鈍感力 :渡辺淳一

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鈍感というと「あんた鈍感ね〜」とか言われるように、あまりいい意味では使われない。
しかし、その鈍感さ、つまり「鈍感力」は、この世知辛い時代を生きていく上では、非常
に大切なようである。ある程度の鈍感さがないと、いまの世の中では生きていけない。
ある程度の繊細さも必要であると思うが、それ以上に鈍感さ・図太さは、なくてはならな
いようである。「あんた鈍感ね〜」と言われたら、「そうか俺は鈍感力があるんだ」と喜
んだほうがいいかも。

はじめに
・鈍感力とは、長い人生の途中、苦しいことや辛いこと、さらには失敗することなどいろ
 いろある。そういう気持ちが落ち込むときにもそのまま崩れず、また立ち上がって前に
 向かって明るく進んでいく。そうしたしたたかな力を鈍感力といっているのである。
・鈍感力はどうしたら身につけることができるか。まずはおおらかなお母さまに育てても
 らうことである。最近は、子供の学校の成績から生活態度まで、こと細かく口出しする
 母親が多いようだが、そうした小うるさい母親からは、鈍感力をもった、おおらかな子
 供は育たない。
・子供が多少成績が悪くても、ときに暴れん坊でも、おおらかな目で、ゆったりと見つめ
 て育てることである。さらに望ましいことは、なにかことある毎に子供を褒めてやる。
・いろいろ失敗したり、ミスを犯して叱られることもある。そういうとき、くよくよせず、
 また新しい前に向かって進んでいく。このとき大切なことは、失敗したりミスをしたこ
 とは極力忘れるようにする。
・いい意味での楽天主義が自分の心を前向きにし、したたかな鈍感力を培うことになる。
・今、この未曾有の不景気のときこそ、鈍感力は必要である。まさに今、したたかな鈍感
 力なくして生きていくことは難しい。

ある才能の喪失
・それぞれの世界で、それなりの成功をおさめた人びとは、才能はもちろん、その底に必
 ずいい意味での鈍感力を秘めているものです。鈍感、それはまさしく本来の才能を大き
 く育み、花咲かせる、最大の力です。
・人間が成功するかしないかは、必ずしも才能だけではないということです。いいかえる
 と、才能どおり成功するわけではない、といってもいいでしょう。
・それなりの才能は必要ですが、それを大きく磨いていくのは、したたかで鈍い鈍感力で
 す。 

叱られ続けた名医
・健康であるためにもっとも大切なことは、いつも全身の血がさらさらと流れることです。
 そのためには、あまりくよくよせず、他人に嫌なことを言われても、すぐ忘れる。この
 いい意味での鈍さが、血の流れをスムースに保つ要因になるのです。
・だいたい、年齢をとっても元気な人は、ほとんど他人の話はききません。たまにきいて
 も、「はいはい」ときき流しているだけで、その分、自己中というか、ナルシスティッ
 クです。悪くいうと、自分勝手、ともいえますが、この、あまり他人のいうことを気に
 しない、きかないところが、健康の秘訣でもあるのです。
・要するに、あまりくよくよせず、他人に嫌なことを言われてもすぐ忘れる。このいい意
 味での鈍さが、精神の安定と心地よさにつながり、ひいてはそれが血の流れをスムース
 に保つことにもなるのです。
・健康であるためにもっとも大切なことは、いつも全身の血がさらさらと流れることです。
 そのためには全身の血管がいつも開いていることが必要で、この血管をコントロールし
 ているのが自律神経という神経です。この神経を変に刺戟せず、いつもリラックスさせ
 ておく、これが全身に血がスムースに流れるためにもっとも重要なことです。

血をさらさらと流すために
・血管がいつも開いていて血がさらさらと流れるためには、副交感神経が支配している状
 態にしておくこと、逆にいうと、交感神経が働かない状態にしておくことが必要です。
 それでは、どんな状態が交感神経を緊張させるのか。精神的な緊張や不安、苛々などと
 ともに、不快感や怒り、憎しみ、さらには寒さなどです。これとは逆に、穏やかでリラ
 ックスした状態。たとえば楽しいとき、嬉しいとき、気分が爽やかで笑ったり、さらに
 は周りが温かいときなどに、血管は開きます。
・ストレスのなかにも、いいストレスと悪いストレスがあるのです。しかるべき地位にい
 た人が突然左遷されたり、定年になって退職したような場合、それによって生じた暇を
 楽しく利用できればいいのですが、人によってはその暇な状態が、かえってストレスに
 なることもあります。また、いわゆる窓ぎわ族になって実際は暇なのに、むりして周り
 の人々に忙しそうに見せようと気をつかい、それがさらなるストレスを生み出すことに
 なりかねません。  
・さらに定年になり、もう自分は社会から見捨てられ、不要な人間になったという喪失感。
 そして昔の同僚や部下などから離れた孤独感などで精神的に落ち込む。これも大きなス
 トレスとなって、その人を苛み、弱らせます。定年後、それなりに地位のあった人のほ
 うが急速に弱るのは、こうしたマイナス・ストレスに見舞われるからです。

五感の鈍さ
・人間の五感など、様々な感覚器官において、鋭すぎることはマイナスです。鋭い人より
 鈍い人のほうが、器官を消耗することもなく、よりのんびりとおおらかに、長生きでき
 るのです。

眠れる大人
・よく眠り、すっきりと起きられる。この睡眠力こそ、人間の基本的な能力そのものです。
 睡眠力なくして、人間が健康であり、人を愛し、仕事に専念することはできません。
 よく眠れること、これもまた、まぎれもなく才能なのです。
・睡眠力はすべての健康と活力の源です。睡眠力なくして、人間が健康であり、人を愛し、
 仕事に専念することはできません。
・よく眠ることだけではありません。それと同時に、すっきりと起きられる、覚醒力も必
 要です。
・よく眠ることは素晴らしい、といわれますが、その最大の理由は、眠ることがすべての
 体力の基礎だからです。人間にかぎらずすべての動物は、眠ることによって体力を強め、
 活動する力を獲得します。
・さらに眠りの素晴らしいところは、それによって体力を回復できることです。どんなに
 疲れて、身も心も消耗しきっていても、八時間ないし十時間、昏昏と眠り続けたら、そ
 れ以前と同様の体力を回復することができます。
・眠りたいのに眠れない原因としては、くよくよタイプや、疲れすぎている場合、また睡
 眠薬に頼りすぎ、それに甘えて習慣性になっている人、さらには神経質すぎる人から鬱
 病状の人まで、さまざまなケースがあります。
・眠れないときはどうするか。ひとつは、つまらぬことは考えないことです。「下手の考
 え、休むに似たり」で、くよくよ考えてもどうなるわけでもない。そう割り切って目を
 閉じる。そして、眠れないからといって焦らぬこと。不眠の人の多くは、「眠れないけ
 ど、早く眠らなければ」という強迫観念に悩まされています。それを断ち切るには「眠
 るのはやめよう」と、逆の発想をすることです。

図にのる才能
・子供にはどこかいいところを見つけて、必ず褒めてやるべきです。子供は、甘やかして
 はいけないが、いいところがあったら、すぐに褒めてやるべきです。
・どんなに優秀で才能ある子供でも、また大人でも、「お前は駄目だ」「お前は駄目だ」
 と、毎日いわれたら、本当に駄目で、馬鹿な人間になってしまいます。
・言葉は大切です。一つの言葉が人間を生かしもし、殺しもするのです。そして才能も同
 様です。よく、「誰それには才能があって、誰々には才能がない」などといいますが、
 それは見かけだけからいっていることで、間違いです。才能はあるなし、ではなく、い
 かに引き出されたか否か、の違いです。

鈍い腸をもった男
・環境衛生がすすめばすすむほど雑菌は駆除され、まわりはきれいになりますが、それだ
 け躰の抵抗力が弱まり、わずかの菌の侵入でたちまち発病することになりまねません。
 一般的には、周囲を清潔にし、無菌的にすればするほど病気はなくなると考えられてい
 て、事実そうなのですが、実際には、きれいになったらなったで、そういう状態で繁殖
 する菌やウイルスが現れてきます。要するに、環境衛生と病気は常に追いかけっこをし
 ていて、とどまるところがありません。こう考えると、環境衛生もあまり神経質になら
 ず、ほどほどのところで手を打ったほうが無難なのかもしれません。

愛の女神を射止めるために
・恋愛においても、まさに欠かせないのが鈍感力です。男が女を口説くとき、鈍感である
 ことは有力な武器となります。誠実さと鈍感力、この二つがあれば、まさに鬼に金棒。
 愛の女神はこのような、鈍感力なくして、ゲットすることはできません。
・とにかく、恋愛はまず心と心のせめぎ合いで、必ずしも論理や理屈ではない。このあた
 りが恋愛の妖しく、もっとも難しいところでもあるのです。
・まず忘れてならないのは、男と女はまったく違う生きものだ、ということです。
・男と女は基本的に違う生きもので、とくに肉体の原点が違うのです。それだけにただ話
 せばわかる、というものではなりません。
・恋愛において、男はあくませせっかちです。ふと、いい女を見つけると、男はたちまち
 興味を抱き、接近したくなり、数回、お茶を飲んだだけで、すぐに躰を欲しくなります。
 とにかくこらえ性がないのです。でも、女性を口説くのに焦りは禁物です。あわせてて
 は、せっかくの美女にも逃げられてしまいます。
・はっきりいって、女性は逃げるものなのです。たとえ相手に好意を抱いていても、一度
 や二度で許すことは、まずありません。何度か会い、食事をしたり話をしながら、女性
 は男の誠意やその実態を探っているのです。この人なら心を、そして躰をゆるしてもい
 いだろうか、ゆっくりと瀬踏みし、テストをしているのです。
・焦らず、ゆっくり迫っていく。この忍耐力の原動力になるのが鈍感力です。
・よきハンターは断られても、また誘い、愛を訴える。この粘りと図々しさがなければ、
 美しい獲物を手にすることはできません。ここで必要になってくるのが、一度や二度、
 あるいは三度、断られてもへこたれない精神力です。
・彼女を部屋に誘ったとき、男の部屋があまりにきちんと整理、整頓されていては、彼女
 のほうが緊張します。逆に部屋の中が雑然として、少し汚れているような、そんな男く
 さい、ある意味で、だらしない気配を感じたほうが、女性は安心して気が楽になります。

結婚生活を維持するために
・結婚は裏を返せば、長い長い忍耐の道のりでもあるのです。よく、結婚の幸せを口にし
 たり、老後しみじみ「あなたと一緒でよかった」などといいますが、それは長い長い忍
 耐を経てきた結果のつぶやきなのです。

ガンに強くなるために
・異常に自律神経を刺戟しないことが、ガンを発生させないもとで、ひいてはそれがガン
 の予防にもなる、というわけです。
・ナイーヴで神経質な人のほうがガンにかかりやすいことは明白です。
・あまり細かなことは気にしない、おおらかな親の下で育てられると、その子もおおらか
 な性格になり、ガンになる確率は低くなる。
・総体的には鈍感力を発揮し、おおらかにのんびり生きていけば、ガンにかかりにくい、
 そしてそれがそのままガンの予防にもなる、というわけです。

女性の強さ
・一般に、人体の総血液量は体重の十二分の一、といわれています。たとえば体重六十キ
 ロの人は、十二分の一の五キロ、約五○○ccの血液のうちの三分の一が出ると、死亡す
 るといわれています。ところが、これが必ずしもそうではないのです。
・女性は出血には強い。たしかに教科書には三分の一、出血したら死ぬ、と書いてるけど、
 教科書どおり死ぬのは男だけだ。
・男は精神力で耐えようとしますが、その文だけ弱く、これに対して、女性は生理的に、
 本当の底深い痛みには意外に強いのです。とくに女性の場合は暗示や誘導が効果的で、
 「絶対に大丈夫ですからね、安心してください」と言葉や雰囲気で安心させると、かな
 りの痛みにも耐えてくれます。
・一般に、胆石や腎臓結石の痛み、そして陣痛の痛み、さらに痔疾の痛みを三大疼痛とい
 いますが、こうした痛みに対しては、女性のほうが圧倒的に強い。
・女性は出血に強い、寒さに強い、痛みに強い。この三つの特性は、神様が、女性たちだ
 けに与えられた能力でもあるのです。かつて妊娠や出産は、いまのように安全なもので
 はありませんでした。近代医学が一般化するまでは、妊娠や出産で命を落とす女性は相
 当数に達しました。まさに出産は、産む母親にも産み落とされる子供にとっても命がけ
 の難事でした。  
・男はもはや不要な存在です。たしかに男性なくして子供は生まれませんが、その役割は
 セックスをし、射精をした時点で終わるのです。そのあと十ヵ月におよぶ妊娠期間と出
 産は、すべて女性の躰にゆだねられているのです。

嫉妬や皮肉に感謝
・多くの場合、男はさっぱりとして、他人を妬むようなことはあまりないと思われていま
 すが、実際はそんなことはありません。たしかに男は、男女関係では女性ほど嫉妬深く
 ないかもしれませんが、こと仕事や会社での地位の問題になると意外と嫉妬深く、その
 陰湿さは女性のそれに勝るとも劣りません。 
・自分が嫉妬や中傷された場合は、まず相手を無視することです。だいたい嫉妬や中傷を
 する場合、するほうは、されるほうより状況が悪い人のほうが多いのです。
・皮肉など気にせずに、堂々と自己の信条を通す人には敵わず、みな一歩ゆずり、気がつ
 くと百歩ゆずってしまうのです。まわりの目や些細な噂など気にせず敢然といく。たと
 え皮肉がきこえても、「われ関せず」とばかり、堂々と突き進む。この鈍感力こそ、大
 きな斬新なことを成し遂げる原点でもあるのです。

恋愛力とは?
・愛し合っている二人にとって、もっとも必要なのは鈍感力である。
・ひと組のカップルが運良く恋人状態となり、いよいよ結婚にすすもうか、それとも、も
 う少し恋愛状態を楽しもうか。このあたりから、敏感力と同時に鈍感力も必要となって
 きます。
・相手が好きで、恋愛関係を続けたいと願いなら、どこかで相手を許す度量も必要になる。
 なにごとも潔癖に厳しく問い詰めていったら、ともに息苦しくなり、二人のあいだは早
 々に崩壊してしまう。はっきりいって、男と女は同じ生きものではないのです。感情は
 ともかく、躰や生理の面では、まったく違った生きものです。この二人がいつまでも仲
 良く、愛し合っていくためには、ある程度相手を許して、鈍くなる。この鈍感力こそ、
 恋愛を長続きさせる恋愛力でもあるのです。
 
会社で生き抜くために
・人間の好き嫌いや、我慢できるできないの範囲はばらばらで、千差万別なことがよくわ
 かってきます。そして、これらの好き嫌いの感情がひしめき合い、うごめきあっている
 のが職場です。そこでは、みなが嫌いなものは徐々に、ゆっくりと遠ざけられますが、
 なかにはそれは平然とまかり通っているところもないわけではありません。またみなが
 不快に思っても、改られないものも少なくありません。では、こういう集団のなかでど
 ういう人が快適に仕事をし、明るく生き残っていけるか。ここで、絶対に必要になって
 くるのが鈍感力です。
・さまざまな不快さを無視して、明るくおおらかに生きていけるかどうか。こうした鈍感
 力を身につけた人だけが、集団のなかで逞しく勝ち残っていけるのです。 

母性愛、この偉大なる鈍感力
・人前で乳房を見せる女性なぞ、まず見かけることはありません。かなり軽率な女性でも、
 海辺でさえ水着のブラジャーは着けています。それが授乳のためなら、多少、人目があ
 っても平気で胸をさらす。これを鈍感力といわれなくて、なんといえばいいのでしょう。
 やはり母親になったという自信と自覚が鈍感力を身につけさせ、それを平気にさせたと
 考えるよりありません。
・要するに、どんな女性も母親になると鈍感になる。いや、鈍感力を身につけなければ子
 供を育てることはできない、というべきでしょう。
・多くの人には気になり、耐え難い子供の泣き声が、母親にはさほどの騒音とも不快な泣
 き声ともきこえない。この無神経さ、鈍感さは、母親だけに与えられた能力であり、逞
 しさです。
・夫たちは、「俺は明日、会社があるから、他の部屋で寝る」と、会社のせいにしますが、
 それは泣き声とともに休めるだけの、鈍感力に欠けているからです。
・自分のお腹を痛めて産んだ子供がやることはすべて愛おしくで、許せる。この許せる気
 持ちそのものが、まさしく鈍感力を生み出す原点になるのです。そして母親は、汚い状
 態に鈍感になるのではなく、愛する子供の汚さに限って、鈍感になれるのです。
・これらのなかでももっとも強く偉大なものは、罪を犯した我が子を許す母親の偉大さで
 す。一般に、小さな喧嘩から泥棒、果ては殺人まで、それらを犯した人間に対して、す
 べての人は憎み、許しません。犯罪者として激しく非難し、厳罰を求めます。これら四
 面楚歌の犯罪者に対して、唯一、心から救いの手を差しのべられるのは、母親です。