「オニババ化する女たち」  :三砂ちづる

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この本は現代の女性にとって衝撃的な内容である。現代の女性が何に悩み、どんな問題
を抱えているのかを女性の視点から詳細に考察している。特に女性としての性の本質と
現代社会の女性のあり方との間に大きなギャップのあることを指摘し、そこから来てい
る大きな歪が現代の女性に根本的な不幸を招いていることを指摘している。
そして、現代の女性が幸せな人生を送るためには、どんなふうな人生を送ったらいいの
か。きわめて斬新な生き方を提案している。
このままでは、現代社会はオニババ化した女性で溢れてしまうだろう。それは男にとっ
ても不幸な社会である。女性が幸せな人生を送るために、そして男性も幸せになるため
にも、多くの女性に一刻も早くこの本を読んでほしいものである。

はじめに
・人間のやるべきことは、最終的には次の世代に何かを手渡していくことだと考えると、
 いつまでも自分のことばかり考え、周囲に苛立ちをぶつけているのは、どこかで歯車
 がずれているのでしょう。
・戦後の暮らしで、経済的には少しずつ恵まれ、理不尽なことも少しずつ減る方向にあ
 ったはずの彼女たちの人生で、何か根本的なものが満たされていない、と感じられる
 のです。どうやら、今の六十代、七十代の日本の女性あたりから、性と生殖、女性の
 身体性への軽視が始まったのではないでしょうか。
・このまま放っておけば、女性の性と生殖に関わるエネルギーは行き場を失い、日本は
 何年かあとに「総オニババ化」するのではないか、と思われるふしがあります。それ
 は女性とともに生きていく男性にとっても、けっして幸せなことではないでしょう。

子どもを産むのは恐怖である?
・「産むこと」「育てること」に何の希望も持てないようなネガティブな情報が共有さ
 れている現在、実際に子どもを産み、育てていくことを決めるには、たいへんな勇気
 が必要とされるようです。現実には多くの女性が、キャリアや会社的な承認を求めて
 勉強したり、働いたりすることを優先させていて、「女性であること」「子どもを産
 むこと」には夢や希望を見ていません。

憧れの「病院出産」
・じつは出産や授乳というのは、からだにとって非常に重要で、しかも身体の能力を一
 段階上に進めることのできるような貴重な経験でありうるのですが、それがすっかり
 軽視されてしまったわけです。

娘の生き方に嫉妬する世代
・娘たちがこのフェミニズムの時代に生きることを、母親の世代は喜んだと思いますが、
 同時に、「勝手に生きていく」娘は、自分の人生でできなかったことを思い起こさせ
 る存在でもあったのでしょう。出産、授乳を通じてのしっかりした身体的つながりが
 できていない母娘関係は、嫉妬の関係に陥りやすいところがあります。母親は娘の社
 会的成功、活躍を願っているようで、同時にどこか受け入れられないところもある。
 矛盾に満ちた母親の思いを、娘たちは敏感に感じ取っています。
・さまざまな大きな変化を経験した60代、70代の女性は、結果的にどうも「女性と
 して生きること」「子どもを産むこと」、あるいか「結婚そのもの」に対しても、肯
 定的なイメージを持ち得ていない人が多いように見受けられます。
・60代、70代の女性たちの多くは、自分たちのしてきた結婚や出産、そして夫との
 関係を、「楽しかった」と言い切れるようなものとは考えていないようなのです。
 「あんな結婚ならしなければよかった」「娘たちは出産を避けて通れるならそうして
 ほしい」とさえ思っています。そしてそのような考え方は、現在の20代から40代
 の女性に見事に反映しているようです。
・私は、女性の「他者を受け止めることができる力」というのは、月経や性、そして出
 産を豊かに経験することで次第に身に付いていくものだと思っています。ところが、
 それらの体験の重要性は、すっかり忘れ去られてしまいました。
・私は、女性の「他者を受け止めることができる力」というのは、月経や性、そして出
 産を豊かに経験することで次第に身についてくるものだと思っています。ところが、
 それらの体験の重要性はすっかり忘れ去られてしまいました。

ポリネシアの驚くべき避妊法
・あるポリネシアの島では、以前、思春期のうちはほとんどフリーセックスだったそう
 です。不特定多数のボーイフレンドがいる、いわゆる結婚前の性的関係が認められ
 ていたわけですが、この時期、女の子たちが避妊することはなかったといいます。し
 かし、「この人と結婚する」と決めたら、すぐに妊娠して子どもができたのだそうで
 す。
・この島には当時、近代的避妊法は入っていなかったにもかかわらず、的確な家族計画
 が行われていたわけです。いったいどのようにして排卵を知り、妊娠をコントロール
 していたのでしょうか。
・そのことに関する詳細な報告はないのですが、おそらくは「排卵を知る」ということ
 が知恵として代々伝承されていたらしいのです。「自分のからだに注意を払う習慣が
 ついていれば、排卵の日がわかる」ということが伝えられていたのでしょう。排卵の
 日さえわかれば、避妊をすればいいのはその前後数日だけ 、となります。

インディオは更年期を楽しみにしている
・インディオの村では、女性は閉経するととても喜ぶというのです。これでもう妊娠し
 ないから、子どものことは気にせずにセックスだけを楽しめる、と言っていたといい
 ます。そういう考え方ですから、この村では閉経後にこそ女性の性活動が活発になっ
 ているらしいのです。
・日本にも、後家や中年女性のエネルギーを適切に使おうとしたのでしょう。さもない
 と、中年女性は「オニババ」と化す、と思われていたのではないでしょうか。
・日本の昔話には、よくオニババや山姥が出てきて、ときおり道に迷った小僧さんを夜
 中に襲う話があります。あれは、更年期を迎えた女性が、社会の中で新しい役割を与
 えられず、山に籠もるしかなくなり、ときおりエネルギーの行き場をもとめて若い男
 を襲う、という話だったととらえています。

上の世代の話があると不安が消える
・現在の4,50代の女性は、からだのことに関して親から何も聞いておらず、何も伝
 承は受けていない方がほとんどです。月経に関しても、出産に関しても何も聞いてい
 ないからこそ、すべて医療まかせになり、医療従事者が与えてくれる情報をそのまま
 鵜呑みにして取り入れるしかなかったのです。
・今では、お産に関する知恵が伝承されているどころか、逆にお産は苦しい、痛い、つ
 らいといったイメージが広がっています。若い女性たちが出産に対して持っているネ
 ガティブなイメージもまた、母親の世代から伝えられたとすれば、何も伝えられてい
 ないより、余計に悪い影響を及ぼされているといえます。

自分のからだの声に耳をすます
・自分たちはいったい何を伝えてもらってきたのか、また、何を次の世代に伝えればよ
 いのか、何もわからないからです。私たちが学校の先生や母親から聞いてきたのは、
 彼女たちがからだをもって体験してきた経験知ではなく、生物学的、解剖学的事実だ
 けだったのですから。これをこのまま次の世代に伝えるとは、とてもさびしいと思い
 ます。

中高生に植え付けられた「股を切られる恐怖」
・日本の病院の中には、科学的な根拠もないまま、初産婦全員に会陰切開をする病院も
 あります。女性の側も「そのようなものなのだろう」と受け止めていることが多いと
 いうのも、とても大きい問題ではないでしょうか。講義を受けた学生も、講義を聴か
 なければ、「出産とはそういうものだ」と思い込んで、出産しないことにするか、あ
 るいは出産することになっても、会陰切開は当然なものだ、と受け入れてしまってい
 たのでしょう。
・会陰というのは、もともと非常によくのびるようにできています。多くの病院では
 「切開しないとひどく裂けてしまう」ので切開を行う、と説明されているようです。
 しかし、自然なお産を目指す助産院では、赤ちゃんが出てくるときに会陰が大きく裂
 ける、ということはほとんどない、と言います。避けてもほんのちょぴりで、しかも
 自然に治るのです。
・女性全員に会陰切開をしようとすることは「現代の女性性器切除」とさえ言われてい
 ます。また、問題は会陰切開だけではありません。お産をするときに仰臥位と呼ばれ
 る仰向けの姿勢をさせられることがまだ多いのですが、その体勢では、重力を利用で
 きないし、背中の血管を圧迫してしまい、赤ちゃんに酸素がいくのが妨げられるので、
 お産にふさわしい姿勢ではない、という科学的根拠があるのです。からだを起こした
 座位、半座位、などのほうが出産には向いているのですが、まだまだ仰臥位でないと、
 お産ができない施設もたくさんあります。

お産と女性の変化
・今の若い女性が、特に社会的意識の高い世代だとは思いませんが、このようなお産を
 すると、びっくりするような社会性が出てきます。「私はこんなにすばらしいお産を
 させてもらいました。もっと多くの女性にこういう経験をしてもらいたい。日本のみ
 なさん、と立ち上がりたいです」とか、「子の個の生きていく環境はよいものであっ
 てほしい」などといって、実際に地域での子育て支援や環境運動に出ていったりして
 いきます。そういう人を何人も見ていると、お産の経験がこの人たちを変えたのだな、
 としみじみ思います。

「原身体経験」の砦としてのお産
・お産は、丹念な「原身体経験つぶし」のなかでも最後の残った砦のように思われるの
 です。つぶしてもつぶしてもつぶしきれなかったパワーのある経験、それが「人間が
 生まれてくる」という経験なのではないかと思います。
・おそらく女性のからだというのはそういった経験を男性よりもしやすい構造を持って
 生まれてきているのでしょう。お産でも経験できるし、おそらくは性の経験というの
 も、女性のほうが男性よりもずっと深いのではないかと思います。男性は、そういう
 ことがなかなか体験できないので、滝に打たれに行ったり、修行をつんだり、スポー
 ツや武道をがんばったり、からだを徹底的に痛めつけたりして、やっとそこにいけた
 り、あるいは実際に宇宙まで出て行ってしまったり、といったことをしているのでは
 ないでしょうか。

お産には「きまり」は必要ない
・医療関係というのは、近代化の中で、「マニュアルを作りたい、ルーチンを作りたい、
 効率的に効果的に、もっと迅速に・・・」というふうな教育を受けてきています。私
 たちはその恩恵も随分受けています。しかし、「人間的なケア」というのは、一人一
 人の違った個性を持つ人と、一人一人の違ったケア提供者との関わりのなかから生ま
 れていくものなので、実はマニュアルとかリーチンとか官僚的な働き方からは一番遠
 いものなのです。
・一見これは時間がかかるように見えるのですけど、じつは人間というのは、もともと
 こういう働き方をしてきたのではないでしょうか。誰かが誰かを管理して、誰かが誰
 かをコントロールするというかたちで効率性だけを見ていくのではなく、一対一の関
 係からお互いに一番良い方法を探してお互いの力を出していく。そういうものがヒュ
 ーマニゼーションの意義だったのではないかと思います。
・一方で、放っておいたら自分で相手も見つけられないような人たちのほうが、ほんと
 うは数が多いのだと思いますし、弱者という言い方をすると非常に御幣があるのです
 が、メスとして強くない人、エネルギーがそんなにない人たちのほうが本当は多いの
 ではないでしょうか。
・負け犬というのは、けっこう恋愛をしている人たちなわけです。バリバリ仕事をして
 いるけれども、結婚して子どもを産んでいない、というだけで、不倫をしていたり恋
 人がいたりするわけですから、やっぱり女性としては強者なわけです。
・自分だけで相手を見つけるほどの積極性がない人たちを、女も結婚だけじゃなくてい
 いんだとか、仕事さえしれいればいいんだ、という風潮で、単純労働に追いやったう
 えで、そこでもう、誰も周りは結婚のことは心配しない、というような状況のほうが、
 気になります。

「女として生きろ」というオプションがない
・昔の、「女として生きなさい」と言っていたころの人たちは、彼女が出産を通じてか
 らだも変革して成長していく、というようなことまでは考えてはいなかったかもしれ
 ませんが、それはそれで、昔からの知恵で、女性はやっぱり相手を持って、性生活が
 あって、子どもを産んで、ということをしていけば、ある程度の、女性としていい暮
 らしができる、という知恵を、なんとか伝えようとしていたのでしょう。
・人生は現代が求めている「社会的な重要な役割」を担えなければ意味がないわけでは
 ありません。女性としての、主婦としての生活というのは、修行みたいなものですか
 ら、毎日毎日同じことをしていくわけですが、その生活を極めていくという修行の上
 で、子どもを育てたりしていると、誰でも六十、七十ぐらいになると、そのなかで自
 分の人生を生きていくという意味がわかって、穏やかに枯れていくことができるかも
 しれない、という人生のオプションがあったわけです。今の議論ではそれがなくて、
 ある意味全部、経済価値に置き換わってしまっているのではないでしょうか。
・女性は、これはなかなか説明しづらいことですが、性生活がないと、ある程度の年齢
 になるとやっぱりきついと考えます。自分の中で軸を形成していくきっかけというの
 がないままになってしまいます。
・性生活というのは出産と同じで、魂の行き交う場、霊的な体験でしょう。私は出産の
 ところで原身体経験という言葉を使いましたが、じつはあれはセックスも同じように
 得られるものだと思っています。非常にいいセックスの経験というのは、自分の境界
 線がなくなるような、宇宙を感じるような経験ですので、そういう経験をすることに
 よって、やはり自分のレベルが上がっていくというか、自分があまり細かいところに
 こだわらなくなるというか、自分が落ち着いていく先を見つけることができるのだと
 思うのです。
・それに加えて、いつもふれあうことのできる相手がいる、ということも人間としては
 とても大事ですし、女性としては、つねに子宮を使っている、ということも大事なこ
 とです。

性体験はからだをゆるめていく経験
・セックスの重要性について考えてみましょう。あまり難しいことは考えず、現実に
 「セックスをする」ということ自体が重要なのではないでしょうか。セックスという
 のは、からだにしてみれば、「緊張した状態をゆるめていく」ような経験です。
・そういったことがないとずっと緊張したままになっていますから、子宮系のトラブル
 は出てくるだろうし、それこそ語源どおりヒステリックにもなります。オニババ状態
 です。
・女性というのは、やはり、少しボーとしているほうがいいようです。こっちの世界に
 いるのはあっちの世界にいるのかよくわかれないけれど、ふわっとしたような感じ、
 というのがよい状態だと思います。やっぱり、セックスを通じてそういう感じがもっ
 とも身近に得られると思っています。

宙ぶらりんのままのからだの欲求の行方
・人間というのは、そもそも誰かとつながり、誰かとくっついたりしながら生きていく
 ようにできています。実践的には、そうゆうふうにして生きていって、次の世代に命
 を渡すということだけが、この世の中でやること、とは言えないでしょうか。ですか
 らそこを否定したときに、いったいどんな生き方があるのか、ということを、今誰も
 提示できない。そういったことを、仕事だなんだという低レベルなことで、ごまかし
 ていたらいけないと真面目に思います。
・土着の男と女のありかたというものがあって、その絡み合いから文化がでてくるもの
 なのですが、近代産業社会というのは、そういう男の文化、女の文化、男と女の関わ
 りをつぶしてしまって、モノセックスかすることによって出てくる社会だ、と彼は言
 いました。男と女が、男と女としてのあるための大前提を、崩してしまう、と。
・モノセックスというのは男と女がまったく同じで、境界がなくなってしまって、つま
 りお金を稼ぐだけの機械になってしまうことです。まさに今、そうなりつつあります。

少子化対策の的はずれな感じ
・少子化対策も、少々おかしな主張が見えます。今の少子化対策は、「妊娠出産子育て」
 というのが、働く女性にとっては重荷になっていて、この近代産業社会を維持してい
 くのに負の要因だから、どうやって公の人たちがその負の要因をカバーできるか、と
 いう議論です。それだけでは女性の心とからだにまったく響かないことに気づきませ
 ん。
・人間はもともとは、相手を持って生殖活動に励む、ということに基礎があるのでしょ
 う。子どもを産むことやからだに向き合うことによって、女性の人生というのはレベ
 ルアップして、より広い視野を持っていろいろなことができるようになるわけで、や
 はりそれが喜びであり楽しいから、みなにそういうことをしてほしいと思う、という
 のが本質だと思います。
・一人一人が本当の自分のからだの中心を持って、自分のからだを大事にして、セクシ
 ャルな相手を大切にして、子どもを育てることをいとおしむようになったら・・・、
 そういうことができるような近代産業社会というのが、どんなふうに存在するのか、
 というのが、私たちはまだわかっていないのです。

なぜオニババになるのか
・どうして女性性を軽視したらいけないのか、どういうトラブルが起こるのか、という
 ことをひと言でいうと、繰り返しになりますが、やはり、世の中がオニババばっかり
 いなってしまう、ということではないでしょうか。
・女性というのは、自分のからだを使って、セックスしたり出産したりということをし
 ないと、自分の中の、女性としてのエネルギーの行き場がなくなる、と私はとらえて
 います。
・性欲としてその人が感じているかどうか、意識しているかどうかは別として、やはり
 人間として、女として生まれてきたら、女としての性を生きたい、というからだの意
 志がありますから、それを抑えつけて、宙ぶらりんな状態にしていると、その弊害が
 あちこちに出てくるものです。
・からだが実際に具合が悪くなってしまったら、たいへんイライラしてしまって、人を
 まったく受け入れられない人間になってしまったり、ものすごく嫉妬深くなったり、
 自分のできないことをしている人を見るととても許せなくなったり、自分のからだを
 使って、性経験や出産経験を通じて穏やかになっていく女性とは正反対の方向に行っ
 てしまうわけで、そういう人たちを昔はオニババと呼んだのでしょう。

からだは共に生きる誰かを探している
・結婚しない人が増えている、ということを取り上げましたが、結婚という制度を大切
 にするかどうかはそんなに重要なことではないと思います。
・でもともかく、望む人はパートナーが持て、性生活があって、結果として子どもがで
 きたら子どもを産めて、ということは、人間として生きていく上でとても大切なこと
 のはずです。
・女性の持っている性に対する身体性について、やはり私たちはどうも過小評価してい
 るのではないかと思います。今は、女性も別に結婚するだけが人生ではないし、母親
 が歩めなかったような人生を歩むこともできるし、仕事があれば困らないし・・・と
 いうことで、三十代、四十代で独身、という女性が増えています。このまま、未婚で
 ひとりで老いていく女性が増えていくと、どうなるのでしょう。
・女性は男性よりも身体的に鋭いところがありますから、密な人間のふれあいなしには、
 生きていけないし、セックスもその途上にあるでしょう。

「子宮を空き家にしてはいけない」
・女性が定期的な性生活を持たないとき、どのように自分の身体性と折り合いをつけて
 いくのか、ということの具体的な処方箋は、じつはあまりたくさんありません。
・女性の身体性は、うまく発散されていかないと、破滅的なものになっていく可能性が
 ありますから、本当は、さまざまな文化がそれぞれにいろいろな処方箋を持っていた
 のかもしれません。アイヌの産婆さんも、「子宮を空き家にしてはいけない」とつね
 づね言っておられたそうです。

性体験はもっと深いもの
・ところで、結婚しなくてもつねにパートナーがいれば問題ないのではないか、という
 ことを言いましたが、それでもやはり、結婚という形で特定のパートナーと一定の性
 関係を保つ、ということもとてもよいことなのではないでしょうか。というのも、性
 体験というのは、本来相手を次々と替えなければ楽しくない、というような薄っぺら
 なものではない、と思うからです。

アメリカ流の薄っぺらい性行動
・ポリネシアンセックス、というのは、一時週刊誌でも話題になって特集をされていま
 したけれど、とても深い性の経験のようです。長い時間をかけてお互いにからだをく
 っつけている。ポリネシアの方のコメントも紹介されていましたが、ポリネシアでは、
 欧米人が映画の中で、セックスのときに上にのっかてワッと終わってしまうのを見て、
 みんなで笑っているという。なんだ、あれは、ということで、理解できないといいま
 す。

卵子にも個性がある
・月経が始まって二週間ぐらいすると排卵が起きるわけですが、その一週間前、つまり
 月経開始から一週間後ぐらいのときは、なんとなく人恋しくなります。それは、別に
 すごく性欲が昂進する、という感じではなくて、それこそ誰かと電話したい、とか、
 一緒に何かをしたい、とか。一人でいることがたださみしいような気持ちになること
 があるのです。排卵したときに急に発情して、それから相手を探しても間に合いませ
 ん。それよりは一週間ぐらい前にきちんとホルモンが出て、人恋しくなるように、
 「誰かを探せ、誰かを探せ」と卵子がからだに呼びかけているのかなあ、と思えませ
 んか。

セクシュアリティの流れが悪いと病気になる
・不妊で苦しんでいる方が多いなか、安易な処方箋を書くことはできないですけども、
 もっといっぱいふれあうということは、いいことだと思います。例えば先にあげた十
 分にからだにふれるポリネシアンセックスなどは、解決のひとつだと思いますし、
 「愛のヨガ」という本でも、とにかく性交する前にからだをたくさんふれあいなさい、
 ということを言うのです。非常に気持ちが穏やかになってきて、そして気持ちが高揚
 して、と。そういうところなしに、ワーツと勢いだけで、アメリカ映画のようなセッ
 クスばかりしていると、だんだんイヤになるのではないでしょうか。

行き場を失ったエネルギーをどうするか
・女性は子どもを産めるということで、男性よりも身体パフォーマンスが高く作られて
 いることは前にも述べました。武道をしている人が20年も30年もかかって手に入れ
 るような身体パアフォーマンスの高さを、女性は、月経と、そして子どもを何人か産
 むことで、手に入れることができるといいます。
・子どもを産んで女性が強くなる、というのは、不満を抱えたまま家庭を我が物顔でと
 りしきって威張る、という強さではなくて、豊かな生殖経験で得られたからだの中心
 軸を支えに、受けとめる力である、腰の据わった人間になっていくということなので
 す。腰の据わった人、というのは、かっこいいですね。堂々たるおばさんになりたい
 ものです。
・ここで言うおばさんというのは、エロを忘れたただのおばさんではありません。物欲
 に支配された女性も多いですが、度が過ぎるのも、性欲が満たされていないからなの
 でしょう。やはり、物欲が多い人は欲望がガーッと出てきているのが目に見えるよう
 です。でもそれももともとは性欲なのですから、きちんと性欲としても昇華させてあ
 げるために、世のご主人たちももっとがんばってください、とも言いたくなります。
 そこを全然やっていないから、あんなにほかのことで一生懸命やってしまうのです。
・しかし、人間というのは、性欲を抑圧することで、いろいろな文化を作ってきたよう
 なところがありますから、一概に否定するつもりはありません。問題は、特に女性
 はある年齢になると性欲をうまく発散させていく必要が出てくるのですが、それが

今は重要視されていないということです
・性欲がうまく昇華される必要があるのは、30代後半以降だと思っています。インド
 医学でも女性の性のエネルギーとして、クンダリーニが上がっていくのがやはり38
 歳ぐらいといいます。蛇のかたちでエネルギーが上がっていく図が示されているのを
 見ることがある人もいるでしょう。
・このような時期に適切に昇華していかないと、オニババになるのかと思います。40
 代、50代でとても怖い品のないおばさんになっている、というのは、30代後半の
 エネルギーの出どころが、きちんといっていなかったからなのです。

「盛り」としての持ち時間は以外に少ない
・よく考えると、人生の盛りとしての持ち時間というのは、そんなに長くはないのです。
 女としての盛りとしての持ち時間というのは、閉経までです。生殖を前に出して生き
 ている時間、つまり生殖年齢というのは、だいだい15歳から49歳までです。実際
 には、45歳ぐらいまでかもしれません。
・自分よりレベルの高い人がいいだとか、生活レベルがどうだとか、そういったことは
 からだからしてみると、要するに本質的ではないことです。相手の学歴だとか、お金
 だとか、そういうことは、子どもを産んだり子育てをしていくことに比べたら、もの
 すごい些末事なことなのです。女性にとっては、子どもを産んで次の世代を育ててく
 ということは、女性性の本質なので、そのほかのことというのは本当に取るに足りな
 いことなのです。逆に、それらのことが中心にあることで、ほかのことに意味が出て
 くるとさえ言えるのです。
・今まで何もかも思うようにできてきた人にとっては、女性としてどうやって生きるか
 ということも、自在に選択できるように自分には思えているのかもしれないですが、
 せいぜいあと10年ほどの問題です。それから後は、もう選択はないのです。生殖と
 か子育てとおうオプションはなくなってしまって、自分はそれがない人生を選んだの
 だ、ということを意識しなければならないのです。

娘の生殖年齢をスポイルする親たち
・ひと昔前の、娘に結婚結婚と言っていた世代というのは、意識的無意識的に、やはり
 娘を女として生かしてやりたい、という気持ちもあったのだと思います。それが今は
 なくなってきている。娘が一生懸命仕事に打ち込んでいるのなら、それでいんだ、と
 思っていて、そういうメッセージをずっと送ってきていると思うわけです。でもそれ
 が、じつは娘の生殖年齢を全部スポイルすることになるかもしれない、と親が気がつ
 いても遅いわけですね親の側も、娘の結婚や出産を先延ばししているのです。現実に
 は、そのような状況にある30代というのは、とても多いと思います。
・でもよく見ると、女性が今、仕事仕事仕事と言って結婚しないのに、醒めた目で見て
 みると大した仕事をしているわけではない、というようなことも、けっこうあるので
 はないかと思うのです。こんな仕事のために、自分の生殖年齢を無駄にしたのか、と
 気づいても遅い。このご時世、簡単にリストラされたりするんですよ。どうするのよ、 
 と思ってしまいます。
・理想ばかり追いかけでも、人生は思い通りになりません。人生なんでも思い通りにな
 るのだとしたら、「死」や「次の世代への交替」を受け入れられません。特に、結婚
 とか、子どもを産むとか、誰かと一緒に住むというのは、全部「思い通りにならない
 こと」を学ぶことなのです。それを学ぶ一番よい機会が結婚とか、子育てでしょう。
・そんな大事な経験、自分の子宮を中心とした生活を、お金に換算して過ごしていくこ
 とで、もう一度考えてみた方がよいのではありませんか。

からだを張って母親を守る大人がほしい
・やはりみんな産むことへのネックはお金と言います。お金がもらえるのであれば運で
 もいい、というような答えです。それは勝手な言葉に聞こえるかもしれませんが、現
 実にはそうですよね。この社会でお金がなければ安心して子どもは産めません。
・たとえば、とにかく女性が、年齢はいくつでもかまわないし、結婚していてもしてい
 なくてもいいから、子どもを産んでくれるのであれば、「うちの自治体にきてくれた
 ら面倒見ます」なんていうところがあれば、けっこうな数の女性は行くのではないで
 しょうか。出産した女性を見ていると、そう思います。16歳ぐらいで妊娠しても、
 誰しもすぎに中絶したいなどと思うわけではないのです。どこかで壁にぶつかるので
 仕方なく考える、というのが実際のところでしょう。たいていが、今ここで産んでい
 たらお金はかかるし、人目は気になるし、学校も続けられないし、ということで中絶
 を思うわけです。
・だいたいの場合が、世間体が悪いし、お金もないし、学校にも行けないし、というこ
 とで、子どもをあきらめてしまうのですが、そういう人たちにこそ産んでもらわない
 と、とつくづく思います。国も不妊治療のほうばかりにお金を出すよりも、今中絶を
 しようとしている人にどうしたら産んでもらえるのか、ということを考えるほうが、
 ずっと健康的だと思うのですが。

命の勢いがあるうつに出産する
・人間はやはり命の勢いがガーッとあがっているときに結婚した方がよいのでしょう。
 男性も、「誰とでもいいからやりたい」と思っているような時期は、人生でそう長く
 は続かないのです。だからそういうときに結婚してもらって、ふたりで仲良くしてい
 ただいて、というのがからだにとっても一番よいのです。その勢いがなくなってから、
 不妊治療をしても遅いのです。

セックスするなという性教育
・今の性教育はどうでしょうか。若者に子どもを産んでほしいのに、性体験や生殖の喜
 びというものをまったく伝えきれていないのではないでしょうか。
・若いうちから妊娠、出産すると、勉強の妨げになる、生活に追われてしまう。また若
 年層の間ではエイズや性感染症も急増している。だから、初めてセックスをする年齢
 を少しでも遅くすることが性教育が目指すことのひとつになっています。つまり、セ
 ックスするな、するんだったら避妊しなさい、の性教育なでわけです。
・私が指導させていただいた学生さんの調査によると、高校生というのはじつはもっと
 本質的な情報を求めていたりするのです。愛情とは何なのか、本当のセックスとはど
 ういうことか、などということについて、考えたがっています。ですから、もっと、
 セックスするのはすばらしいことなんだ、とか、愛情を持つというのはすばらしいこ
 となんだとか、ふたりで生きていくことに対する希望みたいなものを投げかけて上で
 の性教育でないと、本末転倒だと思うのです。
・親心としては、「セックスするな」もわからないのではありませんが、私たちはあま
 りにも、若い人の性体験や妊娠、出産に対して、態度がつめたいのではないか、と思
 います。

授かった命は愛するという発想
・結婚はとても大切なことであり、十分に相手を吟味してから決定すべきものである。
 一生のことなのだから、この人と一生やっていけるという相手を探すべきだ。ただ妊
 娠したというぐらいであわてて結婚を決めることは早まったことだ。しかしお腹の中
 にいる子どもは、この家族にとって一番新しいメンバーたりうる子どもである。
・親戚の子どもをみんなが愛していることは当たり前じゃないか。その子が自分だけで
 問題を解決できないと言ってきているのだから、大人の僕たちは何とか手を差し伸べ
 て当たり前だ。日本では困っている若い人を家族が放っておくのか。

日本にもいた「早婚の民」
・思春期のセクシャリティを抑圧すると、自らのからだや、相手のからだを大切にしな
 くなるので、それを避けるために、早くに結婚させる。そうすれば、その後ずっと仲
 良く、お互いが成長していくようになり、90代まで性生活のあるような夫婦になる
ということです。

出産を選びとる若い女性の増加
・私たちが今まで若い人たちに対して、「避妊」ばかりを勧めてきたことを、考え直さ
 なければならないと思います。真剣に少子化対策を考えるのであれば、現在、妊娠中
 絶につながっている若年層の妊娠を支援して、積極的に子どもを産んでもらうための
 サポートをするという考え方もあるのではないでしょうか。
・「子どもが子どもを産むなんて」とか、「勉強はどうするのだ」「生活はどうするん
 だ」「将来は・・・」といった声が聞こえできそうですが、それは周囲の支援と状況
 の整備があれば、解決可能なことです。

子育てにエロスが足りない
・家族というには、セクシュアルな関係を核にした知恵の伝授機構だと述べましたが、
 この「セクシュアルな関係」というのが今の家族から消えてしまっていることも、ひ
 とつの問題だと思っています。お父さんとお母さんが、みんな「男と女」として生き
 いない、ということに、子どもたちが絶望を感じていくというようなところがあるよ
 うに見えるのです。それが、直接意識されないにしても、若い人が「結婚しない」と
 いうところにつながっている部分があるようです。
・子どもが家で、「あんなふうなんじゃ全然楽しそうじゃない」と思いながら親を見て
 いる。大人がやっていることというのが、ちっとも楽しそうじゃない。大人ってなん
 だかたいへんそうなだけで、全然楽しくないのだと子どもがとらえています。
・家の中にエロスが足りない。つまり家の中に男女としての仲良しさが存在しないとい
 うのは、子どもの精神面 にも悪影響をもたらすと思います。
・思春期を迎えて、女になっていくような子どもたちが、家の中で目にする母親の姿に
 憧れないということは、すごい失望につながることなのでしょう。女として生きてい
 くことが全然楽しそうじゃない、そんな母親の姿を見て、女としての自分の将来に希
 望を失っている。
・日本ではよく、子どもを産んだ後にすっかりセックスレスになったり、子どもを産ま
 なくてもそういうことになっていますが、とにかく夫婦の間にエロスが関係なくなっ
 ていく、ということが、どれだけ子どもにマイナスのメッセージを植えつけているか
 ということに、もっと気づいてもいいのではないかと思います。

大人になる楽しみを教えよう
・大人になると何が楽しいかといえば、昔は「せっくすができる」ということにつきた
 わけでしょう。今は、それが楽しいというイメージを全然伝えられていないというか、
 淫靡なものとしてしか伝えていないように思います。
・それは子どもがいたりするとわりとはっきりとわかるものなのですが、子どもがいな
 い人というのは、次の世代のために何かをしたらよいのかよくわからない、という気
 持ちに、歳を重ねるごとになるのだと思います。

「めかけ」のすすめ?
・今独身の女性の中には、妻子ある男性と付き合っているという、いわゆる不倫の関係
 にある人も多いのではないかと思います。ここで気になるのは、この不倫関係におい
 ても女性の生殖年齢というのがスポイルされている、ということです。
・最近の男性は一夫一婦制の幻想のもとで生きていますから、ずっと付き合っている不
 倫相手にしても、「いつかは妻と別れて君と一緒になるからね」というような幻想を
 振るまっていることが多いのです。私はそれがたくさんの若い美しい女性をすごく
 不幸にしていると思って見ています。
・そういうお金のある男性はきちんと責任を持って、「君は二号だ」と言ったらどうで
 しょう。だから「君とは一生結婚しないけれども、君のことはずっと大切にする」と
 言って、お金を上げたり家を上げたりすればいいのです。女性もそこで自分の立ち
 位置がはっきりするのではないですか。そうすれば子どもを産んでシングルマザーと
 して生きていく結婚がつくかもしれません。
・一夫一婦制は変えられないのですから、そんなにあちこちで女を作るような力のある
 男性というのは、本当に、めかけを持てばいいのです。でもめかけにするには経済的
 にそれだけ約束をしなければならないわけですから、やはり「お金のない男はほかの
 女に手を出すな」と、思います。
・でも、お金のない男でもいい、と女性のほうが思えるならば、それでもいいとは思い
 ますが。本人がお金があるのなら、男を自分でかこっていると思えばいいことです。
 でもこういったパターンでも、相手がないよりはあるほうがいいと思います。なによ
 りも相手があることが肝心なのです。

からだの欲求と援助交際
・「援助交際」の話について見聞きしたときには、中・高校生の女の子と、おじさんた
 ち、という、誰からも抱きとめられていない世代同士のなぐさめあいのように思えた
 ものです。女の子も男の子も、思春期の子どもは親からもう抱きとめられることはな
 いだろうし、おじさんたちも妻とはセックスレスでしょうし、子どもたちも父親を抱
 きしめてはくれないでしょう。
・人間は根源的なところで、誰かにふれてもらいたい。抱きとめてもらいたい、という
 欲望がありますから、それが満たされなかった人たちが、しっかりとしたからだのふ
 れあいを求めてやっていることなのかな、と援助交際について聞いたときに感じたも
 のです。

おばあちゃんも受けとめられていない
・受けとめられていない、ということでいえば、若者や中年だけでなく、年配の方にも
 そういう問題があるように思えます。
・昔話でいうオニババというのは、女の人というのはある程度の時期になったら、きち
 んと相手を与えて、子どもを産ませて、とそういうことをさせておかないと、こんな
 ふうになっちゃうぞ、というメタファーだったと思います。
・女性のエネルギーの行き所をきちんとコントロールする、という言い方もおかしいで
 すが、たしかに道をつけてあげないと、オニババになっちゃうぞ、ということです。
 そういう意味では今のおばあさんたちも、みんなオニババになりかけているのではな
 いかと思うのです。
・結婚していてもきちんとセックスしていないとか、子どもを産んでも病院でひどい出
 産しかしていない、などということを積み重ねているうちに、同じようなことになっ
 ているのではないでしょうか。今、そのせいで男性も女性に受けとめられていないし、
 一億総オニババみたいな状況になりそうだと心配な気がします。
・歳を取っても不満が多い、というのは、基本的にご主人と二人の暮らしに満足してい
 ないのですよね。だからご主人も満足していない。ときどきすごくいい夫婦がいます
 よね。そういう夫婦はぜったいにセクシュアルな面でもうまくいっている夫婦だと思
 います。
・男と女の関係なんて、ぜったいにそれしかないと思っていますから。それがうまくい
 かなくなるから離婚するのです。ですから、中高年夫婦で仲が悪い、と言っている人
 たちを見ると、みんな「私たちはセックスがうまくいっていません」と書いてあるみ
 たいで、やはり恥ずかしい気がします。
・アメリカなどですぐに離婚してしまうのは、西欧世界ではダブルベットが象徴なので、
 夫婦がダブルベットで寝なくなるというのは、もう離婚しかないのです。別の部屋
 で寝る、というオプションはない。でも日本の場合は、すぐ別の部屋で寝るではあり
 ませんか。もともと蒲団が別ですし。だからすっごい嫌なやつだな、と思っていても、
 となりに寝ているわけではないから、がまんできる、みたいなところがありますから、
 いいかげんになってしまうのでしょう。

いつまでも自分のことばかりに関心がある世代
・私たちは本当はもう、もともと受けとめられているのです。生まれてきたということ
 だけで十分に受けとめられている存在なのです。ですから、親に受けとめられなかっ
 たとか、配偶者に受けとめられなかったとか、上司に受けとめられなかったとかいう
 のは、じつは大したことではないのです。私たちはそれこそ、自然や大いなるものの
 存在に受けとめられていて、みんなあるがままでいいよと言われているはずなので
 すから、自分のことをわっと言わなくてもいいのです。言うべきことはその役割がき
 たときに、出ていくものなのです。
・でもそこで、自分が受けとけられている意識がない人は、ついいろいろ言ってしまう
 のです。そして人を管理しようとさえしてしまう。人が人を管理しようという発想と
 いうのは、受けとめるということとはまったく逆のことです。

女性はからだに向き合うしかない
・世代をつないで、どうやって気持ちよく生きて、スッと枯れていくか。どうやって満
 たされた一生を送るか、ということを考えるとき、やはり、女性はからだに向き合う
 しかないのだと思います。
・からだのほかに向き合うというのはないのです。それしかすることはないのです。今
 は精神世界のブームもあり、そこに癒しや救いを求める女性がたくさんいます。精神
 世界のことを知ろうとするのはかまわないけれど、そちらに逃げるのは大きな間違い
 でしょう。

自分のからだをよい状態にする
・からだをいい状態にするというのは、本当に具体的に言うと、からだをゆるめるとい
 うことです。からだにこわばりがあって、均等性がなくなると、そちらに歪みが出て
 きて、やっぱり言葉にも歪みが出てきますし、感覚にも歪みが出てきます。ですから
 できるだけやはり均等で、いつもからだに力が入っていない、ゆったりとした状態に
 しておくこと、自分を通じて流れるものが流れる、とそういう考え方をしています。
・どんな職業であっても自分の役割というのはあるはずで、その役割を果たすという気
 持ちに意識的になれるかどうか、ということだと思います。ただ今は、こういう都会
 の生活になっているので、どんどんからだが自然から乖離していくことで、人はます
 ますそういう意識を持ちにくくなっているというのは確かだと思います。

いつもよい経験に戻っていける
・自然の中に自分がいるということが当たり前のような生活をしていた人のほうが、や
 っぱり強いのです。いざというときに。本質というのはああいうものなのだ、という
 のがわかっていますから。自分をいい状態にすればいい、といっても、そのために自
 分が、どういう状態がいい状態なのかということを、知っている必要があるのですよ
 ね。それは自然に囲まれた生活をしていたころの人間というのは、自ずからわかって
 いたことだと思うのです。

女性性が男性を導く
・男性は、ではどうしたらいいのでしょう、とよく言われますが、私は女性なので、よ
 くわかりません。基本的に男性というのは、女の人に助けられればいいのではないか、
 と思っています。
・男性は本当に女性に導かれていくというところが強くあると思います。女性にゆだね
 る勇気を持つのがいいのではないでしょうか。
・女性の側も、ゆだねられるだけの度量をもともと持っていたわけです。さまざまな経
 験を通じて、本当に受けとめる力というのがつくようなからだになっていたわけなの
 ですが、今はどの経験も機能していないので、女性がまったく受けとめられない。で
 すから男性ももうおぼれる寸前のようになってしまっています。どちらももう全然、
 地に足がついていないのです。
・やっぱり身体性にしても、どちらからよくしていくかというと、女性からよくしてい
 かないとだめなのではないでしょうか。女性の側がよくなると、男性がよくなってく
 るはずです。私は男性ではないので男性がどういうふうにすればいいのかはよくわか
 らないのですが、まずは、女性が要と思っています。
・日本はこのまま放っておくと、女性がだめになって、男性もだめになって、子どもた
 ちもだめになって、根を失ってしまいそうです。まず、女性が自らのからだの持つ力
 について、今一度気づいていきたいものです。