家族という病 :下重暁子

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この本の内容は、頷ける部分もあるが、しかし全体的には果たしてどれぐらいの人が賛同
するのかなと思うような内容ではないかと思う。乱暴ないい方をすれば、少し歪んだ特殊
な考えなのではないのかという感じがした。
筆者自身は、自分はこんなにごく普通の階層の人なのだと強調しているが、私から見ると、
やはりある特殊な部類の階層に入る人なんだと思う。だから、こういった家族観を持てる
のだろう。普通の人であれば、普段の生活にまみれて、とてもこのような家族観を持てる
ような気力はないのではと思う。やはり、恵まれた境遇にある人の、ちょっと俗世間から
離れた、なんだかきれい事を並べてたよのうな理想の家族観を持っているから、この本の
ような内容の考えに至るのではないだろうか。ありふれた一般庶民の私には、ちょっと違
和感のある内容の本であった。

ほんとうはみな家族のことを知らない
・いじめや家族内暴力などが報道されると、もっと親子が日頃から話し合っていればとか、
 相談できる雰囲気があればとかいうが、土台無理である。子供は親に心の中をみられま
 いとするし、心配をかけたくないという思いがある。親は子供がどこか変だと気づいて
 も、問いただすことをはばかる。幼い頃は別として、小学校から中学校へと進み、体も
 心も大人になりつつある段階にあっては、子供は親に心の内を素直に見せなくる。反抗
 期は親という身近な権威を乗り越えようとする時期だけに、自分の思いとは正反対のこ
 とすらしてみせる。親から虐待を受けているのになぜ外部に助けを求めないのかと思う
 のだが、そんな子供はかえって、外に向けて親のことは一言も言わなかったり、自分が
 悪いのだと言ってみせたりする。けなげにも、外に向かって家族を守ってみせようとす
 るのだ。
・多くの人達が、家族を知らないうちに、両親や兄弟が何を考え感じているのか確かめぬ
 うちに、別れてしまうのではないかという気がするのだ。私たちは家族を選んで生まれ
 てくることはできない。産声をあげた時には、枠は決まっている。その枠の中で家族を
 演じてみせる。父・母・子供という役割を。家族団らんの名の下に、お互いが、よく知
 ったふりをし、愛し合っていると思い込む。何でも許せる美しい空間。そこでは個は埋
 没し、家族という巨大な生き物と化す。

家族は、むずかしい
・家族といえど違う個人なのだ。個と個の間に摩擦が生じれば、何が起きても不思議はな
 い。大事に至らずとも、親子間の確執や兄弟げんかなど日常茶飯事である。誰かががま
 んをするか、ごまかすかしてその場は何事もなかったかのようにやり過ごしているのが、
 積もり積もれば、大きなしこりとなる。
・女達は、外へ外へと行動しているが、男の姿は少ない。男も同じように相手を求めてい
 るのだろうが、内へ内へとバーチャルな世界に走っている。「おたく」が増えていると
 いうことになるだろうか。
・女性はある年齢になると家を離れ、一人住まいをし、自分で仕事を見つけ、恋人を見つ
 ける。駄目なのは男の方で、いくつになっても家を離れず、母親と一緒にいる。気楽で、
 家事もしてもらえるからなのだろう。男と女の生き方が逆転したようで、男の方が自立
 したがらない。自信がないのか。自分だけの世界を引きこもって安心するのか。「困っ
 たもんだ」と母親は言いながらも、まんざらでもなさそうだ。
・人とうまく付き合えず、恋人もつくれない息子がいとおしいのか、親は放り出すことが
 できない。成人したらよほどの事情がなければ、独立するのが自然である。動物だって
 子供に餌を与えて大切に育て、外敵から保護するが、成長したら、ある日を境に、もう
 面倒を見なくなり、子供は自分で餌を求めて違う縄張りで生きていかねばならない。
 獅子は成長した子を崖から突き落とすという。そうやって心を鬼にして親離れ、子離れ
 していくのに、人間はそれをしなくなった。世の中が厳しいせいではない。お互いもた
 れ合い甘え合い、独り立ちできない親や子が増えているのだ。
・親といつまでも一緒にいる子は考えものである。親離れ、子離れができない家族が多す
 ぎる。原因は子供にあるのではなく、親にある場合が多い。子は、親の姿を見て育つと
 いう。親の心を見抜き、そこに甘えていつまでも独り立ちできない。親が子に甘えてい
 るから、安心してしまうのだ。どんなに心の奥で心配していても、表向きはさりげなく
 遠くから見守っていればいい。心を鬼にすることが必要なのだ。幼い頃は、いくら愛情
 を注いでもいいが、ある年代になったら別人格を認める必要がある。
・日本が戦争に負けたのは私が小学校三年の時、すべての価値が崩壊し、大人が信用出来
 なかった。両親も学校の先生もそれまでと言うことが百八十度違った。敗戦は日本とい
 う国そのものが変わり、違う価値観の下にリセットされるべき大きな節目であった。戦
 時中への反省や間違いへの追及が厳しくされるべきだったのに、日本は基本的に変わら
 なかった。自衛隊と名を変えても、かつての陸海軍をもとにして、使われている曲まで
 昔のままのものがあった。ドイツでは、徹底的に戦争責任は追及され、罪があばかれた
 が、日本では天皇制は維持され、かつての戦犯も国会議員として復活した。  
・大人にとってのいい子など、ろくなものはないと思っている。最近、反抗期のない子供
 が増えているというが、こんなに気持ちの悪いことがあるだろうか。親の権威や大人の
 価値観に支配されたまま、言いなりになっていることは、人としての成長のない証拠で
 ある。 
・学校へ行かないという選択をする家庭もある。名だたる教育者の家に生まれて家庭内で
 教育を受けたり、自由を重んじるため家庭教師だけで育てられたり。私の知人にもそう
 いう過程で育った人がいる。超エリートと呼んでいい家族は、学校教育を批判し、子供
 を自分たちの考え方で育てようとする。その結果、個性的な子供ができるかというと、
 そうとは限らない。他の子供や先生との間で悩んだり、喧嘩したりする部分がないせい
 か、変に大人びた常識人に育ってしまう例も多い。教育とは親が与えるものではなく、
 子供が自分の世界で切磋琢磨してつかみとっていくものではないか。 
・失敗や挫折こそが人を強くする。人はそこで悩んだり考えたりと、自分で出口を模索す
 るからだ。順風満帆できた人ほど、社会に出た後、組織の中でうまくいかないと自殺を
 はかる。ウツになる。結果、不幸な人生を送った例をいくつも見ている。両親がエリー
 トの場合は始末が悪い。自分たちと同じように成績がいいのが当たり前で、小さい時か
 ら塾だ、家庭教師だと遊ぶひまもないゆとりのないこじゃれた小さな大人が増えている。
・過度な期待などしてはいけない。血がつながっているとは言え、違った一個の人格なの
 だ。個性を伸ばすためには、期待で、がんじがらめにしてはいけない。夫や子供に期待
 することも相手をしばることにほかならない。期待通りにならないと、落胆が激しく、
 愚痴や不満だらけになる。自分以外の個に期待してはならない。他の個への期待は落胆
 や愚痴と裏腹なのだ。期待は自分にこそすべきものなのだ。自分にならいくら期待して
 もかまわない。うまくいかなくとも、自分のせいであり、自分に戻ってくる。だから次
 は別の方法で挑む。挫折も落胆も次へのエネルギーになる。
・親の財産は親一代で使い切るのが一番いい。子に余分な期待を持たせてはいけない。子
 供が何人かいる場合には、遺産をめぐる醜い争いが繰り広げられないためにも。せっか
 くの仲の良かった兄弟が、そのために憎み合う間柄になるという例は枚挙にいとまがな
 い。 
・現代社会で大きくのしかかってくるのが、介護の問題である。私のまわりには、そのた
 めに仕事ができない人も多い。親の介護がある場合には、やりたいこともやれず、諦め
 ざるを得ない。介護休暇があるところも少ないし、公的な介護機関も人手不足で行き詰
 まっている。団塊の世代が年をとり、高齢者がいっそう増えようとしている現在、再び
 介護の問題は家族に託されようとしている。 
・いざそうなると人間は誰でも自分の非を認めようとしない。相手の悪いところをあげつ
 らって少しでも有利に事を運ぼうとする。 
・たとえ家族だったことがあるにしても、人は連れ合った配偶者のことをほんとうに理解
 することはできない。死という形で終止符が打たれてはじめてそのことに気づき、もっ
 と話をすればよかったとか、聞いておけばよかったと後悔する。もし生前にそれを実行
 していたとして、どれほど理解が深まるだろうか。自分のことすら正確に把握すること
 もできないでいるのに、他人のことが理解できるか。配偶者は他人なのだ。一番近い家
 族ではあるが他人である。家族は暮らしを共にする他人と考えた方が気楽である。
・「夫婦は一体なり」ということが私にはわからない。暮らしを共にすることがあっても、
 心の中までは踏み込まない。
・ひと組の男女がいて夫婦か恋人かを見分けるコツは、会話のあるなしだという。会話を
 しないではいられないのが恋人。お互い何も言わないのが夫婦だという。恋人の間は、
 少しでも相手のことを知りたいと思うから、話がはずむ。夫婦になると、わかったつも
 りで、話題がなくなる。そして片方がいなくなってはじめて何も知ろうとしなかった、
 もっとわかっておくべきだったと慌てふためく。  
・ぬるま湯のような存在である家族は、ぬるま湯である限り、一般的に幸せということに
 なろうか。なまじお互いのことをもっと知りたいだの理解したいだの思えばしらなくて
 もいいことを知り、きずあとを暴いて不幸になる。その意味で家族は理解などしないの
 が幸せなのだろうか。  

家族という病
・現代人は勇気がない。人目を気にして仲の良い夫婦を演じ、心の通い合わない生活をそ
 のまま続けている。がまんして自分に酔っている人もいる。子供が大きくなるまで、学
 校を卒業するまでは、離婚したくてもしない。そんな夫婦を子供たちはどんな目で見て
 いるだろう。無理をしているのは決して子供のためにはならない。もっと正直に自分の
 意志で決めるべきなのだ。 
・人口減が深刻になり、産むことが急に奨励されるようになった。国というのは勝手なも
 のだとつくづく思う。個人の幸せではなく、国の都合で押し付ける。戦時中「産めよ増
 やせよ」ということがスローガンになっていた。人海戦術でともかく人を増やし、兵隊
 として南方へ中国へと送っていた。女性も銃後の守りとやら、国内で機械や武器を作る
 ことにたずさわされた。命は国の都合で増やさて、国の都合で失われてしまった。
・女性に子供を産んで欲しいと言うわりには、産みやすい環境の整備は後手後手にまわっ
 ている。保育所や保育園は不足しているのが常態化し、子供を預けられない。子供がい
 ても仕事を一人前にすれば昇進の道は開けれいるといわれたところで、絵にかいたモチ
 ではないか。法律上は男もイクメンになるべく整えられても、実際には日本の男達が会
 社を休んで育児をすることは望めない。長年の習慣がそれを拒んでいる。女性が子供を
 持とうとしたら、仕事か育児かの選択を一度は迫られる。女性を登用し、しかも女性に
 子供を産んで欲しいと思うなら、社会環境を整えることが急務だ。
・日本ではあいかわらず、家に関することは女性の手にゆだねられている。家事、育児、
 介護、最近では介護が大きくのしかかって、そこで仕事を辞めねばならぬケースが増
 えてきた。介護の八十パーセントは女性にまかされていて、男はたとえ自分の親であっ
 ても、妻の手を借りざるを得ない。負担は女性にのしかかり、その上で社会的にも活躍
 するとなるとスーパーウーマンにならなければとてもこなすことはできない。 
・女性は子供を生む機械という発言をした男の国会議員がいたが、女性も自分を表現する
 ことで自由な生き方をする権利を持っている。子供の数が減っている現実を前にして、
 女は子供を産むべきという悪しき考え方が戻ってこないように監視する必要がある。   
・子供が欲しくてもできない人がいる。最新医療に頼り、治療をして授かった例もあるが、
 欲しいと思いながらできない人にとっては、「子供を増やす」という国の施策はどんな
 に過酷なことか。 
・子供は何も、自分のDNAを受け継いだ子でなければならないわけではない。DNAが
 受け継がれていなくても、みな同じ子供なのだ。なぜ日本人はDNAにこだわるのか。
 自分の血のつながった子をこの世に残したいという本能的欲求が先祖から累々と続いて
 いるからだろうか。それが血のつながり、イコール家族という考え方に結びついていく。
 血などつながらなくとも、思いでつながっていれば十分ではないか。おもいがつながら
 ないから血に頼るしかないのでは、と皮肉の一つも言いたくなる。 
・家族も独りの集団なのだ。三人、四人、五人、という親、兄弟という家族の一団なので
 はない。自分の家族を思うから余計な期待をしてしまう。それがストレスになり甘えに
 なる。家族の間に日常的に微風を吹かせておきたい。べったりで相手が見えなくなり、
 排他的になるなら、家族ぐらいしんどいものはない。
・孤独に耐えられなければ、家族を理解することはできない。独りを楽しむことができな
 ければ、家族がいても、孤独を楽しむことはできないだろう。独りを知り、孤独感を味
 わうことで初めて相手の気持ちを推しはかることができる。家族に対しても、社会の人
 びとに対しても同じことだ。なぜなら家族は社会の縮図だからである。
 
家族を知る
・家族とはなん何か、個という生き方と家族は相反するのか、家族は、個の生き方の前に
 立ちはだかるものにもなりかねない。  
・国は、家族を礼賛する。戦時中がそうであったように、家族ごとにまとまっていてくれ
 ると治めやすい。地方創生という掛け声はとりもなおさず、管理しやすい家族を各地に
 つくることにほかならない。その意味で、家族とは小型の国家なのである。そうだとす
 ると、小型の国家たる家族は排他的にならざるを得ないのかもしれない。国家が自分の
 国を守るために他の国と戦を交えるように、家族もまた、輪の中の平和と安泰をはかる
 ためには排他的になり、自分だけよければという行動になる。