「狂い」のすすめ :ひろ さちや

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とてもユニークな人生本である。このような考え方もあるのだと、再認識させられた。
確かに、我々は人生に対してあまりにも真面目に考えすぎるのかもしれない。真面目す
ぎる価値観を押し付けられて苦しんでいる人がたくさんいると思う。
考えてみれば、自分が望んでこの世に生まれてきたわけではない。たまたま生まされて
きただけである。それなのに、いきなり「人生に目的を持て」とか「生き甲斐を見つけ
ろ」とか言われても困惑するばかりである。
そんな無理やり押し付けられた価値観に苦しめられるよりも、そんな価値観は捨てて、
もっと自由に生きれば、この辛い世の中も、もうすこし楽しく生きることができるかも
しれない。
この本を読むと、いろいろな世間のしがらみから解放されて心が軽くなるような気がする。

「狂い」のすすめ
・何になろうか、まじめくさって、人間の一生なんて夢でしかない。ひたすら遊び狂え。
・弱者にとっては、世間は冷酷です。弱者は世間の流れに掉さして生きることができま
 せん。いつの世にあっても、弱者は世間とよそよそしい関係になってしまうのです。
 そして世間は彼に重圧をかけてきます。弱者は世間の除け者にされ、場合によっては
 世間から糾弾されます。
・人生は夢です。だとすれば、権力者の人生もはかない夢のようだし、われわれ庶民の
 人生も同じくはかない夢。夢であるかぎり同質ですね。別段、権力者の人生が立派な
 わけではない。われわれの人生が劣っているわけではない。
・ともあれ、人生は夢です。だとすれば、まじめに生きるに値しません。いや、まじめ
 に生きるのもいいですよ。でも、まじめに生きなければならないと、それこそ糞まじ
 めに考える必要はない。そういう自己拘束をやめにしませんか。
・困るんです。この奴隷になった連中が、奴隷は、自分が弱者のくせに、ちっとも弱者
 だと思っていません。権力者の太鼓持ちのくせに、自分が権力の一端を握っていると
 考えている。虎の威を借りる狐です。彼らは最後には、自分には何の力もないのだと
 自覚してしょぼんとするのですが、その自覚にないうちは、虎の威を借りて威張って
 いて、弱いものいじめをやっています。
・奴隷・太鼓持ちというのは、会社の肩書きを名刺に刷り込んで、それで権力の一端を
 握っていると錯覚している連中です。定年退職して、その肩書きがなくなると、しょ
 ぼんとしてしまう連中です。
・ともかく、世間を信用してはいけません。世間の常識は、世間そのものにとって都合
 のいいものを一般大衆に押し付けているだけのことです。だから都合が悪くなると、
 その常識を変えてしまいます。そんな常識に付き合っていると、われわれは臍を噛む
 はめになりますよ。
・世間と違った自分の判断に由るのが自由人です。自由人は世間に楯突いている人間で
 す。
・世間をすいすい泳いでいる人間が自由人に見られそうですが、あんなのは太鼓持ちで
 あって、真の自由人ではありません。真の自由人は世間からちょっと距離を置いて、
 世間を信用せず、むしろ世間を軽蔑し、軽蔑することによって世間に楯突いている人
 間です。
・あなたも、ぜひ自由人におなりください。簡単になれますよ。まず、自分が弱者だと
 自覚すればいい。
・いま、平成の世の中、世の中全体が狂っていませんか。景気が悪い。もっと景気を良
 くせねばならない、と、誰も彼もが景気のことばかり言っています。でもね、景気が
 良くなるというのは、浪費をするからでしょう。じゃかすか生産し、じゃかすか浪費
 する。人間が住めないマンションを建てて売って、それをまた毀して再建する。そう
 すれば消費が拡大し、景気がよくなります。そんなの、狂っていませんか。「もった
 いない」ですね。
・狂っている世の中で狂うことが、まともになれる道なのです。まともになるというこ
 とは、「金・かね・カネ」の狂奔をちょっと醒めた目で眺める心の余裕を得ることで
 す。
・日本の企業においても、社員の人格までも管理しようとする傾向が強い。これは日本
 の企業の管理者に奴隷根性の持ち主が多いから、自分が奴隷であるから、社員までも
 奴隷にしたいのですね。そして、奴隷になっている社員がまじめでいい社員と評価さ
 れるのです。日本はそういう狂った社会です。狂った社会に忠誠を誓えば、その人は
 奴隷になってしまう。
・たぶん現代日本では、九十九パーセントの人が金儲けを目的に生きています。けれど
 も、そう簡単に金を儲けることはできません。商売をしていても、細々と生きるだけ
 が精一杯なこともあります。そうすると、なんだか毎日がつまらなくなるのです。
・商売をするには、別段、金儲けが目的ではありません。昔の人々はそう思っていたで
 しょう。それほど儲からなくても、商売が楽しいから商売する。それがまともな考え
 方ではないでしょうか。
・つまり、目的意識があると、われわれはその目的を達成することだけに囚われてしま
 い、毎日の生活を灰色のすることになるのです。失敗したっていいのです。出世でき
 なくてもいいのです。下積み生活でもいい。それでも楽しく生きることができるはず
 です。
・現代の日本の社会は狂っています。こんな狂った社会の中で、社会が考えるまともな
 生活をしてはいけません。こんな社会でまともな人間になれば、われわれは奴隷にな
 ってしまいます。

人生は無意味
・多くの人は、生活の危機にあたふたとします。会社を首になって生活に困ると、どう
 してよいかわからなくなります。いや、そうなる前に、首になる心配をして会社に隷
 属する生き方をしてしまいます。会社人間になって奴隷にように生活して、にもかか
 わらず会社はそんなあなたを冷酷無残にリストラします。あなたは絶望して自殺する。
 あまりにも惨めではありませんか。あなたの「危機」は、会社をリストラされた時点
 にあるのではなく、あなたが会社に隷属する生き方を選んだ時点にあります。あなた
 が会社の奴隷になったとき、あなたの人生は大きな「危機」に見舞われたのです。
・わたしが言いたいのは、意識の問題です。世間に隷属して生きようとする奴隷根性が
 問題です。世の中の役に立つ人間になろうとする、その卑屈な意識がいけません。も
 っと具体的に言えば、わたしたちが「生き甲斐」を持とうとしたとき、わたしたちは
 世間の奴隷にされてしまうのです。
・わたしたちは世間から押し付けられる「生き甲斐」なんて持つ必要はありません。い
 や、持ってはいけないのです。持つと、われわれは世間の奴隷になってしまいます。
・人生に意味なんてありません。みんな苦しみ、死ぬだけのこと。「人生の意味」や
 「生き甲斐」なんて、世の中がわれわれを誑かすためにつくったペテンですよ。
・わたしたちはたまたま人間に生まれてきて、生まれてきたついでに生きているだけだ。
 別段、それ以上の意味はない。
・人生に意味があり、目的があるとすれば、わたしたちはその目的に向ってまっしぐら
 に驀進したくなります。そうすると、競走馬的人生になってしまいませんか。
・意味のない人生だからこそ、わたしたちは生まれてきたついでにのんびりと自由に生
 きられる。誰に遠慮する必要もなく、自分の勝手気ままに生きることができるのです。
・人生の旅には、目的地があってはならないのです。目的地に到達できるかできないか、
 わからないからです。目的地というのは、「人生の意味」や「生き甲斐」です。人生
 に何かの目的を設定し、その目的を達成するために人生を生きようとするのは、最悪
 の生き方です。そりゃあね、生きるためには金が要りますよ。でも、金は生きるため
 の手段であって、目的ではありません。金儲けのために生きるなんて、愚か者がする
 ことです。
・人生を目的主義で生きると、六十年、七十年の生涯が、たった四ヶ月と六日になって
 しまいます。私たちは人生に目的を設定してはいけません。意味を持たせてはいけま
 せん。生き甲斐なんてないのです。
・会社で左遷されて地方に飛ばされたとき、ケツをまくって会社に辞表を叩き付けるの
 もおもしろいと思います。逆におとなしく地方に赴任していい。そして、その地方で
 愉快に遊び暮らすのです。東京にいては味わえない地方独特の生活があります。それ
 を優雅に楽しめばいい。「優雅に」といっても、経済的な贅沢ではありません。いく
 ら豪勢な生活をしても、われわれ庶民クラスの人間は所詮みみっちくなります。そん
 な経済的な豪勢ではなしに、心の贅沢をするのが優雅なんです。でも、まちがっても、
 地方に左遷されて、一つ業績を上げて再び本社に戻ろうなんて考えてはいけません。
 戻れるときは戻れるのです。戻れなくてもいいではありませんか。あなたはいま、毎
 日を楽しく暮らせばいいのです。
・わたしたちはいつだって「今日」「現在」を生きているのです。その「現在」を楽し
 むのが最高の生き方です。楽しむといっても、うはうは、おもしろおかしく、笑い転
 げることではありません。笑えるときは笑っていいのですが、泣いて苦しむときは泣
 き苦しめばいいのです。苦しみを楽しむことができれば、あなたの人生はすばらしい
 人生になります。それが「現在」を楽しむことです。
・明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、そ
 の日だけで十分である。
・自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着よう
 かと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は意服よりも大切ではないか。
・われわれは明日の心配ばかりしています。将来のためといって貯蓄に励むのですが、
 その将来にひどいインフレが起きるかもしれません。そうするとなんのために貯金か
 わからなくなります。
・過去を追うな。未来を願うな。過去はすでに捨てられた。未来はまだやってこない。
 だから現在のことがらを、現在においてよく観察し、揺らぐこよなく動ずることなく、
 よく見極めて実践すべし。ただ今日なすべきことを熱心になせ。誰か明日の死のある
 ことを知らん。
・世間の常識だと、失敗したときはしっかり反省しないといけない、となります。でも
 ね、いくら反省したって、この次、失敗しない保証はありません。われわれが生きて
 いる現実の中で、まったく同じ状況というのはあり得ないのです。失敗するには、そ
 のときどきの条件によって失敗するのですから、いくら反省したところで、この次は
 別の条件が作用しますから、反省は役に立ちません。
・希望や理想も持ってはいけません。希望、理想を持つということは、現在の自分を不
 満に思っていることと同義です。いまの年収では不満。現在の地位では不足。そう思
 っているから、希望を持つ。それは「希望」という名の欲張りです。
・あなたはどうして現在のあなたではいけないのですか。あなたが現在の自分を不満に
 思っていても、あなたはあなたであって、現在の自分以外にないのです。あなたが貧
 乏であれば、あなたは貧乏人です。金持ちでない。「金持ちになりたい」と思っても、
 今日のあなたは貧乏人として生きるよりほかない。だとすれば、あなたは今日一日、
 立派な貧乏人として生きるべきです。「金持ちになりたい。貧乏はいやだ」と思って
 生きてはいけない。
・わたしたちは、自分は自分であって他人ではありません。現在の自分をしっかりと肯
 定し、その自分を楽しく生きればいいのです。

人間は孤独
・心が傷ついたとき、癒しを求める人が多いですが、たとえばサラリーマン生活をして
 いて心が傷つきやすい環境に身をおいていながら、その環境を変えずに癒しを求めて
 も、癒しが与えられているあいだはよくても、またすぎに心は傷つきます。それより
 も、心が傷つかない環境に身をおくことを考えたほうがいいのですが、現代日本の社
 会生活では、心が傷つかない環境なんてないのです。誰だって心が傷ついています。
 まあ、人間に二種類あって、鈍感な人と敏感な人がおり、敏感な人が癒しを求めてい
 るのですね。でも、癒しは与えられない。そうすると、求めた人はそれだけ多く悩む
 わけです。
・たとえば、近所の人のお葬式なんて行かなくていいのですよ。そもそもお葬式は、身
 内の人間、血縁関係のある人間がすることです。他人がしゃしゃり出る必要はありま
 せん。ところが、近年は葬儀への参列を義務化してしまいました。義務づけられたも
 のだから、社長が死んだときよりも社長の奥さんが亡くなった時のほうが参列者が多
 いという皮肉な現象になります。社長が死んだのであれば、その葬儀に欠礼して、社
 長の奥さんににらまれようがかまわない。奥さんには報復の手段がありません。しか
 し、奥さんの葬儀に欠礼して、亭主の社長ににらまれると、その後の営業成績が悪く
 なるからです。
・ともかく、縁もゆかりもない人間に向って正しいことを言えば、ぶん殴られる危険が
 あります。縁もゆかりもある人間に向って正しいことを言えば、あなたは憎まれる危
 険があります。だから、正しいことは言わずにおきましょう。それが人間関係をうま
 く維持するための、一つの良策だと思います。