「夜の視線」 :阿部牧郎

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本書はサブタイトルとして「現代不倫妻全集U」となっており、短編官能小説5編で構成されている。
軽い内容のエンターテイメント小説であるが、その軽さゆえに単純で面白く痛快で、疲れた「男」を
元気にさせてくれる。

 (1) ソフトクリームの女
   大阪の阿倍野区に住む37歳のサラリーマン野村は、毎日午後6時から自宅近をジョギングす
  るのを日課としていた。ある日、長居公園内の陸上競技場傍を走ってた時、小さい白い犬がまと
  わりついてきた。ジョギングの邪魔をされ、ちょっと腹を立てているところに、犬の飼い主であ
  る白いワンピースの25、26歳の若い女性が現れた。そのきれいな女性に謝られ、途端に気を
  よくした野村は、名残惜しい気持ちを持ちながらジョギングを続けてコースを何周かして戻って
  来ると、その女性がソフトクリームを差し出してきた。
  それがきっかけとなり、その女性も一緒にジョギングをすることになる。女性は結婚して2,3
  年目の人妻であり、夫はエリートサラリーマンであるが、スポーツとはまったく縁のない男だと
  いう。ジョギングをならがいろいろ話をしているうちに、二人が急速に親密になっていく。
  そして、ある日、ジョギングで汗を流した後に、ビールを一緒に飲もうということになり、タク
  シーでホテル街に向かった。そして、ホテルの部屋で缶ビールで乾杯した後に、今度はベットの
  上で、二人一緒に裸で気持ちのよくなるジョギングすることとなる。
   そんなことがあってから、二人はジョギングを口実にして、毎週1回ホテルのベットの上で汗
  を流す関係となる。しかし、そこに障害が現れる。その人妻の夫が妻と一緒にジョギングをやり
  始めたのである。そのため、二人はジョギングの後の楽しみであるホテルでの逢瀬ができなくな
  ってしまう。そこで二人は、夕方でなく早朝にジョギングにすることにする。まだ薄暗い早朝の
  公園内をその若い人妻と二人でジョギングしているうちに、野村は我慢できなくなり、まだ人影
  のない競技場内のスタンドに人妻を連れ込んで、お互いに快感をむさぼり合う。屋外での行為は
  だれかの見られるのではないかという刺激があり格別なのかもしれない。二人は陸上競技場のス
  タンドで激しく秘密のジョギングに励む。

 (2) ワインと寝室
   独りアパート暮らしをしている大学3年の青木は、苦しい実家の家計を助けるために酒店であ
  るバイトをしていた。その酒店は旦那は遊び人で、34歳の女主人が主に切り盛りしていた。
  女主人は人使いは荒いが人柄がよく面倒見もよかった。
   ある日、仕事が終わった後に、その女主人から飲みに誘われる。女主人はなんだかむしゃくし
  ゃしているようである。普段の服装からは想像できない素敵な装いになった女主人に連れられて
  六本木に飲みに出かける。一緒に飲んでいるうちに、話が弾んで、女主人がディスコに行こうと
  言い出すが、若い子ばかりが入っていくディスコを前にして、さすがに尻込みする。夜も11時
  を回っていたので、帰ることにして一旦はタクシーに乗るが、女主人が「不倫しようか」と言い
  出し、新宿のホテルへ。ベットの上では、完全に女主人が主導権を握り、いろいろ濃密なサービ
  スを受け2回ほど絶頂をきわめた。
  そんなことがあってから、その後しばらくは、何事もなかったように過ぎていった。青木は、
  また女主人が誘って来ないかと毎日ドキドキしながら待っていたが、なかなかお誘いはなかった。
  そうしているうちに、女主人の夫が浮気をしていることがだんだんわかってくる。女主人がむし
  ゃくしゃしていたのは、夫の浮気が原因だったのだ。そして、女主人と一緒に配達に回った帰り
  に、また女主人から誘いを受ける。女主人はトラックを運転中の青木のアレをズボンから引っ張
  り出して愛撫し始めるのである。愛撫されながら青木はラブホテルを探し回り、やっと見つけて、
  配達用のトラックでラブホテルにチェックイン。ベットの上で特上ワイン「モレ・サン・ドニ」
  で乾杯。やがて、二人は激しい時間に突入していく。ワインを飲みながらお互いの体をむさぼり
  合う。ちなみに、「モレ・サン・ドニ」はフランスのブルゴーニュ地方のワインで、6千円〜
  1万円のものがあるらしい。筆者はワインが好きなのかな?

 (3) 愛の手ざわり
   大阪のベッドダウンに住む28歳の主婦の千恵子は、夫が東京に出張している間に、羽を伸ば
  そうと大阪の繁華街に出かけた。友達を呼び出そうと電話ボックスに向かうが、すでにサラリー
  マン風の男性が使用していた。男性の長電話がやっと終わって、電話ボックスに入ってみると、
  その男性が手帳を忘れて行ったことに気がつき、男性を追いかけて、手帳を渡す。男性からお礼
  に食事を誘われるが、初対面の男性との食事は重いので、お茶だけすることにした。
   お茶をしながらその男性と世間話をしているうちに、だんだんくつろいだ気分になってきた。
  話も合いそうなので、ビールを飲みながら食事をすることにして、生演奏のあるビヤホールに向
  かう。そこでお互いの家庭状況や夫婦の状況などを語り合っているうちに、お互いに今の夫婦間
  のセックスに物足りなさを感じていることに話しが及び、意気投合してしまう。男性からの「い
  っしょに動物になりましょう」という誘いに乗り中之島のホテルに向かう。
  ホテルの部屋に入って、最初はそんな関係になることを怖がっていた千恵子もだんだんその状況
  に慣れて来て、徐々に男性からの愛撫を素直に受け入れるようになる。その丁寧な愛撫と夫の義
  務的な手抜きのセックスとを比較して、夫に対する不満をますます募らせながら、自分から進ん
  で男性に愛撫を加えるようになり、その男との戯れに夢中になっていく。夫には見せ事のないよ
  うな淫らな女になり恥ずかしいほどの大きな呻き声を上げ耐え難いほどの快感を何度も味わう。
   そんなはげしい時間を持った後、別れ際に男から連絡先を教えてもらったが、千恵子は再びそ
  の男と逢うつもりはなかった。そしてまた、PTAの会合や自治会の会合、趣味の英会話教室と
  平凡な日々を送り始めた。そんなある日、学生時代の同級生でキャリアウーマンの友達からホテ
  ルのプールでの泳ぎの誘いを受ける。子供を隣の主婦にお願いし、白いハイレグの水着を準備し
  て出かけようしたところに、その友達からキャンセルの電話が入る。腹を立てた主婦は、思わず
  先日の男性に電話を入れてホテルのプールでの泳ぎに誘った。
   自分で先にチェックインして、白いハイレグの水着に着替えて待っていると、後から駆け付け
  た男性は、その水着姿に欲情して、プールでの泳ぎはそっちのけで、ベットの上に押し倒される。
  千恵子は男のアソコに手を伸ばし、夫とは違う手ざわりを味い楽しむ。女性は男のアソコの手ざ
  わりが好きなのだろうか?

 (4) 壁の向こう
   主婦の奈津子夫婦とマンションのお隣の山根夫婦とは家族ぐるみの付き合いである。山根夫婦
  の夫は物腰のやわらかな紳士でハンサムなので、奈津子は以前から不倫するならあんな男性とひ
  そかに思っていた。
   ある土曜日の夜、その山根夫婦と奈津子夫婦が4人でマージャンをやることになった。山根夫
  人が熱くなって明け方までマージャンに熱狂し、疲れ果てた4人はそのままその部屋で適当に布
  団を敷いて寝ることになった。みんなが寝静まった頃、奈津子は自分の女の部分に誰かの手が忍
  び込んでくる気配を感じて目を覚ました。最初は夫の手かと思ってそのまま身を任せていたが、
  だんだんその手はお隣の山根夫婦のご主人の手であることがわかる。奈津子は以前からお隣の山
  根さんのご主人とはチャンスがあれば不倫してしまいそうな予感を抱いていたので、そのままお
  隣のご主人の手による愛撫を受け入れた。じわじわと快感が掘り起こされ、耐かねて声を出して
  しまいそうになりながらも必死にこらえる。自然と体が揺れてきて、自制してもひとりでに腰の
  あたりが上下に動き、快感が体の中で膨れ上がり、やがて枕に噛み付いて奈津子は絶頂に達して
  しまう。
   そんなことがあった翌日、お隣のご主人から電話が入り、デートを申し込まれる。子供は自分
  の妻に預ければいいと言うのである。奈津子は罪の意識を感じながらも、夕方の6時に新宿のホ
  テルで逢う約束をする。奈津子は昼食を作りながら、夕方からのお隣のご主人とのデートを想像
  すると、期待がわいて体が熱くなり、夕方が待ちくれなくなり、台所の床に寝そべって自慰をし
  てしまう。
   奈津子は夕方6時にホテルのロビーでお隣のご主人と待ち合わせ、ホテルの地下のステーキレ
  ストランで食事をしながら、お隣のご主人から2年前の夏にベランダからお風呂上りのムードを
  偶然覗き見たことをうち明けられる。お隣のご主人は茫然と見とれたあと、激しい欲望にかられ
  て、ベランダにしゃがんで自慰をしてしまったという。
   そんな話を聞かされた後だけに、ホテルの部屋に入った時には、奈津子の目はもうすっかり欲
  望に燃えていた。奈津子は夫には見せられないような淫らな姿をしながら、お隣のご主人と激し
  い時間を過ごした。
   そんなことがあってから数日経ったある夜、奈津子はお風呂上りに夫とリビングのソファで久
  しぶりに夫婦の営みをしていたら、それをお隣のご主人がベランダ越しにこっそり覗いていた。
  そして、ご主人が眠った後に、お隣のご主人からマンションの屋上に呼びだされる。そして、二
  人はマンションの屋上の暗がりで激しく求め合うのである。

 (5) 夜の視線
  優子はマンションに住む33歳の人妻である。夫は一流会社に勤め、小学生の子供が二人いる。
  これと言った不満は無いが、唯一の不満は最近夫が月に2,3度しか求めてこないことである。
  人妻であるのでそうした不満を解消する方法はなく、子供達が寝静まった後に時々自慰して不満
  を解消していた。ある夜も、リビングのソファで自慰に耽っていると、筋向いのマンションの窓
  から誰かが覗いているのに気が付いた。よく見ると、学生らしい可愛い感じの男の子だった。優
  子は見られているということがむしろ刺激なるのに気づき、わざと見えるようにして自慰した。
  そんなこと何度か繰り返していたある夜に、またわざと見えるようにして自慰していると、突然
  筋向かいのマンションに住むという中年の声の男から電話がかかってきた。ひとりでは寂しいだ
  ろうからこれから迎えの行くと言う。ドキドキしながら待っていると、男が迎えにやって来た。
  男が差し出した名刺を見ると、女子大文学部の教授だという。その肩書きに安心して、優子は筋
  向いのマンションの男の部屋に遊びに行く。男の部屋から自分のマンションの部屋を見ると、カ
  ーテンが透けて見え部屋の中が丸見えであった。優子は今まで自分の自慰行為をすっかり見られ
  てしまっていたという恥ずかしさで全身が火のようだった。しかし、それがまた刺激となって男
  にやさしい愛撫に身をまかせていく。最近は大学教授も助平が多いみたい。