「リストラ離婚」 :池内ひろ美

 リストラ離婚というと、一般的には会社をリストラされた夫を妻が見限って離婚するということ想
像するが、この本でいうリストラ離婚とは、妻が自分のそれまでの結婚生活を見直し離婚によって人
生を再出発するという意味であるらしい。この本は、筆者が実際に体験した離婚の経緯や状況につい
て詳しく描かれている。
 多くの世の中の離婚原因が夫側にあるように、筆者の離婚の場合も原因は夫の側にあったようであ
る。もっとも、この夫にも可哀相な面もある。それは妻が優秀すぎたという点である。小さいことか
ら秀才として育った夫が、自分より下と思っていた妻が、実は自分よりできる人間だったと知ったと
き、妻のことを「かわいいヤツ」と思えなくなったしまったのだろう。それからが悲惨な毎日の始ま
りだったようだ。どんなに社会的にりっぱな人間でも、いざ離婚という状況になると、前後の見境が
なくなるようである。社会的にもりっぱな地位にある夫が、それからは想像もできないような行動に
出るのである。
 この本を読むと、離婚するということが、いかに大変なことであるかを知ることができる。この本
で描かれている離婚の情景というのは、あまたある離婚のうちの一つの情景なのかもしれないが、多
くの離婚は、こんな状況を経ていくものなのだろう。それは、結婚という夢と希望と甘い生活とは対
極にある、すさまじいものであるようだ。この本を読むと、おいそれと簡単には結婚できないなと、
つい考えてしまう。しかし、多くの人は離婚ということなどは考えずに結婚する。もっとも、こんな
悲惨な離婚のことを考えたら、結婚などできないのかもしれない。このような悲惨な離婚にならない
ように、普段から結婚持続のために努力することが大切だと改めて思った。
 これから結婚する人、結婚をして幸せに暮らしている人、離婚を考えている人、それぞれの人にと
って、一読の価値のある本である。