「人妻」の研究 :堀江珠喜

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この本は、女性の視点から「人妻」について、真面目に研究した本である。真面目な研究
ではあるが、その内容はかなりきわどい内容でもある。というのも、「人妻」という言葉
自体が、男の視点から出た言葉だからであろう。「人妻」とは「他人の妻」という意味で
ある。つまり自分の妻ではない。人間は、往々にして他人が持っているモノを欲しがる。
そのモノが女性であってもである。他人が所有している女性を欲しがる。そういう視点が、
この「人妻」という言葉に込められているような気がする。
そして、そこには「盗む」対象という意味合いも存在する。つまり、他人の妻を「盗む」
対象、つまり寝取る対象であるということなのである。男にとって、自分よりも社会的地
位の高い男の妻を寝取るのは、最高に愉快なことなのである。
それに、人妻は男にとって都合のいい女でもあるという。特に家庭的に何か問題を抱えて
いるわけでもない人妻は、未婚女性のように結婚を迫られる危険も少なく、安全な不倫相
手であるようだ。
昔は「よろめき」今は「不倫」。時代は進んでも「人妻」の婚外恋愛は絶えることがない。
現代ではケータイの普及によって「不倫」は日常化しているようであり、それに伴い、
「人妻」という価値も低下しているという。まさに不倫の時代だ。すごい世の中になった
ものだ。

「人妻」は魅力的?
・オトコの影が感じられないオンナは、ギスギスしていてイヤだな。近づきたくないね。
・学歴や社会的地位に関係なく、おそらくこれは、多くの男性が感じてきたことなのでは
 ないだろうか。もちろん、うっかり口には出せないのだけれど
・「結婚したことのない女性」、「オトコの影が感じられないオンナ」に対するある種の
 嫌悪感は、「処女」へのいわば恐怖に起因しているとも考えられる。
・本能的に、「処女」状態の女性に対し、恐怖感とまではゆかなくとも、ある種の違和感
 を抱くとともに、性的に満たされていると想像される「人妻」へは、なんとなく安心感
 や親近感をもってしまうというレベルなのだろう。 

鹿鳴館は浮気天国?
・伊藤博文夫人は、元下関の芸者・梅子、ただし後妻。井上馨夫人の武子も柳橋の芸者。
 大隈重信夫人は、元八百石直参の娘ながら維新後、花魁に身を落としていた。木戸孝允
 (桂小五郎)夫人は、元祇園の芸妓・幾松。芳川顕正は、家柄を問わず、とにかく美し
 いことだけを条件に、貧しい旧幕臣の娘と結婚した。
・後期ヴィクトリア朝の上流階級の、「お楽しみ」について見ておきたい。というのも、
 そこでは美しい人妻たちがちやほやされ、皇太子をはじめ王族や大貴族と交際するチャ
 ンスにも恵まれていたのだ。
・現在でも日本の男性中心社会においては、立食パーティにコンパニオンなるものが雇わ
 れている。ウェーターやウェイトレスだけでよさそうなものなのに、大部分が男性客で
 あるため、ちょっと「色」を添える、ということなのだろう。少数の女性客にとっては、
 本当にイヤな女たちなのだが。つまり明治の鹿鳴館など、ごく一部の上流階級の西洋式
 パーティ以外、日本お宴会はあまり進化していないようだ。
・後期ヴィクトリア朝の社交界でも「芸者」のような女性たちがいた。ただし日本のよう
 に、水商売の制度やしきたりによって、マニュアル化されているわけではない。あくま
 でも彼女らは、社交界に属している美しい貴婦人で、しかもれっきとした人妻なのだが。
 経済的援助目当て、あるいは「お楽しみ」目的の貴婦人たちは目ぼしい男性を捜し、近
 づき、踊り、暗い庭を散歩し、後日の逢引を約束する。つまり自宅でお茶の時間に誘う
 のである。彼女らの夫は、すべてを理解し、知らん顔でお茶の時間には外に出ている。
・ヴィクトリア朝の王家はドイツ系だが、エドワード皇太子はフランス大好きのプレイボ
 ーイでグルメであった。とはいえパリではら、皇太子も高級娼館に行けたが、本国では
 スキャンダルに注意しなければならない。未婚女性や、身分の低い女性では、トラブル
 になりやすい。そこでもっとも安全なのは、上流階級の成熟した人妻を浮気の相手にす
 ることだった。
・皇太子ばかりではなく、上流の紳士たちにとっても事情は同じであった。つまり自分た
 ちのソサエティに属する人妻たちなら、安心なのだ。彼女らだってスキャンダルは怖い
 から。
・東京のど真ん中で催された最初のヨーロッパ式舞踏会は、まったくの猿真似であった。
 確かに西洋人にとっては、滑稽このうねない集いであったに違いない。
・薩摩出身の森は、第一次伊藤内閣で文部大臣に就くだけあって、国際化のために日本語
 を廃し英語を国語にしようなどと言い出すエキセントリックな人間だったが、この西洋
 絶対主義は皮肉にも、妻・常が、白人の子どもを出産するという結果をもたらしてしま
 った。早い話が、彼女の不倫なのだが、相手が黄色人種でなかったために、隠し通せな
 かったのだ。
・公家出身にせよ、大名出身にせよ、上流階級の女性は幼時から淫蕩な空気になじみ、妻
 となっても浮気でしくじることは少ない。遊戯はしても、名誉は守るのである。またプ
 ロ出身者は逆に貴婦人の席につくと、なぜか身持ちが固くなる。むしろ常のような中流
 の娘たちが、うぶであるため恋のぬかるみに足をとられるのである。
・さらに貴婦人としての立場に居心地の悪さを覚え、不安定な精神状態にあるため、なお
 さら癒しを求め、折あらば不倫に走る可能性も否定できまい。だが火遊びの仕方を知ら
 ない者は、大ヤケドを負ってしまうのだ。その点「雅」の出身者は、火遊びでも上手に
 権力者を利用するなど、したたかだ。
・鹿鳴館は、そこが紳士だけの社交場ではなくて、上流の既婚女性たちが、夫以外の内外
 の男性と身体をくっつけて交際したという、日本史上でも珍しい光景を提供してくれ、
 高貴な女性のアフター・ダンスの淫蕩ぶりを想像させてくれる。

「ブランド」としての人妻:鎌倉夫人
・鹿鳴館時代においては、ハイカラなライフ・スタイルは、一部の上流階級に限られた。
 しかしそれはあくまで表面的な近代化で、決して保守的な本質が変わったわけではない。
 特に華族には、特権も与えられたかわりに、皇室の藩屏として恥ずかしくないよう、体
 面を保たねばならず、結婚などについても宮内省に届けるなど、そう自由な暮らしが約
 束されていたわけではないだろう。
・彼らに比べれば、裕福な平民、すなわちブルジョワ階級のほうが、新しい分化を自由に
 享受できるようになったと考えられる。なぜなら、そのために必要な財力もあり、必要
 な教育や習い事の機会も増えている。やんごとなき方々に比べれば、はるかに身軽に行
 動できる。
・概してブルジョワ階級は、貴族的なるものに憧れ、そのファッションを真似たがるよう
 である。(上昇志向の表れでもあるが、基本を理解せず、成金趣味を発揮する結果を招
 くこともある。)
・高級郊外住宅地では、昼間の奥様がたのお付き合いにより、女性中心の地縁が成立する。
・夫たちが活躍するのは、あくまでも職場であるところの東京や大阪であって、居住地で
 はない。
・鎌倉夫人の世界は鎌倉、せいぜい東京までだ。狭い世界だからこそ、そのプライドが通
 用し、有効だからこそプライドが捨てきれず、自分を狭い場所に閉じ込めてしまう。こ
 れは恵まれた上流・ブルジョワ女性によく見られる現象でもある。ひとりの人間として
 の自分自身ではなく、家柄(やときには学歴)にプライドをもちすぎて、自分の行動を
 制限することになる。
・もはや鎌倉は、東京の郊外、高級住宅地のひとつにすぎず、「鎌倉夫人」の名称は、地
 域ブランドとしては残っている、ちょうど古都の名菓みたいなものではないだろうか。
 全国的には知られてはいても、わざわざ宅配便で取り寄せるほどではない。だって似て
 ような「商品」は、全国どこででも手に入るんだもの。また実際問題として、現代の鎌
 倉には高級保養地としての魅力はない。観光化されすぎて落ち着きがないし、アジアの
 高級リゾートに格安でいける時代なのだから。

ファッション誌の花形夫人:芦屋マダム
・なぜ芦屋マダムたちは強いのか。もともとこの地が開けたのは、海と山に恵まれ健康に
 良いと、大正から昭和初期にかけて裕福な大阪の大商人が別荘をもち、やがて本宅をこ
 ちらに移したおかげだ。
・今でも関西女性は関東女性に比べて「一点限定もの」に弱いといわれる。確かに銀座の
 デパートでは「昨日、これと同じ品をスチュワーデスの方がお求めになりました」と勧
 めたりするが、そんなことを言われたら、まず芦屋マダムは買わないだろう。
・「京都の着倒れ」、「大阪の食倒れ」に対して、神戸は「社交倒れ」なのだそうだ。
・芸能人も芦屋では憧れの人種ではない。私が子供の頃、ピアノ教師宅で、芦屋から習い
 に来ていた小学生の社長令嬢が、当時の人気歌手の名を挙げて、「今度、うちのコマー
 シャルに使うの」と言ったときの高慢な表情が忘れられない。芸能人は被雇用者にすぎ
 ない。仕事を与えているのはわれわれだと幼いときから教えられているのだ。
・夏の芦屋海岸には大阪の不良がマダムや令嬢目的に集まった。「うまくマダム一人をつ
 かまえたら、その年は一年中食う心配がないと、不良仲間では言われていた」とか。
 それほど洋服、ご馳走、こづかいにありつけたのだそうだ。そして現在でも、学生と付
 き合う人妻は多いとしている。
・学生くらいの若い男性は、男性機能をもってはいるけど、まだ社会に出ていないぶん
 「男」になりきっていない未熟な存在である。したがって大人の男性との交際経験があ
 まりない女性にとっても別段恐ろしい相手ではなく、親しみを感じやすいのではないか。
・一口にいうと「芦屋夫人」というのは「太陽族」の夫人版であり、関西版であって、背
 景が湘南のかわりに芦屋になっているにすぎない。 
・彼女たちのやりかたは、「よろめく」といったような程度ではなく、もっと大胆不敵な
 ものが多かったようだ。
・三島由紀夫の「美徳のよろめき」から、「よろめき」という言葉が「妻が夫以外の男性
 にときめきを感じたり、誘惑されて浮気すること」の意味に使われ、流行語となってい
 た。

「マダム」は魔性のオンナ?
・和式の「女房」は、和服の似合う内向的貞淑な妻であるが、「マダム」は初対面の男性
 とでも、すぎに打ちとけて馴れ馴れしい態度をとる。その開放性は、彼女がまとってい
 る洋服によって象徴されているようだ。手足を露出し、肉感的な身体お線を強調するノ
 ースリーブでセクシーな洋服は、マダムの行動をより官能的に演出する。たとえば、テ
 ーブルの上に座って、膝を出した格好でビールを飲み、皆をリードしてがらジャズを歌
 ったりするのだ。「女房」とは、まったく対照的な「マダム」である。
・「マダム」には「不良」で「エロ」、つまり性的な奔放な、いわば妖婦のイメージが、
 つきまとっていたようである。 
・日本の貴族たちは、時の権力者には決して逆らわない。これが伝統的な処世術だったは
 ずだ。平家、源氏、北条、足利、豊臣、徳川、薩長、と、必ず、強い側に味方して、生
 き延びてきたのである。変わり身の早さは、日本の「優雅」のお家芸であり、敵を感激
 させうる恭順のレトリックは、その最強の武器だったのだ。
・女性誌にとって「マダム」とは、リッチでエレガント、知的な既婚女性である。いっぽ
 う男性読者をダーゲットにした雑誌では、「マダム」とはスキャンダラスな有閑婦人か、
 水商売の女主人をさすが、後者の話題が圧倒的に多い。
・日本の夜の酒場では、なぜ「ママ」という言葉のほうが好まれるようになったのか。こ
 ちらのほうが、男性客にとって「甘えやすい」のではないだろうか。若いホステスと違
 って、マダムの魅力は熟女の色香とある種に貫禄だろう。なにか頼りになりそうで、包
 容力があり、それこそ「癒し」を与えてくれる。そのいっぽうで、細かい配慮もできる
 ので、取引き上の大事な客を店に連れて行っても、安心してまかせられるのだ。
・阪神間(西宮・芦屋)向けには「阪神間マダム」、東京の田園都市線沿線では「田園マ
 ダム」という言葉で、住民の優越感をくすぐる。
・二子玉川でのカルチャーの帰り道、車で多摩堤通りや瀬田方面に消えるマダム、電車で
 大井町線や渋谷方面に向かう奥さまが、なんだかちょっぴりうらやましい。多摩川の西
 に住む田園マダムたちには、地域的コンプレックスがあるらしい。
・「マダム」より少し若い世代のリッチな既婚者女性たちを「コマダム」と呼んだ。生息
 地は、東急田園都市線沿線を中心とした第四山の手。年齢は三十歳前後。二子玉川や自
 由が丘にショッピングに出掛け、その身体は高価なブランド品で飾られる。
 
人妻は「都合のいい女」?
・ちょっと前までは、浮気とかよろめきとか言ったものですが、最近は「不倫」という言
 葉を使います。「不倫」というと、なんだか意味が強すぎるように思います。たとえば
 兄妹とか、父娘とのあいだで間違いがおこるようなことが「不倫」ではないかと思うん
 ですが。人の嫁はんと関係する、なんていうのはこれは当たり前のことですから、不倫
 でもなんでもありません。
・間男された夫のほうが恥と思い、事を表沙汰にせず我慢したケースも少なくなかったの
 ではないか。「町内で知らぬものは亭主ばかり」にしても、ひょっとしたら亭主は知ら
 ぬふりをするしか他に対処法がなかったかもしれない。浮気症の夫に耐える妻が、どち
 らかといえば経済的理由のために離婚に踏み切れなかったのと対照的に、男には見栄が
 大事なのだ。男は社会の生き物だから、女以上に世間体を気にする。女はもっと実際的
 だ。
・「もし離婚するとして、その原因が奥様の不倫とご自分の不倫だとしたら、どちらのほ
 うが他人に言いやすいですか」と、40代から60代のオジサン数人に質問したところ、
 全員が「自分の不倫」という答えだった。
・女をほんとうに夢中にさせる男というのは、奥さんがいて、それにきまった愛人もいて、
 さらにすんなりとつまみぐいできる男のことで、それをなんの破綻もなくおこなえる人
 でなければならない。それには、経済力、体力をそなえていて、しかもアタマがよくな
 くてはできない。
・このごろ、人妻のよろめきがはやっているが、これはチャタレー夫人と同じく夫が満足
 をあたえないために起こる現象だと思っている。本来、女の甲斐性というのは、好きな
 男に命がけでつくすことである。その女が浮気をするというのは、やはり正常ではない。
 もし奥さんに満足を与えられないようなら、奥さんの浮気も夫は認めるべきだというの
 である。
・不倫は、人生のアクセサリー的思い出のようなものなのだ。だからおおぴらに自慢はで
 きなくとも、心の中では彼女の優越感を支えるひとつの要因となっているのである。
・純情な未婚女性よりも、遊び慣れた有閑夫人相手の浮気のほうが、トラブルになりにく
 い。家庭や経済的基盤を失いたくないから人妻のほうも、慎重に行動する。人妻との付
 き合いを好む男に「若い女はあとでめんどうだし、妊婦をだくのはごめんだからね」と
 言っている。その点、人妻は「都合がいい」のだ。彼女らだって、経済面や余暇の面な
 どさまざまな自分の都合のよさを最大限に利用して楽しんでいるのだ。
・結婚願望のない男にとっては、妊娠したからと結婚を迫られる心配のない、しかるべき
 家柄の人妻が好都合なのだ。すでに夫のあいだに子供もいるので、そう馬鹿なこともし
 ないだろう。
・軽井沢で正式に認定されている?正しい過ごし方は、昼寝・読書・散歩・それに午後の
 お茶なのである。だが、これじゃ退屈すぎるので、それに加えてテニス、ゴルフ、乗馬
 もある。
・スポーツにおいては、概して女性の警戒心も弱いから、友だち感覚でお茶くらいは抵抗
 なく付き合うだろう。どうせ暇なんだし、で、一緒に散歩するようになったら雑木林の
 昼間でも薄暗いところへ。 
 
「不倫」の時代
・「不倫」が、それまでの「よろめき」に代わる人妻の恋を表す言葉として流行し始めた
 のは、ちょうど「金妻」が大ブレイクした80年代中頃だった。「週刊現代」の記事
 「主婦の浮気はいまや家事の一部です」でも、「不倫」という言葉は見当たらない。
・「金妻」という言葉が婚外恋愛をする人妻を指すようになったし、このドラマの舞台と
 なった東急田園都市線の地域は、当時、「金妻沿線」などとも呼ばれたのだ。
・人妻の愛情問題を取り上げると、とたんに聴取率がはね上がるという。つまり、不倫妻
 はいまや商品なのである
・「不倫」は、以前からあった言葉だが、これが婚外者との性的関係に特定して、マスコ
 ミが好んで使うようになったのは1985年当たりからだ。
・「浮気」にはその字のとおり、つい浮ついた心で、成り行き上、肉体関係をもってしま
 ったというニュアンスがあるのに対し、「不倫」には、やや誠実さが見られ、ときには
 「純愛」もあり、ということなのではないだろうか。だが既婚者の恋を「純愛」と呼ぶ
 のも、風紀上好ましくないので「不倫」という曖昧な言葉を適用するようになったので
 はありまいか。
・実際に恋する人妻からは、罪悪感なるものが消滅してきたのかもしれない。林真理子著
 「不機嫌の果実」のコピーは衝撃的だった-「夫以外の男とのセックスは、どうしてこ
 んなに楽しいのだろうか。
・同じ性行為でも、「人妻」という立場によって女性が(勝手に)高揚してくれるのは、
 男性にとっても決して不愉快ではないはずだ。
・再会一度めのデートではキスまでだったが、二回めの誘いを断らなかったら、それは大
 人の世界では「OK}の返事をもらったも同様である。
・「不機嫌の果実」は、女性作家による、つまり女の側から不倫する人妻の心情を、現実
 的に描いた話なのに対し、「失楽園」はまさに男性作家による中年男の夢物語、大人の
 おとぎ話、という気がしてならない。多くの場合、女性より男性のほうが、はるかにロ
 マンティストである。

結婚しない時代?の人妻
・わが国の平均初婚年齢は上がり続けているし、独身者があまり不自由や偏見、差別を感
 じずに暮らせる大都会において、結婚適齢期の未婚者は多い。「負け犬は、都会の生き
 物です」と指摘している。
・未亡人が魅力的だから、「女やもめに花が咲く」という諺もある。「夫に先立たれた女
 は、かえって身ぎれいになり、男にもてはやされ、再び幸福を得る機会も多い」のだ。
 「男やもめに蛆が湧く」とは、なんという違いだろうか。以前なら、20、30代の未
 亡人に好奇の目が集まったが、40代はもちろん、50代後半の未亡人でも、充分に男
 性の心をそそりうるかもしれない。
・女は本能的に恋をその他の感情と区別することを知っているが、男にはあらゆる愛情に
 任意に恋の色をつけることができる。
・同情は愛情と、もっとも誤認されやすい感情だ。その点、「未亡人」は容易にこの擬似
 愛情を得る立場にある。
・昔の母親のほうが、きちんと育児をしていたように思われがちだが、それは誤りだ。な
 にも昔のお母さんが皆、偉かったわけではない。賢母はいつの時代にもいたが、少なく
 とも戦前の有産階級の奥様は、(今の一般の主婦のようには)育児に縛られてはいなか
 った。
・乳母制度が崩壊し、保育園が不足している現代において、子育て中の人妻と付き合いの
 は難しかろう。
・そこで狙い目、つまり「盗」のターゲットとして最適なのは子供のいない人妻、あるい
 は子育ての一段落した人妻ということになるだろうか。 
・恋のために仕事に身が入らなくなるような「人妻」は、心中の相手にはいいかもしれな
 いが、「盗」の遊びとしては危険すぎる。まだ子供がいて過程に定住するつもりの「よ
 ろめき夫人」のほうが安心だろう。
・子育て中の彼女らに脇目を振る余裕はない。しかしこの大仕事を終えると、「女」も再
 認識したくなる者がいても不思議ではない。
・子育てから解放され、若さからも縁遠くなりはじめた女たちを捉える「私は果たしてひ
 とりの女としてちゃんと生きてきただろうか?」というわが身に対する疑念は切実だ。
 そんな心の奥底に、誰かに愛されたい、誰かを愛したい、自分の中にも赤い血潮が流れ
 ていることをもう一度たしかめてみたい、というひそやかな、それでいて抑えがたい願
 望が横たわっているのだ。
・知的で向上心のある女は、浮気願望が強いように思える。女性の高学歴社会である現代
 において、人妻不倫の風潮が認められるのは、理に適っている。
・男の浮気が、征服欲や性的欲求の押されて行われがちなのにくらべて、女の場合は、自
 分のアイデンティティを確かめたい、という思いに駆り立てられることが多いようだ。
・自分の家庭にこれといった不満があるわけではないのだが、このまま老いてしまうのも
 辛く、ちょっとしたアバンチュールがあってもいいのでは、などと、ますます考えるよ
 うになるだろう。ただし、晩婚化により、このような不倫願望を抱く人妻は、更年期前
 後あたりになるだろうが。
・経済的に自立していて、ボーイフレンドも多く、結婚にあせっているような気配はまる
 でない。むしろ「私は結婚になど興味がないのよ」と言っていたり、「私はひとりでも
 生きていけるのよ」と言っていたり。こんな女性こそが男が不倫相手に選ぶには確かに
 都合がよい。まさによい。よすぎるくらいだ。
・これは魅力的な既婚女性にも当てはまる。経済的には夫を頼っているとしても、少なく
 とも不倫相手の財力を当てにしない。夫はすでにいるのだから、結婚にあせるわけでも
 ない。しかもその結婚も、まずまずうまくいっているのなら、離婚・再婚を考えはしま
 い。やはり不倫相手には、こんな「人妻」が都合らいい。自分の勝手でこの女性と分け
 れることになっても、男は罪悪感にかられることもないだろう。
・現代日本の「盗」に関して、どうやら最も威力を発揮しているのは、「ケータイ」の出
 会い系サイトだろう。30、40代の人妻からのアクセスも少なくないようだ。
 相手を安心させることさえできれば、人妻はOLや学生よりも呼び出すのが簡単と断言
 している。OLや学生に比べて専業主婦は暇で、時間的に融通がききやすいのだろう。
 OLや学生なら、他にも出会いのチャンスはありサイトに熱中はしない。
・人妻の場合は、ケータイでもなんでも、チャンスをつかまねば、後がない。ぐずぐずし
 ているうちに更年期がやってくる。まあ結婚するわけじゃないんだしと、相手に対する
 高望みもせず、男性にとっても気が楽ということはあるだろう。さらいケータイで知り
 合うのは自分の日常生活とは無関係の相手なので、不倫がバレにくいという利点もある
 とか。
・不倫する男の配偶者のタイプは決まっているそうで、「驚くほど太っていて普通のオバ
 サン」、「まだほんの若いときに彼と出会い、ほかには男を知らずにそのまま結婚。き
 ちんと働いた経験もなく、生活にだけはやたら執着するタイプ。そして控えめとか。
 プレイボーイの妻は、たいてい美人だが、不倫男がすべてプレイボーイというわけでは
 ない。これでは「盗」のターゲットになるまい。夫はそう思い、安心して自分の妻以外
 の女性と遊ぶのだろう。
・女性さえその気なら、会うまでには、漕ぎつけられるだろうし、会ってしまったら男の
 ほうからはその場で断りきれず、一度だけならと付き合うそうだ。
・もし真面目な奥様の初めての不倫ということになれば、それなりに男心をそそるだろう。
 そもそも「触れなば落ちん風情」ではなくて、なかなか落ちないところに本来「人妻」
 の魅力があり、だからこそ人妻幻想を男たちに与えてきた。そして「盗」に成功したと
 き、その勝利感・征服感・達成感に、しばし男は酔ったのだ。しかもこれらの喜びの大
 きさは、女性の配偶者の社会的地位の高さと比例するようだ。(ダイアナ妃の不倫相手
 は、「英国皇太子の妻」を寝取って、どんなに愉快だったことだろうと、誰しも思った
 に違いない。)
・しかし人妻不倫が、サイトによりお手軽な娯楽になってしまうと、男性のほうも勝利感
 や征服感が味わえず、ただの性欲の満足しか得られなくなるかもしれない。
・こうして既婚女性の不倫が増えると、現実の「人妻」に男性は魅力を感じなくなってゆ
 くかもしれない。晩婚化により人妻が高齢化すればなおさらだ。