「夫というもの」 :渡辺淳一

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この本は、女性の読者を対象に、「夫」とはどういう生き物なのかを解説したものである
が、男であり「夫」でもある私が読んでも楽しめる本である。
自分自身と照らし合わせてみても、この本で解説してある内容は、「ほんとにそうだな」
と納得させられる内容である。
また、「夫」として、あるいは男としての自分の人生を見つめ直す意味でも、世の男性諸
君にもぜひ読んでもらいたい。そして、未婚女性にも既婚女性にも、「男」とは「夫」と
はどういう生き物かを、理解を深める最適の本であると思う。この本を読むことによって、
「男」とは「夫」とはどういう生き物かの理解が深まり、「男」や「夫」の不気味な行動
がそれほど異常でないことを理解することができ、安心感につながっていくのではないか
と思う。

男が夫になるとき
・男は30歳くらいまでには、結婚して家庭を持つべきだ、という漠然とした一般的通
 念というか常識があり、その影響を強く受けている。
・そうした社会通念が失せるにしたがって、結婚しない男が増えることを意味していて、
 今後ゆっくりながら、結婚しない男が増えることは間違いありません。
・男たちはまずなにを夢見ているのか。多くの場合、まず抱くのは、幸せな家庭を築こ
 うという、真っ当な決意です。男という性は女性が思っている以上に真面目で保守的
 で、健気でもあるのです。
・すごく幸せでなくても、ほどほどの家庭ならそれでよしと、初めからやや冷めている
 というか高望みしないタイプ。結婚する男の三分の一はこの種のタイプで、そういう
 男は嫌だ、という女性は、結婚前に、相手をよく見極めておくことです。
・もっとも、ほどほどでいいと思っている男との結婚が、必ずしもうまくいかず、壊れ
 やすいというわけではありません。なぜなら結婚への大きな夢を抱き、期待が高いほ
 ど、結婚が長続きする、という単純なものではないからです。
・いい家庭の条件として、まず妻が優しく自分を愛し、いたわってくれるべきだ、思い
 込んでいる男たち。これは、夫となる男のほとんどが希望していることです。
・結婚するに当たって、夫の七割は、できたら妻は家にいて、専業主婦であることを願
 っているのに、それを希望している妻は五割しかいない。
・結婚する男性が共通に考えていることは、これで常時、安定してセックスをできる相
 手を獲得できた、という満足感です。
・わたしはセックスする人形じゃないよ、という妻側からの反論も聞こえてきそうです
 が、男というものは、女性が考えている以上に性的な生き物なのです。
・むろん、現実は、結婚してから急速に、妻に性的好奇心を失う夫は多いのですが、そ
 れでも、妻というものは、夫が欲すれば、いつでも許して受け入れるべきだ、思い込
 んでいるものです。

妻とのセックス・蜜月時代
・結婚した当初、いわゆる新婚時代は、夫婦とも愛し合い、蜜のような甘いときである
 ことから、蜜月時代ともいわれます。
・この期間がどのぐらい続くものか、夫婦によってそれぞれ違うでしょうが、一般的に
 は一年から三年くらい、平均すると二年程度、と考えるのが妥当かもしれません。
・ともかく、他人になんの気兼ねもせず、堂々と性的関係をもてる女性が常にいる、と
 いうことは、男にとってやはり大きな喜びです。
・男がデートしながら最後に狙っているのは性的関係そのものです。もちろん、男たち
 は、そうした気配を極力、表に出さないように気をつけていますが、そうした煩雑な
 ものなしに結ばれることができるなら、それにこしたことはないのです。
・くわえて、男は一旦、「欲しい」と思ったら我慢できず、なにがなんでも欲しくなる
 ものです。しかしそれがかなえられず、もはや駄目だと知って諦めた途端、さしもの
 欲望も憑きものが落ちのように失せてしまいます。
・このような、男独特の生理を考えると、結婚という形態が、男の性欲にとって、いか
 に適した装置であるか、ということがわかってきます。
・こうして蜜月時代の夫、平均すると三十歳前後と思われますが、彼らは妻にどの程度
 の性的欲求を抱くものなのか。このあたりも、個人差があって、はっきり示すのは難
 しいのですが、特に欲求の強い夫は毎日でも、さほどでもない夫は月に一回ぐらいか、
 これを平均でいうと、月に二、三回、というところかもしれません。
・セックスは腹部を圧迫する正常位を避け、後背位や側臥位なら、問題はありません。
 男性のなかには、妊娠している妻と関係すると流産するのではないか、という不安に
 とらわれる者もいるようですが、とくに乱暴なことをしないかぎり、心配することは
 ありません。
・ひとつ考えなければならないのが、妻の出産に立ち会う夫の問題です。妻が大きく股
 間を開き、そこから血まみれた胎児が出てくるところを見るのは、決して好ましいこ
 とではありません。その瞬間、男は出産という壮絶な現実を知るとともに、妻が動物
 であり、それは当然なことなのですが、ロマンチックな愛しいというイメージとはま
 ったく異なる、強く逞しい母性を実感します。
・されにいえば、長年、夢見てきた妻の秘所が、かくも生々しく巨大に開くという事実
 に驚き、見てはいけないものを見たような気持ちにとらわれます。はっきりいって、
 男はこうした血なまぐさい生理に敏感で、とくに血に対しては、女性が思っている以
 上に弱いのです。
・男が強がっているのは表面だけで、根はひ弱で傷つき易く、逆に、心が弱いから、こ
 とさらに、肉体だけは強そうに見せている、ともいえます。
・こういう夫たちに、出産のシーンを見せることのマイナスは、その後の妻に対する性
 的欲求の低下という形で、表れてきます。
・はっきりいって、男にとって女の秘所は、永遠の未知なる憧れの場所なのです。
・妻が子どもを産んでから、妻を女というより、母という目で見るようになり、性的に
 萎える夫は意外と多いのです。とくに妻の出産を目撃した夫はこの傾向が強く、五割
 近くが妻に対して醒めた目で見るようになり、さらにその半分近くが、その後、妻に
 対して性的好奇心を抱かなくなる、いわゆるED(インポテンツ)の原因になってい
 るようです。

妻とのセックス・中年時代
・夫婦の性生活が新婚当時のように頻繁におこなわれなくなるのは、むしろ自然の成り
 行きかもしれません。要するに、夫は仕事に疲れ、妻は子育てで体力を消耗し、セッ
 クスにエネルギーを費やす余裕が無くなってきます。
・現代のように、狭い家で夫婦が常に身近にいて、いつでも関係できる平和な状態は、
 こと、性的ボルテージを高めるという点では、必ずしも良好な状態とはいえません。
・わが子の出産から育児という経過のなかで、妻は愛情のほとんどを子どもに向けるよ
 うになり、その分だけ、夫への気配りは薄れてきます。
・夫たちはなぜか、自分がないがしろにされたような気がしてきます。頭の中では、そ
 れとこれとは別とはわかっていても、生来、甘えん坊の素質を持ち続けている夫たち
 は、釈然としない気持ちにとらわれます。
・一方、妻たちは子どもに心を奪われているうちに、徐々に夫とのセックスに関心を失
 い、育児という現実の生活そのものが優先し、新婚当時のようなロマンチックな雰囲
 気は消えていきます。
・それにしても、かつて安心して自由きままにセックスを満喫しえたはずの自分たちの
 家が、結婚して十年も経つと、なにやら鬱陶しい、気の重い場に思われてくるのは、
 少なくとも新婚当時には、予想だにしなかったことだといえるでしょう。
・一般に男性の場合、性的願望は十代から芽生え、二十歳前後にもっとも高まってきま
 す。このとき、男はごく自然に自慰を覚え、それとともに強烈な快感を知り、さらに
 女性との性交において、より激しい快感に痺れます。
・これに対して、女性は初めに男性を受け入れるにあたって、かなりの怯えと不安にと
 らわれ、性交自体にも傷みを覚えて、出血まで生じます。
・男の性は初めから圧倒的な快楽であるのに比べて、女の性は初めはむしろ苦痛そのも
 の、といっていいでしょう。
・セックスを重ねるにつれて、女性のほうは次第に不安や怯えが薄れ、それとともに痛
 みも消え、あるときから快感を覚えはじめます。むろん初めは徐々に、次第に強く悦
 びを感じ、やがてエクスタシーにまで達し、それとともに相手の男性への愛着が一層
 強まってきます。
・男の性感は必ずしもセックスを重ねるにつれて強まっていかない。いいかえると、男
 の性は成熟する性というより、初めから獲得されている性で、その快感は女性のそれ
 と比べると、かなり精神的なものなのです。
・女性のセックスが、回数を重ねるにつれて、徐々に開花していくのに対して、男の性
 が初めから開花していて、回数を重ねるにつれて、むしろ悦びが薄れていくことは、
 夫婦のセックスを考えるときに、大きな問題となっていきます。
・夫がさほど妻を求めなくなり、性的関係が薄れたからといって、夫の愛が薄れたわけ
 ではない、ということです。

妻とのセックス・熟年時代
・このように肉体的な力が衰えるといっても、性欲自体が衰えるわけでではありません。
 いや、むしろ、この年代のほうが、精神的な欲望自体は高まっている人も少なくはな
 いでしょう。
・この年代の男性の多くは、すでに退職した人はもちろん、定年を意識しはじめた人た
 ちも、自分の未来に対して、ある種の焦りというか、不安を覚えることが多くなりま
 す。その内容は、仕事のことであったり、家族のことであったり、公私さまざまでし
 ょうが、愛においても、このまま終わってしまうのは物足りないというか、いま一度
 燃えてみたいという思いにかられます。
・いわゆる熟年の恋で、相手は会社の部下であったり、何かのきっかけで知り合った女
 性であったり、さらには水商売の女性であったり、さまざまです。
・しかし年齢的には、自分の妻よりははるかに若い女性であることが多く、それは妻と
 は違う新鮮な刺激を求めているからです。
・熟年の恋は往々にして、当初の勢いとはうらはらに、呆気なく終わることが多いので
 すが、それとともに、夫の妻への欲求も同時に失われていくことが多いのです。
・たしかにこの年代、男女とも、若いときより肉体的能力は落ちますが、かわりに、精
 神的にはむしろ夫婦が歩み寄り、互いに、いたわり合うような優しさも芽生えてきま
 す。かつて企業戦士として、また会社人間として、家庭や妻をかえりみず、ひたすら
 働き続けてきた夫が、この年齢になってようやく自分の足元を見つめるようになり、
 改めて妻を見直すようになります。
・この時期、精神的な欲望、いわゆる性欲と肉体の行動とは直結せず、精神と肉体のあ
 いだに一種の乖離が生じます。このずれがむしろ幸いして、いままでのような直接的
 でない、より穏やかで、それだけ多彩な性愛を楽しめる時期、ともいえそうです。
・こう考えると、性愛、エロスというものは、男と女がセックスをするこことだけでな
 いことがわかってきます。いいかえると、セックスという言葉のなかには、男女、二
 つの性が関わる、あらゆる行為が含まれる、と考えたほうが自然です。
・たとえば、夫婦が同じベットで休む場合、あるいは、夫が妻を求めて、逆に妻が夫を
 求めて寄り添ったとき、必ずしも性行為そのものをしなければならない、というわけ
 ではありません。なんとなく触れ合って、あるいは心が淋しくて、さらには寒くてなど、
 理由はともかく、二人が寄り添い、抱き合っているだけで、それは立派なセック
 スに違いありません。
・好きな人と肌と肌を合わせると、互いの温もりを感じるとともに、心が和み、しみじ
 み幸せな感情にとらわれます。この充足感は、下手なセックスより、いや、たとえ上
 手でも、終わるとすぐにセを向け合うようなセックスより、はるかに満たされた思い
 は強いはずです。
・こうした肌を触れ合うだけのセックスは、老人ホームなどではとくに多く、老いても、
 こうした関係を続けている夫婦や男女のほうが、一人で孤独に暮らしている老人より、
 はりかに元気で、若々しいといわれています。
・この年代、夫たちは会社や対人関係で、さまざまな問題にぶつかりますが、やはり、
 明るく前向きで、万事に、あまりくよくよしないいことです。逆に、小さいことを気
 にして、引っ込み思案で、一人思い悩むタイプは、急速に老けていきます。
・ここで最も大事になるのは、明るい性格と、いい意味での自信です。これを失ったと
 き、夫という生き物はかぎりなくひ弱になり、頼りなくなり、卑屈になっていきます。
 いいかえると、男とは根本的にか弱い生き物なのです。妻たるもの、そのあたりをよ
 く理解して、いや、すでに理解している人も多いでしょうが、夫を励まし、支え合っ
 て、二人だけのさまざまな愛の形をつくりだして欲しいものです。

夫の浮気・かくされた本音
・男の浮気は多いというか、よくあることと思います。実際、芸能人やスポーツ選手な
 どの夫婦やカップルの破局には、決まって夫の浮気が問題になっています。これに対
 して、妻の浮気が原因で破局にいたった、という話はあまりききません。察するとこ
 ろ四対一か、あるいは五対一くらいで、男が浮気するケースが多いように思われます。
・男は一人の女性を愛していながら、同時に、他の女性にも目を向ける、多情で落ち着
 きのない生き物だということです。
・女性の愛は一極集中というか、「オール・オア・ナッシング」であるのに対して、男
 性は同時に複数の女性を愛することが出来る生き物です。
・このあたりは男の性格というより、男という体というか、本能がそのように創ら
 れているからで、ここから先は、それぞれの性の特徴として理解したほうがよさそう
 です。

夫の浮気・生理の違い
・もともと男の欲求というか性欲は、一度、高ぶりだすと、なかなか抑えのきかない厄
 介なものであるのです。
・このような男の直線的な性衝動を満たすには、まず自慰がありますが、その時お金と
 時間があればソープに駆け込むのは、生理的な面だけから言えば、むしろ当然の行為
 といえなくもありません。
・この、男の待ったのきかぬ特性は、性的な欲求だけでなく、恋人や彼女と逢いたいと
 思ったときも同様で、なにがなんでもいま逢いたいと叫び、おかげでずいぶん損をす
 ることもあるのです。
・このように、我慢のきかない性にくわえて、挿入するだけという安易な性のありかた
 が、男を浮気にかりたてる大きな理由であることは間違いありません。
・男と女の性格の違いについて考えると、女性に比べ男は圧倒的に曖昧というか、いい
 加減な性といってもいいでしょう。特に異性への好き嫌いについて、女性は毅然とし
 て明確であるのに対して、男はどこか曖昧で毅然としません。
・要するに、外見はともかく、性格は女性のほうがはるかにきつく、逆に男ははるかに
 優しい。
・女性の20パーセント当たる「相手に求められたから」という理由です。これは、少
 し意地悪く解釈すると、求められると女性は意外に高い率で浮気する、ということを
 示しているともいえます。要するに妻も油断がならない、ということです。
・初めに男の性は欲しいとなると待ったのきかない、きわめて即物的な性だと書きまし
 たが、そのことはまた、一時満たされさえすれば、すぐに醒めるということでもある
 のです。要するに、欲望を処理しさえすれば、急に落ちる着き、冷静になるのです。
・単純に放出する性であり、回数を重ねても深まらない、むしろ飽きてくる性であると
 いうことは、浮気をしてもそう長くは続かない、一時的な浮気で終わる可能性が高い
 ともいえます。
・要するに、夫という生き物は、ともすれば浮気しやすい、油断のならないところはあ
 るけれど、そのわりには腰が定まらず、肝腎の浮気そのものも絶えず流動的で、そう
 そう一点に定まるものではない、装幀に描かれて、空に浮く雲みたいなもの、という
 わけです。
・妻の浮気と少し違うところで、妻の場合は精神的にも肉体的にも、夫とのそれとは大
 分異なるために、夫のようにそう安易に浮気をしない分だけ、一度したら容易に納ま
 らないケースが多いかもしれません。
・表面は耐えて、ときどき鋭い一言、二言を浴びせてやる。そのほうがはるかに効果的
 ですし、内心、悪いと思っている夫の心にも響くはずです。そして大切なことは、反
 省しかけている夫の、帰る余地は残しておくことです。こうしておくかぎり、夫の浮
 気が、重要な局面にまで進展することはあまりない、といってもいいでしょう。
・とにかく、夫の浮気は数のわりには元にさやに戻りやすい。たとえ家を出て、他の女
 性とともに棲んでいても、かなりの率で戻ってくる。
・一方、これに反して、一度出て行った妻は容易には元には戻りません。夫に比べて、
 妻の回帰率はきわめて低いのが現実です。
・夫は自分の浮気はたいしてことではないと思っているくせに、妻の浮気は許せない、
 重大事ととらえているのです。
・しかしいま、妻の浮気が増えていることは確実で、ある報告では東京のような大都市
 では妻の二割は浮気をしている、ともいわれています。

夫の実家とその両親
・妻たるもの、みだりに夫の母、すなわち姑を批判したり、非難することは避けなけれ
 ばなりません。うっかり批判してしまったときに、夫は黙って聞いているようにみえ
 て、その実、心のなかではかなりこたえていることが多く、それだけにある限界をこ
 えると、突然怒り出す夫も少なくありません。

帰宅拒否症
・帰宅拒否という行動の裏に、男特有の、自由であることへの夢が潜んでいることもた
 しかです。もともと、男は女に比べて落ち着きのない、定まらない性です。女が常に
 結婚を望み、子どもを産み、巣作りに励むのに対して、男は結婚して子どもをつくり
 ながら、目は常に外に向いているのです。女のように一点にとどまらず、常にきょろ
 きょろして浮ついて、そのくせ小さくてもいいから自由なエリアを自分の周りに確保
 しておきたい。帰宅拒否は、まさにそうした夫たちの、ささやかな願望の表れでもあ
 るのです。
・いずれ夫が四十代から五十代になり、気力も体力も衰えてくるにつれて、徐々に治っ
 てくることです。そして定年にいたれば、ほぼ全例が自然治癒にいたることは、まず
 間違いありません。私の知人でも、六十歳をこえた夫たちはほとんどといっていいほ
 ど、用事が終わればまっすぐに家に帰ってくるようになり、帰宅を拒否している夫な
 どまず見当たりません。それどころか、出かけたはいいけど、帰ってくるのが早すぎ
 るといって嘆いている妻たちも少なくありません。

専業主婦願望
・現代の専業主婦には専業主婦なりの悩みと問題点があるからです。そのひとつは専業
 主婦の社会性のなさで、それが長く夫の手をわずらわせ、負担をかける原因になるか
 らです。
・そんなことどうしてできないのとあきれながら、夫はやがて妻の社会性のなさと無知
 さ加減にうんざりしていきます。
・さらに専業主婦独特の狭量さと、価値観の狭さから、子どもの学校の成績や服装など
 にこだわり、自らも外見だけにとらわれ、それがうまくいかないときに自信を失い、
 一種の鬱状態におちいることになりかねません。
・また、社会に出て認められていないということが一種の焦りとなり、完璧な主婦を演
 じようとしすぎて、かえってノイローゼになり、夫や子どもに当たることも少なくあ
 りません。

会話が苦手な夫たち
・夫が妻との会話に興味を示さない理由として、第一にあげられるのが、「疲れている」
 という言い訳です。夫は会社やさまざまな仕事で心身ともにすり減らして家に戻って
 くる。そこでようやく一休みしたいと思っているときに、あれやこれやと話かけられ
 ても、いちいち答える気になれない。
・とにかく夫たちは、家に関わる細々としたことを考えるのが嫌なのです。それは、妻
 がやるべきことで、そうした細々したことを夫がやっては、男の沽券に関わる、と思
 い込んでいる夫も、いないわけではありません。このような考え方の裏にあるのは、
 男は外のことを、そして女は内のことをという、男女の役割分担が当然と思い込む風
 潮で、ここまでくると、日本文化そのものの問題、ということになってきます。
・しかも家事を手伝っている夫をもっている妻の八割近くが家庭生活に「満足している」
 に対して、家事を手伝わない夫を持っている妻は五割ほどとかなり低くなっています。
 家事を手伝えば妻が満足するのは当然といいながら、少しでも手伝う癖をつけておく
 ことは、妻との関係を良好に保つうえで、かなり有効な手段というわけです。
・「それなら、男たちが望んでいるのは、なんなのよ」と問われそうですが、その答え
 は一言でいうと、セックスです。できることなら、なにも話さず、セックスだけをし
 たい、こういうと、いかにも不謹慎に聞こえるかもしれませんが、これが男のすべて
 とはいえないまでも、かなりの本音であることは確かです。
・要するに、男は女性に比べて、お喋りというか会話が苦手で、嫌いな生き物なのです。
・苦手な会話の代わりに、男はなにが得意なのか。そこで明らかになるのが「語り」で
 す。
・会社の気に入らぬ上司のこと、身勝手な部下のこと、一生懸命働いているのに認めても
 らえない自分の不運を、そして、気に合わない兄や妹夫婦のことから、自分を小馬鹿
 にしている若い女性のことなどなど、それらについて話なさいといえば、延々と語り
 続けるでしょう。
・会話と語りは根本的に違うのです。会話は一種のキャッチボールですが、語りは砲丸
 投げや槍投げのように一方的に、かつ遠くに放り投げるだけです。キャッチボールと
 砲丸投げが合うわけがないのです。
・しかも困ったことに、語りは高級、会話は低級、と思い込んでいるのですから、この
 あたりの特性をよく理解して、上手に手なずけていくことが肝要です。

妻に言われたくない言葉
・だらしないとか、家のことをぜんぜんしないとか、寝てばかりいる、などということ
 で、他の夫たちと比較して非難されるのも、夫には不快ですが、なによりも地位や収
 入についていわれることが、夫をもっとも傷つきます。
・なによりも傷つくのは、セックスの最中に表れる、妻の態度や言葉です。たとえば、
 「もう、終わったの?」と、あまりの呆気なさに呆れた言葉。
・セックスの最中に妻のほうから、さまざまなことを要求することです。たとえば「こ
 うして」とか、「ああして」と体位や夫の動きに注文をつけたり、「頑張って」など
 と気合をいれたりすること。これらは、妻もよかれと思っていることもあるのかもし
 れませんが、かなり夫を傷つけることは確かです。
・もっとも避けたいことは、夫の一物を「小さい」とか、「弱いね」などということで
 す。男は女性が思っている以上に、異様にペニスに関心を持っている生き物ですから、
 間違っても、それをけなしたり、軽視する素振りをしてはいけません。

夫のEDとその対策
・EDの原因としてもっとも多いのが、精神的ストレスです。
・糖尿病、高血圧症、心臓病、高脂血症、脳梗塞などなど、これらの病気はほとんどが
 動脈硬化を誘発し、そして陰茎の血管に血が充分流れこまなくなることから、EDに
 なり易いと考えられています。特に糖尿病や脳梗塞では、陰茎の神経そのものにも障
 害が起きて、勃起しなくなってくるのです。
・他に、タバコの吸いすぎやアルコールの飲みすぎ、睡眠の不規則や不眠症なども、
 EDの原因となると考えられています。さらに、高血圧のときに服用する降圧剤の
 一部、胃潰瘍やうつ病などに使われる薬の一部にも、EDの原因になる物質が含まれ
 ています。
・三十歳以上の男性の三人に一人がEDで、推定ですが実に1000万以上の男性が
 EDで悩んでいる、ともいわれています。
・EDにかかり易い男性のタイプをまとめると、「女性に奥手でナイーブで、結婚する
 まで女性に触れたことはとほんどなく、初体験はせいぜい風俗の女性で、親のいうま
 ま見合い結婚するタイプ」ということになりそうです。
・妻だけを愛し、いくつになっても妻だけを誠実な夫もいないわけではありません。し
 かし往々にして、この種のタイプの夫になかには、外で求めるだけの勇気がない、あ
 るいは自信がない男も含まれることも確かです。
・はっきりいって、男の性的願望が四十から五十代で、衰えることはほとんどありませ
 ん、それどころか、年齢とともに好色になり、若い時よりも性的に強くなる人も少な
 くありません。

離婚に踏み切れない夫
・あまり他人の目を意識しなくてすむ都会で、どちらかというと女性が強いというか、
 経済力を持っている地域に離婚が多く、地方で、まわりの家々との付き合いが深く、
 家の意識の強いところが少ない、といえるかもしれません。
・夫というより男というものは孤独に弱く、一人で生きいきにくいのです。妻と一緒に
 いたころは、一人のほうがどれほどのんびりして楽しいかもしれない、と思っていて
 も、いざ一人になるとたちまち淋しくなり、落ち着かなくなります。
・総じて、男は曖昧でアバウトな生き物で、それだけに多少、気の合わない、あるいは
 嫌いな女性でも、ある程度、一緒にいることができます。この場合、相手が女性であ
 ることにかぎられますが、異性なら多少嫌いでも、いないよりはましといった感じで、
 さほど気にならないものです。
・この感覚はセックスに当たってとくに顕著で、男は多少嫌いな女性とでもセックスは
 できるし、そこから、愛はなくてもセックスだけの関係も成り立ちます。
・これに比べると、女性は正反対で、嫌いな男性とはセックスはもちろん、同じ家に住
 み、同じ空気を吸うことさえ耐え難くなってきます。
・意外に思われる女性も多いかもしれませんが、夫というものは、自分の家族や親戚の
 折り合いをきわめて重視する、別のいいかたをすると、家庭中心主義の、保守的な考
 え方が強い、ということです。
・一見、女性のほうが子育てなどの観点から、家を重視する保守的な考えを持っている
 ように思われがちですが、一旦、夫を嫌いとなったら、それを敢然と切り捨てて、去
 っていく。
・女性は異性に対して潔癖であるぶんだけ、別れるまではいろいろ悩んでも、一旦、別
 れると決めたらきっぱりと別れる。
・これに対して夫は、妻に対してさまざまな不満を抱き、外にも公言していながら、実
 際に別れるケースは意外と少ない。
・ただ一つ、夫もときにはきっぱりと別れることもありますが、それは後任というか、
 後釜の女性がいるときだけにかぎられます。

マザコン夫とその対策
・妻と結婚してもなお母親離れできず、なにかというと、すぐ母親の意見をきき、それ
 を信じようとする夫たち。いわゆる真性マザコンは年とともに増え、いまでは夫たち
 の半分、五割はそうだと考えて間違いないでしょう。

夫の初老期鬱病
・夫たちはどういうときにもっとも老いを感じるか、人によって多少の違いはあります
 が、一番多いのは五十代初めころです。
・五十代に入るとともに、これからはただすすむだけでなく、ときに停滞し、さらには
 後ろへさがるかもしれない、という不安にとらわれます。
・初老期うつ病は、五十代から六十代にかけて起きるもので、一般的には、まず無気力
 になり、人との付き合いを避けて考え込み、前向きの意志を失う、などの精神病状が
 現れます。
・この、男の初老期に起きがちな鬱病の、きっかけとしてもっとも考えられるのが、
 五十代前後に襲ってくる老いの実感です。
・だが困ったことに、高い地位にいればいるほど、老いを実感することは少ないのです。
 もちろん当人にも老いは訪れているのですが、地位がそれを隠し、権力がそれを助け
 て、自ら老いなどとは無縁のように思い込んでしまいます。
・こういう人が一旦、地位を失ったとき、その喪失感は他の誰よりも強く、それ故に、
 急激に虚しさにとらわれ、体調を崩す人も少なくありません。
・一般的に言えることは、いい意味で鈍く、あまり周囲のことを気にせず、会社人間で
 もなく、マイペースで生きてきた人ほど、老いても元気でいる率は高いのです。
・妻よりはるかに遅れて自らの秋に気づき、愕然とする夫たちを救う最大の救護者は、
 妻しかいません。
・この時期、妻が積極的に夫に近づき、二人でともに語らい、一緒にレストランに行っ
 たり旅に出たり、二人の時間を増やせば増やすほど、夫は明るく元気を回復していく
 でしょう。

定年後をいかに生きるか
・夫は自分の趣味や関心のあるもの、例えば釣りやゴルフや家庭菜園、日曜大工、さら
 にはカメラや囲碁将棋など、いろいろなことをはじめて、それらに熱中することです。
・妻がいなくても元気で、むしろ一人の時間が増えて気がせいせいする。そういう発想
 に頭を切り換え、一人になった時間を自分なりの楽しみで過ごせるように工夫するこ
 とです。
・特に弱りかたが激しいのは、夫に甲斐甲斐しく尽くす、いわゆるよき妻と暮らしてい
 た夫たちです。こういう夫たちは、日頃から至れり尽せりの世話をやかれ、家事など
 ほとんどしなかったために、妻が亡くなると、たちまちお手上げになり、生きていく
 気力まで失います。
・逆に、日頃から妻に冷たくされ、その分だけ自立して、自分で食事も炊事も洗濯もや
 ってきた夫たちは、妻が亡くなっても意外にへこたれず、結構、元気でいるものです。
・子どもたち夫婦と一緒にいたいという人も多いでしょうが、高齢夫婦と若者夫婦とは、
 基本的に一緒にいるものではありません。
・高齢者は若い子どもたちとはほどほどよい距離を保ちながら、必要に応じて会うよう
 にするべきです。要するに、親子のあいだでもほどよい距離が必要だということです。

一夫一婦制はどうなるか
・エロスの高揚に効果的なのは、夫婦の間の距離を少しあけることです。近づきすぎた
 ことがエロスを失わせたのですから、夫婦とはいえ、少し離れて住んで週末だけ会う
 とか、別々に生活して互いに会いたいときだけ会うようにする。