官能小説の奥義 :永田守弘

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世の中にはいろいろなことを研究している人がいる。この本もそんな中のひとつではない
だろうか。官能小説は隠れたベストセラーでもあるらしい。なかなか正々堂々と人前で読
めるようなものでもないが、気分転換にそれなりに楽しめるものである。私もこの本の中
に出てくる官能小説家の作品を何作品か読んだことがある。やはりプロはプロである。非
常に匠に人間の本質を突いてくる。そういう官能小説を書く側にも、相当の努力が必要な
ようだ。改めて官能小説とは何かを再認識させられる一冊である。

はじめに
・「官能小説」という言葉が一般的になったのは、三十年ほど前からである。それ以前は
 「エロ小説」「ポルノ小説」と呼ばれていた。戦後、まだ物資が乏しく、紙の入手が困
 難だったころに、はやくも好色な雑誌が発刊され、それらは「エロ雑誌」呼ばれていた
 が、当時のエロ雑誌の主流をSMが占めるようになると、エロ雑誌のことを「SM雑誌」
 と称するようになった。
・官能小説は文学ではない。という気配が感じられ、小説として一段低く見られているか
 らだろう。確かに「官能小説に文学はなじみにくい」と私は考える・文学臭を出すと官
 能小説は読者を満足させるのがむずかしくなる。
・渡辺淳一の「失楽園」「愛の流刑地」を官能小説と評することはあるが、渡辺淳一を官
 能小説家とは呼ばない。なぜなら、彼の官能表現はかなり抑えられているうえ、小説の
 テーマは別にあるからだ。
・小説家は誰もが一度は官能小説を書いてみたいと思っているふしがある。小説を書くか
 らには、人間の根源的で支配的な欲望である性について挑戦してみたいと思うのは当然
 だろう。
・官能小説家は、読者の隠微で淫らなイマジネーションを、いかにかきたてるかに腐心す
 る。その結果、純官能小説特有の表現や文体があみだされてきた。普通の文芸の世界で
 は忌避されるような言葉がどんどん出てくるし、造語もふんだんにある。
・官能小説は、私の知っているかぎり100人はいる。それだけの読者がいるということ
 である。隠れたベストセラー作家が何人もいる。

官能小説の文体の歴史
・猥褻の定義はなされていないが、戦後、最高裁判所が示した判例によると、「いたずら
 に性欲を興奮または刺激させ、しかも普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道
 徳観念に反するもの」となっている。
・猥褻裁判で大きな話題となった「チャタレイ夫人の恋人」の表現例として、
 ・強く無慈悲に彼が彼女の中に入るとその不思議な怖しい感じに彼女は再び身震した。
 ・その差し込まれるものが深く更に深く入っていき、彼女の波はもっと強くどこかの岸
  辺にうなって行った。それは彼女をむき出しにし、その不可解な触感をもった物は更
  に更に差し込まれた。彼女自身の波は彼女から彼女を残して更に更に遠くうねって行
  き、遂に突然、柔い身震する痙攣の中で彼女の全身の細胞の急所が動かされた。彼女
  は自己が動かされたことを知った。至上の悦びが彼女を襲い、彼女は終わった。彼女
  は終わった。しかし彼女は終わらなかった。彼女は生まれた。女として。
 ・今の彼女の肉体のすべては優しい愛をもってその不可解な男性に、また盲目的にその
  萎縮するペニスにしがみついた。力をもって激しく差し込まれたそのペニスは、今柔
  らかに、弱々しく、それとも解らずに退いて行った。
・戦後の官能小説の草分けとしては、1947年に発表された田村泰次郎の「肉体の門」
 が有名だ。人間は精神主義によって生きるのではなく、肉体にこそ真実があるという視
 点が、戦後の性の解放気運のなかで共感を呼び、肉体文学の旗手となった。しかし「肉
 体の門」そのものに、現在の感覚で官能小説とみなされるような表現はない。
・官能を意識して最初に読んだのは、北原武夫の作品という人は中高年に多い。ここにひ
 とつの原形をみることができるが、その性表現はぐっと抑制されていた。
・官能小説をマニアの世界だけでなく、広い層に愛好させる機会を作った作家は何人もい
 るが、その一人として、とりわけ盛名を馳せたのが川上宗薫だった。
 ・舞子の構造がメリメリとひび割れそうな窮屈な感覚を根津は覚えながら、押し入った
  いったのだ。
 ・舞子の構造のあちらこちらからピクつきが押し寄せてきて、根津は危うく果てそうに
  なった。
 ・根津は再び押し入っていった。彼女の構造のすみずみにいるなにかの虫がどっと押し
  寄せるような感じに彼は押し包まれ、いろいろの部分にピクつきを覚えていた。
・川上宗薫と宇能鴻一郎と富島健夫の三人をポルノ御三家と呼んだ。
・官能小説がサラリーマン読者のあいだに定着するきっかけをつくったのは、豊田行二で
 ある。 
 ・岡田はヒップを引き寄せて腰を進めた。ズブリ、という感じで、欲棒は通路に入り込
  んだ。内側は蜜液でなめらかになっている。肉棒が根元まで入るのを待って、通路は
  強く締め付けてきた。その締めつける力に逆らって肉棒は滑らかに通路を出入りする。
・ふともも作家と異名をとる牧村僚は、年上の女のふとももや下着とその匂いに執着し、
 女体の豊かさや包容力に甘えるという癒し系の作風で絶大な人気を獲得していく。相手
 の女性は、ときに母や義母であるが、禁忌の性の暗さはなく、身近であるがゆえに心身
 ともに通じ合える特有の性の完美が描かれる。
 ・恵理子はペニスを手前に引いた。引かれるままに腰を進めると、慎一は間もなく亀頭
  の先端に蜜液のぬめりを感じた。
 ・生唾を飲み込み、慎一がぐいっと腰を密着させると、ペニスは一気に根元まで、恵里
  子の肉路に埋没した。
 ・両脚をベッドからはねあげ、惠理子は両ももで慎一の腰をぎゅっと挟みつけてきた。
・男性は元来、女性に甘えたい性癖を持っている。ことに、年上の女性によって優しく扱
 われて初体験するのが理想でもある。
・この癒し系の官能小説は、また、女性の母性本能をくすぐるのだろうか、女性読者も増
 えている。
・女流作家は、たとえば男にとって推量でしかない女のオルガスムスの感覚を、実感とし
 て表現することができた。
・藍川京が「華宴」でデビューした当初は、男性作家が書いているのではないかと疑われ
 たほど鮮烈な印象を与えた。 
 ・男のものが鉄のように硬くなるのに比べ、女の器官はどれも、やわやわとしていて愛
  しい。
・女流の癒し系といわれる作家では、内藤みかの活躍がめざましい。女子大生時代に失恋
 した口惜しさをこめて、彼と実現したかったセックスの願望を書いたのがきっかけとい
 う。

性器描写の工夫
・女性は、自分の性器をグロテスクで恥ずかしいもの、と考えている人が多いようだが、
 男性にしてみれば、女体の奥に隠された神秘的な憧れのスポットである。見てみたい、
 触ってみたい、舐めてみたい最たる部分なのである。
・毎日のように雅光の太い肉茎を押し込まれ、激しい抽送を受けているとは思えないほど
 器官全体は初々しかった。薔薇というより撫子や片栗の花に近い優しさだ。その優しい
 花が、男を誘う扇情的なメスの匂いを放っていた。 
・色白の身体をしているだけあって、真っ白な内腿のあいだで、肉の果実もあわい褐色に
 色づいているだけだった。まったく黒ずんでいない。肉の畝は肉づきがよく、熟れたマ
 ンゴーのようにまるくふくらんでいて、亀裂が深く閉じている。
・人妻の性毛は、漆黒多毛であった。ふっさりと繁った毛むらの下で、女の秘裂があけび
 状の割れくちを見せて生々しい彩りをしており、その真ん中に、二枚のびらつきがよじ
 れあいながら、入路をひらいていた。
・丘はつるりとした手触りである。隠花植物のようは毛むらが、渓谷沿いに頼りなげにた
 なびいているようだ。  
・女体の入口は鮮やかなピンク色の貝のようであった。薄い肉癖が細やかな震えに見舞わ
 れていて、金魚の口を想わせるリング状のワギナの括約筋がリズミカルに収縮をくり返
 していた。  
 牡の本能のおもむくまま、徹は素早く両手をついた。むっちりと豊かな内股へ顔を押入
 れ、黒猫の体毛を思わせる、やわらかな茂みを舌先でかき分けた。
・真由は乳房を揉みたてていた手を股間に差し向け、左右の手で亀裂を限界までひろげた。
 鏡に映し出された赤い噴火口のような割れ目の奥に、ツヤツヤと光ったサーモンピンク
 の肉片が複雑に重なり合って見えた。
・「人間が生まれる場所」であるから、女性器描写の底には、生命の源に対する尊敬や畏
 敬が潜んでいるのを感じることもあるしかし、生殖と性愛は違う。官能小説は、あくま
 で性愛の世界を描くものとみるほうがいい。 
・その瞬間、甲高い絶叫が部屋中に響き渡り、痛いほどきゅうううううっとしがみつかれ
 てから、それが処女膜であったことに気づく。だが、もう怒張は根元までずっぽりと埋
 没していて、膣壁がキュウキュウと纏わりついている。
・指の届かない女芯の深いところは肉棒でかき回し、カリ首で男のリキッドを書き出して
 やらなければならない。そう思って植田は、回復した肉棒を向かい合う形で、女芯にズ
 ブリと挿入した。  
・沙織の美麗なる秘唇には、ドス黒い淫棒が突き刺さっており、なんとも卑猥な肉汁をヌ
 メヌメ光らせて出たり入ったりを繰りかえしている。  
・男が欲しい。もう、我慢できない。沙紀子が願った瞬間、怒張した責め棒がズブリと秘
 口をえぐる。
・肉根が、はげしく動きだした。不規則なしめつけが冬香の膣にひしめいてきて、一気に
 猛茎をおし包んだ。  
・老人は巨竿を突き入れては少し戻し、戻しては腰を器用にくねらせながら膣口付近にも
 淫靡な刺激を与えながら、再び挿入を深め、じっくりと時間をかけて、夕子の股間を蹂
 躙した。
・太い火柱にこすり上げられ、掻き毟るように奥をえぐられる感覚に、そこの肉は愉悦に
 すすり泣き歓び、熱い粘液をドクドクと吐き続けた。
・官能小説における男性器は、基本的に太く、硬く、大きいのが常道である。なぜなら読
 者の羨望を満たす必要があるからである。

性交描写の方法
・性交描写は官能小説のハイライトであろう。性交によって、女性はエクスタシーに達し、
 男性は射精する。いわば、官能描写の仕上げをどう書くか。ほとんどの官能小説は、こ
 こに狙いをさだめているし、読者も期待している部分である。男性器を女性器に挿入す
 るという、単純な行為を、いかに濃密に、淫靡に、いやらしく描くかが、作家によって
 競われる。毎回同じ表現では飽きられてしまう。つねに差別化を図らなければならない。
・若い男が年上の女性にフェラチオさえて、我慢できず、口の中に射精してしまうという
 描写も多い。その場合、女性は精液を飲んでしまうことがよくある。
 ・叫んで思いきり私の頭を下腹へ押しつけるようにして、腰を前後に打ち揺すりました。
  ぶわっと先端がふくらむようなあの瞬間が訪れ、一瞬後にビュッと熱いドロドロの液
  体が私の口の奥に放出された。若いけれど甘い、言い尽くせない美味なエキスを夢中
  で呑みました。
・裕作はむっちりした太腿に指を食い込ませ、夢中で舌を使った。花びらの内側をなぞり
 あげては、粘膜を舐め回した。 
・嬉しいことに、康彦はたやすく敏感な小突起の位置を探り当てた。根元から先端に向け
 て、あますところなく舌先が這い回る。女体の神経がすべて集まった蕾は、久方ぶりの
 刺激に嬉しそうに震え、電流のような快感をまき散らす。太腿を揺らし、腰を上下にガ
 クガクさせて、いっそうの刺激をリクエストする。
・女性の恍惚の表情は、何にも代えがたい美しさを漂わせてくるものだ。後れをとっては
 ならない。抜き差しのビッチをあげる。エラの上側に引っかかる壁を、根こそぎ奥底か
 ら掻き出してくる感じだ。噴射の兆しを覚えた。乳房を揉む指先に力が加わった。幹の
 根元がカッと熱くなる。ふぐりがキュンと痺れあがった。喉をのけ反らし夫人は、最後
 の一声を放った。ほぼ同時に、堰を切って吹き出した濁液が筒の真ん中を奔流し、熱く
 潤む襞壁の壁を突き破る勢いで跳ね飛んでいったのだった。 
・門脇は反り返っている肉の根をなだめるように、ぷっくりした花びらに囲まれている秘
 口にそれを押し当てた。そして、ゆっくりと沈めていった。豊臀だけ掲げた破廉恥な格
 好を強いられている七恵は、肉の襞を押し広げて入り込む太い肉の塊を、そのまま受け
 入れるしかなかった。
・遥子は根元まで肉棒を迎え入れると、ゆっくりと体を前後にスライドさせ始めた。こり
 こりした芯芽を井本の恥骨に押し付けて前後へのスライド運動を行う。遥子が女体をス
 ライドさせると、欲棒はゆっくりと女芯に出没する。井本はたちまち男のリキッドを爆
 発させたくなった。井本は体をよじって爆発から逃れようとした。
・若い男が年上の女に性の手ほどきを受けるという経験は、多くの男性の理想であると言
 っていいかもしれない。一種のマザコンだが、女の母性本能は男にとって心地よいもの
 である。自分もこんな体験をしたかった、と読者を思わせるのが癒し系のポイントであ
 る。最近増えつつある女性読者にも、この癒し系は評判がいい。母性本能を疑似体験で
 きるからだろうか。     
・初めてのセックスは、想像以上の快感を雄平にもたらした。ペニスに絡みつく肉襞の感
 触は、それまでのどんなものよりも強烈で甘美な刺激を与えてくれている。
・癒し系は、会話がことに重要である。慌てる少年を優しく誘導する女性の言葉は、それ
 だけで読者を興奮させる力を持っている。    
・まるで打ち上げ花火のように、快感が炸裂した。目の前で下腹部が大きく波打つのが見
 える。溢れた蜜が陰毛を濡らしていた。そお上から顔を出した肉茎は、雄々しく反り返
 り、戦果の蜜を滴らせていた。
・ザーメンの銃弾を子宮でまともに受けて、泉美もさらなる絶頂を極めた。獣のごとく絶
 叫し、随喜の涙を滲ませて、息子の背中に爪を立てる。男性器のごとくクリトリスを脈
 打たせ、子宮でスペルマをがぶ呑みするように膣肉を煽動させる。
・白目を向いて顔をのぞらせた絵里が叫んだ。一度、接頂点に達した女体は、まるで体の
 なかに埋め込んだ火薬が次々に爆発するかのような反応を起こした。 
・美和子はいくたびものオルガスムスに全身を痙攣させ、穴という穴から体液を撒き散ら
 し、ついには白目を剥いて失神してしまう。
・絶叫があがった。ギクンと腰が跳ね上がり全身に痙攣が走ったかと思うと、ガクッと力
 が抜けて、まるで操り糸の切れた人形のように敷いた布の上に動かなくなった。 
・彼女は全身を凝固させた。背中をぐっと反らせ、息も止まり、潤んだ瞳は見開かれてい
 るが、何も見てはいない。まるで本物の断末魔だ。しかし死ではなく、その体に悦楽迎
 え入れていることは、異様に甘い切ない喘ぎがその唇から漏れていることからも判った。
・彼女は鳩の鳴き声に似た喉詰まりのくぐもり声を漏らし、女体を弓なりに仰け反らせ、
 硬直させた。 
・四つんばいに伏せた女体の奥の院からは、ムチャンッ、ネチャンッというあからさまな
 性交の音が響きたち、あきらかに女として無言の法悦ぶりを表していた。 
・女芯が音をたてて押し広げられた。老人のあまり固くない欲棒しか入ったことのない女
 芯は、狭く小さかった。そこへ、固くて太い欲棒がきしみながら入っていく。
・腰の肉をつかんだ手に力をこめ、修平はグィッと下半身を突き出した。グニョッという
 くぐもった音を残して、硬直した肉棒が麻美の女体に飲み込まれる。
・男のモノは、麻衣子の中を、ずにゅっずにゅっと音をさせて出入りしている。その衝撃
 は麻衣子の全身を伝わって、頭の中まで響いた。 

フェティシズムの分類
・官能小説の要はフェティシズムにある、と言っても過言ではない。作家が描くフェチと
 読者のフェチが一致しなければ、官能小説を読む感興が生まれないからである。
・女性の肉体のあらゆる部位がフェチの対象になりうる。
・官能小説家たちは、それぞれ特定のフェチを持っており、そこから溢れ出るイマジネー
 ションと性衝動を作品のエネルギーにしている。 
・京子の乳房は大きすぎもせず、そうかといって、小さすぎもしなかった。お椀を伏せた
 ように可愛らしく盛り上がっている。手でつかむと、若々しい弾力性を伝えてきた。
・フェチは、生まれつきの嗜好が思春期あたりから顕著になっていく場合と、性体験によ
 って開発される場合があり、それが重なると加速していく。 
・桃太郎でも入っていそうな巨大な白桃が、敏の目の前に出現する。こういう姿勢をとる
 と、スズメバチの胴のようにウエストから急激に張り出した豊臀が切ないほどに欲望を
 そそり立てる。
・尻とは関係なく、前や横から見た太腿に欲情する男性がいる。チャイナドレスの切れ目
 からのぞく太腿は、太腿フェチを刺激する。もちろんセックスにおいても太腿に触るこ
 とを好む。セックスも、太腿がよく見えて触れる対面したままの屈曲位や、伸展位を好
 む傾向がある。 
・脚フェチは、美脚を撫でまわしたり、舐めたりすることで勃起し、セックスに至るのが、
 女性の悶える顔の表情より、折り曲げた脚のばたつきのほうに刺激を受ける。
・フェティシズムは現在、女体にまつわる嗜好すべてを含む広義の用語になっているが、
 もともとは女性の下着、靴、持ち物、衣服とか唾液や愛液といった分泌物、あるいは排
 斥物などへの、異常な性的執着を意味する用語だった。だからセーラー服、女医や看護
 婦の白衣、スチュワーデスやデパートガールの制服も当然ながらフェチの対象である。
 その場合は脱がせては意味がない。服を着せたままのセックス・シーンを描くことが主
 要となる。

官能小説の書き方十か条
・官能小説は性欲をかきたてるだけのものではない
 ・もっと深い、人間が持っている淫心を鼓舞するのが目的である。
 ・性欲はオナニーで消えてしまうが、淫心は人間が根源的に抱えているものであり、オ
  ナニーでは消えない。性欲の奥に流れているものである。
・好きな作家を見つけよ
 ・好きな作家に出会うということは、自分のなかに隠れていたフェティシズムを発見す
  ることである。淫心の入り口はフェチだから、自分自身のフェチを知ることは最も大
  事なことなのだ。  
・まず短編を書いてみる
・官能シーンを早く出せ
 ・長々と風景描写など書く必要はないのだ。乳房の谷間とか、お尻のラインとか、太腿
  の張り具合いなどの描写を早めに出すように心がける。    
・自分がしたくても出来ないことを書く
 ・実際に痴漢をすれば犯罪になるが、小説で書くぶんには何の問題もない。
 ・現実と願望の落差が大きいほど、作品にインパクトが出る。
・三人以上の人物を登場させよ
 ・一人の男と一人の女だけでは、話がふくらまない。
 ・短編なら三人か四人、長編なら五人以上登場させる必要があるだろう。
・恥ずかしいと思うな
 ・自分のパンツを脱いで、つまり、すべてをさらけ出すつもりで書かなければならない。
  恥ずかしがっている場合ではないのだ。
・性の優しき、哀しさ、切なさを知っておく
 ・性行為というものは、実は哀しいものである。なぜなら、背後に死の匂いがするから
  である。オルガスムスは、小さな死という意味だ。
・書いている途中でオナニーするな
 ・自爆してしまっては淫心をふくらませることができないのだ。