職業としてのAV女優 :中村淳彦

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ITと呼ばれる新しい情報通信技術の出現は、社会に大きな変化をもたらした。インター
ネットや携帯電話が社会へ浸透するにつれて、人々の社会倫理や社会道徳も大きく変化し
てきている。それまでとは違い、簡単に連絡を取れることから、いわゆる男女間の「出会
い」の機会が格段に増加するとともに秘密裏に行えることから、浮気や不倫も大幅に増え
ていると思われる。今の社会では、もはや「貞操」とか「処女」といった昔ながらの倫理
感覚はすっかり消え失せてしまい、セックスは神聖なものとの感覚はなくなってしまって
いる。まさに「モラル崩壊社会」である。
この本は、いわゆる「AV」と称する業界について詳しく紹介したものであるが、この
AVに出演している女性たちの感覚も、昔と今とではまったく違っているようだ。ポルノ
女優と呼ばれていた昔なら、このようなハダカを人前にさらすような女性は、特別な事情
を抱えた人たちであったが、AV女優と呼ばれるようになった今やごく普通の女性たちが
簡単にこのような業界に入りこんできているとのことだ。世の中は我々が想像する以上に
先を行っている。
そもそも、「売春」を「援助交際」と言い換え、「ポルノ女優」を「AV女優」と言い換
えること自体、風俗業界の都合のいい「まやかし」だ。その背景には、社会に埋没したま
まの人生を送りたくない、自分の存在感を見出したい、他の人に負けたくない、という意
識が強くあるためではないのかと感じられる。ありふれた人生、ありふれた日常に満足で
きない、何か刺激が欲しい、という欲求が根底にあるからではないのかと思われる。「女
性たちよ、自分のカラダを安売りするな!」と言いたくなる。
しかし、不思議なのは、普通の売春が取り締まりの対象となっているのに、このAV業界
のカメラでの前でセックス行為は売春に当たらないのだろうか。なぜ、このAV業界を当
局が取り締まらないのか、私には理解できない。ソープランドなど密室での売春よりも、
カメラの前で本番行為をするこのAVのほうが、社会への悪影響がずっと強いと私は思う
のだが、私の感覚がおかしいのだろうか。

はじめに
・女性たちがカラダを売る理由やその仕事に対する意識は必ず社会を反映している。例え
 ば1990年代と2000年代後半以降のAV女優では、まったく人種が異なっている
 といっていいくらいに違う。その背景にはITの浸透や社会倫理の弱体化、貧困層の登
 場やAV業界内の激しい競争が潜んでいる。女性たちの裸仕事に対する意識も変わり、
 かつては「たくさん稼いで、早く足を洗いたい」だったものが、いつの間にか「できる
 だけ長く続けたい」というものが一般的になっている。ただ生きるには希望がなく、女
 性たちが裸になってでも誰かに承認されたいと願う社会が、セックスを売るAV女優た
 ちに反映されているのである。

新人AV女優の誕生 毎年6000人
・学生、主婦、会社員、公務員、フリーター、あらゆる社会的地位にある女性がインター
 ネット画面に浮く「モデル募集」の求人広告に応募し、街中での「AV女優になってみ
 ない?」という誘いに頷き、深く悩むことなく、その場の勢いや好奇心といった、ほん
 の少しの心の揺れでカメラの前で裸になり、セックスをしている。派手な遊び好きの女
 性かといえば、まったくそんなことはなく、現在は誰がAV女優をしていても不思議で
 はない。仕事の内容はカメラの前で性行為をすることがあっても、AV女優になるまで
 の男性の経験人数が1人か2人という女性はざらである。女性たちは決して怯えるわけ
 でもなく、「一日でも長く続けたい」と意気揚々よAV女優生活を送っている。
・現在のAV女優は決してお金になる職業ではない。AV女優の全体の80パーセント以
 上は1本数万円という報酬、専業の場合、遊ぶどころか、質素な自分の生活を支えるの
 も困難である。カメラの前で裸だけでなくセックスやもっと過激な性行為を披露して、
 その姿を収録した映像がDVDにプレスされたり、インターネットで配信されたりして
 全国どころか、全世界に流通することを考えると、その対価は安いとしか言いようがな
 い。 
・1990年代までAV女優という職業は、社会の底辺の一つとして認知されていた。女
 性の最後の手段を売るセーフティネットであった。さまざまな事情によってAV女優に
 なる覚悟をした女性たちは、親や友人たちにバレることを恐れながら、カメラの前で脱
 ぎ、セックスをして収入を得ていた。
・最近のAV女優の事情は違う。社会的地位のある人は隠したいところは巧妙に隠し、平
 成生まれの若い女性たちは、恋人や人によっては親にまで許可をもらって堂々とAV女
 優をしている。人の前で裸になって誰かとセックスをすることに後ろめたさや恥ずかし
 さはなく、「バレたらどうする?」という不安や焦りは古い感覚になっている。
・かつて、 AV女優になる入口は路上で女性たちに声をかけるスカウトだったが、現在
 は自分から出演したいと志願し、応募してくる女性が中心となった。不景気で収入減を
 補おうとする女性から、好奇心や刺激欲しさの女性まで、幅広い層からの応募で出現志
 願者膨れ上がり、完全に供給過剰な状態となっている。AV出演を希望する女性はルッ
 クスやスタイルや性格を吟味され、現在はある水準に達していないと末端のAV女優に
 さえなれない。大多数の女性は出演したいと希望しても面接に呼ばれることすらなく、
 門前払いをされているという現実がある。
・AV女優の数は6000〜8000人くらいじゃないかと思われる。そのうち3分の2、
 4000〜6000人くらいが毎年入れ替わっている。AVの売り上げは完全に頭打ち
 で、今は出してみないと売れるか売れないかわからない。実際に女優になってもまった
 く仕事がない女性が半分以上、実質稼働しているのは全体の3割くらいじゃないかと思
 う。売れる女性は売れる、売れないのは売れない、格差が激しくなっている。
・AV女優は応募者が殺到するそんな魅力のある職業なのか?いや、そんなことはない。
 決して高いとはいえない出演料は頭打ちで、競争は激しくどんどんと短命になり、ビデ
 オと比べるとメディアはDVD、ブルーレイと大容量になり、メーカー間の競争が過激
 化する一方で、女優は使い捨てが当たり前、安定性と将来性のない過酷な肉体労働とな
 っている。  
・現在のAVには無数のジャンルがあってOLや女子高生や人妻など役柄や自分自身のそ
 のままの姿など役割が与えられ、セックス行為もさなざまなパターンがある。したくな
 い行為があったらNG項目としてあらかじめ申告しておけば、その行為を求められるこ
 とはない。本番や生フェラは必須であるが、嫌な行為はしなくてもいいので安心である。
・あらかじめ決められていた性行為やセックスをこなして、パッケージ撮影をして出番が
 終われば仕事は終了になる。AV女優は主役なので撮影の最初から最後までなにかしら
 出番があることが多く、通常、撮影は丸一日かかる。
・裸の世界で消費者の男性から支持されるのは、今も昔も性的な匂いのしない素人女性で
 ある。清楚でしとやかで淫猥に乱れる姿を想像するのが困難なほど、不特定多数の男性
 の興奮を誘いやすい。性風俗や援助交際など売春経験のない、欲を言えば高学歴であっ
 たり、幸せな家庭人であったり、社会的に認められる履歴があり、居場所のある普通の
 女性の裸ほど売れる。  
・本格的にボーダレス化が起こったのは、90年代後半から。パソコンや携帯電話が普及
 して、「てぃんくる」などの女性向け高収入誌の創刊、そして多くのモデルプロダクシ
 ョンがインターネット上にモデル募集サイトを開設、AV女優になりたい一般女性たち
 が自ら応募してくるようになったことが、一つの転換のポイントになっている。
・援助交際という言葉が流通して、積極的に売春する若い素人女性が現れた頃、小泉首相
 時代の「聖域なき構造改革」を境にリストラの嵐が吹き荒れて雇用が減少し、年功序列
 が崩壊、地方経済が弱体化して貧困層が誕生した。未来が見えなくなってだんだんと倫
 理や貞操を重んじる社会状況ではなくなっていった。
・そもそも本番シーンのあるAV自体が、賭博罪に抵触しているパチンコ店や売春防止法
 に抵触しているソープランドと同じく、厳密には合法的な職種ではない。それに関わる
 関係者や関係業者は法律的には灰色な存在である。  
・裸になるキッカケはそれぞれだ。「収入が足りない」「生活が苦しい」「退屈、刺激が
 欲しい」「誰かに認められたい」「彼氏がいないのでつまらない」「旦那とセックスレ
 スだから」誰もが日常的に思うだろう些細な心の揺れから、どこかで聞いたことのある
 AV女優という職業が頭に浮かび、軽い気持ちでインターネット上を検索、たまたま見
 つけたモデルプロダクションに安心感を与えられて、あまり深く考えずに裸の道を選択
 している。
・「裸になって稼ぐ」という好奇心を刺激された女性たちが、抵抗感や後ろめたさのない
 まま自ら応募する時代になって、どんな履歴や性格や社会的地位の女性が登場してもお
 かしくなくなった。やがて普通の女性が普通の仕事として、AV女優に取り組むように
 なってしまったのである。
・現在、AVは未曾有の富強状態である。少しでも視聴者の目に留まるように女性のクオ
 リティをどんどんアップさせ、より過激な性行為をさせている。そんな中で自ら応募す
 る女性は急増して、厳選されている。いまやAV女優は数多くの女性の中から選ばれる
 存在なのだ。

AV女優の労働条件 日当3万円から
・女性の裸やセックスは、経験がないほど、汚れがないほど価値が高く、AV女優は身を
 切り売りしながら延命するという一面がある。AV女優はプロの職業でありながら経験
 するほど価値が下がるという生鮮食品のような商品であり、数ある職業の中でも特殊な
 性格を持っている。 
・現在、アダルトメディアは不況であり、出演料は次のような状況のようだ。
 ・単体  :100万〜250万円(1本当たりの出演料)
 ・企画単体:30万〜80万円(1日当たりの日当)
 ・企画  :15万〜25万円(1日当たりの日当)
・裸の評価は、なにを売りにするかで変わってくる。王道の女性らしさを売るならば顔と
 スタイルのよさは基本、ロリなら子供のような体型でとにかく幼く見えること。逆に胸
 は小さいほどいい。またAV視聴者は高齢化しているので、応募の絶対数の少ないオバ
 サンという一見ネガティブな要素も、最近はプラスである。 
・裸の女性は日常と乱れる姿のギャップがあるほふぉ売れやすく、特に人妻は巨大ジャン
 ルになっていて女子高生役をやれるような若い女性も引っ張りだされている。
・こんな人がどうして?と思わせる才能や経歴があるといい。教員免許や看護師などの難
 関資格取得者や、超一流大学在学中や卒業なども有力な売りとなる。かつて現役東大生
 や東大卒はいたが、弁護士やキャリアの国家公務員には一度も出会ったことがない。
・清純系からウブでなにも知らない汚れない清楚な美少女、外見がとにかく重要であって
 性経験は少ないにこしたことはない。最近は三十路を越えた美熟女の注目度が高く、美
 熟女は逆に性的に成熟している方が好まれる。本当にエロいのかを知るためにその場で
 愛撫や性感チェックなどをする場合もあり、モデルプロダクションに所属した瞬間から
 裸や性的行為を含めたすべてが商品となるので、多少理不尽な行為があってもアピール
 して売らなければならない。  
・挑戦するに値する業種もあるが、一般企業が進出したり、脱サラをして開業したりする
 一般人がほとんどいないのは、やはり女性を確保して本番の撮影現場に斡旋するのは非
 合法だからである。撮影現場で本番をするのは解釈によっては売春防止法に抵触して
 「公共の福祉に反する」行為なので、あらゆる労働関係の法律に違反しているという見
 方ができる。どうして摘発されないかというと、AVは警察関係者を確保した審査団体
 のフィルターを通して、「合法」の建前を整えてから流通されるので、AV業界全体が
 ソープランドやパチンコと同じく、今のところ「必要悪」として成立しているからであ
 る。
・モデルプロダクションが明らかな非合法として即摘発されるのは、未成年を猥褻現場に
 斡旋した場合の児童福祉法違反や青少年保護育成条例違反。未成年を使用すれば摘発さ
 れるのはAVメーカーも同じで、メーカーは加えて商品に陰部が見えていたなどの猥褻
 も認められていない。
 
AV女優の労働市場と志望理由 倍率25倍
・現在のAVやエロ本を見れば一目瞭然だが、クオリティの高い女性しか撮影という機会
 は与えられず、誰でも裸になる覚悟をすれば、いくらかのお金になるという時代は完全
 に終熄している。
・せっかく裸になる覚悟をして応募しても、スタート地点にも立たせてもらえないのが現
 状である。企画単体で活躍する女性たちは倍率の高いAVプロダクションの面接を通過
 して、目の肥えたAV監督やプロデューサーの目に留まった選び抜かれた存在。受験生
 が一流大学に合格するより、就活生が一流企業に内定をもらうよりも難しい競争社会な
 のだ。
・セックスをするAV女優という仕事が精神を蝕むのではなく、その居場所を喪失する不
 安や焦りが精神状態を悪化させるといえる。寿命がやってきて売れなくなると当然収入
 も扱いも変わってくる。彼女たちはやっぱりまた裏切られたと絶望して、ときに逆恨み
 をしてさらに病んでいく。結果として悪化してしまったケースは決して「性搾取する
 AV女優という職業が女性を壊している」わけでなく、「壊れている女性に機会を与え
 てしまったために、結果してもっと壊すことになってしまった」という方が正しいので
 ある。AV女優に病んでいる女性が減ったからといって、病気そのものが減少している
 とは考え難い。これまでAVが受け皿となっていた女性たちは、時間的に自由な風俗や
 売春市場に流れているはずである。
・今も昔も、地方出身の女性はAV女優の中心的存在である。繁華街で突然声をかけられ
 て立ち止まって話を聞いてしまうのは決まって地方出身女性であった。東京にはどんな
 チャンスが転がっているかわからないと思っている。期待感がある反面、右も左もわか
 らない。地域社会や地元産業が活力を失って疲弊した地元を出たばかり、せっかく上京
 したので一発逆転をしたいという願望がある。さらに東京には利益のためなら、簡単に
 人を騙す危険人物たちが存在することを知らない。「有名になれる、火曜サスペンス劇
 場の準主役を探している」など、嘘八百の言葉を信じて「タレント活動のスタートはま
 ず脱ぎ」みたいな作り話に乗って、地方女性たちはわりあい簡単に騙されてAV女優に
 なってしまうのである。
・アダルトメディアの中心は東京で東日本という土地柄や人口の問題もあるだろうが、筆
 者の感覚では東北、茨城、千葉の出身女性がとにかく多い。千葉県は東京の隣県で地方
 とはいえないかもしれないが、毎年各市町村から複数のAV女優をだしているといった
 状態で、未成年の援助交際や風俗も非常に盛んである。 
・最近、地方出身女性のAV女優になった理由で激増しているのが、東京での生活苦であ
 る。進学や就職などで希望を持って上京したはいいが、仕送りを望めぬような中流の家
 庭以下の女性は給料やアルバイトをして東京での生活を支えなければならない。どれだ
 け長時間、まじめに働いても生活がギリギリでどうしても普通に暮らせる収入が得られ
 ない。よって、高収入が謳われているAV業界に飛び込んでしまう。普通の生活をする
 ために裸になる決断をする傾向がある。
・AV、エロ本不況による需要減は著しく、将来的にAV女優の需要が増えるとは考え難
 く、まだまだ減っていくはずである。AVユーザーの高齢化がネックになっている。若
 年層はアダルト画像は無料で入手するものと刷り込まれている。アダルトメディアは若
 年層の獲得に失敗して、お金を出してアダルトメディアを購入するユーザーの主な年齢
 層は、インターネットで欲しい情報を入手できない40代、50代のものとなっている。
 現在の熟女市場の拡大はAV、エロ本ユーザーの高年齢化が理由である。
・AV女優志願者のメインは、まだこれからの人生設計に悩んでいるモラトリアムが続い
 ている20代前半。その層は供給過多で価値が急降下して、波のルックスならば若い女
 性より、出産経験のある少し肉体が崩れている中年女性の方が採用されやすいという現
 象が起こっている。ユーザーの高齢化によって求められるAV女優の年齢も上昇して、
 「女は若さ」という一般論はAVの市場では通用しなくなってしまった。今後、AV女
 優は、現在貧困が社会問題となっているシングルマザーの労働の受け皿や、性欲の強い
 中年女性の性風俗代わりの憩いの場として機能するかもしれない。 
・特別なスペックを持つ女性だけに扉が開かれるこれからのAV女優は、労働環境が改善
 されて働きやすくなったとはいえ、大多数にとっては決して明るくない労働市場といえ
 る。一部のNPO法人に「売春を貧困女性のセーフティネットに」という動きがあり。
 アウトローの専売特許であった性風俗への斡旋やモデルプロダクション業務に、将来的
 にNPO法人が乗り出してくる可能性がある。NPO法人が介入すれば出現料、ギャラ
 の動きは透明化されて女性への還元率は増えるはずである。働く女性も買う男性もメデ
 ィアも善意の人間ばかりではなく、暴力性を秘めないで運営できるのかというのは微妙
 だが、歴史的に前例のないNPO法人という黒船の登場によって労働環境の劇的な改善、
 進化が繰り広げられるかもしれない。
 
AV労働環境の変遷 96年のカオス
・AV撮影のメインは、セックス行為である。法律的にはグレイ、世間的には有害とされ
 る内容であって、一歩間違えると公然わいせつ罪や強姦罪、都道府県迷惑防止条例に抵
 触する可能性がある。AVは歴史的に数々の事件「失敗」を起こして、数年間の試行錯
 誤をしながら「改善」し、現在、メーカーには大手から泡沫までコンプライアンスを守
 らなければならないという意識が浸透している。 
・現在、AV女優になる推定合格率14パーセントを突破しても、その中の企画の半分は
 仕事がなく、専業なら生活にも困る状態である。精神的に問題のある女性はそもそも採
 用されず数は減っているものの、AV業界の末端には次の世界が見つけられないでしが
 みつき、裸の世界でも満足に仕事がない厳しい状況に絶望して精神状態が悪化、弱って
 いる女性が存在する。
・昔からAV女優の志願理由の一つに「性的好奇心」がある。もっと刺激が欲しいと面白
 半分、刺激欲しさでAV女優になって、日常の灰色の人間関係の中で気づかぬうちに価
 値観や距離を置くべき対象の一線が変わってきたりする。健全化した中でセックスを職
 業とする日常を送っていると、大なり小なり社会のコンプライアンスを守ることや怪し
 い人物と一線を引くという感覚が薄まって、知らぬうちに危険に足を踏み入れることに
 なる。いわゆる艦橋による感覚の麻痺である。
・AV女優は商品である。モデルプロダクションが囲い込み、情報の少ない温室の中に入
 れられる。良いも悪いもリアルな情報は商品であるAV女優本人には伝わりにくく、撮
 影現場で性行為を繰り返しているうちに、一般社会が居場所だった頃より刺激の溢れる
 日常となって感覚が変化する。刺激がある日常が当たり前となって、刺激の薄い一般社
 会に戻ることを想像できなくなってしまうのである。 

労使トラブル 損害請求1000万円
・AV女優は撮影現場で男と肉体を交りあわせるのが仕事。男女の問題はモデルプロダク
 ションの意図通りにはいかない。AV業界内には撮影現場が出会いとなったAV女優と
 AV監督、男優、AD、編集者などなどの禁断の恋愛が溢れている。発覚すればモデル
 プロダクション側に100パーセントの理があり、どんな要求をされても逃げられない。
 関係者がAV女優に手を出すのは、非常にリスクが高い。業界内カップルはモデルプロ
 ダクションには一切秘密で情事を繰り広げ、AV関係者も女性に業界ダブーという理解
 があることを前提で関係が深くなっているので、多くはバレないところで上手くやって
 いるが、これも男女のことなのでどういう展開を見せるかわからない。その恋愛が原因
 でAV女優とモデルプロダクションが辞める、辞めないのトラブルに発展した場合は大
 変なことになる。人気女優だった場合数百万円、一千数百万円の損害賠償を請求されて
 も文句は言えず、多額の請求額を支払う、駆け落ちする、事件性があったら警察に駆け
 込むなど、誰かが血を流さない限り終わりようがないのである。
・かつて「AV女優の墓場」などと歌われた凌辱シリーズを各社が揃えていたが、それら
 の一部は殴る蹴る、レイプするなど暴行行為が繰り広げられる本当にAV女優の墓場で
 あった。出演するのはメーカーを一周してもうこれ以上売れようのないかつて名前が売
 れていた企画単体や、もともと売れる見込みのない無名の企画女優で、モデルプロダク
 ションは撮影内容の凄惨さをわかっていながら女性を潰すつもりで最後の一稼ぎとして
 斡旋した。AV女優には基本的に演技は期待できない。よほどの能力がないと犯される
 迫真の演技は無理である。そこでメーカー側はモデルプロダクションだけに凌辱、レイプ
 という撮影内容を伝えて、なにも知らずに撮影現場にやってきた女優を犯す、のである。
 この手法は「ガチ」と呼ばれている。AV女優への騙し討ちで本当のレイプを撮影する
 のはAVの手法の一つで、あらゆるメーカーやAV監督が頻繁に使っていた。

AV女優の退職 引退後の付加価値は2倍
・AV女優は突然ぷっつりと我々の目の前からいなくなる。「すべて晒してしまって将来
 どうするのだろう?生きていけるのか?」と心配をしている方は多いと思うが、一般女
 性よりもルックスもよく、男のそそるツボを知り、性欲が旺盛であるので、AV女優の
 大多数は、第二の人生も問題なく歩でいく。AV女優全体では3分の2はキャバクラ
 や性風俗など、長期間従事することのできる高収入の風俗業に流れている。高級ソープ
 ランドや高級デリバリーヘルスなど、敷居の高い性風俗店では元AV女優をよく見かけ
 る。自分のカラダで稼げたことが成功体験となっているのか、活躍して名前の売った女
 性は、AV女優時代の名前そのままでサービスが高く売れる高級店に行く傾向がある。
 AV女優としての自分がそのまま付加価値として認められ、一般風俗嬢の2倍や3倍の
 価格がついていることもあり、名前が売れた女性は、しばらくは「その後」も安泰のよ
 うである。風俗に行かなかった3分の1は、もともと性を売る育ちや気質でなかったり、
 あくまでも視聴者に向けた「女優」という意識でAV女優をしていた女性で、AV引退
 をきっかけに裸になったりカラダを売る仕事から足を洗う。一般女性に感覚が近いこの
 タイプはAV女優をしている期間は人生の中の特別な時期であるという自覚があって、
 無駄な消費をしないで貯蓄をしている。脱がない第二の人生を決めたAV女優は貯めた
 お金で資格取得のために学校に生き直したり、一般女性のように中途採用の就職口を探
 したりする。
・企業への就職は厳しい。これは元AV女優だからという理由とは関係なく、経済が縮小
 していることが原因である。一度、レールから外れてアウトサイダーになってしまった
 女性の就職は元AV女優だからというより世情的な面で厳しく、多くが介護施設や飲食
 店など常時人材を募集している職種に就くようである。 
・これはセックス付きではあるが、パトロンを作る人もいる。特定の人を捕まえて、衣食
 住のすべての面倒をみてもらうのである。有名なAV女優であるほど、付加価値がつい
 て高いお金を払う人物が現れやすいのは当然と言える。これは現役AV女優が中心で特
 に名前が売れているAVアイドルに多いのだが、政財界や外国の要人や富裕層から「あ
 のAVを抱きたい!」という依頼がモデルプロダクションには、よくあるらしい。そう
 いう特権階級との繋がりから思わぬ展開や成功があるかもしれない。
・裸になってセックスをして稼いだ収入が忘れられないという高コスト体質から抜け出せ
 ない場合、唯一の持ち物である女を売り続けるしかない。楽しく楽にすぎに稼げたとい
 う「AV女優(売春)脳」は深刻で、これが退職後、3分の2が時給の高い性風俗に流
 れている原因である。AV女優は誰かにバレるリスクより、一般社会と感覚がズレるこ
 と、一度足を踏み入れてしまうと抜け出せないリスクの方が高い。
・性格にもよるが、AV女優を経験している彼女らが、大胆に積極的に求めれば男をひっ
 かけるなど朝飯前である。淋しいと思えば恋人がすぐに見つかり、結婚をしたいと思え
 ば結婚相手がすぐに見つかる。次の人生のために結婚や男に依存する道を選ぶのが最も
 楽で合理的であり、彼女らは好みのルックス、職業、性格、性癖の男性を選べる立場に
 あるので、ちゃんとした育ちで精神疾患がなく、少し腹黒いくらいの女性は、社会的地
 位のある男性と捕まえて一度の結婚で幸せな家庭を築いていく。美しいルックスとスタ
 イルがあれば過去は問わないという男性は意外と多く、心身が健康体ならば、なんの問
 題もないのである。  
・「AV女優なんて映像が一生残るので、軽い気持ちで足を踏み入れると一生後悔するこ
 とになる」みたいなことを言う人は多い。決して間違ってはいないが、退職した「そ
 の後」の人生でAV女優をしたことが、決定的な足枷になっているのは極めて少数であ
 る。インターネットの時代になって、売り出されてしまった映像や写真は決して消える
 ことがない。バレる可能性は低いといっても、絶対ではない。たまに新しい職場や新し
 い人間関係にバレて職場にいられなくなったり、人間関係が破綻したりすることがある
 が、それは運が悪くあったケースといえる。
・引退後にそのような裸やセックスの写真や映像が残ってしまうことより、深刻なのは
 「楽して楽しく稼げた」、また「注目されて必要とされた」という裸の世界だからこそ
 掴むことが可能だった成功体験から抜けられないことである。一時期の高コストな生活
 水準が忘れられなくなくて、普通の仕事はとてもできないと切り替えができない女性は
 多く、それがAV女優全体の3分の2が性風俗に流れている所以である。時給数百円や
 月給十数万円という脱がない一般社会人としての自分の価値を受け入れられないという
 ことは、裸になってセックスをする(売春)という狭い社会以外で生きることを放棄し
 ていることで、本来売春を知らなかったらさまざまな出会いや経験ができただろう可能
 性を潰していることになる。
・「結婚と恋愛の調査」によると、25歳から39歳未婚女性の55.7パーセント、
 20〜24歳未婚女性の58パーセントが「恋人がいない」と応えている。特定のパー
 トナーがいない女性が過半数を占める社会が背景となって、どんどん性的な倫理感が失
 われている状況を眺めていると、AV女優のボーダレス化はさらに進んで志願者は増え
 ることが予想される。志願者が増えることはAVも風俗も肉体を消費するサイクルはも
 っと早くなり、裸やセックスを売れる女性の厳選化はさらに進行するということである。
・カラダを売る刹那的な世界から抜けられないのが、女性がカラダを使って稼いでしまっ
 た成功体験の怖さである。やがて一般社会は別世界と思うようになって、「カラダを売
 る以外に自分には、なんの能力もない」と思い込み、明日を生きるためにしがみつき、
 惨めな想いをしながら「堕ちる」ことに慣れる。
・一般社会を拒絶してカラダを売る狭い世界に閉じこもる人生には、いつかまったく売れ
 ない「終焉」が待っている。売春志願者が激増している現在では、あっという間にそれ
 はやってくる。「終焉」が訪れても、なぜが女性の多くはその「終焉」を認めようとし
 ない。最後の武器を消費し尽くしてしまっても、まだ自分は売れると信じている。