで読んで返してしまったら、その記憶はそれっきりです。けれども、
 本を買って本棚に置いておけば、その背表紙が日常的に目に入ってきます。そうすると
 そのたびに、再び読むわけではなくとも、その本を読んだという記憶がリマインドされ
 る。それが大事だと思うのです。
・それに、借りた本というのは汚すことができません。私は、本というものは自分で傍線
 を引っ張り、思ったことをメモしたりして、とことん汚して読むべきだと思っているの
 で、それができないというのもよろしくない。
・さらに言えば、人から勧められた本だけを読んでいる人というには、本当の意味での読
 書人にはなれないと思います。人に勧められた本を読むということは、借り着を着て歩
 いているのと同じことです。その本を勧めてくれた人と自分とは、それまでの人生経験
 も違えば、抱えている問題も違う。興味の範囲も違うはずです。ですから、やや極言す
 るなら、私は人に勧められた本を読んで面白いと思ったことなど一度もありません。
・ベストセラーでみんなが読んでいるから読む、今流行しているから読む、というのもや
 めたほうがいい。それはブランド崇拝と同じことです。人生は有限です。人に流されて
 興味もない本を読むことほど時間の無駄はありません。
・本は自分で選んで読む。買った本がたとえつまらなくて、途中で読むのをやめてしまっ
 たとしても、それはそれでいい。そうやって無駄買い、無駄読みをして、試行錯誤する
 のが大切なのであって、そういう経験を重ねて行って初めて人は賢くなれるのだと思い
 ます。別に、たくさん読む必要はありません。1ヵ月に20冊よんだ、1年に300冊
 読んだと自慢げに言う人がありますが、読んだところでそれが身に付かなければ、なん
 の意味もありません。本を自分で選んだら、それに時間をかけてじっくり読む。深く味
 わいながら読むことが大切なのです。そうやって自分で買った本は、たとえこの先読み
 返すことがないと思っても、ブックオフなどに売ったりしない。手放さない。私は原則
 としてそうしています。
・自分が読んで面白かった本、心に響いた本が長い間に本棚にたまっていく。そうすると
 その本棚は、自分の人生が反映されているということになります。「この本を読んだと
 きは、あんなことがあったなあ」と振り返ることができる。本にはそういうセンチメン
 タルバリューもあるのです。  
 
教育
・子どもの成長過程というのは、樹木のそれと同じではないかと思います。樹木は十分な
 水と養分を与えられなければ、大きくしっかり育つことができません。子どもにとって、
 その水と養分が何であるのかといえば、それはやはり親の愛情でしょう。親が子どもに
 愛情を注ぐうえでもっとも大切なことは、「watch」することです。見ていること。
 できるだけ子どもと一緒の時間を長くすることが、よりよい教育の根幹だと思います。
・一番いけないのは、ろくに子どもを見てもいないのに、親の都合でいろいろなことを押
 しつけることです。自分は愛情のつもりでも、それは決して子どものためにはならない。
 「しつけ」と称してやたらと厳しい体罰を与えるなどというのは、もはや虐待と同じで
 す。こういうのは論外です。
・子どもには、できる限りお金を与えないのがいいのではないかと思います。その代わり、
 子どもが何か欲しいと言ったときに、自分の小遣いで買えとは絶対に言わずに、「じゃ
 あ一緒に買いに行こう」と言って、必ず子どもと一緒に行って買ってやるのです。この
 やりかたであれば、「何でそれが必要なの?」と、子どもの欲しがるものを親が把握す
 ることができます。「いらないんじゃないの、こんなの。この間、似たようなの買った
 ばかりじゃない」というように、「買わない」という権利も、親が行使できる。
・親が必死になって子どもを私立や国立の小学校へ入れる必要はないと私は思います。も
 し中学受験のために、塾に通わせたいと思うのであれば、せいぜい小学5年生からにす
 る。それで十分です。10歳までは、塾に通わせるよりも、親元でたっぷりと精神に栄
 養を与えてやることのほうが重要です。子どもをよく観察しつつ、親子で一緒になって
 勉強し、一緒になって楽しむ。そういう家庭での時間こそが、教育上も発達心理学条も、
 もっとも大切なのです。
・月曜はスイミング、火曜はピアノ、水曜は習字などと一週間に毎日いろいろなお稽古ご
 とをやらせるのは、どうかと思います。こういうことをしていると、エネルギーが分散
 されて一つに意識が集中できませんから、結局はどれもものにならずに終わってしまう
 ことのほうが多いでしょう。また、ほかの子どもがみんなやっているからと、仲間はず
 れにされるからとか、そういう理由だけで、子どもの適性も考えずにただやみくもに習
 わせるというのも、やめるべきだと思います。
・子どもに習い事をさせるならせいぜい一つ。二つでも多いくらいではないかと思います。
 まず子どもがやりたいと言うものをとりあえずやらせてみて、試行錯誤させたらいい。
 そのためには、その子に才能があるかどうか、親がいつもしっかりと見ていなければな
 りません。それで、才能がありそうだったら、一生懸命にお尻をたたいてやらせればい
 いし、だめそうだったらまたほかのことを考えてあげればいいわけです。あれもこれも
 と一度のたくさん習わせない。むしろお稽古のない日はたくさん遊ばせるべきだと思い
 ます。子どもは遊びことによってエネルギーを蓄えているのですから。

住まい
・私は建築家という人種をあまり信用していません。もちろん、なかには素晴らしい人も
 いるのでしょうが、建築雑誌などを見たり、あるいは実際の建築例などを見学したり、
 テレビでそういう番組を見たりしても、どうも変じゃないかと思うことのほうが多い。
・建築家というのは、高い吹き抜けだとか、トップライトだとか、大きな嵌め殺しの窓だ
 とか、全面ガラス張りの家だとか、とかく見たくれがいいものばかり造りたがります。
 確かに、洒落たデザインの家というのは外から見ている分には魅力的ですが、実際に住
 んでみると馬鹿に高いコストがかかるのです。冷暖房のコスト、メンテナンスのコスト
 など、長く住むうちに膨大な金額になってしまいます。そういう先々のことを考慮に入
 れない建築家が少なくない。つまりおのれのコンセプトのために住む人の快適や利便性
 や経済性を確信犯的に犠牲にして恥じない。そういう自己顕示欲のかたまりのような人
 も見かけます。これは住む方としてはたまったものではない。エアコンはろくに効かな
 い、窓が大きすぎて掃除するのもおお仕事、こういう家を造られた日には、「じゃああ
 なた、一度この家で生活してみなさい」と言いたくなります。
・住まいを決めるということは、自分の仕事や生活のありかた、家族との関係など、つま
 りは自分の人生について考えるということです。そこに、自分を身の丈以上によく見せ
 ようという意識を働かせてはいけません。住宅費は収入に対して占める割合が高いです
 から、そういう見栄が、結局は大変な無駄遣いになるのです。また、先行きの見えない
 今の経済状況では、会社まで電車一本で行けるという理由で住む場所を選んだとしても、
 その会社がつぶれてしまったり、自分がリストラにあって解雇されてしまったりするこ
 とがないとは言えません。そうすれば、便利だと思っていた生活が、一転、不便なもの
 へと変わってします可能性もあるのです。住まいを決める際には、そういうさまざまな
 事態を想定して、一つひとつの要素をじっくりと検討する。そういうことが、大切にな
 ってくるはずです。  
・私の場合、最優先事項となるのが「安全」です。例えば、海抜ゼロメートル地帯のよう
 な場所に住むと想定した場合、非常にさまざまなリスクが考えられます。すぐに思いつ
 くだけでも、大地震による地盤の液状化のリスク、今後、地球温暖化が進んだ場合の水
 位上昇による高潮浸水のリスク、さらには、そこへの台風がきたときの大洪水のリスク
 など、いろいろあるわけです。
・同じ理由で、私は高層マンションにも住めません。住めるのはせいぜい6階までです。
 災害時にエレベーターが止まって、自分の足で階段を上ることになった場合、上れるの
 は5、6階までが限度ではないかと思いからです。なにか荷物を持って上げるようなと
 きには、5階だって無理かもしれません。そういう意味で、とくに高齢者はできるだけ
 低層住宅を選ぶべきだと思います。 
・地震の多い国で、六本木ヒルズのような高層住宅を建てるというのは、建てる側の想像
 力の欠如の表れであって、それはとても無責任なことだと思うのです。マンションは、
 昔の公団住宅がそうであったように、4階建てまでの低層住宅にしてしかるべきです。
 日本は、今後人口がどんどん減っていくわけですから、住宅を高度に集積する必要はま
 るでありません。要するに、高層マンションというのは、値段を高く売るだけの虚栄的
 な仕掛けなのです。 

節約と人生
・節約したお金は自己投資に回すべきです。をのお金を惜しんではなりません。いや、自
 己投資のために日々節約するべきだ、と言ったほうがいいかもしれません。百年に一度
 の大不況などといわれ、リストラや大量解雇のニュースが日常的に報じられている今、
 誰しもが未来を不安に思っています。大企業に勤めているからと大丈夫ということもあ
 りません。その会社自体がいつまで続くかわからないし、終身雇用制度は崩壊している
 し、定年までいられる保証はどこにもありません。だからこそ、十年後、二十年後を見
 越して、今は自己練磨に励む。二十代三十代の若い人たちに対してはとくに、自分のた
 めに節約しなさい、と言いたいのです。
・自己投資というとすぐに資格だといって、あれもこれもと闇雲に資格を取る人がありま
 すが、それはあまり意味のないことだと思います。大切なのは「資格」ではなくて
 「仕込み勉強」です。自分に対する「仕込み勉強」が重要なのです。 
・人間誰しも、自分が健康でいる間は、健康というものを意識しないものです。けれども、
 ひとたび病気を患えば、身体的、精神的ダメージを受けるだけでなく、さらに治療代、
 通院代、薬代などの出費、仕事を休むことによる収入ダウンなど、多くの金銭的な損害
 も生じます。従って、よりよい人生を送るという面から言っても、節約の面から言って
 も、まずは病気にならないこと、これが最も大事だと思います。それには、まず真っ先
 にたばこをやめることです。これはいくら強調しても強調し足りないくらいです。お酒
 は、少量ならかえって薬になるという場合もありますが、飲めば理性が麻痺するので、
 やはりどうしても飲み過ぎる傾向があります。正味のところを言えば、やめるに越した
 ことはないと思います。 
・過食というのも、健康を害する原因のひとつです。過食を自制するために日ごろから実
 践しているのが、毎朝毎晩体重計に乗る、ということです。過食を防ぐためには、その
 数値をいつも意識しておく必要があります。それには朝晩、寝しなと起き抜けに必ず体
 重を量ることです。 
・ただ体重が減ればいいというものでもありません。ビタミン、ミネラルなどの必要な栄
 養素はしっかりと食事で摂る必要があります。緑黄色野菜や大豆、骨のある魚、そうい
 うものを主に食べて、脂っこいものは食べない。栄養バランスがとれた食事をするよう
 に常に心がけて、体重が一定の範囲を超えないように管理するわけです。
・酒、たばこをやめる、食生活に気をつける。健康維持において、あと必要なことは適度
 な運動です。適度の運動というのは、軽くて持続的であることが大切です。時々突発的
 に激しい運動をするというのが一番よくない。運動というと、すぐにスポーツジムに行
 くのだの、ゴルフをするのだの、テニスクラブへ入るだのと言う人がありますが、それ
 にはみんなばかにならないお金がかかります。はばかりながら、私はそういった場所へ
 一切行ったことがありません。従って、そういうものに一銭もお金を使ったことがない。
 なぜコンベアに上を歩くのに、お金を出さなければならないのでしょうか。その会費が
 まことにばかばかしいと思うのです。わざわざ高い会費を払ってそういう場所で運動し
 なくても、新鮮な外気を吸いながらただ道を歩けばいいのです。それならお金がかかる
 こともありません。
・よく旗を立てて「日曜に歩こう会」などといって、グループで十キロ、十五キロ歩くと
 いう人たちがありますが、やはり継続しなくては意味がないものですから、こういうも
 のに、たまさか思いついて、一、二回参加したからといって効果のほどは期待しにくい
 と思います。そもそもなぜ歩くのに団体にならなければならないのでしょうか。大体、
 団体で歩くと自分のペースで歩けなくなります。
・立派な服を着て紳士然としているのに、近くに寄ったら加齢臭がひどい。そういうオヤ
 ジ連中は実に多い。とくに、満員電車などの密室における加齢臭の充満たるやひどいも
 ので、もはや公害ではないかと言いたくもなります。オヤジ臭さの三大原因と言われて
 いるのが、酒とたばことコーヒーです。酒とたばこについては言うまでもありませんが、
 コーヒーが口臭と関係していることは意外と知られていないのではないかと思います。
 コーヒーの中には、舌苔や口の粘膜に残りやすいにおいの物質が含まれていて、それが
 口臭の原因になるのだそうです。  
・たばこをふかしながらコーヒーを飲み、夜には酒を飲みながらたばこをふかす。こうい
 うことを世のオヤジというのは、人に嫌われようとしてやっているとしか思えません。
 この三つをやめて、毎朝毎晩お風呂に入れば、加齢臭が問題になることなどなくなるは
 ずです。
・自分のにおいをごまかそうとして香水だのオーデコロンだのをつけて、そのにおいをぷ
 んぷんさせて、近くに寄ったら口臭がひどい、などというのは最悪です。香水だとかコ
 ロンだとかで自分を飾るのではなく、自分のいやなところをマイナスしていく。そうい
 う操作のほうが大切だと思います。 
・外見だけの若さや美しさなど、所詮は薄っぺらなものです。外見を飾ることだけに夢中
 になって、内面を磨く努力を怠った人は、どんなに見た目が整っていたとしても、努力
 で磨いた顔の魅力にはかなわないのです。 
・年をとったなりの魅力を得たいと思うなら、何かに向かって一生懸命に精神することで
 す。そうやって地道に自己錬磨を積み重ねてきた人の顔は、年を取れば取るほど輝いて
 くるはずです。 
・本当の美しさを得るのに、お金はたいしてかかりません。内面を磨くのに要するのは努
 力と時間であって、お金ではないのです。高級化粧品を買ったり美容整形をしたりする
 時間とお金があるのであれば、それは内面を磨くことに投資すべきだと思います。
・人間の命というものは、いつ、どこで、どういう形で終わってしまうものかわからない
 ものです。若いからといって、そう安心というわけでもありません。ですから、命とは
 そういうもの、いつとぎれるかわからないものだと覚悟、それを持ちながら生きること
 が大切だと思います。  
・人間が生きていくということはどう死ぬかということであって、つまり、生きることと
 死ぬことは等価であるということです。ですから、常に自分の死のときを想う。死のと
 きを想って、そして、そこから逆算して物事を考える。そうすれば、おのずから、どん
 なふうに生きるべきかという結論が出てくるのではないかと思います。 
・一番素晴らしい人生というのは、従容として死につくことだと思います。慌てず騒がず、
 来るべきものが来たといって、静かにあるがままに死を受け入れて死んでいく。私はそ
 ういう死にかたをしたいと思っています。それが一番見事な人生だと思うのです。
・もし死に様が無様であったならば、どんなに立派なことをしたとしても、最期にご破算
 になってしまう。そのためには、いつ「死」というものがドアを叩いてやってきても、
 慌てないだけの心の準備をしておかないといけない、そう思っています。
・そうなると、やるべきことは一つしかありません。「明日死んでもかまわない」と言え
 るほど、一生懸命に今を生き、一生懸命に仕事をするということです。家族を養い、世
 のため人のためになる仕事を精一杯やって、それで倒れたのなら、もうしかたがないと
 納得できます。それ以上ほかに、人生にやりようがあるのでしょうか。
・後悔しないようにするためには、あらかじめ体に悪いとわかっていることをできるだけ
 しないことです。私は、日ごろからできる得る限りの節制をして、リスクを減らす努力
 をしています。酒もたばこもやらないし、毎日欠かさず歩いているし、食べ物はローカ
 ロリーの繊維食だし、いやな仕事もありません。ストレスは多少あっても、自分のやり
 たいことをやっているから、生きがいもある。あらいる意味でローリスクの生活を送っ
 ています。 
・私の目から見ると、世の中の人たちはまだまだ覚悟が悪過ぎるように思います。脂肪た
 っぷりの食事を好きなだけ食べて、たばこをスパスパ吸って、夜中まで飲み歩く。そん
 なことをやっている間に、死神は着実にドアの前へと近づいているのです。自分が死ぬ
 ときを想って、そこからどう生きるべきかを考える。そして、死がいつ訪れても後悔し
 ないように、日ごろから一生懸命に努力する。
・無駄にしてはいけないのは、お金だけではありません。人が生きる上でいちばん無駄に
 してはいけないには、やはり人生の時間だと思うのです。だからこそ、そのような後悔
 のない生き方をするということこそが、人生を無駄にしないという意味で、究極の節約
 なのかもしれません。