快老生活の心得  :斎藤茂太

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日本は世界一の長寿国と言われているようだ。昔は「人生50年」と言われていたようで
あるが、今の時代は50歳はまだまだ若造である。しかしながら、いくら寿命が延びたと
いっても、その延びた寿命を充実した日々で過ごせなくては意味がない。病気で寝たきり
状態では、せっかくの長寿も苦痛でしかないと思う。
充実した日々を過ごすための基本となるのは心身の健康である。そして心身の健康を維持
するためには、日々の努力が必要である。若い頃にどんなに健康に自信があった人でも、
老いとともに体にいろいろな不具合が生じてくる。若い頃の体の丈夫さが過信を招き、
「あんな元気だった人が」というケースも多い。
老後の人生を楽しいものにするにはどうすればばいいのか。この本はその心得を説いたも
のである。その基本は、何と言っても「生きがい」を持つことだろう。そのためには、何
事にも好奇心を持ち続けることだ。好奇心が失われれば、生きる気力も失い、何事に対し
ても無頓着になっていく。それが心身ともに老いを早めていくことになるようだ。
そのほかには、経済的にはもちろんではあるが、精神的に自立することが大切なようだ。
もういい大人なんだから、みんな自立しているに決まっているではないか、と思われがち
だが、これが意外と未だに精神的に自立していない大人も多い。これは、「ムラ社会」と
か「集団主義社会」と言われる日本の特性かも知れないが、日本人は外国人に比べて精神
的な自立心が薄いようである。自分の意志を出さずに、つい周りに合わせてしまいがちだ。
あとは、食生活とウォーキングなどの適度な運動となるようだ。
著者は精神科医であり、そして山形県が生んだ「斎藤茂吉」の長男である。作家の北守夫
は著者の弟である。

はじめに
・人間、だれでもたくさんのマイナスを背負って生きています。そのマイナスをマイナス
 のままにしておいては、人間としての進歩がありません。私は、人生でいちばん大事な
 ことの一つが、マイナスをプラスに転化する挑戦だと信じています。

「Let's Begin」のすすめ
・いくら寿命が延びても孤独であったり、寝たきりで毎日を送っていたのではつまらない
 でしょう。
・長いシニアライフに何がいちばん必要かといえば、なにはさておいてもまず「生きがい」
 です。高齢者や定年を迎える人々にとって、「生きがい」はなくてはならないものと言
 えます。
・リタイアして生きがいをなくしてしまう人は、働いて居る時には消極的で非社交的、他
 罰的な生き方をしていることが多いようです。他罰的という表現は耳慣れないかもしれ
 ませんが、要するに自分の思うようにならないことや失敗を、なんでも上司や同僚など
 のまわりの人、会社、社会、政治のせいにしてしまう生き方です。なにかトラブルがあ
 ると、自分のことは棚に上げてなんでもかんでも、自分以外の人やものに責任を転嫁し
 てしまうタイプの人のことです。
・快老生活のとっかかりは、何事にも好奇心をもつことです。好奇心をもてなくなるとい
 うことは、老いが始まった兆候といえます。
 好奇心を失わない人は、年齢に関係なく何歳になっても若々しく瑞々しい心をもってい
 ますし、「痴呆」、いわゆるボケとも無縁ですごすことができます。
・好奇心にとってのいちばんの敵は「ばかばかしい」と思ってしまうことです。いったん
 好奇心をなくしてしまうと、ありとあらゆるものがつまらなくなってきます。心豊かな
 快老人生を望むのであれば、好奇心を宝物として持ち続ける努力を惜しまないことです。
・好奇心とセットで大切なのが、挑戦する心といえます。いたずらに楽を求める生き方は、
 ただ老いを背負い込むだけだと心得てください。何事にも挑戦する心、いい意味での興
 奮を伴う人生が、実は最大の老化対策といえます。
・年を金さねれば重ねるほど、人間というのは何事に対しても、無頓着で、好奇心が失わ
 れ、新しいことを覚えるのが面倒になり、向上心が低下するのは確かです。そうした人
 生最後の危機を乗り切るポイントは、「若いときにやり残したことをやり遂げよう」と
 か「自分の半生を本にしてきちんと残しておこう」といったテーマを持つことです。
・目標さえ持てれば、薄れていた好奇心が甦り、硬化しかかっていた心に柔軟性が戻って
 くるはずです。
・一つのことに打ち込むことで、次々に新たな興味や疑問が湧いてきます。この刺激の繰
 り返しが、切れかけた脳神経細胞を再びつないで、脳が活性化するのです。好奇心が枯
 れない人は、いつまでも気持ちの若さを保ち話題も増えて、自然と人との付き合いの輪
 も広がってきます。
・子供は、自分で楽しみを発見する天才です。どんなつまらいことでも、遊びにして楽し
 んでしまいます。ところが、大人になるにつれて、仕事が生活の多くの部分を住めるよ
 うになり、人間が本来もっている「楽しむ能力」がどんどん頭の隅に追いやられて、い
 つしか休眠状態になってしまうことが多いのです。

「人生を楽しむ生活」のすすめ
・だれもがたやすく自分の夢や希望を叶えられる人生を送れるとはかぎりません。それど
 ころか、自分の目標を叶えられない人生のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。
 それでは、多くの人が不幸かというと、決してそんなことはありません。自分の夢や望
 みを叶えることだけが人生の幸福ではありません。
・人間としての喜びをかみしめることができる幸福が三つあります。「身体と心が結構で
 ある幸福」「家庭の幸福」「適度な財産が満たされている幸福」の三つ幸福です。
・もう一つ大事なことは、何事も完璧を求めないことです。私は「人生80パーセント主
 義」を唱えています。人間どうしても100パーセントを求めてしまいがちです。しか
 し、100パーセントを達成できるのは神様だけです。
・人生のおいて完全を求めないことも、幸福を手に入れる重要な要素です。100パーセ
 ントを求めて生きていたら、その人は人生を終えるその瞬間まで幸福というものを味わ
 うことができないと思います。例えば、給料が自分の望むレベルより低いことに不満を
 持ち転職を繰り返す仕事人生より、給料には多少不満はあるが、会社での人間関係や仕
 事の内容に満足できればよしとする生き方のほうが、日々楽しく送ることができるので
 はないでしょうか。
・100の目標があったとき、そのうち8割を達成することで、「80パーセントも達成
 できたから満足」と思えるのか、それとも、「100に20も足りない」と不満に思う
 かで、長い人生、肉体的にも精神的にもずいぶんと違ってきます。どちらがより幸福感
 を得られる生き方かは、一目瞭然といえます。
・仕事でどんなに実績を積んだとしても、サラリーマンの場合、配置転換になったり、中
 高年というだけでリストラの対象になってしまうご時世です。そうした現実に対して
 「自分はもう不要な人間になってしまったんだ」と悲観するのと、「これはいいチャン
 ス。神様がここらへんで一休みして、今までの人生とこれからのことをじっくり考えろ
 といってくれているんだ」と前向きに考えるのとでは、それ以降の人生が大きく違って
 くるはずです。物事お悲観的にとらえてばかりいると、無意識のうちにうつ病のような
 心の病に逃げ込むことになりかねません。
・人生というのはたとえどれほど苦しい状況におかれようとも、自分なりの希望を見つけ
 出していくことが大切なのです。
・お金は、人間が生み出した素晴らしい知恵です。人間が賢くお金をコントロールしてい
 られる間はいいのですが、お金に振舞わされるようになると幸福どころか、不幸の元に
 なります。
・お金それ自身に幸福を求めようとすると、あるとき思いがけない落とし穴に落ちること
 になりかねません。「適度な財産が満たされている幸福」とは、心豊かな毎日を実現す
 るために、その手段としてお金を上手に使うということです。
・節操をかなぐり捨てて金儲けに走ってしまわないのは、建前があるからです。この建前
 が節操というつっかえ棒になって、欲望に歯止めをかけているのです。建前が人間の品
 性を保っているといってもいいでしょう。
・なにをするときでも「仕方ないからやる」と思ってするより、「とにかく楽しんでやろ
 う」と思ってすることが、人生楽しいに決まっています。特に、会社を退職したり、子
 育てを終えてからは、自分の自由になる時間が溢れているわけですから、「人生の楽し
 みはこれからだ。これから自分のやりたいことをやりたいようにやるぞ」という気持ち
 が大切です。
・自分なりの趣味を一人で楽しんでもいいのですが、趣味でつながった友人、またはライ
 バルをもつことができれば、一層心豊かな人生を送れるというものです。
・笑いのない生活は、無味乾燥で楽しくも面白くもありません。笑うことは脳を刺激して、
 元気にさせる効果があるので、お年寄りの脳の老化防止のトレーニングとして絶好だ
 と思っています。
・私の目には日本人が、生活を楽しんでいるようにはとてもみえません。金銭的にどんな
 に満たされても、人間の心は充足されるものではないことを、ここ半世紀の日本人が身
 をもって証明したといってはいいすぎでしょうか。
・物質的な豊かさだけでなく、生き方それ自体を楽しむ技術を身につけるための「生き方
 イノベーション」とでもいうべきものを、真剣に考えていかないと日本人はつまらない
 人生しか送れない民族の代名詞になってしまうかもしれません。
・人生を楽しむ生き方の最たるものが、趣味であり、その趣味がつながった趣味縁であり、
 ユーモアセンスにあふれたジョークを楽しむ会話や付き合いなのではないでしょうか。
・昭和30年以降の高度経済成長を経て経済大国になる過程で形成されてきた「欲望肥大
 現象」が、日本人の精神的豊かさやゆとりを奪っていったのではないかと思うのです。
 
「反孤独」のすすめ
・かつての日本では、高齢者は「敬老」という言葉が象徴するように家庭的にも社会的に
 も尊敬され、大切にされてきました。ところが、いつの頃からか、「老」という存在が
 軽んじられる「軽老社会」に変わってきてしまったようにみえます。
・年とともに心の柔軟性が失われ、体の免疫力が低下しますから、過度のストレスはもち
 ろん避けるべきです。しかし、生きているかぎりストレスから逃れることはできないの
 ですから、上手に付き合うすべを身につけることが大切になってきます。
・妻や子供、近所の人などとの人間関係では、相手にこちらが期待する100パーセント
 を求めると、失望したり、いらだったり、ギクシャクしてしまいますから、私は60パ
 ーセントくらいしか求めないようにしています。
・中高年になってからの急激な環境の変化は、心身に与える影響が大きいといえます。特
 に、定年退職した直後をどのように乗り切るかが、快老生活を手に入れられるかどうか
 の分かれ目になるといってもいいでしょう。定年退職やリストラがきっかけでうつ病に
 なってしまう人が少なくないのです。そうならないためにも40歳代、50歳代の人は、
 今から快老のためのグランドデザインを考え始めることが大切です。
・厚生省の調査(平成12年)によりますと、65歳以上の高齢者のみで構成される世帯
 の年間所得は329万円で、月額にすると約27万4千円になります。
・定年退職までに少なくとも1000万円、できれば3000万円くらいを貯蓄しておく
 必要がありそうです。 
・比較的収入が安定している40歳半ばくらいから、定年後の自分や夫婦の生き方、どの
 ような老後を送りたいかというグランドデザインを考え、金全面でも備えていくことが
 大事になってきます。
・あきまでもお金は、老後を心豊かに送るための手段にすぎません。死に際して不安や不
 満、欲望が残るとしたら、それはこの世に思い残しがあるからにほかなりません。
・お金や権力を手に入れることばかりに奔走したとしたら、多分、人間というのは満足を
 得られないままこの世を去らなければいけないでしょう。
・多くの財産を手に入れ、人からうらやましがられるような地位に恵まれた人が、幸せで
 充実した生活を送っているかといえば、必ずしもそうとはかぎりません。自分の利益の
 ために人を悲しませたり、傷つけたりするような生き方をしてきた人や、養生を怠り病
 多くの短命などは、人生の悦楽を得られないでしょう。
・人間というのは不思議なもので、あまりに暇すぎると、考えがプラスの方向には向かわ
 ずに、悪いほう悪いほうへと引き込まれるように行なってしまいがちなのです。
・最近では、定年退職後、いくら再就職したいと望んでもそう簡単に次の勤め先がみつけ
 られない状況です。定年退職であればある程度の覚悟や準備もできているでしょうが、
 リストラや会社の倒産による失職となれば、金銭的にも精神的にも準備ができていない
 まま放り出されてしまうということになります。
・なんといってもリストラに遭ったり、定年退職しても、「自分には今までの道(生き方)
 以外のほかの道もある」と、自分自身の生き方に逃げ道を用意しておくことが大切です。
・うつ状態になりやすい人には、一つの典型的な共通項があるといってもいいでしょう。
 それは「真面目人間である」ということです。男性でいえば、会社では模範社員であり、
 家庭ではよきパパ、女性ならよき妻であり母であるような人です。
・人間関係というものは、なんらかの絆があって初めて生まれるものです。社内や仕事の
 中で生まれた人間関係は、同僚とか仕事という絆が切れてしまえば、多少の好意だけで
 はつなぎ止めておくことはできないものなのです。
・会社や仕事とは全く別の人間関係をもつことをおすすめします。
・なんらかの絆がなくては人間関係は成立しません。絆とはおたがいの共通項なのです。
 定年退職した人であれば、会社や仕事以外の共通項をなるべくたくさん持つことが、人
 間関係の輪を広げるポイントになります。

「セカンドラブ」のすすめ
・自分の人生が幸福なものなのか、不幸なのかという問題は、あくまでも本人の主観によ
 るということです。自分が幸福だと思えば幸福で、不幸だと思えば不幸なのです。
・定年退職具の夫や子育てを終えた妻の孤独を、一番身近で支えてくれるのが妻であり、
 夫なのです。
・男性の場合、中高年期にさしあっかると、性的な能力に微妙な変化が起こります。具体
 的には勃起力がそれまでより低下したり、持続できずにすぐに萎えてしまったり、オル
 ガスムスに達するまでに時間がかかったり、いわゆる遅漏ですね。それとは逆に、早漏
 になったりといろいろ大変なのです。
・自分が性的な衰えを自覚すると、男というものはうろたえ、悲観し、果ては絶望してし
 まいます。特に、最近は会社の倒産、リストラと過度のストレスにさらされることが重
 なって、男にとってはよりいっそう厳しい状況といえます。
・男性には本来、攻撃的な制服本能がありますが、防御は苦手です。
・夫を励ますつもりで、「あなた、しっかりしてよ」などと間違っても行ってはいけませ
 ん。
・熟年期に入った夫婦は、性生活に関してお互いに焦らないことがいちばんです。セック
 スというのは、なにもインサートすることだけとか、子どもをつくるための行為という
 ことだけではありません。夫婦としての感情の伝達方法の一つでもあるのです。感情が
 あるかぎり性的な欲求は生まれます。
・ものは考えようです。奥さんが閉経すれば、妊娠の心配から解放されるわけです。さ
 らに、子供たちが独立して夫婦二人の水入らずの生活が始まれば、セックスを十分に楽
 しみ、おたがいの愛情を確認し合う絶好の機会という見方をすればいいのではないでし
 ょうか。
・高齢者の性を「そんな年になってまで、いやらしい」とか「いい年して、恥ずかしい」
 などとタブー視してはいられないのが、高齢社会の現実でしょう。男女とも80歳をす
 ぎてもなお、満足のいく性生活を楽しむ能力があるとの報告があるくらいです。
・セックスをするかどうかは別として、色気をもち続けるということはとても大切なこと
 だと思います。年を重ねても、性的な欲求というか色気はそうそう衰えるものではなく、
 幅広い年代の異性の魅力を理解できるようになるのですから、精神的に深みをましたと
 いうことになるのではないでしょうか。
・高齢者の再婚は、若い人の結婚とは違いやり直しがききにくいですし、その分リスクも
 高いといえます。こと男と女の仲は、ハイリスクだからといって、ハイリターンが保証
 されているわけではないのです。子供たちも、親の再婚には反対したとしても、親が幸
 せになることは望んでいるでしょうから、二人の交際までも反対したり禁止したりする
 ことはないと思います。結婚にこだわらず、不良老年として男女交際を大いに楽しむこ
 とが、快老生活につながるのではないでしょうか。
・人間関係では、離れすぎると親近感が薄れて、関係がギクシャクしやすくなります。そ
 れとは反対に、あまりに近すぎると今度は圧迫感を感じるものです。相手のアラがいろ
 いろ目に付くようになり、そのことを指摘すれば喧嘩になり、気まずくなってしまいま
 す。特に、親子関係では、ともすれば甘えが出やすいですから、離れすぎず、近づきす
 ぎずの関係がいちばんいいと思っています。

「自立」のすすめ
・アメリカの高齢者をみていていちばん感心させられるのが、旺盛な自立心です。年をと
 ったからといって、家族や社会に寄りかかって生きようとするのではなく、健康である
 かぎり一人でも暮らそうとする徹底した姿勢があるのです。
・アメリカの高齢者の4人に3人が、子供や孫との付き合いに関して、「ときどき会って
 食事や会話をするのがよい」と考えています。
・アメリカの高齢者の生き方の基準は、「今、自分にとっていちばん楽しいこと」をする
 ことです。そのことが、「明老」につながっているのではないでしょうか。
・精神力では男性より女性のほうが数段強靭といえます。ではなぜ、女性のほうが精神的
 に強いのかといいますと、女性のほうがうまく「発散」できるからなのです。
・人間というのは、自分としては本当にこうしてほしいという欲求を叶えるために、さま
 ざまなパフォーマンスをしてみせます。その一つがヒステリー病状なのです。女性によ
 り強く現れるのは、女性のほうが男性より外界からの外レスを処理し、消化する能力が
 高いからなのです。発散はヒステリーだけではありません。おじゃべりも発散の一つで
 す。
・女性が一人になっても力強く生きていかれるのに対して、情けないかな男性はだらしな
 いのひと言です。男は後半生に二回、大きな精神的なショックを受けます。一つは定年
 退職などのリタイアです。
・家のなかにくすぶる夫は妻の足を引っ張り、妻はますます夫に冷ややかな視線を投げる
 という光景があっちこっちの家庭で繰り広げられているのが現実のような気がします。
 一般的に、年をとればとるほど夫の妻への依存度は高くなるといいます。それと反比例
 するように、自立してしまった妻は夫から離れる傾向にあります。この中高年夫婦のす
 れ違いからも、女性の自立よりも男性の自立のほうが深刻な問題を抱えていることがう
 かがわせます。夫の自立なくしては、夫と妻の快老夫婦生活は望めないといってもいい
 でしょう。
 
「腹八分目とウォーキング」のすすめ
・若い頃、どんなに健康が自慢であった人でも、40歳をすぎて中年と呼ばれる年代に入
 った頃から、太りだしてくるとか、血圧が少し高くなるとか、コレステロール値が上が
 るとか、糖尿病の疑いがあると診断されるとか、なんらかの病状や病気の一つや二つは
 抱えるようになるものです。50歳、60歳になっても、どこも悪いところがないなど
 と自慢している人は、自分の健康を過信して無理をしたり、重大な病気のサインを見逃
 してしまい、突然、病に襲われる危険性もあるわけです。
・近年の食事の欧米化はそれまでとは違う病気の要因となってしまいました。食事の欧米
 化とは、脂質や糖質のとりすぎです。脂肪の多い食事、ケーキや清涼飲料水などの糖分
 を多く含むものを毎日のように食べたり飲んだりしていると、肥満を招き、やがては高
 血糖による糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病やそれに伴う病状が
 進行して、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる重大な病気を引き起こす危険性が高ま
 ってくるのです。
・日本人の健康状態や意識に目を向けてみると、いくつかの問題点が浮かび上がってきま
 す。平成13年の調査によると、30歳代から60歳代の男性の約3人に1人は肥満だ
 ということです。肥満は、高血圧や糖尿病などのいわゆる生活習慣病の原因となります
 から、これでは30年後、40年後には快老老人がいなくなってしまう危険性さえあり
 ます。
・医療機関などで「あなたは太りすぎですよ」とか「血糖値が高いので食生活に注意して
 ください」などと、肥満、高血糖、高血圧、高脂血を指摘されても、それを自分の健康
 を脅かす脅威と認識している人の割合が、女性の肥満以外では非常に低いことが明らか
 になっています。例えば、糖尿病につながる高血糖と診断された人のなかで、それが自
 分の健康を脅かすと認識しているのは男性でほぼ4人に1人にすぎず、女性に至っては
 8人に1人程度しかいません。肥満、高脂血、高血圧、では30〜45パーセントの人
 しか自分の健康に悪影響を及ぼすと認識していないのです。
・高血圧とか糖尿病というのは、遺伝的な体質が深くかかわっていて、どんなに注意して
 も完全に予防したり、治すことはできません。しかし、そのまま放置していれば、ます
 ます病状は悪化していきます。
・生活習慣病は、治らないからこそ毎日の食事や生活習慣、ときには薬剤でコントロール
 することが大切になってくるのです。いったん高血圧や糖尿病になってしまったら、そ
 れまでの生活を反省し、「一生の友」として上手に付き合っていくことになります。
・おなかのせり出した恰幅のいい体型が「貫禄がある」などといわれたいたのは、もう
 昔々のお話です。今では、こうした体型の人を見たら、「あの人、高血圧、糖尿病、高
 脂血症、あっ、それに痛風もあるかもね。かわいそうに」ということになってしまいま
 す。
・特に、男性に多い肥満のタイプは、脂肪が内臓や腹膜についてしまう「内蔵脂肪型肥満」
 で、お腹がせり出した体型です。肥満すると心臓に負担をかける高血圧になりやすいうえ
 に、このタイプの人は血管の内壁にコレステロールが付着して狭くなる動脈硬化を起こ
 しやすく、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの命にかかわる重大な病気を招く危険性が高
 くなります。さらに、肥満は糖尿病の誘因にもなったり、尿酸が増えてことで風が吹い
 ても激烈な痛みに襲われるという痛風とも無縁ではいられなくなります。
・栄養バランスを無視した減量は、かえって健康を損ねることになります。健康的に減量
 するポイントは、エネルギー、動物性脂肪、糖分を抑えるとともに、たんぱく質やビタ
 ミン・ミネラル、食物繊維を多く含む食品を積極的に食べることです。
・たんぱく質は、私たちの体を構成する筋肉や骨、皮膚などの原料になります。体に抵抗
 力をつけるにはたんぱく質が欠かせません。ビタミン・ミネラルは、食べものを消化・
 吸収したり、糖分や脂肪をエネルギーに変換するときなどに欠かせない栄養素です。ま
 た、体調を整えるなど、結構を維持するための潤滑由としても重要な役割を果たしてい
 ます。
・ビタミンAは体の抵抗力を向上させたり、年をとると衰えがちな皮膚や粘膜を強くして
 くれます。ビタミンB群は糖分や脂肪を効率よくエネルギーに変換するときに重要な働
 きをします。ビタミンCには多様な働きがあることが知られていますが、最近注目され
 ているのが抗がん作用です。また、体の免疫力を高めたり、皮膚の弾力を保つのに必要
 なコラーゲンの生成に欠かせません。ビタミンEは血液循環を改善したり、老化の原因
と いわれる活性酸素の活動を抑制する働きがあります。
・高血圧の予防したり、悪化させないためには塩分の摂取を控えると同時に、カリウムを
 たくさんとるようにすることが大切です。カリウムには、血液中に増えすぎたナトリウ
 ムを体外へ排出する働きがあるのです。カリウムを多く含む主な食品には、じゃがいも、
 いんげん豆、トマト、梨、すいか、ブドウ、オレンジ、パイナップルなどがあります。
・もう一つ注意したいのが、酸性食品とアルカリ性食品のバランスをとることです。現在
 の私たちの食生活では、アルカリ性食品が不足しがちでしから、野菜や海草類、豆類な
 どを毎日食べて、血液をきれいに保つようにしましょう。
・糖尿病それ自体で死ぬことにはなりませんが、病状の悪化に伴う合併症が怖いのです。
 毛細血管の血流が悪くなって眼底出血を起こし失明することもありますし、腎臓の機能
 が低下して腎不全に陥ることもあります。腎不全になると、自力で血液を濾過できなく
 なるので、人工透析を受けなければなりません。そんな状態になったのでは、快老生活
 どころのお話ではなくなってしまいます。また、手足がしびれたり、冷たく感じるなど
 の神経障害を引き起こしたり、感染症や皮膚病にかかりやすくなり、太い動脈に動脈硬
 化を起こすと脳梗塞や心筋梗塞などの命にかかわる病気を合併することになります。事
 実、糖尿病患者の死因のトップは、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患です。
・糖尿病のいちばんの原因は食べ過ぎとそれによる肥満です。特に、ごはんやうどん、餅、
 ケーキなどの甘いお菓子が好きな人は、体に余分な糖質をとりすぎることになるので糖
 尿病を発病しやすくなります。また、運動不足の人は、糖質をエネルギーとして消費し
 ないので、血糖値が上がりやすくなって糖尿病の危険性が高くなります。
・一度、糖尿病になってしまうと、完全に治すことはできません。ですから、血糖値を上
 手にコントロールして糖尿病の進行を抑え、合併症を起こさないようにすることが大切
 になってきます。血糖値をコントロールする基本は、食生活の改善(食事療法)とウォ
 ーキングなどの適度な運動(運動療法)です。それでも、血糖値が上がり合併症が心配
 されるときには、薬物療法を加えて血糖値をコントロールしますが、いずれにしても糖
 尿病の治療は長期戦ですから、根気よく続けることが求められる。
・アルコールの適量というのは、肝臓でのアルコール処理能力に個人差があることから一
 概にはいえないのですが、私たちが提唱している適量は一日に日本酒なら二合以内、ビ
 ールなら大瓶二本、ウイスキーの場合はダブルで二杯までです。週に二日は「休肝日」
 を設けることです。
・酒の適量を示しましたが、これは65歳までの適量と考えてください。年をとるにした
 がって肉などの脂肪分の多い料理を減らしていくのが長生きの基本であるように、アル
 コールも次第に減らしていくようにしましょう。また、社会の第一線を退いた途端にア
 ルコール依存症に陥る人がいますが、たいていは趣味ももたずリタイア後はなにもする
 ことがなくて時間を持て余している人か、奥さんを離婚や死別で失ってしまった人に多
 いようです。ですから、お酒だけが人生の友というのではなく、酒もあまたある楽しみ
 の一つであり、酒を介して人との付き合いを広げていくという生き方を心がけたいもの
 です。
・運動には、有酸素運動と無酸素運動がありますが、健康に向いているのは有酸素運動で
 す。有酸素運動の代表格がウォーキングです。ウォーキングのいいところは、同じ有酸
 素運動であるジョギングに比べて膝や腰への負担が少ないことです。また、それほど激
 しい運動ではありませんが、中高年になってから行うには最適な運動といえます。
・できれば毎日行うのが理想ですが、少なくとも週に4日から5日、1回30分くらいを
 目安にするといいでしょう。ウォーキングはいつでも、どこでも、しかも、お金をかけ
 ずにできるというメリットもあります。
・運動は継続しなくては意味がありませんが、ただ歩くだけでは楽しくないと感じる人も
 決して少なくないはずです。楽しければ、長続きもしません。そこで、一人で歩くので
 はなく、仲間と一緒におしゃべりしながら歩くとか、美術館や博物館巡りといった趣味
 と組み合わせて、ウォーキングということを意識しないでも自然に運動ができるなどの
 工夫をしてはいかがでしょう。