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 昔、「不倫は文化だ」と言って世間を騒がせた芸能人がいたが、今やそれを飛び越して
「不倫は日常」になっている。清純のイメージだったあの女性タレントをはじめ、お笑い
芸人のあの人やこの人、国会議員だったあの日と、はたまた「五体不満足」のあの人まで
もが「不倫」で世間を騒がせている。そして、それら「不倫」に対する正義感溢れる紳士
淑女たちからの痛烈なるバッシングも相変わらずだ。明日は我が身かもしれないのに。
そんな「不倫」についてこの本では、「不倫はインフルエンザみたいな感染症だ」と説い
ている。社会生活を営む以上、外に出て他者と接触しなければならない。そこには必ず不
倫という感染症が発生するというのである。そしてこのような感染症に対する対策として
は、ワクチン(不倫ワクチン)が必要だと説いている。
「不倫」が感染症ならば、「不倫とはけしからん」と怒っている人も、いつ自分がその
「不倫」の張本人になるかわからない。他人事ではないのである。インフルエンザにかか
らないために、ワクチンを接種するように、不倫にかかならないようにワクチンを接種し
なければならない。その不倫ワクチンとはどのようなものか、不倫ワクチンの開発につい
て、この本では真面目に調査研究している。この本をしっかり読み込んで「不倫病」にか
からないようにしたいものである。

プロローグ
・現代は「単身者が生きにくい」社会、さらに言えば「単身になったらアウト」の社会で
 ある。労働者全体の4割近くが非正規雇用になっている現在、同居して共働きをした上
 で家賃や生活費の負担を折半しないと経済的に生きづらい人は、男女を問わず増加して
 いる。
・男性の孤独死の発生率は、60代後半以降の高齢期から増加するのではなく、50代後
 半以降から増加する傾向にある。福祉の文脈で問題化されることは少ないが、離婚は男
 性にとっても(むしろ男性であるがゆえに)、生活面・経済面・精神面に深刻なダメー
 ジを与える。
・不倫の問題は心理学をかじった自称カウンセラーだけの手に負える代物ではない。社会
 の問題を個人の心理の問題に還元することは、百害あって一利なしだ。
・近年、DV(家庭内暴力)への社会的関心と、当事者への支援を求める声が高まってい
 る。配偶者からの暴力によって、当事者の受ける心身のダメージに深刻さを考えれば当
 然のことだ。しかし不倫に関しては、する側・される側の双方が、DVと同等の身体的・
 精神的ダメージを受けるリスクを有しているにもかかわらず、何の社会的支援もなされ
 ていない。
・不倫の関係が露呈した場合、夫婦や親子、友人や職場の人間関係に決定的な亀裂が入る。
 場合によっては暴力や恐喝、自殺、殺人にまで発展してしまう。アメリカで発生した配
 偶者殺害の発生原因のうち、約3割は妻の不倫(及び不倫の疑い)への怒りに駆られた
 夫の暴力とされている。
・法律的リスクを説くだけ、道徳論を説くだけ、夫婦関係の再構築や夫婦間の話し合いを
 奨励するだけでは、不倫の問題は解決できない。法律も道徳も、不倫によってかきたて
 られる欲求や衝動、怨念や嫉妬には勝てない。人間にとっての最大の麻薬は人間だ。ど
 んなドラッグやギャンブルも、人間そのものが持つ魅力や中毒性には勝てない。
・不倫が苦しいのは、相手に心を奪われるからだ。そして、心を奪われるということは、
 いつでも、どこでも、誰にでも起こり得る。社会生活を営むかぎり、いつ、どこで、誰
 に、どのように、どの程度お深度でえぐられ、奪われるかは予想がつかない。
・思春期の疾風怒濤に振り回される中学生と同様、配偶者以外の相手との恋愛やセックス
 (婚外恋愛・婚外セックス)に対しては、当たり前だが誰も免疫を持っていない。分別
 のある大人が初恋に狂った中学生のような言動を取ってしまう。
・不倫をインフルエンザのような「感染症」として考えていく。インフルエンザに感染す
 ることは、基本的に妨げない。社会生活を営んでいく以上、外に出て他者と接触するこ
 とは欠かせない。ワクチンを打っても効かないこともあるし、ワクチンを打たなくても
 かからない人もいる。そうした状況下で、「インフルエンザウイルスは、なぜ存在する
 のか」という問いを考えることには、あまり意味がない。感染した人に対して「努力が
 足りない」「自己責任だ」「周りの迷惑を考えろ」とバッシングを浴びせることにもま
 た、意味はない。   
・重要なのは、「いつ、どこで感染しやすいのか」を明確にした上で、「感染する確立を
 減らすためにはどうすればいいのか」という予防策(ワクチン)と、「もし感染してし
 まった場合、どうすれば本人の重症化、および周囲への感染(被害拡大)を最小限に食
 い止められるか」に関する処方箋だ。 

現代社会における不倫の現実
・人が不倫へと吸引されてしまう背景には、生物学的にも、歴史的にも、文化的にも、そ
 れなりに正当かつ抗いがたい理由がある。わたしたち人間は、男女を問わず、生物学的
 にも社会的にも複数の相手と性交をすることができ、さらに複数の相手と愛し合うこと
 もできてしまう生き物なのだ。
・不倫とは「既婚者が、相遇者以外の相手と恋愛感情を伴った肉体関係を持ち、かつその
 関係を継続する意志を相手方と共有していること」と定義する。継続性のない一夜限り
 の関係、性風俗や売売春による金銭を介した関係は、不倫からは除外する。
・既婚者の中で不倫をしている人の割合はどの程度なのだろうか。
 ・2004年のアメリカ・シカゴ大学の社会動向調査によると、既婚男性の20.5%、
  既婚女性の11.7%が婚外交渉の経験ありとの回答
 ・2009年、雑誌「プレジデント」による全国の40代~60代の既婚男女を対象と
  した調査では、男性34.6%、女性6%が婚外交渉の経験ありとの回答
 ・日本性科学会が行った調査では、独身男性の42%、独身女性の38%にパートナー
  がいるが、その中で交際相手に配偶者がいる人が、男性の21%、女性の53%と回
  答
・実際に不倫をしている人は、週刊誌やドラマなどおメディアで騒がれるほど多くない。
 約8割の既婚者は、心の内に不倫願望を秘めているかもしれないが、実際に行動に移す
 までにはいかない。不倫はあくまで少数派であるからドラマや記事のネタになるのだ。
・現代社会は、個人間で常に連絡の取れる携帯電話やSNSの普及で、環境条件的には
 「歴史上、最も不倫しやすい社会」になっている。 
・社会問題としての不倫の要点は、統計上の数値の大小だけではなく、当事者が受ける心
 身のダメージの深刻さと、それが不倫相手や配偶者、家族や子どもに及ぼす影響の強さ
 にある。1件の不倫の背景には、決して数値化することのできない、本人および周囲の
 人たちの巨大な苦しいが潜んでいる。   
・男女同権の風潮の高まりと結婚に対する価値観の多様化の中で、不倫を絶対悪とみなす
 風潮は少しずつだが、緩まっている。「肯定も否定もしないが、自分の気持ちには正直
 であるべき」といった、「婦人公論」的な「一見中立と見せかけた間接的不倫肯定論」
 もメディア上に溢れている。
・法律上、不倫は不貞行為(貞操義務の不履行)である。不貞行為とは、「一夫一婦制の
 貞操義務に忠実でない一切の行為」であり、裁判においては「配偶者のある者が、自由
 意思で、配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶこと」と解されている。行為に及んだ動機
 は不貞行為か否かの判断には影響しないので、酔った勢いでの性交や性風俗店での性交
 も不貞行為になる。
・不倫をされた側は、夫婦で平和な共同生活を送る権利を侵害されたことになり、民法
 709条(不法行為による損害賠償)を法的根拠に、不倫をした側とその相手に対して
 損害賠償を請求できる。なお、一度きりの性的交渉も不貞行為とされるが、離婚理由に
 なるには反復的に不貞行為を行っていることが必要とされる。ちなみに風俗嬢や風俗店
 に対しては、自由意志ではなく金銭を介した関係なので、慰謝料請求はできない。
・現在の民法下での裁判では、夫婦の共同生活の平和を保護すべき利益と考える。不倫を
 知って肉体関係を結んだ者は、平和は夫婦生活を送るという権利、またはそれに伴う利
 益を侵害したとみなされる。ゆえに不倫は不法行為であり、配偶者の権利を侵害し精神
 的苦痛を与えた不倫相手は慰謝料を支払う必要がある。
・ちなみに夫婦関係が破綻した後に不倫が始まった場合は、配偶者の利益の侵害にならな
 いので、夫婦間および不倫相手に対する慰謝料の支払いの義務は発生しない。
・現在の判例では、不倫をした配偶者だけではなく不倫相手にも慰謝料の支払い義務を認
 めている。しかし、これに対しては批判も多い。貞操義務を破った一義的な責任は不倫
 をした配偶者側にあるという意見や、公権力が夫婦以外の第三者の恋愛にまで関与すべ
 きではないという意見もある。
・不倫相手の支払う慰謝料は一般には100万円から200万円程度となっており、不倫
 をした配偶者側が支払う慰謝料は、離婚した場合、慰謝料と財産分与のトータルで
 300万円から400万円程度となっている。ただし、慰謝料請求に関しては、弁護士
 費用、訴状の印紙代、不倫の証拠を押さえるための調査会社への費用など、かなりのコ
 ストがかかり、費用倒れになることもあり、仮に勝訴したとしても、それまでに費やし
 た精神的・経済的コストを考えれば、不倫をされた側は失うものが圧倒的に大きい。
・不倫の時効は、不倫をした時から20年、あるいは不倫相手が判明した時から3年の、
 いずれか短いほうである。つまり最短で3年、最長で20年は裁判沙汰になるリスクと
 隣り合わせで過ごすことになる。 
・不倫は生育環境・年齢・性別・学歴・職業を問わず誰にでも起こり得ることだが、不倫
 をしない人に比べて、不倫をしやすい人にはある一定の傾向がみられるのは確かだ。男
 性の場合は好奇心が強く、芸術性や創造性を高く持ち、柔軟で型にはまらない思考をす
 る知的な性格の傾向が強いほど不倫する確率が高いとされている。一方、女性の場合は、
 努力する意志や几帳面さに欠け、計画的に物事を進めることができない、誠実性が低い
 人ほど不倫する可能性が高いとされている。
・一般に男性の不倫は、「相手ありき」というよりも「まず性欲ありき」で、何らかの誘
 惑やきっかけがあり、タイミングが合えば、簡単に不倫に踏み出しやすい。 
・「良き夫」「良き父」「良き婿」といった役割の歯車に組み込まれて窒息しそうな男性
 が、ガス抜きのための婚外セックスに走る場合、一時的にせよ、父でも夫でもない「一
 人の男」になって役割から解放されることで、むしろ家庭生活が以前より安定する場合
 もある。性欲が満たされれば精神的にも落ち着くので、不倫をやめる場合にも比較的容
 易に足を洗える。一方、女性の不倫は、「まず性欲ありき」ではなく「相手ありき」で、
 自分の性欲ではなく、相手との関係性によって、不倫に対するモチベーションが変化す
 る傾向がある。「セックスとは無縁」「不倫にはまったく興味がない」という女性でも、
 あくまで「現在のパートナーとは」「現在の環境では」という条件付きの話にすぎず、
 見合った相手が現れれば、これまでの恋愛や整体権の多寡にかかわらず、激しい不倫に
 乗り出してしまうリスクがある。
・結婚前に性的経験が多い人ほど、結婚後に不倫をしやすくなるという統計データがある。
 1996年にアメリで行われた20歳から39歳の女性を対象に行われた調査では、結
 婚前に性体験のなかった女性と比較して、1人から3人の性的経験のあった女性では4
 倍、4人以上の性的経験のある女性では8.6倍、浮気をする危険性が高まると報告さ
 れている。
・2007年にアメリカで行われた既婚女性を対象に行われた調査では、同棲経験のある
 人は、同棲経験のない人に比べて浮気の危険性が5倍に高まると報告されている。同様
 に、過去に離婚経験のある人、初婚年齢の低い人ほど浮気をする確率が高いというデー
 タもある。
・浮気をする人は、コンドームなどの避妊具を使用しない傾向があることが指摘されてい
 る。ある大規模調査では、浮気経験者の88~92%が、パートナーや浮気相手に対し
 てコンドームを使用していなかったことが報告されている。
・不倫の動機をタイプ別に分類すると、概ね以下の通りになる。
 ・市場価値確認タイプ
  ・男として・女としての市場を確認したいために不倫する。若くして結婚した人に多
   い。価値を確認できれば満足なので、比較的短時間で終わることもしばしば。
 ・隣の芝生は青いタイプ
  ・友人・知人の配偶者が魅力的に見えるために不倫に乗り出す。結婚したての人に多
   く、「そんなに青くなかった」とわかっておさまる。
 ・中年の危機タイプ
  ・友人・知人の死や病気を契機に、「本当にやりたいことをしたい」「後悔のないよ
   うに行きたい」と思って不倫に乗り出す。
 ・カウンセラー探しタイプ
  ・自分の話を親身になって聞き、励ましてくれるカウンセラー的な相手を求めて不倫
   をする。セックスはあくまでオマケであることが多い。
 ・身代わり模索タイプ
  ・婚外恋愛で失恋してしまい、心のスキマを埋めてくれる身代わりを探して不倫をす
   る。
 ・あてつけタイプ
  ・パートナーに自分に性的要求を拒否されたり、性的嗜好を否定されたことが理由で
   不倫に乗り出す。
 ・ステップアップタイプ
  ・昇進や起業などの社会的成功によって、パートナーとの価値観が合わなくなった際
   に、「自分にはもっとふさわしい相手がいるはず」という思いから不倫に乗り出す。
 ・自爆タイプ
  ・パートナーとの関係が行き詰まって、どうすればいいのかわからない、一度関係を
  リセットしたいという時に、あえてバレるように不倫をする。  
 ・復讐タイプ
  ・浮気されたことへの仕返しとして不倫をする。多くの場合、罪悪感と自己険悪しか
   残らず、関わった全員が不幸になる。
 ・純粋な浮気タイプ
  ・今のパートナーよりも魅力的な相手に出会い、惚れてしまったことで怒る。
・厚生労働省の「離婚に関する統計」によれば、夫は30代前半~30代後半、妻は20
 代後半~30代前半で離婚するケースが多い。世間的に夫婦ともに幸せでいっぱいと考
 えられる産前産後の時期に、夫婦不和やDVといった、離婚の直接的・間接的な引き金
 になるようはトラブルが頻発する。いわゆる「産後クライシス」だ。
・「産前産後の妻を持つ夫」に対する社会的な理解や支援は皆無である。夫の立場からす
 ると、妻の妊娠中から産後にかけては、セックスできない、したくても切り出せない、
 勇気を出して切り出しても断られる場合が多いため、そこから浮気や不倫に発展してし
 まうケースもある。   
・妻の産前産後は、実は男性のライフコースの中において、思春期と並んで最も性的にも
 精神的にも追い詰められがちな時期になる。自分が「夫」から「父親」に変わっていく
 こと、パートナーが「妻」から「母親」に変わっていくことを精神的・性的に受け入れ
 ることは、実は用意ではない。  
・産後クライシスと並び、夫婦関係を破壊する可能性のある要因は「不妊クライシス」で
 ある。不倫と不妊の共通点は、「完全な予防策がない」ということだ。不妊当事者の夫
 婦にとっては多くの金銭的・時間的負担と、それを上回る精神的負担がのしかかる。妊
 娠目的の性生活自体が苦痛になることもあり、そこから夫婦不和が引き起こされるケー
 スも後を絶たない。
・不妊は、子どもが一定期間できないだけで、一足飛びに「病気」「患者」扱いにされて
 しまう。医学的な理由だけが原因ではないのに、医学的な相談機関という選択肢しかな
 いために、あらゆる問題が一括して「医療化」されてしまう。
・不倫も、その背景には様々な事情があるのに、問答無用で「不貞行為」「モラル破綻者」
 扱いされてしまう。同じ行為でも、故意の場合と過失の場合、本気の場合と遊びの場合、
 夫婦仲が良い場合と悪い場合では、内容は全く異なる。必ずしも「不倫」の一言ではく
 くれない。
・不倫といえば、出会い系サイトやSNSで知り合った全く面識のない相手と、というイ
 メージがあるかもしれないが、現実はそうではない。職場の上司や部下、昔の恋人や同
 級生など、これまでに公私で縁のあった相手が何らかのきっかけによって不倫相手に昇
 格するというパターンが多い。
・同じ職場や人間関係の中で付き合っているにもかかわらず、「バレない不倫」と「バレ
 る不倫」があるのはなぜだろうか。一般論だが、お互いが立場をわきまえて、節度を保
 って逢瀬を重ねている場合、バレないことが多いようだ。長続きする不倫は夫婦関係と
 同様、数年~数十年と続く場合もある。不倫というよりは「セックスあり友情」だろう。
 独身女性と既婚男性というありがちなパターンよりも、むしろお互いに子どものいる既
 婚同士の不倫が安定的に続く場合もある。  
・なぜ不倫を防止する必要があるのか。理由は単純な話だが、高確率で周囲にバレるから
 だ。多くの場合、不倫は誰にとっても初体験であり、隠すための訓練もしていなければ、
 道を踏み外さないための作法も学んでいない。当たり前のことだが、自分の感情と行動、
 そして相手の感情と行動の双方を自分の意思だけで100%都合よくコントロウールす
 ることはできない。小中学生の初恋が周囲のクラスメートにバレバレになるのと同じで、
 職場でも家庭でも初心者の不倫はすぐに気づかれる。特に男性の不倫は極めてバレやす
 い。  
・実際に不倫まで踏み込まなくても、「不倫未遂」が起こり得る。不倫未遂とは、「配偶
 者以外の相手に恋をしてしまい、仕事が手につかず苦しんでいる」状態や「配偶者以外
 の相手に恋をしてしまい、悩み苦しんだ末に告白したものの振られてしまい、失恋のシ
 ョックとパートナーへの罪悪感で二重に苦しんでいる」といった状態を指す。  
・特に男性の場合、さらに危険な「脳内不倫」というパターンがある。男性本人にとって
 は純粋な恋愛、あるいは不倫のつもりでも、女性側からすれば、勘違いした既婚上司か
 らの単なるセクハラにすぎない、というケースだ。セクハラだけにとどまらず、性暴力
 やストーカーに発展することもある。社内でも責任ある立場にいる中高年の男性たちが、
 秘書や派遣社員の女性に対して一方的に好意を寄せて、手を握ってきたり、後ろから抱
 きついたら、ラブレターをしたためたり、毎晩自宅に電話をかけてきたり、といった、
 目も当てられないような言動を取ることもある。
・役員や経営者の不倫問題は後を絶たないが、優秀な社内エリートや不世出の起業家が、
 不倫に付随する家庭問題で精神的に潰れてしまったり、脳内不倫が理由のセクハラで社
 会の表舞台から姿を消してしまうのは大いなる社会的損失だろう。不倫ウイルスに対す
 る感染予防策は、不倫の当事者のみならず、社会の中で生活するすべての人が自衛策や
 保険として学ぶべき内容だと言える。
・不倫には中毒性がある。アルコールやタバコ、DVやストーキングと同じで、不倫は常
 習化しやすい。セックスの快楽は「落差」に比例する落差が大きれば大きいほど、快楽は
 高まる。不倫相手との初めてのセックスは、配偶者以外の相手という落差、セックスレ
 スだった場合には時間的な落差、いつもと違う肉体・感触・匂い・空間という落差、ダ
 ブー破りという精神的な落差など、複数の落差の相乗効果によって背徳感と高揚感が高
 まるため、通常の性行為よりも圧倒的に強度が増す。
・不倫のセックスの  気持ちよさを一度でも体験した人は、多くの場合、それ以前のセ
 ックスには戻れない。今までの人生で経験してきた恋愛やセックスのすべてが色褪せる
 ほどの衝撃を受けて、「今までの人生はいったい何だったのだ」と愕然とする人もいる。
・落差を伴う相手とのセックスでなければ肉亭的にも精神的にも満足できなくなるという
 ことは、他の既婚者や職場の上司など、法的・社会的リスクのある相手と不倫しなけれ
 ば満たされなくなるということである。これは社会的に極めてリスキーなことだ。
・一度不倫を経験してしまうと、その後の人生は既婚者が恋愛対象に入るようになってし
 まう。既婚者を誘うこと、既婚者から誘われることに抵抗がなくなる。いったんこうし
 た不倫体質になってしまうと、元に戻すことは難しい。
・20代~30代の独身女性の場合、高い経験値と経済力を持つ「完成品」の年上既婚男
 性との不倫にハマったために、「未完成品」である同世代の男性に魅力を感じなくなり、
 そのままズルズルと年齢を化させて婚期を逃がしてしまうケースもある。
・たいていの人は、不倫相手との新鮮なセックスがもたらす麻薬的な快楽には抗えない。
 配偶者や子どもの存在も、仕事や社会的な地位を失うリスクも歯止めにならない。高学
 歴者や著名人、法曹や政治家といった理性や責任のある人、社会的な立場があるため不
 倫のリスクを誰よりもわかっているはずの人が簡単につまずき、溺れ、ハマってしまう。
 背徳感と苦痛は快楽に変わり、世間から叩かれれば叩かれるほど、逆にのめり込んでし
 まう。避妊すらも忘れてしまい、予期せぬ妊娠にお互いが苦しむことになる。
・不倫は身体的欲求=性欲だけではなく、孤独感や不全感、プライドの埋め合わせなどの
 様々な精神的欲求が複雑に絡み合って、生じる。アルコールやギャンブルへの依存と同
 様、不倫をすることで身体と精神の安定をどうにか保っている場合、「不倫をやめる=
 人間をやめる」になってしまう。個人の自助努力でどうにかできる範囲を超えた場合、
 第三者による社会的な支援が必要になる。

不倫を学問する
・不倫の解決策や相談先として真っ先に思い浮かぶのがカウンセリングだが、実は、カッ
 プルの性の問題を専門的に扱える心理領域の専門家は少ない。
・かつては倫理や道徳の問題だったが、現在の心理学的アプローチにおいては不倫を「夫
 婦の関係性の問題+本人の生育歴の問題」として捉える視点が主流である。愛の対象と
 セックスの対象の不一致、発達課題の未完(精神的に未熟な段階での結婚)、見すれら
 れ不安と飲み込まれ不安、ジェンダー規範(男の浮気は甲斐性、浮気をしなければ男じ
 ゃないという価値観)など、お互いがもともと持っている心理的課題が関係性の中で増
 幅して引き出され、悪循環を起こしてしまうという捉え方だ。
・心理学的アプローチからみた不倫の解決策は、まず不倫によってお互いの自己愛が傷つ
 いたことを理解し、その上でパートナーとして今後どのような関係を築きたいかを率直
 に話し合って決めていく必要がある。我慢やあきらめではなく、お互いの不完全さを認
 め合い、場合によってはすぐに答えを出そうとせずに、時間や距離を置いて待つことも
 必要。時間が解決してくれる場合もある。完全ではなくても、お互いが納得した関係を
 築くことがゴールである。  
・「不倫は夫婦関係の問題であり、夫婦関係を改善すれば不倫は止まる」という「夫婦関
 係原理主義」の心理学的発想には限界がある。同様に「夫婦間のあらゆる問題は、話し
 合いによって解決できる」という「話し合い原理主義」もそうだ。
・夫婦間の問題は、実は夫婦間だけでは解決できない社会的要因が絡んでくる。例えば長
 時間労働とそれに伴う家事・育児負担のジェンダーバイアスは夫婦不和の引き金になり
 がちだが、こうした社会の問題を夫婦の力のみで解決することは不可能だ。加齢や更年
 期、不妊などの身体的変化も話し合いでは解決できない。 
・円満な夫婦関係は、不倫防止のための必要条件ではあるが、十分な条件ではない。心理
 学的アプローチ「なし」では不倫を防げないが、心理学的アプローチ「だけ」でも不倫
 は防げない。むしろ不倫を始めたことで、身体的・精神的な安定を得ることができ、夫
 婦関係や結婚生活が安定し、精神科やカウンセラーの元に通わなくても済むようになっ
 た、という報告はたくさんある。こうした不倫のプラス面は心理学的アプローチの中で
 は黙殺されがちだが、それを見逃しては不倫の問題は理解も解決もできないだろう。
・生物学の世界では、長い間「社会的に単婚である種は性的にも単婚である」=「夫婦で
 つがいをつくる種は、配偶者以外の個体と交尾しない」と信じられてきた。しかし、
 DNA鑑定技術の飛躍的な進歩に伴い、現在ではまったくの誤りであったことが証明さ
 れている。哺乳類の中で、一夫一婦制=単婚を取っている種は全体のわずか3%とされ
 ている。鳥類は種全体の90%が社会的に単婚とされているが、性的には極めて乱脈で
 あり、多重交尾やつがい以外交尾は日常茶飯事である。    
・男性が婚外セックスを求める理由は、生物学的には「1人でも多くの女性に、自分の遺
 伝子を受け継いだ子どもを産ませたいから」という理屈で容易に説明がつくだろう。配
 偶者に自分の子を産ませつつ、婚外で他の女性にも子どもを産ませること(そして自分
 は育児には関わらない=不倫相手の女性及びその配偶者に育児負担を押し付けること)
 が、倫理的にはともかく、最も合理的な繁殖戦略である。  
・男性とは異なり妊娠・出産する立場の女性は、不特定多数の相手とセックスするメリッ
 トはないように思える。しかし、「男性養育者の保護を受けながら」「多様かつ優秀は
 遺伝子を持った男性の子どもを生む」ことが目的だとすると、話は別だ。結婚相手の男
 性が身体的にも社会的にも優秀ではない場合、その男性の子どもを産むよりも、他の優
 秀な遺伝子を持つ男性と婚外セックスをして、そこでできた子どもを「夫婦の子」とし
 て育てるほうがよい。同じ遺伝子の子どもを2人産むよりも、別々の父親から遺伝子を
 受け継いだ子どもを2人産むほうが遺伝子的には有利であり、多様性と生存確率は高ま
 る。また女性は、婚外セックスを提供することで、男性から社会的地位や経済的報酬な
 どの資源・保険・見返りを得ることができる。
・人間の世界でも、時代や地域、民族によって、多様な婚姻スタイルが存在してきた。既
 婚者間や友人間でセックスのパートナーを交換し合う風習や、精子提供目的で独身男性
 が既婚女性と交わることを許可している社会、定期的に配偶者や恋人以外の異性と寝な
 ければならない風習を持つ文化は、世界各地に存在する。
・世界各国の文化における不倫や婚外セックスの扱われ方は極めて多様であり、不倫とい
 う概念自体がそもそもない社会もあれば、結婚後も特定に親戚の範囲内(義理の兄弟姉
 妹など)であれば性的関係を持つことが許されている社会もある。宗教上の祭りや収穫
 祭など、特定の行事や日時に限って婚外セックスが容認される社会も多い。
・一夫一婦制を取っている社会の中でも、そのうちの4割は特定の相手、特定の日時や条
 件下における婚外セックスを認めており、婚外セックスを完全に禁止しているのは全体
 の半分程度にすぎない。   
   
不倫の歴史を考える
・太古より、女性の貞操は共同体の掟や法律の中で厳しく管理されてきたが、男性の貞操
 を要求する法律はほとんど存在しない。   
・一夫多妻制の社会を「複数の女性と公然とセックスできる理想的な社会」と思っている
 男性も多いようだが、それは完全な誤りである。一夫多妻が認められている社会の多く
 では、実際に複数の妻を持っている男性は、全体の5~10%にすぎない。言い換えれ
 ば、一夫多妻制とは「ごく一部の社会的地位の高い男性や経済的に裕福な男性が、大半
 の女性を独り占めしてしまう社会」「大多数の男性は、1人の相手も見つけられず、生
 涯にわたって独身を余儀なくされる社会」である。多くの男性にとっては、受難以外の
 何物でもない。   
・これまでの人間の歴史を振り返ると、一夫一婦制の普及は、機会均等と自由平等を重ん
 じる民主主義の勝利と言えるかもしれない。一夫多妻制は一部のエリート男性が女性を
 独占するが、一夫一婦制はどれだけ社会的・経済的に成功した男性であろうとも、1人
 以上の妻を持つことはできない。反対に、社会的・経済的に恵まれていない男性でも妻
 を持つ見通しを立てることができる。一夫一婦制の普及は、社会が平等になった結果で
 もあり原因でもあるだろう。   
・日本において、不倫が裏切り行為として非難されるようになったのは、家の血筋を重ん
 じる武家社会になり、一夫一婦制や嫁入婚が婚姻の基本形態とされるとうになってから
 である。不倫は、鎌倉・室町時代には「密懐」と呼ばれ、江戸時代には「密通」、明治
 から昭和にかけては「姦通」と呼ばれた。これらが現代の不倫と異なるのは、重大な犯
 罪行為として処罰された点にある。江戸時代の密通は、死罪である。私的な処刑も認め
 られていた。明治から戦前にかけては、刑法第183条に「姦通罪」が規定されていた。
 妻が夫以外の男性とセックスすると、姦通罪で処罰(2年以下の懲役)された。一方、
 夫には姦通罪の適用はなく、相手が未婚女性であれば妾(愛人)を何人囲っても法的に
 処罰されることはなく、既婚女性とセックスした場合にのみ、例外的に「姦通罪」で罰
 せられるにすぎなかった。   
・ちなみに、不倫大国というイメージがあるフランスは、姦通罪の廃止が日本よりも30
 年近く遅かった。フランスで姦通罪が廃止されたのは1975年である。
・ここで確認しておくべきことは、不倫によって得られる強烈な性的快感の体験の有無は、
 大多数の人にとって人生の幸福度にはほとんど影響しない、ということだ。覚せい剤を
 使って多幸感を得ている人を見て「羨ましい」と思うだろうか。麻薬の使用経験の有無
 が人生の幸福度に影響を与えないのと同じで、不倫相手と押し寄せるオーガズムの波の
 中で随喜の涙を流すようなセックスをしたことがなくても、幸福に生きていく上では何
 の問題もない。    

職場環境と人間関係の整備   
・長時間労働が常態化している日本社会においては、男女の出会いの多くは職場で起こる。
 調査データを見ても不倫の大半は職場で発生している。不規則な激務の続く職場、スト
 レスフルな職場では、職場恋愛の名を借りた不倫が発生しやすい傾向がある。
・人間は環境の奴隷である。どんなに強い意志や倫理観のある人でも、不倫が常に話題に
 なている職場では感覚がマヒしてしまう。 
・性欲に勝てる人間はいない。いるのは性欲に勝てると思い込んでいる無防備な人間だけ
 だ。 世間の人は性欲の虎を放し飼いにしており、そのことに気づいていない。そして
 些細なきっかけでその虎の背に乗って滅亡の谷へ堕ちることになる。   
・夫婦関係における教科書的な不倫ワクチンは「セルフプレジャー」、すなわちマスター
 ベーションの充実だ。パートナーとの性生活において、お互いの嗜好の不調和や頻度や
 回数に関する不満が生じた場合、定期的なマスターベーションを通じて自分の性欲を主
 体的に管理し、パートナーとの間に生じた齟齬や不満を埋めることで、性的欲求不満に
 基づく不倫の発生を未然に防ぐべし、という考えである。   
・こうした夫婦の性生活のメンテナンスと並行して、アイドルやアニメ、ゲームやアダル
 トコンテンツなど他の対象に性的なエネルギーを向けることで不倫の発生を予防する方
 法もある。ただし、こうした代理満足ツールで満たせるのは「性欲」だけであり、「性
 交欲」は満たせない。性交欲とは、相手と気持ちの通じ合ったセックスをしたい、とい
 う欲求だ。性欲は相手がいなくても満たせるが、性交欲は相手がいなくては満たせな
 い。   
・かくも多くの人が不倫で悩み苦しめられるのは、その原因が性欲ではなく性交欲だから
 である。性欲を解消したいのではなく、相手との関係性、およびそれに伴う気持ちの通
 じ合いが欲しいわけだ。そのため、既に不満にどっぷりハマっている人には、代理満足
 のツールはほとんど通じない。 マスターベーションだけでは、性欲の不満は解消でき
 ても、性交欲の不満は解消できない。 
・セックスレスの期間、そして性生活の不満や齟齬をマスターベーションで取り繕ってい
 る期間が長引けば長引くほど、性交欲の不満に伴うストレスは、自分でも気づかないう
 ちにボディブローのように心身に蓄積されてしまう。そしてある日突然、溜まったスト
 レスが何らかのきっかけで破裂し、不倫を誘発してしまうこともある。   
・私たちの社会は、婚前セックス(初体験や恋愛)と婚外セックス(浮気や不倫)には並
 々ならぬ関心を寄せるが、婚内セックスにはほとんど無関心だ。「夫婦間セックスをい
 かに充実させるか」という問い自体が、社会的にも商業的にもあまり議題にならない。
 婚内セックスをきちんと議論することの重要性は、決して忘れてはならないだろう。
 しかし、ここで問題になるのは、「夫婦間セックスを充実させたい」と考えているのは、
 多くの場合、妻側=女性のみであることだ。男性論者が同様のことを主張することは少
 ない。男性の目線はどうしても婚内ではなく婚外に向かいがちだ。むしろ、妻が「エロ
 活」なんてことを始めたら萎えるだけだ、という男性も少なくないだろう。
・女性が公の場で自分の意志と言葉で性を語ることや、受け身ではない主体的な形で性を
 アプローチする権利を行使できることは、社会的には望ましいことだ。だが、「女性は
 性的に奥ゆかしい、受け身の存在であってほしい」と考える男性がいまだに少なくない
 現状においては、女性のそうした行為は、かえって男性から敬遠されるという逆効果を
 招きがちであろう。    
・結婚制度は、基本的に婚前セックスや婚外セックスを否定するが、それらの充実を否定
 して婚内セックスだけを充実させることはできない。それがさもできるかのように思わ
 せるのは大いなる欺瞞である。   
・いくら啓蒙しても、夫婦の性生活を充実させるための知識やテクニックは、砂漠に水を
 撒くようなもので社会的に根付かないかもしれない。そもそも、多くの男性が「充実さ
 せたい」と考えているのは、婚内セックスではなく、婚前セックスや婚外セックスなの
 だから。

夫婦関係や家庭を壊さない婚外セックス
・自分個人の意志で、職場環境や人間関係を都合よく変えることは難しい。だとすれば、
 不倫に対する現実的かつ効果的な予防策は、どのような環境や関係の中に置かれてたと
 しても一定の確率で不倫を防止できるよう、ワクチンを接種して免疫をつけることだ。
・不倫ワクチンとは、「中毒性の低い擬似不倫体験」あるいは「リスクの少ない、制度化
 された婚外セックス」を指す。 
・近代以前の社会では、「リスクの少ない、制度化された婚外セックス」の場が、共同体
 の中に制度として存在していたのだ。古代~近世においては、祭りなどのイベントの際
 に、「歌垣」「盆踊り」「雑魚寝」といった形で、乱交が行われる慣習があった。年に
 1度の非日常空間の中で、普段とは別の相手とセックスをすることで、日常世界をリセ
 ットするわけだ。年に数回、一定のルールや枠組みの中で「制度化された婚外セックス」
 を行う機会や空間があったため、婚外セックス=不倫が過度に妖しい輝きを帯びずに済
 んだわけだ。不倫に麻薬的な魅力が宿っているのは、こうした習慣が失われた近代社会
 特有の病であるともいえる。   
・今までの女性は、不倫の仕方がとても下手であり、職場の上司や友達の彼氏、姉の夫な
 ど、身近な男性にアプローチしてしまっていた。これは発覚して場合、自分の結婚のみ
 ならず相手の結婚も壊してしまうリスクがあり非常に危険である。そのため匿名性の高
 い空間で、接点の全くない相手を探すべきだ。同じように既婚者で子どもがいる人、不
 倫がバレたら相手も困るという人を選べきである。   
・不倫は「病状」であって、「原因」ではない。よく不倫が離婚の原因になると考えられ
 てるが、結婚生活がうまくいっている夫婦は不倫も乗り越えることができる。クリント
 ン大統領夫婦を見ればわかる通り、世界中の人に知られてしまったような破滅的な不倫
 をしても、結婚を継続することが可能だ。   
・不倫専門SNSは、非日常の出会いを推奨するだけで、それを日常に再び着地させるだ
 けのシステムやルールがない。SNSを使えば、確かに不倫相手は見つかるかもしれな
 いが、一対一の個人間のやりとりだけでは何かあったときに歯止めが利かなくなり、日
 常に戻ってこられなくなる可能性がある。身元の不確かな見知らぬ他人と性的関係を持
 つことで、盗撮や窃盗、暴力や美人局なでの被害に遭うリスクも上がる。
・性風俗は不倫ワクチンにはなり得ない。なぜなら、「プロの女性」による金銭を介した
 「サービス」である性風俗と、「素人の一般女性」との金銭を伴わない「個人的な恋愛・
 肉体関係」である不倫は、まったく別物だからだ。事実、不倫で苦しんでいる人に性風
 俗のサービスはほとんど効かない。
・不倫で悩んでいる人は、単にセックスがしたいわけでも、性欲を解消したいわけでもな
 い。特定の彼・彼女によって奪われた心の穴、もぎ取られた半身、深くえぐられた心の
 傷をどうにか埋めたいのだ。 
・理想論を言えば、性風俗の本来の目的は不倫ワクチンの提供である。擬似恋愛や性技を
 駆使して、一夫一婦制に適応できず苦しんでいる既婚男性の心の穴を埋めることが、性
 風俗業界が狙うべきマーケットの一つだろう。   
・不倫専門SNSは、非日常への接続機能はあっても、日常への再接続機能がないために、
 不倫ワクチンにはなり得ない。夫婦関係や家庭を壊すリスクが高い。一方、性風俗は、
 日常への再接続機能はあっても、非日常への接続機能がないために、不倫ワクチンには
 なり得ない。金銭を介した後腐れのない合理的な関係であるために、夫婦関係や家庭を
 壊すリスクは比較的少ないが、その分不倫の代替効果は薄い。
・20~30代の男性よりも、40代~50代後半の男性のほうが、「ガツガツしていな
 そう」「恋愛に発展しなさそう」という理由で、夫婦や女性から指示されることが多か
 ったという。 
・婚外交渉の理由は、妻への愛情がなくなったからではなく、あくまでも夫婦間の性的ギ
 ャップにある。自分の性欲が強く、妻は性的に淡白で頻繁にはできないから、外で別の
 女性としているだけ。そのため、婚外セックスはするが婚外恋愛はしない。それが大人
 のマナーだ。    
・女性は、いくつになっても性感を開発することができる。連続で達することもできるし、
 ピストンなしでも達することができる。男性側が動かずに=体力を使わずに女性がオー
 ガズムを得る方法もあるので、身体的にも負担にならない。女性の満足する姿を見るこ
 とで、自分も楽しめる。   
・円満な婚外セックスライフを送るための鉄則
 ・家庭を大切にする
 ・家族に迷惑をかけない(秘密は厳守する)
 ・一度きりの人生を楽しむ(快楽に忠実であれ)
 ・やきもちはほどほどに
・婚外セックスの効用としては、「家族に優しくなった」ことが挙げられるという。これ
 は、婚外セックスをしているという疚しさの解消のために妻や家族に優しくするのでは
 なく、家庭外の女性に対して優しくしているうちに、自然と家族にも優しくできるよう
 になったのだそうだ。家庭の外で性的なガス抜きができれば、家庭内にストレスを持ち
 込むことはない。 
・現在の婚外恋愛という言葉は、男女ともに婚外セックスを正当化・美化するための方便
 として使われている。恋愛と結婚とセックスが一致するのが望ましいが、それぞれが別
 々であってもかまわない。むしろ我慢するよりは、自分自身に忠実である方が良いの
 ではないか。ただし、秘密は墓場まで持っていくことだ。
・年代によってセックスに対する価値観は変わるという。女性の場合、30代は「好きな
 人に尽くしたい」「相手を喜ばせるために自分が感じたい」「潮を吹いて楽しませてあ
 げたい」という利他主義の人が多い。しかし、40代になると「自分の快感に忠実にな
 りたい」に変わる。若い時は利己主義、結婚すると利他主義、その後は利己主義に戻る
 だろうか。お互いに一度利他主義を経由した「利己主義2.0」同士のセックスが、最
 も安全で楽しいのかもしれない。 
・男性が婚外セックスの世界に参入するためには、スマホや出会い系サイトといった外的
 条件だけでなく、妻以外の女性と円満な関係を築くため、あるいは婚外セックスに伴う
 罪悪感を消すための独特な内的条件=自己イメージを確保する必要がある。
・自分自身や配偶者・家族ときちんと向き合うだけの精神的・時間的余裕のない大半の既
 婚男性にとって、婚外セックスという非日常に性世界にアプローチするためには、社会
 的な責任や罪悪感、当事者意識を都合よく忘却するためにも「カウンセラー」という立
 場にたたざるを得ないのかもしれない。本当は自分自身に問題があるのだが、それに気
 づかない、あるいは現実を見たくないために、「迷っている女性を教え導いている自分」
 「他人の問題を解決している自分」という建前や物語が必要になる。
・セックスを手段ではなく目的として享受するためには、一体なにが必要なのだろうか。
 必要なスキルは2つある。1つ目は、セックスでオーガズムを得るスキル。「男性との
 セックスで、きちんとオーガズムを得られるかどうか」が重要な分岐点になるという。
 オーガズムによって得られる肉体的な快楽は、精神的な快楽に勝る。オーガズムが得ら
 れれば、「身体の割り切り」だけではなく、「心の割り切り」が可能になるという。
 「セックスでオーガズムを得られない女性が、心の割り切りが十分にできないために、
 ドロドロの不倫にハマりやすいのではという説もある。2つ目は、自分の感情を腑分け
 できる能力。今の自分が何を感じて、何をしたいのかをきちんと理解できること。  
・セックスをすることで、性欲を満たしたいのか、ちやほやされたいのか、慰めてほしい
 のか、女として見てもらいたいのか、コンプレックスを癒したいのか。きちんと自分の
 感情を客観的に整理しておかないと、これらの様々な欲求を適切に理解・区別すること
 はできない。自分の感情を客観視できる人のみが、婚外交渉を含め、複数の相手との性
 的関係を結べるという。
・男性が自分以外の客とセックスしている風俗嬢を見下す傾向があるのと同じく、女性も
 妻がいるにもかかわらず自分とセックスしている既婚男性を見下す傾向があるかもしれ
 ない。    
・女性がセックスのオーガズムによって得られる快楽は、男性の数倍~数十倍になるとい
 う俗説がある。この説が正しければ、男性とは異なり、セックスによって得られる純粋
 な快楽の力だけで、世俗的な罪悪感や当事者意識を吹き飛ばして、非日常世界への接続
 を実現することができるのかもしれない。オーガズムを得るための相手や方法、時間や
 自分の意志で管理できるのであれば、日常世界へ再接続も可能だろう。
・需給バランスの関係上、婚外セックス市場では、1人の独身女性が複数の既婚男性を相
 手にするという形になりがちだ。婚外恋愛願望のある女性は少なくないかもしれないが、
 実際に複数の相手との婚外セックスに乗り出す人は少数派である。     
    
婚外セックスを前提として夫婦関係
・前近代社会では、盆踊りでの乱交、歌垣や雑魚寝などの非日常空間(祭り)の中で年に
 1度、配偶者以外の相手とセックスできる機会があった。そこで日常をリセットし、再
 び日常に戻っていくという仕組みだ。現代社会には、残念ながらこの仕組みがない。
・イタリアのアドリア海沿岸地域では、不倫は日常茶飯事に行われているという。しかし、
 誰もそれを公然と口にすることはない。人間関係の濃い地域では、不倫が公になってし
 まうと地域や家庭生活が破壊されてしまうからだ。誰もが見て見ぬふり、聞いていない
 ふりをする。不倫の事実、不倫願望を口にしたものは村八分にされる。不倫が暗黙の了
 解として公認されていても、身分違いの関係やあまりに年の差のある関係など、ゴシッ
 プや漏洩につながるような関係は否定される。最も望ましいとされているのは同じ階級
 にある既婚者同士の関係である。数年~数十年、場合によっては一生続くこともある。 
 「ダブル不倫」というと聞こえは悪いが、実は一番安定するケースという。
・セックスは心の穴を埋めるためにするものでもないし、そもそもセックスによって心の
 穴を埋めることはできない。どんなに美人の女性としても、どんなに大勢の女性として
 も、この事実は決して変わらない。しかし、セックスによって得られる身体的な快楽や
 精神的な開放感を十分に享受することができれば、それだけで大きなエネルギーを得る
 ことができる。
・男性は自分の心身を安定されるために、女性に対して「生活」「恋愛」「セックス」の
 三本柱を求めると言われる。  
・男女ともに、交際クラブに求めるニーズは常に流動的だ。お互いに割り切った交際目的
 だったはずが、いちの間にかどちらかが、あるいは双方が本気になることもある。そも
 そも、人と人との関係や感情は、常に変化し続ける流動的・偶発的な代物だ。それを固
 定化・商品化しようとするがゆえに、根本的な無理や矛盾が生じる。
・女性側は、男性からお金をもらってデートやセックスをすることを売春とは思っていな
 い。一方、男性側も、自分のやっていることが買春だとは思っていない。その意味で、
 交際クラブは「不倫未満、買春以上」の世界なのかもしれない。不倫や社内恋愛ほどの
 強度や中毒性はないが、その分、自分の意志である程度制御可能な関係を築くことがで
 きる。既婚男性が金銭を介した性愛関係を独身女性と作ることは、決して社会的に褒め
 られた行為ではないかもしれないが、あくまで成人間の合意の上でのやりとりなので、
 児童買春や未成年との援助交際のような反社会性はない。
・世間的には完全に誤解されているが、「お互いの配偶者を提供し合って、複数の相手と
 のセックスを楽しむこと」や「夫婦間のマンネリ化したセックスを打破すること」は、
 スワッピングにおける1つの結果であって、決して目的ではない。最終的な目標は、
 「パートナー間の愛をさらに深めること」である。他人の前で2人が愛し合っている姿
 を見せつけることで、さらに愛情は深まる。またいろいろな相手とのセックスを通じて、
 「やっぱり今のパートナーとのセックスが一番」という実感を得ることができる。
・スワッピングによって、全く知らない相手の身体を見たり、触れたり、セックスしたり
 すると、これまでマンネリ化に陥っていた性的な肉体感覚、欲動が復活する。セックス
 の興奮や快楽は、相手の身体を知らない、何をされるかわからない、どこをどのように
 触られるのかわからないがゆえに高まる。いつもとは違う相手の身体を見たり、触れた
 り、セックスをしたことで、いつものパートナーとのマンネリ化したセックスでは得ら
 れなかった新鮮な快楽や欲動が得られる。通常であれば、「ああ気持ちよかった」と感
 じるだけで終わったり、他の相手との新鮮なセックスに没入してしまうが、スワッピン
 グの目的はこの身体感覚の変容を現在のパートナーとの性生活に活かすことにある。他
 の相手との性的接触を経て、身体感覚をリセットあるいは更新される。その状態で、再
 びいつものパートナーとのセックスをすれば、それはこれまでのセックスとは違った、
 より深い快感のあるものになり得る。
・夫婦間のセックスが行き詰った場合の解決策の国際比較として、アジア圏では売春や性
 風俗、欧州圏ではスワッピングや乱交が選択肢として選ばれることが多いそうだ。その
 背景には、家族観の違いがあるとされる。日本をはじめとするアジア圏では、家族は
 「役割家族」である。男性は夫として、女性は妻としての役割を果たしていれば、内面
 的にはともかく、外面的には家族は機能する。家族を維持していく上で、夫婦間の愛情
 やセックスの有無は、それほど問題にはならない。現在、日本国内の夫婦の約4割がセ
 ックスレスと言われている状態だが、夫婦間に愛情やセックスがなくても家族は回る。
 少なくとも、愛情の低下やセックスの回数低下が即座に離婚につながることは少ない。
 一方、欧州圏では「愛情家族」である。愛情とセックスが関係の基盤にあるため、夫婦
 間に愛情やセックスがなくなった、あるいはなくなりそうだと感じられた場合、どうに
 かしてそれらを取り戻そうとする。嫉妬心や非日常の世界を利用して夫婦間の関係を修
 復しようとする。スワッピングや乱交もそういった文脈で利用されるものなのだろう。  
・フランス人女性の授乳率は日本女性と比べて低いとされるが、授乳しない理由ひとつと
 して、「女性の乳房は、赤ちゃんのものではなく、パートナーの男性のものだから」と
 いう理由があるそうだ。 
・スワッピングという文化は、もともと同性愛の性的指向を持った人向けの文化である。
 したがって、同性愛や両性愛の性的指向を全く持たない人、および複数の相手とのセッ
 クスを望む乱交指向を全く持たない人は参加しにくく、仮に参加したとしても長つづき
 しない。 
・スワッピングの世界には、夫婦間の愛情を深めたいという動機のカップルだけでなく、
 刺激を求める不倫カップルや外国人カップル、SMや女装のマニア、露出趣味やのぞき
 趣味、輪姦や寝取られ願望の人など、様々な性的嗜好を持った人が集まっている。
・スワッピングは、一般の異性愛の既婚カップル、そして役割家族文化の中で生きる日本
 人の既婚者の大半にとって、夫婦間セックスが行き詰った場合の処方箋、および不倫ワ
 クチンにはなり得ない。     

希望としてのポリアモリー
・婚外セックスは道路の信号で例えれば黄色の領域だ。もしも信号が青と赤しか存在せず、
 交差点でいきなり直進や停止の指示が出されるようになれば、事故が多発するだろう。
 青でも赤でもない黄色という緩衝地帯、グレーゾーンがあるおかげで事故を減らすこと
 ができる。必要なのは完全主義に基づいてグレーゾーンをなくそうと躍起になることで
 はなく、グレーゾーンの存在をうまく社会的に飼い慣らすことだ。
・民主主義は最悪の政治体制だ。ただし、これまでに試されたあらゆる政治体制を別にす
 ればの話だが。これと同じで一夫一婦制は最悪の制度だが、それ以外に我々が取るべき
 選択肢はない。 
・一夫多妻・一妻多夫・集団婚・オープンマリッジなど、様々な婚姻形態が試されてきた
 が、単婚の一夫一婦制以上に成功したものはない。私たちが選ぶことができる選択肢は、
 現時点では一夫一婦制しかない。それも多くの場合、お互いを成長させるための開放型
 結婚(オープンマリッジ)ではなく、様々な文化的・社会的・性的な束縛と性別役割分
 業に満ちた閉鎖型結婚である。
・一夫一婦制の欠陥や不備を埋めるような、社会性のある「補強材」を、皆の知恵を合わ
 せて作り出していくことは可能だ。不倫を「当然起こるべきもの」として捉え、その上
 で冷静に補強材の選択肢を増やしていくことが求められている。     
・幸せな結婚生活は、お互いの生と性に逃げずに向き合うことでしかつかめない。一夫一
 婦制に内在する諸々の不可能性と様々な困難の不可避性を踏まえつつ、目の前のパート
 ナーと仲良く過ごしていきたい。

無防備からの卒業
・婚外セックスや婚外恋愛は、一定水準以上の経済力と教養、文化資本を持った人間だけ
 が参加し、楽しむことができる「貴族のスポーツ」だとも言える。つまり一夫一婦制を
 超えた関係を婚外で構築し、かつ足を踏み外さずにその果実を味わうことができるのは、
 経済力や文化資本、あるいは偶然の力で一夫一婦制を極めることのできた幸運なカップ
 ルだけである。
・婚外セックスに乗り出す人は昔も今も変わらずに存在するが、婚外セックスを語るため
 のボキャブラリーは相変わらず貧しいままであり、社会的にどう扱っていくかというこ
 とに関する議論もほとんど深まっていない。社会に届く言葉が生まれるような土壌事態
 が育まれていないのだ。     
・これまでの「伝統的家族」は、女性にのみ貞操義務を課し、男性の不倫願望を性風俗や
 売買春の場で発散させ、そこで働く女性にすべてのリスクとスティグマ(差別や偏見な
 どの負の烙印)を押し付けるといういびつな仕組みによって、どうにか維持されてきた
 のではないだろうか。婚外セックスに伴うリスクとスティグマは、家庭や社会の外側に
 ある性産業に丸投げするのではなく、家庭や社会の内側で受益者が責任を持って均等負
 担するべきだろう。    
・自分や相手がHIVに感染していることがわかっていても、感染した先に待っているの
 は確実な死であるとしても、経済的・文化的・社会的・心理的な理由で、不倫をはじめ
 とする不特定多数の相手との婚外セックスがやめられない人は大勢いる。だとすれば、
 道徳論を説くだけでなく、現実に対応した具体的な処方箋を出すしかない。
・人は、孤独を癒すために不倫をするのではなく、不倫をするからこそ孤独を味わうので
 ある。「すべての動物は性交の後に悲し」仮に条件付きで婚外セックスを社会的に受容
 したとしても、それによって孤独や寂しさが完全になくなるわけではない。むしろ、
 「した後」のほうが「する前」よりもさらに深い寂しさを味わう羽目になるケースもあ
 るだろう。
・婚外セックスについても、それが社会的に受容されていない現在よりも、社会的に受容
 された後の世界にこそ、真の地獄が待ち構えている。「婚外セックスをしさえすれば満
 たされる」「救われる」という幻想にすがることができなくなり、婚外セックスをして
 も満たされない、救われない絶望感を抱えた人が社会のそこかしこに溢れることになる。
・そもそも恋愛やセックスは、決してキラキラした美しいものではなく、気が遠くなるほ
 ど面倒臭くて、吐き気がするほど気持ちが悪く、コストパフォーマンスは最悪で、大な
 り小なり周囲に迷惑をかけるものである。婚外での恋愛やセックスは、その面倒臭さや
 気持ちの悪さ、コストパフォーマンスの悪さや周囲への迷惑度合いに、さらに拍車がか
 かる。自分や相手の中にある気持ちの悪さやおぞましさ、エゴや嫉妬、性欲と性交欲、
 支配欲求や暴力欲求に、嫌でも向き合わざるを得なくなる。
・結婚は、あなたの悩みのすべてを解決してくれる万能薬ではないし、配偶者もあなたの
 ことをすべて理解してくれる救世主ではない。そして、婚外恋愛や婚外セックスにも救
 いはない。何をしようが、誰と一緒に暮らそうが、生きていく上で避けて通れない苦痛
 はある。 
・円満な性的関係は、売り買いしたり、探したり、取り替えたりするものではなく、自分
 たちの手でつくりあげるものである。不倫の問題については、心理学も、生物学も、文
 化人類学も、社会学も、明快な答えは与えてくれない。自然や本能の中にも、文化や宗
 教の中にも、道徳や法律の中にも、完璧な回答は見いだせない。
 
「野暮」と「粋」の狭間で
・不倫をはじめ、セクシャリティの問題に関しては、日本では「粋」に振る舞うことが是
 とされてきた。明確に白黒つけず、答えを曖昧にぼかすことで、虚実のあわい揺らぎを
 享受する姿勢が「粋」とされる一方、真正面から性を語ったり、公の場で議論したりす
 ることは「野暮」な振る舞いとして敬遠された。日本では、性はあくまで「趣味」「娯
 楽」としての観点から情緒的に扱われる場合が多く、「人間解放」や「人権」といった
 観点で論理的に語られることは少なかった。「人権の尊重」を謳う性教育の実践や、
 「人権の保護」を訴える性表現規制に関する運動が、社会的に極めて重要なテーマであ
 るにもかかわらず、どことなくありがた迷惑、かつ冷ややかな視線で見られるには、そ
 うした文化的背景がある。    
・セクシャリティの問題を個人の問題として矮小化し、それを公の場で語ることを「野暮」
 とみなす風潮は、現在の社会情勢に照らし合わせれば、決して「粋」な振る舞いではな
 い。社会問題になっている貧困の背景には不倫の問題が隠れている。不倫に伴う夫婦関
 係や家族関係の破綻と貧困は直接つながっているのだ。不倫を文化的に美化して悦に浸
 ったり、不倫ドラマや体験ルポを消費して満足している余裕はもうない。
・不倫に関する本を読み、自分の頭で考え、自分の言葉で語る。これだけで、不倫を防ぐ
 一定の効果はあるはずだ。性教育の世界では、きちんと性教育を受けた若者は性交開始
 時期が遅くなり、セックスパートナーの数も減り、望まない妊娠の発生率や性感染症の
 感染率も低くなるということが統計的に証明されている。つまり、性教育は若者の性行
 動を活発化させる要因にはならないのだ。不倫に関しても、夫婦が正しい「不倫教育」
 を受けたほうが、結果的に不倫の発生率は低下すると思われる。
・人が幸せになることは簡単だ。理性を失いさえすればいい。しかし、そのツケはすぐに
 回ってくる。人である限り、性的な存在であること、性的な存在として見られること、
 そしてそれらによって生じる苦しみからは、決して逃れられない。ゆえに本当に幸せに
 なるためには、性から逃げずに戦うしかない。