「老いても枯れず」 :塚崎幹夫

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 筆者は、現在ある国立大学の名誉教授とのことであるが、以前より大学教授らしから
ぬ革新的な著書が多いようである。今回のこの著書にもサブタイトルとして「大人のた
めの性教育ノート」というタイトルがついている。まさにサブタイトル通りの内容であ
る。筆者の実経験をもとに具体的に書かれており、もう高齢の年代に属する筆者(76
歳)がいまだに男として現役であるという事実には驚かされる。果たして、この年代の
男性で「男現役」という人の割合はどの程度なのであろうか。
 筆者の性に対する基本的な考え方については共感させられることが多い。特に性は楽
しむものであるというのは、現代社会においても、なかなか革新的な考え方ではないだ
ろうか。現代社会においても、性は子供を作るための行為という位置づけをしている人
が多いように思うからである。さらに筆者は性を夫婦間の重要なコミュニケーション・
ツールであると位置づけており、現代の多くの夫婦間で不足しているコミュニケーショ
ンの復活方法についても述べている。
 また、この本は女性にも読んでもらいたい本である。この本を読むことによって、男
の性とはどういうものなのかがわかると思う。男に縁が薄い女性は、男の心を捕獲する
ためのすべを、この本から学べると思う。
 現代社会においては、どうしても性というものは軽視されがちであるが、この本を読
むことによって、性の重要性を再認識したいものである。

76歳 私の場合
・性の行為は万人に共通の最重要の関心事であり、恥じるべきものではないと主張はさ
 れているが、それが本当なら、だれでも率直にその性との関わりを明かすべきである。
・人間における性の位置づけの試みはそこから始めるのでなければ、実りのあるもには
 ならないだろう。

セックスは容易
・52歳、毎日1回ないし2回。
・なぜか大きな乳房にとくに限りない性的魅力を感じる。若い女の形はよくはんなりと
 豊かに盛りあがった胸のふくらみを見ると、無意識に手が出てしまいそうになる。
・現在、31歳年下の3度目の妻と15歳で中学3年の娘と暮らしている。
・セックスは1日おき、と決めている。明日もと思うことも多いが、自重している。
・若かったときには、機会があったら1回でも多く、だったが、熟年の性の喜びは、信
 頼できる相手と一つ一つの接触の感覚をゆっくり味わい、終わったとき、「ああよか
 った」とそれぞれが心から幸せに思うような、感動の確認の方にあるように思う。
・性交に要するエネルギーは1分間6〜8カロリー。このエネルギーは、日常生活で
 の活発な歩行や階段を登るときのエネルギーと同程度のものだという。病気や虚弱の
 人でも、階段を登ることができるだけの力があると医者が認めれば、セックスをして
 もよいということになるらしい。健康な人ならすべてパスだろう。
・2004年のオリンピックのとき、13万個のコンドームが競技者に配られたが、そ
 のほとんどは使用されていたという。

「52歳、毎日1回ないし2回」はだれでも可能
・シングルベットに、妻とはだかでくっつき合って寝ている。寝るときは、少し前戯が
 必要だが、目が覚めたときは、温かいはだの心地よい接触でいつでも準備のできた状
 態になっている。
・体はまだ眠っている。そのけだるさのなかで重なり合い、静かに腰を動かしているう
 ちに、感覚が目覚め、意識が目覚め、ぼんやりしていた頭がはっきりしてきて、全身
 がすっかりしゃんとする。
・自然の荒廃が虫や野鳥の減少にまず現れるように、生命の荒廃は性の欲望の減退に始
 まる。
・性の行為が規則的に営まれているということは、人間として均衡のとれた、無理のな
 い生き方ができていることを示す。欲望がわかないとすれば、疲れすぎているのか、
 心にゆとりが失われているのである。
・回数が減ってきたら、女たちよ、夫に休暇を取らせよう。
・日常服用している栄養剤や薬はない。タバコは吸わない。しないとき、ウイスキーを
 小さなグラス5分の1眠るときのいつもの牛乳に入れて飲む。

何が性をためらわせるのか
・喜びや楽しみといってもいろいろ沢山あり、どれであってもかまわないのだが、自分
 の気持ちひとつでいつでも自由に楽しめるのが性の快楽である。
・どうして人は生きる価値のある幸福な人生の確かな基盤として、それぞれが自分の身
 のうちに持っているこの快楽の源泉を、もっと積極的に利用しようとはしないのだろ
 う。
・自然はその種族保存の目的のために、膣からせっかくの精液がそとに漏れ出さないよ
 うに、射精が終わったあとしばらくは、男女とも合体したまま身動きができないよう
 に仕組んでいる。軽い快い疲労なのだが、小さな死ともいわれるように、文字通りぐ
 ったりして死んだようになる。
・使われるエネルギーはわずかであり、体には益になっても何の害もないのだが、持病
 があることが多く、そうでなくても神経過敏になりがちな熟年者には、このささやか
 な至福の疲労も性へのためらいのもとになるかもしれない。
・結局のところ、男は女なしには、人間には性なしには済まないのであり、生きとし生
 きるものはそのように作られているのだから、神にも如何ともしがたいものである。
 だからといって、社会の中で生きていくのに、ほしいままに性にふけるわけにはいか
 ないこともまた確かである。
・われわれはめいめいの欲望を抑えるのに、日常的に少なからぬエネルギーを費やして
 いる。抑えられているがわの生命の根元に発するこの欲望自体のエネルギーと合わせ
 ると、有効に活用されないでいるエネルギーは非常なものであると推測できる。

性と健康
・中年、高年でのセックスは健康に危険があると信じられているのだが、多くの研究に
 よれば、事実は反対、すなわちセックスの回数の多い高年者の方が長寿であるという。

短小コンプレックス
・短小コンプレックスの人というのは、体の他の部分と同じようにペニスが発達する若
 い成長期に、何らかの理由で、体が要求するマスターベーションを充分にしなかった
 のではないかと、私は考える。
・マスターベーションは、男にとってはペニスを鍛える副次的効用があるし、女にとっ
 てはオーガズムを得るために必須である。

中折れ騒ぎ余聞
・若かったときは別だが、私はいまは女上位ではオーガズムに達しない。ということは、
 女上位に甘んじなくてはならないこれから先の行為では、中折れがあろうとなかろう
 と、射精なしで終わることで満足しなくてはならないということである。
・中折れのメカニズムは単純であるように見える。遅漏のために最後まで持ちこたえる
 エネルギーが足りないというにすぎない。ペニスがまだしっかりしているあいだに、
 いったん出して手などでの刺激をもう一度くりかえし、興奮を高めた上で挿入し直せ
 ばよいのである。

男たちの身勝手に罪がある
・熟年の妻にとってセックスは魅力を感じないものになっている。
・結婚にはほかにいろいろな利便が伴っているので我慢を続けているが、子供たちが巣
 立ち、力関係が変わってくると、女たちは夫とのつとめを嫌がるようになる。
・女がセックスレスになった平均年齢は52歳、男は57歳。
・女の性交停止の理由の第一位が「自分の関心の喪失」。男の第一位が「相手の関心の
 喪失」というのは、このような成功停止にいたる経緯を裏づけるものだろう。
・女の52歳は子育てが終わり、閉経期に入って妊娠の恐れから開放され、女の欲望が
 むしろ高まる年齢といわれているのにである。

しあわせと見えるカップルに起こる性の障害
・若いカップルではお金がなくても、将来の見通しが立っていなくても、好き合ってセ
 ックスがうまくいったら、自分たちを「しあわせカップル」というだろう。
・子供が生まれるとお金がなくてはやっていけない。セックスどころではなくなる。一
 方はその日その日を生きるのに直接つながるからなしにはすまないが、性行為は短期
 的にはなくてもすむ。セックスはともすれば軽視される傾向がある。しかし、それは
 単なる行為を犠牲にするのではなく、男女の結びつきの親密さを犠牲にするのである。

ルーミーの忠告
・人は自分のしていることがわからないものだが、立場の強いものはいっそうわからな
 い。反対に、弱いものは自分の受けた行為をいつまでも忘れないし、それにこだわる。
 強い立場のものは自分では傷つけたことはないと思っていても、無意識に知らないう
 ちに相手に恨まれるようなことをしていることが多いのである。対等であろうとする
 なら、強い立場のものは普通以上に自分を低くする必要があるだろう。ましてや熟年
 のカップルでは、男はもはや裸の王様にすぎないのである。

夫婦間のコミュニケーションの盲点
・理知的で「真面目」で通っているカップルのあいだでは、「しもねた」のことが話題
 になったことはほとんどないのではないか。羞恥心からよりは、相手から「いやらし
 い人」と思われはしないかという恐れから、意識的にお互いに避けるようになってい
 たのでなかったか。
・男も女も同性の仲間の集まりではそれぞれ相当に猥談好きであるようである。初対面
 の堅苦しい座もたちまち打ち解けてにぎやかになる。男たちの場合は他でも性の発散
 の場は持っているので、そのとき限りの座興にとどまることが多いが、女たちの場合
 にはたまっている欲望の行為に代わるはけ場になり、露骨な話で満たされるというこ
 とをよく聞く。
・セックスは男がその珍宝であるペニスを使って、恩恵を与えるかのように女に「して
 やる」のだと、いまも考えている男は、若い男たちのなかにさえ少なくないようであ
 る。
・実際はその逆なのだが、とくに若い男たちは性欲を持て余しているのだから。男がま
 ず悔い改めねばならないのは、このどんな根拠もない不当な一方的な思い込みだろう。
・事実は「させてもらう」のである。オーガズムを知らない若い女は、愛が得られる見
 通しがつかなければ許そうとしないし、すでに関心を失い多かれ少なかれ心にわだか
 まりを持つ熟年の女は、痛みさえ伴う性の行為は「してもらいたくない」というだ
 ろう。
・セックスは男に自信を与え元気づける。セックスをあきらめた男は急速に老ける。
 50歳代、60歳代ならなお余力は充分にある。バイアグラを使えば青春の20歳
 代がよみがえる。平均寿命と夫婦の年齢差を考えると、よい関係を続けることができ
 れば、男は死ぬまでパートナーに恵まれ、しあわせな性を楽しむことができる。
・させてもらうという気持ちに変わると、おのずから接する態度が違ってくる。優しく、
 相手の体や感じ方にも細かく気を遣うようになる。変わった様子があると、行為の途
 中でもどうしたのかと尋ねることになる。性についての自然な会話のきっかけになる。
・終わって体が離れるときには、「よかった」といい、「ありがとう」と付け加えよう。
 はじめはいやいや応じてくれていたのであっても、そのうちもとのようにむつまじく
 してくれるようになるだろう。

婚外交渉は情熱的だった
・ソープランドや風俗店には一方的な性しかないようである。二人で楽しむ性はここで
 も学べないだろう。通俗的なポルノ小説や映画は、真実を知らせるよりも、読者の先
 入見に取り入ることをねらっている、画一的な性しか見出せない。

幸福に死ぬために私は生きる
・がむしゃらなあがきの上にも無情の風は吹く。急調子の繁栄は没落も同じでありこと
 を示す。得意はいつまで続くことか。いまも老いと死は確実にくる。幸福に死ぬため
 には幸福に生きておかなければならない。

女のすべてが好ましい
・男の欲情をそそるものの中には、矛盾したものが多く含まれている。目立つところが
 一つでもあれば、男の関心をひくには十分である。あとはあばたもえくぼで、男が勝
 手に美点を考え出しては女を理想化し、ひとりよがりの空想に酔う。このことによっ
 て、すべての女にはチャンスが与えられる。他人をうらやむ必要はない。だれでも男
 をとらえるだけのものを持っている。

女を魅力的に見せるもの
・動物の世界では、メスがつねに性のイニシアチブをとっている。発情したメスに働き
 かけられてオスの発情が起こる。見さかいなしにいどみかかるのを獣的だと一般にい
 うが、欲していないメスにいどみかかったオスはひどい目にあう。
・女の誘いかけに励まされて男ははじめて奮い立つ。動物の場合、発情した性器をちら
 つけせてオスの発情をうながしたあと、メスはオスに体をすりつけたり、オスの性器
 を鼻で押したりなめたりする。人間においてこの最初の誘いかけはほほ笑みであろう。
 ほほ笑みかけられることによって、女の存在は男にとって意味を持つものなる。

セックスはすでに愛である
・セックスと愛を分けて考えることが普通多く行われているが、私にいわせれば、それ
 は正しくない。性器の快感を楽しむだけならひとりでもできる。セックスは二人が喜
 びをともにするところに意味がある。セックスをすることについての申し出に対する
 合意は、申し出た相手とふたりでセックスを楽しむことの合意であり、たがいに相手
 をこの特別の快楽を分かち合うのにふさわしい存在とする意識が、その前提としてあ 
 るのであり、これはすでにれっきとした愛である。
・どれだけ長く付き合ったかは問題ではない、出会ってその場ですぐ寝たとしても、そ
 のとき二人の心は相手を好ましいと思う気持ちで満たされているのであり、二人は正
 真正銘に愛し合っているのである。
・錯覚を恐れる必要はない。たいていの愛はもともと錯覚と自己陶酔の産物でしかな
 い。熟慮を経たと自分では考えている愛も、この宿命をまぬがれることはできない。
・「ああうれしい、よい女に会えて」「ああうれしい、よい男に会えて」という確かな
 共感があれば、愛にはそれ以上のものは必要ではない。

売春婦にも情は移る
・セックスは親密さを深める。心身は一体であって、心が開いて体が開き、逆に体が開
 くとき心も開かれる。自然に相手に対していっそうやさしくなる。金銭が目的で応じ
 ているにすぎないことを十分に承知している売春婦まで、情が移る。

触覚としてのセックス
・こちらが相手を知らないと同様に、相手もことらのことを知らない。たがいに相手を
 知らないということは、束縛されずに気楽だということであり、不都合とばかりは限
 らない。
・知り合うのはあわせ合うためである。相手の好みや意向がわかると、われわれは無意
 識のうちに自分を相手にあわそうとする。自由に振舞うことはできなくなる。
・せっかく新しい人と付き合うのに、同じ自分のままでは、いままでの変わりばえのし
 ない延長になってしまう。日ごろ抑えている自分を取り戻し、いつもとは違う自分を
 演出する絶好の場である。
・積極的な自己表現は相手のいっそうの興味を呼び起こし魅惑するだろう。もしそれが
 逆効果になったとしても、もともと運まかせのような出会いだから、惜しいことでは
 ない。

セックスが関係冷却の原因ではない
・セックスをした途端に男が冷たくなったという話をよく聞く。しかし、これもまたセ
 ックスをしたこと自体に原因があるのではない。人間はどんなよいことでも遅かれ早
 かれ飽きる。セックスも例外ではない。
・男も女もセックスにこだわる。セックスは愛の表現であるより、愛を確かめ合う儀式
 のようなものとなっていく。踏まれる手順が重要になる。それはもはや楽しみではな
 く義務となる。

よいセックスのために女の役割
・体を差し出せば女の役割は終わったのではない。
・私は、女の心と体に対するいたわりと心づかいを男の性技の基本とし、男の値打ちを
 たくましいペニスに求めたが、女の性技の基本は性器から頭脳までの全器官の鋭敏な
 反応であり、その値打ちは深いオーガズム能力にあると考える。何が楽しくてここに
 とどまっているのが疑わしくなる、無反応の不感症の女を抱いていることほど、興ざ
 めなことはない。
・体を投げ出して、男から何かを与えられるのを待つだけでは困る。女が体を提供して
 いるとすれば、男も体を提供している。男がさらにいろいろな話題で場を活気づけ、
 それが女にも快いとすれば、女も男を喜ばせる何かを持ち出すべきである。