ほんとうの豊かさってなんですか? :池上彰

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この本は、池上彰と「世界でいちばん貧しい大統領」で有名になったウルグアイの前大統
ホセ・ムヒカ氏が「ほんようの豊かさ」について語り合った対談をまとめたものである。
ムヒカ氏いわく「お金があまりに好きな人たちは、政治の世界では危険です。都合がいい
決定がなされるよう、政治に影響力を及ぼそうとする。それが腐敗をもたらす」とのこと
である。
もし、そうであるなら、アメリカの新大領領トランプ氏はどうなのだろう。トランプ氏は、
その立場から都合のいい影響力どころか都合のいい決定を行うことができる立場にいる。
これは非常に危険なことではないのか。
政治の使命は、強者から富を受取り、弱者に分配することなのである。果たして、米国の
トランプ政権は、腐敗政治に陥ることなく、これを実行できるのだろうか。そして、日本
の政治家たちはどうなのだろうか。そしてまた、われわれ日本人は「足るを知る」ことが
できる国民になれるだろうか。


日本人はほんとうに幸せですか?
・人生で大事なのは勝利することではなく、「歩き続ける」ことです。
・人は孤独では生きられない。人間は本質的に群れをなす社会的な生き物であり、人類の
 歴史の9割は、集団の中で起こっている。
・許すこと、過去を乗り越えること、そして異なる意見にオープンであることが大事だ。  
・消費社会の中に囚われているのです。どんどんモノを買って、買った品物のローンを払
 わないといけないから働く。
・もちろん、進歩とはすばらしいものです。私たちはもっと便利でよいものを手に入れよ
 うと、さまざまなものをつくってきました。おかげで、世の中は驚くほど発展しました。
 しかしそれによって、モノをたくさんつくって売ってお金を儲け、儲けたお金欲しいモ
 ノを買い、さらにもっと欲しくなって手に入れようとする。ローンを払って払って払っ
 て、気がつけば、老人になり、人生が終わっていくのです。彼らが悪いのではありませ
 ん。これが消費社会の文化というものです。残念ながら、私たちは働いて使い捨てる文
 明をつくってしまいました。
・現代ほど、人間が多くを所有したことはありません。これほどまでに知識を得たことは
 ありません。百年前に比べて、平均寿命は40年以上伸びました。人口は倍になり、食
 料の量も倍になりました。私たちは生産される食べ物の3分の1を捨て、8億人が飢え
 ています。何かがおかしい。
・何かを買うとき、お金で買っているのではなく、そのお金を得るために費やした時間で
 買っているのです。 
・時間は必要ですが、何のために?子どものため、家族のため、友人のため、人生を楽し
 むため、それならいいでしょう。それとも、もっと働いてもっとお金を稼ぐため?人は
 自由ですから、そうしたい人はそうすればいいのです。でも、後で時間がないことを嘆
 いてはいけません。そのような選択をしたのですから。
・人生はひとつしかなく、過ぎ去ってしまうものだからです。私は人生という時間を大切
 にしたい。自由を楽しむ時間が欲しい。モノは私たちを幸せにしてくれません。幸せは
 男と女とか、親とか子どもとか友だちとか、命あるものしかくれないのです。幸せにし
 てくれるものは生きているもの。
・働くことは必要です。働かない者は、働く人に負担をかけることになるし、仕事は希望
 でもありますから。でも人生とは、ただ働くことではありません。人生とは、自由な時
 間を持って生きる価値のあるものです。
・貧しい者とは、少ししか持っていない人間のことではなく、もっと多くを渇望する人の
 ことを言う。わずかしか持たない者ではなく、際限なく欲しがる人のことだ。
・幸せは富によって得られるものではないということです。わずかなものでも幸せは得ら
 れる。富が幸せをもたらしてくれると考えてはいけません。幸せのために貧しくあるべ
 きだというのでもありません。なぜなら、貧困の悲惨さは幸せを遠ざけるからです。
・もしも豊かであるならば、あるいは比較的豊かな社会に住んでいるならば、これ以上幸
 せになることはありません。消費社会に支配されてはいけません。いつも、「これを買
 え」「あれを買え」と責めたれられていますが、本当に必要な、不可欠なものだけを買
 うようになれば、必要な時間はできるでしょう。もっとも重要なことは勝利することで
 はありません。人生で最も大事なことは歩き続けることです。
・金融資本というものが爆発的に大きくなって、「通貨」というものを元にした生活を大
 きく変えている。お金は現在単純に生産に向かうのではありません。国境や時差を超え
 て投機的に使われている。お金がお金を増やすためだけに使われているのです。人々は
 そのお金に翻弄され、お金を得るために人生を大忙しであっちに行ったりこっちに行っ
 たり動き回っている。
・なぜ経済は存在するのでしょうか?もし、私たちが何もかも豊かにある世界に暮らして
 いたら、経済など必要なかったでしょう。経済は、不足している財を分配するための技
 術、知恵なのです。  
・市場経済は放っておくとますます富を集中させる。格差など社会に生まれた問題を解決
 するには、政治が介入する。公正な社会を目指す、それが政治の役割だと思います。国
 家には社会の強者から富を受け取り、弱者に再分配する義務がある。
・政治における病は、金銭に対する過剰な愛です。お金があまりも好きな人たちには、
 政治の世界から出て行ってもらう必要があります。彼らは政治の世界では危険です。汚
 職の原因になりますから。都合のいい決定がなされるよう、政治に影響力を及ぼそうと
 する人がいる、それが腐敗をもたらすのです。お金が大好きな人は、ビジネスや商売の
 ために身を捧げ、富を増やそうとするものです。しかし政治とは、すべての人の幸福を
 求める闘いなのです。  
・政治家は、世の中の大半の国民と同じ程度の暮らしを送るべきです。一部特権階級のよ
 うな暮らしをし、自らの利益のために政治を動かし始めたら、人々は政治への信頼を失
 ってしまいます。
・私たちは私たちの社会をよくするために闘わなくてはなりません。現実参加することな
 しに眺めていてはいけません。みなさんが、自分が生きる時代の闘争について無関心で
 いれば、みなさんが残すことになる世界は生を駆逐してしまうでしょう。不可能なこと
 は少し骨が折れるものです。しかし、少しずつ物事を変え、よくしていきます。
・人生で重要なのは勝つことではありません。もっとも重要なのは歩み続けること。それ
 は何度転んでも起き上がること。打ち負かされてもやり直す勇気を持つことです。
・資本主義にも問題はあるかもしれないが、成長を促すのもまた資本主義だ。人間による
 人間の搾取には反対です。しかし、資本主義の大きな原動力となっているのは競争によ
 る創造力であることもわかっています。
・資本主義では自由な経済活動が認められているため、それによってお金を儲ける資本家
 が現れ、設けたお金を使って投資をし、労働者を雇う。利益が上がれば再投資し、工場
 をどんどん広げていく。そうした資本家がたくさん生まれてくると、それぞれが競争し、
 少しでも儲けようと売れるものをみんながつくる。激しい金儲け競争の中で同じような
 商品が大量に世の中に出回り、やがて供給が過剰になって売れなくなり不況になる。労
 働者は賃金を下げられたり、解雇されて路頭に迷ったりする。失業者が大勢いると、働
 いている労働者の賃金もまた下げられる。この極めて非人間的な仕組み、それが資本主
 義である。 
  
どうして格差は拡がったか?
・経済は、不足している財を分配するための技術、知恵である。
・かつて日本は「世界で最も成功した社会主義国」といわれました。「一億総中流」とい
 う言葉が社会主義的であったことを表しています。しかしいまや「一億総中流」も死語
 になってしまいました。「下流老人」「老後破産」など、このところ大きな話題になっ
 ているのが高齢者の貧困問題ですが、子どもの貧困も深刻です。子どもの6人に1人が
 貧困といわれています。世帯別ではひとり親世帯の貧困率は54.6%にも上ります。
 もはや「普通」でいることが難しい時代になったのです。
・アメリカでは1%の富裕層が富を独占し、99%の国民が苦しんでいるといわれていま
 す。アメリカンドリームはもうないのです。
・アメリカ社会では、上位1%の富裕層が、国民総所得の23%を占めているそうです。
・今日の国際経済では、企業の本社がどの国にあるかは意味がありません。コンテナ船、
 衛星通信技術、さらにはコンピュータ、インターネットといったテクノロジーは生産プ
 ロセスを世界中に分散させることを可能にしました。たとえば、世界中の人がiPhoneを
 買うと、どこにそのお金の多くが流れていくのか。答えはアップル社のあるアメリカで
 はなく、なんと日本(34%)だというのです。2位がドイツ(17%)です。組み立
 ては中国ですから、中国に世界中から部品が集まりますが、実際に設けているのは日本
 なのです。  
・資本主義は放っておけば格差を生み出していく。だから何らかの形で国家が再分配しな
 ければならない。  
・アメリカの歴史を振り返ってみると、格さと最高税率は反比例の関係になっていること
 がわかります。
・誰にでも説明できる手法で現実を分析するのが「経済学」の役割です。問題点の解決を
 実行に移すのが、「政治」の決断だと考えています。それが政治家の役割ではないでし
 ょうか。
・私たち一人ひとりの力は微力かもしれませんが、無力ではないのです。

日本でも学生が立ち上がった時代があった
・世界の経済を牽引してきたアメリカで、富裕層と貧困層の格差は史上最悪のレベルまで
 広がっています。
・アメリカでは、共和党と民主党で思想こそ右と浸りの対極にいながら、戦っているのは
 同じウォール街です。
・所得格差の拡大は、そのまま教育格差の問題へとつながります。それが貧困の連鎖を生
 みます。 
・日本人が幸せを感じられるようになるために足りないものがあるとすれば、それは「足
 るを知る」という能力でしょう。
・現状に不満があるなら、何か行動を起こしてください。勇気を持って新しいことを提案
 し立ち上げてください。