妻たちの昼の顔  :二松まゆみ

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世の中、主婦の不倫というのも、めずらしくないといわれるが、不倫する主婦にもそれぞ
れ理由がある。
ひとつの要因となっているのが、セックスレスのようである。まだ若い主婦にとって、夫
から放ったらかしにされるというのは、やはり寂しいものらしい。自分は、子供の母とい
うだけの存在ではなく、ひとりの女性として見てほしいという気持ちもあるようだ。
しかし、夫側にも、それなりの理由がある。仕事がたいへんで、とても妻や家庭を顧みる
余裕がない。仕事で失敗して閉職に追いやられた。不況で左遷された、リストラされた、
などなど。バブル崩壊前と比べ、今の時代のサラリーマンは、とてもきびしい環境に置か
れていると感じる。仕事をしている女性であれば、そのことは多少は実感できるのであろ
うが、専業主婦だと、実感する機会が少ないのだろう。今の世の中、生きていくだけでも
たいへんなのだということを、もう少し理解してほしいと思うのは、男の側の我儘なのだ
ろうか。
しかし、人間とは、どこまでも我儘な動物のような気がする。日々の生活が、経済的に苦
しく、生きるのに精一杯という状態のときは、経済的にさえ楽になれば、しあわせになれ
ると思うが、いざ、経済的に余裕のある状態に置かれると、その生活にも飽きてしまって、
不満が出てくる。平凡な日常に変化が欲しい。刺激がほしい。そんな思いが募ってくる。
人間とは、どこまでいっても、”足るを知る”ことがない動物なのかもしれない。

筆者は、「恋人・夫婦仲相談所」とウェブサイトを運営していて、1万人以上の会員から
寄せられる相談に答えているという。この本は、実際に「恋人・夫婦仲相談所」に寄せら
れた話を元にまとめたとのことである。それにしても、内容は、官能小説かと思えるほど
の性描写に富んでおり、じつに生々しい内容だった。

はじめに
・この夏、ドラマ「昼顔」が主婦たちの間で大ブームを生んだ頃から毎日のように、「主
 婦の不倫」に関するコメントなどを求められる機会も増えました。
・なぜ夫がいるのに、他の男性と恋愛をするのか、セックスに応じるのか。その答えは彼
 女たち、ひとりひとりの胸の中にあります。決して「夫だけではもの足りないからです
 よ」と一言でくくれるものではありません。
・もちろん不倫は不道徳行為。罰を受けることとを覚悟で向き合うわけです。いけないこ
 とと知りながらも心が動く、身体が開く。
・10年前に1609人の主婦を対象に調査したとき、夫以外の男性と関係を持つ女性は
 2割弱でした。それから10年。携帯電話、SNS、出会いコミュニティ、そして女性
 の社会進出。家にこもって「奥さん」と呼ばれている女性たちの愛情対象は開かれてき
 ています。

みんな、やっていることだから
・専業主婦、38歳、結婚13年目、子供1人
・ゴルフを通じた秘めごとは周囲にいくらでも転がっている。ゴルフ仲間の動向を見て、
「夫以外の男とこういう関係になるのはよくあることだ」と思っている。
・時間とお金に余裕がある男と女は自然に惹かれ合う。既婚か未婚かなど気にしない。気
 が合えば友達になる。相手にセクシャルなものを感じ取れば、そのまま抱き合う。
・最初は粟粒が踊るように見え隠れしていた性への欲望が、激しく暴れるようになったの
 はいつ頃か。おそらくゴルフ仲間から、「ゴルフ合コンで知り合った男性と肉体関係を
 もつようになった」という話を聞いてからだ。既婚同士の秘密のお付き合い。時間とお
 金に余裕がないと実現しないような世界。 
・友人たちの奔放な性の話が午後のお茶会に頻繁に交わされると、押さえていたなにかが
 頭をたしそうになった。
・夫は美しい妻が自慢だった。同僚や部下に妻を自慢するために、毎月のように家に招く。
 中堅の商社に勤める良平は1年前、仕事で大失態を犯してから、すこし鬱っぽくなって
 いた。プロジェクトリーダーから外され、地味な部署に回された。心にクシュっとした
 小さなシワが寄り、「さあ、頑張ろう」という気持ちになれない。
・男は一度自信をなくすと取り返すのに時間がかかる。夫は仕事への意欲が鈍った心の隙
 間を、妻が奇麗だと褒められることでカバーしようとした。
・夫の元気が雲隠れした頃から、夜のパフォーマンスもがっくりと落ちていた。以前はど
 んなに遅く帰ってきても、寝ている妻に覆いかぶさってきたのが嘘のようだ。
・いつだったか、すこし勢いがついたとき、妻がここぞとばかり自分の中へと押し込もう
 とした。しかし、それは妻の中で柔らかくなり、瞬く間にへしゃげてしまった。それか
 らというもの、夫はますます自信をなくし、夜はおでこにキスだけしてさっさと眠りに
 つくようになっていった。
・妻は、女盛りという言葉がぴったりくる年齢。隣で寝息を立てる夫に不満をぶつけよう
 としたが、喧嘩などしたことがないので、グッと飲み込んだ。
・彼は、自宅とは別にマンスリーマンションを借りている。そこで書類を作成したり、文
 献を読むのだという。同じ部屋だと飽きるので2カ月ごとに鞄ひとつで引っ越す。妻は
 家で仕事をするのが嫌がるので、お互いに合意と言うが、彼の夫婦仲がどうであろうと
 関係ない。夫と堕埋まらぬ溝を彼が埋めてくれさえすればいい。みんな、やっているこ
 とだから。 
・2LDKのウィークリーマンション。床に敷いてあるページュのカーペットの上で全裸
 で横たわる。彼が理科の解剖実験のように、裸体を見下ろして観察する。
・彼は指を櫛に見立てて茂みをそっと梳かす。ゾクッとする感触が太腿を伝う。男性にこ
 れほどじっくり裸体を見つめられた経験などない。明るい証明の下で床に転がされ、恥
 かしさと高騰感が入り乱れる。 
・躊躇しながらも脚を大きく開く。次に襲ってくる快感を期待した。1年近く自分のここ
 は、気持ちよくしてくれる出来事を待っていた。本当は夫がしてくれるはずなのに、そ
 れをしなかった。だから、仕方ない。みんな、やっていることだから。
・何度も失神しそうになった。気持ちよい、気持ちよすぎて頭の中がぼんやりする。
・自分の水の甘ったるい匂い。いやらしいことを考えるときに放つ匂い。気を失いそうに
 なる。 
・硬い床の上で、こんなことをするのも初めてだ。すべてが新しい。そして久しぶり。入
 れられる。長い時間舐められていたその部分は柔らかくほぐされている。好奇心と欲望
 が混ざり合いスパークする。声を出すこともなく、のたうつ。彼はほとんど動かない。
 それでも内部はいっぱいに満たされていた。
・彼との情事は、毎週、火曜か金曜。長い間溜まっていた澱を出し切るかのごとく、貪欲
 にもつれあった。彼と交わった夜には余韻が残り、隣で寝ている夫ともしたくなる。何
 度も背中をつついて起こそうとしたが、夫は寝たふりをしているだろう。まったく起き
 てはきれない。 
・今まで一番寂しそうな表情をしてみた。男は寂しそうな女に弱い。それは女の本能が知
 っている。まともにセックスできない夫を「このED野郎!」と罵倒すれば、もっと最
 悪の関係になることくらい私にもわかる。
・でも1年近くも放って置かれると、そんな悪態のひとつくらいつきたくもなる。家事も
 娘のことも一生懸命向き合い、お客さんが来れば、手のこんだ料理でもてなす。それな
 のに夫からは労いの言葉さえない。抱きしめてもらえない。夫に愛してもらえない。
・翌週の日曜日、冷や汗が出るような失態をした。スマホをリビングのピアノの上に置い
 たまま、娘とアウトレットに出かけてしまったのだ。忘れたことに気づいたのは夕方近
 く。夫は家で留守番をしている。帰り道、車を運転しながら、彼から電話がかかってい
 ないことを願った。
・夫の顔が曇っている。土気色だ。眉の間にしわを寄せている。返事をしない気配を察し
 た。バレた。
・スマホを夫に取られ、電話番号を変えさせられた。暗証番号でロックをかけないよう命
 令される。小遣いも半額になった。しばらくは客室で寝るように言われる。なにも抵抗
 できない。離婚されると困る。私には生活をしていく術がない。
・その日から夫とは必要最小限のことしか話さない。最悪の日々が始まった。
・ゴルフ仲間とは会うなと言われていたが、こっそりお茶会に参加した。「おイタがバレ
 て・・・」と言うと、皆が一瞬言葉を飲んだ。 
・「ちょっと、私たちのことは、他所では内緒にしておいてね。私たちも困るんだから」
 皆がそそくさと席を立つ。巻き込まれたくないのだ。店にひとり残され、嗚咽を漏らし
 た。なぜ自分だけがこんな目に合うのか。夫に愛されず、ひとときの情事を経験したた
 めに独りぼっちになり、窮屈な日々を強いられる。やるせない思いが吹き出した。
・その夜、客間で化粧水をつけていると夫が入ってきた。「おい、もう寝室で寝ていいぞ。
 反省できたみたいだから」「俺がほったらかしにしたっていう負い目もある。もう1年
 も抱いてないな」「あのな、例の薬だけど、処方してもらってきた」「効くかどうかは
 試してないけどな。お前と同じように、よその女で試してくるよ」
・涙が出てきた。そこまでの罪を受けなければならないのかと。
・「ばっか。冗談だよ」夫は、久しぶりに笑顔を見せた。
・「してきていいよ。浮気。私と同じように、していいから」私はとっさに言った。わず
 かな時間だったが、そのときは永遠にも感じられた。 
・夫が口を開いた。「もう忘れることにしよう」

一人旅が呼んだ恋
・専業主婦、37歳、結婚8年目。子供2人
・夫の転勤により新しい土地での生活が始まった。近所に友達のいない閉塞感から抜け出
 すために妻は、誘われるがままにPTA役員を引き受けたのだが。待っていたのは生理
 的に受けつけないPTA会長だった。
・辛い状況を話しても、まったく聞く耳を持たない夫。そんなとき、一人旅にゆくことに
 なり。旅先で知り合った彼との不倫関係が始まった。
・昨年、夫の転勤でこの地に越してきてから友達がいない。専業主婦にとって、午後、お
 茶を飲んだり、テレビを見るだけの生活は耐えられない。子供と遊ぶのも苦手だった。
・子供が遊ぶ横で本を読んだり、テレビを見たりで時間をつぶす。たまに子供と近所のス
 ーパーに買い物に行くのが刺激になるくらいだ。  
・PTAの役員を、友達ができるならと思って承諾したのが間違いだった。今ではプライ
 ベートまでグループに侵食されている。寂しいと感じる時間はなくなる代わりに、ウザ
 ったいと思うようになった。 
・所詮、ママ友なんてこんなものだ。ほかの母親たちよりも幸せそうなら安心する。幸せ
 の比較は他人への悪口で確認する。そんなことを思いながらも、このグループから抜け
 ることができなかった。 
・夫の帰宅はいつも22時過ぎだ。満員電車に揺られ疲れも倍増するらしく、引っ越して
 きてから、やけに老け込んだ。40歳前なのに白髪も見え隠れする。慣れない会社に気
 を使うのか、ゲッソリと痩せてきた。
・引っ越してきてから1年間、土日もぐったりしているので、夜のほうもまったくなかっ
 た。寂しかった。さほど性欲が強いほうではない。ただ、「お前が必要だ」という確証
 がほしい。子供たちの母親だけじゃない”私”を意識できる時間が欲しい。 
・子供たちが、実家に泊りに行くことになった。夫に、ふたりきりて温泉に行かないか誘
 った。しかし、夫からPTAの友達と行って来たらと言われた。糸がプツンと切れた。
 夫は自分の話をなにも聞いていない。PTAで友達ができたように見えるけど、実は感
 性が合わないから居心地が悪いと何度も伝えたのに、うわの空で聞いていたんだ。寂し
 さと怒りがジワリと混じりあった。夫は自分を子供の世話をするお手伝いさんとしか思
 っていない。
・私はその日、ひとりで特急・踊り子に乗り込んだ。一人旅など生まれて初めてかもしれ
 ない。  
・河津駅で降りて、入ったわさび丼の店に入った。わさび丼の店を出て、旅館に向かうバ
 スを待っているときに、店にスカーフを忘れてきたらしく、男に声をかけられた。こん
 がり日焼けした体格のいい男が追いかけてきた。 
・旅先で起こること、知らない人に出会うことは意味がある。ふと、そんな気になった。
 毎日同じことの繰り返しの日常から、ちょっと逸脱してみたい願望があるのかもしれな
 い。 
・男は旅館まで車で送ってくれるという。心が華やいできた。男の人に声をかけられるな
 ど、10年ぶりかもしれない。子供を連れずにひとりで外にいるとこんな嬉しいことが
 あるのだ。
・男から、旅館の近くに地元の社交場みたいになっている喫茶店を紹介された。 
・海が見える判露天の岩風呂で、肩まで湯につかり、いろいろなことを考えた。PTAマ
 マたちとの不協和音、夫に対して湧いてきた不満。旅館で夕食が終わったら、喫茶店に
 行ってみようと思った。 
・店長はヒゲをはやした海賊風の男だ。海が近いのだから海賊が喫茶店をやっていてもお
 かしくない。旅先での出会いを楽しんだ。
・喫茶店に車で送ってくれた男が現れた。ふたりで時を忘れて会話を楽しんだ。気づけば
 夜中になり、地元のカップル達はいなくなっていた。  
・男から「あっちに帰ったら、横浜で飲みませんか」と誘われた。私は男に携帯電話とア
 ドレスを渡した。
・男は旅館まで送ってくれた。宿の玄関先でさらりとした別れ方がちょっと切ない気にさ
 せた。夜通し開いている大浴場に向かい、また湯を楽しんだ。ふと乳房を見つけた。乳
 房はまるで、なにかを待っているように湯のしずくを滑らせた。
・ひとり旅から戻り、私は明るい気分になっていた。「待つ」。気になる男から連絡を待
 つという単純なことが、これほど気分を上向きにさせてくれるのか。
・男から連絡が来た。約束通り、横浜で食事をするとになった。夫が残業で確実に遅くな
 る日を聞き出し、実家の母に子守りに来てもらうことにした。
・横浜の夜景は、気持ちに彩りをそえ、テレビドラマの主人公のような気分にさせてくれ
 た。 
・私は恋に堕ちた。乾杯からベッドまで3時間半。すでに2人はそうなることを予想して
 乾杯していた。
・観覧車の見える部屋で男は、当然のように口づけをしながら背中のファスナーを下ろし
 た。私はもうどうにでもなってもいいと感じた。
・旅先での秘密の出来事、今日もそう。横浜に旅してきたのだから、家に戻ればまた日常
 が始まる。そんな言い訳が頭の中でリフレンする。 
・男が私の両脚を開き、舌先を差し込んだ。私はすでに溢れ出していた。待っていた。ず
 っと前から、男と会うずっと前から、私の身体は誰かに触られるのを待っていた。
・男も下着を脱ぎ、股間をあらわにする。夫とは違う男のそれ。薄明りの中でそれは明ら
 かに私を欲しがっている。
・男は滑らかなシーツの上に私を寝かせて、覆い被さる。腰をギュッと左右に振ると私の
 両脚が大きく開かれる。その先端が私の太ももと下腹部に当たる。当たるだけで私は、
 内部から溢れ出るのを感じる。
・両脚の付け根に体中の血が集まったように熱い。女の部分がそっと目を覚ますように開
 き始める。溢れる。開く。溢れる。男は開き切った私にスッと侵入した。
・男はその後、なにも言わず、私の中で暴れ回る。私の中は熱く煮えたぎる。
・ふたりの息づかいと、サラサラというシーツのこすれる以外、なにも聞こえない。ふた
 りは無言で旅先の間の時間を共通する。
・男が角度を変えて腰をスライドさせた瞬間、私の頭の中で火花が散った。観覧車のネオ
 ンがグルグル回る。声をあげず、首をそらせて私は、待っていたものを堪能した。
・恋をしたのは旅先だけ。日常に恋を持ち帰ってはいけない。帰りのタクシーで私は太も
 もをキュッと閉めて余韻を味わった。  
・旅をして日常を俯瞰すると、自分がダメだったところも見えてきた。夫を待つことに疲
 れたと、なぜ一度も言うことができなかったのか。今だからこそ、そう思える。言いた
 いことを言えない自分が、夫の身勝手さを増長させてしまっていた。
・夫とそれを話し合えた夜から、あきらかに関係性が変わってきた。

目覚め
・自動車学校勤務(事務職)、41歳、結婚14年目、子供1人
・安定や将来性を求めて結婚した奈津代だったが、左遷が決まり、何事にも気力のない夫
 に不満を感じていた。
・そんなとき職場に新しく入社してきた妻子持ちの男とのダブル不倫に身を投じてゆく奈
 津代。
・夫はブラスチック部品メーカーい勤めているが、不況のあおりでリストラ対象になって
 いる。石川の関連会社に転勤というのは、体のいい肩たたきだ。大幅な減給を承諾する
 か、はたまた転職するか、道は2つ。これといった専門職ではないため、40歳を過ぎ
 てからの転職は難しい。
・夫は奈津代に一緒に石川に行ってくれと頼んだ。しかし、奈津代はその事態に呆然とし
 て、激しく罵倒した。夫は目線を下に落として黙り込んだ。
・夫はりリビングで、中高年向け転職雑誌をこれ見よがしに読んでいる。転勤するのか、
 転職するのか、決断すらしていない。そんな情けない夫を横目で見ながらイライラした
 日々が過ぎて行った。 
・ある日、新聞で「主婦向け株教室」という広告が目に入った。「仕組みさえわかれば3
 カ月で株長者」という文章がストンと落ちた。まとまったお金があれば、夫が単身赴任
 してもマンションのローンはなんとか払える。
・本気を出すと人は変わる。いままで集中して勉強したことがないというくらい本とネッ
 トで株の勉強をした。目的があれば意地になって知識を得ることができるんだと40代
 になって初めて知った。
・自分の過去を後悔したのも初めてだった。自分の将来とまともに向き合うこともなく、
 親の言うままに自宅から通える無名の大学に行き、友達が進めるままに夫と付き合って
 結婚。そのとき、周りの誰もが「将来性があるから」と口にした。それが曖昧で現実味
 のない言葉だということに気づいたのが今だった。
・馬鹿だった。他人に流される馬鹿な道を歩んできたから、こんな不幸がやってきたんだ。
 将来性っていう言葉を何年も信じて。
・自分を責めることが勉強魂に火をつけて、株の知識をどんどん吸収していった。そして
 本当に3カ月で200万円近い利益を出した。不思議なもので頑張った結果が出ると、
 夫に対してもやさしく接することができるようになった。その頃には夫も単身で石川に
 行く腹をくくっていた。
・職場に新しい男性が入社してきた。精悍な顔つきの40歳くらいの男だった。男はちら
 りと私のほうを見た。軽く会釈を交わした。その日から、その男の動向を少しずつ意識
 するようになった。昔、初恋の先輩を廊下の蔭から垣間見るときもこんな気持ちになっ
 たなと懐かしい感情が溢れ出た。
・その頃、2度目の不幸が襲った。買っていた建築会社の株が役員の不正発覚でいきなり
 下がった。順調に出していた利益が一瞬でパー。しかも深刻なマイナス。肩が小刻みに
 震える。何度か失った金額を挽回しようと試みたが惨敗。
・職場の飲み会があった。私は酔いにまかせて、株で大失敗をしたことを打ち明けた。そ
 れを耳にした周りの連中が、ギョッとしてグラスを持つ手を止めた。
・男が私をかばうように店から連れ出した。夜風を頬を撫でると、正気に戻った。男は、
 自分も株はわかるから、今度、アドバイスするよと言った。力強い味方を得た気がした。
 男の頼もしさを感じたのは久しぶりだった。一気に距離が縮まった感じがした。
・仕事が終わってから喫茶店で1時間、毎日のように彼と株について話した。彼は素人が
 手を出しやすい危ない銘柄から、裏話、株にまつわる人の心理まで細かく教えてくれた。
・夏も終わりが近づいたある日、彼からふたりでの夕食に誘われた。
・彼の運転は素人目に見てもうまかった。夜のドライブが永遠に続けばいいと思った。ひ
 とけがない森林公園の駐車場に車を停め、彼が助手席を倒して、長いキスをした。当然
 の流れのように、受けとめた。左うなじを熱い唇がツゥーっと1本線を引く。それだけ
 で中の小さな泡がはじけはじめた。さっきまでハンドルをしなやかに捌いていた手のひ
 らが乳房を包み込む。 
・思わずすぼめた唇から淫美な声が飛び出した。忘れかけていた女の部分が鎌首をもたげ
 るように動き始めた。もう2度と夫とは、このようなことはしない。だから彼に滅茶苦
 茶にして欲しいと感じた。  
・彼は薄手のセーターをたくし上げ、ブラジャーを外して、突端を口に含む。意識せずに
 自分の手がパンティを下にずらしていた。それほどまでに大胆になれる夜だった。狭い
 車の中なので、身動きが取れない。その拘束感も淫らな気持ちをかきたてた。
・突端をコロッといじられただけなのに、トロリとした密があふれ出した。彼が気づいて
 上着を腰の下に敷いた。 
・舌先が口の中で生き物のように暴れ回る。男の唾液が唇の間から入ってくる。こんな激
 しいキスをされたことがない。なにもかもが初めてだった。
・両脚をダッシュボードの上に置いた。左足はサイドウインドウに押しつけた。狭い車内
 で思いっきり脚を開こうと試みた。彼の指が確かめる頃には、どうしようもないほど溢
 れていた。 
・ねだるように声を振り絞った。彼のそれもいきり立っている。素早くベルトを外し、下
 着をおろして、彼が腰を一気に沈めた。
・彼が上に下に腰を動かすたびに、声とともに息が漏れる。
・彼のそれはぴたりと私の中に包まれ、踊るように動く。狭い場所での密着した体位なの
 で、一番感じる核の部分が適度に圧迫される。ジンジンと終着点に近づく。彼が胸の突
・息を一瞬飲み、一気に吐き出した。思わず彼の背中を引っ掻いていた。
・その日以降、私は彼に夢中になった。
・夫には株で失敗して預金が減ったことはずっと内緒にしている。彼が教えてくれた銘柄
 が必ず上げると信じていると、気にならなくなってきた。  
・今まで夜間勤務は免除してもらっていたが、子供が大きくなったという理由で週2回、
 夜間勤務も引き受けることにした。夫も残業がなくなり帰宅が早くなっている。妻が夜
 遅くまで働いても文句を言うことはできない。
・自動車学校の倉庫の奥に、工具を保管している倉庫がある。鍵が内側にもついているこ
 とを発見した。その鍵は事務室に無造作に掛けてある。
・夜の自動車学校の練習コースを横目で見ながら小走りで倉庫に駆け込む。彼が待ってい
 た。 
・いきなり、彼が私を抱き寄せ、唇を押し付ける。それだけですぐに反応する。愛撫もそ
 こそこに私は自分でストッキングとパンティーをおろす。
・私をクルリと後ろを向かせ、工具棚に手をつかせた。スカートをたくしあげ、後ろから
 指でその位置を確認する。
・私の脚の間に彼は自分の膝を割り込ませ30センチほど開いた。後ろからそっと先端を
 押し付け、グイと下から突き上げた。
・頭の中が真っ白になる。初めての感触。後ろから胸を揉み上げられることが、これほど
 気持ちいいものなのか。
・彼の指が私の核心に触れたとき、なんとも言えぬ快感が襲った。彼のそれを中に満たし
 たまま、私は右胸の突端を自分でつまんだ。その瞬間、また大きな揺れがやってきた。
・工具倉庫での情事は何度も繰り返された。そのたびに新しい発見がある。自分がこんな
 にもセックスが好きだったことを改めて知った。 
・家に帰ると夫は「お疲れさん」と迎えてくれる。やましい気持ちなど一切ない。”将来
 性”がなくなった情けない夫は、ただのお父さんでしかない。
・私は、今度こそ、後悔しない道を歩むと決めた。人の意見に惑わされず、自分で選択し
 てゆく。

平穏とトキメキの狭間
・主婦(美容室パート)、35歳、結婚10年目、子供2人
・ありふれた平穏な家族であることが幸せ、妻はそう自分に言い聞かせていた。なにをす
 るにしても”普通”な夫に徐々に不満を募らせて、美容室で助手の仕事を始める。
・そこで知り合った非日常の男。セックスに対しても”普通”であった夫を忘れ、トキメ
 キの世界で性の華を咲かせている。 
・「夫がメイン料理なら、不倫相手はドルチェ」と割り切る友人とは違い、「夫と彼が入
 れ替わればいい」と思いが錯綜する。
・10年前の私にとって、夫は理想の男だった。誰もが知っている会社に勤めていて、将
 来は安定。お母さんは病気で亡くなられ、お父さんは長男夫婦と暮らしている。そして
 月並みな言葉だが、夫はやさしい。
・やさしさとは不思議な感情だ。やさしくされる側はラクではあるが、され続けると、こ
 ちら側の傲慢さが小さな反乱を起こし、気に障るようになる。 
・すべてがラクなほうに流れる。水のようにスラスラと。
・夫は家にいるとき、私が頼んだことは文句も言わずにしてくれた。ただ、なにかもの足
 りないものを感じた。仕事も真面目で、子育ても手伝ってくれるやさしい夫。それ以上
 でも、それ以下でもない。
・夫とのセックスはある。月2回。隔週の土曜夜がお決まりのコースだ。5秒にも満たな
 い軽いキス。乳房は手で触られるだけで、乳首を口に含まれることはない。そして、ヘ
 アを丹念に指でかき分け、濡れているかどうか確かめてからインサート。やっと気持ち
 よくなった頃、勝手に射精。満たされない私は、夫が寝入ってから自ら慰め、最後まで
 達するというパターンだ。セックスなど、そんなものだと思っていた。
・OLだった頃、4カ月ほど付き合った彼と今の夫の2人しか経験がない。最後まで達す
 ることがなくても妊娠はしたし、自分で慰めれば、それなりの快感を得ることもできる。
 そもそも愛情が冷めかけている夫に、セックスの要求などする気もない。
・美容室を経営しているママ友は言った。「「いい男と最高級のセックスを重ねると、女
 はどんどん奇麗になるの」  
・夫婦は怒りをぶつけあっている頃が花で、気にならなくなって無視するようになったら
 末期がんみたいなものだ。かろうじてセックスはあるが、きっとそれは夫にとって排尿
 と一緒なのだ。溜まったから出す。マスターベーションもしているようだが、セックス
 は妻へのお努めという気持ちもあるだろう。波風を立てるのを嫌性格だから。
・お昼に美容室のママ友から胸をもまれたせいか、頭の中にセックスが占める割合が肥大
 した。ママ友が不倫男性と裸でもつれ合う光景が目に浮かぶ。ふと、太ももの内側にミ
 ミズが這いずるような感覚を思えた。ゾクッとした。バスルームに行き、扉を閉めた。
 そっと指をそこに当ててみるとヌルリとした。自分の中の女が動きだした。そんな気が
 した。 
・美容室のママ友から紹介されて、その男の待つ場所へ向かった。都心のホテルのティー
 ラウンジで、男は待っていた。仕事柄か、ラウンジにいるほかの誰よりもあか抜けて、
 大人っぽい色気を漂わせていた。
・彫りの深い強面の男に容姿を褒められたことは、今までの人生で経験がない。夫も4カ
 月だけ付き合った昔の彼も、一重まぶたで温厚そうな日本顔。彼はこんな昼間から雄の
 匂いを漂わせるような危険区域に生息する男だ。そこが危険区域とわかっていながら、
 私はやってきた。タオルを投げつけても文句を言わない。やさしい安全区域に住む夫を
 ひと時でも忘れるために。
・食事をしながら、彼のゴツゴツした手の甲と、ワインを飲み込むときに動く喉仏にたま
 らなく欲情していた。
・部屋に向かい上がってゆくエレベーターの中で、すきやきの湯気の向こうにおぞく夫の
 顔が見えた気がしたが、一瞬で湯気に消された。
・部屋に入ると、そのまま大きなベッドの上に横たえられた。ワインレッドの服が白いシ
 ーツに映える。 
・彼の舌が唇を割って入り、私の下の動きを確かめるようにネットリした動きをする。キ
 スをしながら背中のファスナーを下ろされる。男に服を脱がされるのがこんなに恥ずか
 しく、淫媚な行為だということを久しぶりに思い出した。夫婦間のセックスなんてお互
 いのパジャマの下だけ脱いで簡単に澄ませてしまうものだから。ファスナーを下ろすと
 いう行為だけで、こんなにも湿ってしまうという事実が新鮮だった。
・ブラジャーの肩ひもをずらし、ホックを外される。乳房があらわになる。乳房も長い眠
 りから目覚めましたというような解放感を味わっている。恥かしいような、もっと見ら
 れたいような高揚感に襲われる。 
・夫が怠るようになった乳首へのキス。そこにキスして欲しかった。ずっと。男は固くな
 ったそれを、そっと口で含んだと思うと甘噛みした。私は噛まれた刺激で、我を忘れた。
・太ももの奥を指差しながらねだった。男は、シャツとズボンを脱ぎ始めた。
・横たわったまま、最後に残った下着をそろそろと両手で押し下げた。足首から外して、
 ベッドの下に落とす。
・男はいきなり私のヘアに唇を押し当てた。上体を起こして恥かしがる私の両脚をグイと
 開き、じっくり眺めた。 
・男は、指を2本滑り込ませてきた。指を踊らせる。長い間、丁寧に指で味わいながら、
 それと同時に、うなじに舌を這わせる。
・うなじかと思えば、耳たぶを噛む。私は、キスの嵐に酔いしれた。こんな長いキスは今
 までにない。長い、長い時間。
・乳房の中心に円を描くようにクルクルと人差し指を滑らせる。何回転かしたあと、その
 突端に指の腹を押しつけた。
・私の腰がベッドから浮き上がる。背中が反り返り、アーチを描く。インサートなしでも、
 最後まで昇りつめることができる。私は感動に震えた。
・夫とは、まったく違うアプローチ。ママ友が言っていた、最高の男とのセックスは、女
 の身体を知り尽くした男とのセックスという意味だったのか。 
・絶頂のほとぼりが醒めやらぬ中、男が私の中心にそっと侵入してきた。濡れきって、や
 わらかくなった中心は、それおスルリと迎え入れた。
・新たな刺激が私の内部に広がり、突かれるたびに私は悲鳴をあげた。私の中に潜んでい
 た”女”が、久しぶりに暴れた夜だった。
・そしてまた、日常が戻る。脳の動きを止めなければ、やり過ごすことができない普通の
 日常。
・私は子供部屋を掃除しながら考えた。この子たちが大きくなって、恋をするようになる
 までは夫婦を演じよう。大人の話ができるようになった頃。「お父さんとは別れるかも
 しれない」と本心を告げよう。
・夫と別れてどうするという想像はできない。10年後のことなどわからない。ただ本能
 が、夫と死ぬまでいたら幸せになれないと叫んでいる。自分を押し殺すな、と。
・男にも家族がいる。セックスが良かったからといって、付き合うことなど許されない。
 会いたかった。自分ですら気づかなかった女の感覚を目覚めさせた男。たまに会って、
 そのたびに、恥ずかしい声をあげさせてくれる関係でいい。 
・男と月2度、ホテルで会うようになって数カ月。会えば会うほど離れたくないという思
 いが膨らむ。男は割り切った大人の関係を望んでいると会話の端々に挟み込む。
・私は、現実と夢の世界の狭間を揺れ動く自分をどうしていいのかわからない。子どもの
 ためにも離婚はしない。男は自分をセフレとして見ている。だが自分は、身体だけの関
 係と割り切るには胸が苦しい。 
 
誰も傷つけない
・専業主婦、56歳、結婚32年目、子供2人
・50歳を過ぎて燃え上がる恋もある。複数の会社で顧問を努める夫、金銭的になにひと
 つ困らない生活。趣味の料理教室にも通い、理想の生活を送っているかのような妻にも
 転機は訪れる。
・ある日、夫婦ともども付き合いのある夫婦の夫から紹介された紳士、その交わりのなか
 で、夫とのセックスに対する物足りぬ思いを確認する。日常を満たしてくれる夫、身体
 を満たしてくれる不倫相手。誰も傷つけない。
・料理教室に通う夫婦同士で付き合いのあるママ友の夫から男を紹介された。
・夫とはうまくいっている。昼も夜も。大きなキングサイズのベッドで一緒に寝ている。
 夫が年齢のせいか、セックスが最後まではできなくなっているが、胸にキスをしたり、
 秘部をまさぐったりはしてくれる。夫に不満などひとつもない。
・そのママ友の夫いわく、大人の戯言と思ってこっそり対応してくれれば誰にもわからな
 い、デメリットはない、大きなメリットがあるという。旦那ともっと仲良くなれる。新
 しい恋をすることで、もっと奇麗になれる。そして背徳感から旦那に対してやさしくな
 れる。旦那のよい部分を引き出せる。というのだ。  
・なんの不自由もない幸せな暮らしを与えてくれている夫。夜の営みもいまだにある。そ
 れなのに、なぜ、ほかの男性と食事をしたいという思いが拭えないのか。私は朝まで眠
 れなかった。 
・夫が泊りがけでゴルフに出かけた日に、その男性と食事をした。男は、想像以上に博識
 で、私の好奇心を満たしてくれた。ジェントルマンという言葉がぴったりとあてはまる
 男だ。なにを聞いてもわかりやすく的確に教えてくれる。パリの裏町の名店の話。食文
 化の話に限らず、ファッションの話。自分がどんどん高められる、そんな気がする時間。
・高層ホテルの窓は夜景を映し出したかっただろうが、霧雨は夜景を遮った。さらに暖房
 で大きな窓に露がつき、真っ白に曇っている。窓に移った泣きそうな自分の顔が見えた。
 ここにきて少し怖くなっている自分がいる。 
・一度しか会ったことがない人と一線を越えてしまっていいものなのか。今日、打ち解け
 たこの人は、本当に信じていい人なのか。騙されているのではないか。
・男はやさしく微笑んで振れる程度の軽いキスをした。夫以外の男の唇を味わった。さっ
 きの酔いが一気に甦った。ワインで酔ったのか、キスに酔ったのか、もはや思考回路は
 遮断された。 
・そのままふたりはキングサイズのベッドに転がるようになだれ落ちた。激しいキス。何
 度も唇を噛まれる。何度も舌を差し込まれる。男は私の舌の表面から裏側までを丁寧に
 味わう。キスだけなのに、私の身体の内側を流れている血は燃えたぎるように暴れてい
 る。
・「恋をした」という台詞。「好き」ではなく「恋をした」という台詞。50歳を過ぎて
 恋の対象になったという事実が私の心を躍らせる。
・ワンピースで遊ぶように時間をかけて脱がせる。右腕、左腕を袖から抜く。腰から足首
 までワンピースをずらしてゆく。手触りがいい生地がスルスルとベッドから滑り落ちる。
 ストッキングをやさしく下ろす。黒い下着姿の私。夫が買ってくれた下着だが、これを
 身にまとって夫に抱かれたことなど一度もない。
・先にバスルームでレインシャワーを浴びながら、私はひとつ息をつく。丁寧にその部分
 を洗う。夫以外の男を受け入れる準備。指を当てたとき、すでに準備が整っているとは
 っきりわかった。キスをして胸をさらしただけなのに、そこはすっかり熟れていた。ボ
 ディソープを塗り込んだのち、お湯をあてた。
・私はベッドに戻り、男がシャワーを浴びる間に落ち着こうとした。だが、数分後の情事
 を予想してか、身体はどんどんその気になってゆく。洗い流した内側がまたシトっと湿
 っている。
・バスローブを羽織った私を抱き寄せながら、男は「アティロン」とつぶやく。その瞬間
 から私は、いつもの私ではなくなってきた。しがみつくように男に抱きつき、「きて、
 きて」とせがむ。「恥かしい「と「きて」と交互に叫ぶ。
・男が舌先でツっと舐めるたびに、のけぞりながら息を吐く。首を後ろに大きく倒し、喉
 を大きく伸ばしながら苦しげに息を吐く。男がその部分に指を伸ばしたとき、そこはも
 う滴るばかりに濡れてたぎっていた。
・男と一体になったとき、私は世界が真っ白に見えた。男はあちらへ、こちらへと私を導
 く。イキそうになれば気を逸らし、渇望すると激しく動き始める。浅く、深く、予期せ
 ぬ動きで私を翻弄する。最高の白い世界。なぜ誘いを断らずにここに来ているのかわか
 った。 
・私は、快感を知りたかったのだ。夫はやさしく撫でてくれるが、私の気持ちが高ぶって
 くるとやめてしまう。激しく中で動いて欲しいのに、すぐに身体を離してしまう。夫と
 のセックスが物足りないことを、男にはっきり知らされた。
・どのくらい長くもつれあっていたのだろう。最後に気を失うくらい激しい震えが脳天か
 ら足の指先まで駆け抜けた。私は目を閉じて、大きく肩で息をした。
・いつもの日常が戻る。晴れ渡った空を見上げると陽の光がまぶしい。そんな爽やかな朝
 でさえ、あの夜の白い世界を思い出す。   
・楽しい。毎日がずっと楽しくなっている。
・夫はあいかわらず月に数回は私を求める。夫がベッドに寝ている私の下腹部を触れてき
 た。私は知らず知らずのうちに自分から足を開き、夫の指をそこへ導いた。感じる部分
 に指が触れたとき、頭の中でスイッチが入り、白い世界に入り込んだ。夫は少し躊躇し
 たが、思い切ったように指を3本グッと入れた。その行為だけで、私は達してしまった。 
・私は、その後も男と月1回のペースで身体を重ねた。そのたびに白い世界を経験し、ど
 んどん感じ方が大きくなる。 
・夫はED治療薬や精力剤を飲みながら、私と楽しむようになった。私は夫とも男とも、
 白い世界に旅立てるようになっている。夫への小さな隠しごとが、たまらなく刺激にな
 る。 

夫の実弟
・主婦(自営業)、42歳、結婚15年目、子供2人
・妻は毎日、耐え忍んでいた。夫と営む商店の店番から家事や育児。思いやりがデリカシ
 ーの欠片も感じさせず、セックスもガサツな夫に、疲れていた。 
・兄とは違い、やさしく声をかけてくれる弟、商店裏の倉庫の中、ブラウスとブラジャー
 だけを残した姿でテーブルの上に乗り、脚を開いた。 
・夫とは16年前、地元の商工会が主催する未婚男女の集いで出会った。当時の夫は商店
 主の親分的存在でリーダーシップがあり、存在感が抜群。周りの者をグイグイ引っ張っ
 ていく逞しい男に見えた。もちろん、女性に対しても男気を発揮し、おとなしい私が手
 中に堕ちるのは当然の成り行きだった。私の思いなど気にせず、強引にデートに誘い、
 滔々と夢を語った。 
・ゆっくり考える暇を私に与えず、結婚まで突っ走った。若かった私は「男の人はこれく
 らい決断力があって積極的なほうが成功する」という想いもあったが、それが間違いだ
 と気づいたのは長男が生まれてから。産後間もない私にも店番と家事を強要する。義父
 も「昔の女は出産した翌日から働いていた」などと追い打ちをかける。「今の時代にな
 ってなにを言ってるのか」と憤慨しても、「昔は、昔は」と身勝手な法則を振りかざし、
 私を蟻のように働かせる。
・私は家を出たかったが、弱みがあった。実家の父が浮気をして出ていってしまったため、
 母の日々の生活費を夫に借りているのだ。  
・夜になると、夫は毎晩のように私の上に乗ってくる。素面だろうが、酒を飲んでいよう
 が関係ない。好き者なのだ。2度とコイツの子供は産まないと決めていたが、結局、ま
 た妊娠してしまった。
・その日は店番のパート女性が非番でいなかった。夫は、店に回って「休憩中・御用の方
 はブザーを押してください」という張り紙を貼った。夫は私の腕を引っ張り畳の上にゴ
 ロッと転がせた。真っ昼間から、夫は男の欲を剥き出しにして襲いかかってきた。
・夫は私のストレッチパンツを強引に脱がせた。白いパンティがあらわになる。口の中に
 タバコと唾液が入り混じった嫌な臭いが侵入してくる。気味が悪い。夫の股間が太もも
 に当たる。硬くなっている。
・夫は欲の赴くままに、自分のズボンと下着を脱ぎ、私のパンティを押し下げた。力では
 太刀打ちできないおとは長年の経験でわかっている。あきらめて、体中の力を抜く。降
 伏したほうが早く終わる。夫は乳房への愛撫も、なにもないまま、カチカチに固まった
 それを私の中に入れようとした。準備できていない私の体がそれを拒む。夫はもう一度
 自分の指を舐め、唾液をたっぷりつけてから突起にこすりつけた。 
・こんなに嫌いな夫でも反応してしまう。そのことが私は情けなかった。子どもが生まれ
 たあとからは特にそうだ。性欲ほとばしる夫の要求にすべて答えてきたのは、つつかれ
 ると感じてしまう身体になったからだ。
・夫は若い頃から外面がよく、いまだに地元の男たちのボス的な存在だ。冠婚葬祭から、
 秋祭りまで夫が采配をふるわなければ地元の男衆は動けない。人より大きな声を出し、
 人より大げさに動く。
・外でいい顔をする反面、家では横暴極まりない。店の仕事以外は一切動こうとしない。
 5人分の洗濯物をベランダに運ぶのはもちろん、倉庫にある醤油瓶が6本詰まった重い
 箱を店に運ぶときも手伝おうとさえしない。
・2人の子供たちは、母親をこき使う父を嫌っているかのように避けている。夫が話しか
 けても適当に答え、すぎに2階の部屋へ駆け上がってしまう。夕食は爺さんと3人で早
 めに食べて、決して夫と一緒に食卓を囲もうとしない。
・ある日、店番をパートの女性に任せて、倉庫で古い商品をまとめている作業をしていた。
 夫の弟がやってきた。弟は夫の5歳年下で、いまだに独身。隣町の介護センターでに努
 めている。
・弟は夫に似ても似つかぬ情がある、やさしい心を持つ男だ。たましにか会わないが、訪
 れるたびに私を力づける言葉をかけてくれていた。
・弟が私の背中を包み込むようにそっと抱きしめた。私は身動きが取れず立ちすくむ。驚
 きすぎて声が出ない。
・弟が私のあごに指をかけて上を向かせた。頬に残る涙の跡に唇を寄せた。そんな場所に
 キスをされるなど今までにあっただろうか。私は背筋を伸ばした。
・弟は今度は私の唇に自分の唇を重ねる。成るがままにと、私は従った。弟の上腕を両手
 でつかむと弟は私をテーブルの上に寝かせた。
・倉庫の鍵の音がカチャンと鳴る。この時間帯は来客も少ないのでパートの女性ひとりで
 充分回せる。私は拒まなかった。 
 グレーのブラウスのボタンを上から順に3つ外し、ブラジャーを首元まで押し上げる。
 夫にしか触られたことがない乳房が顔を出す。
・弟は勢いよくかぶりつくように口に含む。両手で乳房を下へ上へと丁寧に揺さぶる。こ
 れほどやさしさを感じる愛撫を私は知らない。今までの辛かったことをわかってくれる
 男が、耐え忍んできた身体を癒してくれている、そんな気持ちになる。耳たぶが火のよ
 うに熱い。脇の下に汗がにじむ。身体が火照っている。
・弟が乳房に頬擦りしながら囁く。弟の神を両手でそっと梳かしながら私は溜息を漏らす。
・夫ならば、いきなり私の素本を下までおろして下着をはぎ取るが、弟は膝までおろした
 ままで下着の上から私の下腹部を撫でる。ゆるゆるとした手触り。円を描くような、や
 さしい愛撫。じらされているような気分だ。
 阿多氏の作業用ズボンがテーブルの下に落ちる。ブラウスとブラジャーだけを残した格
 好になり私はテーブルの上でそっと膝を立てて脚を開く。弟は立ったままだ。その部分
 だけを露出し、腰を私の脚の間に挟み込む。
・テーブルの上に寝かされた私は、自分の破廉恥な格好を恥ずかしがり顔をそむける。ラ
 ンプの灯りが私の下腹部を照らす。 
・「ああ、こんな格好、誰かきたら・・・」「兄貴は会合で夜まで帰らない。パートの女
 性だって店番から離れられない」弟のその言葉に安心したように私は力を抜いた。抜い
 た瞬間、一気に弟が入ってきた。
・夫には身体だけ反応していたが、今は心まで許した男を受け入れている。その喜びが快
 感を高めた。
・毛嫌いしている男とするよりも一層深い快感が次から次へと脈打つ。弟が激しく腰を振
 る。頑丈なテーブルがギシギシと音を立てる。私は脚を弟の腰に巻きつけた。すると、
 身体の一番深いところまで愛する人が迎えにきてくれた感触がした。
・私の額から汗が滑り落ちる。弟の両手が私の腰をグッと掴んで固定させ、腰を強く突き
 出した瞬間、私はなんとも例えられない快感を覚えた。
・そのときと重なるように弟も果てた。テーブルの上にあった在庫管理ノートがバサッと
 床に落ちた。
・静香になった薄暗い物置の中でトクトクとふたりの血液の流れる音が聞こえる。弟が落
 ち着くまで、弟がそれを中に置き、私は息を整える。
・それから、弟が実家にくる回数が頻繁になった・パートの女性が勘ぐってもいけないの
 で、店内を通らず直接倉庫で会うことが多かった。ときには、学校のPTA行事や商品
 配達という理由で家を抜け出し、隣町のラブホテルに行くこともあった。
・夫との場合、愛のない行為ではあるが、私の身体はそれなりに反応する。弟には思いを
 寄せているので、喜びも倍増する。女の身体は不思議なものだといつも思う。夫のセッ
 クスで山の八合目まで登るとすれば、弟とは頂上まで到達する。弟と一緒になることは
 できそうにないが、くじけそうになったときお支えとして大事にしようと思った。
・いくら強くなっても、女は性の山に登らせてくれる男がいないと寂しいかもしれない。
 愛がない夫にさえ感じてしまう身体をもつわが身を、どう扱えばいいのか。考えても考
 えても、結論はでない。

心の隙間を埋めるもの
・主婦(惣菜店パート)、38歳、結婚9年目、子供なし
・結婚9年目、腰痛のせいで仕事をさぼるようになり、夫婦の板波もなくなった夫。ふと
 したきっかけから妻は2人の男性と不倫を興じる。
・夫は家具配送の仕事をしている。年を重ねてきてから腰痛に悩み、仕事を休んで家でブ
 ラブラしていることが多くなった。居間で寝そべり、テレビをつけっぱなしにしている
 夫の背中を見るたびに、私はやるせない思いがしていた。
・私は子どもがほしい。それなのに2年前から腰痛を理由に夫は私にいっさい触れなくな
 った。
・私が夜遅くまで働いているのをいいことに、夫はパチンコと個室ビデオでひとり好きな
 ことをしている。
・そんな頃だった。毎日夕食の惣菜を買いにやってくる男と出会った。ひとり暮らしの男
 は私に一目惚れし、惣菜屋に通い続けた。
・男は4年前に離婚し、今は賃貸マンションで一人暮らし。子どもの養育費を毎月送って
 いるので贅沢はできないという。会うのは駅から少し離れたところにあるファオミレス
 か男の家だ。 
・私が男のそれをキュッと握る。奮い立つ男。私の唇に思いきり舌を突き刺し、グルグル
 回す。私の欲望に火がつく。貪欲に男の硬いものを手に誘導し、自分の中に導く。
・私は昔、夫の荒っぽいキスで女の喜びを開発された。夫はとにかくキスがうまい。舌先
 が単体で生きているように私の身体を這いずり回る。キスされているだけで、現実世界
 からどこかへワープしたような気にさせられる。キスで全身をくまなく責められたあと、
 一番感じる突起に舌を押しつけられ、私は何度もロケットのように旅上がっていた。
・そんなことはもう思い出になっている。結婚9年目。夫は腰痛持ちのオヤジになり、私
 の身体に指1本触れようとはしない。私に無関心。仕事に無関心。生きてゆくことに無
 関心。情けない。そんな夫を愛していた自分が情けない。私は仕事をがむしゃらに頑張
 って、夫とのはがゆい現実を棚に上げようとしている。  
・男はそんなときに現れたスパイスのような存在だ。夫と別れて男と一緒になりたいわけ
 ではない。ただ、私の前ではしゃぎ、弱みを見せてくれる自然体がいとおしい。
・男もよくキスしてくれる。私の欲を満たしてくれる。私が常に欠乏を感じている愛情を
 注入してくれる。 
・私の身体が乾いているときは、水をのませるように欲を治めてくれる。男と身体を重ね
 ているだけで私は救われていた。先のことなど考えない。今、男がいなければ私は気持
 ちも身体もカラカラにひからびてしまう。

・パート先の店で、調味料を配達している20代の若者と食事の約束をした。場所は若者
 の食生活を考えて、サラダ食べ放題のハンバーグ屋。40近くにもなって、モテている
 自分を誇らしく思った。
・ハンバーグのビックサイズをペロリとたいらげ、飲み放題のドリンクを5杯もお代わり
 する若者。豪快だった。
・帰り道、公園の脇の遊歩道をふたり並んで歩いていた。若者からキスをせまられた。若
 い男の後先考えない奔放さが気持ちよい。私は若い男に一歩近づき、唇にチュッと触れ
 る程度の軽いキスをした。
・私は若いの腕をぎゅっと握り、唇をグッと押しつけた。若い男の唇が押しつぶされて、
 私の舌を受け入れようとそっと開く。私は胸を若い男い密着させて、下で男の口内をネ
 トっとかき混ぜた。
・若い男はホテルに誘ってきた。私は言った。「一度だけ。一度だけだよ」
・若い男の振る舞いは想像以上に豪快だった。みなぎる力、有り余る欲求を全身で私にぶ
 つけてくる。荒々しいミスに、私はたじろぐ。安っぽいラブホテルのベッド。薄手のシ
 ーツをクジャグジャにしながらふたりは暴れ回る。シーツが剥がれて赤茶けたマットレ
 スが見える。ベッドヘッドにある棚に私の頭がゴツゴツと当たるほど若い男は激しく攻
 めてくる。
・腰を大きく上下にスライドさせながら、若い男は動物のような雄叫びをあげる。汗が毛
 穴から噴き出してくる。若い男の汗で私の身体もべっとりしている。若さとはこういう
 ものなのか、私はそれを受けとめることができる自分の女の部分を感じて身震いする。
 背中にてを回すと汗で滑り落ちる。手のひらが濡れる。
・一度果てたあとも、若い男はすぎに回復し、何度も私に押し込んでくる。私はそのすべ
 てを受け入れ、自分も楽しんだ。頭と下半身が切りはなされているようだ。頭の中では
 もう一人の男と比べる冷静さがある。だが、下半身は若い男の動きにいちいち反応して
 いる。突かれれば押し返し、止まれば包み込む。
・若い男が後ろからグッと腰を押し付ける。私の背中が弓のように反り返り、お尻を猫の
 ように突き出す。腰痛持ちの夫にはできない腰の振り方だと思うと、笑いがこみあげて
 くる。
・若い男との情事も、もう一人の男との付き合いも、その時々は身体と心を温めてくれる
 が、ひとりで歩いていると胸に隙間風が吹き込む。
・私は、歩道に置いてあるベンチに座っていろいろ考えた。ふたりの男に誘われたことで
 女として現役だということに気づいた。夫が夫婦関係も仕事もやる気がなくなっている
 のは、私に置いてけぼりにされているからじゃないかという答えがボヤッと見えてきた。
 夫に寂しい思いをさせているのは自分?そう思ったとき、ふっと気持ちが軽くなった。
 小走りに駅に向かった。早く帰って腰のマッサージをしてやろうと。
・私は夫の上にまたがり、腰のツボを探すように押してやった。腰から手を滑らせて股間
 に移動する。何年ぶりかに触る夫の膨らみ。気恥ずかしいような懐かしいような手触り。
 私は添い寝をするように転がって、そこを両手で包み込むようにお揉みほぐす。
・反応してくる懐かしい夫の膨らみ。勢いはないが微熱を帯び、じんわり硬くなる。パジ
 ャマとパンツをおろし、仰向けにさせる。私はまた馬乗りの姿勢になる。自分も下着を
 脱ぎ、自分のそこを指でグルリと撫でて蜜が滲みてくるのを待つ。ほどよく滲みた頃、
 夫のふくらみをめがけてスッと腰を降ろした。 
・ふたりの男とは違う懐かしい感触が背筋を上がってくる。ゆっくり腰を上に下に動かす。
 夫のそれは硬さを増す。しっくりくる形。自分の形にぴったりなのだと初めてわかった。
 夫は私を布団に寝かせ、いつかのように身体全体にキスをし始める。舌が動き回る。と
 ろけるような感触。 
・私は夫の腰をそっと撫でた。「腰が治るまで私が上に乗ってあげる」私はまた、夫の上
 でゆっくり動く。背筋をピンと伸ばし、馬の手綱を引くように。