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今の世の中は検診ブームだ。テレビでも人間ドックを始めとする健康診断についての番組
が高い視聴率を獲得しているようだ。早期発見・早期処置すれば、がんも怖くないという
掛け声のもとに、がん検診などを受ける人も、増加の一途を辿っているようだ。そして我
々一般の人びとは、このような検診が確実に延命に繋がっているんだと信じて疑わない。
この本は、そのような一般の医療の常識に一石を投じた内容となっている。筆者は、ご自
身ががん研究所の所長の職にある医者であるが、その医者としての長年の経験と研究から、
検診が果たして人びとの寿命を延ばすことにつながっているのかと疑問に持ち、海外の事
例などを調べた結果、統計的に見ると、検診はほとんど人びとの寿命を延ばすことに役立
っていないという結論に達したという。
個別に見れば、検診によって早期にがんを発見してがん治療や手術によって取り除けば、
健康を取り戻せる場合もあるようだが、多くは治療や手術をすることによって、逆に寿命
を縮めてしまうケースのほうが多いというのだ。それに治療や手術によって、多少延命で
きたとしても、治療の副作用や手術による一部の機能を失うことにより、人間としての普
通の生活を行なえなくなり、かえって健康寿命を縮めてしまうのでは、本末転倒ではない
かとの主張だ。
さらに、”がん”には”良性”のがんと、”悪性”のがんとがあり、”悪性”のがんは転移するが、
”良性”がんは転移しないため、そのまま放置しておいても、命にかかわることはないとい
う。そしてがんのほとんどはこの”良性”のがんだというのだ。それなのに、日本の医療は、
”悪性”のがんのみならず、この”良性”のがんに対しても手術によってで取り去ってしまう。
そのとき、がんだけを切り取ることはできないため、一緒にがんの周囲の臓器も切り取っ
てしまうため、そのからだは大きなダメージを受けてしまう。その影響で、かえって寿命
を縮めてしまうということだ。
筆者の主張は、日本の現在のがんに対する医療に対して批判的な内容となっているが、頷
ける部分が多い。特に、現在の検診は、”まるで恫喝行為だ”という主張には、大いに賛同
する。検診結果を気にし過ぎて、健康人が病気になってしまうというケースだって起こっ
ているのだ。
いくら積極的に検診を受けても、それが寿命や健康寿命の延命につながらなかっとしたら、
それはまさに過剰検診と言ってもいいだろう。医療業界に踊らされて受けさせられる過剰
検診は、医療費高騰の原因にもなっている。日本でも、この過剰検診の風潮を見直す時期
にきているのではないかと思った。

はじめに
・2013年の全国調査では、20歳以上の健診受診率は62%。とすれば、健康や病気
 の専門家である医者たちは、それ以上の率だろうと思いますよね。ところがです。かつ
 ての東大病院では医者の健診受診率は4割だったと聞いています。慶応大病院では5割
 だったと聞いてます。もともとその時代、ナースら職員の受診率は100%。
・ところが慶応大病院も近年は、医者の受診率が99.9%になっています。病院執行部
 が懲戒処分までちらつかせてからです。
・じつは日本人は、健康診断やがん検診に関して”井の中のかわず”状態です。欧米では、
 がん検診を否定する大きな潮流が生まれています。
・前立腺がん検診が盛んだった米国では、2012年に政府の予防医学作業部会が「前立
 腺がん検診への”反対”を推奨する」と表明。つまり「検診を受けるな」と。
・カナダ政府の予防医学作業部会も2014年に「すべての年齢の男性に、前立腺がん検
 診を受けないことを推奨する」と発表した。
・乳房のエックス線検査{マンモグラフィ)による乳がん検診は、米国政府の予防医学作
 業部会が2009年に「推奨しない」と発表医学会でも「がん検診は無効」が常識化し
 ました。
・ところで日本では、がんが急増しています。特徴敵なのは前立腺がんなど、検診受診が
 奨励されている部位のがんほど、増加が著しいことです。例えば銃眼は期の10年間で
 5万人から9万人へと80%も増え、前立腺がんは4万人から9万人へと120%増で
 す。
・検診推奨は大成功したのですが、意外ことが生じています。これらのがんでは、死亡率
 が減るのではなく、死亡率が上昇しているのです。日本では近年、胃がん、肺がんなど
 を含めた全がん死亡率が減少しているのにです。全がん死亡率が減少するなかで、検診
 発見がんの死亡率が増加している。がん死という名の”治療死”が増えたためでしょう。
・実際、検診を受けたために早死にする人は数かぎりなく存在します。有名人をみても、
 歌舞伎役者の中村勘三郎、作家の渡辺淳一、女優の川島直美さんらは人間ドックでがん
 を発見されたために命を縮めました。人間ドックを受けなければ、このうち数名は今も
 活躍されていたことでしょう。
・健康診断についても、日本人は無知なままです。欧米諸国には職場の健康診断の制度も、
 人間ドックも存在しないのです。人をより健康にしたり、寿命をのばす、というデータ
 が得られなかったからです。
・ボケや寝たきりになるには、老化が関係していることは確かです。でもそれだけでしょ
 うか。医療行為が原因でボケをまねき、寝たきりになっているケースはないのでしょう
 か。 
・僕はセカンドオピニオン外来を開き、がんの患者家族の相談にのってきましたが、無表
 情かつ無反応など、ボケ始めている人をちょくちょく見かけます。共通するのは、元気
 だったのに健診がきかけとなって降圧剤などのクスリが処方され、体調が悪化している
 ことです。  
・日本男性の平均寿命は、女性のそれを6歳も下回っています。男性は女性よりも職場健
 診を受ける機会が多く、クスリ漬けになりやすいことの影響がありそうです。そして女
 性のほうも、これまで平均寿命が世界一だったのに、香港に抜かれて2位に転落しまし
 た。がん検診や職場健診などを受ける女性が増えていることと関係はないのでしょうか。
   
健診を受ける人と受けない人
・まず健康診断(健診)の効果ですが、結論から言うと、たんに健診を受けるだけなら、
 死亡数や寿命に影響がないようです。
・健康診断とそれに引き続く医療介入は、寿命を縮めるリスクがあります。がん検診によ
 るリスクはより強烈です。がんが発見されると、手術で臓器を失い、抗がん剤という毒
 薬が使われることが多いからです。
・よく日本では「大腸がんで死亡する人が増えている」と言われています。ただそれは、
 ”粗率”をみた場合です。粗率というのは、赤ちゃんから年寄りまでを含む総人口の中
 で、がん死した人の割合です。そこで粗率をみると、日本は高齢者が急増しているため、
 この40年近くの間に、大腸がん死亡率は4倍にもなっています。しかし年齢に着目す
 ると、状況は一変します。大腸がんによる死亡率を年齢別にみてみると、ほぼ横ばいで
 推移しているのです。
・なんとこの20年近く、全がん死亡率は減少しているのです。日本の国民はより健康に
 なってきているのです。ただこの事実は、検診推進の妨げになるので、専門家は年齢調
 整死亡率を使わず、人びとを騙そうとします。
・いま医学の世界では”過剰健断”が大問題になっています。過剰健断とは、「決して病
 状がでたり、そのために死んだりしない人を、病気であると診断すること」です。つま
 り治療の必要がない人を「病気だ」と診断することで、それが非難されるのは、”過剰
 治療”をもたらすからです。
・この点、高血圧、高血糖、高コレステロール血症などの検査高値は、医者に「病気だ」
 と言われても、クスリを飲まなければ過剰治療は生じません。しかしがんの場合には、
 ”がん”という言葉の呪縛が強く、過剰診断イコール過剰治療になってしまうのです。    
・世界的にもっとも有名な過剰診断のケースは、韓国における甲状腺がんの著増現象でし
 ょう。韓国では、90年代以降、市中のクリニックが超音波装置を競うように導入した
 ため、1993年から2011年の間に、甲状腺がんの発見数が15倍にもなっていま
 す。
・韓国では検診発見がんでも全摘術になり、患者は甲状腺ホルモンを一生飲まねばなりま
 せん。甲状腺の裏側にある”副甲状腺”を誤って切除してしまうケースも11%。そう
 なると”副甲状腺ホルモン欠乏病のために一生クスリ漬けです。さらには、術技ミスで
 神経を切られてしまい、声がでなくなるケースが2%にもなります。結局、がんの急増
 というのは、無症状の人に検査をした結果なのです。そのままにしておけば一生発見さ
 れずにすむ病変が、検査によって発見され、”がん”とされているわけです。
・欧米諸国では肺がん検診は実施されていません。それなのに日本では、職場健診で胸部
 エックス線撮影が義務づけられ、職員は撮影を強制されているのはどうしてでしょうか。
 肺がん検診を実施している医療機関も、無意味であることは百も承知です。
・ある男性が肺がん検診で”異常なし”と判定されたあと、すぐに病状が出て肺がんとわ
 かり、治療の甲斐なく亡くなりました。検診のエックス線写真を見直すと、肺がんの影
 が写っていたけど、医療機関は責任を認めず、裁判になった。すると被告(医療機関)
 は、「こういうタチが悪い肺がんは、かりに検診で見つけても、やっぱり亡くなります」
 「検診は無効だと近藤先生も仰ってます」と反論し、僕の「患者よ、がんと闘うな」を
 提出したのです。

がん検診の効果を検証する
・かつて胃がんは、日本の国民病でした。しかし第二次世界大戦後、胃がんで死亡する人
 は減ってきました。じつは欧米諸国でも、日本に先んじて胃がん死亡率が大きく減少し
 ました。これは、冷蔵庫が普及して生鮮食品の摂取量が増え、塩蔵食品の摂取量が減っ
 たことが理由だと考えられています。日本でも、冷蔵庫が戦後に普及したという事情は
 同じです。
・ただ欧米と違い日本では、胃がん検診が行なわれています。それは死亡率の減少に寄与
 したのでしょうか。この点、日本で胃がん検診が国策となったのは83年で、そのずっ
 と以前から胃がん死亡率の減少が始まっています。
・胃がん検診は、バリウムという白い液体を飲ませてエックス線写真を撮りますが、早期
 がんが見るかることは少なく、大半が進行がんでした。しかし、精密検査に使われる内
 視鏡が改良されると、早期胃がんの発見率が上昇し、いまや胃がんの7割以上が早期が
 んとなっています。ところが胃がん死亡率はまるっきり減らず、横ばいなのです。
・前立腺がん検診は”PSA”という血中の物質をはかります。この物質は正常な前立腺
 細胞から分泌されるのでPSA高値、イコール、前立腺がんではありません。ただ高値
 だと、前立腺から組織を採取して顕微鏡で検査する”生検”がおこなわれます。その結
 果、「おもしろいようにがんが見つかる」と泌尿器科医は言います。
・米国で実施された試験では、約8万人の男性を2班に分け、無検査・放置とPSA検診
 とを比べています。結果、検診群の前立腺がん死亡数は減りませんでした。もうひとつ
 の、ヨーロッパで実施された試験では、18万人を2班に分けました。結果、PSA検
 診群の前立腺がん死亡数が少し減ったとされています。ところが、総死亡数は不変だっ
 たのです。    
・もし、前立腺がん死亡数と、総死亡数の不変との両方が正しいとすると、検診は前立腺
 がん死亡数を減らす一方、それ以外の死因よる死亡数を増やしたことになります。これ
 らのデータが米国やカナダで「すべての年齢の男性に、前立腺がん検診を受けないこと
 を推奨する」とした根拠になっています。
・日本ではどうか。じつは前立腺がんの発見数が増加するにともない、死亡数が増加して
 いるのです。 
・80〜90年代に、欧米ではマンモ検診が制度化され、各国の乳がん患者数が激増し、
 検診施設、手術医、機器メーカーなどからなる”業界”はうるおいました。
・200年、世界トップランクの医学雑誌に載った一本の論文が、マンモ業界を震撼させ
 ました。八つの比較試験を再点検したデンマークの医学者らが、「マンモ検診は乳がん
 死亡や総死亡を減らさないか、もしくは増加させる」と発表したからです。
・これが決定打となって、マンモ検診の評価は「有害無益」に変わりました。スイスが乳
 がん検診の廃止を提言したことの背景には、こうした評価変更があるのです。
・日本ではどうかというと、検診の普及に伴い、乳がん発見数が増加するとともに、乳が
 ん死亡数も増加しています。   
・カナダの試験では、”乳管内乳がん”とも呼ばれる上皮内がんは、乳がん発見数に含め
 ていないのです。あまりにタチがよいため乳がんとは考えない、他の”良性腫瘍”と同
 じに扱う、ということです。
・上皮がんは”がん”とは言えないのに、わが国ではほとんどが乳房全摘になってしまう
 のです。国立研究センターを含め、外科医たちは「上皮内がんも乳がんだ」としてバリ
 バリ手術しています。
・実質性の上皮内がんで手術されている女性は、年に1万人ほどもいます(2012年)。
 2016年にはさらに多く、その倍程度になっているでしょう。
・昔、子宮がんによる死亡数は、女性のがんの第二位でした。ところが第二次世界大戦の
 後に減りはじめ、90年代に入る頃に下がってきています。減少した原因としては、戦
 後の経済復興による国民の栄養状態と衛生状態の改善が挙げられます。他方、子宮がん
 検診は、一部地域で55年頃に開始されましたが、ずっと受信者は少なく、82年にな
 っても年22万人です。これは検診対象となる成人女性の0.8%なので、子宮がん死
 亡の減少に検診が寄与しなかったことは明らかです。
・子宮がん検診が国策となった80年代以降、受診する女性は増え続けています。その結
 果、子宮がんによる死者の数は増加に転じました。
  
健診のデメリット
・肺がん検診の比較試験では、検診を受けた人たちでは心筋梗塞が増え、総死亡数の増加
 に寄与しています。検診を受けること自体のストレスや、「異常あり」と言われたスト
 レスが原因になっている可能性があります。一次検査で「異常あり」と言われ、精密検
 査で無罪放免となった場合、「こんな心配させて、どうしてくれる」「もう検診は受け
 ないぞ」とはならず、「精密検査で見落とされたのではないか」「異常と言われたのは、
 がんになりやすいからかな」などと疑心暗鬼になり、受診を繰り返すことになりがちで
 す。
・そもそも検診は「異常あり」を乱発する仕組みになっています。検診を10年も続ける
 と、千人のうち6百人近くが一度は「異常あり」と言われ、2百人近くが組織を切り取
 られるのです。それだけの犠牲を払って、乳がんと診断される人が千人につき15人。
 そんなに多いのかという見方も、そんなに少ないのかという見方もあるでしょう。が、
 マンモ検診で乳がん死亡数を減らせないことは確実です。こんなムダな検診が毎年、数
 千万人に実施されているのは、その目的が医療産業の振興にあるからです。
・CTは、撮影する範囲を胸部、腹部、骨盤と三つの部位に分けた場合、それぞれ最低
 10ミリシーベルト程度を被ばくすると考えられます。したがって胸部CTなら最低
 10ミリシーベルト、三部位ぜんぶの”全身CT”だと30ミリシーベルトにもなりま
 す。そして被ばく線量は、装置や施設による違いが大きく、この数倍を被ばくする可能
 性もあるのです。
・またCTでは、臓器の細部を浮かびあげらせる目的で、”造影剤”を注射しながら二度
 目を撮ることも少なくない。すると被ばく線量は2倍になり、全身CTだと60ミリシ
 ーベルトにもなるわけです。
・福島の原発事故のあと、高齢者でも、年間20ミリシーベルト以上を被ばくする地域の
 居住が制限されました。また原発の作業員は、累積被ばく線量が5〜10ミリシーベル
 ト程度でも、白血病が生じた場合に、発がんとの因果関係が認定され、労災保険がおり
 ています。   
・胃がん検診には、バリウムで気持ちが悪くなったり、お腹が張ったり、便秘で苦しんだ
 りするデメリットもあります。バリウムが固まって腸閉塞が生じ、腸管が破裂すること
 も、死亡することもあります。検査台が回転するため、連絡して骨折する事故や、検査
 台と壁の間に挟まれて死亡する事故も起きています。
・マンモ検診は、乳房が小ぶりだったり、出産・授乳の経験がなくて乳房が硬い場合には、
 泣くほど痛いと言います。乳腺のすみずみまで写そうと、乳房をつかんで引っ張ったり、
 プラスチックの圧迫版でぎゅっと押しつぶすためです。この作業を、男性の技師が実施
 するケースがあるのは問題です。マンモ検診に救命効果が認められないので、男性技師
 が担当するのは、単なるセクハラ行為になります。
・マンモ検診を実施している医者がネットで「被ばく線量は0.1ミリシーベルトと低い
 から、心配ない」と述べていますが、とんでもない。被ばく線量は最大3ミリシーベル
 ト程度になります。
・子宮がん検診も、見方を変えれば変態行為です。というのも、受信者を婦人科の診察台
 にのせて両足を広げさせ、”クスコ”というアヒルの口のような”膣鏡”を挿入し、綿
 棒などで子宮頚部をこすって細胞を採取するからです。子宮がん検診に救命効果はない
 ので、男性医師が担当するのは、刑法のわいせつ罪に該当すると思います。
・性交未経験の女性が、クスコで処女膜を破られる事態も続出しています。この点、処女
 に子宮頸がんは生じないというのが医学界の定説です。それゆえ百歩ゆずって検診に意
 味があるとしても、性交未経験者のがん検診は不要です。ところが日本では、20歳を
 超えると子宮がん検診が奨励されるため、未経験者が検診にやってきてしまいます。そ
 の場合、論して帰らせるのではなく、検査を実施してしまうのです。婦人科医たちの無
 知と無神経はここにきわまった感があります。
・子宮がん検診には、挙児が不可能になりかねないデメリットもあります。子宮を摘出さ
 れなくても、流産や不妊症が増えてしまうのです。がんを疑って、子宮頚部の”円錐切
 除術”をした場合です。円錐切除術は、子宮頚部をアイスクリームのコーン型にくりぬ
 きます。子宮頚部の真ん中には、膣と子宮の本体(子宮体部)とをつなぐ狭いトンネル
 のような”頸管”があって、月経血、精子、胎児の通り道になっています。この頸管が、
 円錐切除術のあとにひっついてしまうことがあるのです。そうなると、生理のときに血
 液が子宮にたまって腹痛が襲い、そのたびに婦人科で警官を広げる治療を受けることに
 もなるし、性交しても精子が子宮体部に入れなくて不妊症になります。
・妊娠ができた場合も問題です。ふつう子宮頚部はかたく閉じ、胎児が子宮外に流れ出な
 いようにしているからです。それなのに円錐切除術で頸部が短くなると、高まる子宮内
 圧に抗しきれずに頸管が開いて、流産・早産が生じるのです。ムダな検診によって挙児
 できなくなった女性は膨大な数にのぼるはずです。
・”生検”にも、合併症がつきものです。合併症の重篤度は、部位によって異なります。
 たとえば乳房だと、生検でいくら出血しようが痛もうが、命を落とすことはありません。
 これに対して大腸など内臓の生検では、命の危険が生じます。一番危険なのは肺の生検
 でしょう。 
・肺組織の生検法には二種類あります。ひとつは内視鏡を気管支に送り込み、先端からワ
 イアーを出して生検します。数ミリ大の組織を”かん子”でバチンと切り取るので出血
 は必然ですが、肺の奥で生じることなので、止血するかどうかは神頼みになります。そ
 のためマレですが、大量出血で死亡する人がいるのです。別の方法は”CTガイド下生
 検”です。CT装置のベッドに患者を寝かせ、CTで病変を観察しながら、対外から肺
 に針を刺し、組織を採取します。通常は無事に生還できますが、ときに即死する人がい
 ます。動脈の中に空気が入って脳や心臓の血管につまり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすか
 らです。
・前立腺の生検も危険がいっぱいです。血液検査でPSAの値が高いと「陽性」と言われ、
 泌尿器科を受診すると、ほぼ全員が生検を実施されます。生検では、お尻から太い針を
 前立腺に十数回つき刺すので、あとでお尻が痛み、前立腺内に出血し、血尿が生じるこ
 とも多々あります。針で雑菌を押し込んだために前立腺炎になり、ひどい痛みや高熱で
 苦しむことも少なくない。マレには死亡することもあります。
・がんと診断されると、さらなるデメリットが生じます。精神的なデメリットは、がんと
 告げられたことによるショック、不安、恐怖などです。頭が真っ白になり、風景にベー
 ルがかかったようになると聞きます。うつ状態が高じての自殺もあれば、極度のストレ
 スがら心筋梗塞になる人もいます。
・社会的なデメリットの最たるものは、職を失いことでしょう。失職は、治療のため満足
 に仕事ができなくなった場合だけではありません。治療が始まる前に辞職する人も多々
 おられます。がん治療のあとに仕事に戻れるはずがないという誤った思い込みや、職場
 で受ける有言・無言の圧力などが理由です。法律上は退職する必要はないのですが、中
 小の職場では、仲間に迷惑をかけられないと、自ら身を引く気風があるようです。これ
 に対して大企業では、治療が終われば職場復帰が可能です。しかし”がん患者”のレッ
 テルが貼られて出世競争からはずされ、窓際族化することが少なくないようです。有害
 無益ながん検診によって一生を棒にふるわけです。
・肉体的なデメリットとしては、誤診による臓器摘出があります。がんと診断して臓器を
 摘出したあとの組織検査で良性病変と判明するケースです。とくに検診で発見された肺
 病変は、肺の一部を摘出された挙句に「がんではなかった、おめでとう」とよく言われ
 ます。気管支鏡などによる生検が難しく、危険であるため、術前に組織診断をつけずに
 「たぶん肺がんだろう」という予測に基づいて臓器摘出をするからです。もっとも”が
 ん”と正しく診断された場合にも、検診に救命効果が見られないため、臓器の摘出は無
 意味であることになります。 
・治療による合併症や後遺症も重大です。おおまかに分類すると、次のようになります。
 ・臓器の一部もしくは全部の摘出による合併症や後遺症
 ・抗がん剤の毒性による諸臓器の機能低下
 ・放射線治療による合併症や後遺症
 ・抗がん剤や放射線による発がんリスク
   
どれほど死者が増えるのか?
・がん検診が死亡数を減らすというのは誤解ないし幻想のようです。前立腺がん、乳がん、
 甲状腺がん、胃がんなどの諸国の統計でも、がんの発見数と死亡数の関係は”ワニの口”
 の形になっていて、がん早期発見が無効であることを示しています。それどころか、肺
 がんや大腸がんの検診のように、比較試験で死亡数が増えてしまったケースもあります。
・胃がんでは、長野県秦阜村の出来事が有名です。ここは日本でも早くに胃がんの集団検
 診を導入した村ですが、検診を受けた直後に胃がんで死亡したケースが相次ぎ、村の診
 療所長が集団検診をやめさせました。
・比較試験では、術死も”がん死”にカウントされるため、がん死亡数が増える一因にな
 っています。まるで治療死がないかのように装っているとも言えます。厚労省が公表す
 る国民の死因統計にも、”術死”や治療死”という項目がありません。
・手術には、がんの増殖をスピードアップさせる効果もあります。正常組織には、がん細
 胞が育たないようにする抵抗力がある反面、メスを入れると、その抵抗力が破綻するか
 らでしょう。   
・食道がん、肺がん、胃がんなどの術後に死亡した人たちの解剖に立ち会ったとき、メス
 が入った部位への再発をよく見かけたものです。ただし、どこかの臓器に転移がひそん
 でいたケースに限られます。転移がひそんでいるのは、初発病巣のがん細胞が血管の中
 に入ることができ、血液とともに全身をめぐり、一部が臓器にとりついたことを意味し
 ます。とすると手術時にも、血管の中をがん細胞がめぐっています。そこにメスが入る
 と血管が切れ、がん細胞が血液とともに流れだし、傷のあとに取りついて増殖するので
 す。
・普段は、あらだの抵抗力ががん細胞の増殖を抑えていますが、手術をすると抵抗力が破
 綻し、ひそんでいたがん細胞がとたんに増殖を始めるわけです。
・職場健診や住民検診の検査では、食道がん、すい臓がん、肝内胆管がんなどを早期に発
 見するのは難しく、人間ドックの内視鏡、超音波、CTなどで発見されます。しかしこ
 うしたがんのほとんどは、早期発見でも転移がひそんでいるので、早く見つけるほど、
 早く死にやすくなります。芸能人などセレブの世界では人間ドックが大流行のようです
 が、早死にしやすいのは皮肉です。
・検診で発見されたがんにも、よく抗がん剤が使われますが、その副作用はひどいもので
 す。 
 ・白血球減少などの骨髄抑制
 ・呼吸困難や血圧低下などのショック症状
 ・黄疸、肝不全
 ・急性腎不全
 ・間質性肺炎、肺線維症
 ・心不全
 ・腸管穿孔、胃腸出血
 そのため抗がん剤治療を受けると、元気な人でも心臓、肺、骨髄、腎臓などの機能が低
 下して、よく急死します。
・がんの転移によって亡くなる場合には、穏やかな経過をだどり、自然に枯れていって、
 老衰のように亡くなります。抗がん剤を使わなければ、元気だった人がいきなり死ぬこ
 とはないのです。 
・子宮頚部の上皮内がんは、乳房のそれと同じく、放置しても命取りにならない”無害な
 病変”なのです。ところが近年、子宮頚部の上皮内がんは、年に2万人に発見され、手
 術されます。 
・日本の45〜49歳では、前立腺がん発見数が5倍になっていますが、死亡数は横ばい
 で推移しており、英米両国と同傾向です。ところが年齢が50歳より上の層では、死亡
 数が増加しています。死亡数が増えた原因は、手術と抗がん剤でしょう。50歳を超え
 ると体力的に、治療によって死にやすくなるのです。抗がん剤が危険なことは論をまた
 ない。
・かつて前立腺がんは、すべて”全摘術”で治療されていました。前立腺は骨盤の奥にあ
 り、膀胱や直腸が接しているので、手技が難しく危険な手術です。他方で日本では、泌
 尿器科にかぎらず外科や婦人科などでも、手術の訓練システムに欠陥があるうえ、危険
 な手術をふせぐ監視体制が欠如しています。おおぜいの患者が無謀な”腹腔鏡下手術”
 の犠牲になりましたが、これは巨大な氷山の一角です。前立腺がんの全摘術でも、訓練
 不十分な泌尿器科医たちが挑戦して、術死の山を築いてきました。僕の外来に相談に来
 る前立腺がん患者の中にも、知人・友人が手術直後に死んでしまったと訴える人が少な
 くありません。
・極めつきは、2002年に東京慈恵会医科大学附属青戸病院で生じた事件だ。当時脚光
 をあび始めていた腹腔鏡下手術に、まったく訓練を受けていない泌尿器科医たちが挑戦
 し、大量出血により患者を死なせてしまった事件です。これは大きく報道され、刑事裁
 判になり、医者たちは有罪判決を受けました。
・日本での乳がん発見数は、30歳以上のすべての年齢増で増えています。発見数が増え
 れば本来なら死亡数が減ってしかるべきです。ところが死亡数は逆に、76%増しにな
 っています。がん発見数が増加するのに死亡数が横ばいなのは、検診が無効な証拠でし
 たが、死亡数が増加するのは治療死が増えた証拠です。
・乳がんはからだの外側にできるので、甲状腺がん同様、手術のために死ぬことはないか、
 極めてマレでしょうしかし甲状腺がんと異なり、乳がんは抗がん剤が多用されるので、
 その毒性で死亡する人が出てきます。それが、乳がんの治療死を増やしている主因でし
 ょう。

がん検診に救命効果がない理由
・それにしても検診はなぜ、がんによる死亡を防げないのでしょうか。従来、すべてのが
 んはタチが悪い、と考えられていました。いまは転移がなくても、放っておくと転移が
 生じてきて人の命を奪う、というわけです。けれども半面、早期に発見して治療すれば、
 転移がないから助かる、と言われてきました。これを”早期発見理論”もしくは”検診
 理論”と言います。しかし検診をしても死亡数が減らないことから、がんにはタチがい
 いものと悪いものとの二種類があり、それぞれ運命が決まっている、と考えるのが合理
 的であるようです。タチがいいというのは転移していないケースで、タチが悪いという
 のは、たとえ検査で見つからなくても、からだのどこかの臓器に転移がひそんでいるケ
 ースです。なお、”転移”という場合、臓器への転移を指し、リンパ節への転移を意味
 しません。リンパ節転移は通常、放置しても死なないし、そこから臓器に飛ぶのではな
 いことが明らかになっているからです。リンパ節は、臓器に転移するのを防ぐ関所にな
 っている、という考えもあるほどです。
・カナダのが学者マッキノンは、
 @乳がんの性質論は間違っている
 A乳がんにはタチのいいものと悪いものとがある
 Bタチが悪いものは早期発見できる大きさになる前に転移してしまっている
 と説きました。しかし、当時、乳腺外科医たちは、マッキノン説に難癖をつけて無視し
 たのです。もしこのとき、マッキノン説が広まっていたら、乳がん検診は始まらなかっ
 たはずです。
・タチのいいがんも厳として存在します。胃がんや乳がんを手術して治るのは、転移して
 いなかった証拠です。検診で発見されるケースのほとんどはタチがいいのですが、まれ
 にタチの悪いケースもあります。逆に、進行がんの中にも転移がない、タチのいいケー
 スもあります。 
・実際これまで、早期がんがその後に転移したと立証されたケースはただの一例もありま
 せん。
・もし発見されたがんが”本物”であれば治らないので、手術や抗がん剤はムダ、という
 ことになります。これに対し”もどき”であれば、放置しても転移が出現してこないの
 で、やはり治療はムダになるわけです。
・前立腺は、潜在がんが多いことで有名です。その発見率は60代で50%、80歳をこ
 えると87%にもなります。PSA検診がなかった時代、すべての潜在がんは放置され
 ました。早期発見理論によれば、そのすべてが増大して転移してしまうので、半数以上
 の日本人男性が前立腺がんでなくなってもおかしくありません。ところがPSA検診が
 なかった75年、前立腺がんによる死者は、全男性死亡原因の約0.3%を占めるだけ
 でした。300人の男性が亡くなれば、半数以上に前立腺がんがあるはずなのに、前立
 腺がんで死亡したのはたった1人。潜在がんは放っておいても転移しないし人を殺さな
 い、ニセモノのがんなのです。
・甲状腺も潜在がんが多く、解剖では36%にもみられます。ところが検査法がなかった
 75年、甲状腺がんによる死者は全死因の0.08%。1000人が死亡した場合、そ
 のうち360人に甲状腺の潜在がんがあるかれども、甲状腺がんで死亡するのは1人、
 ということになります。
・乳腺も潜在がんが多く、解剖すると乳がんが20%にみつかります。マンモ検診がなか
 った75年に100人の女性が死亡すると、20人が潜在がんを持っていたはずですが、
 乳がんで死亡したのは1人でした。
・早期胃がんと診断された病変は、ことごとく切除されてしまい、放っておいたらどうな
 るかを調べる研究は実施されずに来ました。それでも、早期胃がんと気づかずに様子を
 みたケースがポツリポツリと報告されています。早期がんを3年放置しても、ほとんど
 変化しないということは日本の専門医にとって常識以前のことです。欧米でも、病変を
 放置したらどうなるかを確かめずに”早期がん”と診断してきました。その場合、診断
 基準は”偉い先生”が決めるので、こんなことにもなります。
・胃に生じた”悪性リンパ腫”の一種は、胃内にいるピロリ菌という細菌を抗生物質で除
 菌すると、リンパ腫が治ってしまうことがあるのです。ピロリ菌の感染に対抗してリン
 パ球が活発に活動するうちに、リンパ球の顔つきが変化して”悪性リンパ腫”に似てし
 まったのだと考えられます。ともかく抗菌薬で治るなら、本質は感染症ですから、診断
 名を”ピロリ菌による胃の感染症病変”とでも変えるべきです。しかし病理医を含め医
 者たちは”悪性リンパ腫”と呼び続けています。
・子宮にも、感染症である”がん”があります。子宮頚部にできる”上皮内がん”がそれ
 で、性行為によって人から人へとうつるヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)という
 病原体が活動して、子宮頚部の上皮を一見がん細胞に似せているのです。しかし感染症
 なので、放っておけば、やがてHPVは姿をひそめ、上皮細胞も正常化します。僕は慶
 大病院時代、子宮頚部の上皮内がんを何人も、治療せずに様子をみてきましたが、全員、
 消失するか増大しないままでした。スウェーデンでの研究でも、上皮内がんの99%が
 自然消滅するとされています。
・自覚症状がなく検診で発見された肺がんは、放置しても自覚症状を引き起こすようには
 ならず、発見されずにすむはずです。言いかえれば、検診発見がんは放置した場合、増
 大・転移しないわけです。
・がんの中には、がん細胞が上皮内にとどまる”上皮内がん”=”非浸潤が”と、がん細
 胞が上皮の外に出ている”浸潤がん”とがあります。研究者の世界では、上皮内がんは、
 学問的には”がん”とする必要がないと意見が一致しています。しかし臨床現場では、
 患者は乳腺外科医から「放っておくと死んでしまうぞ」お脅されて、乳房をを全摘され
 てしまうのです。      
・子宮頚部の上皮内がんも”がん”とは言えないのに、婦人科医は「放っておくと進行が
 んになる」と脅して、子宮の一部ないし全部を摘出手術に持ちこんでいきます。
・細胞が上皮の外に出ている”浸潤がん”は、上皮内がんよりも”がんらしく”見えます。
 しかし自覚症状があって見つかる胃がんや乳がんなど、種々の臓器の”浸潤がん”でも、
 増大しないものや消えてしまうものがあります。症状がないため、検診でしか発見でき
 ない浸潤がんはなおさらです。
・肺がんや乳がんの比較試験では、浸潤がんでも増大しないか消えてしまうことが示され
 ています。なによりも比較試験では、がんを発見して治療しても死亡数が減らないとい
 うより、むしろ増えることが示されています。結局、浸潤がんを含め、検診で発見され
 るような”がん”は”実質良性病変”なのです。それをなぜ”がん”としてしまったの
 か。病変を顕微鏡で見ると、細胞が”がん細胞”に似ていることが理由です。この点、
 皮膚の”ホクロ”や”イボ”でも、顕微鏡で調べると、細胞が”がん細胞”に似ている
 ことがあります。ただ皮膚のホクロやイボは、人びとが太古から見慣れてきたし、放置
 されてきたのに問題は乗じなかったため、医者たちも”がん”とすることはありません
 でした。ところが内臓の良性病変は、誰も見たことがなかったので、検査法が開発され
 て病変が見つかるようになると、「がん細胞に似ている」となって、”がん”とされてし
 まったわけです。
・がんで人が亡くなるのは、治療死でないとすれば、ほとんどは転移が原因です。転移す
 るがんは基本的に”浸潤がん”で、上皮内がんは”がん”とはとても言えないこともあ
 り、転移しません。仮に”がん”と認めても、上皮の外に出る能力がないので、転移は
 できない道理です。 
・検診で発見される”浸潤がん”は、基本的に転移しませんが、ごくわずかの例外があり
 ます。他方で、なにか自覚症状があって、それをきっかけに発見される”浸潤がん”で
 も、転移しないケースがたくさんあります。
・現代の精密な検査機器によっても、1ミリ以下の初発病巣を発見することはできません。
・手術してみたら切除不能だったということは、初発病巣が検査では発見できないような
 ごく小さな段階で、がん細胞が転移していた証拠になるわけです。がんが手遅れである
 こと自体が、早期発見に意味がない証拠になるということは、皆さんは知らなかったの
 ではないでしょうか。      
・転移病巣の元になったがん細胞は、初発病巣がごく小さくて発見不能な時期に転移して
 います。なぜそんなに早くに転移するのか。結論から言うと、がんには”がん幹細胞”
 があるからです。人のからだをつくる心臓、肝臓、脳などの臓器は、それぞれに幹細胞
 が存在しています。ハチの社会にたとえると、女王バチに相当します。つまり、人体を
 つくっている正常細胞は、すべて幹細胞から分かれたものです。
・からだをつくる37兆個といわれる正常細胞は、それぞれが2万個を超える”遺伝子”
 のセットを持っており、それらの遺伝子を設計図として何万種類ものタンパクを合成し
 ています。一個の受精卵が分裂を繰り返して出来たのが人体なので、正常細胞はすべて
 同一の遺伝子セットを持っているわけです。
・ところが人は誕生後、自然界の放射線、農薬、タバコ、大気汚染物質などの有害物質に
 さらされて、それらは遺伝子を傷つけ、”変質遺伝子”に変えます。そのため正常細胞
 のそれぞれに、さまざまな種類と数の変異遺伝子がたまっていきます。そしてある細胞
 にたまった変異遺伝子の種類や数が、がん幹細胞にふさわしいものになると、その細胞
 は”がん幹細胞”に変わるのです。
・早期がんは最少でも1センチ程度ですが、そこには10億個ものがん細胞がつまってお
 り、がん幹細胞からそこまで育つのに5〜10年程度はかかります。それなのに移転し
 ていない早期がんは、がん幹細胞に転移能力がない証拠になるわけです。転移能力がな
 ければ、放っておいても転移できないのは理の当然です。
・いろいろな臓器に見つかる”ポリープ”は潜在がん未満の存在です。それを放っておい
 ても早期がんにはならないのです。”ポリープ幹細胞”はがん幹細胞とは異ならるから
 です。    
 
検査値の異常
・日本ではクスリを飲んでいる人がとても多いですね。降圧剤ひとつをとっても、60代
 では3割以上が、70歳以上だと5割以上が飲んでいます。クスリが処方されるきっか
 けは、きまったように健康なときに受けた検査です。カゼや花粉症での”念のため検査”
 や、職場検診などで異常を指摘され、クスリが始まるのです。とくに人間ドックは、な
 んらかの異常を指摘される人が9割にもなります。
・検査で”異常”が増えるのは、”基準値”が理由です。これは、正常値と異常値を分け
 る境目の値で、肝機能、白血球数など大抵の血液検査では、ひとつの測定項目につき、
 被験者の5%が異常判定されるようになっています。
・一番低い測定値から数えて全件数の2.5%目にあたる測定値を”下の基準値”とし、
 同様に高値から数えて”上の基準値”も決めます。これを、新たに検査を受ける人たち
 に適用すると、5%が”基準値外”となり、”異常”と判定されるのです。
・”5%基準”の場合には、値は自動的に決まります。専門家が、肝機能や白血球数の基
 準を自由に動かすことはできません。ところが、高血圧、高血糖、高コレステロール血
 症などの”生活習慣病”では、専門家たちが基準値を決めています。
・人は年をとるほど動脈が狭くなり、そのままだと、からだの中で一番大事な脳に届ける
 血液量が少なくなります。そこでからだは、自分で血圧を調節して高くして、脳血流を
 確保するのです。つまり血圧の基準値をもし決めるなら、年齢に応じて変えるべきであ
 り、「その人の年齢に幾つ足す」という決め方には一定の合理性があるわけです。とこ
 ろが世界保健機関(WHO)は1978年に、すべての年齢の基準値として160/
 95を採用しました。つまり上の血圧が160以上か、下の血圧が95以上であれば、
 高血圧と判定されるのです。これだと当然、高血圧と判定されクスリを処方される人が
 激増します。
・WHOが基準値を決めた背後には、製薬業界がいました。WHが1999年に決定・公
 表した新基準値は140/90でした。その結果、たとえば米国では、年間3000億
 円だった降圧剤の売り上げが、5年間で1兆6300億円と、5倍以上になりました。
 基準値の切り下げは、医療業界に莫大な利益をもたらすのです。
・結局、現行の140/90という基準はもちろん、以前の160/95という基準も不
 合理です。しかも、血圧を下げ過ぎると死者が増えることも明らかです。それでも専門
 家たちは、無理やり高血圧と診断しでクスリを飲ませようとするのです。
・日本もWHOの新基準に乗っかりました。日本高血圧学会が2000年に、基準値を
 140/90に切り下げたのです。これを契機として、降圧剤の売り上げが年間2千億
 円から1兆円を超えるまでに増加しました。人口が米国の3分の1である日本での売上
 高が米国のそれに迫ったのです。
・数千万人が降圧剤を飲んでいる日本では、不都合な事態がたくさん生じています。ひと
 つは”脳梗塞”です。血圧を下げると、農血管の中で血がたまりやすくなり、血液が流
 れなくなって脳組織が死滅するのです。脳梗塞は”脳卒中”の一種ですが、日本の別の
 比較試験では、上の血圧が150〜180、下の血圧が90〜100の人にクスリを飲
 ませたところ、プラセボ群にくらべ、脳卒中が50%増しになりました。
 別の不具合は”ボケ症状”です。クスリで血圧を下げると、血流が減るため脳の働きが
 落ち、記憶力や判断力の低下、無気力などが生じ、ボケに似てくるのです。
・日本での調査では、上の血圧をクスリで120未満に下げると、食事、入浴、着替え、
 排泄、歩行などの日常生活に支障をきたして自立できない人が7割にのぼりました。
 さらには、フラフラして転んで大腿骨を折り、手術しえも寝たきりになるという負の連
 鎖もよく生じます。日本人の健康寿命が短いのは、降圧剤による”低血圧”に理由の一
 端があることは、もはや明白であると言えます。
・加えて、クスリには副作用があります。降圧剤の種類によって多少異なりますが、たと
 えば売上高が上位の”ブレプレス”だと、ショック、失神、意識消失、急性腎不全、高
 カリウム血症、肝機能障害、黄疸、白血球減少、横紋筋融解症、間質性肺炎、低血糖な
 どがあります。
・こうして血圧は、下げれば下げるほど総死亡数が増えます。日本の臨床現場でも、おお
 ぜいの患者さんが亡くなっています。ただ、遺体には”降圧剤で死んだ”とか、”クス
 リで死んだ”という目印が残らないので、がんや脳卒中、あるいは転倒して寝たきりに
 なったあとの肺炎などで死亡したとされているわけです。
・高血糖ないし糖尿病も、血液検査でよく指摘される異常です。日本には約1千万人の糖
 尿病患者がいるとされますが、症状はまちまちです。日本の糖尿病患者の圧倒的多数は、
 当分の取りすぎと老化を原因とする”2型糖尿病”で、多飲・多尿などの自覚症状はな
 く、元気で健康な人たちです。
・糖尿病は、@空腹時の血糖値、Aブドウ糖負荷試験の血糖値、BヘモクロビンAlcな
 どを組み合わせて診断します。このうち、@空腹時の血糖値は”126”が基準とされ、
 それ以上だと糖尿病を疑い、他の項目を調べることになります。でも、以前の基準値は
 ”140”でした。それをWHOが1998年に、いきなり126に切り下げたのです。
 これで糖尿病人口は激増しました。しかしまたしても、この基準値を変えたら人びとの
 健康状態が改善するとか、寿命が伸びるというデータはなかったのです。
・Aのブドウ糖負荷試験は、75グラムのブドウ糖を飲ませて2時間後に採血し、血糖値
 が”200以上”だと、糖尿病と診断します。しかし、合理的ではありません。という
 のも、体重が40キロの女性にも、200キロの相撲取りにも、同じ75グラムを飲ま
 せて同じように判定するのです。これは学問的な自殺行為でしょう。
・BのヘモグロビンAlcは、いわば血糖の平均値です。空腹時血糖値は日々の変動が大
 きいのですが、ヘモグロビンAlcは1〜2カ月の血糖値を反映するため、重宝されて
 います。日本糖尿病学会はこれまで、診断基準は”6.6以上”を用い、治療目標値は
 ”6.2”未満としてきました。
・英国で実施された、2万8千人の2型糖尿病患者の死亡率を分析した研究があります。
 血糖降下剤を飲んでいる場合、ヘモグロビンAlcが7.5付近にとどまる人たちの死
 亡率がもっとも低く、6.5未満になった人たちの死亡率はそれよりずっと高かいこと
 が明らかになりました。インスリンで治療するとさらに危険です。ヘモグロビンAlc
 が8.0以上にとどまる人たちよりも、6.5未満に下げた人たちのほうが、死亡率が
 はるかに高くなるのです。
・そのため日本糖尿病学会は2016年に、治療目標値を改訂しました。目や腎臓などに
 生じることがある”糖尿病の合併症”を予防するための目標値として”7.0未満”を
 採用したのです。しかしこれでは、糖尿病の診断基準である6.5未満”を治療目標血
 が上回ることになってしまいます。
・また改訂では、”重症低血糖が危惧される薬剤を使用する場合”の治療目標値として”
 65歳以上は7.5未満”、”75歳以上は8.0未満”としました。血糖値を下げ過
 ぎると死亡率が高くなるという、これまでの研究データを採用したわけで、学会の姿勢
 としては一歩前進です。
・血糖値を下げるほど死亡率が高くなる理由はいくつかあります。ひとつは”低血糖発作”
 です。脳細胞のが働かなくて意識を失い、やがて脳死状態をへて死亡するのです。飲み
 薬よりもインスリンのほうが低血糖になりやすいため、死亡率が高くなります。
・発作の時期も重要です。日中の発作であれば、周囲の人が救急車を呼ぶなどして一命を
 とりとめることもありますが、就寝中の発作は誰も気づかないので、死に直結します。
 ただし救命できても、脳が回復不能のダメージをこうむり、植物状態になり、脳死状態
 で何年も人工呼吸器につながれる人もいます。
・低血糖による転倒リスクもあります。血糖値を厳格にコントロールするほど、転倒率が
 高くなり、転倒→骨折→治療効果不良→寝たきりという負の連鎖が起こるのです。
・低血糖でボケも生じます。入院を要するような重症低血糖の場合には、入院回数が増え
 るとともに、ボケが発症する頻度が高くなり、2回の入院で発症率は約2倍になると言
 います。      
・死亡率が高くなる別の原因は、クスリの副作用です。売上高トップの”ジャヌビア”に
 は、アナフィラキシー反応、皮膚粘膜眼症候群、肝機能障害、黄疸、急性腎不全、急性
 膵炎、間質性肺炎、腸閉塞、血小板減少などの副作用があります。どれも死亡に直結す
 るような副作用です。     
・元気でなんら自覚症状がないのに検査で見つかった高血糖ないし糖尿病は、ほぼすべて
 がクスリ不要と言えます。例外的に、ヘモグロビンAlcが9.0を超えているような
 場合には、下げたほうがいいかもしれませんが、なるべくクスリ以外の方法で下げるこ
 とを考えましょう。また、多飲、多尿などの症状があって発見された糖尿病は治療が必
 要ですが、ヘモブロビンAlcがある程度下がったら、クスリ以外の方法で維持するこ
 とを考えましょう。    
・”高コレステロール血症”という病名は、今世紀に入って”脂質異常症”に変更されま
 した。日本でクスリが大いに処方されているのは、職場健診などで総コレステロール値
 が”220以上”と指摘された、健康な人たちです。心筋梗塞の人たちで得られた研究
 結果を、健康人に適用するのは無理があります。ところが、こうした無理をおかしても、
 基準値を決めさえすれば、クスリの売上が年間3千億円にもなるのです。基準値を決め
 た日本動脈硬化学会の重鎮たちには、製薬業界から億単位の寄付金が渡っていたことが
 明らかになっています。
・じつは日本の健康人の大規模調査では、総コレステロール値が”240〜260”とい
 う、基準値からみれば”異常高値”の人たちの死亡率が一番低いことが示されています。
 それをわざわざクスリで下げたら、死亡率が高くなるのは自然・当然です。
・そこで彼らは、姑息な改訂をおこないました。ひとつは総コレステロール値を診断基準
 からはずしたことです。これで「総コレステロール値の基準値が低すぎる」との批判は
 肩透かしを喰らいました。そのかわり、総コレステロール値を”LDLコレステロール
 値”と”HDLコレステロール値”に分解し、前者に”悪玉コレステロール”、後者に
 ”善玉コレステロール”という別称をつけたのです。そして悪玉には、新たに基準値を
 もうけ、それを超えた人にはクスリの服用を勧めました。また”中性脂肪”が高いのも
 健康に悪いと言い出し、基準値を設けてクスリ処方に道をひらきました。
・問題は、健康人の脂質異常症にクスリを処方したら、より健康になるか、死亡率が減る
 といったデータがなかったことです。それどころか健康人の大規模調査では、悪玉コレ
 ステロールも中性脂肪も、値が高いほうが、死亡率が低いことがわかっているのです。
・脂質異常症のクスリにもいろいろな害作用があります。たとえば売上高上位のコレステ
 ロール低下薬”リピトール”には、横紋筋融解症、劇症肝炎、中毒性表皮壊死融解症、
 無顆粒球症、間質性肺炎など、命にかかわる重大な副作用があります。健康人の総コレ
 ステロール値を下げると死亡率が上がる一因は、これらの副作用であるはずです。
・タバコは肺がんだけでなく、食道がん、すい臓がん、大腸がんなど、いろいろながんの
 発症に関係している。
     
新たな健診
・医療技術は日進月歩です。新たな診断法や装置もつぎつぎ登場し、いままで見つけられ
 なかった病変も簡単に発見できるようになりました。しかし、それが役に立つのか、人
 びとを幸せにしているのかは別問題です。
・そもそも人は、メタボ気味のほうが健康で長生きできるのです。もし大病をしたときに、
 からだに肉がついていれば、それを消費しながら生きながらえることもできます。百歳
 長寿を達成したような人たちは、若い時分はたいてい小太りだったはずなのです。
・男性でも女性でも、死亡率が一番高いのは、BMIが極端に低い人たちです。日本には、
 BMIが30以上という極端な肥満者は少なく、逆に極端に痩せた人が多いので、メタ
 ボを心配するより、瘠せた人を対象に”もっと太ろうキャンペーン”をすべきなのです。  
・CTをうけると2人に1人が、がんでもないのに「異常あり」と言われかねないのです。
 イタリアやデンマークなどでの比較試験では、放置群と比べた場合、CT検診群の肺が
 ん死亡数も総死亡数も減らないという結果がでました。CT検診には、放射線被ばくに
 よる発がん効果しか期待できないことになります。
・異常が見つかれば、精密検査として各種の内視鏡、造影剤を使ったCT、MRIなど、
 ありったけの検査をされますが、それでもCT肺検診のように、ほとんどが空振りです。
 そして真実”がん”が発見された場合には、問題はさらに拡大します。見つかったがん
 を治療したら寿命がのびるという証拠やデータはもちろん存在しませんが、それ以上に、
 寿命を縮める可能性が高くなるのです。というのも、PET検診で見つかるがんには、
 ”本物のがん”が多く含まれているからです。本物のがんを手術したら、寿命は確実に
 短縮します。
・PET検診は、放射線の被ばく線量も相当になります。CTとペアで実施されるのが一
 因ですが、1回の検査で25ミリシーベル程度になると言われています。福島原発事故
 後の居住制限区域に1年間住んだ以上の線量を一度で被ばくするわけです。
・最近の健康診断や人間ドックのトレンドは、ピロリ菌検査です。胃にピロリ菌がいるか
 どうか、採血するだけで見当がつき、ピロリ菌がいたら除菌すると胃がんの予防になる、
 というのが能書きです。でも本当でしょうか。
・ピロリ菌は衛生環境が劣悪だと、人から人へと感染しやすく、戦後ぞっと日本人の感染
 率は50%以上と、とても高かったのです。このところ若い世代の感染率はぐっと低下
 していますが、今でも70代以上では人びとの50%以上が感染しています。ところが
 胃がんによる死亡率は70代以上でもこの半世紀、一貫して減少を続けています。つま
 りピロリ菌の感染率がくても、胃がんによる死亡数は勝手に減るのです。
・じつはピロリ菌に感染している人の胃粘膜には、慢性炎症が生じています。そういう炎
 症の一形態ないし一局面として、がん細胞に見える病変が立ち現われてきて、それを
 ”粘膜にとどまるがん”と診断しているのでしょう。ピロリ菌除菌をすれば慢性胃炎が
 おさまり、胃粘膜が正常化するので、新たな病変の出現が減ることもうなずけます。
・注意すべきは、ピロリ菌を除菌すると、胃がんが減る可能性がある一方、食道がんが増
 える可能性があることです。胃粘膜が正常化するに伴い、胃酸の分泌が増え、逆流性食
 道炎がよく発生するからです。  
・ピロリ菌感染者を抗菌薬で除菌して15年間にわたって除菌効果を調べた結果、除菌し
 なかった人たちより除菌したほうが総死亡数は増えたのです。総死亡数が増えたのは、
 抗菌薬のためでしょう。2種類の強力な除菌薬が使われるので、腸内などにいる常在菌
 を殺した結果、菌交代現象が生じ、悪い細菌がはびこるのです。なかでも”偽膜性大腸
 炎”という腸炎が問題です。”クロストジウム菌”がのさばり、ひどい下痢が続いて体
 力が消耗し、死に至る病です。体力の乏しい高齢者は特に危険で、これを治すには、他
 人の大便を患者の腸内に入れる必要があります。健康な人の大便に含まれる大腸菌によ
 り、腸炎患者の常在菌が正常に復するからです。
・脳ドックが始まったのは、1980年代のことです。脳卒中を予防できるのではないか
 という”希望的観測”が唯一の根拠でした。じつは日本はMRI装置の普及率がダント
 ツの世界一です。市中のクリニックにまでMRI装置があるという、欧米ではありえな
 い事態になっているため、それに見合った数の患者はいません。それでも、高額な装置
 を遊ばせておくわけにはいかないと、脳ドックを始めたというのが裏事情です。
・老化にともない、脳細胞が死滅するのが脳萎縮です。若いときだと、頭蓋骨の内部いっ
 ぱいに脳組織がびっしりと詰まっているのに、年を取ると脳が縮んで、頭蓋骨と脳のあ
 いだに隙間が広がってくるのです。
・脳動脈瘤というのは、動脈の壁がコブのようにふくらんだ状態です。コブが小さければ
 異変は生じませんが、大きい場合には、頻度は低いものの突然破裂して”くも膜下出血”
 を引き起こすことがあります。そうなると大変なので、破裂を防止するためにMRIで
 早く見つけて手術などの予防的な処置を行い、動脈瘤が破裂しないようにしよう、とい
 うのが脳ドックの能書きです。しかし実際に予防的な処置をしてみると、種々の神経麻
 痺、半身不随、手術死亡などの医療事故が続発しました。もともと健康だったので、被
 害者や家族・遺族は納得できません。医療訴訟が頻発しました。
・脳動脈瘤を手術すると、少し寿命がのびる可能性はある。しかし残りの人生を、神経麻
 痺状態で過ごす人が増えたため、結局、手術は勧められない。
・骨粗しょう症の患者が増えたのは、ひとつには、骨密度の測定装置が開発されたからで
 す。ふたつには、診断基準がきびしいからです。具体的には、20〜44歳という若い
 人たちの骨密度の70%未満を”基準値”としています。そして60歳の人にも、90
 歳の人にも同じ”70%未満”を適用するのです。人は誰でも、加齢とともに骨密度が
 減っていくので、この方式だと、年をとればとるほど骨粗しょう症と診断されやすくな
 るわけです。言い換えれば、「老化は病気だ」と言っているようなものです。もし基準
 値を定めるなら、それぞれの年齢ごとに決めるのが合理的です。
・骨粗しょう症のクスリは多種多様ですが、多くは”劇薬”にしていされています。危険
 なクスリなので、それぞれ臨床試験を実施して厚労省が承認した、というのが建前です。
 ところがほとんどの臨床試験は、錐体に骨折がある人たちを被験者としています。骨粗
 しょう症の圧倒的多数を占める、骨折のない人たちでの効果は確かめられていないので
 す。それでも”骨粗しょう症”が厚労省の承認条件となっているため、医者は骨粗しょ
 う症と診断しさえすれば、元気な人たちにもクスリを処方することができるわけです。
・たとえば処方数が多い”ビスホスホネート”系のクスリは、当然ながら、骨を強くして
 骨折を防止しる、というのが建前です。しかしこれを飲み続けると、健康人には見られ
 ぬかたちの”顎骨壊死”と”大腿骨の骨折”が生じます。このクスリは、確かに骨密度
 を高くはするのですが、ハリコの虎のようなもので、骨の強度はかえって弱くなってし
 まうのです。やはり骨を強くするには、クスリのような不自然なものは止めて、バラン
 スのよい食事をとり、日の光をあびながら、散歩や運動をするに限るのです。
       
温故知新−検査機器とクスリに頼る日本の医者
・着目すべきは、現在わが国に”テンプラ医者”が多いという事実です。白衣を着ていて
 立派に見えるけれども、知識や能力が足らず、安価な天丼のエビのように中身が貧弱な
 医師のことです。これは、過去からつづく伝統です。
・欧米には、もし5種類以上のクスリが処方されたら医療のラチ外の行為である、との格
 言があります。クスリ同士が相互に効果を強め合い、作用や副作用が数倍、数十倍にも
 なることがあるし、クスリの種類が増えるほど相互作用が複雑になり、なにが生じるか
 予想もつかないからです。それゆえクスリ処方の原則は、最初にクスリひとつを処方し、
 数日から数週間は様子をみて、@つづける、Aやめる、B別のクスリに変える、C別の
 クスリを追加する、などの判断をします。ところが日本には、初診でいきなり3剤、5
 剤と処方する医者のなんと多いことか。
・とかく官僚にとって、時分が管轄する業界(縄張り)の繁栄が一大関心事です。厚労省
 にとっての縄張りは、病院や人間ドックなどの医療機関、製薬会社、医療機器メーカー
 などからなりますが、厚労省が業界を盛りたてようとしても国の財政事情が厳しく、財
 務省からは経費節減をうるさく言われます。そこでなすのが面従腹背。医療費を抑制す
 るような政策を立てる一方、職場健診やがん検診を推進すれば、受診者が増え、自然と
 病人が増加し、医療費増大と業界繁栄につながるわけです。
・職場健診やがん検診を推進するのは、土木工事などと同じく、”公共事業”なのです。
 税金から資金を補助し、産業を保護・育成するわけです。ただし、土木公共工事の弊害
 は、ムダな道路やダムをつくることのよる自然の破壊であるのに対し、医療公共事業は
 人びとの健康を損ない、寿命を縮める点が異なります。
・医師たちは、医療費のパイが増大するように、いろいろ戦略をねってきました。健康診
 断やがん検診のシステムを普及させることは、とりわけ大事な戦略です。人は検査を受
 けなければ、いつまでも健康人のままですが、検査を受けさせ、老化現象に病名をつけ
 れば、”病人”になり、自動的に医療費が増えるからです。
・もっとも実入りがいいのは、がん検診でしょう。検診自体の手間賃はわずかですが、な
 にか所見を見つければ、CT、内視鏡、組織検査などの高額請求が可能になります。ま
 た、がんと診断できれば手術、抗がん剤、放射線治療、入院、投薬、リハバリなどで医
 療収入は大幅にアップします。そればかりでなく治療後、定期的に通院させ、検査やク
 スリが安定収入源になるのです。
・この戦略にとって肝腎なのは、専門家たちが先導して、老化に病名を付与することです。
 本質が老化現象でも、高血圧、高コレステロール血症、認知症、骨粗しょう症などと呼
 べば、人びとは「病気か」と錯覚し、「病気ならクスリでなんとかなるだろう」と思っ
 てしまうのです。”成人病”を”生活習慣病”と呼び変えたことは、その象徴的な出来
 事です。
    
検診を宣伝する者たち
・検診を宣伝する医師たちの発言は、@手前勝手にデータをねじ曲げる、A検診有効と断
 定する、B対談から逃げる、という点で共通しています。マスコミは、これらインチキ
 発言をそのまま掲載することにより、拡声器の役割をはたしているわけですが、そうな
 る理由はいくつか考えられます。ひとつは、記者たちの英文論文を読み込むだけの語学
 力や専門的知識がないため、健診無効という海外のデータや情報から隔離されているこ
 とにあるます。  
・民間のテレビ局は、広告の大口スポンサーである製薬業界の意に反する番組を制作する
 ことはほぼ不可能だからです。ただし製薬会社は、直接口はださず、かわりの広告代理
 店が裏で画策するようです。 そうなるとテレビ番組に出演するコメンテーター役の医
 師たちは、検診や人間ドックの礼賛論しか喋れません。仮に本心が違っても、干される
 のが怖くて反対論を言えないのです。   
・がん検診に関する医者たちの態度やマスコミ報道は、第二世界大戦中と酷似しています。
 検診を推進する医師たちは、がん検診が無効という欧米の潮流を無視する点で、日米の
 国力・軍事力の差を無視して戦争に突入して軍部とそっくりなのです。そして、日本が
 戦争に勝利すると思い込んだ新聞があおったため、軍部や国民が敗戦を受け入れにくい
 心理となり、多数の戦死者を出す一因になった事実は、今日マスコミが、検診は有効だ
 と勝手に思い込んで検診の宣伝役をつとめ、治療死を増やす結果になっていることに重
 なります。  
・検診発見がんは、ほとんどが実質無害な良性病変なので、治療後に生きれおられるのは
 当然のことです。しかし、患者の側にも勘違いがあるので、”サバイバー”という言葉
 を好んで使うことになります。そして検診効果により、がんサバイバーは増える一方で、
 毎年60万人以上の”がんサバイバー”が積み上がっていきます。こうしたサバイバー
 たちは、いま生きているのは検診のおかげだと考えることになる。そうして家族、友人、
 知人たちに「検診を受けたほうがいいわよ」「私が生きているのも手術のおかげ」など
 とささやき、検診被害者の再生産に手をかします。

ではどうするか?
・結論から言うと、安全に長生きするためには、健康なときに検査を受けないこと、医者
 に使づかないことに尽きます。検査が、アリ地獄に落ちるきっかけとなるからです。こ
 こで”健康”というのは、元気で体調がよく、ご飯が美味しくて、日常の生活動作に不
 自由がないときです。
・自覚症状がある場合には、症状の程度によります。年を取れば腰の痛み、膝の痛みなど、
 多少の不具合が生じてくるものです。それは老化現象なので、多少の症状があっても、
 元気に生活できていれば、やはり健康であるのです。ただし日常生活に支障が出るほど
 の重い症状であれば別で、検査や治療が必要になるかもしれません。
・生活習慣病と診断された人たちは、現在、おそらくクスリを飲んでいることでしょう。
 クスリを始めたら、雪だるま式にクスリが増えた方も多々おられるはずです。その場合
 にはどうするか。選択肢がいくつかあります。ひとつは、主治医を信じてクスリを飲み
 続ける、というものです。それが一番気楽な処世術ですし、それも各人の自由です。た
 だし飲み続けた結果には、自分で責任をとる必要があります。ボケたり、転倒したり、
 寝たきりになったりし、あるいは早死にしても、医者を信じた自分の責任です。別の選
 択肢は、断薬です。
・クスリの危険性を認識するには、”添付文書”がオススメです。医家向けの説明文書で、
 医療機関のクスリ窓口で渡される説明文書よりずっと詳しく書かれています。
・クスリを多数飲んでいる場合、実際の断薬法にはおよそ三通りあります。ひとつは、体
 調をみながら一剤ずつやめていく方法です。新しく処方されたものから順次さかのぼっ
 てやめていきます。一つやめたら一週間程度様子をみて、次に新しいクスリをやめるよ
 うにします。もと来た道を引き返すのに似ています。第二の方法は、クスリ全体の4分
 の1程度ずつ、やめていきます。たとえばクスリが20種類だったら、5種類ずつやめ
 ていくのです。これも、一週間ほど様子をみて、次をやめればいいでしょう。最後の方
 法は、クスリの数が5種類でも10種類でも、一気に全部やめてしまう。
・僕の外来では、全部やめたら体調がよくなったという話ばかりで、悪化したという話を
 聞きません。多種類のクスリの相加作用、相乗作用で副作用が積み重なっているため、
 やめると体調がよくなるのです。
・健やかに長生きするためには、平凡ですが、日常生活を見直しましょう。食を見直し、
 いきいきとした生活を送るのです。食の見直しというと、玄米菜食、肉食制限、糖質制
 限などを思い浮かべる人が多いと思いますが、どれも徹底すると危険です。玄米菜食は
 たいてい肉食制限とセットになっており、貫徹すると体重がどんどん減り、いろいろな
 病気によって死亡する率が高くなります。長生きするためには、痩せていてはいけない
 のです。男性も女性も、死亡率が一番低いのは、”ちょいメタ”と言われる程度の人た
 ちです。
・百歳長寿者は、若い時分はたいてい肉や野菜をよく食べて、太めであったことがわかっ
 ています。何か大病をして職が細ったり、食べられなくなったりしたときは、からだに
 たくわえられた栄養分を消費して生きていかねばならないため、太めの方が有利なので
 す。長生きするためには、”貯肉”を心がけましょう。
・糖質制限食もブームを呼んでいますが、欧米に多いビヤ樽のような肥満体型だと、体重
 を減らしたようが長生きできるはずで、その際、糖質制限食は効果的でしょう。しかし
 日本人には、それほど肥満はマレだし、ちょっとメタ程度が一番長生きするので、体重
 を減らす必要がある人は少数です。また血糖値との関係でも、血糖値を極端に下げると
 短命に終わることがわかっています。  
・食生活で大切なのは、肉、魚、タマゴ、牛乳など、高タンパク、高脂肪の食材を摂取す
 ることです。日本の百歳長寿者は例外なく、肉や魚をたっぷり摂っています。そして炭
 水化物、野菜、果物なども摂るという、バランスのよい食事が肝腎です。
・いきいきした生活というのは、よく頭を使い、からだを動かす生活です。料理や掃除な
 どの手順を考えたり、本を読んだり、将棋、囲碁、麻雀などのゲームをするなど、あり
 きたりのことでいいからマメに頭を使っていると、脳の神経細胞が刺激され、ボケにく
 くなります。 
・家事、庭仕事、散歩などでからだを動かすことも大事です。筋肉が衰ええると転倒して
 寝たきりになりやすいので、ラジオ体操やプールでの運動なども試みるとよいでしょう。
・人との交流も、ボケ防止に役立ちます。家族、知人、友人、隣人、誰でもいいから挨拶
 し、会話することが脳を刺激し、細胞が死滅するのを防ぎます。周囲の人たちが高齢者
 と積極的に交流をはかれば、人助けになります。
・血圧、血糖、コレステロールなどの基準値をうんぬんすることにも意味がない。なんと
 なれば基準値は、他人の検査値を寄せ集めて決めたものでしかないからです。その値が
 どうであろうと、この世で唯一無二の存在の、あなたのからだの数値が否定されるわけ
 ではありません。自身の数値は、そのときの年齢や環境などに応じて、そうする必要が
 あって、からだが調節した結果なのです。    
・80歳以上の人たちでは、上の血圧が180を超えたほうが、それ以下の人たちより死
 亡率が低かったという調査結果もあります。これは、血圧の調節がうまくいっているほ
 ど体調がよくなり、長生きできると考えれば得心できる話です。またクスリで血圧を下
 げると体調が悪くなり、ボケたりするのは、精妙な調節システムに無謀にも挑戦する仕
 業だからです。
・コレステロールの値が高くなるのも、からだがそれを必要としているからです。女性が
 更年期を迎えると、6割もの人の気中コレステロール値が高くなります。これは自分の
 からだが最善の状態になるよう、コレステロール値を調節した結果なのです。だから、
 もし健康な人が検査を飢えて異常値を指摘されたら、それが自分の”個性”だと考えま
 しょう。他人の値を寄せ集めて決めた正常・異常など気にすることはないのです。
・そもそも健康な人に見つかる、がんや高血圧などは、本当の病気ではありません。本当
 の病気とは、痛い、苦しいなどの重大な自覚症状があって日常生活に支障をきたしたよ
 うな場合です。また苦痛がなくても、臓器転移がある胃がんや肺がんあども治らないの
 で、本当の病気と言えるでしょう。しかし死病としてのがんであっても、もし自然現象
 として受け入れることができれば、普通ラクに死ぬことができます。
・検診発見がんや高血圧などは、いわば”検査病”です。実質は老化現象や良性の変化で
 あるのに、医者たちが勝手に病名をこしらえてきた”虚のやまい”です。それなのに、
 ”実のやまい”と勘違いして手術を受け、クスリを飲めば、寿命は確実に縮まります。
 クスリや手術で体調が悪化するのに、長生きできると思うのが間違いなのです。
・僕が医者になったとき、医療は人びとの苦痛をやわらげ、安心させるためにあると思っ
 ていました。そういう医療観は、やけどや外傷、あるいは新生児医療など、緊急を要す
 るケースでは、いまでも妥当します。しかし、検査病の場合には、患者という名の人た
 ちは、元気だし健康なので、もし安心感を与えたら、治療を受けてくれず、病院経営が
 なりたたない。それで医者たちは、患者を脅して治療に持ち込むことに専心し、それが
 仕事の全部になります。 つまり検査病に関しては、医療は、”恫喝医療”と化し、人
 びとの不安をかきたて医療ファンを増やす”不安産業”に堕しているのです。
・このように医療には、安心を追い求めると、医者の術中にはまって不安になるという逆
 説があります。健康には、追い求めると不健康になるという背理があります。そして元
 気な人が長寿を願うと、クスリや手術で命を縮めかねない矛盾があります。医療には、
 健康は人をそれ以上元気にはできないという限界があるのに、医者や人びととは無理を
 重ねています。からだの調節システムが宇宙の法則と一体化した、完璧な仕組みである
 のに、それに気づいていないのです。否、医者は気づかぬフリをしているのでしょう。
・健康長寿を目指すなら、医者と医療を信じるのをやめることです。すべてを疑えという
 のではありません。救命救急医療のように役に立つ医療なら、ある程度医者を信じて身
 をゆだねるしかないでしょう。しかし、元気でご飯がおいしいときには、がんや検査値
 の異常がみつかっても、医者の言うことを信じないほうが確実に長生きできます。
・健康人の体調は、その置かれた環境のもとで、からだが完璧に調節した結果です。もし
 それ以上を目指すなら、生活を見直すしかありません。健康人に対するどのような医療
 も、その健康状態を悪化させる作用しか有しないのです。このように人という存在は、
 命にこだわると寿命が縮むという逆説ないし真理を背負っています。だから健康寿命を
 本気で目指すなら、医療行為の無理や矛盾に想いをいたしましょう。
・がんを含めた検査病は、まさに医者たちの想像と独断がつくりあげた”観念のやまい”
 です。その実質は、各人の個性であるか、せいぜいが老化現象です。それなのに、やま
 いとしての実態があると思ってしまうから、医療の虜になるのです。現代医療の大部分
 は、医者たちと科学技術が築きあげた、壮大な虚構です。
・私たちにとって大切なのは、自由に生きる、なにものにも煩わされずに生きることでは
 ないでしょうか。そのためには死ぬまで、やまいからも解放される必要があるはずです。
 もし人びとが、そのことに気づき、考えを変えれば、多くの病気から今すぐに解放され、
 医者たちの呪縛から逃れることができます。そして、やまいを心配するかわりに、今日
 一日を楽しみ、生きることと、自分を生みだしてくれた宇宙に感謝し、明日への希望を
 心にともしましょう。