夜に忍びこむもの :渡辺淳一

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この小説は、女性の不妊をテーマにした小説である。子供が欲しくてもできない不妊症治
療を受けている人は、全国で推定46万人強いるといわれている。
結婚すれば子供ができて当然という世間の目の中において、結婚しても子供ができないと
う女性の辛さは想像以上であり、当事者でないとなかなかわからないと思う。この本を読
んで、そういう女性の辛さや心理が少し理解できたような気がする。そして不倫により妊
娠させたときの男の身勝手さも。
男は女性の妊娠に対して無頓着過ぎるような気がする。妊娠を望まない女性を妊娠させる
のも男の身勝手さから来ている。男はもっと自分の「行為」に対して責任を持つべきであ
る。
そして、子供授かった女性は、それは当たり前のことではなく、自分はとても幸運なんだ
と感謝する気持ちを持つべきかもしれない。

無月
・男は子供が生まれたら大変だと真っ青になっているのに、女は悠然と生むことだけを考
 えて、迷いのかけらもない。男が世間体や自分の立場を気にしているのに、女はそんな
 ことは一切考えず、単純にお腹が大きくなっていくことを喜んでいる。妊娠という事実
 に対して、男と女では考え方が根底から違っているようである。
・男たちはセックスはセックスとして、妊娠や出産とは切り離して考えがちだが、女性は
 セックスから妊娠、出産まで、ひとつの流れのなかでとらえているようである。このあ
 たりは、実際に子供をお腹のなかに孕む女性と、セックス以外では直接の関わりをもた
 ない男との違いあのか。
・性に関する女性のイメージは、無限で末広がりとでもいうか、セックスから妊娠、出産、
 育児と、ひとつの性行為がかぎりない未来へ向けて拡大していく。それに対して男の場
 合は、セックスはそれだけで独立し、それも果てることで終わり、あとは萎えて有限を
 実感するだけである。有限と無限と、両者の感覚がぶつかりあったのでは、両者がうま
 くかみ合うわけもない。
・お腹に子を抱えている女性に、男の論理を強制するのは難しい。産むという女性の意志
 は、もはや論理ではない。理屈や善悪をこえて、人間という生きものが生来、身につけ
 た本能である。
・せっかく妊娠して、本人もぜひ産みたいというものを強引に降ろさせることは、自然の
 摂理に反し、人間としてもやるべきことではない。
 
秋冷
・男は、街で妊婦を見ると視線をそらしたくなるが、それは見た目の異常さだけでなく、
 その姿の裏に、性の生々しさを感じて照れるからである。
・しかし、そんな想像をするのは男だけで、女はもっと素直に、妊娠という事実を女性に
 備わった自然の恵みとして、むしろ誇りに思っているかもしれない。実際、妊婦の表情
 はいずれも晴れやかで、歩き方も堂々として満足気である。街を逝く妊婦に、ある切な
 さと気恥かしさを感じるのは、自ら妊娠してお腹が大きくなることができない男たちの、
 余計な思い過ごしだと知りながら、いまはその事実を具体的に考えると、気が滅入って
 くる。
・なによりも女性が恐いのは、最後になると開き直り、恐いもの知らずになれるところで
 ある。迷いながらも、女は一旦、こうと決めたら、すべてを投げ捨てて目的へ突っ走る。
 この一途でラディカルなところが、女の強さと恐さの原点である。
・これにくらべれば、男の強さなどは知れている。威丈高に声を荒げ、もっともらしい理
 屈述べるが、いざとなると途端に弱気の虫にとりつかれて逃げ腰になる。腰がすわって
 いないというか、どっちつかずというか、周囲ばかり気にして、最後は円くおさめるこ
 とばかり考える。 

宵闇
・妊娠から出産にかけて、男はそこまで子供の存在を感じることができない。あなたの子
 供ができたの、といわれたところで、そうなのかと思うだけで、自分自身にはなんの変
 化もなく、ツワリはもちろん、その子が自分の体内で動いていることなど、実感のしよ
 うもない。
・女の体は生々しさをとおりこして動物的ですらある。いや、見方をかえれば、不思議さ
 をとおりこして神秘的ですらある。幸か不幸か、男の体は一生を通じて、そんな大変革
 に見舞われることはない。男の体はさほど変化はなく、気象でいえば、いつもそよ風が
 吹いてる小春日和のようなものだが、女の体は快晴もあり台風もあり波乱万丈型である。
・もともと女は強いと思っていたが、とくに子供を孕んだ女は強い。もっともその強さが
 ありから妊娠や出産の難儀に耐えられるので、男のような優柔不断さでは、ほとんどが
 妊娠半ばで流産してしまうかもしれない。
・「妊娠して子供を産むなんて、たいしたことじゃないでしょう。どんな教養のない女で
 も、貧しい女でも、男の人と関係すればできる。あの行為には知性も教養もいらない。
 むしろあったら邪魔で、動物だって、獣だってやっている本能的なものなのに、子供が
 できたからといって、立派に女のつとめをはたしましたなんていいかたは、おかしいわ」 
・「それに子供を育てるのは、苦しいこともあるかもしれないけれど、楽しいことも多い
 と思うわ。よくこんなに苦労して育てたのだから、親孝行してもらわないとペイしない、
 などという人がいるけど、子供を産む以上は、産んで育てる楽しみだけで満足すべきで、
 それ以上の見返りを求めるのは、親のエゴというものでしょう」

流星
・「われわれは別に、世間さまのために子供を産むんじゃないわ。自分が欲しいときに欲
 しいから産むので、なにも他人さまに指図を受けることはないわ。それなのにみな寄っ
 てたかって、人の顔を見れば、”まだですか、早いほうがいいですよ”とお節介をやく」
 
長夜
・私はなんのためにこの世に生まれてきたのだろう。なんかこのままでは女として一番大
 切なことをし遂げていない、やり切らないまま、一生を終えるのではないか。これでは、
 女として生きたことにならないんじゃないか。
・女が唯一、絶対に男より勝っていることは、子供を産むことでしょう。これだけはどん
 な能力のある男の人でもできない。ところが、私は女なのに、それができない。このま
 まではなにもあとに残さず、人生で忘れものをしたまま終わるような気がする」
 
花野
・「思いきり、滅茶滅茶にして、いじめて・・・・」秘肉のなかに自らのものを送り込み、
 そのまま二人はしかと結ばれた。二人はオスとメスの獣になったようにむさぼりあい、
 何度か頂きを通り抜けて果てた。