「大人の自転車ライフ」 :疋田 智

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 筆者はTBSのディレクターをやっており、毎日片道12キロの自転車通勤しているという。今住
んでいるところが東京都江東区の新砂というから、私が今住んでいるところと近い。この本の中に出
てくる筆者の通勤経路は私も何度か自転車で走った道路である。筆者は通勤で自転車、私は休日で自
転車と、違いは少しあるが、この本の中に出てきている自転車での効用というのは私も実感している
ところである。特に生活習慣病対策にはかなりの効果があると感じる。私も糖尿病予備軍に仲間入り
をしていたのであるが、年間1000キロ以上自転車で走るようになったら、血糖値が目に見えて下
がり始めた。さらに私はここ10年近く軽度の肝機能障害を患っていたが、それも回復に向かってい
る。ダイエット効果についても半年で約5キロ近く減量できた。
 自転車の効用は健康面だけではない。精神的にもよい。自転車で風を感じながら走ると、とても開
放感を味わうことができ、固く凝っている精神を揉みほぐしてくれる。1年を通して都内を自転車で
走りまわっていると、コンクリート・ジャングルと言われる都内においても、季節感を味わうことが
できる。また、掴みどころのなかった東京の街の全体像がおぼろげながら分かってくる。
 しかし、残念なことに、筆者のいうように日本では、自転車で走る道路環境はよくない。本来、自
転車は車両の一種なので、車道を走るべきなのだが、日本の道路は、自転車で車道を走ることはとて
も怖くて走れない。行政方針でも、自転車は車道ではなく歩道を走るようとになってきている。しか
し、それにともなって人と自転車との事故が増えてきている。環境対策を考える上でも、もっと自転
車が安全に走れる道路環境整備を進め、自転車の利用率をさらに高めていくべきではないかなと感じ
る。

はじめに
 ・自転車そして、自転車的なもの。それは自らの力だけで風を切って進んでいく快感であり、化石
  燃料を一切使わない究極のエコであり、クルマも電車もかなわない突出した都心でのハイスピー
  ドであったりする。だが、その本質は、世の中をこれ以上煩わしいものにさせるのはやめよう、
  よりシンプルに生きていこう、という精神なのではないかと思う。自転車というシンプルな乗り
  物には、人生をちょっぴり楽しくするための何かが確実にある。

第1章 ママチャリに乗って冒険に出かけよう
 ・現在、日本にはおよそ8000万台の自転車があるといわれている。これはオランダやドイツな
  どの自転車先進国に次ぐ数字だ。自転車に乗れないという人も日本には非常に少ない。
 ・首都圏を例にとって考えると、新宿にオフィスがあるとすると、23区内はだいだいすべて15
  キロ圏に入る。都下だと立川まで30キロ程度である。
 ・いわゆる「サイクリング」で、一日無理なく移動できる距離が、だいたい120キロ程度。ママ
  チャリなら40〜60キロ程度だ。
 ・自転車のタイヤにはしっかり空気を入れて走ろう。これは快適なスピードを保つという目的と、
  パンク防止のためだ。だいたい4気圧前後がオススメだ。
 ・のんびりママチャリを運転していても、1時間、2時間と時が経ってくると段々疲れてくるし、
  汗も出てくる。何よりもお尻が痛くなってくる。1時間べダルを漕いだら10分休み。それぐら
  いがちょうどいい。
 ・立川から新宿のオフィスに行くとしても、休憩を含めて2時間半から3時間ぐらいで着けるはず。
 ・身体のどこにも無理な力をかけることなく、適当な心拍数のもとに大量のカロリーを消費する。
  ここが自転車の本当の優れたところなのだ。
 ・自転車が「健康的」であることは多くの医師の一致した意見で、最近では糖尿病患者とその予備
  軍に一番にすすめられるのが、自転車なのだという。一言でいうと、最も合理的に長く続く「エ
  アロビクス(有酸素運動)」というのが、その根拠だ。
 ・人間の身体の中で一番大きな太股の筋肉群を絶えずマイルドに動かし続けること。ある一定の高
  水準に心拍数を保つこと。それが心肺機能を大いに高め、新陳代謝を活発化させる。
 ・一見して、脚をただ回しているだけの運動なのだけれど、実際には、二輪のバランスをとる無意
  識の脳の働きなどが、身体の活性化を大いに促す。おまけに自分の意思だけで、運動負荷を最適
  に調整できるフレキシビリティは、他の運動に較べても、大変有利な特質だと言える。
 ・筋肉や骨、中でも関節に、衝撃などの負荷を与えることが全くない。老若男女、だれにでも出来
  るマイルドな運動。本当にいいことだらけに見えるけど、その通り。実際もいいことばかりだ。
  驚くばかりの自転車なのである。
 ・通常、普通に自転車に乗っていて、自転車は1時間でおよそ300から400キロカロリーを消
  費する。
 ・「自転車は脚が太くなる」という誤解を、まだ時々見聞きすることがある。だが、それはまった
  くの間違いだ。普通の人の普通の自転車では、どんなに長い距離を走っても中野浩一選手や橋本
  聖子選手のような脚にはならない。実際には、むしろ自転車で脚は引き締まる。
 ・自転車ダイエットのいい点は、効率よいカロリー消費もさることながら、心肺機能を高め、新陳
  代謝を促すことで「カロリーを消費しやすい身体」に肉体が改造できる点にある。ここが食餌制
  限その他によるダイエットとの最も大きな違いで、つまりリバウンドしにくい。さらには内臓脂
  肪が効率的に燃える。結果、様々な生活習慣病への予防策ともなるのだ。
 ・日本人の4分の1が患者とも予備軍ともされる糖尿病という病気に関しては、「運動療法」が前
  々から唱えられていた。その中でも「自転車がよい」とされるようになったのは、割合、最近な
  のだそうだ。
 ・高血圧と動脈硬化など循環器系にも、自転車は圧倒的な効果をあらわす。太股の筋肉群がたくさ
  んの酸素を消費してくれるおかげで、循環器系と呼吸器系が活発になる。大量の酸素とエネルギ
  ーを運ぶために、血液が多量に循環し、同時に新しい血液が作られていく。すると血液自体も日
  々更新されていき、質が良くなる。悪玉コレステロール、中性脂肪なども少なくなるそうだ。
 ・タイヤにパンパンに空気を入れ、必然的に接地面積が小さくなると、転がり抵抗がてきめんに低
  減する。1ヶ月に一度ぐらいは空気圧をチェックしたい。4気圧前後が望ましい。欲を言えば5
  気圧程度がご推奨だ。
 ・サドルの高さは、脚を少し曲げた状態で、クランクの下死点になるようにする。この状態でペダ
  ルを回すのが一番力が入る。さらに、サドルを高くすることによって、自転車に乗る姿勢が若干
  前屈みになる。この前傾姿勢が自転車を快適に推進させるための大きな力となる。
 ・自転車の停まり方は、お尻をサドルの前に出して、その上で足を地面につける。これが本来の停
  まり方だ。ちょっと慣れれば何ともない。

第2章 こんなに奥が深いぞ、自転車の世界
 ・ママチャリからの乗り換え、すなわち通常の街乗りを前提としているならば、価格と、実用性な
  どから、ずばりオススメはクロスバイクだろう。値段はリーズナブルだし、フレンドリーだし、
  それでいてそこそこの走りが見込める。

第3章 快適な自転車通勤と自転車生活のために
 ・一番目立った効果が、やはりなんと言っても痩せたことだ。一番ひどいときには84kgあった
  体重が、半年で67kgまでに激減した。現在では少し戻って70kgというところだが、それ
  にしてもこの劇的なダイエット効果には注目せざるを得ない。
 ・同時に健康診断での中性脂肪値、コレステロール値などがすべてC判定からA判定へと覆った。
  また、夜ぐっすりと眠れるようになった。
 ・自転車ツーキストになった私は、すぐに通勤に限らず何でもかんでも自転車ですませてしまうよ
  うになった。実際に雨の日以外には、都内移動に自転車じゃないものを使う意味が感じられなく
  なってしまうのだ。あらゆる移動手段が自転車より遅いし。必然的にクルマを使わなくなる。で、
  思い悩んだ末に、とうとうクルマを手放してしまった。
 ・東京で暮らして20年。だが、この巨大な街は、歩きと電車だけでは、身近と言うには広すぎた。
  ところがその東京と私の隙間を埋めてくれたのが自転車だったというわけだ。これはきっと誰に
  とってもそうなると思う。
 ・駅とその周辺、そしてそれを結ぶ鉄道路線が、それまでの私にとっての東京だった。その点と線
  が自転車によって、すべて連結する。このとらえどころのない大都会が、同じ地べたに張り付い
  ている一つの街だということが分かってくる。色々な発見がある。意外に広い公園、神社仏閣、
  いい感じのカフェ、古本屋、古い味わいを残した小さな商店街、などなど。
 ・さらに、この東京にあっても移り変わる季節が実感できるようになった。都心を自転車で巡ると、
  地下鉄の中や、タクシーの冷暖房の中では実感できなかった、風の流れを感じる。その風の匂い
  が季節によって変わり、意外と多い緑地の色が、目にも季節の訪れを知らせてくれる。
 ・都心の自転車通勤の魅力と言えば、健康、ダイエット、速い、快適、エコ、経済性、などなど色
  んなゴタクが上がってくるわけだが、、まあ、楽しみ方は人それぞれだ。で、その「人それぞれ」
  の部分が、一番クローズアップされてくるのが、「帰りの道草」なのではないかと思うのだ。
 ・きっと自転車通勤の良さは「決まり切った人生を送らない」というところに通じていくのだろう
  と思う。

第4章 自転車と街と未来と
 ・1台の標準的なクルマに乗って人を1人運ぶ場合と、自転車に乗って人1人運ぶ場合の消費エネ
  ルギーにどのぐらいの差があるだろうか。およそ130倍の差だ。
 ・自転車での燃焼効率は、航空機より、人が歩くよりもはるかに優秀なのは勿論のこと、馬や犬や
  バッタが歩くよりも優秀。あるものが移動するに際して、地球上で一番単位重量あたりのエネル
  ギー消費が少ないのは実は自転車なのである。
 ・ドイツ、オランダ、デンマーク、フィンランドなどの北西ヨーロッパを中心とした最先進国で、
  自転車は驚くほど活用されている。
 ・自動車産業は日本の基幹産業だし、その産業のもとに多くの人々が生活している。また、その快
  適性、機動性、パーソナルな空間など、捨てがたいものも多い。地方ではクルマは必需品だし、
  都会、田舎に限らず、運輸関連の自動車はそのまま日本経済の血液だ。さらには、これからの高
  齢化社会を睨むと、ますますクルマの利便性は必要になっていくのかもしれない。クルマなしに
  は現代社会は成り立っていかないのは、あらゆる意味で分かっているのだ。しかしながら、この
  日本においては、それがいささか「行き過ぎ」という状態になっているのも確かなことだろう。
  日本は過度にクルマに依存しすぎている。
 ・自転車には様々な効用がある。人によって、それはダイエットであり、健康であり、マネーセー
  ビングであり、街の情報や季節感だったりするだろう。それらの効用は人に個人的な幸福をもた
  らすものだ。だが、その個人的な幸福の最後の最後に来るのが、地球環境なのではあるまいか。
 ・ヒートアイランド現象も地球温暖化も、人間が快適に過ごせるように、と思った結果の現象だ。
  だが、その「快適」そのものを疑い始めている自分に気づく。快適を追うあまりの悪環境が起き
  ていることに気づく。小さな快適を追い求めるあまり、人は大きな快適をどんどん壊し始めてい
  る。
 ・ヨーロッパ、特に北西部では、中高年男性が自転車の乗るのは、むしろ「自慢すべきこと」のカ
  テゴリーに属する。「環境に気を使う知的階層」というある種の自己満足もさることながら、「わ
  たしはまだこれだけやれるぞ(体力があるぞ)」という意味なのだという。だからオジさんが自
  転車に乗っているのが、あちらこちらで本当に当たり前の風景だ。
 ・日本を含むアジア諸国は、物質的な豊かさを享受するようになってまだ日が浅いから、一言で言
  うと、趣味が成金的なのである。まだまだ「物質的な豊かさ」に満足したい、見せびらかしたい、
  というような意識があって、自転車よりオートバイ、オートバイよりもクルマ、そして「いつか
  クラウン」なんて、価値観が残っているのだ。
 ・ヨーロッパのベストセラーカーが、随分昔から必ず一番小型のクルマであることもそれを物語っ
  ている。だいたいが「クルマで見栄を張る」などという意味が非常に少ない。
 ・アジア諸国の中でそういった成金的価値観から抜け出すのに一番近い位置にいる国はどこかとい
  えば、もちろんのこと、それは日本だ。実際のところ、日本の中で「そんなことにお金を使うな
  んてもったいない」「それよりも別の豊かさを求めたい」という感性の人は増えたと思う。車の
  話で言っても、「ヴィッツ」や「マーチ」「フィット」などの小型車が売上げの上位を占め始め
  た理由は、必ずしも不景気ばかりじゃない。これぐらいでイイじゃない、そんなことで見栄を張
  るのは馬鹿馬鹿しいよ、という人が増えたからだ。
 ・こと自転車行政に関しては「外国では」と言わざるを得ない部分が多々ある。なんとなれば「日
  本は野蛮だ」とする外国からの言葉には、どうしたって正義と整合性があるからだ。だいだい交
  通行政には必ず「弱者優先」という大原則がある。これはどこの国においても共通の黄金律だ。
  歩道というものは、その弱者優先のポリシーを実現させるためにできだ。
 ・そもそも「歩行者の聖域」なのである。ある程度以上のスピードが出て、車輪があるものが歩道
  を通るというのは、それだけですでに間違っているのである。実際に世界広しと言えど、自転車
  が堂々と歩道を走行しているのは日本だけなのだ。