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筆者は、かなりの高齢なのに、その精神は未だに若々しく、まさに青春真っ盛りというよ
うな感じである。自分のことを「ヤクザな女」と言いう、その何ものにも縛られない自由
な精神は、尊敬に値するものといえるだろう。
「もうレールから降りてしまっているので、横並びで比較されることがない」というのは、
定年後の人たちの特権とも言えるものだろう。それまでの窮屈な人生にさよならをして、
これからは自由気ままに、自分が楽しいと思えることに全精力を向けて行けばいいのだか
ら、まさに人生の黄金期と言えるのではないか。それを、いままでの人生と同じように、
ちまちまと過ごすのは、なんともったいないことか。そんな思いもさせられる。
高齢になっても、そんなに若々しくいられる源は、やはりその好奇心の旺盛さだろう。若
いときのようにはいかないが、とにかく少しずつ新しいことを吸収し続けること。そして、
大切なのは他人と比較しないこと。昨日の自分と今日の自分を比較すること。昨日より今
日の自分は、少し進歩したんだという満足感が、新たな意欲を生み出していく。
ノルマを課さないことも重要だ。ノルマを課すと、それが義務になる。義務になると、だ
んだん辛くなる。義務でやると集中力も落ちてしまう。そして最後には止めてしまう。そ
うなっては元も子もない。
基本は、楽しむことなのだ。それをやっていれば楽しい。そう思えることをやる。楽しい
と思えなくなったら、さっさとやめてしまう。その代わり、新しいことを始めればいいの
だ。そうしているうちに、いつかほんとうに自分に合ったことが、見つかるかもしれない。
見つからなくてもいいではないか。基本は楽しむことだから。そのとき楽しいと思えたら
それでいいのだ。せっかく生まれてきたこのいのち、楽しまなければもったいない。

ところで、この本で、山形県高畠町にある「高畠熱中小学校」について紹介している。
これは廃校になった小学校校舎を利用した大人の学びの活動だ。私は、この本を読んで初
めて知ったのだが、これは、いまの時代に合ったすばらしい取り組みだと思う。今では全
国で展開されているという。これからもどんどん広がっていってほしいものだ。


はじめに
・今の世の中、やたらと動きが激しいですから、若いときに学んだことのなかには、もう
 陳腐化してしまった知識もあると思います。
・「独学」とは、勉強する本人が主体性を持って、自分で「なにを学ぶか」「どのように
 して学ぶか」を決めて勉強することなのです。 
・人間誰しも、楽しいことは長続きします。まずは「あなたが学んでみたかったこと」
 「あなたにとって楽しいこと」から始めてごらんになってはいかがでしょうか。 
・私は今、世界最高齢プログラマーなどといってにわかに注目を集めるようになりました
 が、プログラミングを学び始めたのは80歳を過ぎてから。高校を卒業してから60歳
 で退職するまで銀行員として働きました。 
・「趣味がない」「やりたいことがない」なんてしょんぼりしなくて大丈夫。やりたいこ
 とはきっと見つかります。 
 
バンジージャンプじゃあるまいし、こわがらずに飛び込んでみよう!
・私が「独学」としてまっさきに思い浮かべるのは、海外旅行です。旅行は本当に多くの
 ことを教えてくれるものです。いったことのないところへの旅行は、すべてが初体験。
 あらゆることが刺激になります。 
・社会人を成長させるのは「人・本・旅」だと言われています。
・旅がいいのは、なんてたって新しい環境に飛び込んで、たくさん失敗できること。失敗
 なんてしたくない?そんなこといわないでください。失敗は、成功の何倍もの学びをも
 たらしてくれるものです。避けていちゃもったいない。
・人生は、挫折があるからこそ、多面的で奥深いものになる。大人になって致命的な挫折
 を経験するよりも、子どものうちから少しずつ失敗を積み重ねていったほうが、私はい
 いと思います。  
・新しいことにチェレンジするのは、こわいこと。それもわかります。でも飛び込んでみ
 るったって、バンジージャンプみたいに物理的に飛び込むわけじゃありません。失敗し
 たら死ぬ、というものではないんです。飛び込んだ先には、見たこともない世界や、体
 験したこともない出来事が待っています。そして、そこにいる人たちはきっとあなたが
 困っていたら助けてくれるはずです。 

飽きたらやめちゃえ
・なにかを習う、学ぶということは、始める前より確実に知識が豊富になるということ。
 うまくならなかったとしても、得るものはあるんです。だからこそ、とりあえず「楽し
 そう」と思ったことには飛びついていきましょう。お金にならない「道楽」でいいんで
 す。やってみて楽しければ、それがきっと正解です。 
・私がピアノを習い始めたのは、75歳から、じつは子どもの頃からピアノに憧れていた
 んです。当時、ピアノを習っているお友達が何人かいて、「私も弾いてみたい」と思っ
 ていました。でも、そんな折、戦争が始まってしまったのです。日本が第二次世界大戦
 に参戦したのは、1941年。私が6歳のときです。ちょうど、戦争と小学校時代が重
 なってしまい、ピアノなんて悠長なことをいっている場合じゃなくなりました。
・戦争が終わってからも、なかなか時間に余裕ができずそのまま社会人に。そして、仕事
 に、旅行にと忙しくしているうちに、母親の介護が始まりました。母が亡くなってから、
 初めてたっぷり自分の時間が持てるようになり、「そうだ、ピアノを習おう」と改めて
 思ったんです。 
・若い頃やっていて、やめてしまったことをまた始める、というのもありだと思います。
 楽しかったけど、なんらかの事情でやめてしまった。それを始めるのは、一から始める
 よりハードルが低いもの。当時は「なんの役にも立たなかった」と思った習い事でも、
 蒔いておいて種が芽を出すように、あとから花を咲かせるかもしれませんよ。 
・パソコンの使い方を学んだこと。これは少しはものになっているといえるかもしれませ
 ん。初めはともかく、「ネット」が使いたいという一心で、パソコンを買いました。私
 は当時、50代の終り頃でした。退職後には、90代の母を自宅で介護することが決ま
 っていたので、外に出て人と会う機会が減ってしまうことおそれていました。 
・パソコンは、私にとって少しハードルの高い存在でした。それまで、会社でコンピュー
 ターを操作したことはなかったんです。パソコンはまだ一般に普及する前でした。しか
 も、当時のパソコンは高価なもの。周辺機器も含めると、40万円ほどしたでしょうか。
 それでも、やっぱりやってみたかったので、「えいや!」と買ってしまいました。もう、
 あとにはひけません。 
・シニア向けのささやかなパソコン教室でも、私はぜひみなさんに「エクセル」を知って
 もらいたいと思いました。シニア向けの講座ではよく、「家計簿をつける」「自分の血
 圧の数値を入力してグラフにする」といったことが教えられていました。しかし、その
 作業がおもしろいかといわれると・・・。そこでふと、「エクセルで図案を描いたらど
 うだろう」と思いつきました。エクセルには、表を見やすくするために、セルに色をつ
 けたり、罫線を強調したりする機能があります。この、脇役ともいうべき機能を主役に
 して、図案を描こうと思ったのです。名付けて「エクセルアート」です。 
・あくまで私は「手芸」のような感覚でエクセルを楽しめたらいいな、と思っており、デ
 ザイン感覚でエクセルアートを続けています。エクセルだと、繰り返しの模様を作るの
 がとても簡単。なので、花鳥風月や日本古来の文様をヒントにした図案などを作ってい
 ます。 
・退職したから「好きなことをやっていいですよ」といわれると、戸惑ってしまう人もい
 るでしょう。「趣味といえるものはないし、やりたいことも特にない」という方も多い
 かもしれません。私はいつでもやりたいことがありすぎて、時間が足りないと思って生
 きてきました。でも、そういうひとなかりではないのもわかります。 
・日常の中での散歩でもいいし。お料理でもいい。だらだらとテレビを見るのも楽しい、
 でもいいんです。どんな番組でもいいわけではないはずで、そこにはきっとなにか興味
 の種が隠れているはず。その部分をもとに、もう少し枝を伸ばしてみてはいかがでしょ
 う。 
・時代劇を見るのが好きなら、時代小説や歴史の本を読むのもいいし、歴史の舞台となっ
 た場所に足を運ぶのも楽しいはずです。全国のお城をスタンプラリー感覚でめぐってい
 くのもいいですね。そうした、自分の心のアンテナが反応する方向を探していくと、独
 学のヒントが見つかるかもしれません。 
・最近はまっているのは、数学を勉強し直すことです。中学3年分を復讐できる。大人の
 やり直しのための参考書を買って、少しずつ読み進めています。やはり、プログラミン
 グの基礎になるのは数学ですから、もう少しちゃんと勉強したくなったのです。 
・「わからない」「つまらない」と思ったらもうその日は本を読むのをやめてしまいます。
 それでも、少しずつ学べているからいいのです。 
・吉田兼好さんは、芸事を身につけようとする人は、よく「うまくならないうちは人に知
 られないようにしよう。裏で練習してうまくなってから人前に出よう」と思いがち。で
 もそういう人は、なんの芸も見につかない」とズバッと書いています。「不完全な頃か
 ら、うまい人の中に混じって、けなされたり笑われたりしても恥じないで平然と稽古す
 るひとは、最終的には名人の境地にいたる」と。まさに、今にも通じる教えだと思いま
 す。
・まだ未熟であっても、どんどん人前に出て、やってみることが上達への近道。新しいこ
 とを習うときは、恥の意識や見栄は捨て、かっこつけずにいきましょう! 
 
英語は「大阪人」のノリで
・「みなさん、ご一緒に」の国では、良くも悪くもひとさまと違ったことをしてはいけな
 い、という雰囲気があります。「なにか言われても平気。自分なりでやるからいいわ」
 と開き直るしかないですね。 
 
ノルマを課しちゃダメ
・なにかを勉強するとなると、「1日3ページは進めよう」「週に3時間はやろう」など
 と、まずノルマを決めようとする人がいます。でも私、それはあまり意味がないと思う
 んです。ノルマを決めた時点でそれは義務になる。やりたくなくても、ノルマがあるか
 らやらなければ、と思うようになります。そうやって嫌々やっているうちに、せっかく
 好きで始めたことでも、嫌いになってしまうかもしれません。もったいないことです。 
・ノルマを決めなくたって、やりたい気持ちがあれば自然に手をつけれるはず。無理矢理
 自分を追い込まなければやらないようなことは、そもそもあなたがやるべきことではな
 いかもしれません。
・日本では、厳しく自分を追い込んで達成することが偉い、とみなされる風潮があります。
 努力信仰といってもいいでしょう。これは、スポーツの世界に蔓延する根性論にもつな
 がります。おそらく、「苦しい思いをしたほうが成長する」という考えが根底にあった
 のでしょう。 
・無駄な努力を尊ぶのは、やめましょう。それは結局、「竹槍精神」をひきずっているの
 です。竹槍では近代兵器に勝てません。精神力だけで突破できるという考えは、危険だ
 と思います。 
・体や心の健康を害してまでやらなければならないことなんて、ないんです。楽しく、そ
 して効率よく。そのほうが、結果的には成果を出せる。怠けているわけではないんです。
 楽しく効率よく上達する方法を考えるほうが、よっぽど大変で創意工夫が必要なのです
 から。 
・「どんなことでも必死に頑張ればできる」なんてことはありません。限界があります。
 ある程度のところで見極めて、その虚しい努力から撤退し、他の「自分に向いた世界」
 に転身することは、決して恥ずかしいことではありません。 
・ノルマと近しいものが、スケジュールです。自分で立てたスケジュールに縛られて、
 「次はあれをやらなきゃ」と追われて過ごすのは、本末転倒。そんなことは続きません。
・日々の生活の中で、「これだけは必ずやる」などと決めていることがないんです。自由
 気ままに、独居生活を謳歌しています。できるときに、やりたいことをやる。それが、
 体と心の健康に一番いいのだと思います。  
・ノルハはなくてもいいけれど、やりたいことの目的は決めておきましょうか。「なんの
 ためにやるか」ということを、考えておくんです。それは思い浮かべると、あなたの心
 がワクワクすることにしましょう。 
・ノルマを設定したがるのは、「社会通念的にこうあるべき」という考え方が強い人のよ
 うな気がします。レールに乗っかっていたほうが安心、というタイプ。よくいうとまじ
 め、悪くいうと融通がきかない、といった感じでしょうか。 
・さらに、私は結婚していません。もうこの時点で「ヤクザな女」なんです。この「ヤク
 ザ」といういい方は、友人が使っていた言葉で、気に入ったので私も使っています。本
 当のヤクザということではないんですよ。アウトサイダー的な生き方を選択している自
 分たちを、少し自虐的に、でもおもしろく表現したのが「ヤクザ」です。
・ヤクザは気が楽なんです。もうレールからおりてしまっているので、横並びで比較され
 ることがない。 
・今は、子持ち専業主婦という「アタギ」の人のほうが少ないんじゃないかしら。結婚し
 ない人も増えましたし、離婚も事実婚も珍しくありません。家族のあり方は多様になっ
 てきています。 
・「独居老人」という言葉は「孤独死」とセットでなんだか恐ろしいもののように捉えら
 れています。だから結婚しなければ、家族を持たなければと、追い詰められている人も
 いるのではないでしょうか。 
・でも私くらいの歳になると、結婚したけれど配偶者が亡くなってしまい、また一人にな
 ったという人もたくさんいます。そうすると結婚経験があろうとなかろうと、独居老人
 になる。 
・独居と孤独はイコールではない。私は独居でも、まったくさびしくありません。むしろ、
 もっと一人の時間がほしいくらい。「独居老人」になることをむやみに怖がらなくても
 いいんですよ。 
 
「やりたいこと」の見つけ方、お教えいたします
・私がお雛さまを並べるゲームを作ろうとした発端は、シニアでも楽しめるようなアプリ
 ゲームがなかったから。最初は、自作する気はさらさらありませんでした。だから震災
 の支援活動で出会ったプログラマーのお友達に、「シニア向けのゲームを作ってくださ
 い」とお願いしたのです。でもそのお友達の答えは「自分で作ったら、超話題になりま
 すよ」だったんです。それなら仕方がない、と宮城県に住むそのお友達に遠隔授業で教
 えていただきながら、アプリを完成させていきました。 
・自分の仕事の知識なんて、リタイアしてしまったらもう必要ない。そんなふうに思って
 おられるのであれば、少しまわりに目を向けてみてください。きっと、その知識を生か
 せる場があるはずです。 
・「熱中小学校」という取り組みをご存じですか?熱中小学校は、「もう一度7歳の目で
 世界を・・・」というコンセプトを掲げ、廃校や空き施設を利用し、大人の出会いと学
 びを提供する場です。山形県の高畠町にある小学校の校舎から始まり、今では北海道あ
 ら九州、さらには海外まで、12の地域に拠点があります。 
・この学校にはIT企業の社長や大学教授、デザイナー、エンジニアなどさまざまな人が
「先生」としてきてくださっています。人を育てるだけでなく、人をつなげ、そこから新
 規事業などを立ち上げ、地域活性化につなげる目的もあります。現地のみなさんは、地
 域おこしのためにものすごく頑張っていらっしゃるんです。 
・大規模な取り組みでなくても、地域に貢献することはできます。たとえば、「子ども食
 堂」のお手伝いをすること。子ども食堂は、地域住民や自治体が主体となって、子ども
 たちに食事を提供するコミュニティーの場です。今は全国に2300か所ほどありどん
 どん増えています。朝ごはんや晩ごはんを当たり前に食べることができない子どもたち
 に、無料または数百円で食事を出しているんです。これも、地域密着の活動です。
・探してみると、退職後の活動の場はいろいろ見つかると思います。最初のきっかけは
 「近所に拠点があったから」「町内会長さんに誘われたから」といったことでもいい。
 やっているうつに「もっとITのことが知りたい」「子どもの貧困問題を解決したい」
 と、やりたいことが生まれてくるかもしれません。
・そうしたら、改めて勉強するのです。好々爺大学でやらされていた頃の勉強とは違い、
 自分の興味から学ぶこと。それは本物の「独学」になりえます。学ぶということは、机
 に向かっていなくてもできます。こういう活動の中からでしか学べないこともたくさん
 あります。 
   
ちょっと待った!自分史を書くのはまだ早い
・これから「人生100年時代」がくるといわれています。昔の人に比べて、体も健康で
 すし、社会状況もよくなっている。平均寿命が、男性は81歳、女性が87歳まで延び
 ているのです。60歳で引退なんて時代は、もはや遠くなりました。 
・もし、どうしても自分史を書きたいのであれば、自費出版するなんてことは考えず、ネ
 ット上に書きましょう。今は手軽に文章を書き残せるブログサービスがいろいろありま
 す。 
・その際に気をつけることは、自慢話をずらずら書かないこと。昔とった杵柄についてで
 はなく、自分の若い頃の社会状況や習俗、仕事について書けば、それは立派な歴史資料
 になります。ネットで文章を書いているのは若い人が多いので、高齢者の書き手は貴重
 だと注目を集めるかもしれません。自慢話は読者をウンザリさせますが、失敗談は貴重
 です。喜ばれます。 
・過去を振り返って一気に書くのではなく、日々少しずつ書き溜めていったものが、結果
 的に自分史になる。それが、これからの自分史の形かなと思います。
・何歳からでも、人生は変わる可能性があるんです。だから、とにかく今を楽しく充実さ
 せることが一番大事なのだと思います。  
・お年寄りになると、できることも少なくなり、誰からも必要とされていないのではとい
 う不安にかられることがあります。年をとるということは、日々なにかを失っていくと
 いうこと。髪の毛が抜け、歯が抜ける。耳が遠くなり、目もかすんでくる。親はもうと
 っくにこの世を去り、同世代の友人も一人、また一人といなくなる。いろいろなものが、
 自分から離れていきます。 
・そのさびしさに飲み込まれてしまわないように、なにをすればいいのでしょう。私は、
 獲得体験を増やすことだと思います。昨日できなかったことが、今日はできるようにな
 る。それはやはり楽しいことです。 やったことのない趣味を始める、お友達を作る、
 といったことができたら最高ですね。 
・大事なことなのですが、人と比べるのはやめましょう。それよりは、前の自分と比べて
 みる。前より少しでも進歩していれば、その進歩を喜びましょう。
・また、持って生まれたものは、人により違います。昔の人は「精神一到何事か成らざら
 ん」といいましたが、やはり限界があります。無理をしないで伸ばせるところを大いに
 伸ばしましょう。 
 
「将来」に備えない。10年経ったら世界は違う
・今の世界は、先端技術の急速な進歩などで、猛烈な勢いで変化を続けています。今、高
 く評価されている大学が、大企業が、数年後にどうなっているか誰にもわかりません。
 平成時代にも「まさか、あの会社が」というような会社がいくつも姿を消しました。
 「本人が好きで入った会社」なら諦めもつきますが、「親に、強くすすめられて入った
 会社」がそうなったら腹が立ちますよね。 
・銀行などの大手企業もダメ、会計士や弁護士などの専門職もダメ、プログラミングもダ
 メだなんて、子どもにどんな道を歩かせればいいの?、と途方に暮れてしまうかもしれ
 ません。私は、特に道を用意してあげなくてもいいと思います。将来のための準備をす
 るのではなく、今この時を楽しむ。それでいいのではないでしょうか。 
・これからは、「体験」が重要な学びになります。「知識」を蓄えることはコンピュータ
 ーにほうが得意ですから、お任せすればいいのです。どんな仕事も、AIの手を借りて
 一緒にやるようになる時代。そうしたら、AIにはない「人間力」が必要になります。
 おいしいものを味わうこと、人情にありがたみを感じること、きれいな景色に感動する
 こと。どれも、AIにはできないことです。
 
退職してからの、お友達の作り方
・若い頃から楽しみを持って興味を持ち続けていると、会社を辞めても暇を持て余すこと
 はなくなります。会社員時代は役に立たない単なる遊びだと思っていた趣味が、退職後、
 人生の役に立つのです。まさに、道楽バンザイです。 
・わからないことを素直に人に聞けない。それは、「不機嫌老人」の兆候かもしれません。
 不機嫌老人というのは、銀行や病院、駅のホームなどで「なんでこんなに待たされるん
 だ!」「なんでこんなに電車が遅れるんだ!」と受付の人や駅員さんに文句をいってい
 るような老人です。「保育園の園児の声がうるさい」と苦情をいうご老人なども該当し
 ます。不機嫌老人がかわいそうなのは、その行動が迷惑であることを、誰にも教えても
 らえないこと。
・孤立するから、不機嫌になっていく。そして不機嫌だから人が離れていく。この悪循環
 をどこかで断ち切る必要があります。まずは、「ひとにはいろいろ事情がある」という
 ことを理解することでしょう。相手の立場に立って考えることができれば、病院や駅で
 待たされても怒らずにすみます。あとは、人の話しをよく聞くこと。
・相手の立場になって考え、ひとの話をよく聞く。この2つを守るだけで、何歳からでも
 友達はできますよ。  
 
本から学ぼう
・独学の基本は、読書です。中学校の頃から、私は本を読むのが好きでした。なぜ中学か
 らかというと、それまでは本がまともに手に入らなかったのです。物心がついた頃に戦
 争が始まり、戦時中は紙不足で辞書も複数人で共有されていたような有様でした。 
・私たちはいくつもの人生を生きることはできません。でも、本を読むとさまざまな人生
 を疑似的に生きることができる。あらゆる時代の、どこの国の人間にもならるんです。
・なにかの分野を学びたいときも、本が便利。体系的に情報がまとまっているからです。
 ネットの記事は、いろいろなサイトに点在していて、しかもその情報の信頼性もサイト
 によってまちまちです。それらの真偽を見極め、統合していくのは至難の業。プロが編
 集した本を読んだほうが、確実でしょう。  
・最近では、電子書籍も活用するようになりました。タブレット端末に何冊も入れておけ
 るのは便利です。旅行のときも、重たい思いをしなくてすみます。
・最近、文庫本はいいのですが、単行本はあまり買わなくなりました。図書館の予約の順
 番をゆっくり待って読むようにしています。都会のマンションは狭いでしょう。置くと
 ころがなくなっちゃうのですよ。  
・読書は私にとって初めての、一生続く趣味だと思っています。そして、あらゆる学びの
 扉でもあります。本当はもっと、読書の時間がほしんです。でも今は、仕事が忙しくあ
 まり時間がとれていません。仕方ないので、本を好きなだけ読むのは、老後の楽しみに
 とっておくことにしましょう・・・。さて、私の「老後」はいつくるのでしょうか。
  
教えることは、学ぶこと
・会社組織の中で役割が決められていたときはよかったけれど、それがなくなるとうまく
 ひととコミュニケーションできない、なんて話しをおじさま・おじいさまから聞くこと
 があります。本人からだけでなく、そのまわりのひとからも。確かに、現役時代高い役
 職に就いておられた方がNPOやボランティアに参加されると、一緒に働くスタップを
 部下のように扱ってしまうケースを見ることがあります。本人は無意識なのだと思いま
 すが、「おーい、お茶持ってきて」なんていわれると、まわりは戸惑いますよね。だっ
 て部下じゃないんですもの。もちろん、前職ではものすごく偉い方だったのに、そんな
 様子は微塵も見せずひとの輪にとけ込んでいる方もいらっしゃいます。ご本人の心構え
 次第なんです。 
・人間関係のパターンが「上司」か「部下」しかいないと、頼ったり頼られたりするのは
 難しいもの。そうでない人間関係もあるのだと、頭を少し切り替える必要があります。
 うまくひとに頼れるようになると、自分のまわりにゆるく穏やかなネットワークができ
 るようになります。ちょっと頼まれごとをしたり、また自分が頼んだり。そうしたやり
 とりがあると、日々の生活にやりがいが出てきます。
 
シニアは、理科と現代社会を学び直そう
・第二の人生、第三の人生で、それまでとは違う仕事に就きたいと考えておられる方も多
 いと思います。どんな仕事にせよ30年前から、大きく進化、変化しています。それに
 ついていくためにも、理科の勉強をしっかりやたいたいですね。 
・「習っていないから仕方ない」「習ったことと違うなんて聞いていない」と開き直るの
 ではなく、今から学び直せばいいんです。 
・理科を学ぶときに一つ、落とし穴があります。それは、本を読んで満足してしまうこと。
 読んでわかった気になり、「要するにこういうことだろう」と満足して終りにしてしま
 っている。でも、それって本当にわかっているのでしょうか。
・社会の変化を体感するには、やはりさまざまな年代の、異なる背景を持った知り合いを
 増やすことでしょう。若者が車や出世に興味がないのはなぜなのか。本人たちと話して
 みればわかるはずです。そして、できれば外国人のお友達を作ると、さらに視野が広が
 ると思います。日本の、自分の常識が、常識ではないことを痛感させられるでしょう。
・私がぼんやり夢想していることは、いろいろな職業に「留学」することです。1週間だ
 け、コンビニや居酒屋の店員として働いてみる。そうして、そこで働く外国人店員に、
 仕事を教えてもらうのです。きっと、たくさんの発見があると思います。   
・社会の主流にいた人たちは、変化に対して鈍感です。日本はもう、GDP(国内総生産)
 で中国に2.5倍の差をつけられていますが、いまだに「日本は世界で2番目の経済大
 国」という意識が抜けない人を見かけることがあります。 
・そういう姿を見ると、「脳みそのアップデートができるといいのに」と思います。でき
 れば、コンピューターのように「自動更新」してくれるといいのですが、脳みそはそう
 もいきません。いろいろなものを見たり聞いたりして、自力でアップデートしなければ
 いけない。