話を聞かない男、地図が読めない女 
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本のタイトルだけではわからないのだが、この本は、男と女の人間性の違いを詳しく説い
たものだ。筆者はオーストラリア人夫婦なのだが、1999年3月にまずイギリスで出版
さ、日本では2000年4月に刊行された。この日本語版はたちまちベストセラーになっ
た。
いまから20年近くも前に出版された本なのだが、いま読み返してみてもそれほど古さを
感じさせない。とても説得力のある内容だ。それは、この本が、男脳と女脳の特徴を、誰
もが思い当たる日常的な行動と結び付けてわかり易く説明しているからだろう。
この本を読んで、改めて男と女はちがうのだということを再確認した。今の社会では、男
と女はちがうのだ、などと口にすると、たちまち「男女差別だ」と猛烈な攻撃を受けてし
まうのが、しかしそれは、「差別」ではなく「差異」なのだ。役割や機能がちがうという
ことで、「差別」ではないのだ。しかし、そのことを多くの人は混同しているように思え
る。
このようになった原因は、いまの社会では、子どもの頃から男も女も同じなのだという教
育を受けて育てられるからだろう。本当は、男と女はちがうと、多くの大人たちは感じて
いても、それを口にすると「古い差別的な価値観だ」と非難されるから、だれも口にでき
ないのだ。子どもたちが小さい頃は、それでもいいかもしれないが、やがて大人になって
くると、男と女の違いは顕著になってくる。しかし、既に「男と女は同じ」という固定観
念がすっかり定着してしまっているから、男女のちがいを素直に認めることができない。
男は女を、女は男を、自分と同じ思考を持っていることを当然だと思う。しかし、いくら
そう思っても、実際にはちがうのだから、当然そこには大きな軋轢が生じる。現代社会に
おいて、離婚率が高い根本的な原因は、そこにあるのではないかと思う。

男と女の特性を十分に理解し、それぞれの長所をうまく活用できるようにすれば、世の中
はもっと平和になるだろう。特にそれを感じるのは政治の世界だ。昔も今も、政治の世界
は男社会だが、男の特性は「闘争心」だ。経済活動をする上ではその特性はプラスに働く
のだろうが、その特性を持つ男に政治をやらせれば、当然ながら権力闘争や戦争が起こる。
男が政治をやっている以上、世の中から権力闘争や戦争はなくならないとも言えるだろう。
その点、女は「調整型」の特性を持っている。男に代わって女が政治をやれば、世の中か
ら権力闘争や戦争は消えるのではないか。そんなの幻想だ、と言われるかもしれないが、
いまの政治の世界を見るたびに、やってみる価値は十分ありそうな気がする。女に政治譲
り、男はただひたすら経済活動のみにせいを出す。あとは時々、女に許しを得て腰を振ら
せてもらえれば、それで男は幸せなのだ。
「男には政治はやらせるな」。昨今のぐじゃぐじゃの世界の、そして日本の政治状況をみ
て、そんな考えを持つのは私だけだろうか。

はじめに
・男と女がもっとも充実した人生を送るには、おたがいの弱点をあげつらうのではなく、
 性によるちがいを理解するいしかない。
・男も女も、自分と同じようにふるまうことを無意識のうちに相手に期待している。だが
 ら二人の関係がおかしくなるってしまうのだ。

同じ種なのにここまでちがう?
・男と女はちがう。どちらが優れている、劣っているということではなく、ただちがう。
 両者に共通していることは、種が同じということだけ。住んでいる世界もちがえば、価
 値観もルールもちがう。誰もが知っている事実だが、あえて認める人は、とくに男性で
 はほとんどいない。しかし真実は動かしがたい。
・欧米諸国では、結婚した男女の約半数が離婚する。最初のうちはいくら仲が良かった夫
 婦でも、長続きしないで終わってしまうのだ。文化や信条、肌の色に関係なく、世界の
 どこでも、男と女はたがいの意見や行動、態度、信念をめぐって言い争いっている。
・女は男のどんなところに不満を覚えるか。鈍感、のんき、人の話を聞かない、やさしく
 ない、話をしてくれない、愛が足りない、二人の関係を大事にしない、触れ合いは二の
 次でセックスばかりしたがる、上げた便座をおろさない。 
・では男は女のどんなところにいらいらするのか。運転がへた、標識を見落とす、地図を
 上下さかさまにしないと読めない、方向音痴、むだなおしゃべりが多すぎる、セックス
 したくでも自分から誘わない、用がすんだあと便座を上げておかない。
・男と女が異なる進化をしてきたのは、その必要があったからだ。男は狩をして、女は木
 の実や果実を採った。男は守り、女は育てた。それを続けた結果、両者の身体と脳は、
 まったく別のものになった。
・何百年ものあいだに、男と女の脳はちがう方向に進化していき、その結果、情報の処理
 のしかたまで変わってきた。いまや男と女では、考えかたはもちろん、理解のしかた、
 優先順位、行動、信念までことごとくちがう。その事実に見て見ぬふりをしていると、
 あなたの人生は悩みと混乱が支配し、幻滅ばかりすることになるだろう。
・私たちは判で押したように同じではない。能力を発揮するチャンスは平等に与えられる
 べきだが、男と女では、本来持っている能力が完全に同じではないのだ。男女平等は政
 治や道徳の問題だが、同質かどうかは科学の話である。
・同等と同質の意味をはきちがえている。この二つはまったくレベルがちがう話なのだ。
 男と女が精神的にも身体的にも根本からちがう。
・男と女がちがうことは、不平等という意味ではない。平等とは、やりたいことを自由に
 選べるということだ。男女がかならずしも同じことをやりたがらない、それはちがいで
 ある。
・男女は生まれつき異なる行動を「しがち」だということにすぎない。男女のどちらかが、
 かならず特定の行動を取る、あるいは取るべきだと決めつけるつもりは毛頭ない。
・男は狩をし、女は育てるという昔ながらの傾向は、いまも私たちの行動や信念、ものご
 との優先順位を左右している。
・男女のちがいは、脳の回路のちがいなのである。脳の配線がちがうために、世界の認識
 も変わってくるし、価値観や優先順位も同じではなくなる。どちらが良い悪いではなく、
 ただちがうだけなのだ。
・人間社会が高度に発達して、月に行けるようになるまでに、およそ一億年の歳月を要し
 た。だがたとえ月面でも、生理的に出すものは出さなくてはならず、その点は原始的な
 祖先とまったく変わっていない。国や文化ごとにちがいがあっても、ひと皮めくれば、
 生態に即した人間の欲求や衝動はいつの時代もみんな同じなのである。
・男の職務内容をひと言で表すとすれば、メシの調達係に尽きる。それが、男に期待され
 る役回りだった。
・いっぽう女は、男が家族のためにわが身を賭してくれることで、自分の価値を実感して
 いた。男の優劣は、獲物を殺して家に持って帰れるかどうかで決まり、その奮闘ぶりを
 女が認めてくれれば、男の自尊心は満たされた。メシの調達係兼保護者という職務を遂
 行しさえすれば、家族は男を頼りにしてくれたのだ。
・女の役割もまた明確だった。子育て係に任命されたことで進化の方向も定まり、その任
 務見あった能力を発達させていった。周辺に危険はないか監視し、家の周囲の狭い範囲
 を動きまわる能力を磨いた。目印を頼りに道を見つけたり、わが子に限らず相手の行動
 や外見の微妙な変化に気づくのが得意になった。
・女は子どもの世話をしたり、果物や野菜、木の実を集めたり、同じ群れの女たちといっ
 しょに過ごしたりして一日を送る。食糧調達の最終責任を負う必要はないし、敵と戦う
 こともない。家族生活をきちんと維持できるかどうかで、女の優劣は決まる。家事や子
 育てがじょうずだと男に認めてもらうことで、女は自尊心を満足させるのである。生命
 をはぐくむ秘密は女性しか持っていないので、子どもを育てる能力は神秘的なもの、神
 聖なものとされていた。
・ボルネオ島、アフリカやインドネシアの一部、オーストラリアのアボリジニー、ニュー
 ジランドのマオリ族、カナダやクリーンランドのイヌイットたちは、いまもこのように
 シンプルな暮らしをしている。そこでは誰もが自分の役割を承知し、理解している。男
 は女の価値を、女は男の価値を認めていて、家族が生命を維持して栄えるために、おた
 がい肩代わりできない貢献をしていることがわかっている。しかし文明化された現代社
 会に生きる男女は、古来からのルールをどこかに置いてきてしまった。あとには混沌、
 とまどい、そして不満だけが残されたのである。
・現代の男と女は、それぞれの役割をどう説明していいかわからなくなっている。こんな
 事態は、人類の歴史ではじめてだろう。私たちは、祖先が経験したことのない状況に置
 かれた最初の世代なのだ。
・夫婦の離婚率は50パーセント前後だが、事実婚や同性愛カップルまで計算に入れると、
 破局率は70パーセントを超えるのではないだろうか。21世紀という新しい時代に、
 精神的に満ちたりた幸せな生活を築くには、いままでとちがう新しいルールを学ぶ必要
 がある。
・私たち人間も動物であることに変わりなく、ただ何百万年という進化によって野性的な
 衝動が洗練されていっただけである。そのことを承知しておけば、自分の欲求や衝動を
 理解するのもたやすいし、自分自身や他人をもっと楽な気持ちで受け入れられる。

そうだったのか!
・女は男よりはるかに精巧な感覚能力を持っている。子どもを育て、家を守る立場上、他
 人のごくわずかな気持ちや態度の変化に気づく必要があるのだ。俗に「女の直感」など
 と言うが、それは相手の様子や行動のちょっとした部分や、かすかな変化を見逃さない
 ということなのである。昔から女の直感は、浮気をする男たちをうろたえさせ、数々の
 悪事をあばいてきた。夫が何か隠しごとをしているとき、それを見破る妻の眼力は大し
 たものだ。
・女は家族が無事に生きていけるよう、子どもたちが病気でないか、お腹をすかしていな
 いか、怒ったり落ちこんだりしていないか、ちょっとした変化にも気づかなくてはなら
 ない。しかし男は洞穴にいる時間が短いため、言葉以外の合図や、対人コミュニケーシ
 ョンを身につける暇がなかった。
・人間の眼は、ほかの霊長類とちがって白眼の部分が多い。眼球を盛んに動かし、視線の
 方向を定めて、相手と向きあって話をする人間らしいコミュニケーションができるのも、
 そのおかげである。白眼の面積は、男より女のほうが大きい。女が築く人間関係に不可
 欠な、近距離でのコミュニケーションには、そのほうが有利だ。
・男の場合、眼球は女より大きいし、長距離を見とおす「トンネル視」ができるような脳
 の作りになっている。つまり、目の延長線上にあるものなら、遠くでもはっきり正確に
 見ることができる。 
・狩猟者である男は、遠くにいる獲物を追跡するため、注意がそれないようもっぱら前方
 が見えるように進化した。女の視野が広くなったのは、忍びよる捕食動物をいち早く見
 つけるためだ。 
・目の網膜が受ける光の強さは、コンピュータのデータにして100メガバイトに相当す
 る。そんなに大量の情報を脳は一度に処理しきれないので、生きるうえで必要なものだ
 けふるいにかけることになる。 
・狩猟を任務としている男の脳のほうが、視野を狭くするのは得意だ。家を守る女は、身
 の回りの情報をできるだけ多く拾い集めるために、広い範囲が見えるようになった。
・女は周辺視野が広いので、周囲にばれないよう、さりげなく色目を使うことができる。
 男が色目を使ったらたいてい女になじられるが、その逆はない。男が女の身体を見るの
 と同じくら、あるいはそれ以上の勢いで、女も男の身体を品定めしているという。女は
 気づかれないだけだ。 
・女が男に嘘をつくのはさほど難しくない。男は鈍感だから、言葉やそれ以外の信号が喰
 いちがっていても気づかない。だからセックスのとき、女が「イッた」振りをしてもば
 れないのだ。 
・魔法を使ったかどで火あぶりにされたのは、ほとんどが女だった。しかし彼女たちは、
 ボディランゲージの微妙なニアンスや、声の調子といった感覚刺激に気づきやすかった
 だけだ。生物学的なちがいを知らなかった男たちが、魔女呼ばわりして断罪したのだ。
・もちろん、女の感覚がばつぐんに鋭いわけではなく、相対的に男の感覚が鈍いのである。
 女は高度な知覚情報が飛びかう世界に生きている。女どうしでは、おたがいの言葉や声、
 ボディランゲージを解釈して、相手の要求を理解することができるから、当然男にも同
 じことを期待する。だが残念なことに、それは無理な話である。自分が何を望み、何を
 してほしいか、黙っていても男が察してくれると信じているから、思いどおりにならな
 いとき、女は男をなじる。
   
話すこと、聞くこと
・敵と戦い、家族を守り、問題を解決するべく進化した男たち。彼らは恐怖や不安を表に
 出すことなど許されない。やっかいごとを相談されると、男は「僕にまかせてもらえる
 かい?」とか「あとで考えてみる」と答える。ひとりになってから、無表情な顔でじっ
 と考えをめぐらせるのだ。そして答えが見つかってはじめて、男の顔は生気を取り戻し、
 解決策を人に伝えようと口を開く。
・働く女の74パーセント、専業主婦にいたっては98パーセントが、恋人や夫の最大の
 欠点は、一日の終わりに話をしてくれないことだと考えている。昔の女たちは育てる、
 子どもの数も多かったし、話をしたり、力になってくれる女が近くにいたから、そうい
 う不満は感じなかった。でもいまは、家に入って子育てをしている母親は孤独にさいな
 まれている。近所の女たちがみんな働きに出ていて、話し相手がいないからだ。仕事を
 持っている女は、昼間同僚と話ができるので、夫が無口でもあまりストレスを感じない。
・男は自分のやっていることをさえぎられると、競争心に燃え、攻撃的になる。だから男
 と意思疎通をはかるなら、彼が話をしているときに口をはさんではいけない。だが、女
 にはそれがなかなかできない。女にとっては、相手と同時にしゃべることが人間関係を
 築き、話に参加するうえで不可欠だからだ。彼を大事に思うあまり、いろいろは話題を
 引っぱり出したりして、もっと親しくなろうとする。だがそうすると、男は耳をふさい
 でしまうだろう。  
 
思考、態度、感情
・男の意識は、結果を出す、目標を達成する、地位や権力を手に入れる、競争相手を打ち
 負かす、「核心をつく」ことが軸になっている。女の意識は、コミュニケーション、協
 力、調和、愛、共有、人間関係に光が当たっている。このちがいはまさに水と油で、男
 と女がひとつの屋根の下に暮らせること自体、驚きと言わざるを得ない。
・女の子集団は、誰が誰を好きで、誰と誰が仲が悪いといった話が中心だし、絆のしるし
 として秘密を共有したがる。10代の女の子の話は、男の子のこと、体重、洋服、友だ
 ちのことで持ちきりで、おとなの女にしても、ダイエット、付き合い、結婚生活、子ど
 も、恋人、性格、洋服、他人の行動、職場の人間関係など、とにかく人間にまつわるこ
 とが話の中心だ。  
・男の子たちは、誰が何をした、あいつはおれが得意だとか、これはどんなふうに動いて
 いるといったこと、つまりものごとや活動について話したがる。 
・男は寄るとさわるとセックスの話ばかりしていると思われるが、実際はそうではない。
 ゆうべベッドで何をしたかということをおと細かに話しはじめたら、友人たちは黙り込
 むか、その場から離れでしまうだろう。それは相手の女性に失礼だからという配慮では
 なく、回数とかモノの長さなど、男としてあまり直視したくないデータがからんでくる
 からだ。だから男は、セックスのことは冗談にすりかえて話すのを好む。
・男の友情が、共通の趣味や目標に向かう並列型だとすれば、女の友達づきあいは感情を
 分かち合う体面型だ。女はおたがいの個人的に事情をよく知っているから、けんかにな
 ったときはそれを武器に容赦なく攻撃する。またセックスの話になったときも、遠慮す
 るということがない。回数がサイズはもちろん、テクニックやことの手順に至るまで包
 みかくさず、ときにはどぎついぐらい露骨に語り合う。  
・男は仕事と業績で、女は人間関係で自分の価値を決めたがる。いままでは食べ物を調達
 し、問題を解決するのが男であり、それが生き残るための最重要問題だった。女は、巣
 を守り、次世代を確実に残すことが努めだった。男女の価値観調査でも、国に関係なく
 男の7〜8割は、人生でいちばん大事なのは仕事だと答えている。女の7〜8割は家族
 をいちばん大切に思っていた。 
・人間関係に悩みがある女は仕事に集中できないし、仕事に行きづまっている男は人間関
 係にまで気がまわらない。 
・ストレスやプレッシャーを受けている女は、苦労している自分を慰めるために夫や恋人
 と話をしたがる。だが男にしてみれば、それは問題解決プロセスの障害でしかない。女
 はおしゃべりして、抱きしめてもらいたいのに、男は安楽椅子にひとり坐り、暖炉の炎
 を静かに見つけていたいのだ。女から見れば、そんな男は薄情で無関心に映るし、男に
 とって女は訳知り顔でうっとうしい存在になる。 
・男は女への愛の証しとして、世界一高い山にのぼり、世界一深い海にもぐり、世界一広
 い砂漠を横断した。だが女は男を捨てた。男がちっとも家にいなかったから。
・男には、女に与えたいという本能的な欲求がある。自分の努力が女に評価されてこそ、
 成功したと言えるのだ。だから女が幸せなら、男は満足する。女が幸せでないと、男は
 与えかたが充分でないと思って挫折感を覚える。
・女が男を捨てるのは、男の与えるものに不満だからではない。精神的に満たされないか
 らだ。 
・男はまちがえることが大嫌いだ。男にとって失敗とは、敗北にほかならない。
・男が「ごめんなさい」と言えないのも、理由は同じだ。謝るのは自分が悪いと認めるこ
 とであり、悪いと認めることは敗北なのだ。   
・男は批判されることを嫌う。だから処女と結婚したがる。
・男は男で、女の言葉を個人攻撃と受け止めず、本来の意図を正しくとらえるよう努力す
 るべきだ。男のまちがいを指摘することが、女のねらいではない。愛する男にもっと良
 くなってもらいたいと思っているからだ。だが男は、女に何か言われると、自分が無能
 だと感じてしまう。誤りを認めたくないのは、女に愛想をつかされるのが怖いからだ。
 でもほんとうは、率直に自分が悪いと飢える男を女は愛する。
・疑いぶかく、競争心が強く、取り乱さず、防御の構えを崩さない生まれついての一匹狼。
 そんな男にとって、感情的になるのは自制心のない証拠だ。さらに「男らしくふるまい
 なさい」「堂々として顔をなさい」「男の子は泣かないの」といった社会からの条件づ
 けが拍車をかける。  
・原始時代の男たちは、自分より大きくて強い獲物をしとめるために、狩猟チームを編成
 していた。優れた空間能力でフットボールさながらのフォーメーションを作り上げボデ
 ィランゲージを駆使して、狩猟戦略を実行に移したのだ。 
・集団で狩をしたいという強い衝動は男の脳に染み込んでいて、一朝一夕に消せるもので
 はない。だから男たちはパブやクラブに集まり、現代の狩猟活動について冗談を飛ばし
 たり、自慢話をひとしきりする。 
・どんな気持ちなのか、何を悩んでいるのか女が聞きだそうとすると、男は抵抗する。批
 判されていると感じるし、自分は無能で、彼女のほうが良い解決策を持っていると思う
 からだ。だが女の言い分はちがう。アドバイスすることで彼の気持ちを楽にしてあげた
 いし、相手と信頼関係を築きたいだけで、男のことを弱虫だとはちっとも思っていない。
・女が悩みについて話すのは、ストレス軽減策にすぎない。聞いてもらいたいだけで、解
 消してほしいとは思っていないのだ。  
・女が悩みを打ちあけはじめると、男は話をしょっちゅうさえぎって解決策を提示する。
 だが女はただしゃべりたいだけなので、彼の提案を無視する。無視された男は、自分が
 無能な敗残者になったと思うか、女の悩みはイブンのせいではないかと邪推する。しか
 し女は「答え」を欲しているわけではない。ただ話を聞いてくれる相手が欲しいだけだ。
・女が興奮してしゃべっているとき、解決策を提案したり、感情を踏みにじるようなこと
 を言ってはいけない。話を聞いているというそぶりを前面に押し出すことだ。
・女は頭の外側で、男は頭の内側でしゃべっている。発話のための決まった領域を持たな
 い男にとっては、そのほうがものを考えるのに都合が良い。だから女が誰かほかの人に
 向かってしゃべるのに対し、男は自分自身に話しかけている。プレッシャーやストレス
 を受けた男が、黙りこくってしまうのもそのためだ。  
・男は緊張が極限に達すると、酒をあおり、遠くに逃げ出す。女は煮詰まってくるとチョ
 コレートをドカ食いし、ショッピングセンターに逃げ込む。重圧を受けている女は何も
 考えずしゃべり、男は何も考えずに行動を起こす。だから刑務所に入るのは9割が男で、
 セラピストにかかるのは9割が女なのだ。 
・男と女がどちらもプレッシャーで苦しんでいるときは、何とかしようとすればするほど、
 感情の地雷原に足を踏み入れることになる。女はいらいらするとしゃべりたくなるが、
 とめどもなく話を続ける女に、男はなすすべもなく、自分のいらいらが募るばかりだ。
・女はストレスが溜まるとしゃべりたくなる。そんなとき男は、よけいな提案などしない
 でただ話を聞いてやろう。  
・ストレスが溜まりに溜まっていたり、深刻な問題を解決しなければならないとき、男は
 他人を完全にシャットアウトする。脳のなかで、感情のコントロールする部分との連絡
 を断ち、口をきかなくなって、ひたすら問題解決に専念する。
・完全シャットアウト状態に入った男は、女にとって恐ろしい存在だ。というのも、女は
 めったなことで他人を拒絶しないからだ。そうなるのは、傷つけられたり虐待を受けた、
 嘘をつかれたときなど、よほどの場合に限られる。女は男にも同じことが起こったと思
 い、あの人を傷つけただろうか、彼はもう私のことを愛していないのだと悩む。女は何
 とかして男の口を開かせようと画策するが、男は拒否するだろう。そのとき男は、自分
 の問題解決能力が信用されていないのだと感じる。  
・はるか昔の男は、いまの男が直面しているような問題とは無縁だった。妻をはじめ家族
 への愛を示すには、いつもやっていること、仕事に出かけて、「ベーコンを以て帰る」
 ことをしていればよかった。何千年も同じことを繰り返してきた結果、この営みは男の
 血肉となった。しかしいまでは、労働力に占める女の割合は50パーセントを超える国
 がほとんどであり、家族を養う役割が男だけにまかされる時代ではなくなっている。逆
 に言えば、いまの男は本来持っていないはずのコミュニケーション能力を求められてい
 るのだ。 
・女にとって外食は、人間関係を築き、発展させ、悩みを話しあったり、友人との付き合
 いを深める手段である。男にとって夕食は、食事にありつくための一方法にすぎない。
 料理や買物、皿洗いをしなくてもよいから、ありがたい方法である。
・女が試着を繰り返し、そのたびに男に意見を求めたあげく、結局何も買わない。女がい
 ろいろ服を試したがるのは、情緒や感情の幅が広い女の脳に見合った行動だ。雰囲気の
 ちがう服装が、そのまま気分のちがいを映しだす。しかしそれに付合わされる男は、し
 だいに不安と不満が高まってくる。男の服装は、保守的、実用的で、予想を裏切らない
 という男の脳そのものだ。自分の着る服を女まかせにする男も珍しくない。服装の趣味
 が良い男がいたら、女に選ばせているか、本人がゲイである可能性が高い。  

不思議な化学変化
・自然はよく考えたもので、動物のメスは、いちばん受胎しやすい時期に生殖活動をした
 くなるようにできている。そのタイミングもはっきりわかることが多い。たとえばウマ
 の場合、欲情したメスはオスにちょっかいを出して興奮させる。だが、受精に最適なと
 ころに卵子がおりてくるまでは、ぜったいに身体を許さない。もっとも人間の女は、自
 分にも同じような周期があり、身体がそれに応じて変化していることをちゃんとわかっ
 ていない。
・だからパーティで知り合ったばかりの男とベッドに直行する事態も起こるのだ。当の本
 人は、どうしてそうなったのか訳がわからない。「もう何がなんだか。パーティで出会
 った彼と、あれよあれよというまにベッドに入っていたの。あんなことははじめてよ」。
 そう言う彼女は、月経周期のなかでいちばん受胎しやすい瞬間に男と出会ってしまった
 のだ。そして女の脳は無意識のうちに、男の遺伝構成、免疫力など男性としての特徴を
 解読する。子どもの父親候補者として合格ラインに達していれば、あとは欲望にすべて
 をゆだねるわけだ。こういう経験をした女は、理由が説明できないままに「運命」や
 「不思議な引力」という言葉で片づける。だが、実際はホルモンの働きでそうなったと
 理解しておかないと、本来なら全然合わない相手に縛られて一生を送ることになる。
・排卵期になると、女性は短いスカートをはきたがることもわかった。つまり女は、生活
 をともにする相手としては、良い父親になれそうな男を選ぶが、生物学的な欲求がざわ
 つきはじめると、ターザン的な遺伝子に走ってしまうのである。 
・月経終了後21〜28日の期間、女の身体ではホルモンが急激に減少してバランスがお
 かしくなり、月経前症候群の呼び名で知られるいろいろな症状が起こる。気分が沈み、
 陰うつになって、ひどいときには死にたくなる。なかには症状が重く、性格まで変わる
 ことがある。暴行や万引きなど、女による犯罪のほとんどは月経周期の21〜28日目
 に起こっているという統計がある。
・多くの女は40代から50代はじめごろに更年期を迎えて、心理や情緒、ホルモンの大
 きな変化を経験する。この更年期障害の程度は、人によってさまざまだ。
・男にも更年期はあるが、こちらは症状が決まっているのでわかりやすい。飛行士用のサ
 ングラスや、ドライバー用の革手袋を買い、増毛をはじめ、オートバイや真っ赤なスポ
 ーツカーを買う。着るものの趣味がおかしくなる。
・男性ホルモン、とくにテストステロンは、男を狩りに向かわせ、獲物を殺させる攻撃的
 なホルモンだ。男にひげが生え、髪が薄くなり、声が低くなり、優れた空間能力が持て
 るのはテストステロンのせいである。
・だがテストステロンは、現代の男たちにとって困った一面もある。適度なはけ口がない
 と、攻撃性が高まって、反社会的な問題を引き起こしかねないのだ。テストステロンが
 男の子の全身にあふれだすのは12〜17歳ごろだが、犯罪をいちばん起こすのもこの
 年齢層である。
・男は50〜60代に入ると、テストステロンの分泌量が減少して、性格が穏やかになっ
 てくる。女はその反対で、更年期を過ぎるとエストロゲンが減り、相対的にテストステ
 ロンのほうが多くなってくる。だが45〜50歳ぐらいになると、女はいきなり自信満
 々になって、何ごとも積極的になる。しかし同時に顔の毛が濃くなり、ストレスが溜ま
 ると卒中を起こしやすくなる。

男と女とセックスと
・人間のセックス中枢は、血圧や心拍数、情動を管理する視床下部というところにある。
 また視床下部は、テストステロンに代表される各種ホルモンの刺戟を受けて、セックス
 したいという欲望を作り出す。男は女にくらべて視床下部が大きく、テストステロンの
 量も女の10〜20倍と多いので、当然男のほうが性衝動は強く、いつでもどこでもセ
 ックスできる。しかし男は「若気のいたり」が許され、奨励されるのに対し、女が性の
 ことで積極的になると「淫乱」の烙印を押されるという社会的な土壌もある。
・衝撃的で激しい男の性欲には、はきりした目的がある。人類という種の存続だ。哺乳類
 のオスはみんなそうだが、自分の種を繁栄させるために備えていなければならない条件
 がある。性欲が強烈で、ちょっとやそっとで衰えないこともそのひとつだ。セックスの
 チャンスはいつどこで訪れるかわからないし、いざというとき、敵が潜んでいるのでは
 と思って気が散るようでは困るのだ。 
・また男は、自分の種をなるべく広く、何度でも撒かなければならない。アメリカのキン
 ゼイ研究所によると、社会の束縛がなければ、たいていの男は何人もの女と関係を持と
 うとするし、実際のところ人類がこの世に出現してからというもの、社会の8割は乱交
 型だったという。しかし、一夫一婦制が確立すると、男が本来持っている激しい性欲が
 男女間に軋轢を生むようになった。
・女の視床下部は男よりずっと小さく、この部分を活性化させるのに必要なテストステロ
 ンの分泌も少ない。そのために女は性衝動が弱く、攻撃性も少ない。種の存続という点
 から見れば、女のほうが性欲のかたまりになってもよさそうなものだが、そうならなか
 ったのは、妊娠・出産・子育てに長い期間を要することと関係がある。 
・人間の場合、妊娠期間は9カ月におよび、母親はずっと大きなお腹を抱えていなければ
 ならない。生まれたら生まれたで、子どもが自分で餌を食べ、わが身を守れるようにな
 るまで最低5年はかかる。そのあいだ食べ物と安全な巣が確保され、敵から守ってもら
 うことは切実な問題であり、だから女は父親の潜在能力をしっかり見きわめておかねば
 ならない。 
・男のセックスは、たとえ言うなら電子レンジである。スイッチを入れると同時に最大出
 力で加熱をはじめ、調理が終わったらぱっと消える。だとすれば女の性衝動はオーブン
 だろう。最高温度に上げるまで時間がかかるが、なかなか冷めない。
・男が分泌するテストステロンは年齢とともに減少し、それにともなって性欲も弱くなっ
 ていく。女の性欲はなだらかな上昇曲線を描き、36〜38歳ごろにピークを迎える。
 中年女性と「若いツバメ」のカップルも、性欲の強さで比べると、19歳の若い男と、
 30代後半から40代はじめの女がちょうど釣り合うだ。40代の男の性欲と、20代
 はじめの女の性欲もちょうど同じくらいということがわかる。おじさんと若い女の組み
 合わせである。こうしたカップルの「年の差」は、通常20歳前後である。  
・男の性欲は19歳がピークで、あとは徐々に衰えていくが、それは実際のセックス能力
 の話しであって、セックスへの興味は生涯を通じて色あせることはない。70歳になっ
 ても、30歳のときと同じくらい関心が高い。ただ身体がついていかないだけだ。女の
 場合、10代後半のくらいから(恋を知るころでもある)セックスヘの関心が強くなる
 が、性欲自体はまだそれほどでもない。むしろ、関心は同じくらいでも性欲が高まるの
 は30代である。もちろん、これは男と女のごく一般的な傾向であり、個人レベルでは
 もっと開きがある。 
・性欲の強い女もいれば、性欲の弱い男だっている。ただそれは少数派であって、大多数
 の現状を反映しているわけではない。全体を眺めれば、やはり男のほうが性衝動は強い。
・女に必要なのはセックスする理由、男に必要なのはセックスする場所
・20代までの女は、男がやたらにセックスしたがることが不満で、「身体目当て」だと
 男をなじる。女の性欲が男と肩を並べ、あるいは男を追いこすのは、30代も後半にな
 ってからだ。これは閉経前にもうひとり子どもを産んでおこうという、最後のひとがん
 ばりなのである。だが40代に差しかかった男は、それまでと立場が逆転してぎょっと
 することが多い。このころになると、女のほうが性欲が強いし、攻撃性も高くなってい
 るので、多くの男がいやいや「お務め」をはたさなくてはならないとこぼす。  
・たいていのカップルは、男女の性慾のピークにちがいがあることを理解せず、自分の要
 求ばかり押しつける。これではうまくいくはずがない。男と女では性欲が異なってるし、
 気分が高まるタイミングもちがうのである。 
・女の性欲は、日常生活のいろいろなできごとに大きく左右される。クビになるかもしれ
 ない、仕事の締め切りが迫っている、借金が増えた、子供が病気だ、雨に降られてずぶ
 ぬれになった、愛犬が行方不明だ・・・そんなとき、女の選択肢にセックスはない。と
 っととベッドにもぐりこんで、眠るだけだ。
・これが男だと、セックスが睡眠薬がわりになる。張りつめた気持ちを解放し、リラック
 スする手段なのだ。こうして一日の終わりに衝突が起こる。「やらせてもらえない」男
 が「やりたくない」女をなじり、女は無神経な大バカ野郎と男に言いかえす。男は女を
 不感症呼ばわりして、いいよ俺は今夜はソファで寝ると言いすてる。
・オーストラリアで行われた年間あたりのセックス回数の調査によると、
 ・20代  144回
 ・30代  112回
 ・40代   78回
 ・50代   63回
 ・60代   61回
 81パーセントのカップルが性生活に満足しているという回答もあるから、それが嘘で
 ないと仮定すれば、どうやら男たちは性欲過剰を解消するために、パートナー以外との
 性交渉に励んでいるようだ。
・人種別のセックス回数調査によると、女性は黒人や白人よりラテン系のほうがたくさん
 セックスをしている。セックスしてオーガズムに達する割合では、黒人女性が白人女性
 に2倍も高かった。アジア系の女性はテストステロンの少なさを反映してか、セックス
 の回数が最も少ない。
・性欲と知性の関係を調べた調査結果によると、頭が良い人ほどセックス回数が少ない。
 あるいはセックスしたがらないという結果がでた・
・セックスが健康増進に役立つ証拠は、ごまんと存在する。週に平均して3回ほど中睦ま
 じくやっている人は、1年で8400キロカロリー消費している。この消費熱量は、
 130キロメートル走ったに等しい。セックスによってテストステロンの分泌が増える
 と、骨や筋肉がじょうぶになり、善玉コレステロールも増える。
・男と女が、一度のひとりしかパートナーを持たないのが一夫一婦制である。人間はもと
 もと一夫一婦で満足できるようになっていない。ユダヤ教、キリスト教の教えが浸透す
 るまで、人間社会の8割は一夫多妻を実行していた。 
・乱交性は、進化のなごりとして男の脳にプログラミングされている。人間の歴史を振り
 返ると、戦争のたびに男の人口は激減するため、ことあるごとに補充する必要があった。
 戦いから戻ってくる男の数は、たいてい出かけたときより少なくなっている。その分だ
 け寡婦も増えているわけで、帰還した男がハーレムを作るのは部族の生き残り戦略とし
 て効果的だった。 
・コミュニティを守るためには、どうしても男手が欠かせない。そのため男の子が生まれ
 ると喜ばれ、女の子だといやがられる傾向があった。人間は何万年もそういうことを繰
 り返してきたのだ。子どもを作ることがさほど切迫していない現代になっても、男の視
 床下部はあいかわらず大きいし、テストステロンも大量に放出されている。つまり人間
 の男は、霊長類やほかの哺乳類と同じで、完全な単婚を貫くようにはもともとできてい
 ない。 
・性産業が男しか相手にしないのも、その動かぬ証拠だろう。ポルノ写真やアダルトビデ
 オ、売春、インターネットのエッチ画像などは、すべて男専用と言っていい。たいてい
 の男は、実際には一夫一婦で生活しているものの、精神的には一夫多妻的な刺戟を求め
 ている。もちろん、これはあくまで男の生物的な傾向であって、浮気を奨励しているわ
 けでも、不倫の言い訳を与えているわけでもない。 ただ、私たちがいま生きている世
 界が過去から遠くかけ離れてしまい、生物としての仕組みが、現代人の期待や要求に合
 わなくなっているのも事実だ。
・男にくらべると、乱交性のある女はそうたくさんいないし、背後にある動機も男とまっ
 たく異なる。もともと巣を守るように配線されている女の脳は、たくさんの条件を乗り
 越えないと性的に高まらない。相手との関係が確実のものになり、感情面での結びつき
 が得られそうな手応えがないと、女はセックスへの欲望がわかない。そのかわり気持ち
 が通いあったと思ったら、三カ月から半年間は喜んでセックスしたがるのが女なのだ。
 男はそこのところを理解していない。ちなみにごくまれな色情症は別として、女の性欲
 がいちばん強くなるのは排卵のときで、ピークは数時間のこともあれば、数日間続くこ
 ともある。 
・男は野放しにしておくと、すぐ部族の存続に励みだす。つまり、手当たりしだいに女と
 寝てしまうのだ。全米保健協会の調査によると、16〜19歳の男女を対象に、見知ら
 ずの人たちと乱交に参加してみたいかとたずねたところ、男は82パーセントが興味を
 示した。女で興味を持ったのはわずか2パーセントで、ほとんどの回答者が嫌悪感を示
 した。 
・オンドリはとても精力的で、一度に60回以上もメンドリと交尾する。ただし同じメン
 ドリとは、一日に5回までが限度である。6回目になると急に興味をなくして「役にた
 たなく」なる。そこで新しいメンドリを連れてくると、たちまち元気を取り戻してにし
 かかる。これを「オンドリ効果」と呼ぶ。
・オス牛の場合、同じメス牛との交尾は7回が限度だが、ここでも別のメス牛を連れてく
 れば復活する。それを10回繰り返しても、オス牛は立派にお務めをはたすことができ
 る。 
・ヒツジでは、同じメスと5回以上できるものの、やはり相手が変わったほうが熱心にな
 る。最初のメスにほかのメスのにおいをつけたり、顔に袋をかぶせて偽装しても、オス
 はだまされてくれない。これは精子をなるべく広範囲に撒き、受精率を高めて種を保存
 しようとするオスの本能である。 
・若くて健康な人間の男の場合、同じ女とできるのは一日にだいたい5回までだ。いくら
 絶好調でも、6回目のアンコールには応えられない。ところがそこに別の女を投入する
 と、オンドリやウシと同じく、興味もあそこもたちまちよみがえる。 
・男の脳は、変化がないと刺激を感じない。哺乳動物のオスはたいていそうだが、人間の
 男もなるべくたくさんの健康な女と交わるよう、脳がプログラミングされている。ただ
 ほかの動物とちがって、男はパートナーにセクシーな服装やランジェリーをつけさせる
 ことで、あたかもハーレムにいるかのごとく自分をだますことができる。つまりやって
 いることは、ヒツジのメスに頭から袋をかぶせるのと同じ偽装なのだ。 
・健康な男の場合、性衝動のスイッチが入ってからオーガズムまでの平均時間はおよそ2
 分半。女は13分。哺乳動物はたいてい交尾に時間をかけない。いつまでもくっついた
 ままだと、敵から攻撃を受けたときに逃げようがないからだ。セックスは手早く終わら
 せるのが、種を保存するための本来のやりかたなのだ。 
・もちろん年齢や健康状態、気分にもよるが、男は一日に何回もセックスできるし、勃起
 状態をある程度保つこともできる。アフリカに生息するヒヒなどは、交尾時間がたった
 10〜20秒で、4〜8回ぐらい腰を振れば終わってしまうから、それにくらべれば人
 間も捨てたものではない。とはいえ上には上がいるもので、野生のラットは10時間に
 400回も交尾した記録がある。
・人間にかぎらず動物の世界でも、体重との比率で換算した睾丸の大きさは、テストステ
 ロン量を判断する大きな要因になる。睾丸の大きさはかならずしも体格と比例していな
 い。たとえばゴリラとチンパンジーをくらべると、体重はゴリラのほうが4倍以上ある
 のに、睾丸だけはチンパンジーのほうが4倍も重い。
・ここで大切なのは、睾丸の大きさは、男の誠実さ、言いかえれば一夫一婦制への適性を
 左右するということ。霊長類のなかで最大級の睾丸を持つのは、アフリカに生息するビ
 グミー・チンパンジーだが、オスは相手かまわずしょっちゅう交尾している。体重に比
 して睾丸の小さいゴリラは、ハーレムを形成しているにもかかわらず、年に1回セック
 スをすればいいほうだ。睾丸と体重の比率で言うと、人間の男は霊長類の平均サイズで
 ある。すぐに目先を変えたがるけれども、宗教や社会のルール、女からの圧力で一夫一
 婦制をおとなしく守る男には、ふさわしい大きさと言えるだろう。   
・ビル・クリントン、ジョン・F・ケネディ、オーストラリアの元首相のボブ・ホーク、
 サダム・フセインなどの政治指導者は、人並みより大きな睾丸を持っていたそうだ。当
 然のことながら性欲も強いから、あちこちにはげ口が必要だろう。世間は、タマがでか
 くテストステロンの豊富な人間に権力を与えたがり、そのくせ去勢したネコのような慎
 みぶかさを求める。権力者の地位に就けるのは強靭な性欲のおかげだが、そこから引き
 ずりおとされるのも、これまた性欲が原因なのである。 
・男の背信を解決する確かな方法はひとつしかない。去勢である。去勢すれば浮気の心配
 がなくなるばかりか、ひげを剃る回数も減り、ハゲの心配もなくなって、長生きできる。
 精神病院の患者を対象にした調査では、去勢手術を受けた男性患者の平均余命は69歳、
 何もしないでテストステロンを分泌しつづけた男性は65歳だった。
・未来の男たちは、いまより性的能力が弱くなるかもしれない。すでに睾丸の大きさや精
 子を作る能力は、確実に落ちている。私たちの祖父や曾祖父の睾丸はいまの男より大き
 かったし、ほかの霊長類とくらべても、人間の男はゴリラやチンパンジーより精子数が
 少ない。1940年代との比較でも、いまは精子数が半分近くに落ちているという報告
 もある。おじさんの世代にくらべると、現代の男たちは男らしさを失っているのだ。
・男は目から、女は耳から刺激を受ける。男の脳は、女性らしい形を見ると興奮するよう
 にできているので、エロチックな画像が効果ばつぐんである。女は感覚情報を受けとる
 期間が豊富なので、甘い言葉を好む。だから恋人に耳元でささやかれるとき、内容が何
 もなくても、女は目を閉じて耳からの刺戟に集中する。 
・ナイスバディの女が通りかかる。男は周辺視野が狭いので、首を動かして振りかえり、
 呆けたような視線を送る。まばたきも忘れ、口につばがたまる。カップルで歩いている
 とき、通りの反対側からミニスカートの若い娘が腰を振りながらやってきたとしよう。  
 近距離の周辺視野に優れた女は、男よりもいち早く彼女の存在に気づく。そしてすばや
 く自分と比較するが、たいてい自分のほうが劣っていると感じる。そのころになるとよ
 うやく男も気づき、鼻の下をのばして女に軽蔑される。こういうとき女は二つのことを
 考える。
  その一、この人、私よりあの女のほうが好きなのかしら。
  その二、私って魅力がない女?
 だが男は身体の曲線や脚の長さ、形に惹きつけられているのであって、同じような形と
 バランスをしていれば、別の女にも視線が吸い寄せられる。 
・何も男は、ミニスカートの女といますぐベッドに直行したいと思っているわけではない。
 自分は男であり、部族を繁栄させる役割を担っていることを再認識しているだけだ。 
・おもしろいことに、海岸とかプールといったところでは、むしろ女のほうがじろじろ男
 を眺めている。ただし女は周辺視野が広いので、見ていることに誰も気づかない。 
・パートナーと長続きするために重視すること、またパートナーが重視すると思っている
 ことについてのアンケート結果では、
 A:女が重視すること
  ・性格
  ・ユーモア
  ・思いやり
  ・知性
  ・身体つき
 B:女が重視すると男が思っていること
  ・性格
  ・身体つき
  ・ユーモア
  ・思いやり
  ・顔 
・反対に、長い付き合いで男が重視すること、男が重視すると女が思っていること
 C:男が重視すること
  ・性格
  ・顔の良し悪し
  ・知性
  ・ユーモア
  ・身体つき
 D:男が重視すると女が思っていること
  ・顔の良し悪し
  ・身体つき
  ・胸の大きさ
  ・お尻
  ・性格
・男はセックスを求め、女は愛を求める。これは何千年も前からわかっていたことだし、
 男女間の不満や衝突の最大原因でもあるのに、その理由や対策が話題になることはまれ
 だ。    
・男は生まれながらの狩猟者であり、目の前の問題を解決し、今日の食事を確保して、外
 敵と戦うような脳の配線になっている。だから仕事を終えたあとは、たき火の炎をぼん
 やり眺めていたい。せいぜい、子孫繁栄のためにちょっと腰を振るぐらいだ。ところが
 女が性欲を感じるのは、愛され、あがめられているという実感、自分が大切な存在だと
 いう確信が不可欠だ。ここに悲しいすれちがいがある。男はセックスしてからでないと、
 自分の感情に波長を合わせて、気持ちをはっきり表すことができないのに、女はまず男
 に気持ちを整理してもらってからでないと、セックスする気になれないのだ。 
・女たちが母親から、男が欲しがるのは「あのこと」、つまりセックスだけだと教えられ
 てきた。しかしそれはまちがいだ。男だって愛は欲しい。でも男の場合、セックスを通
 じてでしか愛を感じられないのだ。 
・男と女では、セックスに与える順位がまるで反対なので、そのことでおたがいをなじる
 のは無意味というものだ。もともとそうなっているのだから、しかたがない。
・男の心をとりこにするには、胃袋さえ満たしてやればいいと言う。だがそれはあまりに
 短絡的というものだ。男だってセックスに満足したあとは、やわらかく敏感な心が顔を
 のぞかせる。鳥のさえずりに感動し、木々のしたたる緑が目にまぶしく、花の香りに気
 づき、歌の言葉に心を揺さぶられる。  
・そういう変化はセックスの副作用のようなものだが、女が魅力を感じるのは、実はそこ
 なのだ。ふだんからそういう感受性を養っておけば、セックス前でも女の心をつかめる
 かもしれない。女のほうも、彼のもうひとつの顔、豊かな感受性に触れたければ、まず
 セックスで喜ばせることだ。 
・付き合いはじめてすぐのことは、セックスが楽しくてしかたないし、愛情にも満ちてい
 る。女は惜しみなくセックスさせるし、男も愛を注ぎからうまくいく。しかし数年もす
 ると、男は狩の本能、女は巣作りの本能が前面に出てしまい、セックスと愛の両方が停
 止してしまう。セックスライフがとどこおるのは、男女どちらにも責任があるのに、私
 たちはつい相手のせいにしてしまう。女は注目され、ほめられ、時間をかけて甘やかし
 てもらわないと火がつかない。男はとりあえずセックスに満足しないと、感情豊かに相
 手に接することができない。だから男は、セックスのあと、やさしい気持ちになったこ
 とを覚えておいて、次にセックスしたくなったときは、最初からそういう心で女に接し
 てみよう。大切なのは、やはりセックスだ。セックスがすばらしければ、二人の関係は
 驚くほどうまくいく。
・男がセックスに求めるもの。これは単純だ。オーガズムに達して、それまでの緊張を解
 放させることが目的である。セックスのあとの男の体重はわずかながら減少する。頭が
 空っぽになるからだという説もあるが、体液を放出したあとなので、とにかく休息が必
 要だ。そのまま眠ってしまう男も多く、そのため自分勝手だとか、無神経だと女の不興
 を買ったりする。 
・男が抱えるたいていの悩みは、セックスさえすればすっきりする。性欲がたまりにたま
 った状態では、男は耳も聞こえず、考えることもかなわないし、運転や機械の操作もで
 きない。時間の感覚もおかしくなって、3分が15分にも感じたりする。男に頭を働か
 せてもらいたいときは、まずセックスをして頭をすっきりさせてやろう。 
・女がセックスに求めるもの。女は正反対で、注目され、言葉をかわしながら、ゆっくり
 時間をかけて気分を高めていくのが良いセックスだ。男は放出して空っぽいなりたいと
 思い、女は満たされることを望む。ふつう女は、前戯に最低30分はかけてもらわない
 と盛りあがらない。男は30病で臨戦態勢に入れるし、彼女の家に向かうドライブさえ
 も前戯のうちだと考えていたりする。 
・ことが終わったあとの女は、自分こそ世界の中心だと思っている。愛する男と触れあい、
 抱きしめ、話しがしたい。ところが男は眠り込んでしまうか、そうでないと起き上がっ
 て「何かしたく」なる。電球を換えるとか、コーヒーをいれるとか。というのも、射精
 時に一瞬でも我を忘れた男は、自己抑制力取り戻そうと焦っているのだ。何かをして、
 抑制のきいたいつもの自分に戻れたことを実感したいのである。
・男は一度にひとつのことしかできない。だから勃起中は車の運転がでいないし、しゃべ
 ることも、人の話を聞くことも難しい。だから女は、男の息づかいで進みぐあいを察し
 なくてはならない。男は女から、こんなこともできる、あんなことをしてあげるといっ
 た「いやらしい」言葉を言ってもらうのが好きだが、それもセックスの前であって最中
 ではない。真っ最中に女から話しかけられると、男は方向感覚を失い、ついでにあっち
 も萎えてしまう。セックス時に男がもっぱら使うのは脳の右側で、目先のことに集中し
 ていると、男はほとんど何も聞こえなくなるのが実験でもわかっている。 
・女の脳は性欲に対して、男ほど劇的に変化することができない。だからセックスの最中、
 男がすっかり夢中になっているときでも、女は周囲の音や変化を意識している。巣を守
 る本能として、子どもに危険が迫ったときにすぐ気づくためである。 
・女が求めるのは、相手との親密さ、暖かさ、気持ちの高ぶりであって、オーガズムはい
 わばつけたしだ。目的ではない。男には達することが絶対必要条件だが、女はちがう。
 それなのに男は、女も自分と同じだろうと決めつけて、ひたすら挿入し、腰を動かして
 きた。 
・セックス中に女が感じている深い気持ちを、男は察してやることができない。だからな
 おさら、オーガズムが重要なものさしになる。女が達してくれさえすれば、男は良い仕
 事をして、成果をあげたことになる。だがそれは、しょせん男が自己満足するための基
 準でしかない。 
・女がそそられるもの
 ・ロマンス
 ・関わりあい
 ・コミュニケーション
 ・親密さ
 ・いやらしくない触れあい
・男がそそられるもの
 ・ポルノグラフィー
 ・女のヌード
 ・バラエティに富んだセックス
 ・ランジェリー
 ・やれるかどうか
・健康な女をなるべくたくさんはらませること。それが男の生物学的な務めであり、子ど
 もを無事に育てあげ、そのあいだそばにいてくれるパートナーを見つけること。それが
 女の生物学的な務めである。もはや生殖が子孫繁栄と直接結びつかないいまの時代でも、
 男女はそれぞれの務めをはたすべく、見えない力に借りたてられている。女が男に関わ
 りあいを求め、ロマンスに淡い期待を抱くのは、それが子どもの父親を獲得する可能性
 につながっているからだ。   
・男がそそられる対象を、女は毛嫌いしがちだ。けがらわしく、いやらしく、露骨で邪道
 なものというわけだ。概して男がそそられるものに女は興味がなく、女がそそられるも
 のに男は食指が動かない。 
・媚薬と言われるものは巷にあふれているが、科学的な効果が証明されているものはひと
 つもない。それどころか、腎臓に炎症を起こしたり、かゆみや発疹が出たりして、性欲
 どころではなくなる「媚薬」もなかにはある。 
・太陽系外からやってきたエイリアンが、地球に出回っている男性誌、女性誌、本、映画
 などを見たら、人間の女はセックス大好きで、何度オーガズムに達してもまだ求めつづ
 ける生きものと思うだろう。女の性欲はとどまるところを知らず、男を圧倒するという
 思い込みは確信に変わるにちがいない。それはマスメディアが現代の女に期待し、押し
 つけているイメージだ。現実には、そういうセックス狂の女は男が描く絵空事にすぎず、
 いたししても女全体の1パーセントに満たない。女の性欲に対するこの種の幻想は、私
 たちの親や祖父母に世代にはみじんも存在しなかった。振りまわされているのは、現代
 人だけである。  
・女の性欲は何千年も前から変っていない。変ったのは、そういう話題を大っぴらに口に
 できるようになったことだ。いまの女たちの母親、祖母も同じくらいの性欲を持ってい
 たが、それを口に出せる雰囲気にはなかった。ピルが登場する前は、性的な不満はいま
 より高かったにちがいない。それでも、いまのマスメディアが騒ぎたてるほどではなか
 ったはずだ。 
・ことセックスに関して、男は視覚的な動物だ。形、曲線、裸を見たがる。セックスのと
 き明かりをつけておきたいと思う男は76パーセントもいるが、女は36パーセントし
 かいない。概して女は、よほどロマンチックだったり、きわどい場面でないかぎり、裸
 ということに刺激を覚えない。裸の女を見た男は、たちまち高ぶり、興奮するが、男の
 裸を見た女は、そのマヌケな姿に笑い出すのが落ちだ。 
・女が好むのは言葉と感覚である。明かりを暗くするか、目を閉じてしまうほうが、女の
 感覚器官にはしっくりくる。さらにやさしくなでられたり、思わせぶりにあちこち触ら
 れたり、耳元に甘い言葉をささやかれたりしたら、火のつかない女はいないだろう。
・女は部屋を暗くしてセックスするのが好き。明るいと、ひとりだけ楽しんでいる男が見
 えてしゃくだから。男は明るい部屋でセックスしたがる。女の名前をまちがえて呼ばな
 いために。  
 
結婚、愛、ロマンス
・一夫一婦制、つまり男と女がひとりずつペアを作る方式は、いつのまにか私たちの生活
 の基本になっている。ただし、男がお気に入りの女をひとりだけ、または能力に応じて
 それ以上確保しつつ、外ではほかの女と一回かぎりの性的関係を結ぶことも、社会のな
 かでは暗黙の了解だろう。 
・男にとって、結婚の利点とは何だろう?進化という基本的な面で見ると、利点はない。
 男は自分の種をなるべく広く、たくさん撒くのが務めだからだ。それでも男の大多数は
 結婚しているし、離婚した男も懲りずに再婚する。正式な結婚をしなくても、決まった
 パートナーと長年暮らしている男も多い。反対に本能のおもむくまま、相手をとっかえ
 ひっかえする男は、社会から白い目で見られる。 
・女は結婚の代償としてセックスをし、男はセックスの代償として結婚する。
・結婚したい理由を男に聞いてみると、心休まる温かな家庭がほしいとか、食事を作って
 もらえる、といったことを、ぼそぼそ答えるにちがいない。要するに男は母親と召使い
 がいっしょになった存在を求めているのだ。そういう男は結婚しても、母親と息子のよ
 うな関係しか持てない。事実、妻はいちばんの親友だと明言できる男性は、全体の2割
 しかいない。男にとって親友になるべきは、同じ思考プロセスを共有できる男なのだ。
 もっとも、女に「あなたの親友は男性、それとも女性?」とたずねても、86パーセン
 トが女性と答えるだろう。脳の配線がいっしょだからだ。 
・いまや欧米社会では、結婚制度はほとんど意味を持たない。それでも女は結婚したがる
 し、9割以上の人は実際に結婚している。女が描く結婚像とは、ひとりの男に「特別な
 人」と見なされ、二人で生きていくことを世間に宣言することだ。自分が「特別」な存
 在だという感覚は、女の脳にめざましい作用をもたらす。その証拠に、結婚した女、結
 婚していなくても特定のパートナーがいる女がオーガズムに達する割合は、そうでない
 女のそれぞれ4〜5倍、2〜3倍も高い。 
・女のとって裏切りはゆゆしき問題らしく、30歳未満の回答者の44パーセントは、男
 が浮気したら別れると答えている。もっともこの場合、回答者の年代が30歳代になる
 と32パーセントになる。年齢が上がるにつれてこの数字はどんどん下がり、40歳代
 で28パーセント、60歳代では11パーセントしかない。つまり若い女ほど、一対一
 の誠実な関係を重視しており、よそ見をする男に厳しいということだ。
・男には、女のこういう考えかたがたっまく理解できない。男はセックスと愛情を分離で
 きるので、たまに火遊びしたぐらいでパートナーとの関係は揺らがないと思っている。 
 だが女の脳では、セックスと愛は表裏一体なのだ。男がほかの女とセックスをしたが最
 後、裏切りと見なして男との関係に終止符を打とうとする。
・なぜ私たちは懲りることなく結婚するのだろうか?ひとつには、満ちたりた結婚生活を
 続けることが、健康で幸福な子どもを育てる一番確実な方法だから。そしてもうひとつ
 は、結婚がもたらしてくれる癒しの効果だ。目が回るスピードで進む日常生活のなかで、
 結婚生活は嵐のなかの避難港のような役割を果たしてくれている。結婚生活が営まれる
 ところは「家」であり「家庭」でもある。そこにはストレスから逃れて休息を取り、英
 気を養える場所なのだ。 
・女は男を捨てるときも、手ひどいことはしない。別れるときもにっこり笑顔を作ったり、
 いつまでも愛しているなどと手紙の最後に書いたりする。 
・「愛しているわ」、女はこのひと言を口にするのはいともたやすい。女の脳のなかでは、
 感覚、感情、コミュニケーション、言葉がうまく融合している。だから心が温かくなっ
 たとき、自分が求められている、賛美されていると感じたとき、また愛着のステージに
 いるときは、相手を愛しているという確信が持てる。しかし男は、愛とはどういうもの
 かいまひとつわからない。肉欲と心酔も混同しがちだ。 
・男はテストステロンのせいで冷静さを失っているし、ムスコもしょっちゅう元気になる
 しで、まとこな思考ができない。あれが愛だったとわかるのは何年もたって、もう関係
 が終わってからということも珍しくないのだ。女のほうは愛がなくなるとすぎわかる。
 だから男女が別れるときは、女が男を捨てるパターンが多い。 
・たいていの男は女と深く関わることを極度に恐れる。「愛している」などと口走ろうも
 のなら、一生束縛されることまちがいなしで、スーパーモデルとジャクージーを楽しむ
 夢が消えてしまう。しかしひとたび一線を越えたら、いつでもどこでも、誰にでも「愛
 している」を連発する。彼の口から「愛してる」と言われると、女はオーガズムに達し
 やすくなると、男は気づいていない。 
・愛が消えたとき、まっさきに気づくのは女だ。だから関係に終止符を打つのも女のほう
 が積極的。 
・幸せな結婚生活を送っている女はまず浮気をしないが、男のほうはふらふらとよそ見ば
 かりする。情事をはじめるのは男だが、終わらせるのは女だ。浮気相手との関係は永遠
 に続くものではなく、しょせんは肉体的な快楽が目的だとわかると、女は「いち抜けた」
 と切りすてる。 
・いっぽう男の脳はもともと区分けがはっきりしているので、愛とセックスは切りはなす
 ことも簡単だし、なにしろ一度のひとつのことしかできない。快楽一辺倒の関係でも、
 とりあえずは大満足なのだ。 
・脳のなかで愛が生まれるのはどの場所なのか。まだ正確にはわかっていない。ただ女の
 脳は、愛の中枢とセックスの中枢(視床下部)の連絡が充実していて、しかも最初に愛
 の中枢が活発にならないとセックス中枢もめざめないようになっている。男にはそうい
 う中枢同士の連絡はないらしく、愛とセックスを別個のものと割り切ることができる。
 男にとっては愛は愛、セックスはセックスでしかない。ただ両者がたまたま同時に発生
 することもある。 
・男の浮気がばれたとき、女がまず投げつける質問はこうだ。「その女を愛しているの?」
 「まさか、ただの遊びだよ。愛しているわけないだろう」という男の答えは、おそらく
 真実だ。セックスと愛を分けてとらえられるのだから。しかし女が聞いて、とうてい納
 得できる答えではない。セックスすなわち愛である女にとって、あの女とは何でもない
 という主張をうのみにはできない。女には、男がほかの女と寝たこともさることながら、
 気持ちのうえで男とかわした約束が破られ、信頼が裏切られたことがショックなのだ。
 女が浮気相手のことを、あの人とは何でもないと言ったなら、それは嘘だ。女は一線を
 越えてセックスに踏み切った時点で、すでにその男と心を通わせている。
・女にとって、セックスと愛は分かちがたく結びついている。 
・女にとっては愛の営みかもしれないが、男にとっては一発やる、それだけだ。男はセッ
 クスをただ「セックス」と呼んではばからないが、女はセックスという言葉に眉をひそ
 め、それは「メイクラブ」だと言いたがる。要は愛されているという実感があり、愛情
 が満ちていないとセックスする気になれないということだ。愛も動機もない短絡的な行
 為、それが女の解釈するセックスだ。 
・だが男が「セックス」と言うときは、欲望だけの行為のこともあるが、かならずしも相
 手の女を愛してないとはかぎらない。たとえ中身が「メイクラブ」でも、男はセックス
 という言い方をしたがるだけだ。 
・価値観や興味、ものごとへの態度や認識のしかたが似通っていると、おたがいに魅力を 
 感じて、すぐに「うまが合う」という研究結果が1962年に発表された。その後の調
 査でも、似た者同士は関係が長続きしやすいことがわかっている。だが何から何まで同
 じでは、いかにも退屈だ。相手に関心を抱き、欠点を補いあえる程度にはちがいがあっ
 たほうがいい。物静かな男には外交的な女が、心配性の女には細かいことを気にしない
 男がちょうどいいのだ。
・男のためのロマンス達成講座
 (1)雰囲気作り
  誰にもじゃまされる心配のない、こざっぱりとした部屋を用意しよう。女はひそかな
  セックスを好む。だからこそ、人前でことにおよぶ幻想を胸に秘めているのだが、男
  はというと、行きずりの女とセックスするのがひそかな夢だ。  
 (2)食べさせる
  家族のために食べ物をとってくるのが、男のそもそもの役目だった。その本能を引き
  ついでいるいまの男は、食べ物を与えることで、女としての根源に働きかけようとす
  る。たとえ空腹でなくても女を食事に連れて行くことは、彼女の生存と幸福を気づか
  う行為にほかならないのだ。
 (3)火をたく
  たきぎを集めて火を燃やす。それは女の身体を暖め、守ってやるために昔から男がし
  てきたことだ。それゆえ女のロマンスごころを大いに刺激する。 
 (4)花を贈る
  花束の威力を男は理解していない。たしかに切り花は数日もすれば枯れて捨ててしま
  うが、それなら男に次の花束を持ってきてもらえばいい。女には、願望をかなえても
  らいたいというロマンチェックな欲求があるのだ。
 (5)踊りに行く
  ダンスは、男と女の身体を触れ合わせる格好の理由を提供し、欲望をさりげなくオブ
  ラートにくるんで、次の段階に発展させる洗練された手段だ。
 (6)チョコレートとシャンパンを買う
  アルコール飲料のなかで、テストステロンの分泌を高める成分が入っているのはシャ
  ンパンだけだし、チョコレートに含まれるフェニルエチルアミンは、女の脳を刺激し
  て愛情を活発にする。
・男を喜ばせよう思うと、女は自分がされたいことをする。髪をかきわけたり、顔に触れ
 たり、頭皮に軽く爪を立てたり、背中をなでたり。だがこの種の愛撫は男に効果がない
 どころか、かえってうっとうしがられたりする。男が触れてもらいたいところはだいた
 い一カ所で、そこだけを何度も攻められると満足する。この行き違いが、男女間の摩擦
 を生んでいる。男は女を喜ばせようとして、自分が触りたいところ、つまり乳房と脚の
 付け根ばかりまさぐるのだ。これは女がいやがることの最たるものだ。
・愛は欲望からはじまる。だが強烈な衝動は数時間、長くても数日から数週間しか続かな
 い。次に訪れる心酔の日々はだいたい三カ月から一年もすれば、愛着にとってかわる。
・自然界のねらいは、強力がホルモンカクテルで男と女を酔わせ、子どもを作らせること
 にある。相性まで見きわめる作業はそこに入っていない。ぴったりの相手を見つけるに
 は、ホルモンカクテルに酔ってしまう前に、相手を判断しなくてはならない。心酔のス
 テージが終わっても、共通の趣味、あるいは友情を支えにして、ずっと手を携えて生き
 ていけるか。そのためにあなたが相手に求める資質を、紙に書き出してみよう。そうす
 れば理想像がはっきりしてくる。    
・しかし男も女もいざパーティに出ると、テストステロンが燃えあがってそれどころでは
 なくなる。男のほうは、女の脚の形がいいとか、お腹がぺたんこ、お尻やオッパイがい
 かすといった、目先の生殖活動に必要な特徴ばかり目に入るのだ。女は女で、男のやさ
 しさや神経の細やかさ、逆三角形の体型、性格の良さなど、子育てや食料の確保、家族
 の保護に役立つ面に気をとられる。だがそれらは子作りのための資質にすぎず、現代の
 男女が望ましい関係を築くには不充分だ。
  
新しい未来へ
・男のありかたは何世紀も前からあまり変わっていない。いまも87パーセントの男は仕
 事が人生でいちばん大事だし、99パーセントはセックスライフの充実を望んでいる。  
 けれども現代の女が大事に思っていることは、母親は祖母の時代とかなりちがっている。
・現代を生きる女の多くが本格的に仕事をするのは、経済力、名声、権力など男が持って
 いるものが欲しいからだ。もっとも副作用のほうもしっかり引き受けているようで、キ
 ャリアウーマンは心臓障害、ガンにかかる率が高く、早死にしやすいという統計もある。
 酒とタバコをたしなむ女がこれほど多い時代は、過去に一度もなかったはずだ。
・キャリアウーマンの44パーセントは、仕事が最大のストレス要員だと答えている。働
 き過ぎて健康に悪影響が出ていると答えた人が66パーセントにのぼった。また金銭的
 な問題さえなければ、専業主婦や無職でいたいという女性がほとんどで、仕事をするこ
 と自体に意味を見出していた人は2割に満たない。   
・オーストラリアでも、人生で大事なことを順番に答えてもらうアンケートでは、仕事を
 第一位に持って来た人は5パーセントだけで母親であること、という答えが断然多かった。
 仕事を重視する人は2パーセントに落ちる。やはり母親になることが第一位で、仕事は
 18パーセントに過ぎなかった。  
・現代の女性といっても、その価値観は基本的に何世紀も前から変わっていないのである。
 大きく異なるのは、93パーセントの女性が経済的自立を重視していること、62パー
 セントが政治に力を発揮したいと考えていることだ。つまり男に頼りたくないというこ
 とだろう。  
・私生活に話を移すと、セックスがいちばん大切と答えた女性はたった1パーセントだっ
 た。45パーセントの女性は信頼、22パーセントが尊重されることと答えた。セック
 スライフが申し分ないと思っているのは全体の2割にすぎず、63パーセントはいまの
 パートナーに不満を持っていた。  
・多くの女性は、母親として子どもを育てることが人生でいちばん重要であり、そこに満
 足感を覚えている。キャリアウーマンといえども、結局はお金のために働いているので
 あり、その大半は共稼ぎしないと生活が成り立たない都市部に住んでいる。また、子ど
 もの異色と教育をまかなうために働くのは、子育てに専念するより尊いとも感じている。
 おおむね女は男より子育てを楽しんでいる。男がその喜びを実感するのはずいぶんあと
 で、孫が生まれておじいちゃんになってからだ。  
・男中心の組織では、女が出世階段を昇りつめるのはかなりたいへんだし、女自身もそう
 いう地位を望んでいない。政治の世界にしても、女性政治家はマスコミに登場する回数
 こそ多いものの、実際の数は全体の5パーセントに満たない。男社会の伝統が根強い職
 場では、女には二つにひとつの道しかない。さっさとやめて、平等に扱ってもらえる職
 を見つけるか、男みたいになることだ。  
・これまで出世の階段を昇るには、男らしい特徴や価値観が求められてきた。しかしいま
 では、女らしい価値観を持たないと生き残りが難しくなっている。従来の組織というと、
 男だけの階層構造ができあがっていて、カリスマ的な男の指導者が「オレについてこい。
 いやならやめろ!」という態度で牛耳っていた。だがいまやそんな組織は過去の遺物に
 なりつつあるし、脳まで筋肉でできているような体育系も敬遠されている。  
・組織の上のほうで男的な価値観が先行すると、かならず権力闘争がはじまる。周囲の賛
 成が得られると、ひとりひとりが暴走するのだ。斬新な発想や、視点を変えたアプロー
 チが発展につながりそうなときでも、男たちはわが身がいちばんの戦いばかり繰りひろ
 げる。  
・男と女はこんなにかけ離れているにもかかわらず、その関係はうまくいっている。それ
 は人間関係を円滑にして、家族をまとめあげる能力を持つ女に負うところが大きい。言
 葉やしぐさの陰にひそむ意味や動機をを察して、いち早く結果を予測し、問題が表面化
 する前に対策をとれるのは、女である。もし各国の指導者が女なら、それだけで世界は
 平和になるはずだ。 
・男は獲物を追いかけて打ち倒し、どんない遠くても家までの道を見つけ出し、たき火を
 眺め、女をはらませる。それが仕事だ。しかし現代社会では、女のように生きる新しい
 方法を男も模索する必要がある。  
・男と女はもともと作りがちがっている。この事実を認めようとせず、勝手な期待を相手
 に押しつけると、男女関係は暗礁にのりあげる。人間関係で降りかかるストレスのほと
 んどは、男と女はまったく同じで、同じような欲望や衝動を持ち、大事に思っているこ
 とも同じだという間違った認識が原因になっている。  
・いま社会では、子どもを性の区別なく育て、男女はまったく同じだと教えている。こう
 いう教育は、長い人類の歴史でも過去に例がない。異性とのちがいに気づくのは、おと
 なになって結婚した翌朝である。これでは、人間関係や結婚生活が破綻するのも当然だ
 ろう。男女を同じものと見なす考え方は、危険がいっぱいだ。脳の配線が異なる男と女
 に、画一的な行動を押しつけているのだから。同じ人間なのに、どうして男と女がこん
 なにちがってしまったのか。自然の采配を不思議に思わないでもない。ただ私たちの本
 来の生態が、いまの環境にそぐわなくなっているのは確かだ。