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最近、メディアが、アカの他人の不倫を大々的に報道して責め立てることが多い。しかし、
私は決して不倫を肯定するわけではないのだが、果たして正義感を振り回して他人の不倫
をそこまで責め立てる権利があるのかと疑問に思う。不倫をした当事者たちにとっては、
そうなってしまった事情がいろいろあっただろうと思う。うわべだけを見て、鬼の首でも
取ったように、不倫を責め立てることは、逆に、とても不自然に感じる。そもそも、生物
学的に見れば、不倫をしないほうが不自然なのだ。人はなぜ不倫をするのか。それは男と
女がいるからだ、と私は思う。当たり前のことなのだ。最近の不倫、不倫と騒ぎ立てる世
の中の風潮をみると、今の社会は、どんどん寛容さがなくって、とても息苦しい社会にな
ってしまっている強く感じる。

はじめに
・市井の人々の不倫も決して蹴ってはいない。既婚者同士はむしろ増えていると実感して
 いる。一昔前に比べ、不倫をしている当事者たちはそれほど重い罪悪感は抱え込んでい
 ない。軽やかにとはいかないが、「恋愛と結婚は別もの」という考え方が、女性たちの
 間にも浸透するようになっている。携帯電話やスマホなどのツールも不倫の一助となり、
 不倫しやすい状況が整っているのだ。
・寿命が延びていることも、四十代から五十代にかけての世代が「恋愛至上主義」で青春
 時代を送ったことも、不倫を後押ししているかもしれない。昨今では「もとはといえば
 一夫一婦制に無理上がる」と断言する人も少なくない。結婚したら最後、誰とも恋愛で
 きないなんてそんな不自由なことがあるのがおかしい、一生ひとりの人だけに縛られて
 生活するのは疑問だ、そんな声を耳にする。たとえ結婚という制度の中にいても、人の
 心は誰にも縛れない。

(ジェンダー研究から不倫を考える)
 人はなぜ不倫をしないのか :上野千鶴子 
・人はなぜ不倫をしないのかのほうが不思議です。その前段階として、人はなぜ結婚とい
 う守れない約束をするのか、がもっと不思議である。
・われわれの世代は、みんなバリケードの裏でセックスして、妊娠がわかると結婚してい
 ったものです。避妊がヘタだったからね。
・当時は結婚せずに男と住んでいるだけで、「ふしだら」と言われる時代でした。女は処
 女で結婚するべきとか。初夜とか婚前交渉とか、今はさすがにそれは死語になりました。
・やはり経済力と女性の生き方は切り離せない。今だって多くの場合、妻の行為は夫の許
 可のもとに成り立っていることが多いでしょう?だけど経済力のある女は、自由に、自
 分の判断で行動しています。離婚の自由もある、経済力が露骨に生き方に表れるんです。
・首都圏、関西、東北で、10代の女性に、彼にコンドームをつけてと言えるかどうか尋
 ねたアンケートがあるんです。東北の女の子が圧倒的に低かった。もちろん、コンドー
 ムの存在は知っているんですよ。だけど、自分から付けてとは言えない。遊び慣れてい
 ると思われたくないとか、彼に嫌われたくないとか。  
・現在では、女は2本立ての承認を必要としているんです。仕事ができるというだけじゃ
 ダメ、 女としてちゃんと恋愛して結婚も出産もしなくてはいけない。二重のプレッシ
 ャーにさらされている。さらに結婚は女が我慢すればうまくいくと、誰もが考えている。
 女自身もそう思っている。既婚であることが、ある意味でスティタスにもなっているか
 ら、我慢してでも、その地位は手放したくない。夫が不倫しても別れないのは、夫への
 ある種のペナルティであるだけでなく、そのスティタスから降りたくないのではないか
 と考えてしまいます。それに、別れたら暮らしていけない女性も多いのですしね。
・そもそも、夫側は自分が婚外恋愛をしても、婚姻関係を解消する気がないことが多いで
 すよね。妻に逃げられたら、男は老後、困ってしまうから、介護の時期が来たら復讐し
 てやろうと考えている妻はけっこういます。
・私は結婚を「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって唯一人の異性に譲渡する契約の
 こと」と定義しています。どうして人は、そんなできもしない約束をするのかが、私に
 は本当に不思議です。そして、なぜ性関係の相手がひとりでなくてはいけないのか。そ
 れも不思議でなりません。     
・男は見栄とエゴイズムの動物ですから、いわゆるナンパ師みたいな人にきたことがある
 んですが、夫から女として扱われていない、男友だちもいない女性は、落としやすいそ
 うです。 
・女の不倫を女が叩くのは、羨ましいからでしょう。私がこんなに我慢しているのに、自
 由に男とセックスするなんて、という思いがある。ただ女性は、本当に親しい友たちが
 不倫しているなら応援するんですよね。そこがおもしろい。
・私は「愛」とは大事にされることだと思うんです。乳飲み子を抱えた妻が大変な思いを
 しているのに、夫は協力しない。それは大事にされていないということですよね。
・今の日本において、男女は向き合わず、寄り添わず、常に背を向けあっているのではな
 いかという気がしてならない。空前の「背を向けあう時代」なのではないだろうか。
 いや、とことん向き合いたいと願っている女性は多い。だが、男はどうやらそれを避け
 たいように思えるのだ。表面的に男が女に求めるものは、何十年も前から変わっていな」
 い。優しくて、何でも受け入れてくれる存在。結局、求めているのは「ママ」なのだろ
 うか。   
・生涯でひとりしか産めないとしたら、男の子がいいか女の子がいいかという調査で、娘
 が息子を上回ったのは80年代前半のことでした。ちょうど少子化が進んでいった時期
 です。それまでは子どもがひとりしかうめないなら男の子だった。男の子だと子育ての
 失敗は許されません。それでも母親は息子を望んだ。でも娘なら母親にしてみれば同性
 だし、子育てを無責任に楽しめる。それに老後の介護期待も、嫁より娘のほうがいいと
 考えるようになったのでしょう。その後、少子高齢化の進行と同時に娘への期待や投資
 が高まって、女性の受難が始まった。母が娘に一方的に自分の夢や理想を押し付けるよ
 うになったんです。それで女性は悲鳴を上げるしかなくなっていった。
・日本の妻たちがよく言うでしょう。「ウチにはもうひとり大きな息子がいる」って。
 そうやって自分を納得させて、男女の関係であることを諦めれば、結婚生活はうまく回
 っていくかもしれません。  
・私は決して男嫌いではありません。男性は愛すべき生きものだと思っているし、尊敬で
 きる男性もいる。年齢的に性欲は順調に落ちてきているけど、セックスも大好きですよ。
 だけど、人と人との間に契約だの権利だの所有だのという関係が入るのが、どうしても
 認められない。だから結婚に魅力を感じたことは一度もありません。
・私は恋愛相手を「お友だち」と言っています。ちょっと親しいお友だちもいれば、とー
 っても親しいお友だちもいて。お友だちならひとりである必要はありませんから。
・平等より、私は自由がほしかった。性的な身体の自由はとりわけ重要なものだと思って
 います。それを結婚によって手放すなんて、考えただけでも恐ろしいくらいです。
・恋愛はエゴイズムの闘いですよね。独占欲をあからさまに示すのは、人間らしいエゴイ
 ズムかもしれません。男はそれを無邪気に見せますね。男が不倫をするのは無邪気なエ
 ゴイストだからだといつも思います。女がそれを上回る無邪気なエゴイストになれば、
 男が黙った我慢してくれる関係になるかもしれません。
・どんなに弱いと思っている女でも、誰よりも強いと思っている男より強い、と私は長年
 の取材から感じている。メンタルと生命力において、やはり女性は強いのだ。
・婚外恋愛をしているから夫に優しくなったと言った女性がいます。罪の意識からではあ
 りません。男を愛して愛されて女度が上がる。だから夫に対して優しくなれるんです。
 男は鈍感だから、妻の婚外恋愛には気づかない。少々疑わしいと思っても、不都合な真
 実は知りたくない生きものだから、追及しないんです。
・恋愛と結婚は別という感覚を女性たちがもつようになってから、既婚女性の婚外恋愛が
 増えた。家庭は家庭として円満に温存し、自分の中の「女」は外で発散させる。つまり
 家庭の中では、「妻」「母」という役割を果たしておくだけのほうが、むしろ安泰だと
 いうことだ。   
・結婚とは家族をつくるためにするものであり、その家族は温存したまま、女としての情
 熱は外で満たす。こういう状況になっているのが現実である。  

(昆虫学から不倫を考える)
 昆虫は恋をするのか?  :丸山宗利
・大部分の昆虫のオスとメスは、1回交尾したら別れていきます。そして1回こっきりの
 交尾でオスはそのまま死ぬこともあります。カマキリは交尾するとオスがメスに食べら
 れてしまうのが知られていますが、中には交尾前に食べられることもありますし、交尾
 後、巧みに逃げ出して別のメスとまた交尾するオスもいます。
・アリの場合、巣の規模がある程度大きくなると、羽のあるアリが生まれるようになりま
 す。この羽アリは年に一度、いろいろな条件が揃ったときに外に飛び立ちます。そして
 同じ時期に飛び立った別の巣の異性と空中で交尾し、メスは一匹で巣を作り始めます。
 このメスが新しい女王アリになります。空中で交尾したオスのアリは力尽きて死んでし
 まいますが、その際、メスは自分の体の中の袋(貯精嚢)に、交尾したオスから取り込
 んだ一生分の精子を貯蔵します。この袋は液体に満たされていて、精子を生かしておく
 ことができるんです。交尾を終えたメスは地上に降り立つと、単独で巣穴を掘って女王
 として卵を産み始めまず。
・このとき産むのが働きアリの卵で、働きアリが成虫になると、今後は自分と新たに生ま
 れる子どもたちのためにエサを取りに行かせます。ちなみに働きアリはすべてメスで、
 彼女たちは女王アリの娘でありながら、一生、女王のためにエサを運び続けます。
・女王アリは数百から100万の卵をもっていて、オスとメスを産み分けます。それはア
 リが特殊な性決定のシステムをもっているからで、受精卵はメスになり、未受精卵はオ
 スになる。単独で巣を作り始めたころ、女王アリがオスを産むことはありません。
・そしてある程度、巣が大きくなると、エサの量やフェロモン、受精の有無によって、卵
 からはオスやメスの羽アリが出てきます。ここで初めてオスのアリが誕生するわけです
 が、時期がくるとこの羽アリが一斉に飛び立ち交尾して、メスは新たな女王になって単
 独で巣を作る、ということを繰り返すわけです。
・ちなみにアリやミツバチ、ススメバチなどは、社会性昆虫といわれています。人間以外
 の生物における社会性とは階級があることで、女王アリがいて、その下に働くことだけ
 に専念して産卵しない働きアリがいる。それが共に暮らしていることおw「真社会性」
 といいます。女王を頂点とした巣は、すべて血縁関係にありますから、「家族」でもあ
 る。だから私たちは、アリの世界に人間社会を徹底的に原理化したような様子、いわば
 縮図を見ることができるんです。
・アリの巣は家族で組織されているはずなのに、他者を居候させることには案外寛容で、
 それもまたアリの興味深いところです。人間社会では家族以外が知らないうちに同居し
 ているなんてことはまずありませんよね。ここにもアリの多様性、寛容性を見ることが
 できます。  
・ヒトも動物である以上、自分の遺伝子を残すことを第一目的としているのではないでし
 ょうか。ヒトの親がせっせと子どもを育てるのも、愛情からというよりは自分の遺伝子
 を残すための本能かもしれない。遺伝子を残すための恋愛、遺伝子を残したいがための
 不倫もあり得るのではないか。
・オスは精子を生産するだけで、何度でもメスと交わることができます。でもメスは生産
 できる卵に限りがあって、誰でもいいというわけにはいかない。だからメスは慎重にオ
 スを選びます。ただオスの立場としては、複数回交尾できるので、オス同士でメスをめ
 ぐって争うことにもなります。なんとしても、メスに選んでもらわなければならないか
 らです。  
・生物は本能として遺伝子を残したいと思っているのであって、それは人間も同じだと思
 います。人間は寿命が長くなって、異性とコミュニケーションをとる期間が増えた。結
 婚していればもちろんその人と添え遂げるつもりはある。それでもオスはできるだけ多
 くのメスと交尾したい本能は残っているのではないか。
・ほとんどの昆虫は、1年足らずしか寿命がありません。だから遺伝子を残すためにオス
 は、素早く多くのメスと交尾する必要がある。そして多くの場合は、あとから交尾した
 オスのほうが有利です。
・人間は家族制度と社会制度が整ってしまったから、本能がイコール文化的なものに昇華
 されてしまった面があります。一夫一妻の日本で育てばそれが当たり前になり、一夫多
 妻の地域で生まれ育ったらそれが「普通」だと思う。少なくともわれわれが意識する知
 性とか理性というものは、本能を合理的に扱うためにできあがった便利な道具の一つで
 はないでしょうか。浮気してはいけないというのも、現代的な解釈にすぎなません。
・本来、動物であれば遺伝子を残したいという欲求は抑えられないものだと思うし、性的
 な快楽を知ってしまったらブレーキはきかない。本能は制御し切れないいんですよ。だ
 って、食べたり眠ったりしなかったら生命に関わる。性欲も似たようなものなのではな
 いでしょうか。    
・昆虫を見ていると、人間はごく狭くて短期的な観念や常識の範囲で生きているんだなと
 思いますよ。絶対的なものなんてあり得ないんですから。
・実は人間のほうが「生物」という形からはずれているかもしれないと思うことがありま
 す。つまり、本能以外の「常識」や「社会通念」が大きくなりすぎているのでしょう。
 しかもそういった社会的な取り決めは、時代によって変わっていきます。「一夫一妻」
 も「不倫はいけない」とする考え方もきわめて近代的でしょう?つい何十年か前まで日
 本には夜這いの習慣があったし、側室やら妾やらがいた時代もあって、そのほうが当た
 り前だったのですから。
・人間はあくまで狭い価値観の範囲で生きていることを自覚したほうがいいのかもしれま
 せん。少なくともそうすれば、最近の報道のように、アカの他人の不倫や浮気を大々的
 に責め立てるようなこともないでしょう。

(動物行動学から不倫を考える)
 動物の浮気は倫理では語れない :竹内久美子
・一夫一妻という形をとる動物は、哺乳類で3〜5パーセント程度しかいないといわれて
 います。意外かもしれません緒乳類では、一対一で夫婦関係があるほうが珍しいんです
 よ。
・90パーセント近くが一夫一妻の夫婦関係をとる鳥の場合は、巣作りも餌取りもたいて
 い夫婦で力を合わせて行います。ただ、そういう活動の際に別行動をとると、鳥もオス
 メスともに浮気をすることがあります。つまり動物は、四六時中一緒にいないと浮気を
 防げないということでしょう。
・メスは本能として、今つがっている相手より質のいい相手がいれば、その遺伝子を取り
 入れたいと思うのです。これが動物の進化をもたらしてきました。
・動物は自分の遺伝子の全滅を防ぐために、本能的に多様な遺伝子を残そうとします。そ
 のための浮気は動物にとって本能で、これを倫理で語ることはできません。だから動物
 学的には「不倫」ではなく「浮気」が正しいと思います。
・動物のオスとメスには決定的な違いがあります。オスは射精しても比較的早く精子が回
 復しますから、ダメ元で数撃ってチャンスを追究したい。一方、メスは妊娠、出産、子
 育てに年単位の日数がかかるため、軽率に相手を選ぶわけにはいかない。だからこそメ
 スはいい遺伝子をもっているオスを見極めることが重要で、浮気であろうと、夫より質
 のいい遺伝子がほしいというのが本能なのです。
・女は10代後半、20代前半、20代後半と少しずつ浮気の確率が減っていくのですが、
 30代になると急に確率が上がることがわかりました。20代後半で4パーセントだっ
 たものが、30代で8パーセント、さらに40代では10パーセントと二桁に突入する
 んです。
・子供の数と浮気の確率の関係では、子どもひとりだと3パーセント、2人だと10パー
 セント、3人で16パーセント、そして4人以上だと31パーセントという高確率にっ
 たそうです。ちなみに子どもがいない場合は5パーセント。つまり子どもがいない女性
 より、子どもがいる女性のほうが浮気しやすいことになるわけです。
・女性は30代から40代にかけてのほうが性欲が高まるようにプログラムされていると
 いうことです。女性はアラフォーあたりで女性ホルモンが激減、相対的に男性ホルモン
 が優位になります。ひとつにはこの理由で性欲が高まると言われています。だからアラ
 フォー女性の浮気が多いとすれば、そういう戦略なのであって、ある意味しかたがない
 のではないでしょうか。
・婚外恋愛をするのは、圧倒的に40代の女性が多いということだ。その理由としては、
 ある程度、子どもが大きくなって手がかからなくなっていること、自身もパートなど外
 に出る機会が増えて男性と知り合いやすくなりこと、そしてセックスレスで女としての
 立ち位置が揺らぐこと、意識しているのか無意識かはわからないが性的な満足がほしい
 と思っていることなどが挙げられる。
・実際に生殖を目的としていないセックスにおいても、精子という兵士をたくさん、しか
 もたびたび送り込んでおいて他の男の精子で卵子が受精しないようにするのが動物のオ
 スとしての基本です。
・人間のペニスは、霊長類で最大です。膨張時、ゴリラは3センチ、オランウータンは4
 センチ、チンパンジーは8センチでしかも細い。それに対して人間は13センチもあり、
 返し(かり)が大きく、女性器にフィットするように反っている。人間のペニスは、ど
 うしてあんな形になったのでしょう。チンパンジーのペニスには、返しがありま
 せん。そして交尾の時間はわずか7〜8秒で、スラスト(ピストン運動)も「三こすり
 半」です。一方で人間の性交時間は2〜10分くらいでスラスト回数は100〜500
 回にも及びます。なぜ時間もスラストの回数も多いのかというと、ヒトのオスは自らの
 射精に先だって、まず前回射精した男の精液をペニスで掻き出すためだとされています。
 長くて太くてキノコ形お先頭部は、確かに精液を掻き出すのにぴったりです。 
・チンパンジーのメスは発情している10日ほどの間に、1日に何十回も交尾します。オ
 スから見れば、たとえ前のオスの精液を掻き出して自分の精子を送り込んだとしても、
 またすぐ別のオスが交尾をするのはわかり切っていますから、掻き出すことに意味があ
 りません。代わりにどうするかというと、精子の数で勝負します。そのためにチンパン
 ジーの睾丸は人間の数倍大きく、精子の製造能力が非常に高くなっているのです。
・交尾したあと、自分の精液自体でメスの膣に栓をする動物はけっこういます。これを交
 尾栓というのですが、有名なのがムササビ。交尾栓をしても、他のオスがそれをこじ開
 けて交尾することもあるし、メスが自分で剥がすこともあるようですが、オスがメスに
 交尾栓をするのは浮気防止という「感情」からくるものではなく、自分の精子で受精さ
 せたいから他のオスの精液は入れさせない、という「本能」です。一方、人間の場合も
 似たようなことがあります。男性が女性の膣内に射精すると、フローバックといって膣
 外に精液が漏れ出します。でも、これが起こるのは射精後すぐではなく平均すると30
 分後、ときには50分後ということもあります。なぜすぐに流れ出していかないかとい
 うと、精子が膣内で少し固まるからです。これはまさしく交尾栓ですよね。ヒトも生物
 的に、すぐには他のオスの精液を受け入れないようにできているかもしれません。
・一夫一婦制が普通だと思う日本人から見れば、一夫多妻を採用する国は、男だけがいい
 思いをしているように思いがちだ。しかし現実は必ずしもそうではない。一部の男のハ
 ーレム状態で多くの男はあぶれてしまう。しかもハーレムにいる男たちにしても、複数
 の妻全員を経済的に満足させなければならないし、第二夫人をめとるときには第一夫人
 の了解がいる。妻を差別することも許されない。ただ一夫多妻は女性の経済力を考える
 と、形としては安定しているかもしれないが。
・妊娠中でも授乳中でも、セックスをしようと思えばできるのは人間だけです。なぜ人間
 はいつでも発情しているのでしょうか。その答えは、「子殺し」を防ぐためなんです。
 チンパンジーの社会でどういう場合に子殺しが起こるかというと、メスが他集団から子
 連れで移籍し、しかもその子がオスであった場合です。生まれた子が集団内のどのオス
 の子でもないので、その子は将来、自分たちのライバルになる。しかも授乳をしている
 間のメスは発情しないので、集団にとってそのメスと子は何の役にも立ちません。でも、
 もしその子がいなくなれば、メスは発情し集団内のオスの子を産むことができる。だか
 ら連れて来られたオスの子どもは殺されてしまうんです。
・我が子ではなのに心から愛情を傾ける人もいる。そういう人は妻に機嫌よくいてもらう
 ことで次に自分の子を産んでもらおうと考えているのです。動物学からはそう判断しま
 す。つまりヒトとしてのメスが一年中発情しているのは、発情期しかセックスできない
 と子殺しをされる可能性があるからです。女性はそれを回避するためにずっと発情する
 必要があったのではないかと考えられます。
・諍いを避けるためにコミュニケーションを欠かさず、男は威張らず、女同士は嫉妬もせ
 ずに仲がいい、こういう社会をなぜ人間はつくれないのだろうか。もっと不倫をはじめ
 とする他人の行動について寛容になれないものか。
・女にとっては、「よい遺伝子かよい父親は」は両立しにくい問題です。だからこそ、適
 当な男を確保しておいて子を生み、あとから別の男と浮気してよりよい遺伝子を取り入
 れるメスがいるのはうなずけます。本来、女にとっては夫よりいい男との子を産むこと
 に躊躇はないはずですから。一方、男は妻より質のよいいい女に子を産ませたいとは必
 ずしも考えません。男はチャンスさえあれば誰でもいいと考えている。そういう男の本
 質があるからこそ、浮気はダメだと言われるかもしれません。でも生物学的に浮気は当
 たり前なんです。  

(宗教学から不倫を考える)
 宗教消滅で善悪の基準は変わるか  :島田裕巳
・日本には第二次世界大戦が終わるまで姦通罪がありました。法律で決められていたのだ
 から、当時の常識として「不倫は悪」だったわけです。姦通罪とは配偶者のある人が、
 配偶者以外の人間と性的関係に陥る罪で、これは夫のいる女性と、その女性と関係を持
 った男性に適用される、夫からの親告罪でした。当時、日本は家父長制が強く、男は妻
 のめんどうを最後まできちんとみる義務をもっていた。逆に言えばそれは、女が男の所
 有物という位置づけだったということです。つまり姦通罪は、夫が妻を所有物として、
 ある意味「財産」とみなしていたために存在した法律なのです。だからこそ、他の男の
 所有物である女に手を出したり、男の庇護下にある女が別の男と関係をもつことが、所
 有物の侵害ととらえられ、罪になったというわけです。
・イスラム諸国では、女性が貫通すると「石打ちの刑」になるというイメージがあります。
 石打ちの刑は、下半身を生き埋めにして、身動きがとれなくなった人に投石して死に至
 らしめる罰です。実際、2000年代に入ってから、イランで姦通した女性が石打ちの
 刑を言い渡されたことがありましたが、国際人権擁護団体や世界中からの非難が大きく、
 2014年には釈放されています。
・キリスト教でも「姦淫してはならぬ」と聖書にあります。ただここでまた疑問が生じま
 す。姦淫というのは何をもっていうのか。実際の性的行為のみを言うのか。    
・仏教には五戒の中に「不邪淫戒」(不道徳な性行為を行ってはならない)があり、在家
 信者に向けて、邪な性的欲求を戒めています。
・不倫は、誰もがなんとなくいけないとは思っているけど、何に基づいて「いけない」と
 しているのかは曖昧です。   
・私はいつの日にか宗教がなくなるのではないかと思っています。
・私は人類社会から宗教は消え去るだろうと考えています。宗教の力は弱くなったものの、
 生活の満足度は上がっていると、あるアメリカの心理学者も言っています。ソーシャル
 メディアが発達し、あらゆる人が暇つぶしできるようになったからだと言う人もいます。
 いくら宗教を信じても見返りがないことに、人は気づいてしまったのでしょう。
・日本には本来、宗教が定める規範の代わりに、隠れた規範のひとつとして、「世間体」
 がありました。しかし、最近は「世間体」「をまったく意識していない人が増えていま
 す。「世間体」を意識していない人が増えてくると社会は困惑してしまいます。でも、
 こういうことが表面にでてきたことは、すでに「世間体」という規範が薄らいでいる証
 拠だと思います。「こんな倫理観ではいけない」と思っても、日本にはそれを律する宗
 教も、従来の戸主を中心として家父長制度もありません。
・宗教の中心にいたのはいつも男たちでした。新宗教の中には女性がトップにいる場合も
 ありますが、それは名前だけで、少なくとも女性の利害からつくられた宗教はありませ
 ん。だから日本においては、宗教が消滅しかかっている裏に、家父長制度の崩壊がある
 のだと思います。
・国によっても何が快楽かは違ってきますから、そういった面で理解し合うのはむずかし
 いですよね。タブーがあればエロスはより際立つものです。今の日本にはタブーも倫理
 的規範もないから、むしろエロスは弱まっている。
・日本は特に、いろいろは宗教行事をイベントとして取り入れていくのが得意ですよね。
 信念に神社に初詣に行って、お盆には墓参りをする。さらにバレンタインデーだのクリ
 スマスだの数えたらきりがないくらい、宗教行事をイベント化しています。その中には、
 一時さかんでもしばらくするとすたれていくものがあります。バレンタインデーはチョ
 コレート会社の陰謀で女性から男性への愛を告白する日になりましたが、それがだんだ
 ん会社での人間関係を円滑にするための義理チョコを渡す日へと変化した。そして今で
 は女性たちがめったに輸入されないチョコレートを食べる日になった。
・日本はひとりの人がひとつの人格として生きることを強いられる社会なんですよね。
 宗教をなくし、戒律をなくした日本では、外側から理解可能な人間であることが根本戒
 律となっていて、そこからずれると叩かれる。
・ひとりの人がひとつの人格でなければいけないと同時に、日本では仕事もひとつでなく
 てはいけないとみんなが思っています。副業を禁止している会社はたくさんありますよ
 ね。でも世界を見渡してみると、複数の仕事をもっている人のほうが一般的です。転職
 するときも、日本では周りが納得できる理由を提示しなければ転職できない風潮があり
 ます。    
・いろいろな意味で日本は動きが少ない社会なんです。宗教がないのに社会をまとめなく
 てはいけないから、そうやって人の動きを止めて、「神」ではなく「会社」への妙な忠
 誠心をもたせることでまとめようとしている。流動的な社会は信用できないと思わされ
 ているんですよね。私たちは、それが日本の息苦しさです。
・日本がこういう息苦しい社会になったのは、「学校の掃除」が原因だと私は思っていま
 す。日本の小中高生たちは自由度がなさすぎます。学校では全員が軍隊のように掃除さ
 せられ、終われば塾、部活と24時間縛られ、主人のいない奴隷と化しているのです。
・学校では徹底的に集団行動をとることを求められますよね。その象徴が掃除です。さぼ
 れば叱られ、「みんなのために」を強要されます。小さいときから、自分のために生き
 るより、「みんなのために」が優先されるんです。  
・日本人は他者に対する配慮がすごいですよね。宗教的な戒律より、日本における「みん
 なのために」のほうがずっと強固なのではないかと僕は密かに思っています。その根底
 には掃除がある。  
・日本では社会全体が「学校化」していると感じます。みんながきちんとしていないとい
 けない。たとえば昔は借金を背負った女性がお妾さんになることで、借金を清算できた
 という側面もありました。でも今はそれもできません。もっとも今の日本では、経済的
 に愛人をもつこと自体もむずかしくなっていますが、お妾さんを囲うには、最後までき
 ちんと面倒をみなければいけません。それをできる男性がいなくなっています。
・ヨーロッパにはまだ買春が公認されているところもありますが、日本ではそれもむずか
 しい。現実には行われているでしょうけど、日本ではすべてが曖昧になっています。そ
 ういったことは公にせず、こっそり行われる。そうなると善悪とは別に、表面上はやは
 りみんな、きちんとしていないといけないことになる。そしてそこからはずれると他人
 からバッシングされる。宗教や法律がないからこそ規制の基準がないまま、個人の判断
 ややっかみ、怨恨で叩かれる。逆に恐ろしい社会になっています。
・宗教や法律が厳しく取り締まっていたときでさえ、不倫は存在していました。それらの
 縛りがなくなった今の時代、結婚後に恋愛をしてしまう人が増えたとしても不思議では
 ありません。良し悪しの問題ではなく、人間の自然ななりゆきなのではないかと感じて
 います。でも今、これを罰するのは、宗教でも法律でもなく人なのです。

(心理学から不倫を考える)
 不倫は心を救うか :福島哲夫
・カウンセリングに来る方は、みんな何かしら生きづらさや苦しさを抱えています。自分
 の性格だったり家族だったり問題は多岐にわたりますが、中には不倫をしている方も少
 なくありません。不倫そのものが問題でカウンセリングに来ているわけではないのです
 が、問題を抱えている中で不倫が始まることもある。そして不倫の経験のある方は、ほ
 ぼ全員が生育上の問題をもっていた。もちろん一般的に生育上の問題があるから不倫に
 走るとは言えませんが。
・10歳前後に家庭内で性的虐待を受けていたりすると、成長してから不特定多数の異性
 と性体験を繰り返す人もいます。こうした人は自ら性風俗に飛び込むケースもあるので
 すが、これは幼いころ自分が求められ、相手が満足したことによって唯一の存在価値を
 感じた結果でしょう。こういう人は愛とか親密性が性的なものでしか成立しないと考え
 ています。  
・育っていく過程での、愛情の過不足の問題は大きいと思います。あくまでも傾向として
 の話ですが、愛情不足で育つと人は不足を補おうとします。このとき男性は極度のマザ
 コンになりがちだし、女性は父親のような年上の男性ばかり求めたり、あるいは逆に男
 性恐怖症に陥ることもあります。こういう人は愛される価値が自分にはないと思ってい
 て、恋人がいるのに、常に誰かと浮気を繰り返したり、会社の上司と不倫を続けてしま
 ったりする。ダメだと言っても愛情不足で育っているから、どこかで恋人の愛情を信頼
 できない。誰かと関係をもったところで不安がおさまるわけでもないので「もっともっ
 と」と他の人とも関係をもってしまう。
・一方、愛情過多、過保護、過干渉で育てられると、今度は自分が誰かを支配する(DV
 など)ことで心を満たそうとする人もいます。こういう人たちは、いちばん好きな人に
 きちんと自己主張をしながら、その人と愛情を交換する体験が必要となります。これを
 繰り返していくことで、ようやくひとりの人と向き合うことができるようになるんです。
・今の学生たちを見ていると「複数の異性がいても満たされない」人と、「ひとりもいら
 ない」人に二極化しているような気がします。つまり恋愛しまくっている人がいる一方
 で、処女率も高まっている。  
・人類史上において、不倫、つまり結婚以外での恋愛は繰り返されてきていますし、僕個
 人としては心のバランスを保ち、心の不足を補うために不倫は絶対にダメとは言い切れ
 ないような気がしているんです。
・人類学の観点からすると、愛は4年で終わると言われています。自然の中にある動物界
 では、オスとメスの関係は一時的なものだそうです。自然界の営みを人間に当てはめる
 と、出産・子育てが一段落するのが4年ということなのでしょう。こうした観点から考
 えると、生物として不倫をするのは、わかるような気がします。
・社会学の観点から見ると、男も女も自分の力や魅力を誇示するために不倫をする、とも
 言えるかもしれません。一方で、ジェラシーとバッシングの支配が強まっているのが現
 代日本の風潮です。だからこそ、不倫がここまで騒がれるんでしょう。
・このところの不倫バッシングは、いったい裏に何があるのかと思うほどすさまじい。み
 んなそれほど清廉潔白な日常を送っているのだろうか。既婚であっても恋に落ちること
 はあるだろう。独身者が既婚者に惹かれることがあってもおかしくないはず。そういう
 こともあり得ると許容できない社会のありようが怖いと思う。  
・ある意味で「不倫は純愛」だというのは本当なんだなとも思いました。独身同士と違っ
 て結婚という目的がないから、ふたりの愛情だけを頼りに歩んで行くことができる。と
 はいえたとえ純愛であっても、ずるずるといくとあまりいい結果にはなりません。空い
 た穴に足りないものを埋め、心のバランスが整ったら、関係から抜けられなくなる前に
 手をひき、誰にも迷惑をかけないというのが、大人の知恵かもしれません。 

(性科学から不倫を考える)
 人は一生、同じ相手とセックスし続けられるか? :宋美玄
・40代既婚女性に不倫が多いとすれば、おそらくホルモンとは別の理由もあるのではな
 いでしょうか。ヒトはそれほど性ホルモンに左右されてはいません。そもそも、ホルモ
 ンによって性欲が増すのであれば、不倫ではなく相手は夫でもいいわけですよね。だけ
 ど、不倫をする女性の脳はすでに夫には欲情しないようになってしまっている。だから
 不倫に走るのです。
・セックスレスの相談も、はじめに話題になったころは「夫が女として見てくれない」と
 いうのが大半でしたが、今は女性側が「夫とはしたくない」「夫を男として見られない」
 と思っています。だからといって、夫婦仲が険悪なわけではありません。夫はライフパ
 ートナーであって、セックスパートナーではなくなったとううだけです。私は必ずしも、
 そのふたつをひとりの人に求めなくてもいいと思っています。夫婦の愛の質は変化する
 ものですから、子どもが産まれれば、男女の愛から家族愛に変わっていくのは当然のこ
 とで、ずっと男女でいなければと思う必要もないのではないでしょうか。
・今の「不倫市場」の主役が、40代から50代のバブル世代であることは見過ごすわけ
 にはいきません。われわれはバブル姉さんたちとは感覚が違うなあとよく思います。彼
 女たちはよくも悪くも欲望に正直で、手段を選ばないところがあります。若いときに
 「恋愛はいいこと」「楽しいセックスはどんどんすべし」といった感覚がしみついてい
 るから、子どもたちが育ったあと「不倫」という形で恋愛したい欲求を満たす人が多い
 のではないでしょうか。今の草食化した20代が40代になったとき、バブル世代のよ
 うに不倫をするかといったら疑問だと私は思っています。
・そもそも結婚したらずっと同じ異性としかセックスしてはいけないということに無理が
 ありますよね。普通の人間だったら、同じ人を相手にしていたら性的ファンタジーも減
 って興奮しなくなるのは当然だと思います。興奮がなければセックスはできませんから、
 夫婦の間にセックスがなくなっていくのもわかるんですよね。一夫一妻という婚姻制度
 に無理やり人間を押し込もうとしてもむずかしいということです。そこからはみ出す人
 が出てきて当然だと思います。
・純粋に生物としてのヒトを考えれば、男性ホルモンも女性ホルモンも高い若い時期に、
 性衝動がいちばん強くなります。決して40代ではありません。具体的には10代後半
 から20代なので、本来ならこのくらい早くに結婚して子どもを数人産むというのが、
 ヒトとしてはいちばん正しいのでしょう。でも、特に今の日本の教育制度や就職問題を
 考えると、そんなに早く結婚はできません。制度や習慣がヒトの体に合っていないんで
 す。例えば、今の学習指導要領によれば、「高校生はセックスすべきではない」という
 ことになっています。だからコンドームや性感染症についての指導はあるものの、その
 前提となる性的衝動やセックスそのもの、あるいは恋愛感情などについては授業でまっ
 たく触れられていません。でも現実の高校生は、いちばん性に興味がある時期ですから、
 恋愛もすればセックスもする。日本はそれを認めようとしないからおかしなことが起こ
 ります。   
・気持ちのいいセックスを知らなければ、セックスを好きになれるはずがありません。で
 も、セックスを好きになれないままでいいと思っている女性は少なくないんです。女性
 たちの「圧倒的快感への憧れ」はとても強い。「オーガズムを知らないまま老いたくな
 い」「このままでは死ねない」と言う女性さえいます。そんな女性たちが、不倫で初め
 て快感を得たという話もときどき聞きます。どうして不倫だと性的快感が増すのでしょ
 う。   
・女性の多くは10代から20代でセックスを経験しますが、相手が同世代の場合、この
 時期の男性はそれこそ男性ホルモン真っ盛りの時期ですから、テクニックも余裕もなく
 「ひたすら挿入したい」んです。一方、女性はまだ自分の性欲をきちんと意識していな
 いことも多い。それなにに男性の性欲につきあわされるのですから、女性にとって「気
 持ちがいいセックス」のはずがありません。
・一般的に30代は子育てに忙殺される時期を過ごし、40代になってようやく時間的精
 神的に余裕が出てきます。そんなときに同性代の男性と知り合ったらどうでしょう。男
 性のほうも、もはや性欲だけに支配される若さはなく、女性が感じているかどうかを思
 いやれる余裕も出てきている。そういう男性とのセックスであれば、女性も快感を得る
 ことができます。「不倫で初めてセックスがいいと思った」という40代の女性が多く、
 なおかつその関係が続いてしまうとしたら、そういう背景があるからではないでしょう
 か。  
・医者として相談を受けたり、あるいは知人などから聞いたりする話を総合すると、確か
 に男女問わず、不倫をしている人は多いと感じます。女性に限って言えば、不倫相手の
 子を妊娠して中絶するケースも少なくないいし、もっと言えば産んでしまう例も多々あ
 ります。ただ、不思議なことに今の時代でも、男性は自分の妻だけは浮気しないと思い
 込んでいるんですよね。
・昔は産まれてすぐ、へその緒から血液型を調べたものですが、今は血液型を調べません。
 病気で輸血が必要というときを除いて、新生児の血液型を知る意味がなくなっているん
 です。だから生まれてすぎは血液型から夫の子ではないことはわからないでしょうね。
 中には、浮気相手は夫と同じ血液型にする、という女性もいるようですが。おそらく一
 般的に考えられているより、実は夫の子ではない子が生まれている率は高いのかもし
 れません。ヨーロッパである遺伝病の研究をしようとしたら、約5パーセントから10
 パーセントは夫の子ではなかったので、研究結果が世に出せなかったことがあったそう
 です。でもいろいろ聞くと、日本も同じらしいのですよ。
・世間に不倫をしている人がいるのは知っているし、工程はしないけれど「不倫してはい
 けない」という社会規範を個人に押し付けたり断罪したりするのは違うと思っています。
 不倫よりむしろ、そうやって人をバッシングする人のほうが気になります。
・人間は基本駅にはフリーセックスなのではないかと思うんです。婚姻制度というのは、
 人間がこの世に誕生してすぐにできたものではないはずだから。制度が整うまでは、男
 女関係は緩いものだったのではないでしょうか。
・最近、お金をもらって不倫のセックスをしている女性がいることを知りました。主婦買
 春と言ってしまうと、センセーショナルですが、本人たちはそれほど意識はありません。
 たまたま知り合った男性とセックスしたらお礼としてお金をもらってしまい、そんなも
 のかと思い続けているという程度の感覚なんですよね。そういう女性立ちは、承認欲求
 が強いのかもしれないと想像することはできます。女性が輝く社会などといわれていま
 すが、実際は女性が活躍できる場は少ない。母親として妻としてどんなに頑張っても、
 パーフェクトにこなして当たり前ですから、女性は結婚後、他者から褒められることが
 少ないんです。だから認めてもらいたいという欲求を恋愛で満たしていくようなところ
 もあるかもしれません。   

(行動遺伝学から不倫を考える)
 恋愛は遺伝子に左右される  :山元大輔
・人間は進化の原則として、ある種の競争の中で生きてきたわけですね。どういう人が次
 の世代に生き残っていけるかといえば、大きな変化や病気に耐えられる人で、そうでな
 い人は淘汰されてきた。
・生物学での勝ち組は、どれだけ子どもを残したかに尽きます。ただ、それはどれだけ養
 えるかという問題にもなります。男にとっては無責任にできるだけ多くの精子をばらま
 くのが得かもしれません。でもその一方で、女はただばらまかれたんじゃ困るから、ち
 ゃんと養ってもらわないと困ると思う。このあたりは、男と女の利害が一致したり対立
 したりするところですよね。 
・恋人とのほんとうの相性は、血液型占いなどではわかりません。血液型というのは赤血
 球にある糖たんぱく質を分類したものなので、性格とはまったく無関係なんです。
・ヒトの体は元々、男女どちらにもなり得るんです。発生の過程で、デフォルトのままだ
 と女になり、スイッチを切り替えると男になります。性染色体の方がXXだと女になり、
 XYだと男になります。
・動物は子どもを残すためにいろいろな戦略をもっているんです。ゴリラはハーレム状態
 で一夫多妻で、メスは浮気をすることもありません。オスは腕力に投資してグループを
 支配しますが、セックスには投資しないのが特徴です。その証拠にゴリラの睾丸は相対
 的に小さいんですよ。一方チンパンジーは乱婚状態です。腕力ではなく、繁殖戦略とし
 てセックスで勝負しますから、体重比で睾丸がやたらとでかいことがわかっています。
 人間の睾丸は、チンパンジーほど大きくはないけどゴリラほど小さくもない。そんなこ
 とをいろいろ考えると、人間は一夫一婦制ということになりますが、本来は一夫一婦制
 ”風”というのが一番正しいんじゃないでしょうか。そこそこ浮気しながら、でも決し
 て乱婚にはならない。そういう遺伝子が生き残っているのではないかと思うのです。   
・絶対に浮気しない人もいると思います。それは偶然しなかったということもあるでしょ
 う。徹底的にリスクを回避する人も、不倫はしないでしょうね。何かを失う恐怖がどの
 くらい強いか、つまりどのくらい恐がりか、相手がどのくらい魅力的か、そのときの状
 況がどうなのか。いろいろな要因が重なって、不倫するかどうかが決まるのかもしれま
 せん。 

(脳から不倫を考える)
 すべては「脳のバグ」である  :池谷裕二
・「人は本来、不倫するものだ」と考えるのは違うと思います。なぜなら人間が生きる目
 的を遺伝子を残すことだとすると、ヒトの場合、不倫によって遺伝子をあちこちにばら
 まくより「これぞ」と決めた相手と寄り添うほうが、遺伝子をきちんと残せる確率が高
 まるはずだからです。 
・不倫がいいとか悪いとかという社会的倫理的問題以前に、男と女は1対1でペアになっ
 て子どもを守るほうが遺伝子を残すには効率的なんです。育児に時間がかかるのにあち
 こちで子どもをつくっていたら、結局、エサは足りない、パートナーは寝取られる。ろ
 くなことがありません。 
・恋愛には絶対的愛情が存在する可能性があります。でも絶対的愛情とうえば基本的に子
 どもに向かうものでしょう。法律も何も関係ないほど、子どもへの愛情は強い。これは
 動物一般的に言えることかもしれませんが、自分の身に代えても、親は子どもを守ろう
 とします。私は長い進化を考えると、そういった育児本能が先に発達したのだと思いま
 す。ただヒトに限っては、この「親から子への絶対的愛情への没頭」専用の脳回路が転
 用されて、恋愛感情が誕生したにちがいありません。特定個人に愛情が向かうところが
 共通していますし、子孫繁栄という究極の目的も共有しています。 
・脳の妙の性質で有名なのは「吊り橋効果」です。吊り橋は高所なので、高所恐怖症でな
 い人でも、多少ドキドキします。そんなときに告白されると、脳はおバカさんなので、
 そのドキドキを「ときめき」と勘違いしてしまう。本当は吊り橋が怖くてドキドキして
 いるのに、告白してきた目の前の人が魅力的だからときめいていると勘違いする。それ
 で相手に好意を持ってしまうわけです。そういうことが脳に本当に起こる。
・似たような例に「ロミオとジュリエット効果」というものもあります。付き合っている
 カップルがいて、女性の父親が「あんな奴とは付き合うな」と猛反対する。そんな悲運
 や逆境にあるからこそ、ふたりの愛はかえって燃え上がる。これだって本当は、反対さ
 れたからドキドキしているだけなんです。でも脳はそのときのドキドキ感を、相手が魅
 了的だからとレベルづけする。それでもっと好きになっていくわけです。
・不倫がやめられない人の秘密も、このあたりにあるのかもしれません。人に知られては
 いけないというドキドキ感、ある種の罪悪感、それによって「自分は特別な恋愛をして
 いる」と思い込んでしまうことは、じゅうぶんに考えられる。しかも既婚者同士の不倫
 は、お互いに夫婦間ではセックスレスであることも多い。そうなると、婚外例愛のセッ
 クスで、オキシトシンが分泌され、飢えていた気持ちが満たされ、幸福感に酔うことも
 できる。  
・不倫においては、「急に冷める」ときがなかなか訪れないのも特徴的なのだが、それは
 もともとの状況が不安定で「ドキドキ」がいつまでたっても落ち着かないからかもしれ
 ない。 
・ものすごく簡単に言ってしまうと、人間の脳は化学反応しかしていません。だから実は
 世の中のすべてが化学反応だと思ってもいいんです。幻想のなかで生きているとも言え
 る。誰かが怒っているのも化学反応、泣いているのも化学反応。そもそも悲しいから泣
 くのではなく、泣くから悲しいと思えてくる。そう考えたらすべては無価値です。お金
 も政治も価値がない。でも、人はそこに価値を見出して、株や為替が上がったの下がっ
 たのと一喜一憂する。
・人はなぜ不倫をするのか。脳には何かにはまる物質が分泌されることもあるし、快感と
 いう報酬があるとやめられないという側面もあります。だからといって、みんなが不倫
 をしているわけでもない。 
・人が不倫をしているのは知っているし、楽しく不倫をしている知人もいますが、私から
 みれば、やはり「無価値」でリスクが高いのになあと思ってしまいますね。

人はなぜ不倫をするのか
・意外でなおかつ非常に興味深かったのは、学者が誰ひとりとして不倫を「してはなら
 ないもの」と否定しなかったことだ。動物学的には当然のことであり、社会学的に見て
 も「やむを得ないこと」という結論しか出てこない。
・そもそも古代日本では、一夫多妻制の上に招請婚妻問題という社会的制度だったため、
 夫が本妻の家にいつもいるわけではなかった。夫が他の女性の家へ行っているときには、
 別の男性が女性の家に来ることがあったり、男性が恋人の家へ行くと、すでに他の男性
 が来ていたりしたようだ。
・平安時代も同じような状況で、ひとりの女性しか愛さない男は「まじめすぎてつまらな
 い」と軽く見られることがあったらしい。しかし人の妻を奪うことは非常識とされてい
 て、世間の非難を浴びた。
・鎌倉時代には、御成敗式目第34条において不倫密懐に関する処罰が規定された。御成
 敗式目は戦国・江戸時代を通じて武家法の基礎となった。
・江戸時代には、「密通の男女共にその夫が殺し候はば、紛れも無きにおいてはおとがめ
 が無し」とされ、夫は妻と間男をふたつに重ねて四つに切ってもよしとされていた。
 これに対して、庶民の性風俗に関わる明確な法は見られず、江戸時代以前には配偶者以
 外との性交渉は珍しいことではなかった。
・、明治時代以降は既婚男性が未婚女性を愛人に持つことは容認され、既婚女性が浮気を
 することは許されなかった。既婚女性が不倫に及んだ場合、1947年に新しい民法が
 できるまでは、その女性と相手の男性は姦通罪という罪に問われた。
・現在不倫は同世代同士がするのが主流になった。若い女性は「不倫はコスパ(コストパ
 フォーマンス)が悪い。自分が損するのはイヤ」と合理的に考えて不倫をしない傾向が
 強い。男性側も若い女性を連れて歩きたいという欲求より、「自分が癒されたい」気持
 ちのほうが強く、同性代の既婚女性と恋愛するケースが多くなっているのだ。
・結婚生は長く続く「ただの日常」である。もちろんそれは平穏であったほうがいい。自
 分の帰還場所であり、生活していく上でのベースなのだから。だが、他人同士であるは
 ずの男女は、子どもの有無にかかわらず、長く一緒に暮らしていると「恋人」が「家族」
 に変わっていく。家族の間には恋愛感情はないのが当然だし、むしろ必要ない。そのう
 ち大事な家族は「いるのが当然」の存在になっていく。そこに惰性と習慣が生まれるの
 はやむを得ないことだ。言い換えれば、家族には「恋愛感情」や「セックス」が不必要
 なのだ。家族愛と習慣があれば、家族はうまく回っていってしまう。夫婦というものは、
 ふだんは「男女として」お互いの心の襞を読んだり気遣ったりしなくてもいいのである。
 そして外で気になる異性と出会ったとき、今まで活動していなかった脳の「恋愛感知部
 分」にいきなりスイッチが入る。久しぶりの恋愛感情に人はときめき、若かりし頃のよ
 うに浮かれてしまう。恋は大人を子どもにするのである。しかも、帰る場所を確保しな
 がらの恋愛だから楽しくないはずがない。それはずるいと言う人もいるだろう。恋愛し
 たなら離婚して再婚すればいいという声もある。だが不倫の場合、お互いにさまざまな
 事情を抱えているし、たとえ再婚したとしても、また「ただの日常」が続くことは双方
 わかっている。だから恋愛を結婚に続くものと考えるのではなく、「恋愛」として大事
 に続けていこうという発想も生まれる。
・すべての人間にとって恋愛が必要不可欠なものとは思わない。恋愛も結婚もしたくなけ
 ればしなくていい。ただ、結婚しているのだから不倫などしたくない、してはいけない
 と思っていても恋に落ちてしまう人は確実にいる。当事者でさえ、「自分が不倫をする
 なんて」とショックを受けているケースは多いのだ。
・「心の問題」という言葉があるが、人は誰でも闇を抱え生きているのだと思う。生きて
 いくということは、ただそれだけで大変なことなのだ。生涯、平穏無事で暮らせる人な
 どいないだろう。誰の心にも「不倫の恋」が入り込む余地は常にある。なぜなら恋は、
 あらゆる人間関係でもっとも濃密なものといっていいと思うから。友人でも身内でも満
 たせない「心の闇」「心の穴」も恋なら満たせることがある。身も心も合う人と巡り会
 えたら、人はよみがえることさえできるのだと思う。たとえ不倫であっても、恋愛には
 それだけのパワーがある。
・かつて、女性は恋愛に対して本気になるから、男と違って結婚生活を送りながら他の異
 性と関係を持つことはできないといわれてきた。だがそんなことはない。女性も今や結
 婚と恋愛を完全に区別している。だから既婚同士の恋愛が成り立つのだ。
・もうひとつ感じるのは、「女性が我慢しなくなった」という現実だ。女性が我慢しなく
 なったから、昔に比べて離婚が増えた。そして同じ理由で不倫も増えている。ただ女性
 が我慢しないのは、妻側の立場でも同じことなのだ。   
・仕事をしていようがいまいが、今の女性たちは外に出る機会が多い。男性と知り合う機
 会も、私たちの親世代に比べれば、ずっと増えている。世の中には男と女しかいないの
 だから、お互いに好感をもてば恋愛に発展する可能性は年齢を問わずある。そしてそれ
 を我慢しないのが現代なのだろう。
・結婚は「家庭をつくること」であって、「恋愛を続けること」ではない。家族として慈
 しみ合っていても、そこに恋愛感情がなかったら、いずれ恋愛したくなったとしても不
 思議ではない。本人が意識していなくても心の底にそんな漠たる欲望があれば、あとは
 きっかけだけで不倫がはじまるのではないだろうか。恋が始まる瞬間に、その後のこと
 や別れのことを考える人はいない。それは独身同士であっても不倫であっても同じなの
 だ。